2024年12月15日日曜日

New Balance ML574

ニューバランスの中で世界で一番売れていると言われているモデル、ML574。


グローバルスタンダードともいえる定番で、文字通り世界中で広く売られています。


私、ふだんのスニーカーは主にニューバランスのM576を履いています。過去にはM1400を履いていたのですが、販売が終了してしまったので同じSL-2ラストということでそれからはM576を履いています。休日も含めて革靴がほとんどであったため、スニーカーは1足を数年単位で買い替えるといったことをしていました。

カジュアル使いがメインのため、色はグレー。汚れが目立ちにくいという色合いもあり、公園でのちょっとしたボール遊びなんかもこれ一本でやっています。


今回はビジネスユースを目的として、ブラックのスニーカーを買い足しています。そのうちの1足がこのML574です。

M576が Made in UK であることに対して、ML574は同じコンセプトで製造をアジアの開発途上国で行うことにより原価を下げ、販売価格を抑えたモデルです。特に日本だと関税面から有利です。


公式サイトによれば、アッパー素材は「環境にやさしいエコな材料」である「ECOGREENスエード/メッシュ」です。メッシュ部分は本革と説明されています。


二層構造のミッドソールはニューバランスおなじみのENCAP。クッション性が高いといわれていて、確かに少しふかふかしたような履き心地です。ENCAPはニューバランスの標準ソール素材の一つであり、クラシック系の多くのモデルで採用されています。


ENCAPは軽さと耐久性を両立するためにEVAをポリウレタンで包んだ構造のため、このポリウレタンが加水分解しやすいと多くのサイトで書かれていますが、これまで私が履いたモデルでは特に問題になったことがありません。ソールより先に足首周りの内側がボロボロになります。

日本をはじめとした湿度の高い国々ではさすがに加水分解をするポリウレタンは厳しいとなったのか、アジアモデルのCM996はソールにポリウレタンを含まないC-CAPが採用されています。

おそらくは履き心地と性能(というかコスト?)的にはENCAPがいいのでしょうけど、店頭や倉庫での保管時に加水分解のリスクがあり、この手のクレーム対応するのもなんなので、アジア系モデルにはC-CAPを使っていると言ったところでしょうか。ややニッチな素材であるのか、CM996が欧米で売られていないことと何か関係があるのでしょうか。

個人的には少し硬めな履き心地ではありますが、接地感を感じるC-CAPもいいところあると思っていますが、膝や腰へのダメージ度合いなどいくつかの条件によってENCAPが有利なんでしょうね。もしくはC-CAPのライセンス料などが高いとか、別な理由があるかもしれません。

現在でも高級扱いとされ、ライセンス料などの価格転嫁がしやすいと思われるUSA/UKモデルにおいて、ENCAP採用がそれなりに多いので、第一優先はENCAPなのではなかろうかと思っています。


日本でおなじみCM996と比べると、ML574がトレイルランからオフロードを出自としていて、当初ロードランニングを目的にしていたCM996とはいちおうの差別化をしているフシも見受けられますが、タウンユースを目的として購入するほとんどの人が、この違いでどちらを買うか決めているケースはまずないでしょう。


ラストの違いを置いておくと、大きな違いとしてはやはりソール周りでしょうか。

日本だと996はC-CAP、574はENCAPとミッドソールの素材からその違いを説明されることがありますが、US製造モデルだと996はENCAPを採用しているので、ミッドソール素材ということよりも、あくまでもデザインコンセプトの違いだと思われます。

靴全体のコンセプトとしては元々はML574はオフロードでの安全性、安定性を意識した作りになっているはずです。

ソールのパターンだけでなく、硬さも違います。トレイルラン向けはソールが硬めになります。なので、街中で履くぶんにはCM996の方が屈曲性がよく感じられて履きやすいと思う人が多いはずです。購入のために多くのブログなどを参考にさせていただきましたが、たいていはCM996のほうが履き始めの評価が高かったです。それもそのはず、ソールが固くしっかりしていることも要求の一つであるトレイルラン出自の靴と、返りがよく軽い履き心地を要求されるランニングシューズを出自とする靴とでは、後者のほうが街中では歩きやすいに決まっています。(極端に言えば下駄と草鞋を比べるようなもの)

舗装されていない道を歩くために、ソールのパターンは前後の動きだけでなく、左右の動き(滑り)にも対応するような形状です。ML574の後継モデルのような位置づけもあるU574だと、このパターンの溝の深さがさらに大きくなっています。


この突起のせいか、雨の日のアーケードなど、もともと滑りやすい路面に対しては弱いです。もともとの靴のコンセプトがカバーする範囲からちょっとはみ出ているようなシーンではこの靴のマイナス側面が目立ちます。足腰が弱っている高齢者にはおすすめできません。

574の踵は大味の作りになっている分なのか、足首を包むように少し高めになっていてアキレス腱を掴むような感触が得られます。足首の保護という観点からしても少し包み込む形状のほうがオフロードでは有利と考えられます。

ニューバランスはブランドロゴを入れるためにぐるっと二の甲周りを大きな部材が一周しているので紐を締めた時の安定感があります。甲側を包み込んで、踵をスタビライザーで固めるという安定感重視の作りこみです。

踵の大きさについていうならば、ブーツなども踵が大きめですが、トレイルラン向けってほかの靴もこんな感じなのでしょうか。ニューバランスの利点であるスタビライザーの良さがちょっとだけ減衰してしまうのがもったいない。クロケットアンドジョーンズのオードリー3みたいにかかとが小さいモデルが出たら日本人にはいい感じになりそう。

