2014年11月11日火曜日

RENDO R7702 PUNCHED CAP TOE OXFORD

RENDO R7702、パンチドキャップトウ。

All Aboutの飯野さんの記事でみて、気にはなったものの、最初にオンラインショップを見た時はマイサイズが売り切れていたのと、そのころは別のことに気が向いていたこともあり、ちょっと忘れかけていた。

その後、ちょっとした出来事があって、靴を買う理由(と資金)ができたのでネットを見ていたら、たまたまRENDOの記事に辿り着いた。ネットで集めた情報だけをみると、まっとうな靴っぽいし、イマドキの水準からするとリーズナブルなこともあり、店頭で実物を見てみることにした。

お店は銀座線の浅草駅から10分程度でちょっと遠い。
電車で行くよりも、東京駅八重洲口から出ているバスで「隅田公園」または「浅草七丁目」あたりで降りると近いかも。

靴が壁に並べられていることが多い靴屋さんが多い中で、RENDOは壁一面に在庫があって、靴はテーブルに並べてある。
取り扱っている商品はキャップトウ、パンチドキャップトウ、サイドエラスティック、プレーントウと新作のダブルモンク。現在でもいくつかデザインを企画中だそうで、今後はよりラインナップが拡充するっぽい。

R7702はあまりロングではないアーモンドタイプなパンチドキャップトウ。
伝統的なラウンドトウとくらべてみるとややポインテッドであるものの、昨今巷にあふれる長い靴とは違ってコンパクト。
トウと羽根の部分に施されたパーフォレーションは小ぶりで繊細な印象。ネットの情報をいろいろ見る限りではセントラル製ではないかと。

この靴はどちらかと言うと幅が少しタイトにできていると言われているけれど、ショートノーズなせいか外見はあまりそう見えない。僕はEE程度の足のため購入時にタイトな履き心地になるかも知れないとのアドバイスを受けた。もっとも、我慢できないくらいタイトだった時は預かり等でストレッチを試みてくれるとのこと。実際、カウンターの奥にもストレッチ中の靴が置いてあった。

履いた感じではボールジョイント周りはそれほど絞らず、かかとに向けて絞り込んだラストという触れ込み通り、かかとを意識的にすぼめてある。

硬い芯が入っていることもあり、試着の段階ではかかとを掴む感じが気に入った。購入後初めて外出してみたら5分もしないうちにかかとの内側が痛くなった。あと、この靴はかかとのスポンジはそれほど入っていないようで、シェットランドフォックスあたりと比べると少し硬い。(履いてる限りではまったく問題ない)
どうも内側の絞り込みがきつすぎるようなので、指で少し広げるような感じで調整してみると、なんとか一日履けないほどの痛みは無くなった。この靴は底面はそれほどきつくないが、履き口に向かって上がるに連れて結構急にカーブしている感じ。

甲は履き口に向かって二の甲を過ぎたあたりから緩やかなカーブを描く。一の甲は低め、二の甲はゆったりめ、三の甲はふつう。

幅はネット上の記事をみるとかなり細めとされている(Dウイズ)けれど、それほどでも無い気もする。少なくてもボールジョイントの感じは同サイズEウイズのソフィスアンドソリッドのように横から締め付けられる感じはしない。
履き始めから大きいほうの左足小指に違和感があり、1日履くと夕方以降かなり痛くなった。この靴はノーズがそれほどでもないため、トウ先に向かってカーブがきついのかなぁと感じた。靴のサイズは実測よりも少し大きめのサイズになっているのだけれど、ラストが想定しているよりも少し幅広な足のようで、それがキツイ原因かも知れないと思っていた。

当初の印象は少し痛い靴。LGW3001のように全体的にきついという感じではなく、当たるポイントが点になっていて、小さいほうの右足はあまり問題がないのに、大きいほうの左足小指が壊滅的にダメージを受けてしまい、外出の多い日は避けていた。(小指にタコができた数少ない靴なので)
ところが20回くらい履いているとそれほどのダメージがなくなった。足に合うようになってきたのかなぁと思っていたころに、意外な事実を知ることになった。

先日、マッサージを受けた際に僕の歩き方(というか、現代人に多い歩き方)は足を外側(小指側)から着地して、そのまま外側で蹴りだす傾向があるといわれた。こういう歩き方は腰痛になりやすい。あまり意識したことがなかったが、実際に意識してみると確かに外側に力がかかっている。本来は足の内側を意識して親指でしっかり蹴りだす歩き方が正しいとのこと。
確かに外側に偏った歩き方は蹴りだしの最後に小指に力がかかる。左足を軸にする癖のある僕の歩き方だとサイズの大小にかかわらず踏み出すごとに左足の小指にテンションがかかる。
親指を意識した歩き方を意識するようになったら小指へのダメージが減った気がする。
足のタコマメの原因は足とラストの相性だけではなく、歩き方にも原因があったわけだ。

