仕事をするって大変なことが多いけれど、実りも多いと思います。
会社によってはそろそろ初ボーナスの時期だと思います。
スーツだとか靴だとか、この時期いろいろとそろえようと思っている人もいるかと思います。そこで、ちょっとだけ人生の先輩として「ビジネスシーンでの革靴の選び方」のヒントを書いてみたいと思います。
僕はファッションの専門家でもなければ靴にまつわる仕事をしているわけでもない、ごくごくその辺にいるオッサンです。とても堅い職場で社会人デビューをして、いまは経営者や大手企業の人事の役職者と会うことも多い仕事をしています。
そこで思うのは、「一流と感じるビジネスパーソンの靴はいつもきれい」なことです。
必ずしも高価な靴を履いている人ばかりではありませんが、靴がいつもお手入れされている人が多い印象です。
(それをさらに突き抜けてしまう先代からのお金持ちははそうでもない気もしますが)
社会人1年生が靴を選ぶとき、まず最初に意識してほしいことは「天気を気にせず履けて、きれいな状態を維持できる靴を買う」です。
おそらく、ニッポンのサラリーマンのほとんどは靴のブランドについて興味もなく、ましてやカーフとキップの違いなんて意識していません。
すぐに見てわかるのは「色」、「形」、そして「きれいさ」です。
なので、お金が潤沢で1万円も10万円も大差がないという人以外であれば、無理してジョン・ロブやエドワードグリーンを買わずに、まずは3足買うことができるお値段の靴をそろえることをお薦めします。
最初に用意できるのが5万円がせいぜいなら15,000円くらいの靴、2万円が限界なら5,000円ちょっとの靴になります。
僕もそうですが、ちょっと靴に関する感覚がズレてきている人だと「革靴は3万円から」みたいに思ってしまいますが、年収数千万円の人でもガラス仕上げのゴム底を履いていたりします。
真面目に仕事を3年頑張れば、毎年チャーチを1足買えるくらいのお金を稼ぐことはできます。(結婚するとまた違うかも)
雑誌などを見ているとクロケットアンドジョーンズやらオールデンやら欲しくなる気持ちはわかります。でも、いまそれを買う十分なお金が無ければまずは身の丈にあったところから始めてみてはどうでしょう。
もちろん、アルバイトを頑張っていい靴を買えるならぜひチャレンジするのもいいかもしれません。ただ、忘れてほしくないのが「靴をきれいに履く」ためには最低でも3足をそろえることです。なので、まず3から5足の天気を気にせずローテーションできる靴をそろえることを優先するほうが無駄がないと思うのです。
それに、お給料の大半を靴につぎ込んでいる新人よりは、ビジネス書をたくさん読んでいる新人のほうが好印象ですし、結果、パフォーマンスも早く上がるようになるケースが多いです。高い靴を買うという行為より、身だしなみに気を使いいつもきれいな靴を履くためのお手入れをするという習慣こそが価値を上げることにつながります。
仕事の成果よりも天気が気になってしまうような靴はビジネスシューズとしてはイマイチです。晴れの日は意気揚々と高級そうな靴なのに、とたん天気が悪い日はいつも同じみすぼらしい靴というのもなんだか格好悪いですし。
次に意識してほしいのが「自分の革靴サイズを知る」ことです。
メーカーによってサイズの取り方が違うので全部が全部というわけではありませんが、革靴はスニーカーのサイズよりもかなり小さいものが適正サイズになることが多いです。
よく「リーガルのつくりは大きめ」とかいう話がありますが、つくりが大きめなのではなく、スニーカーと同サイズを選んでいるからかもしれません。
僕も足が小さいほうなので気持ちはよくわかるのですが、革靴初心者のうち(というより、若いうちかな)は24とかいうサイズを選ぶのに抵抗があって、少しでも大きいサイズを買おうとしてしまいがちです。
しかし、帽子と同じで自分に合ったサイズより大きいものはとても履き心地は悪いですし、歩きにくい。おまけに足に障害が出ます。
中敷きで調整にも限度がありますし、中敷き前提で大きい靴履くくらいならスーツも含めてすべて小ぶりにしたほうが結果体格がよく見えることがあります。
ちなみに僕はスーツをつるしで買うときも身長から推奨されるサイズの一つ下を買うようにしています。
着てみても小さいとは思えませんし、ゆるゆるのサイズより明らかに疲れません。袖からのシャツの出方が良い感じがしています。
この2点をしっかりと理解して靴を買うようにしていくと、おそらく数年後くらいから本当に自分に合った靴を買うことができるようになるはずです。
逆に言えば、何足か買って体感していかないとなかなか正しい靴のサイズはわからないものです。
シューフィッターの意見を素直に聞く心があれば、次のマイルストーンまでの到達は早くなるかもしれません。
