2018年10月14日日曜日

靴を買いました - REGAL 2235NA -

いまさらながら買ってしまいました。国産靴のレジェンド、REGAL 2235NA。



休日用の靴は僕の中でここ数年の傑作 W10BDJ を筆頭にいくつかあって、そもそも履く機会を考えると数の面では充実しちゃっているものの、やっぱりこの靴いいよなぁ、ということで。

国産靴の歴史には欠かせない靴。リーガルの代表作でもある。
いま40代くらいの人たちが若いころに買っていた雑誌やムックにはこの 2235NA が盛んに広告されていた。かかとにかかる重さが飛行機なんちゃらとか、「丸と角」みたいな広告。

2235NA はもともと百貨店の特注品をベースに1972年から現行型番で売られているそうな。2504NAとは違って、その当時からほぼ変わらない姿で今に至る。カジュアルなスタイルに合わせているところをあまり見かけないにも関わらず、どう考えてもカジュアル用途と思われるこのデザインが売られ続けてきたのも、日本では靴のデザインはあまり意識されていなくて黒靴であればなんでもOKということも一つの理由かも。2235NA のブラックをビジネスで履いている人を時々見ますので。

若いころはこういう重厚なウイングチップ(あえて「フルブローグ」ではなく「ウイングチップ」)はちょっと苦手で、どちらかというとプレーントウのホワイトバックスや2236NA のようなシンプルな形が好きだった。不思議と歳をとるとともに好きになってきたこのデザイン。



もともとリーガルは米国の Brown Shoe Company(現在は Caleres。リーガルが販売している Naturalizer ブランドを保有。ちなみにこの会社は今は Allen Edmonds の親会社) が買収した Regal Shoes のブランドをライセンスしたもので、その歴史をみても文字通りアメリカントラッドな靴。そののち Regal の商標権(米国他一部の地域を除く)をブラウン社から取得し、いまは「リーガルコーポレーション」の自社ブランド。

若いうちに手に入れておいて履き続けていたら格好良かっただろうな、と思わずにはいられない。
そろそろと思っていた頃に W10BDJ と衝撃的な出会いをしてしまい、いまさらながらのお付き合い開始となった。


2235NAはなんとなくサントリーウイスキーオールドと立ち位置が似ている気がする。
高度経済成長期に頑張っていたニッポンのお父さんのあこがれで、手に入れたらもうそれは大切に扱う自慢の一品。
いろいろな情報に容易にアクセスできるようになった平成の時代に入ると、相対的にその「ありがたさ」が下がってしまっているけれど、古くから靴に目利きがあった人のクローゼットにあることが多い。



W10BDJ と比べると、もう少し大切(?)に履くような靴。
フルブローグの出で立ちからすれば雨だろうがぬかるみだろうが気にしないのが粋とは思うものの、2235NA のデザインはもう少しきれい目に履く靴にみえる。

W10BDJ は傷がついても格好良いと思うし、むしろ多少の傷があるのだけれどきちんとお手入れされている感があるような履き方が格好良い。言い換えれば、傷ついたり雨に降られたりすることを気にする靴ではないけれど、メンテナンスはしっかりしている道具という位置づけ。

2235NA はその逆に、あまり傷が目立ただず、履きこまれているけれどお手入れ感が出すぎない(自然な感じをほんの少し超える)程度が似合う。この靴は何となく品があるというか優雅なたたずまいというのか、傷だらけになると無理して頑張っている感が出てしまうような。キレイ目ジャケパン系であれば W10BDJ より 2235NA のほうがサマになる気がする。グロメットの違いかもしれない。


さてこの 2235NA、最近の全体的なフィッティング重視のものとは違い、靴の前半部に締め付け感がないゆったりとしたラストに感じる。この靴を履いてから 01DRCD を履いてみると同じメーカーでもラストの考え方がずいぶん違うということに気づく。
前半部がゆったりといっても、箱に足を入れているような感じではなく、かかとは無理のない程度に触れて、甲側は紐で抑えるという感じ。

適切なサイズを選べばそれなりのフィット感があるものの、甲薄め、かかと小さめの最近のトレンドから見るとデカい靴、緩い靴という位置づけになってしまっている。僕は 01DRCD からハーフサイズダウン、2504NA と同じサイズにしている。三の甲は 2504NA よりやや高めなのか、新品時点できつめにひもを結ぶとかなり羽根が閉じてしまい(1cm以下)、沈み込んだら少し緩くなりそうだ。

スコッチグレイン(型押し)仕様の革は箱から出した時点では結構硬くて、これは難儀しそうという印象を受けたけれど、デリケートクリーム多めに塗って、そのあとクリームをいつもより少し多めに入れたら柔らかくなった。ボールジョイントあたりの屈曲部はかなり柔らかい。

外側のくるぶしがあたるという感じは 2504NA に似ている。ここはとてももったいないポイント。もっともっと人気が出てもよさそうな靴なのに、間違ったサイズを売られ、おまけにパターンが古めなため「痛い靴」「疲れる靴」といったネガティブな印象ばかりが広まってしまっている。

ライニングは伝統的に布と革の併用。レザーソールの本格革靴ということを考えると、結構頑張っている値段設定。
2504NA あたりと比べるとビジネスシーンでこれを履こうとする人は少ないだろうから販売数量も限られてくるだろうし、この靴を購入する層はそれなりに靴を大切にする人も多いだろうからバカ売れするような靴ではないけれど、この靴が廃番になることはなさそうなので修理を繰り返しながら長く履けそう。

作りはとてもていねいで、さすがにリーガルの代表作だと感じる。
ソールのステッチやコバステッチ、靴の内部縫製のすべてに日本の工業製品っぽい均質な仕上げがされている。



リーガルを代表する靴でありながら、大人の男性が購入する革靴としての優先度が低いデザインの靴だったりもする。

「欲しい」とは思うけれど、手に入れる必然性がないというか...

僕も、やっと購入したという感じ。W10BDJ と 2504BD があれば休日靴はすべての天気問題なしだし、そのほかローファーやらスニーカーやらもあるしで、後から追加して購入する理由があまりなくなってしまっていたので。

それなのにあきらめきれなくて買ってしまったのは、靴の完成度や使われている部材については W10BDJ のほうが一歩上をいっているのに、それに負けない存在感は僕が歴史を感じてしまうが故か。



初回のお手入れ。
この靴は型押しの厚手な革を使っているため、ブートブラックのデリケートクリームを気持ち多めに塗り込む。
塗ったら型押しのしわ部分やメダリオン部分にも入るように軽くブラッシング。その後30分くらい放っておいた。
ある程度浸透したかなと思うくらいで、再度デリケートクリームを入れる。歩くとしわが入りそうな部分は気持ち多めに塗り込んでいく。
この時点で表面が少しべたつくというかしっとりとしているというか、ややふっくらした感じになってきた。

そのあとは乳化性クリームを。型押しの部分があるためどうしてもいつもより多めに塗らないとまんべんなくいきわたらない(気がする)。余分なものは後で拭き取ればよいので、まずは全体に伸びるように少し多め(片足米粒10個にもいかないくらい)を塗る。
ついでにコバの部分にも塗り込んでおく。
型押し革の凹凸やブローギング、ギンピング(ギザギザ)があって塗りにくいので、クリームを少し塗っては軽くブラッシングの繰り返し。



ソールはいったんブートブラックのソールコンディショナーを塗ってみるものの、新品時はあまり浸透しないで意味がなさそう。こちらはある程度履いてからもう一度塗ることで初めて意味があるような。

クリームを塗り終えて10分ほどしたら軽く室内履きしてみる。
この最初のしわ入れの時が結構ドキドキしたりする。

僕は靴の構造と足との相性で自然にできるしわが良いと考えているクチなので、特にボールペンなどは使わないで自分の足を曲げることでしわを入れる。

まずは気持ち曲げる程度。
これでだいたいどこに力がかかるかが何となくわかる。

次第に曲げる角度を深めていっては戻してを繰り返し、最後に思い切り曲げる。
この時、クリームをある程度入れて革が柔らかくなっていればなっているほど自然なしわが入る。ボールガースに余裕がある靴だと大きくしわが寄ったりすることもあるが、気にしだしたらキリがないので、自然についたしわは受け入れることにする。2235NA は型押しの革ということもあり、しわがあまり目立たない。


今後もお手入れはブートブラックのデリケートクリームを中心にときどきニュートラル乳化性クリームで。


ネットで紹介されているいろいろな方の靴を見ると、やや濃いめのクリームでお手入れをして深みを増すようなお手入れをされていることが多いような気がする。もともとの赤が入った茶色を少し落ち着かせて、ダークな感じに寄せている。

それも格好良いけれど、購入時点でも何となく立体感のある仕上がりだし、そのまま様子を見てみようと思う。


僕はジーンズやチノパンの時に履くので、テカリはそれほど必要ではない。
ちょっとしっとりと落ち着いているくらいのほうが良い。
この靴だったらブートブラックよりM.モゥブレイのほうがあっている気がしないでもないけれど、リーガルブランドクリームの製造元であるコロンブスを使うことにする。



登場から45年以上販売されているモデルで、もう何足売れているのかわからないくらいなのに、特にこの茶系のものは案外履いている人に出会うことが少ない。地下鉄の駅でも、繁華街でも見かけることがほとんどない。
持っている人は多いとするのであれば、この靴を持っている人はほかにもたくさん靴を持っていて登板頻度が低いのかな。
いかにも定番すぎて、ちょっとわかる人ならだれもが 2235NA だってわかるところが気恥ずかしさを生んでしまうのかも。

