このブログは2013年5月に始めたので5年が経過した。
5年かかって書いた記事が65件、2016年以降は毎年ヒトケタしか書いていない。
コメント数は256。これには返信したものも含まれるので、いただいたコメントはその半数くらいとしても、こんなにものより多くのコメントがあったことはとても嬉しい。
書き始めたころは靴のレビューをするような内容が多かった。
僕は昔から革靴が好きだったということもあり、インターネットがいまほど普及していなかった時代には雑誌やムックなどを見ながら「いつかはストール・マンテラッシ」みたいな気分でいた。
誰もがインターネットをあたりまえのように使うようになり、個人でも情報を容易に発信できるようになるにつれ、レビューのような記事が増えてきて、読んでいてとても楽しかった。自分も書いてみようかなという軽い気持ちで Shoe* というこのブログを始めてみた。
2013年頃はそれほど革靴を詳細にレビューをするというブログがなかったのか、検索エンジンでも比較的上位に表示されることが多くなり、また、当時すでに有名だった Life Style Image さんで取り上げていただいたこともあり、ほぼ革靴のことしか書いていないニッチなブログにも関わらず、少しずつアクセスが増えてきた。
いまは別にスーツにブラウンの靴でもいいじゃん(というか、むしろお洒落扱い)、という意見が一般的だし、技術が進んで雨の日に適した靴もある。そういう世の中で「靴は黒」「天気は気にするな」というのは一歩間違えると老害ともいえる保守的な意見なのかもしれないと思うこともある。
僕は一介の「働くおじさん」なので、ビジネスシーンでの身なりはかなり保守的なほうが良いと思っているフシがある。社会って「相手がどう思うか」を考えずには成り立たないからこそ、最初は最も保守的なゾーンからいって、相手の素性がわかるにつれ違う面を見せる、みたいなほうがいいと思っている。
相手が真の洒落者であればあるほど、保守的なスタイルをうまくまとめている人を決して「個性がない」とは思わないだろうから。
巷には数多くの靴に関するブログやらサイトが立ち上がっていて、特に個人が趣味で書いているものは実体験に基づいていてとても参考になる。僕は科学的な分析だったり、実験的なものだったり、新しいことにチャレンジするような記事を見るとわくわくする。
Google+のコミュニティ「靴好きもそうでない人も、革靴について話そう。」に投稿される内容はとても興味深くて面白い。
この5年間、途中ほったらかしの時期もあったけれどいまでも続けているのは、やっぱり革靴というプロダクトになんか惹かれるものがあるという自分の内面と、コメントをいただく感動や、僕にはアクセス数という形でしか見えないけれどその数字ひとつひとつを築いてくれている読み手のみなさんのおかげだと思う。自分の興味あることについて表現する喜びを得たことこそがブログを始めて、書き続けてよかったと思う。
****
5年を境に、というわけでもないのだけれど、靴以外の話題をつらつらと書いてみようと思うこともあり、*nota というブログをはじめてみました。
こちらでは靴以外について自分の思っていることとか、気が付いたこととかノンジャンルでいってみようかと。
ただでさえ更新頻度が少ないこのブログに加えて、さてどれだけ更新されるのか...
2018年5月29日火曜日
2018年5月12日土曜日
革靴のお手入れ
前回は革靴の選び方を中心に書いてみましたが、今回は靴のお手入れについて思うことを書いてみようと思います。
お手入れの世界はそれこそ奥が深くて、僕をはじめとしたお手入れそのものが趣味の一つのような人もいれば、それを生業として日々スキルを磨いている方もいらっしゃいます。
頂点を目指すとストイックな領域に入ってしまいますが、一方でお手入れにそれほど時間をかけたくないと思う人が多いのも事実です。
僕自身もワイシャツはコットン100%でないとダメなたちなのに、アイロンがけは結構面倒だったりします。
なので、「そりゃキレイなほうが良いけど面倒なのよ」という人の気持ちもわからないでもないです。
そんななかで、社会人一年生になって初めて本格的にビジネスシューズを履くことになった人向けに、「こんな感じでどうかな」という一つの方法を考えてみました。
以下、いつもの文体で。
革靴のお手入れについてはそれこそ数多くの方法があって、どれももっともらしい理由があってややこしい。
ブラシと乾拭きだけで十分という立場もあれば、クリームを欲しがるだけ入れるという人もいるし、見栄えだけでなく保護のためにワックス必須という人もいれば、ワックスは靴に悪いという人もいる。
こういう議論は目的(ゴール)を決めて適切な評価軸に沿って論じないと結論が出ないのだけれど、お手入れそのものも趣味嗜好の世界な部分もあるので究極的には何らかのマニュアルを参考にしつつ自分の思うとおりにやれば良いとも思う。
ワックスを使うことで見栄えと靴の保護を両立させることができるのは、ときどききちんとワックスを落とすことができる人で、あまり時間をかけたくない人であれば被膜が傷ついてかえってみすぼらしくなったりひび割れの原因になってしまう。
お手入れに時間をかけることができれば前者のほう靴が長持ちするだろうし、そもそもそんな時間がない(興味もない)人であれば中途半端にワックスのせないほうが長持ちする。
ステインリムーバーやサドルソープも一部で科学的に論じられていることもあるけれど、メーカーが言う適切な方法で使っていて靴がダメになっていないという意見もあるので、使い方間違わなければそれほど悪影響は無いのではないかとも思う。
社会人になってスーツを着て革靴を履くような会社であれば、身につけるもののお手入れは必須。
身なりはその人の仕事能力そのものを表すものではないけれど、仕事に対する態度の一端を表すもの。相手に対して仕事のトータルクオリティ判断の一つにもなる。
