2014年7月1日火曜日

Soffice & Solid S701

いい靴を作る実力がある会社だとは思うけれど、いまひとつ履いている人を見かけない世界長ユニオン。その中でもさらにニッチに展開するブランドであるソフィスアンドソリッドのS701。

アイレットの周りにちょっとしたパーフォレーションがあるけれど、カテゴリーとしてはクオーターブローグというよりはパンチドキャップトウといった方が近い気がする。
(僕はこの2つの厳密な定義を知らない。キャップ以外に穴飾りありだと、もうそれはパンチドキャップトウではないの?)
サイドの流れるようなデザインは、ガチガチの定番好きの僕としては少し軽いかなとも思ったのだけれど、このくらいの遊びゴコロだったらいいよね、という範囲。

ロングノーズで一応チゼル。トウは小さめなポインテッド。サイドは少し丸みがある。小ぶりなパーフォレーションと合わせて、一見繊細に見える。

ボロネーゼ式グッドイヤー製法という、他にはないマニアックな作りの靴。
どんな作りなのかというのは世界長ユニオンのサイトを見てもらうのがいちばんだとおもうので省略。

ボロネーゼ式グッドイヤー製法は返りの良さが売りだという。そう言われてみるとそのような気もするのだけれど、履きこんだグッドイヤーウエルテッドと比べるとそれほど違いがないかも(僕が違いの分からない人なのかもしれない)
どちらかと言うと、足が包まれている感が強いところが特徴。本来のボロネーゼ製法は靴下のような履き心地と言われていて、確かに全体に丸みを帯びているからなのかつま先にかけて包み込まれるような感じを受ける。
一方で、土踏まずは少し盛り上げている。なんとも言えないソフトタッチの前半部と、多少攻めを感じる後半部とアンバランスな感じがしないでもない。ただ、このメリハリによって靴下ではなく靴としての履きごこちが生まれているのかな。

ウイズがシングルEのため、ボールジョイントからかかとの手前まで靴全体の細さを感じるなかなかタイトなラスト。実測EEの僕にとってはやっぱり少し幅が狭く、長時間はいていると外側全体が痛くなる。点であたるではなく、思いっきり面であたる。
他の靴を比べてみると明らかに幅が細い。細く見えるというのではなく、単純に細い。このため足の外側全体がかなり窮屈に感じるが、捨て寸が多いのか小指の先端が当たって痛いというのはない。
ここまで細めに攻めている靴の印象からするとかかとが小さいかとおもいきや、それほどでもない。ボールジョイントに合わせてハーフサイズ大きめを選択してしまうと、今度はかかとがかなり緩くなってしまうため、サイズにはちょっと悩まされた。

全体では細めかつ甲低め。シェットランドフォックスのアバディーンとほぼ同じくらい羽根が開く。僕は薄めの足だと思うけど、キツメに紐を結んでも1cmくらい開くので、細め薄めの人にはかなり合うのではないかな。

この靴はラストも工夫されていて、前半部と後半部で中心線がずれている。これは人間の足の形に忠実にした結果ということらしい。

ソールを覗いてみると、完全に足(指)がインソールからはみ出ている。
でもこの靴の製法を考えると、インソールも含めて袋状に縫うようなので、グッドイヤーウエルテッドに比べると同じ周囲だとしても、インソール自体はもともと小さいような気がする。逆に考えると、インソールで足を支えるのではなく、あくまでもインソールは安定性と丈夫さに貢献する接地面の一部なだけで、アウトソールでカバーされる足幅全体の部分がソール機能を果たすことができる柔軟な作りになっているとも思える。アッパーがコバよりはみ出るようなこともないので、やっぱりそういう作りなのだろう。

アッパー素材は仏アノネイのボカルー。
4万円台の国産靴ではウエインハイムレダーと並んでよく採用されている。ボカルーはクリームを入れるのに少々コツがあるのかロットによるのか、非常にみずみずしい艶感が出る場合と曇った感じをなかなか抜け出せないことがある。今回のS701は当たりのようで、最初の数回はなかなか艶が出なかったものの、だんだんといい感じに仕上がってきた。最低でも10回弱メンテナンスしないと(数ヶ月から半年ほど経たないと)ボカルーは真価がわかりづらい気もする。

ソールはヒドゥンチャネル仕上げ。この仕上げって確かに見た目高級感があるのだけれど、底は地面にすりすりされ、すぐに元の見た目が失われるわけで、機能的というよりは販売時の差別化という気がする。隠されていることで縫い目からの浸水が少しばかり抑えられるという実用的な面があるのかもしれないけど、誤差の範囲でしょう。
どうせソールにこだわるならペルフェットくらいやって欲しい。あれはさすがに気合を感じる。S701はシェットランドフォックスのアバディーンと同じように、工業製品的精巧さを感じるソール。
雨に降られたあとのソールは、グラスゴーと同じような感じでフヤフヤになる。乾燥した後のパサツキ具合もなんとなく似ているのでソールの素材は近いと思う。アニリンカーフのアッパーとあわせて、雨には弱い靴という印象。
新品時はかなりソールが滑る。かかとの釘打ちもあり硬い床だとかなり気をつけないと危険かもしれない。何度か雨に降られてソールが削れてくると、前半部はそれほど滑らなくなるが、やっぱりヒールは滑るので、結局のところ雨の日は滑りやすい靴。

ソフィスアンドソリッドはトレーディングポストだけで買えるモデル。
同じ世界長ユニオンのユニオンロイヤルは百貨店で買えるけれど、こちらはラストがEEE。店頭で履いてみたらかなり緩かった。
日本で歴史のある靴メーカーが展開しているブランドは大きめにできていることが多い気がする。リーガルの定番もそうだけれど、ハーフサイズは落とさないとゆるゆるになってしまう。ユニオン・ロイヤルは最低サイズが24cmで、僕にとってはこれだと緩かった。その下のサイズは無いので諦めた経緯がある。ユニオンロイヤルでEEモデルがあったらそっちを買っていたかな。

ボロネーゼ式グッドイヤー製法というこれまでにない作りは、差別化というところでは面白いけれど、実際に靴として飛び抜けて有利な点があるわけではない(と、鈍感な僕は思う)ので、結果的にコレクション的にポジションになってしまう。
もちろん、単なるボロネーゼではなく修理を前提とした製法になっているところは安心材料だし、まぁ、東京近郊に住んでいるもしくは職場があればトレーディングポストで修理に出せばよいので、それほど心配する必要はないか。

幅そのものがタイトなのでアバディーンでも幅がゆるいなぁという人にはいいかもしれない。すこしかかとが大きめなので、足が薄かったり小さかったりする華奢な足よりは単純に幅が狭いという人に合いそう。