形、色、素材のどれを見ても、あまり似たような靴は国産では見かけない。
いわゆるただゴツイ系のフルブローグは数多くあるけれど、アイビー寄りなデザインでありながら、日本人がていねいに作り上げた無骨と繊細が共存するデザインは独特な雰囲気を醸し出している。

僕が靴を買うのはもはや道楽に近い趣味みたいなもので、数が増えてくると一つひとつのローテーション間隔が必然的に長くなってしまう。一つ靴を買うと、ほかの靴の当番頻度が伸びてしまったりめったに履かなくなる靴が出てきてしまう。
靴って履いて、お手入れしてなんぼなのでそろそろ打ち止めにしようと思ってはいるものの、また買ってしまった。

2236NA 購入から25年経て購入した 2235NA。
リーガルの定番といわれる靴はいろいろな意味で「重い」。



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2235NAはやっぱりいいですね。



2018年10月5日金曜日

革靴の状態を見える化

革靴の状態って、素人の僕にはよくわからない。

何年も靴のお手入れをしていたところで、せいぜい自分の靴を磨いている程度ではどのくらいクリームを入れればよいのかということはいまだ確信を持てないでいる。
表面の状態からは判断できる技量も感性も経験もないので、何となく期間が空いたり酷使したりしているなと思ったときに乳化性のクリームを塗る、なんてことを繰り返してきた。


先日、ひょんなことから革靴の状態を見える化できることに気が付いた。

Google+ のコミュニティ「靴好きもそうでないひとも、革靴について話そう。」で「おしりふきを使って靴のお手入れをする」ことが紹介されていたので、僕も家にあったおしりふきを使って W10BDJ を拭いてみた。



おしりふきは比較的水分が多いので、均等に拭いているつもりでも水が良くしみるところとそうでないところがはっきりわかる。

これまでは固めに絞った布を使っていたので気づかなかったのだけれど、半びしょびしょ状態にしてみると水をよく吸う(しみる)ところとそうでないところが一目瞭然。


僕にとってはなかなかの大発見だった。


一見しみているように見えても、すぐに乾燥してわからなくなる。おしりふきはそのほとんどがただの水ということもあり、乾いてしまえばもとに戻る。
靴を拭いたらすぐに写真を撮って状態を記録しておくことにした。

拭き方の問題もあるかもしれないので何度かしみないところを意識的に拭いてみたけれど、やっぱり水がしみこまないところは何度やってもしみこまない。

意外だったのはしわの部分はそれほどしみにならず、しわによって革が寄る部分のほうがしみこみ具合が多かった。
考えてみればもともと平らだったものが変形して谷になるより山になるほうが表面上の密度が下がるので、繊維が開くことで水がしみこみやすくなっているのかもしれない。

どちらかというとクラックを気にしてしわのところをていねいに塗り込んでいたけれど、これからは革が寄る部分も意識してみよう。
しわになる部分はしっかりとしわが伸びる状態になってからクリームを入れたほうがよさそうだ。



ちなみにこのおしりふきは雨に濡れて表面がボコボコになった時や塩を吹いたときなどにも活躍している。いままでティッシュを濡らして使っていたけれど、こちらのほうが楽だし扱いやすい。

鏡面磨きのハンドラップではないけれど、本来の用途とは違うものの靴のお手入れにはこれほど便利なものはない気がしてきている。

箱買いしていると1枚2円以下になることもあるのでウェットティッシュより安上がり。

Google+ のコミュニティは多くの人の体験談が書かれていていつも発見がある、感謝。


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2018年9月30日日曜日

REGAL 2504 の魅力

アクセス数を見てみるとここしばらく 2504NA の記事がトップになっている。



靴に関するレビュー系の記事は、書いた直後にアクセス数が上がって、その後あまり目立たなくなることが多いのだけれど、この 2504NA の記事はアクセス数が落ちることがなく上位をキープしている。

さすがニッポンの名靴、といったところだろうか。


最近は休日に 2504BD を履くことが多い。
やっと涼しくなってきたこの時期、例年はライトブラウンやベージュなローファー系の靴が活躍する。
特に今年は猛暑ということもあり、あえて暑苦しい雰囲気のある 2504 を履くこともないなと頭では思っていたものの、真夏の暑い日もなぜかこの靴を履いてしまっていた。
革靴なのだけれど、僕の感覚ではスニーカーの延長っぽい位置づけというところが大きい。

理由を説明するのは難しくて、でもなんだか気楽に履ける靴。
ネイビーという色のせいなのか、それともデザインなのか、理屈ではなくてそういう気分になる靴。ブラウンやブラックもまた合わせ方によってはカジュアルでも十分いけるように思える。

オシャレに関して実力のない僕にとっては、2504 は格好をつけるために履くのではなくて、外出の時に何となく合わせている靴。
個人的には W10BDJ や 3043SF のほうが全体的なバランスが良くなる気がしつつも、なんだか肩に力の入らない靴の位置づけになっている。
(カミさんには「かっちりした靴はデニムには合わない」といわれてあまり評判がよくない。W10BDJ のほうが好評)



ブラックとブラウンの 2504NA は REGAL SHOES 専売モデルではないので、街の靴屋さんからネット販売までいろいろなところで販売されている。


輸入物も含めたグッドイヤーウェルテッド製法の靴全体から見るとそれほど高価な位置づけではないものの、広い価格帯の靴を扱う街の靴屋さんでは、いわゆる高級靴扱いとしてお店の奥に鎮座していることも多い。

いまとなってはグッドイヤーウェルテッド製法の革靴の中でも特にお手頃なわけでもなく、履き心地が特に良いわけでもない。
同じ値段出せばショーンハイトでスムーズレザーのレザーソールを買うことができるし、国産にこだわらなければレイマーや神匠でかなり作りこんだ靴を買うことができる。


だけれど、2504 は理屈で履く靴ではない気がする。

2504NA は、もうそれこそ「コレしか履かない!」という筋入りのかたから、オンオフ兼用でフルに使いまわしている上級者まで、それこそ数多くの人々に支持されてきたモデル。
人によっては想い出の靴であり、歴史の一部でもある。

2504NA の魅力のひとつが「変わらない安心感」。
今日買った 2504 を、おそらく10年後でも修理ができるだろうし、買い増しもできるだろう。

必ずしも中庸なデザインではなくて、どちらかといえばアメカジよりのゴツイ雰囲気は、クラシックなスーツスタイルにはやや主張が強すぎる。 なので、本来であればバブル時代のダブルスーツの時にしても、最近のクラシック調のスーツにおいても、足元にこれを持ってくると教科書的にはなんだかな、という違和感を感じる。

ただ、それでもいいのではないか、と感じてしまうのは、やはりここニッポンの風土に根ざしている靴という意識があるからかもしれない。同じく日本の風土に合ってインスパイアされたスーツというか背広にはこれがピタッとはまっているように見える。

料理におけるカレー南蛮や餃子が日本の風土や嗜好に合わせて独自の進化(「変化」かもしれない)を遂げたのと同様に、ビジネスシーンにおける足元についても欧米とは異なる過程を経ていまに至る。


ギョーザ靴と揶揄されがちなスリッポンも、イタリアあたりが発祥の靴の一つの進化系であるし、日中も靴を脱ぐことがある日本のビジネスシーンではオシャレと使いやすさが両立していたがゆえにここまで広まったのではないだろうか。

日本では靴を脱ぎ履きする回数が欧米に比べて多いので、足と一体化するような靴よりは脱ぎ履きしやすい靴のほうが理にかなっている。
いまでこそ紐をきっちり締めて履くことに理解がある人が役職者に増えているけれど、ひと昔前であればお客様先などでいちいち靴紐をあたふた結んでいるような新人を快く思わない上司もそれなりにいた。
靴ベラはかかとを壊さないようにするものではなくて、無理やり靴に足を押し込めるサポーターとして使われるケースが多かった。

そもそも家で靴を脱ぐのがあたりまえな日本では、職場(屋内)で靴を脱いでスリッパに履き替えるなんて人もいる。食品系の企業では企業文化の一つとして職場では履き替えるなんてところもある。

いい歳でありながらいまだに紐靴をデカ履きする人が多いのも、ベッドに入るまでは靴を履くため靴を足と一体化させる必要がある文化ではなく、素足を最も快適と考えることをより優先する文化であることにも一端がある。

2504NA のかかとが緩めなデザインはこうした背景があることを踏まえると、何となく理由のある形をしているようにも見えてくる。



素材の観点からはガラスレザーかつラバーソールは一年を通して降水量が多い日本の気候でヘビーユースには適している。
東京に住んでいると忘れがちだけれど、大都市圏以外では舗装されていない道路を歩くことが一般的で(舗装されている道は車で移動する)、あぜ道や砂利道を頻繁に歩いたり、自転車・バイクに乗るような場合はレザーソールよりラバーソールのほうが都合のいいことが多い。

欧米基準では変に見えることが、日本ならではの理由によるものであったり、そもそも文化・自然環境・利用シーンが違う社会において独自の進化を遂げることもあるので、それぞれの国々で定着したものが本家のルールから逸脱しているからといって低い評価をすることもないと思っている。
本家本流の考え方は尊重しつつ、自分(販売されている方ならお客様)が所属しているコミュニティの文化も同じくらい尊重しておかないと、ファッションってコミュニケーションの道具を超えて、他者批判の根拠にもなりかねない。


