2018年10月14日日曜日

靴を買いました - REGAL 2235NA -

いまさらながら買ってしまいました。国産靴のレジェンド、REGAL 2235NA。



休日用の靴は僕の中でここ数年の傑作 W10BDJ を筆頭にいくつかあって、そもそも履く機会を考えると数の面では充実しちゃっているものの、やっぱりこの靴いいよなぁ、ということで。

国産靴の歴史には欠かせない靴。リーガルの代表作でもある。
いま40代くらいの人たちが若いころに買っていた雑誌やムックにはこの 2235NA が盛んに広告されていた。かかとにかかる重さが飛行機なんちゃらとか、「丸と角」みたいな広告。

2235NA はもともと百貨店の特注品をベースに1972年から現行型番で売られているそうな。2504NAとは違って、その当時からほぼ変わらない姿で今に至る。カジュアルなスタイルに合わせているところをあまり見かけないにも関わらず、どう考えてもカジュアル用途と思われるこのデザインが売られ続けてきたのも、日本では靴のデザインはあまり意識されていなくて黒靴であればなんでもOKということも一つの理由かも。2235NA のブラックをビジネスで履いている人を時々見ますので。

若いころはこういう重厚なウイングチップ(あえて「フルブローグ」ではなく「ウイングチップ」)はちょっと苦手で、どちらかというとプレーントウのホワイトバックスや2236NA のようなシンプルな形が好きだった。不思議と歳をとるとともに好きになってきたこのデザイン。



もともとリーガルは米国の Brown Shoe Company(現在は Caleres。リーガルが販売している Naturalizer ブランドを保有。ちなみにこの会社は今は Allen Edmonds の親会社) が買収した Regal Shoes のブランドをライセンスしたもので、その歴史をみても文字通りアメリカントラッドな靴。そののち Regal の商標権(米国他一部の地域を除く)をブラウン社から取得し、いまは「リーガルコーポレーション」の自社ブランド。

若いうちに手に入れておいて履き続けていたら格好良かっただろうな、と思わずにはいられない。
そろそろと思っていた頃に W10BDJ と衝撃的な出会いをしてしまい、いまさらながらのお付き合い開始となった。


2235NAはなんとなくサントリーウイスキーオールドと立ち位置が似ている気がする。
高度経済成長期に頑張っていたニッポンのお父さんのあこがれで、手に入れたらもうそれは大切に扱う自慢の一品。
いろいろな情報に容易にアクセスできるようになった平成の時代に入ると、相対的にその「ありがたさ」が下がってしまっているけれど、古くから靴に目利きがあった人のクローゼットにあることが多い。



W10BDJ と比べると、もう少し大切(?)に履くような靴。
フルブローグの出で立ちからすれば雨だろうがぬかるみだろうが気にしないのが粋とは思うものの、2235NA のデザインはもう少しきれい目に履く靴にみえる。

W10BDJ は傷がついても格好良いと思うし、むしろ多少の傷があるのだけれどきちんとお手入れされている感があるような履き方が格好良い。言い換えれば、傷ついたり雨に降られたりすることを気にする靴ではないけれど、メンテナンスはしっかりしている道具という位置づけ。

2235NA はその逆に、あまり傷が目立ただず、履きこまれているけれどお手入れ感が出すぎない(自然な感じをほんの少し超える)程度が似合う。この靴は何となく品があるというか優雅なたたずまいというのか、傷だらけになると無理して頑張っている感が出てしまうような。キレイ目ジャケパン系であれば W10BDJ より 2235NA のほうがサマになる気がする。グロメットの違いかもしれない。


さてこの 2235NA、最近の全体的なフィッティング重視のものとは違い、靴の前半部に締め付け感がないゆったりとしたラストに感じる。この靴を履いてから 01DRCD を履いてみると同じメーカーでもラストの考え方がずいぶん違うということに気づく。
前半部がゆったりといっても、箱に足を入れているような感じではなく、かかとは無理のない程度に触れて、甲側は紐で抑えるという感じ。

適切なサイズを選べばそれなりのフィット感があるものの、甲薄め、かかと小さめの最近のトレンドから見るとデカい靴、緩い靴という位置づけになってしまっている。僕は 01DRCD からハーフサイズダウン、2504NA と同じサイズにしている。三の甲は 2504NA よりやや高めなのか、新品時点できつめにひもを結ぶとかなり羽根が閉じてしまい(1cm以下)、沈み込んだら少し緩くなりそうだ。

スコッチグレイン(型押し)仕様の革は箱から出した時点では結構硬くて、これは難儀しそうという印象を受けたけれど、デリケートクリーム多めに塗って、そのあとクリームをいつもより少し多めに入れたら柔らかくなった。ボールジョイントあたりの屈曲部はかなり柔らかい。

外側のくるぶしがあたるという感じは 2504NA に似ている。ここはとてももったいないポイント。もっともっと人気が出てもよさそうな靴なのに、間違ったサイズを売られ、おまけにパターンが古めなため「痛い靴」「疲れる靴」といったネガティブな印象ばかりが広まってしまっている。

ライニングは伝統的に布と革の併用。レザーソールの本格革靴ということを考えると、結構頑張っている値段設定。
2504NA あたりと比べるとビジネスシーンでこれを履こうとする人は少ないだろうから販売数量も限られてくるだろうし、この靴を購入する層はそれなりに靴を大切にする人も多いだろうからバカ売れするような靴ではないけれど、この靴が廃番になることはなさそうなので修理を繰り返しながら長く履けそう。

作りはとてもていねいで、さすがにリーガルの代表作だと感じる。
ソールのステッチやコバステッチ、靴の内部縫製のすべてに日本の工業製品っぽい均質な仕上げがされている。



リーガルを代表する靴でありながら、大人の男性が購入する革靴としての優先度が低いデザインの靴だったりもする。

「欲しい」とは思うけれど、手に入れる必然性がないというか...