靴のデザインやラスト、プライスゾーンを考えると、20代で靴に目覚めた人や30代で定番じゃ物足りない感を覚える人向けかな。どちらかと言うとガチガチの靴屋よりもツープライススーツの最上級ラインあたりに置いてあるとしっくりとしそうな、って感じがしないでもない。
スタイルや製法は繊細なのに、ウエルト周りに少し無骨さが残っているのが残念。
定番ものに飽きが入りつつも、やっぱり靴は定番しか買えないという保守的な人がちょっとだけ外す靴という印象。違うデザインでもう一足買うか、と言われるとそれなら僕の足にはカンピドリオの方が良いかな。

2014年6月14日土曜日

REGAL W10BDJ 1st Report

先日購入した REGAL W10BDJ。
2014年春夏新作の純国産仕様フルブローグ。

トリッカーズのカントリーラインを思わせる外ハトメ仕様のフルブローグ。
アッパーとライニングは姫路のタンナー「山陽」、ソールは日本でも指折りの実力を持つと言われる「栃木レザー」のタンニンなめしダブルソール。

アメリカンを意識して日本に入ったブランドが、イギリスの古典的なデザインを取り入れて、日本の素材と技術で作った靴。
もうそれだけで「買い!」ですよこの靴。

型番がWから始まるため、リーガルシューズ専売モデル。百貨店でも買うことができる01DRCDと比べると手に入れやすいとは言えない。リーガルシューズの店員さんに聞いた限りでは他に同じラストのモデルが無いということなのでサイズがない場合は取り寄せて試着する必要が出てきそう。

リーガルはモデルによってサイズ感がバラバラなので、実際に履いてみないとわからないことが多い。W10BDJは01DRCDと比べるとハーフサイズ下げてちょうどに思える。

デザインはダブルソールの360度グッドイヤーウェルテッドを採用したカントリー目な外羽根フルブローグ。いわゆるロングウイングチップの2235NAとは異なり、こちらはヒールカウンターが独立しているタイプ。


ダブルソールということもあり、全体的に重厚な印象なので、ブラックだとしてもビジネスシーンには厳しいかも。

アッパーで使われているグレージング仕上げのキップは、これまでもBOSや一部のモデルで使われてきたけれど(おそらくコベントリーも同素材では)、中でも質の良い部分が使われているのではないかと思われる。
肌理が細かく、購入時点のノーメンテ状態でも結構つやがある。(出来上がりから僕の手元に来るまでのタイムラグが短かったのもある)
購入してから2ヶ月くらい、ほぼ毎週末に履いて10数回履きこんだ限りでは、シワがあまり深く入らない。

この靴のひとつのウリである栃木レザーのダブルソールは最初は堅いかとおもいきや、それほどでも無い気がする。ソールが全体的に薄めなシェットランドフォックスや01DRCDと比べれば確かに返りが悪いが、かかとがついてこないという程でもないので普段履き上問題にならなそう。
オープンチャネル仕上げでヒールの底面積も大きく、なんだか底からみるとチャーチの靴みたい。
コバの色抜けは思ったよりも早いかもしれない。
さすがにガシガシ外出しているので、つま先のヘリは早い。ソールも少し柔らかいのか、表面が削れるスピードは少し早いように思えるかも。
購入当初つま先が減るのはあたりまえだと思う。足が地面から離れる時、最後まで地面と接しているのはつま先なのだろうから、購入当初は歩き方に合うところまでは減るだろうと。

ライニングは鮮やかなブルーパープルといった感じで、抗菌仕様。どれだけ意味があるのかわからないけれど、まぁ、気休め程度だと思う。W13xシリーズのようにパンチ穴も開いていない極めてシンプルな作り。

フィッティングはボールジョイント周りがやや緩めに感じるものの、意外とかかとがコンパクトなのか造形がいいのかいい感じに隙間なくぴったりしている。
01DRCDよりハーフサイズ下げているためか、靴のデザインから来る印象よりもフィット感がいい。甲は01DRCDと比べると少し緩めだけれど、外羽根なせいか履口でフィットさせることができるためゆるい感じはしない。一番上ハトメでの羽根間隔があまりないので、ソールが沈むと少し緩く感じるかもれ入れない。
リーガルのカジュアル寄りのラインに共通して親指周りはかなりゆったり。初日はいつものごとく小指が多少キツイと感じたものの、2、3日でそれも無くなった。
僕は靴はややタイト目からスタートが好きなのでハーフサイズ下げているけれど、休日靴として厚手の靴下にゆったり目といういうのであればいつもの(01DRCDなどと同じ)サイズでも良いかもしれない。

一つひとつのパーツにこだわりを感じる中で、唯一ダメだと思うのが紐。
これまで買った靴の中でもっとも緩みやすい紐で、どうキツく縛っても100mも歩かないうちに緩む。縛り方が悪いのかなとは思いつつ、他の紐でここまで緩むものはないのでやっぱり合わない。
デザイン的にも無骨な靴に細めのスマートな紐はどうかと思う。チャーチのコンサルについているような太め丸紐の方が合いそう。


これだけMade in Japanで固められているので今回はクリームも国産のブートブラックで。All Japan体制ですよ。
写真を撮っていて気がついたのだけれど、ブートブラックは蓋を締めて止まる位置と瓶側のラベル位置が揃えてある。恐るべしジャパンブランド。

日本の市場って、同一ブランドで高いライン、安いラインをそろえてなんとなく高い方を売ろうとする傾向があるけれど、この手の靴クリームを買う人達のことを考えると、職人の勘と化学技術を投入した渾身のクリーム一本で勝負すればいいのになと思う。(それだと売れないの?)
本筋ブートブラックの他にシルバーラインやらハンズコラボとか結局どれも中途半端に感じてしまう。

購入後にはまず全体に軽くデリケートクリームを入れた。
ブートブラックのデリケートクリームはM.モゥブレイやサフィールと比べると水分が少なめな気がする。昔、学校で使ったチューブ入りのヤマト糊に近い感じ。これを全体に軽く塗ってからニュートラルのクリームを入れる。

ブートブラックのクリームはサフィールと違い乳化性で水々しさも感じるクリームなので、デリケートクリーム無しでもいいかもしれない。僕自身は靴のメンテそのものが趣味なのでデリケートクリームやレノベイタークリームを塗ったりするけれど、この手の靴はシンプルメンテでもいいのかなぁ。
初回はクリームがさすがに良く入った。まず1順目は米粒5から6粒程度を塗り、メダリオンに詰まったクリームを取り除くために軽くブラッシング。1日おいてもう少し少ない量を塗りこむ。2、3日ほったらかしてから履いてみた。

あとは2週間に1度くらいクリームを薄塗りしていたら、2ヶ月くらいで結構いい感じに湿り気感が出てきた。あまり新品ピカピカよりも少し(自然についた)傷や汚れがあるくらいのほうがこの靴らしさが出る感じがするので、これからは少しクリーム頻度を減らして様子を見てみようと思う。