2504NA のガラスレザーは耐久性はそれなりにしても、お手入れが簡単で修理もできる。
ビジネスパーソンが必要とする要件をある程度バランスよくまとめた靴だからこそ、長続きしてきたのではないだろうか。



2504NA は履き心地についても(最近の靴と比較すると)独特。

足首周りは日本人に合わせてなのか小さめに作られているので、適正サイズを選び、紐をきっちり縛ると緩さや大きさを感じにくい。
トウから一の甲周りにゆとりがあるので緩い靴に見られがちだけれど、外羽根の位置がやや開き目なので、足がそこそこ薄い人でもサイズをきっちり合わせてみると二の甲から三の甲はタイトに履くことができる。

どちらかというと薄目な足の人にはくるぶしが当たって痛いという状況が生まれがちなデザイン。10回、20回と履くうちにそれは不思議と収まってくるものの、痛い思いをさせやすい靴というのがもったいない。
この状況はデカ履きだとさらに強調されるはずなので、まさにサイジングが命な靴といえる。


アッパーに使われているガラス仕上げのレザーは意外とキズに弱い。
実際、同じお手入れをするのであればスムーズレザーのほうがいい状態を長持ちさせることができる。ガラス仕上げはキズなどで塗装面がはげると補修が意外と面倒だったり、擦った跡をクリームでケアするということが難しい(僕には)。
これが新品状態から悪くなる一方という印象を強く与えてしまっているのだけれど、ガラス仕上げの味はここに出るという気がしないでもない。

いわゆる「ボロボロ」というのはキズが多いことではなくて、きちんとお手入れされていない汚らしい状態なんだと思う。
ビジネスシーンで履く靴なのだから傷つくのは避けようがないし、傷ついたり汚れたりするからお手入れの意味が出てくるし、そのお手入れによってキズもまた靴の個性の一部になったりもする。
ガラス仕上げの場合、表面が削れると白い層が出てくるけれど、多少であれば補修クリームなどで目立たなくできるので、キズを恐れて四六時中靴に意識が向かってしまうより、ふだんはそんなこと忘れていて、キズを発見したら(前向きな気持ちで)全力でその補修に意識を向けるほうが有意義な付き合いではないだろうか。



2504NA は必要以上にお手入れに気を遣わなくてもきれいな状態を維持できて、多少の雨ならば靴下をぬらさない安心できる靴。
派手さはないけれど、ニッポンのモノづくりの良さを感じることのできる靴。
愛着を持って長く付き合うこともできる靴。

2504NA には魅力がある。
デザイン、素材、作り、履き心地、歴史、価格、手に入れやすさ、修理の容易さなど求めるものは人それぞれ。
2504NA はそうした多くのニーズを受け止めることができたからこそ今日まで残ってきた。相対的なありがたみは下がってきたかもしれないけれど、世代を超えて語ることのできる靴として、そしてニッポンのモノづくりを感じることができる靴として、次の世代を担う人たちにもぜひこの靴の魅力に気づいて欲しいと思わずにはいられない。



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ふだんのお手入れはブラシだけで十分かと。




クリームはときどきしわの部分を中心にデリケートクリームを。


2018年7月30日月曜日

REGAL 01DRCD の魅力

ここ1カ月くらい、REGAL 01DRCD の記事へのアクセスが増えている。


先月までは 2504NA がいちばん多くて、「さすがは 2504!」と思っていたら、7月に入り 01DRCD のほうが増えている。そんなわけで、改めて 01DRCD について見直してみた。


僕の 01DRCD も気づけば5年を経過した。


販売も継続されていて、REGAL SHOES 専売モデルではない一般販売のモデルとしてはなかなかのロングセラー。
リーガルの中では流行にあまりとらわれない正統派モデルで、インポート素材を使っているにも関わらず4万円を切る値段設定という「ちょっと頑張ったら買えるかも」的なゾーンが支持を受けているのかもしれない。


たまたま僕の足にとってダメージが少ない靴ということもあり、おおむね週1回弱の登板をしていて、天候が悪い日も履いているにも関わらずオールソールまでもう少しいけそう。

アッパー側も大きな傷などはなく、全体としてはやや粗が目立ってきたもののクレム1925で十分いい感じに仕上がる。

ライニングも履いている頻度からすると擦れが少ないようで、かかとはピンポイントで擦れている。かかとはやや大きめのつくりではあるものの、靴の中で足があまり動かないこともあって擦れが少ないのかもしれない。



購入当初にやや華奢な印象を受けたのは、ソールを薄く見せるヤハズ仕上げやきめの細かいアッパー素材が理由かな。
実際にはほつれたり剥がれたりといったことがなく、当初から歪んでいたような土踏まずもいまのところ問題がない。



お手入れは購入時からずっとサフィールノワールを使っている。
水洗いをしたとき以外は数カ月に一度くらい水拭きしてからクレム1925を薄く塗っているくらいで、表面が明らかにボコって来た時にステインリムーバーを使う程度。ふだんは馬毛のブラシでほこり落としと、擦ってしまった跡を目立たなくするためのからぶきくらい。


ビジネスシーンで使う道具としてはとても完成度が高いモデル。
デザイン、価格、素材、アフターサポートとどれもが一定以上の満足をしている。
僕はヒロカワ製靴のスコッチグレインを履いたことがないので同価格帯競合の実力を知らないとはいえ、おおよそ3万円から5万円くらいのレンジにある靴としてはベストバイに近い位置づけなのではないかと思う。

まず、デザインがシンプル。 意外とロングノーズでありながらもトウの丸め方とキャップの大きさがゆえに、それほど長い感じがしない。コバの張り出しも控えめで、極めてスマートなスタイル。キャップが少し大きいところにリーガルなりの和風を感じる。

次にお手入れのし甲斐がある。
01DRCDのアッパーは、クレム1925などのようなビーズワックス成分が多いようなクリームで磨くと簡単にかなり光る。いわゆるじっとり系ではなく表面がつややかに光る系で、お手入れ技術がそれほどでもない僕のような人でも満足度の高い仕上がりになる。

そして、履き心地が良い。
やや革靴ビギナー向けにセッティングされているのか、かかと周りにクッション性のある素材を入れているため、RENDOやペルフェットと比較すると柔らかな包み込まれる印象。
シェットランドフォックスのグラスゴーも同様な履き心地なので(ラスト形状によるフィッティングではなく、ふわっとした感じが)、リーガルにおける最近のこのプライスゾーンは意識的にかかと周りを柔らかくしているのかもしれない。


いわゆるシンプルな定番系のキャップトウって、多くの靴を企画・販売しているリーガルでもほとんどなかった気がする。ときどき出てきても、すぐに終売となることがほとんどだった。
唯一の正統派定番モデルと思われる W121/W131/W141 も、BOSのサンプルを兼ねているが故かスクエアトウになっていて、それはそれで伝統的なデザインではあるものの、やっぱりラウンド形状の靴と比べるとどうしてもちょっと外れている印象だった。

リーガルブランドではあまりレザーソールを推しているように思えないので、01DRCDもひょっとすると企画商品だった可能性が高いけれど、結果、

・「ふつうな形」をリーガルで欲していた層への訴求
・レザーソールの靴にしてはリーズナブルな価格設定
・アノネイ社のカーフというアピールポイント

が受けたのか、想像以上にヒットしてしまっている気がしないでもない。

ひろく売れる靴ではないけれど、ちょうど靴好きが「一足買ってみようかな」と思うツボを押さえているような。
さらに、買ってみたら意外と履き心地が良くて、デザイン違いをもう一足という感じで輪をかけて売れると。
同一ラストのプレーントウモデルも出たことから見ても、意外とラストの評価も高いのかもしれない。

甲が高めという意見も結構聞くため、購入時には店頭でフィッティングをして決めることを強くお勧めしたい。
ぜひ店頭でサイズ違いを何度も試して、店員さんの意見も聞いて合う・合わないの判断をした後に購入してほしい。


REGAL SHOES に限らず、全国の靴屋さんや百貨店でも取り扱うことができるモデルのなかで、レザーソールかつスムーズレザーの定番的なデザインは貴重な存在。
リーガルはインポート靴を好む層にはイマイチブランドの訴求が弱いと思っているのだけれど、ソールにレザーを採用した靴はなかなか気合の入ったモデルが多い。

01DRCD のような息の長いモデルがある一方で、01NRDD のように1年も持たずに終売になってしまうモデルがあるのはただただ残念。リーガルなりのマーケティング戦略がその裏にあるのだろうけれど、希望小売価格で買うのをためらう人を増やすだけのようにも思えるし、セールで売り切ろうとするの目にしたら心を込めてその靴を作った職人さんはどう思うのだろう。

いつの日か、いまはまだ幼い息子が真新しい靴で社会人としてはばたく日、父親である僕は履きこまれ、磨きこまれた同じ靴を履いてその日を迎えられたら最高だ。その候補は 01DRCD かもしれないし、チャーチのコンサルかもしれないし、いまはまだ手に入れていない靴かもしれない。まだまだ先のその日までどれだけの靴が販売され続けているだろうか。01DRCD がその候補になる靴として残っていてくれたらとても嬉しい。