僕も、やっと購入したという感じ。W10BDJ と 2504BD があれば休日靴はすべての天気問題なしだし、そのほかローファーやらスニーカーやらもあるしで、後から追加して購入する理由があまりなくなってしまっていたので。

それなのにあきらめきれなくて買ってしまったのは、靴の完成度や使われている部材については W10BDJ のほうが一歩上をいっているのに、それに負けない存在感は僕が歴史を感じてしまうが故か。



初回のお手入れ。
この靴は型押しの厚手な革を使っているため、ブートブラックのデリケートクリームを気持ち多めに塗り込む。
塗ったら型押しのしわ部分やメダリオン部分にも入るように軽くブラッシング。その後30分くらい放っておいた。
ある程度浸透したかなと思うくらいで、再度デリケートクリームを入れる。歩くとしわが入りそうな部分は気持ち多めに塗り込んでいく。
この時点で表面が少しべたつくというかしっとりとしているというか、ややふっくらした感じになってきた。

そのあとは乳化性クリームを。型押しの部分があるためどうしてもいつもより多めに塗らないとまんべんなくいきわたらない(気がする)。余分なものは後で拭き取ればよいので、まずは全体に伸びるように少し多め(片足米粒10個にもいかないくらい)を塗る。
ついでにコバの部分にも塗り込んでおく。
型押し革の凹凸やブローギング、ギンピング(ギザギザ)があって塗りにくいので、クリームを少し塗っては軽くブラッシングの繰り返し。



ソールはいったんブートブラックのソールコンディショナーを塗ってみるものの、新品時はあまり浸透しないで意味がなさそう。こちらはある程度履いてからもう一度塗ることで初めて意味があるような。

クリームを塗り終えて10分ほどしたら軽く室内履きしてみる。
この最初のしわ入れの時が結構ドキドキしたりする。

僕は靴の構造と足との相性で自然にできるしわが良いと考えているクチなので、特にボールペンなどは使わないで自分の足を曲げることでしわを入れる。

まずは気持ち曲げる程度。
これでだいたいどこに力がかかるかが何となくわかる。

次第に曲げる角度を深めていっては戻してを繰り返し、最後に思い切り曲げる。
この時、クリームをある程度入れて革が柔らかくなっていればなっているほど自然なしわが入る。ボールガースに余裕がある靴だと大きくしわが寄ったりすることもあるが、気にしだしたらキリがないので、自然についたしわは受け入れることにする。2235NA は型押しの革ということもあり、しわがあまり目立たない。


今後もお手入れはブートブラックのデリケートクリームを中心にときどきニュートラル乳化性クリームで。


ネットで紹介されているいろいろな方の靴を見ると、やや濃いめのクリームでお手入れをして深みを増すようなお手入れをされていることが多いような気がする。もともとの赤が入った茶色を少し落ち着かせて、ダークな感じに寄せている。

それも格好良いけれど、購入時点でも何となく立体感のある仕上がりだし、そのまま様子を見てみようと思う。


僕はジーンズやチノパンの時に履くので、テカリはそれほど必要ではない。
ちょっとしっとりと落ち着いているくらいのほうが良い。
この靴だったらブートブラックよりM.モゥブレイのほうがあっている気がしないでもないけれど、リーガルブランドクリームの製造元であるコロンブスを使うことにする。



登場から45年以上販売されているモデルで、もう何足売れているのかわからないくらいなのに、特にこの茶系のものは案外履いている人に出会うことが少ない。地下鉄の駅でも、繁華街でも見かけることがほとんどない。
持っている人は多いとするのであれば、この靴を持っている人はほかにもたくさん靴を持っていて登板頻度が低いのかな。
いかにも定番すぎて、ちょっとわかる人ならだれもが 2235NA だってわかるところが気恥ずかしさを生んでしまうのかも。

形、色、素材のどれを見ても、あまり似たような靴は国産では見かけない。
いわゆるただゴツイ系のフルブローグは数多くあるけれど、アイビー寄りなデザインでありながら、日本人がていねいに作り上げた無骨と繊細が共存するデザインは独特な雰囲気を醸し出している。

僕が靴を買うのはもはや道楽に近い趣味みたいなもので、数が増えてくると一つひとつのローテーション間隔が必然的に長くなってしまう。一つ靴を買うと、ほかの靴の当番頻度が伸びてしまったりめったに履かなくなる靴が出てきてしまう。
靴って履いて、お手入れしてなんぼなのでそろそろ打ち止めにしようと思ってはいるものの、また買ってしまった。

2236NA 購入から25年経て購入した 2235NA。
リーガルの定番といわれる靴はいろいろな意味で「重い」。



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2018年10月5日金曜日

革靴の状態を見える化

革靴の状態って、素人の僕にはよくわからない。

何年も靴のお手入れをしていたところで、せいぜい自分の靴を磨いている程度ではどのくらいクリームを入れればよいのかということはいまだ確信を持てないでいる。
表面の状態からは判断できる技量も感性も経験もないので、何となく期間が空いたり酷使したりしているなと思ったときに乳化性のクリームを塗る、なんてことを繰り返してきた。


先日、ひょんなことから革靴の状態を見える化できることに気が付いた。

Google+ のコミュニティ「靴好きもそうでないひとも、革靴について話そう。」で「おしりふきを使って靴のお手入れをする」ことが紹介されていたので、僕も家にあったおしりふきを使って W10BDJ を拭いてみた。