フルブローグの靴はブラウンでもブラックでもカジュアルに使いやすいので1足あると便利。特にW10BDJのような重厚感があるものはジーンズにも合うし、ジャケパンにも使いまわせる(と思う)。
ちょっと暑苦しさは残るものの、結構薄手の色なので夏でもまぁ変な感じでもないだろう。
グッドイヤーウェルテッドなのでソールが減ることもあまり心配しなくても良いかも。ただ、オールソールの際に同じ栃木レザーになるかどうか、今後の展開次第なのかな。

リーガルは革靴のリーディングカンパニーとして多くの従業員を抱えているがゆえに、国内での大きな市場に向けた安価なラインも展開しなければ会社の経営上立ち行かなくなってしまう。それが安物ブランドっぽさを与えてしまうのだけれど、上級(あくまでもリーガルの中で、という意味)ラインでは昨年の01DRCDといいこのW10BDJといいときどき渾身の作が出てくる。ぜひこういうラインを単なるイヤーモデルにしないで、長く定番化するように期待したい。未だ2235NAだけが誰もが知る定番みたいな立ち位置ってどうかと思うので。
否定されるのを覚悟でいうなら、01DR/02DR/03DRはチャーチの「コンサル」「ディプロマット」「チェットウインド」に相当する極めて正統なラインナップだと思う。ソールの薄さなど少し安っぽさがある気がしないでもないけれど、ビジネスユースとしてはデザインと価格のバランスが良いし。W121等のBOSラストを使ったモデルももっと評価されていいと思う。
その上でカジュアルラインとして2235NA/2236NA、そしてこのW10BDJと、これだけ揃えれば靴は十分という気がしないでもない。

2014年4月27日日曜日

靴を買いました - REGAL W10BDJ -

ひさしぶりにREGALで靴を買いました。


ついでにクリームも。

REGAL春夏の新作はノーチェックで、たまたま靴紐を買いに行ったら気になるモデルが出ていた。(01DRCDと全く同じパターン)

去年の01DR/02DR/03DRはビジネスシューズとしてど真ん中ラインナップだったけれど、今回のW10BDJはカジュアルシューズとしてかなり気合の入ったモデルだと思う。
(今回はW番台なのでリーガルシューズ専売モデル)

今回、あえてクリームを新調したのもこのモデルの特徴に合わせてのこと。
詳細はある程度履きこんでから書こうと思っているけれど、少しだけ。

W10BDJは、国内タンナーで革を調達し、国内の工場で作った靴。
アッパーとライニングは姫路のタンナー「山陽」のグレージング仕上げのキップ、ソールは「栃木レザー」のタンニンなめしのダブルソール。
ライニングにこんな風に書いてある。
これ自体、リーガルでも初めての試みだと思う。
ここに来てリーガルは栃木レザーを表に出している。REGAL TOKYOの10周年記念モデルもソールは栃木レザーを謳っている。

これほど「欲しい」と思ったモデルはひさしぶり。

実はそろそろ2235NAを買おうと思ったいたのだけれど、ちょっと手持ちの服装に合わせづらいとも思って延びのびになっていたところに登場。

デザインはややトリッカーズを意識したような感じもするけれど、これはこれでありでしょう。10年、20年大切にしたいモデル。

それにしても相変わらずREGALのホームページは情報量が少ない。
特に、注目が高い栃木レザーを使っているということが公式ホームページからではわからないし、まだ(4月27日時点で)公式通販にも載っていない。うーん、なんだかビジネスチャンスを逃しているんじゃないだろうか。製造が間に合っていないのだろうか。

ひさびさにリーガルで個人的大ヒットの新作が出たので浮かれてしまった。
こんなノリでビジネスラインも拡充してくれるといいなと期待してしまう。シェットランドフォックスやREGAL TOKYOとかぶるラインはマーケティング的に難しいところもあるだろうけれど、全国で買えるREGALブランドだからこそ大いに期待しちゃうわけです。


--------

2014年4月12日土曜日

雨に降られた靴をケアしてみた - Shetland Fox Glasgow -

ひどい雨に降られました。

シェットランドフォックスのグラスゴー3048SF。
さすがの大雨で、ほとんど水たまりを歩いていたようなものだったので靴の中まで結構水が入ってしまった。

外で濡れて、オフィスに少し戻って、また外で濡れての繰り返しだったので、革靴には相当過酷な環境だっただろう。

家に帰り、その日はまずキッチンペーパーを水で濡らして軽く汚れを落としておく。
キーパーは入れず、靴底に空気が通るように立てかけておいた。
キーパーなしでこういう状態にすると型崩れし易いという話も聞くけど、他にやりようが無いのでいつもこうしている。

次の日見てみると、しばらくトウの部分にクリームを多く塗っていたせいか、ボコボコとしたシミが目立っている。
よく見ると塩も吹いてしまっている。
お手入れの際に堅く絞ったタオルで拭うため、それほどヒドイ塩吹きでは無いと思うけど、やっぱりびしょ濡れになるとどうしても出てしまう。
こうなると、単にクリームを塗るだけでは元に戻らないので、気合を入れてお手入れする必要がある。

まずはこのボコボコを解消するため、42度のお湯でやや緩めに絞ったタオルを被せて5分ほど置いておいた。

これだけで、かなり状態が緩和された。(と、この時点では思っていた)
物の本を読むに、このボコボコした状態は、革の内部の塩分がアッパーの蝋分のせいで外に出られず、中でたまっているという。だったら表面の蝋分を溶かしつつ、浸透圧の関係で塩を抜く方法がいいのではないかと思う。

その後、ステインリムーバをキッチンタオルにたっぷりつけて、表面を軽くなでなでする。なんとなくだけど、浮いた塩分などの不純物が取れるんじゃないかという気がする。
また、ステインリムーバの効果を示した図を見ると、汚れが浮き上がる効果があるわけで、次のステップの下準備だと思ってやっている。

その後もう一度軽く絞ったタオルを被せて20分くらい置いておく。

これでほとんど元通り、一部残ったボコボコを水を濡らしたティッシュでならす。
これも10分くらい置いて終了。

前日にたっぷり水を吸って、さっきまでタオルをかぶせていたので表面はまだしっとりしている。
ここでサフィールノワールレノベイタークリームをたっぷり塗りこむ。

よくサドルソープで洗うとき、泡を流しすぎないというのがある。これはサドルソープに含まれている保革成分を残すという理由。
やっぱり濡れた状態から乾く過程で脂分が不足していると硬くなりやすいのではないかと思い、ここでクリームを入れておいた。

デリケートクリームではなくレノベイターを入れるのは、蝋分が少し含まれているから。乾燥速度がデリケートクリームより遅くなることで、より革へのダメージが少なく元の状態に戻せるのではないかという勝手な妄想。


レノベイタークリームを塗り終えたら、軽くブラッシングしてクリームを均質にならしたらキーパーを抜いて一晩放っておく。


翌日見てみると、出るわ出るわ塩がまだ表面に出てくる。
昨晩の段階でもアッパーはまだ湿っていたわけで、乾燥の過程で残りの塩分がうっすらと表面に上がってきている。

靴には人間の汗に含まれる塩分が溜まるという。雨に濡れるとこのたまった塩分が表に出てくる。
逆に言えば「晴れの日しか履かない靴」というのは塩分が外にでる機会が無いのではないだろうか。濡らさない、洗わないと極度に水を恐れているとこの「定期的な塩抜き」が無いため、かえって靴が傷んでしまいそう。
やっぱり雨に降られるということはマイナスだけではないのではないかなと思えてくる。

