理由は単にレザーソールの靴しか持っていないから。
革靴を履いて仕事をする生活を15年以上やっていれば、デザインとか履き心地とかいろいろな理由で下駄箱に保管されたままになっていきそうな靴がある。
そうした靴を雨の日用に回している。
いまの雨の日シューズのメインはREGALのW134CBとW131CB。
REGALの中ではBTOの木型を使ったやや細身(D Width)のモデルで、アッパーは国産キップ。
購入当初はタイト志向が強かったこともありキツキツを買ってみたが、W134はいつになってもキツキツなままだし(特に左の薬指の先が当たるのがいまいち。サイズが少し小さすぎたかな)、W131は前半分は良い感じなのだがかかと周りがユルユルなことと、アッパーの皺の入り方が大味で今ひとつ気に入らなかったということもあり、登板機会が減りつつあった。
ところがこの国産キップは厚めで丈夫なうえでシミになりにくく(というか目立たず)、悪天候の日は頼もしい味方になっている。まだソールを張り替えていないが、おそらく丈夫な革なのでオールソール交換も何度かできるだろう。
確かにレザーソールは雨水は染みこむし、滑りやすいし、そのままにしておくとカビの原因にもなるし、おまけに雨でふやけてソールの減りが増えるとかいろいろ欠点がある。お客様の先で靴を脱いだとき、靴下が濡れていて嫌な顔をされることがあるかもしれない。
僕自身は訪問先で靴を脱ぐということはまずないので、多少雨が染みこんでも問題ない。
どちらにしてもアッパーはケアをしなければならないし、むしろレザーソールのほうが内部が乾きやすいということもあって、天候にかかわらずレザーソールを履いている。
雨の中レザーソールの靴を履いて、建物の中で硬い床のところに立っていると、床がうっすらと曇る。足が呼吸をしていることの現れだ。雨水を吸うけれど、排出もしている。むしろ雨の日こそレザーソールの通気性が発揮される場面だとも思っている。
ソールの減りは多少早くなるのかもしれないが、よく言われる「何十倍も早く減る」という実感はない。減ったら減ったで張り替えればいいわけで、既存の靴も活用できるし、今更ラバーソールを新調する金額で2回は張替えできるので、コスト的にも大きいとも思わない。
冒頭で「レザーソールしか持っていないから」と書いたが、本音は「雨の日でもレザーソールを履きたい」というところ。
予め雨が降ることがわかっていれば雨の日用のこの2足の優先順位があがるけれど、ここ一発のプレゼンをする日にお気に入りの靴を履いて行ったら、天気予報が外れて雨になったり、夏の暑い日にありがちな夕方の雷を伴う一時的な土砂降りの中外出しなければならなくなることもある。
だから、雨とソールは無関係、雨が降ることがわかっているなら敢えてアニリンカーフを履くことも無いな、という程度。
レザーソールでもラバーソールでもアッパーは濡れるわけで、どちらにしてもメンテナンスは必要。減るといっても雨の中駆けずり回ったりしなければそれほど神経質になることも無さそうだし。(ここまで書いて、自分はあまり外回りが多くない仕事だからこういう結論になるのだと思った。とかく一日外出しているような人であれば、ラバーソールを買うというのは理にかなっているかも)
雨に降られたらいつもよりていねいに手入れをすれば良いし、逆にていねいに手入れをする良い機会だと思っている。 相当土砂降りにやられると、逆に靴の古いクリームが落ちてるんじゃないかと思って、わざわざリムーバー使う手間が省けた気がする。
革は濡れてもきちんと元に戻るからこそ、サドルソープで洗うことができるのだし。
雨に濡れた時の対処は次の3つを念頭にしている。
- 汚い雨水を吸っているはずなので、その汚れを取る
- 形を整えきちんと乾燥させる
- 靴に必要な栄養分の補給をする
まぁ、ふつうに当たり前のことを当たり前にするだけなのだけれど。
雨に濡れた日
家に帰ってきたらまずはじめにやるのが、汚れ落とし。
汚れ落としはまだ濡れた状態の靴をふつうに(固くではなくて)絞った布で軽く拭う。表面に砂や泥が付いていることがあるのでこすったりはせず、異物を取り除くのが目的。
(あまりにも泥や砂が付いているときは、どうせ濡れているのだからシャワーで軽く流してしまう)
次に、乾いた布かキッチンペーパーで表面を軽く叩くようにして表面の余計な水分を取り除く。
ここまでやったら、フェイスタオルか使い古しのTシャツをキッチンペーパーで包んだものを靴の中に入れる。よく新聞紙を入れるとあるけれど、日経電子版にしてから紙の新聞が手元に無くなったのでこの方法に変えた。キッチンペーパーはティッシュより割安だし、結構水を吸うのでおすすめ。