おしりふきは比較的水分が多いので、均等に拭いているつもりでも水が良くしみるところとそうでないところがはっきりわかる。

これまでは固めに絞った布を使っていたので気づかなかったのだけれど、半びしょびしょ状態にしてみると水をよく吸う(しみる)ところとそうでないところが一目瞭然。


僕にとってはなかなかの大発見だった。


一見しみているように見えても、すぐに乾燥してわからなくなる。おしりふきはそのほとんどがただの水ということもあり、乾いてしまえばもとに戻る。
靴を拭いたらすぐに写真を撮って状態を記録しておくことにした。

拭き方の問題もあるかもしれないので何度かしみないところを意識的に拭いてみたけれど、やっぱり水がしみこまないところは何度やってもしみこまない。

意外だったのはしわの部分はそれほどしみにならず、しわによって革が寄る部分のほうがしみこみ具合が多かった。
考えてみればもともと平らだったものが変形して谷になるより山になるほうが表面上の密度が下がるので、繊維が開くことで水がしみこみやすくなっているのかもしれない。

どちらかというとクラックを気にしてしわのところをていねいに塗り込んでいたけれど、これからは革が寄る部分も意識してみよう。
しわになる部分はしっかりとしわが伸びる状態になってからクリームを入れたほうがよさそうだ。



ちなみにこのおしりふきは雨に濡れて表面がボコボコになった時や塩を吹いたときなどにも活躍している。いままでティッシュを濡らして使っていたけれど、こちらのほうが楽だし扱いやすい。

鏡面磨きのハンドラップではないけれど、本来の用途とは違うものの靴のお手入れにはこれほど便利なものはない気がしてきている。

箱買いしていると1枚2円以下になることもあるのでウェットティッシュより安上がり。

Google+ のコミュニティは多くの人の体験談が書かれていていつも発見がある、感謝。


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2018年9月30日日曜日

REGAL 2504 の魅力

アクセス数を見てみるとここしばらく 2504NA の記事がトップになっている。



靴に関するレビュー系の記事は、書いた直後にアクセス数が上がって、その後あまり目立たなくなることが多いのだけれど、この 2504NA の記事はアクセス数が落ちることがなく上位をキープしている。

さすがニッポンの名靴、といったところだろうか。


最近は休日に 2504BD を履くことが多い。
やっと涼しくなってきたこの時期、例年はライトブラウンやベージュなローファー系の靴が活躍する。
特に今年は猛暑ということもあり、あえて暑苦しい雰囲気のある 2504 を履くこともないなと頭では思っていたものの、真夏の暑い日もなぜかこの靴を履いてしまっていた。
革靴なのだけれど、僕の感覚ではスニーカーの延長っぽい位置づけというところが大きい。

理由を説明するのは難しくて、でもなんだか気楽に履ける靴。
ネイビーという色のせいなのか、それともデザインなのか、理屈ではなくてそういう気分になる靴。ブラウンやブラックもまた合わせ方によってはカジュアルでも十分いけるように思える。

オシャレに関して実力のない僕にとっては、2504 は格好をつけるために履くのではなくて、外出の時に何となく合わせている靴。
個人的には W10BDJ や 3043SF のほうが全体的なバランスが良くなる気がしつつも、なんだか肩に力の入らない靴の位置づけになっている。
(カミさんには「かっちりした靴はデニムには合わない」といわれてあまり評判がよくない。W10BDJ のほうが好評)



ブラックとブラウンの 2504NA は REGAL SHOES 専売モデルではないので、街の靴屋さんからネット販売までいろいろなところで販売されている。


輸入物も含めたグッドイヤーウェルテッド製法の靴全体から見るとそれほど高価な位置づけではないものの、広い価格帯の靴を扱う街の靴屋さんでは、いわゆる高級靴扱いとしてお店の奥に鎮座していることも多い。

いまとなってはグッドイヤーウェルテッド製法の革靴の中でも特にお手頃なわけでもなく、履き心地が特に良いわけでもない。
同じ値段出せばショーンハイトでスムーズレザーのレザーソールを買うことができるし、国産にこだわらなければレイマーや神匠でかなり作りこんだ靴を買うことができる。


だけれど、2504 は理屈で履く靴ではない気がする。

2504NA は、もうそれこそ「コレしか履かない!」という筋入りのかたから、オンオフ兼用でフルに使いまわしている上級者まで、それこそ数多くの人々に支持されてきたモデル。
人によっては想い出の靴であり、歴史の一部でもある。

2504NA の魅力のひとつが「変わらない安心感」。
今日買った 2504 を、おそらく10年後でも修理ができるだろうし、買い増しもできるだろう。

必ずしも中庸なデザインではなくて、どちらかといえばアメカジよりのゴツイ雰囲気は、クラシックなスーツスタイルにはやや主張が強すぎる。 なので、本来であればバブル時代のダブルスーツの時にしても、最近のクラシック調のスーツにおいても、足元にこれを持ってくると教科書的にはなんだかな、という違和感を感じる。

ただ、それでもいいのではないか、と感じてしまうのは、やはりここニッポンの風土に根ざしている靴という意識があるからかもしれない。同じく日本の風土に合ってインスパイアされたスーツというか背広にはこれがピタッとはまっているように見える。

料理におけるカレー南蛮や餃子が日本の風土や嗜好に合わせて独自の進化(「変化」かもしれない)を遂げたのと同様に、ビジネスシーンにおける足元についても欧米とは異なる過程を経ていまに至る。


ギョーザ靴と揶揄されがちなスリッポンも、イタリアあたりが発祥の靴の一つの進化系であるし、日中も靴を脱ぐことがある日本のビジネスシーンではオシャレと使いやすさが両立していたがゆえにここまで広まったのではないだろうか。