もう一度タオル掛けて置いておいたらなんだかまた表面にシワが出てしまった。
相当汚れがたまっているのかなぁ。


塩抜きという観点でいえば、靴を丸洗いしてしまうのがいちばんだと思う。

というわけで革靴を水洗いしてみることにしました。

(※ここからは完全に僕個人の趣味の世界なので、高級靴や思い出の靴などをお持ちの方は専門の業者さんにご相談されることを強くおすすめします。※)

まずは、表面の汚れ落としも兼ねて、水をかけながら指で表面をなでなでする。
さすがに脂分が染み込んでいることもあり、この段階では表面はほとんど水を弾く。

ある程度表面の汚れ落としが終わったら、洗剤などは使わず、単純に水の中にドボン。

元々の目的は表面のボコジミ抜きなので。
10分くらい漬けておくと、水がうっすらと茶色になる。
その後よくすすいでまた水を張っての繰り返しを3回くらい。回数には特に意味がありません。洗濯機のすすぎが最大3回だったので。

すすぎの時に、つま先に溜まっていたホコリの固まりがどんどん出てきた。
ふだんのメンテナンスでは取りきれない奥の方に詰まっていたホコリが水で浮いて剥がれたっぽい。

ある程度塩が抜けたかなと思ったあたりで
花王のエマール。
おしゃれ着用の中性洗剤なので、とりあえずダメージ少なめの処方がされているのではないかと勝手な推測で。
サドルソープはアルカリ性の溶液なので革にはよくないのではないかという記事を読んでから使う気がしなくなってしまった。これだけサドルソープを使っている人がいるのだから、きちんと使えば問題無いとは思うけど、「ブーツ」ソープではなくて「サドル」ソープなんだよなぁ。(たまたま歴史的に呼び方が定着しているだけなのだろうか)

革の性質からすると弱酸性が良さそうだけれど、酸化を助長してハトメが錆びたりするとそれはそれなので、真ん中とって中性洗剤に。
これをサドルソープ用のスポンジに少量付けて泡立たせ、アッパーや靴の内部を軽く洗う。

洗い終わったらよくすすぐ。
風呂場のシャワーでこれでもかというくらい水を掛けて泡立ちが全くないくらいまで洗剤を落とし、一度繊維の奥に残った洗剤を抜くためつけ置き。最後にシャワーで全体を流して終了。

乾いたタオルで内側の水分を吸い取り、アッパーの水気も取る。
ウェルトのあたりはキッチンペーパーを使ってていねいに水気を取り除く。
ある程度取れたらキッチンペーパーを中に詰める。
だいたい片足で14、5枚くらい。
ちなみに、僕はいろいろキッチンペーパーを使うので、1ロール近い量を使ってしまうのだけれど、このコストは50円以下。かける価値があると思う。

この時点でだいぶ表面が戻ってきた感じがする。
この時点でボコシミは目立たない(ほとんどなくなっている)
最初30分くらいしたところでいったんキッチンペーパーを詰め替える。
新しいものを使っても良いけれど、後ろの方に詰めたものはほとんど水気がないので、入れ替えるくらいで十分かも。その後は一晩風呂場に置いておいた。
ちょうどうちの風呂場は24H換気の空気が通るため、つねに微風の環境にある。

10時間くらい経って見てみると、表面はそこそこ乾燥していた。さっそく取り出して中のキッチンペーパーを取り除く。
さすがに内側はまだ湿っていたので、カビ防止も兼ねて軽く日光に当てることにした。

まず最初に保湿のためサフィールノワールのデリケートクリームを全体に軽く塗って、キーパーは入れずに天日干し。特に靴の内側に陽がさすように靴を置いておいた。
およそ2時間くらいたったら今度はレノベイタークリームを少し多めに塗って、ていねいにブラッシングしてからキーパーをセット。ソールにも少しコンディショナーを塗ってまたしばらく置いておく。

全体が表面的に乾いたところでいつものサフィールノワールクレム1925のブラックを薄塗り。
ウェルト部分にも少しクリームを入れて、コバはコバインキで塗り直した。
表面がリセットされているせいなのか、ブラッシングをていねいにすると、いい感じに。

ここでふと思うのだが、インソールやライニングの脂分も水洗いで抜けてしまっているわけで、それはどう補給したら良いのだろう?とりあえずデリケートクリームを超薄塗りしてみたけど、インソールは水分をよく吸うので上手く塗れない。この辺りのケアはノウハウを豊富に持つ専門の業者さんに一日の長があると思う。自己流は思わぬ落とし穴があるかもしれない。

半日おいてから最後のお手入れ。
もう一度クレム1925を薄塗して、ブラッシング、ウエスでよく磨く。

完成。
トウのシミもなくなり、チプリア独特のつややかな感じが復活。
チプリアはクレム1925だけでも結構光る。写真だと少しわかりづらいのだけれど、水飴のような感じ。クリームオンリーなのでひび割れなどの不安も少し少ない。

念のため数日間は部屋の片隅あたりに放っておく予定。表面はほぼ乾いていても、おそらく中のコルクだとかヒールの積上部分だとかはまだ湿っているはずなので。

ふぅ。今回は結構手間だった。


--------
レノベイタークリーム。万能クリームなのでひとつあってもよいかも。




クレム1925。いまのところベストクリームかと。


2014年4月1日火曜日

Shetland Fox 3055SF ABERDEEN

いままで何度も下書きを更新しては、なかなか公開の機会が無かったシェットランドフォックスで最もエレガントでないかと思う靴。アバディーン(Aberdeen)

細め、低め、ロングノーズのチゼルトウ。
ここまで行くとアバディーンというよりはトリエステ(Trieste)という感じなのだけど、まぁネーミングなんてどうでもいいか。
新宿のイセタンメンズでも売っていて、確か八重洲のリーガルシューズでも見かけたような気がするので、グラスゴーに次いで手に入りやすい(=試着しやすい)靴だと思う。
日比谷のシェットランドフォックスでは30代のリピートが多いそうだ。確かに、一見細身のロングノーズに見えて、実は細すぎないという絶妙なバランスが合うのかもしれない。

前回のペルフェットのパラティーノとほぼ同じコンセプト。
ただ、パラティーノは縫製の感じも含めてイタリアンなエロさを感じるのに対して、アバディーンは日本の工業製品っぽいめちゃくちゃ真面目な雰囲気。REGAL TOKYOのホームページでも紹介されているように、細い糸でピッチの狭いミシン、にじみのないソールのステイン仕上げ、少しひねったカウンターの仕上げなど随所にていねいさが現れている。パラティーノとのデザイン上の大きな違いはハトメ。こちらは6穴で左右のハトメ間もかなり小ぶりにできている。

