革靴って奥が深い。
靴のいちばんの目的は「足を守る」こと。
人間以外は靴を履かない。
それは産まれた時から素足で生活しているからで、もし人間も靴を履かないまま生活していたら多分裸足でも歩行にあまり支障がなかったのかもしれない。
でも私たちは小さい頃から靴を履いて育ったし、いま私たちが生活している環境で素足で歩くのは現実的ではない。ダイ・ハードのブルース・ウィリス扮するジョン・マクレーンは素足であったためにガラスの破片で怪我をしてピンチになる。靴を履くということはひとつの常識となっている。
いまは靴にもう一つの目的がある。「ファッション」だ。
「おしゃれは足元から」という言葉があるように、その人のファッションに関する傾向は靴を見ればわかる。伝統的なのか、モード寄りなのか、リラックス志向なのか、それとも無頓着なのか。雨の日でも気にせずレザーソールの人もいれば、天候によって細かく靴を分ける人もいる。
特にスーツスタイルの男性は靴ですべてが決まると言ってもいいと思う。同じスーツを着ていても靴が異なれば印象はガラッと変わるし、安いスーツであっても靴がまともであれば全体の高級感をグッと上げる。
身に着けているものの総面積からするとほんの小さな部分であるけれど、大きな影響力を持つ。それが革靴だと思う。
私が初めてまともな革靴を買ったのはもう20年近く前で、当時リーガルシューズで販売していたジョンストンアンドマーフィーのストレートチップとモンクストラップだった。社会人になって自分のお金で始めて購入した靴だ。社会人一年生からすればものすごい高級靴だったし、それはもう大切に履いていた。
当時は革靴のお手入れに関しての知識も経験もなかったので、雑誌やムックに書いてあることを参考に、いま思えばかなり過剰にメンテナンスをしていた。履くたびにブラシを掛けて、チューブ入りのクリームを使い、これまたチューブ入りのクリームを大量に塗り、一生懸命に磨いていた。
そうこうしているうちにだんだんと靴磨きの経験値も上がってきて、またインターネットでいろいろな靴磨きノウハウも知ることができて、革靴のお手入れもひと通り出来るようになった。革靴のお手入れというのは、面倒である一方で楽しくもあり、きれいに仕上がった時の感動もある。
靴がその人を表すといえるのは、こうしたお手入れを通じて靴が完成していくからなのだと思う。買ったばかりの靴よりも、ていねいにお手入れをされ続けてしばらくたった靴のほうがはるかに魅力的だ。
革靴は成長する。
それは放っておいて勝手に成長するのではなく、手間暇かけて大切に扱うことで、その期待に応えてくれる形で成長する。だから革靴というのは面白い。
お金さえあればいくらでも高級な靴を買うことはできる。でもその靴を成長させるには時間と愛情が必要だ。
だから革靴は奥が深い。
ここまで書いていた時間で、きょうの雨でずぶ濡れになった靴のファーストケアが終わる。さてこれからクリーナー片手にきょうのお手入れを始めるとしよう。
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