日本では靴を脱ぎ履きする回数が欧米に比べて多いので、足と一体化するような靴よりは脱ぎ履きしやすい靴のほうが理にかなっている。
いまでこそ紐をきっちり締めて履くことに理解がある人が役職者に増えているけれど、ひと昔前であればお客様先などでいちいち靴紐をあたふた結んでいるような新人を快く思わない上司もそれなりにいた。
靴ベラはかかとを壊さないようにするものではなくて、無理やり靴に足を押し込めるサポーターとして使われるケースが多かった。

そもそも家で靴を脱ぐのがあたりまえな日本では、職場(屋内)で靴を脱いでスリッパに履き替えるなんて人もいる。食品系の企業では企業文化の一つとして職場では履き替えるなんてところもある。

いい歳でありながらいまだに紐靴をデカ履きする人が多いのも、ベッドに入るまでは靴を履くため靴を足と一体化させる必要がある文化ではなく、素足を最も快適と考えることをより優先する文化であることにも一端がある。

2504NA のかかとが緩めなデザインはこうした背景があることを踏まえると、何となく理由のある形をしているようにも見えてくる。



素材の観点からはガラスレザーかつラバーソールは一年を通して降水量が多い日本の気候でヘビーユースには適している。
東京に住んでいると忘れがちだけれど、大都市圏以外では舗装されていない道路を歩くことが一般的で(舗装されている道は車で移動する)、あぜ道や砂利道を頻繁に歩いたり、自転車・バイクに乗るような場合はレザーソールよりラバーソールのほうが都合のいいことが多い。

欧米基準では変に見えることが、日本ならではの理由によるものであったり、そもそも文化・自然環境・利用シーンが違う社会において独自の進化を遂げることもあるので、それぞれの国々で定着したものが本家のルールから逸脱しているからといって低い評価をすることもないと思っている。
本家本流の考え方は尊重しつつ、自分(販売されている方ならお客様)が所属しているコミュニティの文化も同じくらい尊重しておかないと、ファッションってコミュニケーションの道具を超えて、他者批判の根拠にもなりかねない。


2504NA のガラスレザーは耐久性はそれなりにしても、お手入れが簡単で修理もできる。
ビジネスパーソンが必要とする要件をある程度バランスよくまとめた靴だからこそ、長続きしてきたのではないだろうか。



2504NA は履き心地についても(最近の靴と比較すると)独特。

足首周りは日本人に合わせてなのか小さめに作られているので、適正サイズを選び、紐をきっちり縛ると緩さや大きさを感じにくい。
トウから一の甲周りにゆとりがあるので緩い靴に見られがちだけれど、外羽根の位置がやや開き目なので、足がそこそこ薄い人でもサイズをきっちり合わせてみると二の甲から三の甲はタイトに履くことができる。

どちらかというと薄目な足の人にはくるぶしが当たって痛いという状況が生まれがちなデザイン。10回、20回と履くうちにそれは不思議と収まってくるものの、痛い思いをさせやすい靴というのがもったいない。
この状況はデカ履きだとさらに強調されるはずなので、まさにサイジングが命な靴といえる。


アッパーに使われているガラス仕上げのレザーは意外とキズに弱い。
実際、同じお手入れをするのであればスムーズレザーのほうがいい状態を長持ちさせることができる。ガラス仕上げはキズなどで塗装面がはげると補修が意外と面倒だったり、擦った跡をクリームでケアするということが難しい(僕には)。
これが新品状態から悪くなる一方という印象を強く与えてしまっているのだけれど、ガラス仕上げの味はここに出るという気がしないでもない。

いわゆる「ボロボロ」というのはキズが多いことではなくて、きちんとお手入れされていない汚らしい状態なんだと思う。
ビジネスシーンで履く靴なのだから傷つくのは避けようがないし、傷ついたり汚れたりするからお手入れの意味が出てくるし、そのお手入れによってキズもまた靴の個性の一部になったりもする。
ガラス仕上げの場合、表面が削れると白い層が出てくるけれど、多少であれば補修クリームなどで目立たなくできるので、キズを恐れて四六時中靴に意識が向かってしまうより、ふだんはそんなこと忘れていて、キズを発見したら(前向きな気持ちで)全力でその補修に意識を向けるほうが有意義な付き合いではないだろうか。



2504NA は必要以上にお手入れに気を遣わなくてもきれいな状態を維持できて、多少の雨ならば靴下をぬらさない安心できる靴。
派手さはないけれど、ニッポンのモノづくりの良さを感じることのできる靴。
愛着を持って長く付き合うこともできる靴。

2504NA には魅力がある。
デザイン、素材、作り、履き心地、歴史、価格、手に入れやすさ、修理の容易さなど求めるものは人それぞれ。
2504NA はそうした多くのニーズを受け止めることができたからこそ今日まで残ってきた。相対的なありがたみは下がってきたかもしれないけれど、世代を超えて語ることのできる靴として、そしてニッポンのモノづくりを感じることができる靴として、次の世代を担う人たちにもぜひこの靴の魅力に気づいて欲しいと思わずにはいられない。



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ふだんのお手入れはブラシだけで十分かと。




クリームはときどきしわの部分を中心にデリケートクリームを。


2018年7月30日月曜日

REGAL 01DRCD の魅力

ここ1カ月くらい、REGAL 01DRCD の記事へのアクセスが増えている。


先月までは 2504NA がいちばん多くて、「さすがは 2504!」と思っていたら、7月に入り 01DRCD のほうが増えている。そんなわけで、改めて 01DRCD について見直してみた。