履いた感じではパラティーノ5.5とアバディーン6がほぼ同じ感じで、同じシェットランドフォックスだとインバネスと同サイズでボールガースがややタイトなフィット、グラスゴーと同サイズで全体の周囲が結構小ぶりという印象。レースの開き具合は「アバディーン>インバネス>>グラスゴー=エジンバラ」といったところか。羽根の開きを気にする人は少し厳しいかもしれない。

正面から見ると峰がかなり内側に寄っていて、そのためなのか甲の外側がややタイト。
人間の足の形を見るに、靴の峰を内側に寄せれば寄せるほどフィット感が良くなりそうに思えるけど、やり過ぎるとかなり格好悪い靴になってしまいそう。各社この辺りはいろいろ工夫しているポイントになっている。ペルフェットのパラティーノは中心はそれほどずらさず外側を大胆に削っている感じで、ソフィスアンドソリッドS701は靴全体をくの字型にして羽の左右の高さを変えている(外側がかなり低い)。
参考までにペルフェットのパラティーノ。
峰は中心にあるが、外側をかなり削っている印象。

シェットランドフォックスは甲の部分で峰を結構内側に持ってきて、全体では親指方向に少し振っている。
このため親指が一番長い僕の足でも親指側があたることが無い。似たような形のオードリー(337E)と比べて指周りのゆとりがある。日本のブランドだけにエジプト型の足にも対応できるように仕上げられているような感じだ。

シェットランドフォックスの中では最も薄め(だと思う。ブリストルはまだ未体験)のラスト。REGAL TOKYOのホームページではグラスゴーに似た感じと書いてあったけれど、グラスゴーより遥かに薄くてコンパクトな印象。インステップガースは5mmから1cmくらい小さいのではないかと思えてくるほど。
指先のあたる感じは意外やインバネスのように左足の小指が窮屈というわけでもない。土踏まずは全体的に強い突き上げを感じないが、足のアーチに沿ってそっと触れる程度。これはシェットランドフォックス(というかリーガル)に共通していると思う。ビンビンに押してくるペルフェットと比べると物足りないかもしれない。健康上どちらが良いのかは知らないけれど、長時間履いているとあまり土踏まずがタイトでないほうが楽な気もする。
インソールのフットプリントを見ると、やっぱり大きい左足の小指が少し外側にはみ出している。インバネスでも小指にややアタリを感じてはいるものの、こちらははみ出していないので、同じEE表記はされているものの、同ブランド他モデルより少し細めなのかもしれない。(しかし前述のようにこなれてきた後はなぜかインバネスより小指が楽)
サイズとしてはEEなので、ボールジョイントの幅は少しゆとりがある。ウイズEのソフィスアンドソリッドS701を履くと、結構ボールジョイントがタイトな感じを受けるので、やっぱりアバディーンはEEなんだなと感じる。
前回のペルフェットのパラティーノと比較すると、ボールジョイント周りはほぼ同じ位だと思うが、トウにかけての絞り込みはアバディーンのほうが緩い、というか少しつま先よりにあると思える。これは右足の小指に対する圧迫感がまるで違うことで気づいた。僕の場合は足長は左のほうが長いので、通常は左足のほうが違和感を感じることが多いが、幅は若干であるけれど右のほうがあるため、右足に違和感を感じる靴というのは捨て寸に入るところが小さいのだと予想される。

この靴は毎朝履くときにはかなりタイトな感じがするが、しばらく経つと足がなれるのか、むしろ程よくぴったり感に変わる。履き始めからいままで(通算30回くらい着用)この靴は一切タコになることがないので、キツイように思えて意外にぴったりなのかもしれない。違和感を感じやすい小指についても、長時間履いていてもダメージを感じない。もともと僕はシェットランドフォックスの靴では全体的に靴ずれが起きにくい。指の上部に靴ずれが起きたのはインバネス購入当初くらい。逆にヒドかったのはリーガルW131とペルフェットLGW3001というショートノーズモデル。前者はかかと外側にかなりヒドイマメができた(いまでもわりと残っている)。後者はかかとと指にアタリを感じる。両社ともに他の靴に比べショートノーズ。ひょっとしてこの手の靴は捨て寸短い分、ワンサイズ上げるべきだったのかもしれない。
基本的に僕は小さい方の右足ジャストフィットで購入するため、馴染むまではわりと強烈に、馴染んだ後でもなんとなく左足のほうが違和感を感じることが多い。履きこむとソールが多少沈むことと、靴が指にあって多少の変形をすることもあり、左足ジャストに合わせるより長い目で見ると結局はマトモになることが多い。

このアバディーンは内羽根と外羽根で少し印象が変わって、外羽根(3054SF)はインステップが細いのか履口が結構笑ってしまう。かかとも言われるほどコンパクトさを感じない(履口が開いちゃっているからかもしれない)。アバディーンは最初にこの外羽根Vチップを買ったため、あまり合わないラストと思っていたが、内羽根を買ってみたら結構合っていたので意外だった。
エジンバラもそうだけれど、包み込まれる感じは同一ラストの時は内羽根のほうが強く感じることが多い。ひょっとしたらデザインによって釣り込みに差が出ているのか、羽根の構造上なんらかの違いがあるのかもしれない。

アッパーはもう日本でおなじみ仏アノネイ社ボカルー。なんか国産4万円台クラスの定番なんじゃないかという気がしてくるほどよく見かける。イルチアなきいまとなっては、このプライスゾーンの国産靴のアッパーはアノネイかウエインハイムレダーかどちらか。アノネイのボカルーはその透明感のあるブラックの評価が高いが、実は雨に降られてもきちんとメンテナンスするとわりとしなやかさを戻すので、お手入れ次第では実用範囲が広く、コストパフォーマンスが高いと思う。(僕は好きだ)
手入れがうまくいかないと少し曇った感じになる。僕の場合は雨に降られることもあるし、お手入れの際に堅く絞ったタオルで拭くことがおおいので、染料が抜けてしまうのかも。
世界的に質の低下が言われている皮革素材だけれど、僕のように違いがあまりわからない人にとっては十分満足ができる。雨に弱いと言われるものの、きちんと乾かしてクリームぬりぬりすると結構戻るし、お値段的にもダメージが少ないので、本当に使い勝手が良いと思う。
右にちらっと見えるのがイルチアのラディカによるパラティーノ。色合いが全然違う。

靴底は仕上げの見た目通り、おろしたてはかなり滑る。このあたりはクロケットのオードリーに似ているかも。ちなみにロングノーズのせいか当初つま先が勢い良く減る。ある程度履きこむと減り具合も落ち着くのだけれど、この手のロングノーズはつま先補修までの期間が結構短くなる覚悟が必要か。つま先修理位ならそれほどコストも掛からないので、最初からスチール入れるよりはすり減ってから補修をするというのが僕のパターン。