シューレースの一番上から踵にかけての造形が、CM996はなだらかなカーブを描くのに対して、ML574はL字型になっていて、やや足との接地面積が多めになっています。

いまとなってはML574でトレイルランしようとする人はいないとは思うものの、公園で遊んだり、未舗装道路を散策するなんて時には適していると思います。


ラストはSL-2ラスト、SL-1がランニングを目的とした細めのシルエットであることに対して、ロードからトレイルランまでをカバーするために少し汎用性重視です。継続して単調なクッションを要求されるランニングと、ある程度の力のベクトルが一定ではなく臨機応変な対応が必要とされるトレイルランとの違いなのか、SL-1ラストよりは快適さと堅強性の両立を目指しているバランスがこのラストの最も売りなところです。

履いた感じ全体的にはSL-1ラストのCM996よりゆとりを感じるものの、やや前方へのドロップ気味な感じを受けますので、母指球から指先までを使ってしっかりと地面をつかむような感覚が得られます。

ラストの踵サイズに比べてアウトソールの底面積自体はそれほど大きくはなく、その割にはボールジョイントあたりは広めなことと併せて、やはり靴の前方での踏ん張り重視な印象です。


令和のいまとなっては、トレイルランにはもっと適した靴がたくさんあります。ML574をその目的をメインとして購入する人はいないと思います。もはやファッションとしてデザインが評価されているわけですから、そういう出自のストーリーをもとにした履きやすさ論ではなく、もっと気軽にこの靴は履くものだと思います。ニューバランスも、いまとなっては広くタウンユースも想定してのラインナップとして、オンオフ兼用のふだん使い靴として売っています。

ML574はカジュアル系OKな職場であればビジネスでも使いやすいです。ブラックのML574ではNロゴもブラック、ランニングシューズによくある反射板もないおとなしめのデザインです。購入時点の紐もややトーンが落ち着いたものとなっていて、全体的におとなしいデザインです。

全体的に少し丸っこいためカジュアル感が出がちですが、ボトムにややスリムなパンツを選択すれば全体としてはまとまるのではないでしょうか。(ただ、私はこの辺のセンスはあまりないですのでそんな気がするだけ)

機能面だけを優先して選ぶとどれもデコラティブなデザインに行き着いてしまい、私のセンスではまとめきれずビジネスでは浮いてしまう気がしてなりません。そんなわけで結局のところニューバランスでは定番と言われるML574かCM996が個人的には無難な選択として残ります。

校庭や公園など未舗装のところでちょっと遊ぶなんてケースもカバーできて、全国どこでも入手がしやすい。ミッドソールは高級モデルと同じだしスタビライザーなど機能面でもしっかりとしている。大量に出ていることもあり価格も1万円くらいとそれこそバランスが取れている靴だと思えます。グローバルモデルだからこその価格だと考えます。


スニーカーは一部のコレクターを除いては、履きつぶしてしまって買いなおすという運命になります。運動をするときに履くとなると靴が汚れたり傷ついたりすることは避けられませんし、私にとってはむしろそういうことをするときに必要とする靴です。

いつかは買い替えることになるからこそ、そのいつかの日にもまた手に入るだろうと思える安心感がこのML574にはあります。テクノロジーの進化の中で、でも変わらないモデルをニューバランスが作り続けるのは、こうした「変わらない安心感」もブランドイメージの一つとして大切に残しているからではないでしょうか。

革靴の世界にはリペア(修理)という考え方があって、ソールが減ったら直すことができます。なぜまた新しい靴を買わずにソールだけ直して履き続けるのかといえば、履き心地を重視するからです。ソールを変えてもいわゆるアッパー側はなじんだものを残すことで、少しでも見た目、履き心地を継続させようとします。修理してもどこか一部は「うん、やっぱりこれだよな」を感じることができるのです。

スニーカーの世界ではリペアができない(できるの?)分、全取り換えしつつも、以前の履き心地を再現するためには同じ素材、同じつくりと外観のモデルが必要なんです。そういった意味でニューバランスは「うん、やっぱりこれだよな」という人と靴の関係を大切にしているメーカーとして私の目に映ります。


ふだんはタウンユースがメインだけど、休日たまには舗装されていないところで走り回ったりボールを蹴ったりなんて時にはやっぱりこの靴になります。ニューバランスは574の良さを「汎用性」といっています。

そう、用途に分けて細かくスニーカーを分けるなんてことじゃなくて、とにかくいつもこれを履いていればいい。ML574が世界中で売れているからこそ得られる安心感。


2024年11月3日日曜日

Onitsuka Tiger TIGER ALLY

黒のスニーカー、TIGER ALLY。

アシックスが擁するブランドの一つ、オニツカタイガー(Onitsuka Tiger)の定番です。


仕事で黒のスニーカーが何足か必要になったため、おとなしめで上品なデザインな気がして、以前から気になっていたタイガーアリーを購入しました。

仕事上では革靴がほとんどで、たまの休日にもローファーやカジュアル系革靴を履くことがほとんどになってしまったので、スニーカー系はこどもたちと公園で遊ぶ時くらいしか履かなくなっていました。

今回、仕事でかなり動き回ることがあり、スーツスタイルではなくカジュアルに寄せたこともあって、足元もこてこてなビジネスシューズからスニーカーに変えることにしました。


中学生の時にニューバランスに出会ってから40年近く、ニューバランスくらいしかまともなスニーカー履いたことがありません。ときどきファッション系ブランドに浮気したこともありましたが、特に他を比べることもなく、コレクションすることもなく、単に一足が履けなくなると次を買う、なんてサイクルです。もう当初の型番などは覚えていませんが、後半はM1400を買い替えながら、販売されなくなってからは同ラストと言われているM576を履き続けてきました。