ちなみにフェイスタオルはコンビニで売っているものを靴専用にしている。雑巾でも良いと思うが、表面のザラザラ具合が少なめな方が靴を拭ったりいろいろ使い道があるので。購入当初は水をあまり吸わないため、下着を洗うときなどに一緒に何度か洗濯をしてから使っている。
最初は30分くらいで、それ以降は気が向いたらちょこちょこ入れ替え、寝る前にもう一度入れ替えるという感じ。翌朝雨が止んでいれば中のキッチンペーパーを取り出してベランダの日の当たらない場所に置いて外出。この時シューキーパーを入れたほうが型くずれしないと思うのだけれど、カビが生えるケースがあったので、ある程度インソールが乾くまでは入れないことにしている。
2日目
帰宅する頃にはアッパーは完全に乾いていて、内部に一部水分が残っているという状態になっていることが多い。このくらいになるとシューキーパーを入れても大丈夫そう。濡れた時のメンテナンスはアッパーもそうだけれど、カビにやられやすい内部にも気を配ることが大切だと思う。
そこでいったんシューキーパーを入れてプレメンテを行う。
革が硬くなっていることもあり、キーパーはネジ式のものをややゆるめに入れてスタートする。
最初にステインリムーバーを使うという話をよく見るが、自分は水で濡らして少し絞ったティッシュを靴にペタペタ貼っていく。これは自分で勝手に「汚れ抜き」と呼んでいる。
こんな感じ。
10分から15分ほど経つと、ティッシュの一部が茶色くなる(右足の爪先部分)。日々の汚れとか余分なクリームがティッシュに吸われていく感じ。ティッシュは真水で濡らしているので浸透圧の関係で塩分も吸われている(はず)
ここでいったんティッシュを取り除いてみると、表面がうっすら汗を書いたような状態になっているので、乾いた布で軽く拭う。これを2回から3回繰り返す。
そうするとアッパーの汚れはたいてい取れる。
30分から1時間ほど乾燥させてからデリケートクリームを塗りこむ。またその30分後くらいに、極めて薄くニュートラルのクリームを塗る。2日目はここまで。
初日と同じように、寝る直前にシューキーパーを抜いて屋外に置いておくのだけれど、靴の内部にカビ防止のモールドクリーナーをワンプッシュおく。
3日目
本格的な回復メンテ。
昨日までに雨で汚れた靴の汚れ抜きが終わり、失われた栄養分と油分を軽く補給した。ここまででアッパーはそこそこ回復しているはず。
もしアッパーが塩を吹いている場合は、もう一度2日目と同じ事をする。
問題ないようであればちょうどインソールも乾いてくる頃(と、アッパーの状態も戻りつつある頃)なので、きょうからシューキーパーをきっちり入れてメンテナンスする。
最初に固く絞った布で表面を軽く拭う。これは儀式みたいなもので、ふだんのメンテナンスはともかく、既にキレイな靴にはあまり意味が無いかもしれない。
次に乳化性クリームを塗る。前日にデリケートクリームを塗っているのである程度栄養分が戻っていると思うので、次は油分がそれなりに含まれたふつうの乳化性クリームを使う。雨に降られた靴の時はM.モゥブレイのニュートラルクリームを使っているが、ブートブラックあたりの乳化性でも同じだろう。
30分ほど置いてから、ていねいにブラシをかける。たいていはその待っている間にソール専用のクリームを薄く塗る。僕はシェットランドフォックスのLeather Sole Conditioner(コロンブス製)を使っている。
あとは適当に2、3日部屋の片隅においておくと元通り。
以前に、カビ防止のためにベランダの日の当たるところにおいておいたことがあって、そのまま外出して次の日帰ってきたら表面がざらついてしまったことがあった。その後は日に当てるというのは怖くてできなくなった。なので乾燥はすべて日の当たらないところでやっている。風通し良ければカビが生えること無いので。
気がついた頃に、気休めの補色としてサフィールノワール(ブラック)をうすーく伸ばして、ブラッシングして磨いて終了。
結構メンテナンスに時間がかかっているようにも見えるけれど、作業そのものはそれぞれ数分程度。初日は表面の汚れ落としと内部の水抜き、2日目はアッパーのケア。3日目はふだんのメンテナンスと言う感じ。
これでいまのところカビやひび割れもなく3年くらいやっている(でもこれらの靴がびしょ濡れになったことはそれぞれまだ10回くらいしか無いけど。朝から土砂降りじゃない限り普通に他の靴を履くので)
やっぱりお気に入りの靴は「雨に降られたくない」と思う気持ちは残るのだけれど、せっかく気に入った靴なのだから、ここ一発履きたいときに天気のせいで妥協をしたくないという気持ちのほうが強くなった。いまのところ雨に降られたことが直接の理由でダメになったという感覚は無いし、たまに降られるとかなり本気でメンテナンスするので、まぁ良しと思うようにしているのが大きいかも。
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