身なりが汚い高級すし屋や割烹は見たことがない。おもてなしや礼節が重んじられるシーンになればなるほどそれ相応の身なりへの気配りが必要になる。
いくら数十万円のスーツを身につけていても、パンツに折り目がなかったりジャケットがしわだらけだったりしたらそのスーツが持つ本来の力を発揮できない。
逆に、つるしの19,800円のスーツだとしてもパンツはいつもプレスされていて、ジャケットは襟のロールがふんわりしていれば十分すぎるほど格好良い。
革靴についても、高級な靴ほど素材が持つ力がでるものの、一般的なビジネスシーンであればむしろ汚れが目立たないピカピカの靴のほうがお客様にも、上司にも、同期の異性にも評価が高いのは間違いない。
身だしなみに気を配るということはビジネスパーソンである以上、必須の行いともいえる。
靴のお手入れというと「面倒くさい」という印象があるかもしれないけれど、日々のタスクとしてはそれほどでもなく、それでいて周りの印象を良くできるのだから時間の費用対効果はいいと思う。
と、あれこれメンドクサイ理由付けを抜きにしても、身につけるものがきれいであるって単純に気持ちが良いって感じでしょうか。
そこで、お手入れは面倒だけれど、やっぱりきれいなほうがいいよな、という人向けに「いったい何をするの?」ということについて考えてみたい。
まず、用意するものから
買うものは
・大き目な馬毛のブラシ
・乳化性の靴クリーム
だけ、これ以外はひとまず不要。
お手入れが習慣化されてきたり、その行為自体に面白みを感じてきたらいろいろ追加すればいいと思う。
家にあるもので賄うのが
・使い古しのインナーシャツ(コットン100%のもの)
・使い古しのタオル
・使い古しの歯ブラシ
の3点。
ない場合は専用のお手入れグッズを購入してもよいと思う。
靴のお手入れに慣れてきて消費量が増えてきたら改めて入手方法を考えるくらいでいい。
あと、直接お手入れには関係ないけれど
・シューツリー
はあったほうが良いかも。
毎日のお手入れ
家について靴を脱いだら「大き目な馬毛のブラシ」で靴全体をサッサッとブラシ掛けする。汚れを落とすのが目的なので片足5秒もやれば十分だと思う。
5秒やろうとすると、思ったより汚れていれば10秒以上やるので、まずはブラシを手に取る習慣が大切。
そのうち、寝る前に歯磨きをしないと気持ち悪いのと同じように、靴を脱いだらブラシをかけないほうが気持ち悪くなる。
週に1回くらいのお手入れ
使い古しのタオルを濡らしてからしっかりと絞って、それで靴全体を優しく拭う。
目的は泥汚れなどを落とすこと。あまり神経質にゴシゴシする必要は無し。むしろあまり強い力でこすってしまうと革にダメージを与えかねないので、あくまでも拭う程度。
タオルに前回の靴クリームの色が移るようであればクリームを追加で塗らなくてもよい。
夏場はカビやすいので、お手入れが終わったら風通しの良いところにおいておく。
エアコンが効いている部屋の片隅あたりが良いのだけれど、家族がいる場合は難しいケースもあると思うので、その場合は玄関に置いておく。(シューズクローゼットには最低一晩は入れない)
1カ月から数カ月に1回くらいのお手入れ
使い古しのタオルで拭う際に色があまり移らないと感じたらクリームを塗る。
クリームは使い古しのインナーシャツに少量を取り、全体に薄く塗る。
たいていは塗りすぎる傾向になるので、意識的に少なめにして表面に薄い皮膜ができればよいという程度。目安は片足米粒5個くらい。
次に歯ブラシでこれまた少量のクリームを掬ってコバの部分にも塗り込んでおく。
最後に使い古しのインナーシャツのきれいな部分で靴全体を磨いておしまい。
全体で10分もあれば終わる。
もし時間に余裕があれば、インナーシャツで磨く最後の工程の前に30分くらいおいておいてもよいと思う。
靴の中を軽くウェットティッシュで拭いてもよいかもしれない。特につま先には埃がたまりやすいので。
ここまでやれば隣の同期と比べて何倍ものお手入れがされている状態になるので、わかる人が見ても好印象なスタイルが出来上がる。
もし、靴のお手入れそのものが楽しくなってきたのであれば、自分の靴なんだし好きなようにやっていけばよいと思う。小さな失敗はあるかれもしれないけれど、今はネットで先人の智慧を拝借できるので調べながらやれば大きな失敗は避けることができる。仮に失敗してしまってもそれが経験値となり、次に買う高級靴では同じ過ちを繰り返さないはず。
僕自身は靴のお手入れ自体は好きなものの、普段履きのビジネスシューズは日々の汚れ落としくらいで、ブラシをかけて拭いておくくらいで十分と思っている。
見た目を重視するならある程度クリームの塗り直しが必要であっても、単なる保革というのであればそう頻繁に塗る必要もないのかなと。
数ヶ月に1度もクリームを入れないと保革ができないというのであれば、デッドストックの革なんてボロボロで使えないじゃん、ということになってしまうし、ずっと塩水漬けだったロシアンカーフなんて商品価値が出るはずが無い。
乾燥は大敵、油分を切らさないようにというのはそのとおりではあるけれど、その頻度や量についてはクリーム屋さんの過剰なセールストークに乗せられているのではないかと思う。商品が多すぎて、何を買えばよいのかわからなくなってくる。
とはいえ、僕のようなお手入れ好きはお手入れすること自体も好きなので、靴を極端に悪くしないのであれば、必要十分以上と解っていても、何らかのお手入れをしたくなる時もある。
これは栄養に必要な物を過不足無く食べればいいじゃんという意見に対して、カロリー超過や特定の栄養素に偏っても美味しいものを食べる事自体に価値を持つのと同じではないかと。
ツールである靴に必要十分なお手入れをするだけでは味気なくて物足りない。目的が革本来の力を活かすのであれば過剰なお手入れは本来の革が持つ力を発揮できないだけでなく、時間と材料費の無駄だけれど、お手入れすることが楽しいというのであればそれを優先させても良いのではないかと。
よくあげられるメイクで言えば、肌のコンディションを整えたいということはあるけれど、それ以上にメイクをすることが自体が楽しい、みたいな。
