アノネイのベガノもお手入れを繰り返すうちに奥行きのある光沢感が出てきた。
何度も雨に降られることがあっても、大きなキズを受けなかったことが幸いか。
※今回のネタは以前に書いたものとかなり重複してます※
革靴に水は大敵という話はよく聞くけれど、それじゃ昔のジェントルマンは雨の日どうしていたんだという話なわけで、濡れることよりも濡れた後どうすればよいかのほうがはるかに大切な話だと思う。水洗いすることと、大雨に降られることに大差はないし、むしろ雨水よりも真水のほうがキレイなのだからずぶ濡れになってしまった靴ならば洗ったほうが良いくらいの気もする。
もちろん、雨の日履かないほうが良い靴もあるというのはわかる。僕だってもしベルルッティ履いていたら雨に降られたくないし、コードバンも以前雨を気にせず履いていたら痛い目にあった。ただ、ビジネスシューズの範疇にある靴は、あくまでもビジネスの道具のひとつであり、道具は必要なときに使えて初めて有用なのだから、天気を気にせず履きたい。
というわけで、僕が持っている靴のほとんどは雨を経験している。購入してから最初の3ヶ月は十分なケアができていないため意識的に雨を避けることもあるのだけれど、それ以後は気にしだすときりがないので必要以上に気にしないようにしている。
前振りが長くなってしまった。
つまるところ、「雨に濡れるのなら、水洗いも一緒でしょ」ということで、靴を水洗いしてみる。
どうせやるならフルコースで。
※重要※
ここから先は全くの個人的な趣味です。慎重な人は避けたほうが良いです。
僕は専門家ではないのでこの方法では靴に取り返しの付かないダメージを与えることがあるかもしれません。今回はブラックの靴なのでシミが目立ちませんが、色や素材、仕上げにによっては極力水を避けたほうが良い物もありますので。あくまでも「こういうことする人いるんだなー」という気持ちで読んでください。
高級な靴や思い出のある靴など、大切な靴は専門家にお願いすることを強く勧めます。
今回のターゲットであるREGAL 01DRCDはアッパーに仏アノネイ社のベガノカーフを使ったレザーソールモデル。
購入しておよそ1年ちょっと。平均的には週1程度の登板なので通算6、70回程度履いたと思う。その間何度も雨に降られている。
用意したもの
- 中性洗剤(洗濯用。今回は花王のエマール)
- スポンジ(以前サドルソープに使っていたM.モゥブレイのもの)
- M.モゥブレイクリーニングブラシ
- タオルというか雑巾
- 新聞紙
- サフィールノワールデリケートクリーム
- サフィールノワールレノベイタークリーム
- サフィールノワールクレム1925ブラック
- シェットランドフォックスソールコンディショナー
- ブートブラックコバインキ
- クリーム用コットン
- ブラシ(馬毛と豚毛)
洗う前に
いきなり洗ってしまうと小石やら何やらが出てきそうなので、まずはていねいに馬毛ブラシでブラッシング。紐を外して全体やタンの部分からホコリを掻きだすように。コバのあたりはブラシのエッジを使ってホコリ落とし。
ソールに詰まった石などもある程度ツメで取りのぞいておく。
ていねいにブラッシングをすると結構まともな状態になるので水洗いしなくても良いかな、とも思えてくるが、やっぱりやろうと決めたので洗うことにする。
水をかける
水を全体にかける。単純に水道水でジャバジャバ。さすがにクリームが染み込んでいることもあり、アッパーもソールも結構水を弾く。
指で軽く撫でながら表面をなじませていく。
水につける
水をためて靴をドボン。洗剤などは入れずに、ただの水の中に。
洗剤が入った水の中に放っておくのはなんだか靴に悪そうなので、水道水に単純に浸すだけ。
浸透圧の関係で塩分などが出ている気がする。
また、つま先に残った埃も浮いて出てくる。
5分ほど浸けておくと水がうっすら茶色になる。
一度水を捨てたら靴の中だけ軽く洗剤を付けたブラシでブラッシング。カビや埃をある程度落とすつもりで。しっかりすすいだら再度水を溜めて10分ほど置いておく。
水を捨てて、一度軽く洗い流す。また水をためて浸す。これを3回繰り返し。
ここまでで前半戦終了。
よほど汚れていない場合はこれだけでも十分な気がする。
洗剤で洗う
洗剤はおしゃれ着洗濯用のエマール。中性洗剤だし、おしゃれ着用だから少しはダメージ少ないのではないかなという感じで。