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いまやキャップトウの定番


お手入れは一貫してサフィールノワールシリーズを使っています。ほとんどはこのクレム1925のみで。


水洗いをしたときはデリケートクリームとレノベイターを使います。


ソールのお手入れはブートブラックを使っています。たまたま家にあるので。

2018年7月1日日曜日

Boot Black と M.Mowbray 比較その後

ショーンハイトで続けているブートブラックとM.モゥブレイ比較。


塗分けしているショーンハイト SH111-4 は天候をあまり気にしないで履いているということもあり、雨に降られたりもするとそのたびにリセットされるのか、革の変化に大きな違いはない感じ。


お手入れに時間をかけた後ははっきりとわかるその違いも、しばらく(1カ月ほど)履き続けるとどちらがどちらなのかわからなくなるくらいに落ち着いてくる。

ふだんのお手入れはブラッシングとからぶき、ときどき固く絞ったタオルでの水拭き程度なのでクリームが蓄積されて変化をもたらすほどの影響を与えていない感じ。

この辺りは僕の技量にも拠るところなので、靴磨きに一言ある人であれば継続的に違いを際立たせることができるかもしれない。


ブートブラックはそれ単体で仕上げることができる便利なクリーム。
成分についてはメーカーの言い分なのでどれほど靴に良いかは不明なものの、仕上がりはじっとりとしていて、いかにもお手入れしましたという雰囲気が出る。
コロンブスの高めのラインはビーズワックス多めな感じなのでつやつや仕上げがしやすい。

一方、M.モゥブレイはロウによる表面上の変化は多少感じるものの、やはりブートブラックと比べるとかなりサラッとしたテクスチャー感を活かした仕上がりになる。正直、これ単体では靴の輝きがイマイチなため単独で使うとインパクトが少ない。


僕はふだん使いのビジネスシューズにはほとんどワックスをほとんど使わない人なので、ブートブラックのような単体でそこそこ光るクリームのほうが好き。光らせることを重視するとクレム1925のほうが使い勝手が良いので、きめ細かなカーフの靴にはクレム1925を使う。

逆に、表面がある程度ポツポツしているようなキップ系の場合は、クレム1925のような油性クリームは厚塗りしがちなのでブートブラックのような柔らかめのクリームのほうが良さそうな気がしている。(あくまで気がするだけ)

少し立体感を出したいときは同じブートブラックのアーティストパレットをつま先とかかとに塗っている。


もし僕がワックスを使った本格的な鏡面派だとすれば、モゥブレイのようなあまり光りすぎないクリームをベースにして、つま先やかかとをワックス使って立体的に仕上げる。鏡面のメンテナンスをするついでにそれ以外の部分にクリームを入れることになるだろうから、基本は薄塗して頻度を増やす。

いまの僕のスタイルはクリーム中心にお手入れして、そのサイクルは長めのためやや艶のあるクリームを少し多めに塗ることが多い。この場合はブートブラックのほうがやや有利。

そんなわけで、ブートブラックのクリームはこれ一本的な道具としての登板頻度が上がる。



ブートブラックもM.モゥブレイもどちらも個性のある良いクリーム。どちらを使ってもクラックは起きていないし、雨に何度も降られるハードユースでも革が固くなることもない。カビが生えるということもないし、色が落ちることもない。

雨の日も晴れの日もあまり天候を気にしないで履いていれば、どちらにしても塩が浮き出る。


どちらも足の親指側に塩が出やすい。塩は足の汗由来といわれているので、どちらでお手入れしても通気性というか、浸透性は大きな変化がないのではないかと考えられる。


ソールについてもブートブラックとM.モゥブレイどちらの商品を使っていても減り具合に顕著な差は見られないし、
体感的な浸水も違うということもない。ブートブラックのほうがソールステインの色を若干落とす傾向があるような気がするものの、履き心地に関する部分で言えば違いに気づかない。
このあたり、僕は鈍感であるとはいえ、それほど大きな差を見つけられないのだから実用上はどちらにしても満足できる。


靴のお手入れに関して言えば、たいして靴磨きに時間をかけない素人レベルであるなら、永い間支持を受けてきたものであればよほどの違いはない感じ。むしろ、頻度だとか一回に塗る量といったほうが影響が大きそう。


ところで、よく雑誌とかで靴磨き屋さんに仕上げてもらった写真などを見ると、じっとりと光るような靴をよく見かける気がする。
そこによく書かれているのが「革に栄養がいきわたっている感じ」
これってビーズワックスがちょっと強めに入っているクリームを薄塗何回か繰り返すと同じように見えるのだけれど、それって革に栄養が入ったからなのだろうか。
僕には表面にとどまるロウ分の艶感がそう思わせているように見える。

と思うようになったのも、この比較でほぼ同じようにクリームを塗ったとき、明らかにブートブラックのほうがそういった印象を受けるけれど、実際にはどちらも同じくらいクリームが入っているようだし、ある程度塗り続けた後のコンディションに大差がないようにも感じている。

もし栄養分(というか、保革成分)がそういう見た目の印象を与えるのであればこの比較では明らかにブートブラックのほうが良いコンディションに仕上がってくるはず。数年単位でお手入れを分けているので、印象的な違いがみられてもおかしくない。
こういう「栄養がいきわたっている感じ」とか感覚的な言葉は商品の売り手が使うにはいいのだけれど、比較に使おうとするのであれば何らかの数値化できたら面白いのに。
コロンブスなど本格的な研究をしているところにはデータあるのかな。

もちろん、僕が仕上げた状態とプロが仕上げた状態とでは、一見似たように見えて革の内部的には全く異なる状態になっているということも考えられる。だからこそ、プロがやったものと素人がやったものを比較する指標があればよいのになと思う。定量データなどの客観的指標で比較できれば、それはもうプロに依頼する大きな根拠になるのだから、だれかやってみるひと出てきてもよいのにな、と思う。



どんどん新しい商品が出てくるので、僕のようなお手入れ好きというかお手入れ用品好きは試してみたくなるものの、おそらく普段履きに一般的なお手入れをしている限りではその差を際立たせることはできないのかもしれない。メーカーの差別化要因を僕が再現できないというのは製品を活かしきれずにもったいない気もしないでもない。

とはいえクリームを塗るという行為は保革のためのメンテナンスというだけではなく、それ自体が楽しみでもある僕には、表面上の小さな違いでも「面白い」と思ってしまう。

それは光り方だったり、革に吸い込まれていく感覚だったり、時には香りだったり。クリームにはいろいろな性格があるので面白い。

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ブートブラックシリーズ。単品でそこそこしっとりとしたつやが出ます。


M.モゥブレイはつや感はブートブラックより少ないものの、革にきちんと浸透して柔らかくなっている感じです。




2018年6月15日金曜日

REGAL 2504BD

2504NAのネイビーバージョン、2504BD。
2017年秋冬新商品。
写真では黒っぽく写っているけれど、自然光の下では結構鮮やかなネイビー(最後のほうにある新品時に取った写真のほうがイメージに近い)

独自の型番が振られていたり、ライニングが黒色だったりと、定番品のカラー追加というよりは、特別なラインとしてある程度の期間だけ販売されるのではないかと思われる。


この靴の購入が、実は前回の 2504NA を書くきっかけとなった。

いまはネイビーをビジネスシーンで履いている人が出てきているとはいえ、やはりどちらかというとカジュアル向け。
ジーンズあたりと合わせるのは茶系のほうがサマになる感じもしつつ、ややモノトーン系でまとめるなら意外といいかもしれない。ボリュームがあるので同色系でまとめても靴の存在感がある。夏場にはオフホワイトデニムのようなややボリューム感のあるパンツと合わせてもいいかも。


靴の作りについては全体の印象は前回の 2504NA と変わるところはない。あたりまえだけれどまんま 2504 なので。ただ、今回新品の 2504 を履いて改めて気が付いたことがたくさんあった。


まず、当初の足へのダメージがかなり大きいこと。やはり新品の 2504 は結構修業が必要な靴。くるぶしに履き口が刺さるような感じで、ひさしぶりにここの皮がむけた。
次にタンが少し長いのか、常に足首に刺さる感覚がかなり続いた。どちらかというとゴツイ足向けのラストと思っていたけれど、足首まわりはそうでもないのかもしれない。日本人向けのラストは足首周りが欧米製に比べてコンパクトなのはずっと以前からそうだったんだなと再認識。
三つめは羽根の部分がやはり厚めのため甲が少し痛くなった。外羽根部分の作りはやや重厚なので何度も屈曲され革が足の形になじむまでの時間が長い。羽根がしっかりしているのでタンが刺さりやすいというのもあるかもしれない。
この3点については、最近の靴ではあまり感じなかった痛いポイントなので、靴の形状や素材に大きな違いがあることが良くわかる。

そういうものだと割り切りがある僕でも「やっぱり痛い靴だな」と思ってしまうので、それこそ革靴が初めてという人がこの状態になったら革靴は「痛い」という印象が強くなってしまいそうだ。革靴経験が少ない人にはもう少し穏やかな入り方の靴のほうが良いかもしれない。

リーガルでいえば 01DRCD はこのあたり改善されているし、似たような形のショーンハイトの SH111-4 もやはりくるぶし周りは 2504 より低めに作られている。


一方で、やっぱり甲の屈曲部についてはそれほど硬い革ではないという印象で、指に刺さるような感じは一切ない。数回履いた後に指で押してみると思ったより柔らかい。
比較的新しいからなのか、厚手の革であるものの固いということはなさそうだ。
足の小指が痛いとか、かかとが痛いということはなくて、全体的にゆったりとしている。かかとのあまりから見ても全長はジャストサイズと思われるので、指回りのカーブ度合いなどつま先側はそれほど攻めていない。