クリーム屋さんが高額商品を次々に出す反動で、実はそれほどお手入れをしなくても良いという意見が強くなりつつあるのは、緩履きに対するタイトフィッティングと同じで後者のほうが「わかっていること人」的な位置づけになっているだけな気がする。
なので、僕は好きな時に好きなだけお手入れをする。
忙しいときはお手入れどころでもないのでお手入れの優先度が低い靴にクリームを塗るのは年に1回くらいになってしまうこともある。
履く頻度が高い靴は雨に降られる確率も高く、塩も出てくるので水洗いをする。そのため、きっちりお手入れする頻度も上がる。
結局、必要に応じて靴のお手入れがなされる、と。
人生、必要十分なことだけを費用対効果で考えるだけでは面白くない。
革靴のお手入れそのものが趣味ならば、明らかにダメにすること以外ならばやってみるのも悪くない。お手入れの後、きれいになった靴はそれだけで気分がいい。
時間の使い方でどこに価値を見出すかは人それぞれ。単に面倒ならばごくごくシンプルに、何をもって必要十分なのかがわかれば、それをとりあえずやっておくだけでもいい。一度靴のお手入れに価値を見出すことができれば、それが喜びにつながり、楽しくなるのもまた事実。
靴のお手入れ論はもうそれこそ山のようにあるけれど、本当の最低限度ができるようになればあとは好きなようにすれば良いのだから、意外とシンプルな話。
まずは今日履いた靴をブラッシングしてみませんか。
----------------
まずは汚れ落とし用のブラシと靴の色に合わせた乳化性クリームを用意します。とりあえず店頭で購入しやすいのはコロンブスのブラシとブートブラックのクリームかな。シルバーラインなら近くのお店で入手しやすいかも。
できればシューツリーを用意します。しわを伸ばす目的なので長さと幅がしっかり取れるものが良いです。
僕の使ったものの中でいうとディプロマットヨーロピアンがいい感じでした。
ちなみに歯ブラシは古くなったものをきれいに洗って使えばよいのですが、お手入れ用に安いものをまとめ買いしてもいいかなと思っています。
今回はクリームをなじませるためのブラシなどは用意していませんが、ブローグの靴などの穴があいているところやギザギザの部分にクリームを入れるためにはブラシがあると便利です。
布でクリームを塗ったら、すぐにブラシをサッサッとかけます。
仕上げもコットンのインナーシャツよりはネル生地っぽいもののほうが艶が出やすい感じです。
お手入れの世界はそれこそ奥が深くて、僕をはじめとしたお手入れそのものが趣味の一つのような人もいれば、それを生業として日々スキルを磨いている方もいらっしゃいます。
頂点を目指すとストイックな領域に入ってしまいますが、一方でお手入れにそれほど時間をかけたくないと思う人が多いのも事実です。
僕自身もワイシャツはコットン100%でないとダメなたちなのに、アイロンがけは結構面倒だったりします。
なので、「そりゃキレイなほうが良いけど面倒なのよ」という人の気持ちもわからないでもないです。
そんななかで、社会人一年生になって初めて本格的にビジネスシューズを履くことになった人向けに、「こんな感じでどうかな」という一つの方法を考えてみました。
以下、いつもの文体で。
革靴のお手入れについてはそれこそ数多くの方法があって、どれももっともらしい理由があってややこしい。
ブラシと乾拭きだけで十分という立場もあれば、クリームを欲しがるだけ入れるという人もいるし、見栄えだけでなく保護のためにワックス必須という人もいれば、ワックスは靴に悪いという人もいる。
こういう議論は目的(ゴール)を決めて適切な評価軸に沿って論じないと結論が出ないのだけれど、お手入れそのものも趣味嗜好の世界な部分もあるので究極的には何らかのマニュアルを参考にしつつ自分の思うとおりにやれば良いとも思う。
ワックスを使うことで見栄えと靴の保護を両立させることができるのは、ときどききちんとワックスを落とすことができる人で、あまり時間をかけたくない人であれば被膜が傷ついてかえってみすぼらしくなったりひび割れの原因になってしまう。
お手入れに時間をかけることができれば前者のほう靴が長持ちするだろうし、そもそもそんな時間がない(興味もない)人であれば中途半端にワックスのせないほうが長持ちする。
ステインリムーバーやサドルソープも一部で科学的に論じられていることもあるけれど、メーカーが言う適切な方法で使っていて靴がダメになっていないという意見もあるので、使い方間違わなければそれほど悪影響は無いのではないかとも思う。
社会人になってスーツを着て革靴を履くような会社であれば、身につけるもののお手入れは必須。
身なりはその人の仕事能力そのものを表すものではないけれど、仕事に対する態度の一端を表すもの。相手に対して仕事のトータルクオリティ判断の一つにもなる。
身なりが汚い高級すし屋や割烹は見たことがない。おもてなしや礼節が重んじられるシーンになればなるほどそれ相応の身なりへの気配りが必要になる。
いくら数十万円のスーツを身につけていても、パンツに折り目がなかったりジャケットがしわだらけだったりしたらそのスーツが持つ本来の力を発揮できない。
逆に、つるしの19,800円のスーツだとしてもパンツはいつもプレスされていて、ジャケットは襟のロールがふんわりしていれば十分すぎるほど格好良い。
革靴についても、高級な靴ほど素材が持つ力がでるものの、一般的なビジネスシーンであればむしろ汚れが目立たないピカピカの靴のほうがお客様にも、上司にも、同期の異性にも評価が高いのは間違いない。
身だしなみに気を配るということはビジネスパーソンである以上、必須の行いともいえる。
靴のお手入れというと「面倒くさい」という印象があるかもしれないけれど、日々のタスクとしてはそれほどでもなく、それでいて周りの印象を良くできるのだから時間の費用対効果はいいと思う。
と、あれこれメンドクサイ理由付けを抜きにしても、身につけるものがきれいであるって単純に気持ちが良いって感じでしょうか。