アバディーンはリーガルの公式通販で見るとなんだかやたらシャープなロングノーズに見えるけれど、実物はそこまででないように思える。確かにトウの先端はかなり薄くて本当にチゼルっぽいのだけれど、キャップが大きめだからか、僕がロングノーズに見慣れたからかちょっと長いだけという感じ。どちらかというと「低い(=薄い)」という印象のほうが強い。

アバディーンの良さは「ミリ単位で修正を加えながら完成された木型」だという。でもこれ当たり前じゃないの。センチ単位で作られたらたまらん。靴のサイズは0.5cm(つまり、ミリ)単位で販売されているのだから。もっと木型の特徴がわかると試し履きするときに参考になるのに。アルフレッド・サージェントのホームページはラストごとの概形が載っていたりして、すでに1モデル持っていればなんとなく他のラストのイメージくらいはできる。靴は試し履きして感性で買うからこそ、気になる部分に注意を注ぐことができる情報があればとってもありがたい。
それにしてもこのシェットランドフォックスにしてもペルフェットにしても、公式ホームページでラインナップを確認できないというのはどうかと思う。いくら公式通販サイトがあるとはいえ、ブランド公式のホームページで基本的な情報くらい入手したい。比較的情報のあるリーガル公式通販でも「ポカルー革」と書いてあって脱力する。"Vo"calouですよ。

ツリーはサルトレカミエSR300のサイズ38。シェットランドフォックス純正のバネ式だと心なしかかかとが大きいのではないかという気がする。
この純正シューツリーはケンジントンやエジンバラをベースに開発されているのではないかな。アバディーンの小さめかかとを広げてしまいそう(自分のかかとの形と比べると気のせいかもしれないけど...)

アバディーンは最初にリーガルのサイトでみた時は「うわ、いくらなんでもやり過ぎだよ」とあまり好意的に受け止めることは無かった。よくあるデザイン優先のロングノーズに形が似ているような気が。エッジも強烈に立っていて、かつロングノーズなため、古典的なラウンドトウ好きから見ると、異端な感じがありありして。
でも実際に店頭で見て見るとそんなにドギツイ印象でもなく、写真から受けるいやらしさはそれほど感じない。実際に履いてみると結構懐が広いラストな印象。僕は足のサイズが6なので履いてみるとたいしてロングにならない(身長比でバランスが良くなる)。靴のサイズと身長のバランスは結構重要で、足の小さい人がショートノーズを履くとマスオさんみたいになってしまうし、足の大きい人がロングノーズを履くとピエロになってしまう。
というわけで、この靴は、どちらかというと身長比で足の小さい人のほうが全体のバランスが取れるのではないかな。サイズも5から展開しているのはその辺りも考慮されているのだろうか。
シェットランドフォックスで唯一、キャップトウ、セミブローグ、プレーントウ(外羽根Vフロント、内羽根)という王道ラインナップが揃っていて、アッパーは上質かつ無難なボカルーを採用したモデル。小さめの足向けにはアバディーンで、大きめの足にはこちらもキャップトウ、セミブローグ、フルブローグ、ホールカットと定番ラインナップを擁するアーバインと分けているのかなぁ。

2014年3月1日土曜日

Perfetto PALATINO PT1X

最近はシェットランドフォックスばかり履いているので登板機会が減ってしまったのだけれど、思ったよりLGW3001へのアクセスが多い(全記事の中で前月3位)だったので気を良くしてペルフェットのパラティーノ(PALATINO)。
ペルフェットの評判通りのイメージなキャップトウ。

Palatinoとはローマ発祥の地と言われるパラティーノの丘から取っているのかな。レースアップシューズの基本形と言えるキャプトウにこの名前をつけていることからもイタリアンテイストを志向していることがよく分かる。

ロングノーズ、ボールジョイントからインステップまわりの甲の低さ、やや丸みのあるスクエアなチゼルトウとかなり攻めているデザイン。サイドのエッジは初めて見た時「これは箱か!」とツッコミを入れたくなるくらいの絶壁で、同じようにエッジが効いているシェットランドフォックスのアバディーンの上をいく。(ように見える)
73チャーチにこだわりがある人とか、ロイドのホワイトホールが好きな人が見たら視界から外すレベル。

この手のややロングチゼルトウは、一歩間違えると靴だけが主張して、ややもすると安っぽいトンガリ靴になってしまいがちだけれど、パラティーノはそのギリギリのラインを守っているように見える。これがまた細身のスーツによく似合う。

ブランド名の通り、イタリア製グッドイヤーの靴と見た目の方向性が似ていると思う時がある。ストール・マンテラッシみたいな。(言い過ぎ?)
ペルフェットを作っているビナセーコーは海外進出も頑張っているようで、そのフィードバックがあるのか国産靴なのに色気が強い。
フィドルバック、ヒドゥンチャネル仕上げ、凝ったステイン仕上げ、つま先の釘打ちと僕のような初級レベルの靴マニアを喜ばせる仕掛けが随所に見られる。アッパーにイルチア社ラディカを使ったモデルはソールは赤系、それ以外のモデルは茶色系。ライニングもボルドーで、ロゴも格好いい。

最近では「原点回帰」みたいな風潮でショートノーズのラウンドトウが復権しつつあるけれど、そんなことお構いなしにイタ的エレガントを目指す靴。
このペルフェット、LGW3001ではソールの仕上げがイマイチなのに、パラティーノは同じブランドとは思えないくらいとても綺麗に仕上がっている。というか、ここまで凝っているソールはあまり見かけない。土踏まずからかかとにかけての造形はLGW3001に似ているけれど、パラティーノのほうがソール前半分が無駄に凝っている。パラティーノやカンピドリオなど、ローマの丘シリーズ(勝手に命名)はソールへのこだわりが半端ない。
(買った時にとっておいた写真。いまは少しふやけてしまいちょっとみすぼらしいので写真は省略)

足入れした感じでは、冒頭二枚目の写真でも見てわかるくらいボールジョイントのあたりがかなり低めで、これはアバディーンに似ている。インステップガースが低めなので、全体的に足が薄い人向け。僕はシェットランドフォックスのグラスゴーだとほぼ羽根が閉じるけど、パラティーノは1cmくらい開く。甲の高い人だと羽根が相当開くか、下手をすると入らないのではないかな。
トウに向けての造形はアバディーンと似ている。ロングノーズであるけれど必ずしもギリシア型の足向けというわけでもなく、エジプト型の僕が履いても違和感があまりない。ボールガースが小さめなので、ここでしっかり抑えられていれば指先の形はあまり関係ないかもしれない。
外側(小指側)は見た目ほどタイトではなく、こちらもまた捨て寸が多いのでLGW3001よりゆとりがある。やっぱり足長が長い左足のほうが少し窮屈なのだけれど、タコが出来る程でもないのでたぶんジャストフィットなのだろう。