ランニングどころかウォーキングもしませんし、そもそも月にせいぜい4回履けばいいほうなのでこれ一足で困ることもありません。

余談ですが、ニューバランスで言われるソールの加水分解についてはこれまで経験したことがありません。月数回しか履いていないけれど、公園で走り回ったりするので砂埃が乾燥させてくれたんでしょうか。


ちょっと調べてみると、スポーツシューズの技術革新はこの50年くらいで大きく進化していて、最新の技術を搭載した靴は足や膝、腰など体全体に優しいことはわかりました。

ソールはどんどん厚く広くなり、重厚感のあるデザインに進化(?)を遂げています。まるで生物の適応放散ごとく、いろいろな目的に合わせてデザインも多様化しています。

しかし、革靴のシンプルなデザインに慣れ親しんだ自分から見ると、そのデコラティブなデザインは飛躍しすぎる印象で、これからビジネスで履く靴として選ぼうとすると、どうもしっくり来ません。このあたりは主観的な問題であるとはいえ、シンプルイズザベストの引き算の哲学が好きな私には、ちょっと行き過ぎ感を感じずにはいられません。

また、実務上階段の上り下りなんてのは頻発するものの、走ったり跳んだりみたいな激しい運動をするわけではないので、ソールをはじめとした機能面への要求水準はそれほど高くもありません。

私がもう30年近く革靴中心だったためか、足や体全体もその前提で変化しているのだと思います。実際、レザーソールの靴は返りについて言うならばたいていのラバーソールの靴よりも人間の体にフィットします。走り回ることすら少ないオフィスワークにおいては、もしかするとそれほど大きなマイナスはないのかもしれません。

そんな私ですので、デザインはクラシックと呼ばれる範疇のものが候補になりました。スーツの世界も革靴の世界も、結局のところクラシックに行き着くのが自分のスタイルなんだと。つくづく思います。


クラシックにも色々な方向性があるようですが、今回の候補は、

・ランニングシューズを原型としたもの(バスケやテニスの出自ではない)
・それなりにクッション性を重視だが、階段上り下りが多いため必要以上の厚底は避ける
・コストは1万円から2万円、生産国にはこだわらない

といった基準で選びました。


前置きが長くなりましたが、そんな基準で選んだのが今回のTIGER ALLYです。

TIGER ALLYにはレギュラーモデル(?)であるベトナム製のTIGER ALLYと、日本製のTIGER ALLY DELUXEがあります。私が購入したのは前者、18,700円(税込、2024年10月時点)です。

もともとはTIGER ALLIANCEという名前で販売されていたモデルのアップデート版のようです。Onitsuka Tigerのアーカイブにある画像を見てみると、ほぼTIGER ALLYと同じデザインで売られていたものを2017年に踵周りの安定性とfuzeGEL搭載で更新、その際に名前をTIGER ALLIANCEからTIGER ALLYに変更したようです。

TIGER ALLYはクラシックなランニングシューズの形、モノトーンのスエードによる落ち着いたデザインと、まさに大人のスニーカーという印象です。

アシックスの靴の特徴であるアシックスストライプ(メキシコライン)って、機能面はさておきとして、学校の指定靴だったり田舎の少年時代の印象が強くて、そのデザインの押し出しが強いと却って購入意欲が減ってしまうのですが、このTIGER ALLYのように全体のデザインの中に溶け込んでいると今度は信頼の意匠に見えてくるので不思議です。

BLACK/BLACK、CREAM/CREAMといったカラーの靴は上品に見えます。


今回購入したサイズは日本サイズで25.5、US7.5です。
普段の革靴はリーガルではほぼ24、サージェントなどのUSでは6、チャーチなどUKでは5.5を履いています。ざっと1.5くらいサイズを上げています。

TIGER ALLYは小さ目なつくりというのが定説で、ワンサイズ、またはそれ以上のアップをしたほうが良いということも書かれています。ワンサイズの定義が0.5単位なのか1単位なのか、足の実測からなのか特定のスニーカーサイズなのかわかりませんが、一般的なスニーカーで履いているサイズより大きめを買うほうがいいという意見が主流のようです。

今回は近くにお店がない環境での購入ということもあり、通販で購入しました。
ふだん履くニューバランスM576では25.5/US7.5でやや緩め、CM996でも25.5/US7.5でもうハーフ下でも履けないことはないくらいに感じますので、今回25.5を選びました。


到着して足入れをしてみると...

「んー、なかなか小さいか?」

サイズをミスった感がよぎって一抹の不安を感じつつも、冷静に判断してみると足が締め付けられるかというとそんなことはなく、単に新品だからふわふわなフィット感になっているだけのようにも感じます。指が抑えられることもなく、甲の血行が悪くなるようでもない。履けないというほどの小ささではないし、多少沈み込んだらぴったりになりそうな気もしてきます。

革靴と違い、ふかふかな部分があるスニーカーは直感的にサイズがわからない気がします。少し当たるのが小さいのか、それとも構造上そういうものなのか、感覚的にもう少しわかりたかったので早速履いて出かけることにしました。

革靴であればここでプレメンテ、ということになるのですが、スニーカーでは特に過保護になることもないと思うので、気休めに防水スプレーをかけてみました。防水スプレーはスエードの靴にごく稀に使うくらいで、スニーカーにはふだんはつかいません。購入時は汚れがついていないし、おまじないとしてやっています。


履き心地はかなり「ふかふか」

ニューバランスの靴(ENCAPミッドソール)についてよく「雲の上を歩くよう」という名言が引用されますが、TIGER ALLYはその点ではもうちょっと上をいっている印象です。