そこで、お手入れは面倒だけれど、やっぱりきれいなほうがいいよな、という人向けに「いったい何をするの?」ということについて考えてみたい。
まず、用意するものから
買うものは
・大き目な馬毛のブラシ
・乳化性の靴クリーム
だけ、これ以外はひとまず不要。
お手入れが習慣化されてきたり、その行為自体に面白みを感じてきたらいろいろ追加すればいいと思う。
家にあるもので賄うのが
・使い古しのインナーシャツ(コットン100%のもの)
・使い古しのタオル
・使い古しの歯ブラシ
の3点。
ない場合は専用のお手入れグッズを購入してもよいと思う。
靴のお手入れに慣れてきて消費量が増えてきたら改めて入手方法を考えるくらいでいい。
あと、直接お手入れには関係ないけれど
・シューツリー
はあったほうが良いかも。
毎日のお手入れ
家について靴を脱いだら「大き目な馬毛のブラシ」で靴全体をサッサッとブラシ掛けする。汚れを落とすのが目的なので片足5秒もやれば十分だと思う。
5秒やろうとすると、思ったより汚れていれば10秒以上やるので、まずはブラシを手に取る習慣が大切。
そのうち、寝る前に歯磨きをしないと気持ち悪いのと同じように、靴を脱いだらブラシをかけないほうが気持ち悪くなる。
週に1回くらいのお手入れ
使い古しのタオルを濡らしてからしっかりと絞って、それで靴全体を優しく拭う。
目的は泥汚れなどを落とすこと。あまり神経質にゴシゴシする必要は無し。むしろあまり強い力でこすってしまうと革にダメージを与えかねないので、あくまでも拭う程度。
タオルに前回の靴クリームの色が移るようであればクリームを追加で塗らなくてもよい。
夏場はカビやすいので、お手入れが終わったら風通しの良いところにおいておく。
エアコンが効いている部屋の片隅あたりが良いのだけれど、家族がいる場合は難しいケースもあると思うので、その場合は玄関に置いておく。(シューズクローゼットには最低一晩は入れない)
1カ月から数カ月に1回くらいのお手入れ
使い古しのタオルで拭う際に色があまり移らないと感じたらクリームを塗る。
クリームは使い古しのインナーシャツに少量を取り、全体に薄く塗る。
たいていは塗りすぎる傾向になるので、意識的に少なめにして表面に薄い皮膜ができればよいという程度。目安は片足米粒5個くらい。
次に歯ブラシでこれまた少量のクリームを掬ってコバの部分にも塗り込んでおく。
最後に使い古しのインナーシャツのきれいな部分で靴全体を磨いておしまい。
全体で10分もあれば終わる。
もし時間に余裕があれば、インナーシャツで磨く最後の工程の前に30分くらいおいておいてもよいと思う。
靴の中を軽くウェットティッシュで拭いてもよいかもしれない。特につま先には埃がたまりやすいので。
ここまでやれば隣の同期と比べて何倍ものお手入れがされている状態になるので、わかる人が見ても好印象なスタイルが出来上がる。
もし、靴のお手入れそのものが楽しくなってきたのであれば、自分の靴なんだし好きなようにやっていけばよいと思う。小さな失敗はあるかれもしれないけれど、今はネットで先人の智慧を拝借できるので調べながらやれば大きな失敗は避けることができる。仮に失敗してしまってもそれが経験値となり、次に買う高級靴では同じ過ちを繰り返さないはず。
僕自身は靴のお手入れ自体は好きなものの、普段履きのビジネスシューズは日々の汚れ落としくらいで、ブラシをかけて拭いておくくらいで十分と思っている。
見た目を重視するならある程度クリームの塗り直しが必要であっても、単なる保革というのであればそう頻繁に塗る必要もないのかなと。
数ヶ月に1度もクリームを入れないと保革ができないというのであれば、デッドストックの革なんてボロボロで使えないじゃん、ということになってしまうし、ずっと塩水漬けだったロシアンカーフなんて商品価値が出るはずが無い。
乾燥は大敵、油分を切らさないようにというのはそのとおりではあるけれど、その頻度や量についてはクリーム屋さんの過剰なセールストークに乗せられているのではないかと思う。商品が多すぎて、何を買えばよいのかわからなくなってくる。
とはいえ、僕のようなお手入れ好きはお手入れすること自体も好きなので、靴を極端に悪くしないのであれば、必要十分以上と解っていても、何らかのお手入れをしたくなる時もある。
これは栄養に必要な物を過不足無く食べればいいじゃんという意見に対して、カロリー超過や特定の栄養素に偏っても美味しいものを食べる事自体に価値を持つのと同じではないかと。
ツールである靴に必要十分なお手入れをするだけでは味気なくて物足りない。目的が革本来の力を活かすのであれば過剰なお手入れは本来の革が持つ力を発揮できないだけでなく、時間と材料費の無駄だけれど、お手入れすることが楽しいというのであればそれを優先させても良いのではないかと。
よくあげられるメイクで言えば、肌のコンディションを整えたいということはあるけれど、それ以上にメイクをすることが自体が楽しい、みたいな。
クリーム屋さんが高額商品を次々に出す反動で、実はそれほどお手入れをしなくても良いという意見が強くなりつつあるのは、緩履きに対するタイトフィッティングと同じで後者のほうが「わかっていること人」的な位置づけになっているだけな気がする。
なので、僕は好きな時に好きなだけお手入れをする。
忙しいときはお手入れどころでもないのでお手入れの優先度が低い靴にクリームを塗るのは年に1回くらいになってしまうこともある。
履く頻度が高い靴は雨に降られる確率も高く、塩も出てくるので水洗いをする。そのため、きっちりお手入れする頻度も上がる。
結局、必要に応じて靴のお手入れがなされる、と。
人生、必要十分なことだけを費用対効果で考えるだけでは面白くない。
革靴のお手入れそのものが趣味ならば、明らかにダメにすること以外ならばやってみるのも悪くない。お手入れの後、きれいになった靴はそれだけで気分がいい。