さてここから、もう少し具体的な靴の選び方に行ってみようと思います。
おおむねスーツを着ている人が多い職場をイメージしています。
ふだんはジーンズでもお客様先にはスーツを着ていく、なんてケースにもあてはまります。
第1の鉄則「靴は黒を買う」
社会人の革靴の基本は黒です。
スーツやジャケパンの会社であれ、どんなおしゃれな職場でも黒い靴が合わないことはありません。
白いシャツを着ている上司が多いお堅い商品を取り扱う会社であれば問答無用で黒一択です。
「俺はそんな没個性を強制される職場なんてお断りだ」でしょうか。
黒い靴が没個性なのではなくて、靴の色で差別化をしなければならない中身の没個性のほうが上司の頭を悩ませます。僕の職場は比較的何を着てもよいところですが、問題は会社の中ではなくて「お客様」に与える印象であり、どんなに堅い職場に訪問しても全く問題ないスタイルの部下と同行するほうが安心です。
会社で誰も黒い靴を履いていないような職場であれば話は別です。その場合はもう少しお洒落を意識したサイトや店員さんのアドバイスが参考になるかもしれません。
第2の鉄則「サイズ表記は無視する」
サイズはあくまでもラベルです。数字が持つ意味を考えてはいけません。
24が小さいとか大きいとかではなく単なる記号でしかありません。
この数字に意味を感じてしまうとサイズ選びは失敗します。もっとも感じるなといわれても人間である以上感じてしまうのはしかたないので、その思いを封印して無視する努力をします。
デカ履きしたところでわかる人(=こうなりたいと思うお洒落な人)にはすぐにわかってしまいますし、ジャストサイズというのはそれだけで最高にエレガントです。
何とか大きく見せようとしてデカ履きしても傍目には数センチの違いってあまりわかりませんし、かかとが大きく余っているのが見えた瞬間にシークレットシューズばりの残念さが出てしまう気がします。
第3の鉄則「高級靴と比較しない」
知識が先行すると、「この靴はカーフじゃないし...」「ソールが革じゃないし...」「グッドイヤーウェルト製法じゃないし...」みたいに何かを比較して劣っているように思えてしまいます。
予算が限られているのであれば割り切りましょう。
資産数十億でもガラスのゴム底セミマッケイのひとたくさんいます。サイズの合っていないしわの大きいクロケットアンドジョーンズを履いている人よりもお手入れされたサイズぴったりのガラス仕上げゴム底リーガルの人のほうが何倍もジェントルマンです。
確かに高いものにはその理由があって、たいていはお値段に比例して良いものです。ただ、良いものというのはそれを身に着ける人にもそれ相応のパワーを要求するものです。
もし職場環境が全員ジョン・ロブを履いているようなところであればそれを買うことも一理あります。そうでない環境であれば、ジョン・ロブがあなたのビジネス上の評価を上げることにも同期の異性にモテることにも大した影響を与えません。
第4の鉄則「クラシックなデザインにする」
最初のうちにそろえるデザインはストレートチップ(キャップトウ)やプレーントウなどのクラシックなものにします。
いまは高い靴を買うことができなくても、いずれ買うことができる日が来ます。
そのときに最高に格好良いスタイルを完成させるためには、若いうちから「クラシックな靴に合うスタイル」を意識したほうが良いです。
ストレートチップに合うスーツ、シャツ、タイ。プレーントウに合うスーツやジャケットなど、靴を起点に全体のコーディネイトを意識していきます。
数年後、チャーチのコンサルを買ったとき、すでにあなたのスタイルは完成されているはずです。コンサルはあくまでも一つのピースとして自然に溶け込んだものになるでしょう。
第5の鉄則「ブランドだけで決めない」
リーガルがダメだとか、スコッチグレインがどうだとか、どこが良いだとか、先人の知恵は拝借するとしても、必要以上に「ブランド」のくくりにこだわりすぎないことも大切です。同じブランドでも商品ラインナップがたくさんあることもありますし、あなたの足にドンピシャかもしれません。「このブランドが好き」であればそのブランドの中から合うものを探しましょう。もし合うものがなければ諦めることも潔いです。
偉そうなことを書いている僕も、靴選びは失敗の連続でした。
だから、頭でわかっていることと行動できることが別だということは十分わかります。なので、この5つの鉄則のうち、全部でなくても一つくらいを実行したり、意識してみるだけでも遠回りが避けられるではないかと思っています。
自分で稼いだお金ですから本当に好きなものを買うのがいちばんとはいえ、社会人は「社会」に属しているので、その中で本当にあなたの良さが最大限に活きる選択がされることこそが最も価値ある選択ではないでしょうか。