踵部分にはfuzeGELと呼ばれる衝撃吸収素材が埋め込まれているようですが、それだけではない全体的なふかふか感があります。実際の厚み以上にソールの厚みを感じて、慣れないうちはかえって力が入らないような不思議な感覚です。ちょっと不安定なスポンジの上に立っているような。

あまりにもふかふかふわふわなので、足の長さを見誤ることがあり、右足をつっかけるようなことが何度かありました。

慣れてくると、このふかふかを利用して歩いていることに気づきます。衝撃が少ないので重いものを持っているような時は少し踏み込んで歩くなんて感じになります。

初回はそんな印象でしたが、当然のことながら革靴にありがちなマメができることもなく、歩けば歩くほどサイズ感に慣れてきて当初の窮屈感は消えてきます。店頭で足入れをした段階ではなかなかわからない靴との相性が少しわかった感じです。


クラシカルなデザインをまとめるアッパーは天然皮革のスエード。ドレスシューズ系によく使われるCharles F. Steadあたりと比べてしまうとそこまで良いというわけではありませんが、価格を考えるとフルスエードというのはかなり頑張っているのではないでしょうか。コストのためかタンはナイロンメッシュになっています。今回購入したブラック(BLACK/BLACK)については特に変な差し色もなく、シンプルに黒基調といった感じです。


1980年代の靴をルーツにしているので、デザインそのものは40年前のものになります。踵のクッション素材はアップデートされているとはいえ最近のハイテク靴には機能面で負けてしまうかもしれません。

ランニングシューズであるが故、安全性のために踵にリフレクターがついているくらいで、このくらい黒っぽいとビジネスで使いやすいのでありがたいです。

靴紐も黒で完全なブラックモデルになっています。幅の大きめな平紐ですが伸縮性はなく薄っぺらい紐です。紐の伸縮に頼るのではなく靴全体で足の形の変化を捉えるという設計思想であれば、ひもはしっかり固定する役割に徹した方が良いと考えています。その意味では、履いていて足が痛くなるようなことはないので、靴紐の役割としてはしっかり面で支えてぶれないという役割に徹しているものと考えられます。


TIGER ALLYのスエードでまとめられたアッパーやソールのデザインを見ると、あくでもタウンユース向けです。(もともとランニングシューズですし)

価格帯的に近いCM996と比べると、明らかにCM996の方がタウンユースよりに感じます。アスファルトの地面との一体感というか情報のやり取りは明らかにCM996に分配が上がります。レザーソールの靴ではダイレクトに地面を感じるので、地面とのコミュニケーションがある靴の方が慣れているといった方が正しいでしょうか。

一方TIGER ALLYの特徴は甲の緊張感が少ないというか、より足との一体感を感じます。CM996は私の場合は「靴を履いている」という感覚が常にあるのですが、TIGER ALLYは靴の存在を忘れてしまうようなことが多いです。地面の種類に限らず、足裏に入ってくる情報はほぼ同じなので、こちらのタイプになれると「歩く」ということのストレスが減るのではないかと思われます。

購入当初感じたサイズの小ささ感は終日履き続けているとまったく気にならないものになりました。確かに同サイズのCM996と比べると気持ちタイトな感じはするものの、私は実測から1.5ほど大きいサイズですので、小さいということはなかったのかもしれません。

同サイズでも比較的大きめに感じるML574と比べると体感的にハーフサイズは小さい感じがするので、ML574をそれなりにタイト目に履いているのであればハーフ(0.5)くらいは上げてもいいかもしれません。

このあたり、街中の靴屋さんでフィッティングを試しやすいニューバランスに対して不利な点であることは否めません。


TIGER ALLYは特にクラシックをそのまま復刻するといったこだわりに重きを置いている訳では無さそうで、デザインはクラシックなものでありながら、現代の技術を取り入れながらアップデートされています。

踵の後ろ側のカーブはややきつめ、踵を掴むデザインになっています。踵自体はそれほど小さくはありませんが、インソールに少しカーブがついているなど収まりが良いです。踵のスタビライザーの素材が柔らかいため「これ機能するのか?」と一瞬不安になるものの、指でぐにぐに押してみてもしっかりと支えている感があるので十分な機能があるのでしょう。(当然天下のasicsさんはその辺調査済みか)つま先側に向けて少し長めに入っているので、ここも計算済みって感じでしょうか。

CM996と比べると、踵の芯自体は少し小さめなので、その分スタビライザーの長さで安定性を担保しているようにも思えます。

踵のアウトソール側面積はかなり大きめで、歩行時の衝撃吸収と安定性を意識していることが伝わります。踵大きめ、つま先小さめの作りです。

アウトソールはタウンユースを想定してか凹凸は少なめ。このソール、雨の日はなぜか滑りやすいです。せっかくアッパーがスエードで雨に強いのに、ソールが弱いというのはちょっと残念。

ソールのパターンを見ると、足の形状に合わせて靴が内側に振られている通りにパターンもやや内側に向けられています。私は比較的進行方向に対して平行にボールジョイントが折れ曲がりますので、足が屈曲する角度とパターンの角度が微妙にずれています。パターン的には足の力が入る方向を重視しているようです。雨の時などにこの差によってソールにかかる負荷、一部は伸びきり、一部は緩むために路面に対して効果的になっていないのではなかと思えてしまいます。

ソールを見ても分かるとおり、ラストは全体的に内側に振っていて足なりです。

つま先側は足の屈曲を意識して、大きく抉っているので、レザー素材ということも併せてなんとなく穴が開く人出てきそう... という印象もありますね。

こうして靴をよく見てみると、ニューバランスはあの「N」を刺繍するために台座となる部分が必要になり、そこにあてがわれている革が二の甲をしっかり一周していますね。いわゆるローファーでいうところのフルサドルになっているので、足にしっかり巻きついて安定しますねこれ。