時間の使い方でどこに価値を見出すかは人それぞれ。単に面倒ならばごくごくシンプルに、何をもって必要十分なのかがわかれば、それをとりあえずやっておくだけでもいい。一度靴のお手入れに価値を見出すことができれば、それが喜びにつながり、楽しくなるのもまた事実。
靴のお手入れ論はもうそれこそ山のようにあるけれど、本当の最低限度ができるようになればあとは好きなようにすれば良いのだから、意外とシンプルな話。
まずは今日履いた靴をブラッシングしてみませんか。
----------------
まずは汚れ落とし用のブラシと靴の色に合わせた乳化性クリームを用意します。とりあえず店頭で購入しやすいのはコロンブスのブラシとブートブラックのクリームかな。シルバーラインなら近くのお店で入手しやすいかも。
できればシューツリーを用意します。しわを伸ばす目的なので長さと幅がしっかり取れるものが良いです。
僕の使ったものの中でいうとディプロマットヨーロピアンがいい感じでした。
ちなみに歯ブラシは古くなったものをきれいに洗って使えばよいのですが、お手入れ用に安いものをまとめ買いしてもいいかなと思っています。
今回はクリームをなじませるためのブラシなどは用意していませんが、ブローグの靴などの穴があいているところやギザギザの部分にクリームを入れるためにはブラシがあると便利です。
布でクリームを塗ったら、すぐにブラシをサッサッとかけます。
仕上げもコットンのインナーシャツよりはネル生地っぽいもののほうが艶が出やすい感じです。
2018年5月9日水曜日
社会人1年生の革靴の選び方
4月から新社会人となったみなさん、おめでとうございます。
仕事をするって大変なことが多いけれど、実りも多いと思います。
会社によってはそろそろ初ボーナスの時期だと思います。
スーツだとか靴だとか、この時期いろいろとそろえようと思っている人もいるかと思います。そこで、ちょっとだけ人生の先輩として「ビジネスシーンでの革靴の選び方」のヒントを書いてみたいと思います。
僕はファッションの専門家でもなければ靴にまつわる仕事をしているわけでもない、ごくごくその辺にいるオッサンです。とても堅い職場で社会人デビューをして、いまは経営者や大手企業の人事の役職者と会うことも多い仕事をしています。
そこで思うのは、「一流と感じるビジネスパーソンの靴はいつもきれい」なことです。
必ずしも高価な靴を履いている人ばかりではありませんが、靴がいつもお手入れされている人が多い印象です。
(それをさらに突き抜けてしまう先代からのお金持ちははそうでもない気もしますが)
社会人1年生が靴を選ぶとき、まず最初に意識してほしいことは「天気を気にせず履けて、きれいな状態を維持できる靴を買う」です。
おそらく、ニッポンのサラリーマンのほとんどは靴のブランドについて興味もなく、ましてやカーフとキップの違いなんて意識していません。
すぐに見てわかるのは「色」、「形」、そして「きれいさ」です。
なので、お金が潤沢で1万円も10万円も大差がないという人以外であれば、無理してジョン・ロブやエドワードグリーンを買わずに、まずは3足買うことができるお値段の靴をそろえることをお薦めします。
最初に用意できるのが5万円がせいぜいなら15,000円くらいの靴、2万円が限界なら5,000円ちょっとの靴になります。
僕もそうですが、ちょっと靴に関する感覚がズレてきている人だと「革靴は3万円から」みたいに思ってしまいますが、年収数千万円の人でもガラス仕上げのゴム底を履いていたりします。
真面目に仕事を3年頑張れば、毎年チャーチを1足買えるくらいのお金を稼ぐことはできます。(結婚するとまた違うかも)
雑誌などを見ているとクロケットアンドジョーンズやらオールデンやら欲しくなる気持ちはわかります。でも、いまそれを買う十分なお金が無ければまずは身の丈にあったところから始めてみてはどうでしょう。
もちろん、アルバイトを頑張っていい靴を買えるならぜひチャレンジするのもいいかもしれません。ただ、忘れてほしくないのが「靴をきれいに履く」ためには最低でも3足をそろえることです。なので、まず3から5足の天気を気にせずローテーションできる靴をそろえることを優先するほうが無駄がないと思うのです。
それに、お給料の大半を靴につぎ込んでいる新人よりは、ビジネス書をたくさん読んでいる新人のほうが好印象ですし、結果、パフォーマンスも早く上がるようになるケースが多いです。高い靴を買うという行為より、身だしなみに気を使いいつもきれいな靴を履くためのお手入れをするという習慣こそが価値を上げることにつながります。
仕事の成果よりも天気が気になってしまうような靴はビジネスシューズとしてはイマイチです。晴れの日は意気揚々と高級そうな靴なのに、とたん天気が悪い日はいつも同じみすぼらしい靴というのもなんだか格好悪いですし。
次に意識してほしいのが「自分の革靴サイズを知る」ことです。
メーカーによってサイズの取り方が違うので全部が全部というわけではありませんが、革靴はスニーカーのサイズよりもかなり小さいものが適正サイズになることが多いです。
よく「リーガルのつくりは大きめ」とかいう話がありますが、つくりが大きめなのではなく、スニーカーと同サイズを選んでいるからかもしれません。
僕も足が小さいほうなので気持ちはよくわかるのですが、革靴初心者のうち(というより、若いうちかな)は24とかいうサイズを選ぶのに抵抗があって、少しでも大きいサイズを買おうとしてしまいがちです。
しかし、帽子と同じで自分に合ったサイズより大きいものはとても履き心地は悪いですし、歩きにくい。おまけに足に障害が出ます。
中敷きで調整にも限度がありますし、中敷き前提で大きい靴履くくらいならスーツも含めてすべて小ぶりにしたほうが結果体格がよく見えることがあります。
ちなみに僕はスーツをつるしで買うときも身長から推奨されるサイズの一つ下を買うようにしています。
着てみても小さいとは思えませんし、ゆるゆるのサイズより明らかに疲れません。袖からのシャツの出方が良い感じがしています。