しわの入り方は左右の足で違っていて、左足がこれまでの 2504 と同じように少しぷっくりとした大味なしわが入るのに対して、右足は意外と繊細なしわが入った。個人的には後者のほうが好み。素材の部位が違うのか、それとも加工に違いがあるのか不明だけれど、ガラス仕上げでも結構いい感じのしわが出せるのではないかと思ってしまう。




初回のお手入れに関してはブートブラックのデリケートクリームを多めに塗ってみた。

ガラス仕上げの革についてはクリームが入る入らない論争があるようで、入る派の人はしわの部分に細かなクラックがあるから浸透するとかで、入らない派は樹脂コーティングされているので意味がないという感じ。僕は前者のスタンスで、メーカーもクリーム塗っておけと言っているのだから、何らかの意味があるのではないかと思っている。

数回履いてからのお手入れも同じくデリケートクリーム。1カ月くらいたってから気分の問題でニュートラルのクリームをつま先、かかとを中心に塗ってみた。
多くが表面にとどまるからなのか、靴の光沢感が明らかに違うので、ピカピカを狙うならクリームを塗って磨くのも悪くない。冒頭の写真もほんの少しだけクリームを塗った状態。

ブローギングのないシンプルな形状の靴なので、クリームを塗るのも簡単。時間にして5分も使わないので気分転換の時くらいにやっている。

ソールはゴムなので基本ノーメンテ。クリームを塗るときについでに靴底をウェットティッシュで拭うくらい。濡れてもあまりカビなどの心配がないのもメリット。つま先の減りはレザーソールと比較すると圧倒的に少ない。

コバ周りは歯ブラシでニュートラルのクリームを塗ってみた。ここは革素材なのでクリームのメリットが出やすいはず。(リーガルの修理はリウェルト前提なので気にしなくてもよいという気もするけれど...)


僕にとってはビジネスシーンよりも履く頻度が少ないカジュアル靴なので、ガラス仕上げでラバーソールという雨にも比較的強いスペックは便利。

オフの日って外出して靴を脱ぐことも多いので、ちょっとした雨くらいなら靴下濡れる心配が少ないというのもありがたい。スエードの W13BCF はアッパー素材としては雨にも強いところはあれど、やっぱり浸水しやすくて結果靴下が汚れやすい。一度大雨に降られてからは晴れの日履いても靴下が汚れやすくなったので靴を脱ぐようなことがわかっている場合は控えるようになった。

小雨から普通の雨降り程度であれば十分この靴でいい感じ。
それなりの大雨でもなかなか浸水してこないのはラバーソールとガラス仕上げのなせる業か。土砂降り時にソールはつま先側から浸水してくるので、つま先側の縫い目部分にワックスなどをしっかり入れるとさらに防水性が高まるかも(通気性は下がるかも)

個人的には10数回履くまでは新たな靴のしわやそれに伴う微細なクラックができる気がするので、雨を避けつつクリームをていねいに入れることを心がけてみた。くるぶしやタンのダメージがなくなるくらいの時期からはほとんど天気を気にしていない。

W10BDJ のようなまんまカントリーテイストでもないので、汚れたらある程度綺麗に汚れ落としをして、クリームを塗って適度に輝かせるのがこの靴の真骨頂かと。お手入れそのものはラクではあるものの、決してお手入れをしないでよい靴ではないと思う。



リーガルはときどきネイビーを出してくる。

僕は 2504 の黒をカジュアルに合わせるのは難しいと思っているのだけれど(個人の技量と年齢の問題)、ネイビーだと合わせやすいかなと。ダークブラウンよりはややキレイ目にまとまる感じかな。


ラストやパターンの使いまわしができる定番モデルの色違いなので会社的にはリスクが少ないかな。今回は同素材かつ色も奇抜ではないので在庫リスクは少なそう。

定番はラストやパターンを新たに用意することもないので、どうせならときどきパターンオーダーみたいな形で展開してくれたらいいのにな。



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2504 はクリームが入りにくいようなので、デリケートクリームを少し多めに塗っています。



ときどき気が向いたとき程度に乳化性クリームを。コバの部分にも塗り込みます。


2018年5月29日火曜日

5年経っておもうこと

このブログは2013年5月に始めたので5年が経過した。

5年かかって書いた記事が65件、2016年以降は毎年ヒトケタしか書いていない。
コメント数は256。これには返信したものも含まれるので、いただいたコメントはその半数くらいとしても、こんなにものより多くのコメントがあったことはとても嬉しい。

書き始めたころは靴のレビューをするような内容が多かった。
僕は昔から革靴が好きだったということもあり、インターネットがいまほど普及していなかった時代には雑誌やムックなどを見ながら「いつかはストール・マンテラッシ」みたいな気分でいた。

誰もがインターネットをあたりまえのように使うようになり、個人でも情報を容易に発信できるようになるにつれ、レビューのような記事が増えてきて、読んでいてとても楽しかった。自分も書いてみようかなという軽い気持ちで Shoe* というこのブログを始めてみた。

2013年頃はそれほど革靴を詳細にレビューをするというブログがなかったのか、検索エンジンでも比較的上位に表示されることが多くなり、また、当時すでに有名だった Life Style Image さんで取り上げていただいたこともあり、ほぼ革靴のことしか書いていないニッチなブログにも関わらず、少しずつアクセスが増えてきた。


いまは別にスーツにブラウンの靴でもいいじゃん(というか、むしろお洒落扱い)、という意見が一般的だし、技術が進んで雨の日に適した靴もある。そういう世の中で「靴は黒」「天気は気にするな」というのは一歩間違えると老害ともいえる保守的な意見なのかもしれないと思うこともある。

僕は一介の「働くおじさん」なので、ビジネスシーンでの身なりはかなり保守的なほうが良いと思っているフシがある。社会って「相手がどう思うか」を考えずには成り立たないからこそ、最初は最も保守的なゾーンからいって、相手の素性がわかるにつれ違う面を見せる、みたいなほうがいいと思っている。
相手が真の洒落者であればあるほど、保守的なスタイルをうまくまとめている人を決して「個性がない」とは思わないだろうから。


巷には数多くの靴に関するブログやらサイトが立ち上がっていて、特に個人が趣味で書いているものは実体験に基づいていてとても参考になる。僕は科学的な分析だったり、実験的なものだったり、新しいことにチャレンジするような記事を見るとわくわくする。
Google+のコミュニティ「靴好きもそうでない人も、革靴について話そう。」に投稿される内容はとても興味深くて面白い。


この5年間、途中ほったらかしの時期もあったけれどいまでも続けているのは、やっぱり革靴というプロダクトになんか惹かれるものがあるという自分の内面と、コメントをいただく感動や、僕にはアクセス数という形でしか見えないけれどその数字ひとつひとつを築いてくれている読み手のみなさんのおかげだと思う。自分の興味あることについて表現する喜びを得たことこそがブログを始めて、書き続けてよかったと思う。



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5年を境に、というわけでもないのだけれど、靴以外の話題をつらつらと書いてみようと思うこともあり、*nota というブログをはじめてみました。

こちらでは靴以外について自分の思っていることとか、気が付いたこととかノンジャンルでいってみようかと。
ただでさえ更新頻度が少ないこのブログに加えて、さてどれだけ更新されるのか...




2018年5月12日土曜日

革靴のお手入れ

前回は革靴の選び方を中心に書いてみましたが、今回は靴のお手入れについて思うことを書いてみようと思います。

お手入れの世界はそれこそ奥が深くて、僕をはじめとしたお手入れそのものが趣味の一つのような人もいれば、それを生業として日々スキルを磨いている方もいらっしゃいます。
頂点を目指すとストイックな領域に入ってしまいますが、一方でお手入れにそれほど時間をかけたくないと思う人が多いのも事実です。

僕自身もワイシャツはコットン100%でないとダメなたちなのに、アイロンがけは結構面倒だったりします。
なので、「そりゃキレイなほうが良いけど面倒なのよ」という人の気持ちもわからないでもないです。

そんななかで、社会人一年生になって初めて本格的にビジネスシューズを履くことになった人向けに、「こんな感じでどうかな」という一つの方法を考えてみました。


以下、いつもの文体で。


革靴のお手入れについてはそれこそ数多くの方法があって、どれももっともらしい理由があってややこしい。

ブラシと乾拭きだけで十分という立場もあれば、クリームを欲しがるだけ入れるという人もいるし、見栄えだけでなく保護のためにワックス必須という人もいれば、ワックスは靴に悪いという人もいる。

こういう議論は目的(ゴール)を決めて適切な評価軸に沿って論じないと結論が出ないのだけれど、お手入れそのものも趣味嗜好の世界な部分もあるので究極的には何らかのマニュアルを参考にしつつ自分の思うとおりにやれば良いとも思う。

ワックスを使うことで見栄えと靴の保護を両立させることができるのは、ときどききちんとワックスを落とすことができる人で、あまり時間をかけたくない人であれば被膜が傷ついてかえってみすぼらしくなったりひび割れの原因になってしまう。

お手入れに時間をかけることができれば前者のほう靴が長持ちするだろうし、そもそもそんな時間がない(興味もない)人であれば中途半端にワックスのせないほうが長持ちする。