僕の 01DRCD も気づけば5年を経過した。


販売も継続されていて、REGAL SHOES 専売モデルではない一般販売のモデルとしてはなかなかのロングセラー。
リーガルの中では流行にあまりとらわれない正統派モデルで、インポート素材を使っているにも関わらず4万円を切る値段設定という「ちょっと頑張ったら買えるかも」的なゾーンが支持を受けているのかもしれない。


たまたま僕の足にとってダメージが少ない靴ということもあり、おおむね週1回弱の登板をしていて、天候が悪い日も履いているにも関わらずオールソールまでもう少しいけそう。

アッパー側も大きな傷などはなく、全体としてはやや粗が目立ってきたもののクレム1925で十分いい感じに仕上がる。

ライニングも履いている頻度からすると擦れが少ないようで、かかとはピンポイントで擦れている。かかとはやや大きめのつくりではあるものの、靴の中で足があまり動かないこともあって擦れが少ないのかもしれない。



購入当初にやや華奢な印象を受けたのは、ソールを薄く見せるヤハズ仕上げやきめの細かいアッパー素材が理由かな。
実際にはほつれたり剥がれたりといったことがなく、当初から歪んでいたような土踏まずもいまのところ問題がない。



お手入れは購入時からずっとサフィールノワールを使っている。
水洗いをしたとき以外は数カ月に一度くらい水拭きしてからクレム1925を薄く塗っているくらいで、表面が明らかにボコって来た時にステインリムーバーを使う程度。ふだんは馬毛のブラシでほこり落としと、擦ってしまった跡を目立たなくするためのからぶきくらい。


ビジネスシーンで使う道具としてはとても完成度が高いモデル。
デザイン、価格、素材、アフターサポートとどれもが一定以上の満足をしている。
僕はヒロカワ製靴のスコッチグレインを履いたことがないので同価格帯競合の実力を知らないとはいえ、おおよそ3万円から5万円くらいのレンジにある靴としてはベストバイに近い位置づけなのではないかと思う。

まず、デザインがシンプル。 意外とロングノーズでありながらもトウの丸め方とキャップの大きさがゆえに、それほど長い感じがしない。コバの張り出しも控えめで、極めてスマートなスタイル。キャップが少し大きいところにリーガルなりの和風を感じる。

次にお手入れのし甲斐がある。
01DRCDのアッパーは、クレム1925などのようなビーズワックス成分が多いようなクリームで磨くと簡単にかなり光る。いわゆるじっとり系ではなく表面がつややかに光る系で、お手入れ技術がそれほどでもない僕のような人でも満足度の高い仕上がりになる。

そして、履き心地が良い。
やや革靴ビギナー向けにセッティングされているのか、かかと周りにクッション性のある素材を入れているため、RENDOやペルフェットと比較すると柔らかな包み込まれる印象。
シェットランドフォックスのグラスゴーも同様な履き心地なので(ラスト形状によるフィッティングではなく、ふわっとした感じが)、リーガルにおける最近のこのプライスゾーンは意識的にかかと周りを柔らかくしているのかもしれない。


いわゆるシンプルな定番系のキャップトウって、多くの靴を企画・販売しているリーガルでもほとんどなかった気がする。ときどき出てきても、すぐに終売となることがほとんどだった。
唯一の正統派定番モデルと思われる W121/W131/W141 も、BOSのサンプルを兼ねているが故かスクエアトウになっていて、それはそれで伝統的なデザインではあるものの、やっぱりラウンド形状の靴と比べるとどうしてもちょっと外れている印象だった。

リーガルブランドではあまりレザーソールを推しているように思えないので、01DRCDもひょっとすると企画商品だった可能性が高いけれど、結果、

・「ふつうな形」をリーガルで欲していた層への訴求
・レザーソールの靴にしてはリーズナブルな価格設定
・アノネイ社のカーフというアピールポイント

が受けたのか、想像以上にヒットしてしまっている気がしないでもない。

ひろく売れる靴ではないけれど、ちょうど靴好きが「一足買ってみようかな」と思うツボを押さえているような。
さらに、買ってみたら意外と履き心地が良くて、デザイン違いをもう一足という感じで輪をかけて売れると。
同一ラストのプレーントウモデルも出たことから見ても、意外とラストの評価も高いのかもしれない。

甲が高めという意見も結構聞くため、購入時には店頭でフィッティングをして決めることを強くお勧めしたい。
ぜひ店頭でサイズ違いを何度も試して、店員さんの意見も聞いて合う・合わないの判断をした後に購入してほしい。


REGAL SHOES に限らず、全国の靴屋さんや百貨店でも取り扱うことができるモデルのなかで、レザーソールかつスムーズレザーの定番的なデザインは貴重な存在。
リーガルはインポート靴を好む層にはイマイチブランドの訴求が弱いと思っているのだけれど、ソールにレザーを採用した靴はなかなか気合の入ったモデルが多い。

01DRCD のような息の長いモデルがある一方で、01NRDD のように1年も持たずに終売になってしまうモデルがあるのはただただ残念。リーガルなりのマーケティング戦略がその裏にあるのだろうけれど、希望小売価格で買うのをためらう人を増やすだけのようにも思えるし、セールで売り切ろうとするの目にしたら心を込めてその靴を作った職人さんはどう思うのだろう。

いつの日か、いまはまだ幼い息子が真新しい靴で社会人としてはばたく日、父親である僕は履きこまれ、磨きこまれた同じ靴を履いてその日を迎えられたら最高だ。その候補は 01DRCD かもしれないし、チャーチのコンサルかもしれないし、いまはまだ手に入れていない靴かもしれない。まだまだ先のその日までどれだけの靴が販売され続けているだろうか。01DRCD がその候補になる靴として残っていてくれたらとても嬉しい。