TIGER ALLYは足にあったサイズを選べば満足度が高い靴であることは間違いありません。ニューバランスやナイキは他の人と被るから嫌、という時には選択肢の一つとなるものの、圧倒的な差別化はないような気がします。

クラシックなデザインのタウンユースにおいては、さすがCM996は完璧に近い完成度になっています。しかも全国どの都道府県でも購入できるとなるとごく一部の取扱店舗でしか試し履きができないTIGER ALLYを無理して買わなくても、ということになってしまいます。直営店でしっかりと売りたいという意図なのでしょうけれど、日本のメーカーがせっかく世界で売れている靴に真っ向勝負できる靴を作っているのにもったいないなぁと思ってしまうのです。

細かくみるほど、さすがに世界レベルで売れているニューバランスの長老モデルは完成されています。淘汰を逃れて生き延びたともいえます。もう40年前のテクノロジーと言っても他にとって変わって廃れるほどでもない、出自はランニングシューズとはいえもはやこれで走ろうという人はほとんどいなくて無問題。ファッションとして生き残ると言われながらも、一定の履きやすさという評価も得ている。

TIGER ALLYも似たような位置付けの中では十分に戦える、むしろ勝てる靴であると思えます。テクノロジー面では十分勝てますし、ファッションとしてみると程よくクラシック。大人が履いてもサマになる落ち着いたデザインは他では意外とありません。Onitsuka Tigerの他のラインや、asics全体を見ても、これだけの大人デザインのランニングシューズベースのモデルはないようです。ニューバランスでも一部のレザーML574が対抗馬かなという気配もしますが、安定供給が期待されるフラッグシップではありません。ミズノのMR1にも惹かれますがちょっと路線が違いますし、入手難易度はさらに上です。


同じ黒でもナイロン系メッシュに比べたらスエードのモノトーン靴なのでジャケパンでも使えます。十分ありとなる職場もスニーカーの中では多いでしょう。ロゴや意匠も目立たないので、単なる黒スエード靴のように履けます。

スポーツをするのではなく、どちらかというと歩きを中心としたタウンユースを前提に、シンプルな足元を、ということであればTIGER ALLYはその有力候補になります。

願わくはTIGER ALLY DELUXEの在庫が復活してくれれば...

2024年6月6日木曜日

Regal 01DRCD 2nd pair

日本を代表する靴のひとつ、リーガルの01DRCD。



スーツスタイルを必要とする人で、日本国内でビジネスシューズを買うことがあればこの01DRCDを一度は試し履きする価値はあると思う。

実際に購入されてその良さを書かれているブログからリンク目的の提灯サイトまで、それこそ数多くのウェブページで01DRCDの良さが紹介されている。

僕にとってこの靴はスペックによるうんちくベースの「オススメ商品」ではなく、10年間履いてほかの靴とも比べてみて、やっぱり「買ってよかった」靴。リペアが税込みで約27,000円(2024年1月現在)となってしまったため、いまは2023年10月に買い足した2足目を履いている。


リーガルは「高い靴」と「安い靴」という両方の見方がされていて、多くの人の意見としては「高い靴」「ちょっといい靴」であり、靴好きといわれる人たちからは「安い靴」「デザインが変な靴」という評価がされがち。

毎年たくさんのモデルを発表しては廃盤にするリーガルが、10年以上にわたり世界でも通用するこだわりで作り続けている数少ない靴、01DRCD。

もともとは一発屋的な企画商品だったような気がしないでもないものの、標準的なキャップトウ(ストレートチップ)で比較的手に入れやすい価格帯であったことから日本製のキャップトウを探していた層にハマってしまい、リーガルの期待以上にヒットしたのではないかなと思ってしまう。価格改定を繰り返しながら今日まで何とか継続販売されている。

同一ラストのプレーントウである04MRCFは廃盤になっていたりするので、01DRCDが残っていることはなかなかの奇跡ではないだろうか。他社でもレザーソールのシンプルなプレーントウはあまり売られていないので市場がないのかな。いまのところ01/02/03DRCDは継続されているのは、それだけ多くの人に購入されている=支持されているともいえる。

最近のリーガルはマスターリーガルのような宣伝効果を狙っているとは思うものの何の宣伝になるのかわからない商品企画だとか、高級ラインのはずのシェットランドフォックスでモデルの出し入れに必死感が漂っていたりと迷走を感じつつあるのだけれど、まともにグッドイヤーウェルテッドのモデルを作ると、もうその価格では他社太刀打ちできないんじゃないかという程に作り上げる実力があったりする。

無理して足の形に合わないノーザンプトンの靴履くより、もう少しフィット感が良くて十分に作りこまれた靴が国内で手に入るニッポンは素晴らしい。

マスターリーガルなんてもう定番化して10年も続いたら、それこそ日本のハイレベルな革靴の代表になってしまうのではないかと思うほどの末恐ろしいポテンシャルを感じるけれど、さっそく限定モデルとかやり始めているので、おそらくは採算的にもあんまりな宣伝用モデルかなという空気を強く感じてしまい手が出せない。

過去にもW121のような国内のみならず世界のスタンダードになっていたかもしれない靴を作ることができるのに、なぜか廉価的な印象が強くなってしまうのはラインナップに「新しさ」を入れないと販売を稼げないほど企業規模が大きくなってしまったが故なのか。