この2点をしっかりと理解して靴を買うようにしていくと、おそらく数年後くらいから本当に自分に合った靴を買うことができるようになるはずです。
逆に言えば、何足か買って体感していかないとなかなか正しい靴のサイズはわからないものです。
シューフィッターの意見を素直に聞く心があれば、次のマイルストーンまでの到達は早くなるかもしれません。
さてここから、もう少し具体的な靴の選び方に行ってみようと思います。
おおむねスーツを着ている人が多い職場をイメージしています。
ふだんはジーンズでもお客様先にはスーツを着ていく、なんてケースにもあてはまります。
第1の鉄則「靴は黒を買う」
社会人の革靴の基本は黒です。
スーツやジャケパンの会社であれ、どんなおしゃれな職場でも黒い靴が合わないことはありません。
白いシャツを着ている上司が多いお堅い商品を取り扱う会社であれば問答無用で黒一択です。
「俺はそんな没個性を強制される職場なんてお断りだ」でしょうか。
黒い靴が没個性なのではなくて、靴の色で差別化をしなければならない中身の没個性のほうが上司の頭を悩ませます。僕の職場は比較的何を着てもよいところですが、問題は会社の中ではなくて「お客様」に与える印象であり、どんなに堅い職場に訪問しても全く問題ないスタイルの部下と同行するほうが安心です。
会社で誰も黒い靴を履いていないような職場であれば話は別です。その場合はもう少しお洒落を意識したサイトや店員さんのアドバイスが参考になるかもしれません。
第2の鉄則「サイズ表記は無視する」
サイズはあくまでもラベルです。数字が持つ意味を考えてはいけません。
24が小さいとか大きいとかではなく単なる記号でしかありません。
この数字に意味を感じてしまうとサイズ選びは失敗します。もっとも感じるなといわれても人間である以上感じてしまうのはしかたないので、その思いを封印して無視する努力をします。
デカ履きしたところでわかる人(=こうなりたいと思うお洒落な人)にはすぐにわかってしまいますし、ジャストサイズというのはそれだけで最高にエレガントです。
何とか大きく見せようとしてデカ履きしても傍目には数センチの違いってあまりわかりませんし、かかとが大きく余っているのが見えた瞬間にシークレットシューズばりの残念さが出てしまう気がします。
第3の鉄則「高級靴と比較しない」
知識が先行すると、「この靴はカーフじゃないし...」「ソールが革じゃないし...」「グッドイヤーウェルト製法じゃないし...」みたいに何かを比較して劣っているように思えてしまいます。
予算が限られているのであれば割り切りましょう。
資産数十億でもガラスのゴム底セミマッケイのひとたくさんいます。サイズの合っていないしわの大きいクロケットアンドジョーンズを履いている人よりもお手入れされたサイズぴったりのガラス仕上げゴム底リーガルの人のほうが何倍もジェントルマンです。
確かに高いものにはその理由があって、たいていはお値段に比例して良いものです。ただ、良いものというのはそれを身に着ける人にもそれ相応のパワーを要求するものです。
もし職場環境が全員ジョン・ロブを履いているようなところであればそれを買うことも一理あります。そうでない環境であれば、ジョン・ロブがあなたのビジネス上の評価を上げることにも同期の異性にモテることにも大した影響を与えません。
第4の鉄則「クラシックなデザインにする」
最初のうちにそろえるデザインはストレートチップ(キャップトウ)やプレーントウなどのクラシックなものにします。
いまは高い靴を買うことができなくても、いずれ買うことができる日が来ます。
そのときに最高に格好良いスタイルを完成させるためには、若いうちから「クラシックな靴に合うスタイル」を意識したほうが良いです。
ストレートチップに合うスーツ、シャツ、タイ。プレーントウに合うスーツやジャケットなど、靴を起点に全体のコーディネイトを意識していきます。
数年後、チャーチのコンサルを買ったとき、すでにあなたのスタイルは完成されているはずです。コンサルはあくまでも一つのピースとして自然に溶け込んだものになるでしょう。
第5の鉄則「ブランドだけで決めない」
リーガルがダメだとか、スコッチグレインがどうだとか、どこが良いだとか、先人の知恵は拝借するとしても、必要以上に「ブランド」のくくりにこだわりすぎないことも大切です。同じブランドでも商品ラインナップがたくさんあることもありますし、あなたの足にドンピシャかもしれません。「このブランドが好き」であればそのブランドの中から合うものを探しましょう。もし合うものがなければ諦めることも潔いです。
偉そうなことを書いている僕も、靴選びは失敗の連続でした。
だから、頭でわかっていることと行動できることが別だということは十分わかります。なので、この5つの鉄則のうち、全部でなくても一つくらいを実行したり、意識してみるだけでも遠回りが避けられるではないかと思っています。
自分で稼いだお金ですから本当に好きなものを買うのがいちばんとはいえ、社会人は「社会」に属しているので、その中で本当にあなたの良さが最大限に活きる選択がされることこそが最も価値ある選択ではないでしょうか。
満員電車が怖かったり、突然の雨で予定の外出が嫌になったり、公衆便所に入れなくなるような靴であるとすれば、ビジネスシーンでの道具ではなくなってしまいます。
クロケットアンドジョーンズがどうしても履きたいのであればその想いに忠実に従う選択肢があってもよいと思っています。そうした靴が仕事の活力を与え、ほかの人よりも積極的に取り組む源となるのであればそれが最良の選択かもしれません。
その靴が仕事の成果を阻害するのではなく、プラスに働く道具になるのであれば、買えるものを買うことは悪い選択ではありません。
多くの人にとってお金は有限ですから、トレードオフの状況の中でできる限り良い選択ができるような情報収集が大切ですし、一度決断して購入したらそれが高い靴でもそれほど高価でない靴でもあなたの靴ですからその靴で気持ちよく仕事ができれば最高です。