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いまやキャップトウの定番


お手入れは一貫してサフィールノワールシリーズを使っています。ほとんどはこのクレム1925のみで。


水洗いをしたときはデリケートクリームとレノベイターを使います。


ソールのお手入れはブートブラックを使っています。たまたま家にあるので。

2018年7月1日日曜日

Boot Black と M.Mowbray 比較その後

ショーンハイトで続けているブートブラックとM.モゥブレイ比較。


塗分けしているショーンハイト SH111-4 は天候をあまり気にしないで履いているということもあり、雨に降られたりもするとそのたびにリセットされるのか、革の変化に大きな違いはない感じ。


お手入れに時間をかけた後ははっきりとわかるその違いも、しばらく(1カ月ほど)履き続けるとどちらがどちらなのかわからなくなるくらいに落ち着いてくる。

ふだんのお手入れはブラッシングとからぶき、ときどき固く絞ったタオルでの水拭き程度なのでクリームが蓄積されて変化をもたらすほどの影響を与えていない感じ。

この辺りは僕の技量にも拠るところなので、靴磨きに一言ある人であれば継続的に違いを際立たせることができるかもしれない。


ブートブラックはそれ単体で仕上げることができる便利なクリーム。
成分についてはメーカーの言い分なのでどれほど靴に良いかは不明なものの、仕上がりはじっとりとしていて、いかにもお手入れしましたという雰囲気が出る。
コロンブスの高めのラインはビーズワックス多めな感じなのでつやつや仕上げがしやすい。

一方、M.モゥブレイはロウによる表面上の変化は多少感じるものの、やはりブートブラックと比べるとかなりサラッとしたテクスチャー感を活かした仕上がりになる。正直、これ単体では靴の輝きがイマイチなため単独で使うとインパクトが少ない。


僕はふだん使いのビジネスシューズにはほとんどワックスをほとんど使わない人なので、ブートブラックのような単体でそこそこ光るクリームのほうが好き。光らせることを重視するとクレム1925のほうが使い勝手が良いので、きめ細かなカーフの靴にはクレム1925を使う。

逆に、表面がある程度ポツポツしているようなキップ系の場合は、クレム1925のような油性クリームは厚塗りしがちなのでブートブラックのような柔らかめのクリームのほうが良さそうな気がしている。(あくまで気がするだけ)

少し立体感を出したいときは同じブートブラックのアーティストパレットをつま先とかかとに塗っている。


もし僕がワックスを使った本格的な鏡面派だとすれば、モゥブレイのようなあまり光りすぎないクリームをベースにして、つま先やかかとをワックス使って立体的に仕上げる。鏡面のメンテナンスをするついでにそれ以外の部分にクリームを入れることになるだろうから、基本は薄塗して頻度を増やす。

いまの僕のスタイルはクリーム中心にお手入れして、そのサイクルは長めのためやや艶のあるクリームを少し多めに塗ることが多い。この場合はブートブラックのほうがやや有利。

そんなわけで、ブートブラックのクリームはこれ一本的な道具としての登板頻度が上がる。



ブートブラックもM.モゥブレイもどちらも個性のある良いクリーム。どちらを使ってもクラックは起きていないし、雨に何度も降られるハードユースでも革が固くなることもない。カビが生えるということもないし、色が落ちることもない。

雨の日も晴れの日もあまり天候を気にしないで履いていれば、どちらにしても塩が浮き出る。


どちらも足の親指側に塩が出やすい。塩は足の汗由来といわれているので、どちらでお手入れしても通気性というか、浸透性は大きな変化がないのではないかと考えられる。


ソールについてもブートブラックとM.モゥブレイどちらの商品を使っていても減り具合に顕著な差は見られないし、
体感的な浸水も違うということもない。ブートブラックのほうがソールステインの色を若干落とす傾向があるような気がするものの、履き心地に関する部分で言えば違いに気づかない。
このあたり、僕は鈍感であるとはいえ、それほど大きな差を見つけられないのだから実用上はどちらにしても満足できる。


靴のお手入れに関して言えば、たいして靴磨きに時間をかけない素人レベルであるなら、永い間支持を受けてきたものであればよほどの違いはない感じ。むしろ、頻度だとか一回に塗る量といったほうが影響が大きそう。


ところで、よく雑誌とかで靴磨き屋さんに仕上げてもらった写真などを見ると、じっとりと光るような靴をよく見かける気がする。
そこによく書かれているのが「革に栄養がいきわたっている感じ」
これってビーズワックスがちょっと強めに入っているクリームを薄塗何回か繰り返すと同じように見えるのだけれど、それって革に栄養が入ったからなのだろうか。
僕には表面にとどまるロウ分の艶感がそう思わせているように見える。

と思うようになったのも、この比較でほぼ同じようにクリームを塗ったとき、明らかにブートブラックのほうがそういった印象を受けるけれど、実際にはどちらも同じくらいクリームが入っているようだし、ある程度塗り続けた後のコンディションに大差がないようにも感じている。

もし栄養分(というか、保革成分)がそういう見た目の印象を与えるのであればこの比較では明らかにブートブラックのほうが良いコンディションに仕上がってくるはず。数年単位でお手入れを分けているので、印象的な違いがみられてもおかしくない。
こういう「栄養がいきわたっている感じ」とか感覚的な言葉は商品の売り手が使うにはいいのだけれど、比較に使おうとするのであれば何らかの数値化できたら面白いのに。
コロンブスなど本格的な研究をしているところにはデータあるのかな。