全国のREGAL SHOESを維持するのって大変なんでしょうね。


いつの間にかリーガルを代表するような定番キャップトウに育ってしまったともいえる01DRCDはREGAL SHOES専売商品じゃないからどうしても価格の安いところに流れてしまう。なのでそのちょっと上の価格でほかにない魅力を詰め込んでみたマスターリーガルを出したかと思えば、W10BDJのようにそれこそ靴屋さんの本領発揮商品作ってもそれほど数が出なくて今度は型番変えてほかでも販売できるようにしたりとか、REGAL SHOESにいって靴を買うというわくわく感がなくなってしまってきているのは少しばかり残念。日本人はブランドが好きなので、きちんとした信頼感のあるブランドであればお値段定価でも買いますので。エルメスやヴィトンを並行輸入で買う人もいるけれど、ロゴではなく信頼を求める人たちに支持された店舗は一等地にどーんと構えている。


振り返れば01DRCDも定番としてロングセラーになるキャップトウを作ろうというよりは、少し攻めた企画商品だったのかもしれない。

当時のリーガルでのスタンダードキャップトウともいえるW121はパターンオーダーのサンプル的な位置づけもあって微妙なスクエアトウ。当時はややスクエア感がブリティッシュみたいな空気があったものの、定番ラウンドトウで作られていたらいまの01DRCDの立ち位置だったのかもしれない。古いラストなのでかかとが緩いけれど、2504NAだってそうなわけで、ラストを超越してしまう人気が出てもおかしくなかった。キャップトウを定番だ、という人たちに向けてリーガルの中の人が他社にもあるようなもっと普通っぽい(でもちょっとばかり艶っぽい)キャップトウを作りたい。でもそのままだと落ちちゃいそうだからちょっと捻らせて社内を通そう、といった感じで出てきた気がしてならない。

このまた捻りの方向が多くの革靴好きに刺さる方向だったのだと思う。

まずはラスト。リーガルの実力見せつけちゃいましょ、ともいわんばかりのふまずのシェイプ。当然それを見るためにソール側をひっくり返すとこれまた「いちばんの素材で作った日本のグッドイヤーウェルトだよ」との型押し。厨感たくさんの文字に目が行くようだけど、実際にはくびれたウエストに気付くような仕掛け。話題性も含めてコバは矢筈仕上げ。リーガルの定番モデルとは似ても似つかないグラマラスなシェイプ。

3万円以上の靴だからレザーソールはマスト、やっぱりビジネスシーンで履かれる靴を想定して、減りを軽減し、かつ歩きやすくするためのゴムヒール。発売当時あたりはリペアの世界でもビジネス用途はゴムヒールが人気という話も聞いたことがあるので、ふだん使いを意識していることが伝わってくる。

素材はわかりやすくインポートレザー。それも国内ではわりと名前が通ったアノネイ製。しかも敢えてブラックまでもアニリン仕上げのベガノカーフ。茶系のベガノはわりと使われていたけれど、黒を使ったところはあまりなかった。比較的テカテカした靴が多いREGAL SHOESの店頭で、上品な印象の01DRCDはなかなか衝撃的だった。ガラスレザーが多い店舗だから逆にこの上品さが目立つというコントラスト。この点も「定番モデル」と言われるシリーズとは逆向き。

見た目的にはちょいとロングノーズでキャップ大きめではあるけれど、まとまりの良いオーソドックスな形。変に海外やらビスポークやらを意識してつま先をいじることなく、切り替えしにも変な意匠を入れずにどちらかというと正統派。デコラティブにすることが好きなリーガル社内では、ある意味これも逆を突いた捻りだったのかも。

ラストも欧米に比べると日本人平均に寄せているということもあり、履きやすいと感じる人が多い(と思う)。定番モデルでよく話題に出るくるぶしのあたりはかなり下げていて、もうことごとくこれまで定番の逆張り戦略靴を出してみたらどうなるかということを試したかったのではないかと思うほど。

履き始めからややソフトな印象になるようにかかとはクッション性を強めに、小指やタンといった当たりやすい部分は軟らかめ。革靴は痛いという印象を抑える調整も入っている。少し華奢なつくりな気がするのはコストの関係かそれとも繊細さを出すためのものなのか。

つまるところ、形は正統派寄り、話題になる素材は派手め、革靴に慣れていない人の不満を抑える作りをポイントとした、まさにメーカーにおける革靴好きの企画らしい。個人的にはもう少しこてこてなベーシックシューズが好きだけれど、それだとW121と比べての訴求が無い。コスト面からするとあまり儲からないようにも思えて、当時のリーガルでこれが良く通ったなという印象。定番化を目的としていなかったがゆえに通った企画に思えてしまう。


発売当初はアノネイ社のベガノカーフを使っていると前面に出していた。セミアニリン仕上げのボカルーよりもアニリン仕上げのベガノのほうが一般的には柔らかく革の素材感を感じられるといわれている。ベガノと言われていた当時の01DRCDはきめ細やかさや柔らかさがボカルーと言われている靴よりも勝っていた。

最近ではタンナー名を公開しないようになったので、リーガルが変えようと思えばいつでも変えられるのだろうけれど、ベガノの黒が廃盤にならない限りはわざわざボカルーやそのほかの革に変更する理由もないと思うので現時点でもベガノを使っていると思われる。



当時はシェットランドフォックスがボカルー、01DRCDがベガノとわざわざ分けて販売していたので、調達価格が違ったりするのかもしれないし、単にリーガルの中の人がベガノ黒というちょっとほかにない立ち位置をやってみたかっただけなのかもしれない。

この辺りの違いは言われてみないと素人目にはなんとなくそんな感じ、といった具合で、黒色の場合はお手入れを続けて何年か経ってしまうと当初の仕上げがどうかということは気にならないはず。むしろどのクリームを使ってきたのかで印象変わってくる。