ステインリムーバーやサドルソープも一部で科学的に論じられていることもあるけれど、メーカーが言う適切な方法で使っていて靴がダメになっていないという意見もあるので、使い方間違わなければそれほど悪影響は無いのではないかとも思う。



社会人になってスーツを着て革靴を履くような会社であれば、身につけるもののお手入れは必須。
身なりはその人の仕事能力そのものを表すものではないけれど、仕事に対する態度の一端を表すもの。相手に対して仕事のトータルクオリティ判断の一つにもなる。

身なりが汚い高級すし屋や割烹は見たことがない。おもてなしや礼節が重んじられるシーンになればなるほどそれ相応の身なりへの気配りが必要になる。

いくら数十万円のスーツを身につけていても、パンツに折り目がなかったりジャケットがしわだらけだったりしたらそのスーツが持つ本来の力を発揮できない。
逆に、つるしの19,800円のスーツだとしてもパンツはいつもプレスされていて、ジャケットは襟のロールがふんわりしていれば十分すぎるほど格好良い。

革靴についても、高級な靴ほど素材が持つ力がでるものの、一般的なビジネスシーンであればむしろ汚れが目立たないピカピカの靴のほうがお客様にも、上司にも、同期の異性にも評価が高いのは間違いない。

身だしなみに気を配るということはビジネスパーソンである以上、必須の行いともいえる。

靴のお手入れというと「面倒くさい」という印象があるかもしれないけれど、日々のタスクとしてはそれほどでもなく、それでいて周りの印象を良くできるのだから時間の費用対効果はいいと思う。


と、あれこれメンドクサイ理由付けを抜きにしても、身につけるものがきれいであるって単純に気持ちが良いって感じでしょうか。



そこで、お手入れは面倒だけれど、やっぱりきれいなほうがいいよな、という人向けに「いったい何をするの?」ということについて考えてみたい。


まず、用意するものから

買うものは

・大き目な馬毛のブラシ

・乳化性の靴クリーム


だけ、これ以外はひとまず不要。
お手入れが習慣化されてきたり、その行為自体に面白みを感じてきたらいろいろ追加すればいいと思う。

家にあるもので賄うのが

・使い古しのインナーシャツ(コットン100%のもの)
・使い古しのタオル
・使い古しの歯ブラシ

の3点。

ない場合は専用のお手入れグッズを購入してもよいと思う。
靴のお手入れに慣れてきて消費量が増えてきたら改めて入手方法を考えるくらいでいい。

あと、直接お手入れには関係ないけれど

・シューツリー

はあったほうが良いかも。




毎日のお手入れ

家について靴を脱いだら「大き目な馬毛のブラシ」で靴全体をサッサッとブラシ掛けする。汚れを落とすのが目的なので片足5秒もやれば十分だと思う。
5秒やろうとすると、思ったより汚れていれば10秒以上やるので、まずはブラシを手に取る習慣が大切。
そのうち、寝る前に歯磨きをしないと気持ち悪いのと同じように、靴を脱いだらブラシをかけないほうが気持ち悪くなる。



週に1回くらいのお手入れ

使い古しのタオルを濡らしてからしっかりと絞って、それで靴全体を優しく拭う。
目的は泥汚れなどを落とすこと。あまり神経質にゴシゴシする必要は無し。むしろあまり強い力でこすってしまうと革にダメージを与えかねないので、あくまでも拭う程度。
タオルに前回の靴クリームの色が移るようであればクリームを追加で塗らなくてもよい。

夏場はカビやすいので、お手入れが終わったら風通しの良いところにおいておく。
エアコンが効いている部屋の片隅あたりが良いのだけれど、家族がいる場合は難しいケースもあると思うので、その場合は玄関に置いておく。(シューズクローゼットには最低一晩は入れない)



1カ月から数カ月に1回くらいのお手入れ

使い古しのタオルで拭う際に色があまり移らないと感じたらクリームを塗る。
クリームは使い古しのインナーシャツに少量を取り、全体に薄く塗る。
たいていは塗りすぎる傾向になるので、意識的に少なめにして表面に薄い皮膜ができればよいという程度。目安は片足米粒5個くらい。

次に歯ブラシでこれまた少量のクリームを掬ってコバの部分にも塗り込んでおく。

最後に使い古しのインナーシャツのきれいな部分で靴全体を磨いておしまい。
全体で10分もあれば終わる。
もし時間に余裕があれば、インナーシャツで磨く最後の工程の前に30分くらいおいておいてもよいと思う。

靴の中を軽くウェットティッシュで拭いてもよいかもしれない。特につま先には埃がたまりやすいので。

ここまでやれば隣の同期と比べて何倍ものお手入れがされている状態になるので、わかる人が見ても好印象なスタイルが出来上がる。
もし、靴のお手入れそのものが楽しくなってきたのであれば、自分の靴なんだし好きなようにやっていけばよいと思う。小さな失敗はあるかれもしれないけれど、今はネットで先人の智慧を拝借できるので調べながらやれば大きな失敗は避けることができる。仮に失敗してしまってもそれが経験値となり、次に買う高級靴では同じ過ちを繰り返さないはず。




僕自身は靴のお手入れ自体は好きなものの、普段履きのビジネスシューズは日々の汚れ落としくらいで、ブラシをかけて拭いておくくらいで十分と思っている。
見た目を重視するならある程度クリームの塗り直しが必要であっても、単なる保革というのであればそう頻繁に塗る必要もないのかなと。

数ヶ月に1度もクリームを入れないと保革ができないというのであれば、デッドストックの革なんてボロボロで使えないじゃん、ということになってしまうし、ずっと塩水漬けだったロシアンカーフなんて商品価値が出るはずが無い。

乾燥は大敵、油分を切らさないようにというのはそのとおりではあるけれど、その頻度や量についてはクリーム屋さんの過剰なセールストークに乗せられているのではないかと思う。商品が多すぎて、何を買えばよいのかわからなくなってくる。


とはいえ、僕のようなお手入れ好きはお手入れすること自体も好きなので、靴を極端に悪くしないのであれば、必要十分以上と解っていても、何らかのお手入れをしたくなる時もある。
これは栄養に必要な物を過不足無く食べればいいじゃんという意見に対して、カロリー超過や特定の栄養素に偏っても美味しいものを食べる事自体に価値を持つのと同じではないかと。

ツールである靴に必要十分なお手入れをするだけでは味気なくて物足りない。目的が革本来の力を活かすのであれば過剰なお手入れは本来の革が持つ力を発揮できないだけでなく、時間と材料費の無駄だけれど、お手入れすることが楽しいというのであればそれを優先させても良いのではないかと。
よくあげられるメイクで言えば、肌のコンディションを整えたいということはあるけれど、それ以上にメイクをすることが自体が楽しい、みたいな。

クリーム屋さんが高額商品を次々に出す反動で、実はそれほどお手入れをしなくても良いという意見が強くなりつつあるのは、緩履きに対するタイトフィッティングと同じで後者のほうが「わかっていること人」的な位置づけになっているだけな気がする。

なので、僕は好きな時に好きなだけお手入れをする。
忙しいときはお手入れどころでもないのでお手入れの優先度が低い靴にクリームを塗るのは年に1回くらいになってしまうこともある。

履く頻度が高い靴は雨に降られる確率も高く、塩も出てくるので水洗いをする。そのため、きっちりお手入れする頻度も上がる。

結局、必要に応じて靴のお手入れがなされる、と。


人生、必要十分なことだけを費用対効果で考えるだけでは面白くない。
革靴のお手入れそのものが趣味ならば、明らかにダメにすること以外ならばやってみるのも悪くない。お手入れの後、きれいになった靴はそれだけで気分がいい。

時間の使い方でどこに価値を見出すかは人それぞれ。単に面倒ならばごくごくシンプルに、何をもって必要十分なのかがわかれば、それをとりあえずやっておくだけでもいい。一度靴のお手入れに価値を見出すことができれば、それが喜びにつながり、楽しくなるのもまた事実。


靴のお手入れ論はもうそれこそ山のようにあるけれど、本当の最低限度ができるようになればあとは好きなようにすれば良いのだから、意外とシンプルな話。

まずは今日履いた靴をブラッシングしてみませんか。



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まずは汚れ落とし用のブラシと靴の色に合わせた乳化性クリームを用意します。とりあえず店頭で購入しやすいのはコロンブスのブラシとブートブラックのクリームかな。シルバーラインなら近くのお店で入手しやすいかも。




できればシューツリーを用意します。しわを伸ばす目的なので長さと幅がしっかり取れるものが良いです。
僕の使ったものの中でいうとディプロマットヨーロピアンがいい感じでした。




ちなみに歯ブラシは古くなったものをきれいに洗って使えばよいのですが、お手入れ用に安いものをまとめ買いしてもいいかなと思っています。



今回はクリームをなじませるためのブラシなどは用意していませんが、ブローグの靴などの穴があいているところやギザギザの部分にクリームを入れるためにはブラシがあると便利です。
布でクリームを塗ったら、すぐにブラシをサッサッとかけます。




仕上げもコットンのインナーシャツよりはネル生地っぽいもののほうが艶が出やすい感じです。

2018年5月9日水曜日

社会人1年生の革靴の選び方

4月から新社会人となったみなさん、おめでとうございます。
仕事をするって大変なことが多いけれど、実りも多いと思います。

会社によってはそろそろ初ボーナスの時期だと思います。
スーツだとか靴だとか、この時期いろいろとそろえようと思っている人もいるかと思います。そこで、ちょっとだけ人生の先輩として「ビジネスシーンでの革靴の選び方」のヒントを書いてみたいと思います。