もちろん、僕が仕上げた状態とプロが仕上げた状態とでは、一見似たように見えて革の内部的には全く異なる状態になっているということも考えられる。だからこそ、プロがやったものと素人がやったものを比較する指標があればよいのになと思う。定量データなどの客観的指標で比較できれば、それはもうプロに依頼する大きな根拠になるのだから、だれかやってみるひと出てきてもよいのにな、と思う。



どんどん新しい商品が出てくるので、僕のようなお手入れ好きというかお手入れ用品好きは試してみたくなるものの、おそらく普段履きに一般的なお手入れをしている限りではその差を際立たせることはできないのかもしれない。メーカーの差別化要因を僕が再現できないというのは製品を活かしきれずにもったいない気もしないでもない。

とはいえクリームを塗るという行為は保革のためのメンテナンスというだけではなく、それ自体が楽しみでもある僕には、表面上の小さな違いでも「面白い」と思ってしまう。

それは光り方だったり、革に吸い込まれていく感覚だったり、時には香りだったり。クリームにはいろいろな性格があるので面白い。

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2018年6月15日金曜日

REGAL 2504BD

2504NAのネイビーバージョン、2504BD。
2017年秋冬新商品。
写真では黒っぽく写っているけれど、自然光の下では結構鮮やかなネイビー(最後のほうにある新品時に取った写真のほうがイメージに近い)

独自の型番が振られていたり、ライニングが黒色だったりと、定番品のカラー追加というよりは、特別なラインとしてある程度の期間だけ販売されるのではないかと思われる。


この靴の購入が、実は前回の 2504NA を書くきっかけとなった。

いまはネイビーをビジネスシーンで履いている人が出てきているとはいえ、やはりどちらかというとカジュアル向け。
ジーンズあたりと合わせるのは茶系のほうがサマになる感じもしつつ、ややモノトーン系でまとめるなら意外といいかもしれない。ボリュームがあるので同色系でまとめても靴の存在感がある。夏場にはオフホワイトデニムのようなややボリューム感のあるパンツと合わせてもいいかも。


靴の作りについては全体の印象は前回の 2504NA と変わるところはない。あたりまえだけれどまんま 2504 なので。ただ、今回新品の 2504 を履いて改めて気が付いたことがたくさんあった。


まず、当初の足へのダメージがかなり大きいこと。やはり新品の 2504 は結構修業が必要な靴。くるぶしに履き口が刺さるような感じで、ひさしぶりにここの皮がむけた。
次にタンが少し長いのか、常に足首に刺さる感覚がかなり続いた。どちらかというとゴツイ足向けのラストと思っていたけれど、足首まわりはそうでもないのかもしれない。日本人向けのラストは足首周りが欧米製に比べてコンパクトなのはずっと以前からそうだったんだなと再認識。
三つめは羽根の部分がやはり厚めのため甲が少し痛くなった。外羽根部分の作りはやや重厚なので何度も屈曲され革が足の形になじむまでの時間が長い。羽根がしっかりしているのでタンが刺さりやすいというのもあるかもしれない。
この3点については、最近の靴ではあまり感じなかった痛いポイントなので、靴の形状や素材に大きな違いがあることが良くわかる。

そういうものだと割り切りがある僕でも「やっぱり痛い靴だな」と思ってしまうので、それこそ革靴が初めてという人がこの状態になったら革靴は「痛い」という印象が強くなってしまいそうだ。革靴経験が少ない人にはもう少し穏やかな入り方の靴のほうが良いかもしれない。

リーガルでいえば 01DRCD はこのあたり改善されているし、似たような形のショーンハイトの SH111-4 もやはりくるぶし周りは 2504 より低めに作られている。


一方で、やっぱり甲の屈曲部についてはそれほど硬い革ではないという印象で、指に刺さるような感じは一切ない。数回履いた後に指で押してみると思ったより柔らかい。
比較的新しいからなのか、厚手の革であるものの固いということはなさそうだ。
足の小指が痛いとか、かかとが痛いということはなくて、全体的にゆったりとしている。かかとのあまりから見ても全長はジャストサイズと思われるので、指回りのカーブ度合いなどつま先側はそれほど攻めていない。

しわの入り方は左右の足で違っていて、左足がこれまでの 2504 と同じように少しぷっくりとした大味なしわが入るのに対して、右足は意外と繊細なしわが入った。個人的には後者のほうが好み。素材の部位が違うのか、それとも加工に違いがあるのか不明だけれど、ガラス仕上げでも結構いい感じのしわが出せるのではないかと思ってしまう。




初回のお手入れに関してはブートブラックのデリケートクリームを多めに塗ってみた。

ガラス仕上げの革についてはクリームが入る入らない論争があるようで、入る派の人はしわの部分に細かなクラックがあるから浸透するとかで、入らない派は樹脂コーティングされているので意味がないという感じ。僕は前者のスタンスで、メーカーもクリーム塗っておけと言っているのだから、何らかの意味があるのではないかと思っている。

数回履いてからのお手入れも同じくデリケートクリーム。1カ月くらいたってから気分の問題でニュートラルのクリームをつま先、かかとを中心に塗ってみた。
多くが表面にとどまるからなのか、靴の光沢感が明らかに違うので、ピカピカを狙うならクリームを塗って磨くのも悪くない。冒頭の写真もほんの少しだけクリームを塗った状態。

ブローギングのないシンプルな形状の靴なので、クリームを塗るのも簡単。時間にして5分も使わないので気分転換の時くらいにやっている。

ソールはゴムなので基本ノーメンテ。クリームを塗るときについでに靴底をウェットティッシュで拭うくらい。濡れてもあまりカビなどの心配がないのもメリット。つま先の減りはレザーソールと比較すると圧倒的に少ない。

コバ周りは歯ブラシでニュートラルのクリームを塗ってみた。ここは革素材なのでクリームのメリットが出やすいはず。(リーガルの修理はリウェルト前提なので気にしなくてもよいという気もするけれど...)


