シェットランドフォックスで現在入手できる唯一のローファー3043SF(Kensington)
すでにケンジントンは生産中止ということで、在庫限りとなっている。
ケンジントンはシェットランドフォックス渾身の製品だっただけに、おそらくこのまま廃盤になるであろうと思われるのはとても残念。
レースアップのケンジントンはノーズも短く感じられてややコンパクトな雰囲気だけれど、このローファーは意外とロングノーズに見えるのが不思議なところ。ややボリュームのあるトウがこれまたローファーに合っている。
モカシン縫いもていねいなスキンステッチで美しい。
フィッティングは紐がない分甲のあたりがかなりタイト。
初日はあまりにも甲が痛くて4時間着用で歩けないくらいになった。
毎週履いているとだんだんと馴染んでくるのだけれど、1ヶ月くらい間をおいてしばらくぶりに履くと一日の終りには結構痛くなるので、まだまだ履き慣れていないというところ。通算で十数回くらい履いていてそんな感じ。革が伸びることはあまり心配しなくても良さそう。
またこの靴はシューツリーをきちんと入れておくときっちり皺が伸びる。ラディカ皺が残りにくい気がする。
ローファーは紐で調整できない分、購入当初はかなりタイトなものを選ぶべきといわれていて、そのせいなのか実際に靴の作りも同ラストである3014SFに比べて甲はややタイト。比較的甲が薄い僕でもこれだけ痛くなるので、本来ケンジントンにピッタリ合う足を持っている人だと、なれるまでに相当な時間がかかるかもしれない。(僕は、3014SFだと羽根が数ミリしか開かないので、甲というか周囲はそれほどあるとは思えない)
また、捻れ具合も少し控えめでケンジントンにしては直線的。
甲はキツキツだけれど、さすがケンジントンラストだけあって指周りは全く窮屈さを感じない。本当にケンジントンは良ラストだと思う。ラストが良いと紐がなくてもかかとも抜けず歩きやすい。
ケンジントンのローファーはもともと色違い(ベージュ)を持っていて、その履き心地がかなり気に入っていて結局色違いで二足揃えてしまった... そのくらいこの靴は気に入っている。(生産中止だし、ブラックも買おうかと思うほど)
アッパーのイルチア社ラディカは特にブラウン系の色がわかりやすく格好いい。
濃淡があるため表面が立体的に見えて、また艶やかな革。クリームを上手に塗らないとクリーム自体がしみになりかねないので薄塗りでていねいに塗ることが大切かも。
ただ、リーガルに入ってくる革はあまりグレードが高くないのか、ところどころ鮫肌だと思うくらいザラザラしていたり、乾燥肌のようにヒビが入っていたりする。イルチアのゴタゴタが革に現れていることがよく分かる。
リーガル(ビナセーコー?)の職人さんがなるべくアッパーには綺麗な部分を、目立たない部分に質の悪い部分を割り当てているようだけれど、質の悪い部分が多すぎてカバーしきれていない感じ。(バイヤーがそれを承知で買っているのだからしかたないけど...)
ラディカ独特のムラ感で懐が広く、オシャレ感度が低い僕でも合わせやすく、ジーンズからコットンパンツまで不思議とキマってしまう。使い回しの良い靴。
ケンジントンのローファーはBASSあたりが作るローファーとは根本的な方向性が違って、どちらかと言うと上品なスタイルに合うと思う。
トウにもかかとにもしっかりと芯が入っていてよくあるコインローファーよりもフォーマルよりの雰囲気を出している。
ラディカの入手難で生産中止となったこの靴も、国産キップの焦がし仕上げでもすれば十分格好いいのにな。もうシェットランドフォックスではローファーはレギュラーのラインナップに存在しないし、リーガルブランドでもまともな茶系のローファーはなかなか見当たらないので、サイズが合う人は一度現物をみて足入れしてみると良いかも。
ラディカは雨に濡れるとシミが出てしまう。ただ、適当に乾かしてクリームを塗るとほとんど元通りになることが多い。たまに残るシミも、またそれはそれで靴の味でもあるので、あまり神経質に手入れをする程でもないかなと。ソールも耐久性があり、意外と濡れた路面にも強いようなので、あまり天候を気にせず履けるのが良い。(ちなみにこのソール、製造元のビナセーコーが出しているペルフェットでも同じものが使われているモデルがある)
お手入れはサフィールノワールクレム1925のニュートラルを使っている。クリームを塗りこむとき、布に色が少し移るので徐々にアッパーの色は落ちていると思う。ローファーなのであまりつやつやさせたくないこともあってメンテナンス頻度が少ないことと、少し明るくなってもいいかなと思っているので今のところあまり補色は考えていない。
ところでこのローファー、いつになっても専用シューツリー(_291)がきつくて入らない。
おそらくは甲の部分がタイトすぎて、ツリーの前半部が奥まで入っていないからだと思っている。冒頭の写真でも純正キーパーSのバネがかなり閉じている。
専用シューツリーの検品時には実際の靴に入れてチェックしているみたいなので、理屈上は入るはず。日比谷のシェットランドフォックスでも展示品の3043SFに専用ツリーが入っている。ただ、これを無理やり入れてしまうと、せっかくのタイトなフィッティングが緩くなりそうなのでいまのところバネ式使っている。なんだかなぁ。