僕はファッションの専門家でもなければ靴にまつわる仕事をしているわけでもない、ごくごくその辺にいるオッサンです。とても堅い職場で社会人デビューをして、いまは経営者や大手企業の人事の役職者と会うことも多い仕事をしています。

そこで思うのは、「一流と感じるビジネスパーソンの靴はいつもきれい」なことです。
必ずしも高価な靴を履いている人ばかりではありませんが、靴がいつもお手入れされている人が多い印象です。
(それをさらに突き抜けてしまう先代からのお金持ちははそうでもない気もしますが)



社会人1年生が靴を選ぶとき、まず最初に意識してほしいことは「天気を気にせず履けて、きれいな状態を維持できる靴を買う」です。


おそらく、ニッポンのサラリーマンのほとんどは靴のブランドについて興味もなく、ましてやカーフとキップの違いなんて意識していません。
すぐに見てわかるのは「色」、「形」、そして「きれいさ」です。

なので、お金が潤沢で1万円も10万円も大差がないという人以外であれば、無理してジョン・ロブやエドワードグリーンを買わずに、まずは3足買うことができるお値段の靴をそろえることをお薦めします。

最初に用意できるのが5万円がせいぜいなら15,000円くらいの靴、2万円が限界なら5,000円ちょっとの靴になります。

僕もそうですが、ちょっと靴に関する感覚がズレてきている人だと「革靴は3万円から」みたいに思ってしまいますが、年収数千万円の人でもガラス仕上げのゴム底を履いていたりします。

真面目に仕事を3年頑張れば、毎年チャーチを1足買えるくらいのお金を稼ぐことはできます。(結婚するとまた違うかも)

雑誌などを見ているとクロケットアンドジョーンズやらオールデンやら欲しくなる気持ちはわかります。でも、いまそれを買う十分なお金が無ければまずは身の丈にあったところから始めてみてはどうでしょう。

もちろん、アルバイトを頑張っていい靴を買えるならぜひチャレンジするのもいいかもしれません。ただ、忘れてほしくないのが「靴をきれいに履く」ためには最低でも3足をそろえることです。なので、まず3から5足の天気を気にせずローテーションできる靴をそろえることを優先するほうが無駄がないと思うのです。

それに、お給料の大半を靴につぎ込んでいる新人よりは、ビジネス書をたくさん読んでいる新人のほうが好印象ですし、結果、パフォーマンスも早く上がるようになるケースが多いです。高い靴を買うという行為より、身だしなみに気を使いいつもきれいな靴を履くためのお手入れをするという習慣こそが価値を上げることにつながります。

仕事の成果よりも天気が気になってしまうような靴はビジネスシューズとしてはイマイチです。晴れの日は意気揚々と高級そうな靴なのに、とたん天気が悪い日はいつも同じみすぼらしい靴というのもなんだか格好悪いですし。



次に意識してほしいのが「自分の革靴サイズを知る」ことです。


メーカーによってサイズの取り方が違うので全部が全部というわけではありませんが、革靴はスニーカーのサイズよりもかなり小さいものが適正サイズになることが多いです。

よく「リーガルのつくりは大きめ」とかいう話がありますが、つくりが大きめなのではなく、スニーカーと同サイズを選んでいるからかもしれません。

僕も足が小さいほうなので気持ちはよくわかるのですが、革靴初心者のうち(というより、若いうちかな)は24とかいうサイズを選ぶのに抵抗があって、少しでも大きいサイズを買おうとしてしまいがちです。

しかし、帽子と同じで自分に合ったサイズより大きいものはとても履き心地は悪いですし、歩きにくい。おまけに足に障害が出ます。
中敷きで調整にも限度がありますし、中敷き前提で大きい靴履くくらいならスーツも含めてすべて小ぶりにしたほうが結果体格がよく見えることがあります。

ちなみに僕はスーツをつるしで買うときも身長から推奨されるサイズの一つ下を買うようにしています。
着てみても小さいとは思えませんし、ゆるゆるのサイズより明らかに疲れません。袖からのシャツの出方が良い感じがしています。



この2点をしっかりと理解して靴を買うようにしていくと、おそらく数年後くらいから本当に自分に合った靴を買うことができるようになるはずです。

逆に言えば、何足か買って体感していかないとなかなか正しい靴のサイズはわからないものです。
シューフィッターの意見を素直に聞く心があれば、次のマイルストーンまでの到達は早くなるかもしれません。



さてここから、もう少し具体的な靴の選び方に行ってみようと思います。
おおむねスーツを着ている人が多い職場をイメージしています。
ふだんはジーンズでもお客様先にはスーツを着ていく、なんてケースにもあてはまります。


第1の鉄則「靴は黒を買う」

社会人の革靴の基本は黒です。
スーツやジャケパンの会社であれ、どんなおしゃれな職場でも黒い靴が合わないことはありません。
白いシャツを着ている上司が多いお堅い商品を取り扱う会社であれば問答無用で黒一択です。
「俺はそんな没個性を強制される職場なんてお断りだ」でしょうか。
黒い靴が没個性なのではなくて、靴の色で差別化をしなければならない中身の没個性のほうが上司の頭を悩ませます。僕の職場は比較的何を着てもよいところですが、問題は会社の中ではなくて「お客様」に与える印象であり、どんなに堅い職場に訪問しても全く問題ないスタイルの部下と同行するほうが安心です。
会社で誰も黒い靴を履いていないような職場であれば話は別です。その場合はもう少しお洒落を意識したサイトや店員さんのアドバイスが参考になるかもしれません。



第2の鉄則「サイズ表記は無視する」

サイズはあくまでもラベルです。数字が持つ意味を考えてはいけません。
24が小さいとか大きいとかではなく単なる記号でしかありません。
この数字に意味を感じてしまうとサイズ選びは失敗します。もっとも感じるなといわれても人間である以上感じてしまうのはしかたないので、その思いを封印して無視する努力をします。
デカ履きしたところでわかる人(=こうなりたいと思うお洒落な人)にはすぐにわかってしまいますし、ジャストサイズというのはそれだけで最高にエレガントです。
何とか大きく見せようとしてデカ履きしても傍目には数センチの違いってあまりわかりませんし、かかとが大きく余っているのが見えた瞬間にシークレットシューズばりの残念さが出てしまう気がします。



第3の鉄則「高級靴と比較しない」

知識が先行すると、「この靴はカーフじゃないし...」「ソールが革じゃないし...」「グッドイヤーウェルト製法じゃないし...」みたいに何かを比較して劣っているように思えてしまいます。
予算が限られているのであれば割り切りましょう。
資産数十億でもガラスのゴム底セミマッケイのひとたくさんいます。サイズの合っていないしわの大きいクロケットアンドジョーンズを履いている人よりもお手入れされたサイズぴったりのガラス仕上げゴム底リーガルの人のほうが何倍もジェントルマンです。
確かに高いものにはその理由があって、たいていはお値段に比例して良いものです。ただ、良いものというのはそれを身に着ける人にもそれ相応のパワーを要求するものです。
もし職場環境が全員ジョン・ロブを履いているようなところであればそれを買うことも一理あります。そうでない環境であれば、ジョン・ロブがあなたのビジネス上の評価を上げることにも同期の異性にモテることにも大した影響を与えません。



第4の鉄則「クラシックなデザインにする」

最初のうちにそろえるデザインはストレートチップ(キャップトウ)やプレーントウなどのクラシックなものにします。
いまは高い靴を買うことができなくても、いずれ買うことができる日が来ます。
そのときに最高に格好良いスタイルを完成させるためには、若いうちから「クラシックな靴に合うスタイル」を意識したほうが良いです。
ストレートチップに合うスーツ、シャツ、タイ。プレーントウに合うスーツやジャケットなど、靴を起点に全体のコーディネイトを意識していきます。
数年後、チャーチのコンサルを買ったとき、すでにあなたのスタイルは完成されているはずです。コンサルはあくまでも一つのピースとして自然に溶け込んだものになるでしょう。



第5の鉄則「ブランドだけで決めない」

リーガルがダメだとか、スコッチグレインがどうだとか、どこが良いだとか、先人の知恵は拝借するとしても、必要以上に「ブランド」のくくりにこだわりすぎないことも大切です。同じブランドでも商品ラインナップがたくさんあることもありますし、あなたの足にドンピシャかもしれません。「このブランドが好き」であればそのブランドの中から合うものを探しましょう。もし合うものがなければ諦めることも潔いです。




偉そうなことを書いている僕も、靴選びは失敗の連続でした。
だから、頭でわかっていることと行動できることが別だということは十分わかります。なので、この5つの鉄則のうち、全部でなくても一つくらいを実行したり、意識してみるだけでも遠回りが避けられるではないかと思っています。

自分で稼いだお金ですから本当に好きなものを買うのがいちばんとはいえ、社会人は「社会」に属しているので、その中で本当にあなたの良さが最大限に活きる選択がされることこそが最も価値ある選択ではないでしょうか。

満員電車が怖かったり、突然の雨で予定の外出が嫌になったり、公衆便所に入れなくなるような靴であるとすれば、ビジネスシーンでの道具ではなくなってしまいます。
クロケットアンドジョーンズがどうしても履きたいのであればその想いに忠実に従う選択肢があってもよいと思っています。そうした靴が仕事の活力を与え、ほかの人よりも積極的に取り組む源となるのであればそれが最良の選択かもしれません。
その靴が仕事の成果を阻害するのではなく、プラスに働く道具になるのであれば、買えるものを買うことは悪い選択ではありません。