僕にとってはビジネスシーンよりも履く頻度が少ないカジュアル靴なので、ガラス仕上げでラバーソールという雨にも比較的強いスペックは便利。

オフの日って外出して靴を脱ぐことも多いので、ちょっとした雨くらいなら靴下濡れる心配が少ないというのもありがたい。スエードの W13BCF はアッパー素材としては雨にも強いところはあれど、やっぱり浸水しやすくて結果靴下が汚れやすい。一度大雨に降られてからは晴れの日履いても靴下が汚れやすくなったので靴を脱ぐようなことがわかっている場合は控えるようになった。

小雨から普通の雨降り程度であれば十分この靴でいい感じ。
それなりの大雨でもなかなか浸水してこないのはラバーソールとガラス仕上げのなせる業か。土砂降り時にソールはつま先側から浸水してくるので、つま先側の縫い目部分にワックスなどをしっかり入れるとさらに防水性が高まるかも(通気性は下がるかも)

個人的には10数回履くまでは新たな靴のしわやそれに伴う微細なクラックができる気がするので、雨を避けつつクリームをていねいに入れることを心がけてみた。くるぶしやタンのダメージがなくなるくらいの時期からはほとんど天気を気にしていない。

W10BDJ のようなまんまカントリーテイストでもないので、汚れたらある程度綺麗に汚れ落としをして、クリームを塗って適度に輝かせるのがこの靴の真骨頂かと。お手入れそのものはラクではあるものの、決してお手入れをしないでよい靴ではないと思う。



リーガルはときどきネイビーを出してくる。

僕は 2504 の黒をカジュアルに合わせるのは難しいと思っているのだけれど(個人の技量と年齢の問題)、ネイビーだと合わせやすいかなと。ダークブラウンよりはややキレイ目にまとまる感じかな。


ラストやパターンの使いまわしができる定番モデルの色違いなので会社的にはリスクが少ないかな。今回は同素材かつ色も奇抜ではないので在庫リスクは少なそう。

定番はラストやパターンを新たに用意することもないので、どうせならときどきパターンオーダーみたいな形で展開してくれたらいいのにな。



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2504 はクリームが入りにくいようなので、デリケートクリームを少し多めに塗っています。



ときどき気が向いたとき程度に乳化性クリームを。コバの部分にも塗り込みます。


2018年5月29日火曜日

5年経っておもうこと

このブログは2013年5月に始めたので5年が経過した。

5年かかって書いた記事が65件、2016年以降は毎年ヒトケタしか書いていない。
コメント数は256。これには返信したものも含まれるので、いただいたコメントはその半数くらいとしても、こんなにものより多くのコメントがあったことはとても嬉しい。

書き始めたころは靴のレビューをするような内容が多かった。
僕は昔から革靴が好きだったということもあり、インターネットがいまほど普及していなかった時代には雑誌やムックなどを見ながら「いつかはストール・マンテラッシ」みたいな気分でいた。

誰もがインターネットをあたりまえのように使うようになり、個人でも情報を容易に発信できるようになるにつれ、レビューのような記事が増えてきて、読んでいてとても楽しかった。自分も書いてみようかなという軽い気持ちで Shoe* というこのブログを始めてみた。

2013年頃はそれほど革靴を詳細にレビューをするというブログがなかったのか、検索エンジンでも比較的上位に表示されることが多くなり、また、当時すでに有名だった Life Style Image さんで取り上げていただいたこともあり、ほぼ革靴のことしか書いていないニッチなブログにも関わらず、少しずつアクセスが増えてきた。


いまは別にスーツにブラウンの靴でもいいじゃん(というか、むしろお洒落扱い)、という意見が一般的だし、技術が進んで雨の日に適した靴もある。そういう世の中で「靴は黒」「天気は気にするな」というのは一歩間違えると老害ともいえる保守的な意見なのかもしれないと思うこともある。

僕は一介の「働くおじさん」なので、ビジネスシーンでの身なりはかなり保守的なほうが良いと思っているフシがある。社会って「相手がどう思うか」を考えずには成り立たないからこそ、最初は最も保守的なゾーンからいって、相手の素性がわかるにつれ違う面を見せる、みたいなほうがいいと思っている。
相手が真の洒落者であればあるほど、保守的なスタイルをうまくまとめている人を決して「個性がない」とは思わないだろうから。


巷には数多くの靴に関するブログやらサイトが立ち上がっていて、特に個人が趣味で書いているものは実体験に基づいていてとても参考になる。僕は科学的な分析だったり、実験的なものだったり、新しいことにチャレンジするような記事を見るとわくわくする。
Google+のコミュニティ「靴好きもそうでない人も、革靴について話そう。」に投稿される内容はとても興味深くて面白い。


この5年間、途中ほったらかしの時期もあったけれどいまでも続けているのは、やっぱり革靴というプロダクトになんか惹かれるものがあるという自分の内面と、コメントをいただく感動や、僕にはアクセス数という形でしか見えないけれどその数字ひとつひとつを築いてくれている読み手のみなさんのおかげだと思う。自分の興味あることについて表現する喜びを得たことこそがブログを始めて、書き続けてよかったと思う。



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5年を境に、というわけでもないのだけれど、靴以外の話題をつらつらと書いてみようと思うこともあり、*nota というブログをはじめてみました。

こちらでは靴以外について自分の思っていることとか、気が付いたこととかノンジャンルでいってみようかと。
ただでさえ更新頻度が少ないこのブログに加えて、さてどれだけ更新されるのか...