ま、裏面に革は洗えないと書いてあるんですが。
ちなみに、革用の洗剤であるレザーウォッシュの成分は
・界面活性剤
・シリコーン
・植物性抗菌消臭成分
・水溶性ポリマー
らしい。
一方、エマールは
・界面活性剤
・シリコーン
・防腐剤
あたりなので材料そのものは似たような感じ。
革はアルカリに弱いそうなので、弱酸性から中性の洗剤がダメージ少ないとか。なんだかそうなってくるとビオレあたりで洗っても良さそうだ。
さて、本題。
洗剤はスポンジで泡立てて、表面はその泡で洗う。コバのあたりはスポンジの角を押し付けるように、内側はスポンジで撫でるように洗う。
僕の場合ローテーション間隔がある程度あるせいか、靴が臭くならないので消臭目的というよりは単に汚れ落としという感覚。
靴を洗剤で洗うメリットは、アッパーの古いクリーム落としというよりは、靴内部にたまった汗や雨由来の物質を除去するところにあると思う。
洗うのは片足1分程度。さっと洗っておしまい。
すすぎ
水洗いで最も重要なのはやっぱりすすぎ工程だと思う。そもそもが革用ではない洗濯洗剤を使うから、洗剤が残っていて良いことはひとつもない。
まず水道水で全体を洗い流す。
最初は手っ取り早く蛇口の水でじゃぶじゃぶ洗って、ある程度泡が無くなったら風呂場のシャワーを使うと楽な気がする。とにかく泡が出なくなるまで洗い流す。
洗剤が落ちて泡が無くなったら、一度だけ流水状態でつけ置きする。
水で流しきれない繊維の奥に洗剤が残っているのではないかなという気がして。
5分位つけたら最後シャワーでていねいに流して終わり。
ここまでで水洗いは完了。
水気を切る
ここから乾燥するまでがまた難所。綿100%のシャツでも思うのだけれど、いい加減に乾燥させるとシワだらけのごわごわになる。繊維の分子構造が壊れて、乾くときにその並びがばらばらになるそうだ。
革靴もなんとなくそうなりそうな感じがするのと、縫い糸が縮むと革が余計に引っ張られそうなので、水が抜ける時の取扱には気を使う。
まずは雑巾で全体を叩くようにして表面の水分を吸収。靴の中も同じようにしてある程度水気を切る(表面の水滴を「取る」という感覚に近い)。水滴を残したまま乾燥させるとシミになる可能性もあるので、特にアッパーには水滴がなくなるように。
靴の内部もある程度水気を雑巾に吸わせる。
表面の水気が取れたら風通しの良いところでビショビショがしっとりになるくらいまで乾かすことにする。
最初に5分位何も入れずにかかとを下にして立て掛けておく。こうするとかかとに少し水が溜まるので、まずそれを捨て、再度雑巾でかかと周りの余分な水気を取る。
余分な水分を取り除く
型崩れ防止と、水気を取り除くために新聞紙をキツキツに入れる。片足で2枚ほど使う。つま先用に紙面の1/2ページ分位を切って丸めて入れる。その後残りを靴の形に合わせて詰め込む。
前回はキッチンペーパーを使ったのだけれど、今回は新聞紙で色移りするのかどうかも興味があったので、最初の水切り段階でとりあえず使ってみた。
ちなみに、ふだん新聞を取っていない場合はどう考えてもキッチンペーパーのほうが安上がりだと思う。(スーパーで4ロール100円くらいで買えますし)
15分位経ってある程度新聞紙に水が吸収されたら新しい新聞紙に交換。
びしょ濡れ状態の内部に入れていただけあってすぐに吸収力が飽和してしまうため。
あまり早い段階からクリームなどを入れてしまうと、乾くときに表面に持ち上げられてしまい、結局表面に浮き出るだけになりそう。このタイミングでは乾かすと言うより過剰な水分を取るというつもりで吸湿(というか吸水)しなくなりそうなタイミングで2、3度紙を入れ替える。
(専門の業者さんが説明している記事などを見ると、洗いの工程で何らかの加脂をしているようだし、「サドルソープはすすぎ過ぎない」という話も考えると、ひょっとするとなにか入れたほうがよいのかなぁ)
その後は空調の効いた部屋の片隅に一晩おいておく。
翌朝のお手入れ
一晩くらい(6~8時間くらい)おいたくらいのある程度乾いて、まだ湿り気が残っているタイミングでまずはデリケートクリームを軽く入れる。26度C設定の部屋で8時間ほどおいておいたら、表面がある程度乾いて少し硬い感じになっていた。ここで新聞紙を抜いて、一度シューツリーを入れてデリケートクリームを塗る。