本当はチャーチが欲しかったのだけれど、とりあえず3足買うために3万円以下の靴を選んだとしても、それは「とりあえず」の靴でもないですし妥協の産物でもないと思います。現時点でのスタートラインであり、一つのマイルストーンです。時には雨に降られることもあるでしょう。また時には満員電車で誰かに踏まれてしまうかもしれません。そんなことがあったら、家に帰ってからしっかりお手入れしてみてください。新品の靴には出せない粋な風格が出てくることに気づくはずです。
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靴のお手入れには欠かせないブラシ。少し大きめが使いやすいです。
仕事をするって大変なことが多いけれど、実りも多いと思います。
会社によってはそろそろ初ボーナスの時期だと思います。
スーツだとか靴だとか、この時期いろいろとそろえようと思っている人もいるかと思います。そこで、ちょっとだけ人生の先輩として「ビジネスシーンでの革靴の選び方」のヒントを書いてみたいと思います。
僕はファッションの専門家でもなければ靴にまつわる仕事をしているわけでもない、ごくごくその辺にいるオッサンです。とても堅い職場で社会人デビューをして、いまは経営者や大手企業の人事の役職者と会うことも多い仕事をしています。
そこで思うのは、「一流と感じるビジネスパーソンの靴はいつもきれい」なことです。
必ずしも高価な靴を履いている人ばかりではありませんが、靴がいつもお手入れされている人が多い印象です。
(それをさらに突き抜けてしまう先代からのお金持ちははそうでもない気もしますが)
社会人1年生が靴を選ぶとき、まず最初に意識してほしいことは「天気を気にせず履けて、きれいな状態を維持できる靴を買う」です。
おそらく、ニッポンのサラリーマンのほとんどは靴のブランドについて興味もなく、ましてやカーフとキップの違いなんて意識していません。
すぐに見てわかるのは「色」、「形」、そして「きれいさ」です。
なので、お金が潤沢で1万円も10万円も大差がないという人以外であれば、無理してジョン・ロブやエドワードグリーンを買わずに、まずは3足買うことができるお値段の靴をそろえることをお薦めします。
最初に用意できるのが5万円がせいぜいなら15,000円くらいの靴、2万円が限界なら5,000円ちょっとの靴になります。
僕もそうですが、ちょっと靴に関する感覚がズレてきている人だと「革靴は3万円から」みたいに思ってしまいますが、年収数千万円の人でもガラス仕上げのゴム底を履いていたりします。
真面目に仕事を3年頑張れば、毎年チャーチを1足買えるくらいのお金を稼ぐことはできます。(結婚するとまた違うかも)
雑誌などを見ているとクロケットアンドジョーンズやらオールデンやら欲しくなる気持ちはわかります。でも、いまそれを買う十分なお金が無ければまずは身の丈にあったところから始めてみてはどうでしょう。
もちろん、アルバイトを頑張っていい靴を買えるならぜひチャレンジするのもいいかもしれません。ただ、忘れてほしくないのが「靴をきれいに履く」ためには最低でも3足をそろえることです。なので、まず3から5足の天気を気にせずローテーションできる靴をそろえることを優先するほうが無駄がないと思うのです。
それに、お給料の大半を靴につぎ込んでいる新人よりは、ビジネス書をたくさん読んでいる新人のほうが好印象ですし、結果、パフォーマンスも早く上がるようになるケースが多いです。高い靴を買うという行為より、身だしなみに気を使いいつもきれいな靴を履くためのお手入れをするという習慣こそが価値を上げることにつながります。
仕事の成果よりも天気が気になってしまうような靴はビジネスシューズとしてはイマイチです。晴れの日は意気揚々と高級そうな靴なのに、とたん天気が悪い日はいつも同じみすぼらしい靴というのもなんだか格好悪いですし。
次に意識してほしいのが「自分の革靴サイズを知る」ことです。
メーカーによってサイズの取り方が違うので全部が全部というわけではありませんが、革靴はスニーカーのサイズよりもかなり小さいものが適正サイズになることが多いです。
よく「リーガルのつくりは大きめ」とかいう話がありますが、つくりが大きめなのではなく、スニーカーと同サイズを選んでいるからかもしれません。
僕も足が小さいほうなので気持ちはよくわかるのですが、革靴初心者のうち(というより、若いうちかな)は24とかいうサイズを選ぶのに抵抗があって、少しでも大きいサイズを買おうとしてしまいがちです。
しかし、帽子と同じで自分に合ったサイズより大きいものはとても履き心地は悪いですし、歩きにくい。おまけに足に障害が出ます。
中敷きで調整にも限度がありますし、中敷き前提で大きい靴履くくらいならスーツも含めてすべて小ぶりにしたほうが結果体格がよく見えることがあります。
ちなみに僕はスーツをつるしで買うときも身長から推奨されるサイズの一つ下を買うようにしています。
着てみても小さいとは思えませんし、ゆるゆるのサイズより明らかに疲れません。袖からのシャツの出方が良い感じがしています。
この2点をしっかりと理解して靴を買うようにしていくと、おそらく数年後くらいから本当に自分に合った靴を買うことができるようになるはずです。
逆に言えば、何足か買って体感していかないとなかなか正しい靴のサイズはわからないものです。
シューフィッターの意見を素直に聞く心があれば、次のマイルストーンまでの到達は早くなるかもしれません。
さてここから、もう少し具体的な靴の選び方に行ってみようと思います。
おおむねスーツを着ている人が多い職場をイメージしています。
ふだんはジーンズでもお客様先にはスーツを着ていく、なんてケースにもあてはまります。
第1の鉄則「靴は黒を買う」
社会人の革靴の基本は黒です。
スーツやジャケパンの会社であれ、どんなおしゃれな職場でも黒い靴が合わないことはありません。
白いシャツを着ている上司が多いお堅い商品を取り扱う会社であれば問答無用で黒一択です。