理屈上はアニリン仕上げのベガノを使った01DRCDのほうが、セミアニリン仕上げのボカルーで作られた靴よりも透明感のある仕上がりだが水に弱い、ということになるのだろうけれど、水洗いをしたりお手入れ繰り返したりしている限りでは途中からあまり気にならなくなる。リーガルは国産キップも素晴らしい品質なので、仮に素材が変更になっていてもあまり気にしなくてもよいとすら思う。
そのくらい01DRCDは安心して履き続けることができる靴。

一部のコレクターを除き、靴は履いて歩くことに意味があるのでフィット感はとても重要。靴の見た目が気に入っても、どうしても履けない靴というのもある。

01DRCDは多くの人にとってスペック的にはベストバイではあるとしても、万人にフィットする靴ではない。スーツにY体やB体があるくらいだから、一律に「日本人の体形」というものはないのと同様、足だって民族的な傾向はあるだろうけど一律に足型としたサイズを決めるのは難しい。「ミリ単位」で木型削ってるんですから。多様性の時代に旧来の固定観念的なイメージの「日本人」という概念で語るのもいかがなものかなと。とにかくいったんそうした先入観は無しにして店頭で試し履きして合う合わないを感じるところからがこの靴のスタートになる。

靴の形の元となるラスト(木型:これに革を貼り付けて靴を作る)がどれだけ自分の足の形に近いか、というところがフィット感の一つの大きな要素というのは誰でもわかること。木型はふだん目にすることができないから、店頭で実際に靴を履いてみて、それが自分の足とどう合うか、具体的には余っている部分、当たる部分、きつい部分をみてみて初めて分かる。

木型はあくまでも靴を作るための型であるので、そこと足が一致していなくても、抑えるべきポイントのところがあっていれば案外問題なく、場合によっては快適だったりすることもある。ボールジョイントや甲の抑えと土踏まずのラインが許容範囲であれば、あとは既成靴である以上どこかの妥協が必要になる。

ボールジョイントは過度にきつすぎなければいずれは馴染む。01DRCDはむしろここは少し大きめに作られているので、実測EEを大きく超えない限りきついという感じはそれほど受けないのではないかと思う。

三の甲(インステップガース)と呼ばれる甲の一番高いところが抑え込めれば、足は前にずれることがなく、よほど全長が長くない限りは程よい履き心地になる。2504なんてここ一点集中で履く靴にも思えてくるほど。三の甲から二の甲、一の甲の順に合うほどより履きやすい靴になる。靴ひもが無いローファーだと二の甲が結構重要になる。履いたことないけどパンプスは一の甲しか抑えるところが無いように見えるので、これはなかなか履くのが大変そう。

革靴は製品としては完成品でも、個々人にとっては半完成品。ある程度履きこんでなじんでからが本領発揮。野球のグラブのように、買った直後となじんだ後ではツールとしての使いやすさがまるで違う。革靴もその「なじんだ後」を意識して買うことができればよいのだけれど、なかなかわからないものなので、少なくとも最初のうちは専門家の力を借りて選ぶのがいい。

革靴を買いなれていない場合はシューフィッターといった専門家の力を借りるのが得策。シューフィッターになるにはたくさんの足を見ながらフィッティングの経験を積む必要がありることから、足の形と靴の形から「合う」「合わない」のアドバイスが参考になる。完ぺきではないとしても自己流では気づかないアドバイスが得られることが多い。リーガルの店頭の場合は店舗によってフィッティングサービスの差異が大きい気がするものの、サイズを選ぶ視点とか、見た目的にどうなのかとかの話は聞けるので、サイジングに不安がある場合は店頭で確認するのがお勧め。


僕は旧タイプのケンジントン(内羽根)とインバネス(外羽根)を一つの指標としていて、これとの比較でどこが緩いか、きついかを考えることが多い。01DRCDはケンジントンと同サイズだと全長はいい感じであるものの心なしか窮屈感が強く、ハーフサイズ上げると今度は少し緩い。長い時間を履くことを考えるとどちらかと言えばハーフ上げたものがいいと感じている。靴のサイズ表記は無視して買うのが鉄則。僕は2504NAと01DRCDでハーフサイズ違っていていい感じではあるけれど、全長は2504NAと01DRCDで同じようなので、足の形によっては同一サイズのほうが良い人もいるだろうし、足長に合わせてサイズを決めたほうが良い人もいれば足周に合わせたほうが良い人もいるだろう。リーガルだから大きいとか小さいとかは一意に決まらない。サイズ標記の数字だけで決めるのは難しいということは、リーガル店頭で外羽根プレーントウの2504NAとひもなしローファー2177Nの同サイズをトライしてみればそれが良くわかる。
僕にとっては2504で気持ち緩いサイズが、2177Nだと血が出るくらい小さく感じる。


今回買ったものは心なしか以前に買った01DRCDより少し大きく作られているような感じがする。

2504NAを基準にハーフ上げだと僕にとってはちょっと一の甲(ボールガース)が緩い感じがしないでもないけれど、足首周りがきちっと締まるので歩行時にはかえって指が自由に動かせていることもあり、長時間歩いても足に障害が起きにくい感覚。最近は小指が痛い系を避ける傾向にあるのと、靴の数もそこそこあるためローテーション感覚が長いので、結果として迷ったときは緩めのチョイスをすることが多い。