アッパー素材は国産キップ。なかでも良い所が使われているらしい。
肌理の細かさ、しなやかさ、光沢感などはさすがにウェインハイムレダーあたりのカーフに比べれば劣る印象は否めないものの、がっしりとした質感はビジネスユースとしては安心感があったりもする。厚手で、シワが大味に入るあたり、印象としてはリーガルBOSラストのキップと同じ感じ。
少しクリームの乗りが悪いかな。この靴にはBoot Black(黒蓋)を使っているのだけれど、雨にぬれるとしみっぽくなるのが目立つ感じがする。
(ブラウンは仕上げを考えるとさらにシミになりやすいかもしれない)
ピッカピカの靴というよりは、「丈夫そう」という印象で、数年後どうなるかは楽しみでもある。

コバの目付けを仕上がりの段階で行うため、ウェルトからソールにかけてはスッキリとしながらも高級感のある仕上げ。正直、僕にはあってもなくても評価に変わらないディテールなのだけれど、靴の作り手の立場からすれば、この仕上げをするということはすべての靴を手に取り、一周させることになる。これはプロデュースする靴の最終確認でもあり、魂を入れる過程でもあるのだろう。価格競争の中でこうした手仕上げは省略されるかいい加減にされることが多くなっている気がする。RENDOはプロダクトとしてきちんと仕上げてくれているのは大きな安心感。

ソールもこだわりの仕上げがされている。
ヒドゥンチャネルにコテで表情を入れている。これもディテールだけ見ればあってもなくても靴そのもの使い勝手は変わらないけれど、必然的にアッパーとソールがしっかりついているか、余計なキズは無いかをチェックする事になるわけで、その辺りしっかり検品されているという安心感は大きい。
この手のロングノーズではない靴はつま先のヘリが穏やかなのがありがたい。リペアまでの期間が伸びるし。

ソールそのものは雨にぬれるとかなり柔らかくなってしまう。乾燥させた後、ソールコンディショナーを気休めに使うほうがよさそう。ソールの塗料は水に弱い感じ。


僕は革靴にはドレスシューズとビジネスシューズがあると思っている。
前者はパーティーやセレモニーなどで履く靴で、どちらかと言えば見た目重視。後者は普段履きで、耐久性やリペアとお手入れのしやすさ、長時間履いた時の履き心地、経済面が優先される。

RENDOは僕の中での位置づけは後者。いわゆるふつうのビジネスパーソンのために、コストを意識しながらグッドイヤーウェルテッドの靴を真面目に作ったらこうなりました、という感じ。アノネイやウェインハイムレダーの革を使いました的なアイコン勝負ではなく、ラストや作り込み、仕上げといった一般的にはなかなか評価されにくいところをまじめに作りましたと。

「良い靴」を作るためには当然にお金がかかる。
それは素材だったり、職人さんの腕だったり、製法だったり、加工だったり。
4万円というひとつの基準の中で、どこにどうコストを掛けるかというところは企画者の腕の見せどころ。特にRENDOのような新しいブランドはなんらかの差別化を持っていないとあまたのブランドの中で生き残るのは大変だろう。
RENDOの答えはなんだろうか。素材や流通にかかるコストを抑えて、その分手間や顧客との対話を増やしたというところだろうか。
「アノネイガー」「ゾンタガー」のようなノリで6、7万円だったら正直興味なかったかも。それならREGAL TOKYOあたりでBOSすればいいし。

RENDOは浅草の店舗と通販のみで展開するブランド。
浅草まで行く機会がある人は絶対に現地で履いてみてから買ったほうが良いけれど、特にウィズ展開しているわけでもないし、試着後の交換は可能みたいだし、結局はある程度履きこまないとわからないこともあるから割り切ってwebでトライするのも良いのではないかな。

RENDO、ビジネスシューズとしては悪くないと思う。
最近はすぐに原材料高騰とかで何千円も値上げするブランドが多い中で、1足4万円程度でグッドイヤーウェルテッドなのだから、それだけでも購入検討に値する。中間マージンカットのためなのか、直販のみなのが残念。この手の革靴は百貨店に流通してもそもそもの売れ数が増えないからスケールメリットは効かないのかなぁ。

こういう真面目なブランドが成功して、もっと国内タンナーとも「連動」してもらってAll Japanで世界に挑戦する靴がどんどん出てきたら良いなぁ、と思うのでした。



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RENDOがAmazonでも買えるようになりました。靴は実際に試着してみないとわからないので最初は店頭に行くことをおすすめしますが、2足目以降ならお手軽でいいかもしれません。いまのところレザーソールはキャップトウ(ストレートチップ)だけみたいですね。




国産キップを使った国産靴なので、クリームもなんとなくブートブラックを使っています。この靴に使われている革は少し凹凸が目立つので、気になる人はキャップの部分にワックスを塗るとよいかもしれません。