「俺はそんな没個性を強制される職場なんてお断りだ」でしょうか。
黒い靴が没個性なのではなくて、靴の色で差別化をしなければならない中身の没個性のほうが上司の頭を悩ませます。僕の職場は比較的何を着てもよいところですが、問題は会社の中ではなくて「お客様」に与える印象であり、どんなに堅い職場に訪問しても全く問題ないスタイルの部下と同行するほうが安心です。
会社で誰も黒い靴を履いていないような職場であれば話は別です。その場合はもう少しお洒落を意識したサイトや店員さんのアドバイスが参考になるかもしれません。
第2の鉄則「サイズ表記は無視する」
サイズはあくまでもラベルです。数字が持つ意味を考えてはいけません。
24が小さいとか大きいとかではなく単なる記号でしかありません。
この数字に意味を感じてしまうとサイズ選びは失敗します。もっとも感じるなといわれても人間である以上感じてしまうのはしかたないので、その思いを封印して無視する努力をします。
デカ履きしたところでわかる人(=こうなりたいと思うお洒落な人)にはすぐにわかってしまいますし、ジャストサイズというのはそれだけで最高にエレガントです。
何とか大きく見せようとしてデカ履きしても傍目には数センチの違いってあまりわかりませんし、かかとが大きく余っているのが見えた瞬間にシークレットシューズばりの残念さが出てしまう気がします。
第3の鉄則「高級靴と比較しない」
知識が先行すると、「この靴はカーフじゃないし...」「ソールが革じゃないし...」「グッドイヤーウェルト製法じゃないし...」みたいに何かを比較して劣っているように思えてしまいます。
予算が限られているのであれば割り切りましょう。
資産数十億でもガラスのゴム底セミマッケイのひとたくさんいます。サイズの合っていないしわの大きいクロケットアンドジョーンズを履いている人よりもお手入れされたサイズぴったりのガラス仕上げゴム底リーガルの人のほうが何倍もジェントルマンです。
確かに高いものにはその理由があって、たいていはお値段に比例して良いものです。ただ、良いものというのはそれを身に着ける人にもそれ相応のパワーを要求するものです。
もし職場環境が全員ジョン・ロブを履いているようなところであればそれを買うことも一理あります。そうでない環境であれば、ジョン・ロブがあなたのビジネス上の評価を上げることにも同期の異性にモテることにも大した影響を与えません。
第4の鉄則「クラシックなデザインにする」
最初のうちにそろえるデザインはストレートチップ(キャップトウ)やプレーントウなどのクラシックなものにします。
いまは高い靴を買うことができなくても、いずれ買うことができる日が来ます。
そのときに最高に格好良いスタイルを完成させるためには、若いうちから「クラシックな靴に合うスタイル」を意識したほうが良いです。
ストレートチップに合うスーツ、シャツ、タイ。プレーントウに合うスーツやジャケットなど、靴を起点に全体のコーディネイトを意識していきます。
数年後、チャーチのコンサルを買ったとき、すでにあなたのスタイルは完成されているはずです。コンサルはあくまでも一つのピースとして自然に溶け込んだものになるでしょう。
第5の鉄則「ブランドだけで決めない」
リーガルがダメだとか、スコッチグレインがどうだとか、どこが良いだとか、先人の知恵は拝借するとしても、必要以上に「ブランド」のくくりにこだわりすぎないことも大切です。同じブランドでも商品ラインナップがたくさんあることもありますし、あなたの足にドンピシャかもしれません。「このブランドが好き」であればそのブランドの中から合うものを探しましょう。もし合うものがなければ諦めることも潔いです。
偉そうなことを書いている僕も、靴選びは失敗の連続でした。
だから、頭でわかっていることと行動できることが別だということは十分わかります。なので、この5つの鉄則のうち、全部でなくても一つくらいを実行したり、意識してみるだけでも遠回りが避けられるではないかと思っています。
自分で稼いだお金ですから本当に好きなものを買うのがいちばんとはいえ、社会人は「社会」に属しているので、その中で本当にあなたの良さが最大限に活きる選択がされることこそが最も価値ある選択ではないでしょうか。
満員電車が怖かったり、突然の雨で予定の外出が嫌になったり、公衆便所に入れなくなるような靴であるとすれば、ビジネスシーンでの道具ではなくなってしまいます。
クロケットアンドジョーンズがどうしても履きたいのであればその想いに忠実に従う選択肢があってもよいと思っています。そうした靴が仕事の活力を与え、ほかの人よりも積極的に取り組む源となるのであればそれが最良の選択かもしれません。
その靴が仕事の成果を阻害するのではなく、プラスに働く道具になるのであれば、買えるものを買うことは悪い選択ではありません。
多くの人にとってお金は有限ですから、トレードオフの状況の中でできる限り良い選択ができるような情報収集が大切ですし、一度決断して購入したらそれが高い靴でもそれほど高価でない靴でもあなたの靴ですからその靴で気持ちよく仕事ができれば最高です。
本当はチャーチが欲しかったのだけれど、とりあえず3足買うために3万円以下の靴を選んだとしても、それは「とりあえず」の靴でもないですし妥協の産物でもないと思います。現時点でのスタートラインであり、一つのマイルストーンです。時には雨に降られることもあるでしょう。また時には満員電車で誰かに踏まれてしまうかもしれません。そんなことがあったら、家に帰ってからしっかりお手入れしてみてください。新品の靴には出せない粋な風格が出てくることに気づくはずです。
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靴のお手入れには欠かせないブラシ。少し大きめが使いやすいです。
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