満員電車が怖かったり、突然の雨で予定の外出が嫌になったり、公衆便所に入れなくなるような靴であるとすれば、ビジネスシーンでの道具ではなくなってしまいます。
クロケットアンドジョーンズがどうしても履きたいのであればその想いに忠実に従う選択肢があってもよいと思っています。そうした靴が仕事の活力を与え、ほかの人よりも積極的に取り組む源となるのであればそれが最良の選択かもしれません。
その靴が仕事の成果を阻害するのではなく、プラスに働く道具になるのであれば、買えるものを買うことは悪い選択ではありません。
多くの人にとってお金は有限ですから、トレードオフの状況の中でできる限り良い選択ができるような情報収集が大切ですし、一度決断して購入したらそれが高い靴でもそれほど高価でない靴でもあなたの靴ですからその靴で気持ちよく仕事ができれば最高です。
本当はチャーチが欲しかったのだけれど、とりあえず3足買うために3万円以下の靴を選んだとしても、それは「とりあえず」の靴でもないですし妥協の産物でもないと思います。現時点でのスタートラインであり、一つのマイルストーンです。時には雨に降られることもあるでしょう。また時には満員電車で誰かに踏まれてしまうかもしれません。そんなことがあったら、家に帰ってからしっかりお手入れしてみてください。新品の靴には出せない粋な風格が出てくることに気づくはずです。
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靴のお手入れには欠かせないブラシ。少し大きめが使いやすいです。
こんにちは、随分前から読ませて頂いてますが初めてコメントします。
返信削除新社会人向けの記事、すごくいいですね。
僕は30代半ばですが、先の事を見据えた素晴らしいアドバイスだと感じました。
みんな失敗して学んでいくのでしょうが、
こうすれば良かったという事に気付くのは早い方がいいですからね。
僕の職場も靴に興味がなく手入れもしない人が99%ですが、
後輩には3万円レベル以上の靴をよく勧めます。
理由としては、安い靴を買うと手入れした実感や
喜びが味わいにくいからです。正しいやり方や
道具が分かっていないことも多いと思いますが、
手入れしてもたいしてキレイにならないから、
手入れをしなくなってしまうのかなと。
ある程度以上の靴は、少しクリームを入れるだけで
簡単に光ります。その喜びが、まず靴を手入れするという習慣を身につける一番の原動力になる気がしています。
コメントありがとうございます。
削除私が新社会人のころ、とても洗練されたお洒落な先輩がいてとても参考になるアドバイスをたくさんもらいました。ブランドではなく、本当に良いものを見極める目がある人に出会うことができたことはとても運が良かったと思っています。
ポン太さんのような先輩がいる職場に勤める若い人は恵まれていますね。お手入れの大切さだけではなく喜びを知っている人を身近で見ることができるというのはなかなかないチャンスですし。
今回のネタに関連していまお手入れについての記事を書いているのですが、どういう道具をどう使うかよりもどう習慣化するかのほうが遥かに大切だと思っていて、やらされ感ではなく喜びをもって行うには何が大切かというヒントをもらった気がします。
最近は靴を買わなくなってきたので説教ジジイみたいな内容になりつつあると自分で感じてはいるものの、お褒めの言葉をいただくと素直にうれしいです。更新頻度が悪いブログですが、これからもよろしくお願いいたします。
これからもブログ、書いて下さい
返信削除コメントありがとうございます。
削除更新頻度はそれほど多くないものの、ひとつひとつはこれからもていねいに書いていきたいと思います。
気が向いたときにまた見に来てもらえれば嬉しいです。
初めまして。私もこちらのブログを以前より拝見させて頂いております30代のサラリーマンです。
返信削除社会人になってすぐ、営業職一筋30年の大先輩から教わったのが、靴だけは綺麗にしていなさい。とゆう一言でした。
ケアの道具も方法も分かりませんでしたが、
しばらくは手持ちの二足のみ、所謂セメント靴でしたが、実家の下駄箱から見つけたヨレヨレの化繊ブラシで毎日のブラッシングと、週末はリキッドタイプの靴クリームでケアをしました。
たまに中堅の先輩からは、セメント靴を揶揄われたりもしましたが、そのくらいのケアであっても、なんだか先輩の靴より自分のが綺麗だと思えたことや(笑)、何よりその頃には靴にとても愛着を持てていたのを強く覚えています。
初めての冬のボーナスで、セールになっていた
リーガル製の革底シューズを買い、付属していたハンドブックを読んで初めて、基本的なシューケアの手順を知り、それに習って少しずつクリーナーや乳化性のクリームの使い方を学びました。
それでも、そのレザーソールを貫通させコルク流出させることを2度も成し遂げる失敗(汗)等も経験しながら、早10年。