購入時してペン入れなどをせずについたしわは微妙な感じになった。もう少し横一線だったら格好良いのだけれど、足入れした時点で靴に最もストレスがかからない曲がり方がこれなんだろうなと。購入当初にガイドしてきれいにしわをいれるのと、最初に入ったものから繰り返し歩くことで何度も修正が自然に入ったものとどちらが長い目で見たときに靴にストレスないんでしょうね。自然なしわ入れだとどうしても親指の付け根あたりにストレスかかりそう。繰り返し履いているうちに本来曲がるべきところに落ち着いてくるので、このしわ入れがいちばんかと思っている。


リーガルは比較的広い層をターゲットにするので靴全体はすごく攻めているかというとそうでもない。ボールジョイントや踵についても2235NAが有名なゆえにこれと比較して「小さい」「甲が低い」と思いがちだけれど三陽山長やRENDOといったセントラル系や、同じリーガルでもシェットランドフォックスのアバディーンほどは攻めていない。

インバネスもシェットランドフォックスでは中庸の攻め具合に思えるけど、01DRCDよりははるかにタイトな靴。

リーガルブランドは攻めているように見えてどこか万人受けの要素を残している。

まず全体的に緩めなところを作る。これはサイズどうこう、ウィズどうこうではなくて、明らかに緩めの余地を入れている。

シェットランドフォックスのアバディーンのような「ほんとにコレ2Eか?」くらい攻めている靴もあるので、技術の問題というより販売チャネル特性を踏まえたマーケティング的(クレーム対応的?)なところで設計しているように思えるところがある。

細い足が増えているはずなのに、W131のようなシングルEベースの靴はいつの間にか消えているのだからリーガルとしては細めの足幅に向けて靴を作っても売れなかった(もしくは売ることによるマイナス経験)という体験かデータがあるはず。よりは広く足幅に対応できるような中庸デザインのほうが利益が出やすいみたいな。

01DRCDは甲もそれほどタイトではないし、ボールガースもそれほど攻めていない。踏まずは絞っているけれど、内側を刺激的になるように盛り上げたりはしない。土踏まずから後ろ、かかともちょっと緩やか。カップを少し整形しておさまりをよくすることで収まりが良くなるような感じに仕上げている。


ややロングノーズであることと、矢筈コバも相まって少しソールが薄い感じのため、つま先は減りやすい。ローテーションにもよるけれど、週1登板くらいでは2~3年ごとにつま先メンテナンスが必要。

ソールはコルクの盛り方なのか中央が膨らんでいるので減り始めは真ん中が大きく削れる感じになる。購入当初はすぐに穴があくのではないかと心配になったけど、ソールそのものはコンディショナーなどを塗っているとヘリが少なく案外持つ。多少雨の日に履いたところで足をするような歩き方でなければ年単位で持つはず。

このソールはなぜここまで穴があかなかったのかは少し不思議だと思っている。同じような履きかたをしたショーンハイトはもう少し短かったし、雪の日などはあまり履かず、多少丁寧に扱ったと思われるシェットランドフォックスのブリストルは5年ももたず穴があいた。

踵もゴムヒールでこれまた減りにくいので、トップリフト交換みたいなものは考えなくてもよさそう。僕は10年間平均的には週に1回弱はいているけれど踵は持ちこたえている。これは驚異的。

2足目の01DRCDは購入当初からBootBlackを使っていて、ソールは雨に降られたタイミングでブートブラックのコンディショナーを塗っている。


馬鹿の一つ覚えと言われてもやっぱり01DRCDはいい靴。

世の中にもっといい靴があるかもしれないということは頭でわかる。靴ジャーナリストでもない限り何足も評論できないなかで、自分で買って履き続けた数少ない靴の中ではこれが良かったという話でしかない。

それでも、出張で土砂降りにあったり、雪の北海道の出張に履いていってしまったり、夏の暑い日もカラカラの冬の日も、そんなさまざまな日々をあまり気にせず履いていても何年もいい状態を保ってくれた靴。

日本全国で比較的手に入りやすくて、冠婚葬祭でもビジネスシーンの一線でも使える。お手入れをすればそこそこ長持ちで価格もレザーソールの中では手に入れやすいほう。

Xやインスタ見ても、きちんとお手入れしている人の01DRCDは5年くらいたっても新品かと思うようなきれいさが維持できているし、むしろ艶感が増して魅力的な靴になっている。僕の経験でもそれほどお手入れを神経質にしなくても週1回くらいのローテーション頻度なら10年くらいは履くことができる。

重箱の隅をつつけばいくらでもでてくるのだろうけれど、価格や品質、アフターサービスといった総合力でこの靴の右に出る靴はすぐには思いつかない。

海外ブランドには既製品での定番のキャップトウがある、チェルシーやシティ、オードリー、コンサル、etc.

リーガルならこの01DRCDだろうか。W121もよかったけれど定番にはならなかった。01DRCDのラストを使ったモデルも出てきたものの長続きしない。「もう一足」を買わせるための戦略なのか次々にモデルが出て次々になくなってしまうので、逆に10年続いた01DRCDの安心感が際立ってきている。ここまで続いてきたので「01DRCD」という型番で製品が語られるようになってきた。


もしリーガルに01DRCDが無かったとしたら、正統派のレザーソールで定番と呼べる靴はあったのだろうか。どこかで出てきたのだろうか。フレッシャーズから年配までスーツを着る社会人が安心して買うことができる靴。履き続けることができる靴。

01DRCD、素晴らしい靴。


----

当サイトではアフィリエイトプログラムを利用して商品を紹介しています。
商品価格やほかの人のレビューを参考にしてもらえればという感じですので、アフィリエイトが苦手な方は直接googleなどの検索経由で楽天やAmazon、Yahoo!ショッピングにアクセスされることをお勧めします。