土踏まずは盛り上がりを感じるもののLGW3001ほどではない。(製造誤差かも知れない)
かかと周りはコンパクト。カップも少しばかり小さめなのか食いつく感じがする。ただインステップの底面をやや広く取っているのか「細い」と言われるラストでかかとが小さい靴にありがちな履き口が笑うことが無い。これはペルフェット全体的に言えることで、単純に「細い」ラストではない感じ。このインステップの造形はアバディーンともっとも異なるところに思える。(僕はアバディーンだと内羽根式でちょっと、外羽根式だとわりと履口が笑う)
ちなみにかかとはアバディーンより食いつきがよく、ヒールカップの形状が個人的にドンピシャ感。LGW3001だとかかと外側にアタリを感じるけれど、パラティーノにはそれがない。

とてもメリハリが効いたラストで、ボールジョイントとかかとの三点で足の位置をしっかりと決めて、甲で足に一体化させる作り。いままで履いた靴の中でもトップを争う出来栄え。(最大のライバルはシェットランドフォックスのケンジントン。同じビナセーコー製ですね)

アッパーはもう手に入らないかもしれないイルチア社ラディカ。艷やかで色気のある感じがこれまたこの靴のデザインに良く合っている。

ラディカについては過去にも書いたけれど、メンテナンスを繰り返すうちに何とも言えない艶が出てくる。表面が艶やかなブラックなのに立体的に感じるのが特徴のアッパー。純粋な「深みのあるブラック」ではないので好みが分かれそう。
「水墨画のよう」と言われるその風合いはニュートラルで手入れをし続けると赤みが、ブラックを使うと御影石のような感じになる。手入れ方法よりも方針で悩む革。僕は他のラディカ靴よりはブラックの頻度を上げている。黒くなりすぎた時にニュートラルで少し落とすような感じ。クリームはもはや定番とも言えるサフィールノワールクレム1925。

サイズ感はアメリカサイズと言うよりはイギリスサイズで考えたほうが良いところもケンジントンと似ている。アバディーンよりハーフサイズ下げると近いかも。

シューツリーは当初サルトレカミエSR200を使っていたが正直あまり合っていない気がする。どうしてもボールジョイント内側が足りない。このサルトレカミエSR200、買って1ヶ月もしないうちにバネが壊れた(よほど力を掛けてギシギシいって縮むみたいな)。ハズレを踏んでしまったのだろうけど、国産ブランドでも海外製造は管理がしっかりされていないとやっぱり不良品出るよなぁ。「安かろう悪かろう」とまではいかないにしても「安かろうあんまり良く無かろう」といったところか。ノウハウの蓄積とともにクオリティの向上に期待します。いまのところサルトレカミエならSR300一択か。この靴にはいまはたまたま余っていた同じサルトレカミエのSR100をつかっている。SR200の時よりバネ縮んでいるので、おそらく先頭が少し詰まっているのだろう。その分ボールジョイント周りの革が伸びてシワが目立ちにくくなっている。

LGW3001の時も書いたように、ペルフェットはいい靴なのだけれど、入手が困難なことが問題。
僕はたまたま東京に住んでいるので、イセタンメンズでもWFGでもクインクラシコでも行けば試着もできるし買うこともできる。丸の内や有楽町、神宮前に行ける人なら通販じゃなくて店頭での試し履きがオススメ。靴は三次元の構造なのに長さ以外で選択できる余地がないので、買うべきか否かのポイントとなる甲の締め付け具合や指先の自由度、かかとのつかみ具合は履いてみるまでわからない。
よく「日本人の足型」なんて平気でいう人がいるが、そう言う人が着ているスーツは身長だけではなくドロップも選んだのではないだろうか。「日本人の体型」なんて言って、スーツのドロップやウエストサイズが1種類になることはないんだし。
靴の場合はウイズ設定が1種類しか無いことが多く。そのラストが「合うか、合わないか」しか選択基準がなくて、いくら気に入ったデザインでも合わなければ諦めるしかない。僕はクロケットアンドジョーンズのオードリーやベルグレイヴは最高に格好良い靴だと思うけれど、337ラストだと履口が結構余る。国産ではシェットランドフォックスのアーバインはデザインど真ん中だけど、やっぱり合わない(これはサイズを上手く選べばいけるかもしれない)

ペルフェットは通販でも買えるので、一度自分に合うサイズがわかれば同じラストのものなら買い増しは試着なしでもできる。ただやっぱりラストが違う新しいデザインを通販で買うのは勇気がいる。同じペルフェットでもレギュラーモデルとクインクラシコのダブルネームとでは全くラストが違うので同サイズでも参考にならない。レギュラーモデルどうしでも甲のフィット感は違うので試し履き無しに買うのは勇気がいる。シェットランドフォックスでもケンジントンとアバディーンとアーバインとでは同サイズでも全く参考にならないのと同じ。(これは工場が違うので当然と思うけど、ラストはリーガルが作っているんだろうし)

そしてもうひとつ。
この靴は格好良い靴なのでローテーションに入れにくい。
ビスポークチックな攻めたデザインでおまけに艷やかなラディカといかにもな靴なので、真面目なビジネスシーンよりも合コンとかパーティに似合いそう。(いまとなっては縁のないシチュエーションだ...)

ビジネスユースの観点では、同じラディカならシェットランドフォックスの501Fのほうがノーズが短く嫌味がないし、逆に同じロングノーズなら3055SFのほうがアッパーの主張が控えめで使いやすい(考えすぎ?)。
パラティーノは同じモデルで革違い(たぶんデュプイかウエインハイムレダー)があるので、そっちのほうがビジネスシーンでは使いやすいかも。

この靴はビジネスシューズというよりはドレスシューズ。やっぱり場を選ぶよなぁ...

----

2014年2月16日日曜日

REGAL W134CB

BOS (Built to Order System)のラストを使った一般モデル。
ラウンドトウのプレーントウ。日本全国で比較的買いやすいベーシックなモデル。

W134はリーガルでのウイズ表記がD、JIS基準でEらしい。ちょっと英国靴っぽい表記のしかたが紛らわしい。(そのくせレングスは24みたいに日本式だし)

購入した当時「靴はキツくて足が痛いくらいでもそのうちコルクが沈んで極上フィット」という話を真に受けて、相当キツ目を承知の上購入。実測ではEEの足周なので、購入当初はかなりキツかった。インソールを覗いてみると、小指が半分くらいソールからはみ出しているので、結果的にサイズがあっていなかったんだと思う。履き始めはあまりの甲の締め付け強さに歩けない程だった。まぁ、懲りずに履き続けたら少しコルクが沈んだのか、とりあえず薄手の靴下なら1日履けるようになった。痛さを乗り越えて極上のフィットというのは一部の靴をきちんと経験則に基いて将来のフィッティングから逆算した現在のフィッティングを出せるシューフィッターが見極めることで成り立つわけで、安易に言葉の上辺だけを捉えたフィッティングでは結局のところ妥協の産物になってしまう。