今もずっと同じやり方で、足元を綺麗に保つ事を続けています。
途中、少し知識がついて背伸びをした時期もありましたが、ガラスレザーのポテンシャル然り、値段だけではなく、自身が道具として使える靴かどうかが私の中での1つの価値基準となりました。
毎回とても参考になり楽しく読ませて頂いておるのですが、中でも後世に残したいと思える素晴らしい内容だと感じましたので、コメントさせて頂きました。
また大変な長文になってしまい、ただ自分の昔話に浸ってしまうとゆう勝手さですが、今回改めて自分の靴に対する思いを振り返る事が出来ました。ありがとうございました。
今後もブログ楽しみにしております。
コメントありがとうございます。
削除靴の製法とか値段よりも、お手入れの大切さをお話しされた大先輩、格好いいです。不思議なもので靴がある程度綺麗だと何となく全体がしまった感じになる気がします。
中堅の先輩も靴の意識が向いているが故に気になる部分があったとは思いますが、であればなおのことその靴が活きるところに気を向けてもらったら今後の参考になる良きアドバイスができたはずなのにもったいない。
思えば私も社会人になりたての頃に頑張って揃えた靴を、それはもう過剰とも思えるほどにクリームを塗ったりなどのお手入れをしていました。当時はいまほどネット上の情報もなく、ハンドブックや雑誌の靴特集を見ながらあれこれやっていたことを覚えています。いま思えば失敗だらけでした。懐かしいです。
おっしゃるとおりで、「自身が道具として使える靴」というのがビジネスパーソンにとってはとても大切な視点かなと思っています。オフの日はさておき、仕事に履いていく靴が仕事の邪魔になるのではその価値を発揮できないですし、高そうな靴を履いていることが理由で雨の日ソワソワしているのって格好悪いですし。予報にない突然の雨の日に何食わぬ顔でジョン・ロブ履いていた人が、その後会った時に完ぺきに近いケアをした同じ靴を履いていたら格好良すぎてシビレます。
ごていねいなコメント大変ありがたく、相変わらず更新頻度の少ないブログではありますがこれからも少しずつ更新しようと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。
はじめまして。参考にさせていただくとともに、現在指導している新入社員300名に教えたいと考えております。身の丈に合わせるということは、身の丈を伸ばして行くということでもあると感じており、育成の観点からも大切な言葉だと思います。今から30年前に、いつもスーツを買っているお店で、店長から「それは、あなたには似合いません」と言われたことがあります。「何年かしたら、きっと似合うようになるから」とも言われました。靴も全く同じですね。新入社員にも、スーツ3着、靴3足からはじめて、ボーナスでひとつひとつ買いましていけば、どれも長持ちして、そのうち自然といいものが買えるようになると伝えてます。これからも読ませていただきますので、よろしくお願いします
返信削除コメントありがとうございます。
削除「身の丈を伸ばしていく」とてもいいですね。
記事の本文ではもともと「身の程」と書いていましたが、「身の丈」に書き直しました。
身だしなみに気を配るというのは社会人としてとても大切なことなのに、情報が多いいまの時代だと、何が自分にとって正しいのかという選択が必要になるので若い人は大変だと思っています。
職場の雰囲気やビジネス領域、お客様がイメージする自社の社員像など環境によって選択すべきモノが異なるなかで、しっかりと自社の大先輩から指導を受けることができるazk2007さんの会社に入社した新人は本当に恵まれていますね。
「いまは似合わないけれど、いずれ似合うようになる」
歴史や伝統だったり、価格だったり、それ相応のものは身にまとう側にもそれなりを要求するとどこかで読んだ記憶があります。私もそれ相応のものが似合う人間になりたいといつも思います。いまは似合わないとはっきり言ってくれて、でも似合うようになるという希望ある助言をもらえるような関係を店員さんと築いたことこそが私も含め見習うべきところだと思いました。
モノを大切に扱うと、そのモノ自体が風格を帯びてくるので結果纏っている本人までよく見えてくるという好循環がある気がしています。真新しい時には軽い印象だったものが、お手入れを繰り返しながら使い込まれるにつれ重厚感が生まれてくるような。靴やカバンなどの革製品はそういう変化がより感じられます。
多くの新入社員を抱える素晴らしい企業の大先輩とお見受けします。嬉しいコメント大変ありがたく、今後も不定期ではありますが少しずつ更新していこうと思っていますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。