多くの人にとってお金は有限ですから、トレードオフの状況の中でできる限り良い選択ができるような情報収集が大切ですし、一度決断して購入したらそれが高い靴でもそれほど高価でない靴でもあなたの靴ですからその靴で気持ちよく仕事ができれば最高です。

本当はチャーチが欲しかったのだけれど、とりあえず3足買うために3万円以下の靴を選んだとしても、それは「とりあえず」の靴でもないですし妥協の産物でもないと思います。現時点でのスタートラインであり、一つのマイルストーンです。時には雨に降られることもあるでしょう。また時には満員電車で誰かに踏まれてしまうかもしれません。そんなことがあったら、家に帰ってからしっかりお手入れしてみてください。新品の靴には出せない粋な風格が出てくることに気づくはずです。




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靴のお手入れには欠かせないブラシ。少し大きめが使いやすいです。

2018年1月27日土曜日

SHETLANDFOX 032FSF BRIGHTON

シェットランドフォックスのもう一つのフラッグシップ、ブライトン (Brighton)。

この靴はもうだいぶ前に休日用としてとある記念に買ったのだけれど、いまのところ休日靴のエースである W10BDJ を履くことが多くて出番が少なかった。
ジーンズあたりとはそれほど相性が良いわけでもなく、かといってジャケパンで気取って出かけることもほとんど無く、登板機会がなかなかなかった。

ブライトンはケンジントンと同様に、前半グッドイヤーウェルテッド、後半マッケイといった変則仕様。ケンジントンと似たつくりで同じ価格なのに、専用ツリーがなかったりと、いまいちフラッグシップっぽい扱いを受けてない感じのする靴。

ケンジントンがやや野暮ったい印象を受けるのに対して、こちらはスマートな雰囲気。
キャップトウはビジネスシーンでクールな印象を与えるだろうし、フルブローグは大人のカジュアルに似合いそう。
ただ、身に着ける側にもセンスが要求されてしまいそうな...
特にこのブラウン内羽根フルブローグというのはなかなか(僕には)難しい。


デザインはリーガル得意(?)のロングウイングチップタイプのフルブローグ。
内羽根かつロングノーズなのですっきりとした印象。
同じフルブローグでも W10BDJ とは全く異なるし、2235NA とも違う。カントリーテイストというよりシティテイストのため、ドレスやキレイ目スタイルに似合いそう。

ロングノーズというだけでなく、流れるようなデザインもあり、細く長く見える靴。

ソールのステインは当時のケンジントンと比べてとてもていねいな仕上がり。ややむちむちとした質感はプレステージラインといわれるだけのことはある。


シェットランドフォックスのブログで「ケンジントンIIから導き出された」と評されるラストは、ロングノーズらしさのある履き心地。少なくともケンジントン(IIではないほう)とは明らかに違う。

路線が似ているアバディーンとも感覚的に違う。


靴を見たときの直観としてはアバディーンと同様のタイトフィッティング。実際に履いてみるとブライトンは意外やキツキツではない作り。
サイズはアバディーンよりハーフ下げても、体感的には同じくらいの印象。旧ケンジントンと同サイズでちょうどという感じだった。

公式ブログではボールジョイントのあたりにゆとりがあると書いてあるけれど、僕はハーフサイズ下げていることもあり、ボールジョイント自体はアバディーンと同じようにやや抑えられている印象を受ける。とはいえ、履いた回数で考えるとややブライトンのほうがゆとりあるかなという程度。
つま先に向けてのカーブは少し緩いのか、小指から薬指があたる感じがそれほどないので長時間履いていてもあまり足にダメージが無く、購入当初は硬いながらも楽な靴という印象だった。

紐をきつく縛ると確かに全体的にフィットしている感じはあるものの、旧ケンジントンでは感じていた「甲の外側のフィット感」が弱い。
前面から見ると、旧ケンジントンのほうがねじれがきついように見えるので、そのせいかな。



ケンジントンのほうが外側のそぎ落とし度合いが大きいように見える。

逆に、ブライトンは底面内側の親指の付け根からかかとにかけてのフィット感が素晴らしい。
親指のいわゆる肉球がホールドされて、土踏まずはつかず離れずをベースにやや押してくるかもしれないという感じで、かかとに至っては足の形のお椀に収まっているような感覚を受ける。

ケンジントンが甲外側に感動を覚えるのに対して、ブライトンはソール内側が印象的。

ロングノーズなのでつま先をぶつけやすいことを除けば、ウェストマッケイの構造による購入当初からの返りの良さと、靴を履いていることを必要以上に意識させないラストとで歩くのが楽しくなる靴。


前回の 2504NA とは全く異なる方向性の靴で、かかと周りの両サイドも高さが低く、この靴でくるぶしがあたるような人は本当にまれのはず。
むしろ低すぎることによりかかとが包まれている感にやや不足を感じないでもないくらい。
かかとに関しては、包み込むように作ろうとすると技術的にも難易度が上がるだろうし、履き心地に違和感を持つ人も増えるだろうから、幅広い層をターゲットとするリーガルはやや緩めの傾向で仕上げることが多い印象を持っている。

ロングノーズ故か細い靴に見えて、実際はそうでもない靴。
一の甲周りはむしろ余裕があるようにも思える。
指先に行くにつれて少し余裕を持たせつつ、足首側に行くにつ入れてタイト目に仕上げているため、紐をきっちり締めて履く人にとっては靴の前半部分には不満を感じないのではないかな。
羽根が開くことを極端に気にしなければ多少甲が高い人でも問題ないし、結構甲が薄い人でも羽根が閉じきるまで締めればそれなりのフィット感になるのではないかと。

アッパーに使われているのはケンジントンでも使われているといわれているゾンタかな。
意外に大味なしわが入るやや硬い感じの印象を受ける革。
やっぱり繊細な感じがするイルチアに比べるとどちらかというと豪快な味付けがされているように見える。

ムラ感を出すためか後工程で色の仕上げをしているため、雨には弱そう。
いちいち天気を気にしない僕でも、何となく雨の日履くのもどうかと思う靴。


お手入れはいまのところサフィールノワールのレノベイタークリームを使っている。
気持ち、クレム1925のニュートラルより色落ちが少ない感じなので。

レノベイタークリームはどんな靴に使っても間違いない万能クリーム。
塗った直後はうっすら白くなるけれど、ていねいにブラッシングしてからぶきすると十分な光沢が出る。最近は靴が増えてきて、年に数回しか履かないものが出てきてしまっているのだけれど、そういった靴にはこのレノベイタークリームを年に1度くらい塗っている。

補色効果はゼロだから、色が抜けていくほうのエイジングならこれだけでもよいけれど、やっぱり靴はある程度補色をしたほうが味が出るので、もう少ししたら靴の色より濃い茶色のクリームを使おうかな。


ブライトンはブランドの顔にもなりえるモデルでありながら、ケンジントンIIのフラッグシップイメージが確立しているため、どうしても派生モデルっぽさが残る。
ブランドを代表する靴として、無難なノーズで万人受けするケンジントンIIがあるからこそ、同じつくりでイギリス的なロングノーズでちょっと攻めてみました、というところだろうか。
アバディーンもそうだけれど、ビスポークを意識したようなロングノーズは好き嫌いはあれど、写真で受ける印象と履いてみたときの印象が結構違う。(ように思える)

僕は休日靴として茶色のフルブローグデザインを選んだけれど、ひょっとするとこの靴の真価は内羽根プレーントウみたいなシンプルなデザインで発揮されるかもしれない。


最近のシェットランドフォックスは価格を抑えた靴の比率が高い気がしている。
カーディフとかバーミンガムってわざわざシェットランドフォックスで展開するラインなのかなという気もする。
もしリーガルが「REGAL SHOES」と「SHETLANDFOX」で店舗展開を完全に分けているのであればそういう商品構成も必要になることがあるのだろうけれど、同じ販売チャネルを使うのに 01DRCD と似たようなコンセプトを作ってせっかくのブランドイメージがぼやけてしまっているように感じる。

靴好きがいいと思う靴が売れるとは限らないので、裏には緻密なマーケティング戦略があるのかもしれないけれど、エジンバラとかブリストルのような世界的に見ても定番ラインナップになりそうな靴が消えてしまうのはただただ残念。


このところ僕の中では3万円前後くらいの靴が熱くて、ショーンハイトやリーガルの定番ラインに興味が移っているのだけれど、やっぱりそれなりのお値段する靴はいいですね。
よほど履きこまないと履き心地というのはわからなくて、履きこんでしまえば RENDO のようなしっかりとしたつくりの靴なら完璧にフィットするので、価格差は主に素材と仕上げによるところが大きいと思っている。個人的にはそこにお金払う価値は十分にあると思う。


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お手入れは僕の中で任せて安心なサフィールノワールレノベイタークリーム
ふだんのお手入れはこれだけあれば十分かと。塗りすぎはかえってコンディションを悪化させるので薄塗りで。



そこそこ艶出ししたいときはサフィールノワールクレム1925
いまのところニュートラルしか使っていません



ふだんのお手入れは大き目な馬毛ブラシで丁寧にブラッシングするだけ
あまりクリーム塗りすぎてもしかたないので



こっちのブラシも使いやすい。