まだこの先乾燥していくので、必要以上に塗り過ぎないようにいつもより少なめに。どちらかというと革全体のコンディション調整という程度のつもり。サドルソープを残す感覚に近いかも。
塗り終えたらツリーは抜いて、靴の内部にもデリケートクリームを塗る。
その後は靴の内部の風通しを良くしたうえでさらに半日ほど室内に置いておく(直射日光を避けるため)。
まだ湿り気が残る段階でツリーを入れるか入れないかは悩むのだけれど、一晩経過時点ではまだまだ内部に湿り気が多く、まずはそちらの乾燥を優先することにする。完全に乾ききるにはまだまだ時間が掛かるし、夏場ということもありもう少し乾いてからのほうがカビが生えなそうと思うので。
ただ、形状保持という観点からすると乾燥過程にツリーが必要な気もするので、比較的涼しい場所でおいて置けるのであればツリー入れたほうが良いのかな。
翌晩のお手入れ
完全に乾き切らない程度、そこそこ乾いたらレノベイタークリームを塗る。このクリームは保湿に効果アリと専門家もいっているので、たぶんそうなんだろうという程度で気休めに塗っている。柔らかいのでついつい塗り過ぎがちになるのだけれど、今回は意識的に薄めに。クロスにちょんちょん付けて、かるーくのばしていく。
また、最大の革部分であるソールにはコンディショナーを少し多めに塗り込む。ソールは意外と表面に細かなひび割れが発生しやすく、通気性は若干犠牲になるかもしれないが、オイル分を補充しておいたほうが革が締まるのか確実に長持ちする。
このメンテナンスが終わったらツリーを入れたまま最終乾燥に入る。
仕上げ
また一晩おいたらサフィールノワールクレム1925ブラックで仕上げに入る。昨晩までにデリケートクリームやレノベイタークリームを入れているので、それなりに水分と脂分が補充されていることもあるので、クリームはいちおう少なめに。
油脂の補給というよりは補色と艶感追加いう意味合いが強い。
今回洗った01DRCDのアッパーに使われているベガノカーフは洗ったあと雑巾で表面を拭く際にほとんど色移りしなかったのでそれほど補色の必要性はないかな。どちらかというと洗って出てきた傷や残りのシミを隠して表面を揃えるというつもりでブラックを使っている。
コバ(というかウエルト)の部分にはペネトレイトブラシを使って少し多めにクリームを入れておく。
10分ほどおいてからブラッシング。靴をマッサージする要領でサッササッサと磨く。片足2、3分くらいかけてクリームのムラが残らないように。
あとはツリーを抜いたまま2、3日風通しの良い所で完全に乾燥させる。
靴の内部にはまだかなりの湿り気があるはずで、この状態で履いていたらカビを増やすだけになる。
2、3日してほぼ乾いたところでもう一度クレム1925を塗りこむ。気持ち多めに、「塗り込む」という感覚で革になじませる。シワの部分は指で押しこむような感じで。
あとはツリーを入れてしばらく放置。下駄箱だと風通しが悪いので、部屋に1週間位ほったらかしで十分。
最後に少し色落ちしかけているコバにコバインキを塗って完成。
仕上がりの感じとしては乾燥過程で都度脂分を補給していたせいか、もとと同じ程度の柔らかさを維持しているっぽい。
これまで
- SHETLANDFOX GLASGOW (フラスキーニ社チプリア)
- Regal W134 (国産キップ)
- Regal 01DRCD (アノネイ社ベガノ)
洗った直後はクリームがよく乗るのかいつもよりつややかな仕上がりになる。
やってみて思うのだけれど、革靴を洗うっていうのは結構手間がかかる。
僕は半分趣味でやっているのでいいとしても、労力とクオリティ考えたらプロのサービスってコストパフォーマンス高いなぁ。
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水洗いでいちばん大切なのが洗った後のケア。完全に乾くまではマメに薄くデリケートクリームを入れています。乾いた直後はレノベイタークリーム。これ万能クリームなのでひとつあると本当に便利。
洗ったらコバインキを塗ると綺麗度合いがアップします。水洗いすると結構コバの色落ちが目立つので。
洗剤はいつもエマールを使っています。いいのか悪いのかよくわからないのですが。
靴を洗うのに使うブラシ。使い古しの歯ブラシでもよいと思うのですが、うちではコレ使っています。