この反動で、その後3回ほど連続で緩めを買ってしまった。これもまた履きづらいので結局履かなくなる。その後至ったサイズ感は、普段履くものより薄手の靴下で靴を買いに行き、ほぼピッタリでありながらこの時点では締め付け過ぎではないように感じる靴(キツイではなく、ややタイトという感じ)を買うようにしている。これだと半年から1年くらい経って靴が足の形に合ってくると、ふつうから少し厚手の靴下を履くことが多いのでフィットする。

このW134は僕がサイズミスをしたとは思っているのだけれど、当時のリーガルシューズの店員さんもこのサイズで問題ないと言っていたので、ひょっとするとこのフィット感が本来の姿なのだろうかとも思うし、やっぱり違うとも思う。もう少し履けば結論が出るのかと思いつつ何年も経ってしまった。何かで聞いた話では、リーガルシューズでは最終的には顧客の意見を優先するみたいなことなので、最終判断は買い手に任せる雰囲気ががある。リーガルトーキョーでも基本的にはキツメを薦めてくるけど、最後はお客さん次第。日比谷のシェットランドフォックスもタイト目よりはジャスト目を薦めてくる(沈み込み等の経験則によるものであればある意味当たり前だけど)
ちなみに、伊勢丹メンズは緩めの靴を履いている店員さんが多い。ハーフサイズくらい緩い靴を履いている人にフィッティングをしてもらうとその意見が少し心配。革靴はじめの数足は仕方ないところもあるけれど、やっぱり自分がピッタリだと思う靴を履いていって、それを基準にサイズ表記を無視して感覚で買ったほうがいいと思う。

さてこのW131、アッパーは国産キップ。平均的なビジネスマンのビジネスシューズ素材としてみたらコストやお手入れ頻度などを考えるとベストバランスだと思う。

さすがにアノネイやウエインハイムレダーと比べるとシワの入り方も含めたきめ細かさや、光沢のでかたに差があるとは思うけれど、それなりにメンテナンスしていると柔らかな革になる。スムーズレザーを感じながら雨にも強く、少しお手入れが雑でもひび割れもしにくい丈夫で実用的な素材だと思う。
やや大味なシワが入るので、人によってはそこが受け入れられないかもしれない。でもやっぱりリーガル伝統の「丈夫で長持ち」を地で行くビジネスライン。

リーガルお得意のゴテゴテしたウエルトではなく、ビジネスシーンに合わせやすい上品さもある靴。エレガンスでは無いけれど、ていねいさと丈夫さを兼ね備えているところは工業製品として見れば見るほど日本人が作った靴という感じがする。
価格的には靴好きな人からみると廉価版クラスかも知れないが、4万円近いプライスは一般的には十分高級クラス。
フラッグシップに近いBOSモデルをベースにしているので、一つひとつの作りがしっかりしていると思う。実際このW131も晴れの日も雨の日も履いて5年くらい経過するけれど、糸が切れたり形が崩れたりすることが無い。ソールの減りも少ない。(購入当初から2年目くらいまでは週1、それ以降は月2、3回くらいのローテーション。そろそろつま先補修かな)

僕の購入した時期からラスト形状がいまでも変わっていないとすればラストのできは01DRCDの方がいいと思う。正直DRCDシリーズが出たいまとなってはちょっと立ち位置が微妙なモデルになりつつあるのでは無いかと思う。アノネイあたりのほうが素材感で人気あるし。
履き心地は、もともと僕の足に対して小さいということもあり、先すぼみ感を感じる。かかとはわりと大きめなので、小さめのかかとの人だとフィット感が感じられないかもしれない。シェットランドフォックスが出る以前のリーガルは甲とかかとが大きいため、どうしてもそこのフィッティングを求めるとサイズを下げるかウイズを下げるかになり、結局先すぼみになってしまう(小指が大変なことになる)。このW134もそんな状態。Eウイズ(JISで言うEE)のW124だとどうなのだろう。今回はフィッティングについてはノーコメント。
真後ろから。
ペルフェットLGW3001のグラマラスなヒールカップと比べるとかなり直線的で、上部に向かっての絞り込みはほとんど無い。

それにしてもライニングのロゴはヒドイ。3万円を超える(値上げしたいまとなってはほぼ4万円の)靴でこのデザインはどうだろうか。ふつうにインペリアルグレードのロゴか、それをベースにしたほうが良かったのではないかと思う。このREGALなロゴを見るたびこのシリーズを買い増すという気が削がれた(いまはもう無くなった)。個人的にはBOSするなら間違いなくREGAL TOKYOで作ると思う。あっちのほうがインソールのデザイン無難だし。

ここまであまり高評価をしていないので悪い靴みたいな印象を受けるかもしれないけれど、この靴を単独でみるとレベルの高いいい靴だと思う。市販品でウイズ展開をしている点もリーガルの気合が感じられる。国産キップは他のメーカーでも4万円台モデルに使われているくらいで、素材のレベルが低いわけでは決して無いのだろうし。デザインも素材も普遍すぎて華がない、でも、だからこそ定番モデルとして長く履ける。まぁ無難といえば無難だし、下手に色気を出さないところがBOSラストモデルたる所以か。
ちょっと高いけど究極のベーシックモデルで、ラストが合えば万人にオススメできる。
プレーントウは(まっとうな)ビジネスシューズとしていの一番に挙げる人が多いけれど、意外と手に入りづらい。入手がし易い4万円で10年履けるプレーントウを探すとなるとほぼこのシリーズ(W124、W134、W144)一択になるのではないかと思えてくる。

ただこのBOSラストシリーズは、プレーントウは他にない優位さがあるけれど、それ以外のデザインはポジションが微妙なところが惜しいよなぁ。
4万円だとスコッチグレイン、大塚の百貨店モデル、ユニオンインペリアルあたりとかぶる。リーガル優位は全国のリーガルシューズでのリペアというところか。もしBOSがモデルチェンジしてケンジントンラストベースになったら面白そう。コベントリーも出したし、もういっその事リーガルはケンジントンを伝説のラストみたいに持ち上げて、スタンダードモデル統一しちゃえば良いのに。

あまり素材とかにこだわるとシェットランドフォックスとかぶってしまうので、あえて特別な個性を出さない無難モデルとして展開しているのかな。でもここまで無難だと店舗の現場では何をセールストークにしていいかわかりづらいですな。
いい靴だけど、この手の靴を欲しがる人はいろいろこだわりあるだろうから必然的にBOSになるのかな。この靴を購入した当時(たぶん5年くらい前)だとこういう無難な靴はリーガルではほとんど手に入らなかったので意味あるモデルだった。当時の上級ラインは数万円高いMade in ItalyシリーズとMade in Englandシリーズだったので、きちんと住み分けしていたとも言える。いまは同一価格帯でDRCDシリーズあるし、5千円から1万円プラスするとシェットランドフォックスがあるしで、積極的にこのモデルを選ぶ必然性が薄れていると思う。なんかBOSのサンプルシューズ的に在庫して、売れたら売るみたいな感じなのかな。まぁ、それはそれで戦略として意義があることにも思えるけど。