キャップトウのド定番、チャーチのコンサル (Consul)。
世界中、どんな場所で冠婚葬祭に出ても、これを履いていれば間違いない。
コバが張り出していて、キャップもぷっくりしているデザインは、やや無骨のように見えるが、英国正統のクラシックスタイルに決まってしまうのだから洗練されているといってもいいのかもしれない。
ちなみに、チャーチ純正の靴紐はかなり太めかつ柔らかめのものが用意されているのだけれど、僕は一般的な(リーガルで買えるコロンブス製の)丸紐に変えている。
7万円を超える国内価格は、一般的には高級靴の範疇に入るのだろうけれど、同価格帯のクロケットアンドジョーンズのハンドグレードラインや、国産シェットランドフォックスよりもアッパーの革質が良いわけでもなく、作りにこだわりがあるわけでもなく、極めてオーソドックスな靴。
素材は「ヨーロッパの最高級タンナーの革を慎重に選んだカーフ」だそう。やや皺が大味に入るところを見ると、国産基準で言うところのキップよりに近い革が使われているとおもわれる。ただしリーガルの国産キップより肌理は細かく、ある程度手入れをしたあとの艶もいくぶんしっとりしている。
このモデルはプラダ買収後の173Fラストなので、旧チャーチに比べるとややロングノーズ。イマドキ基準で言えばふつうといったところか。
シェットランドフォックスのエジンバラとの比較。長さ自体はほぼ同じだが、コンサルのほうがトウにややボリュームがあるため短く見える。
コンサルは最初に履いたときは少し歩いただけで小指が痛くなるなど、やはりつま先がタイトと思ったいたけれど、革の伸びがあるのか比較的沈みやすいコルクなのか3回目くらいで気にならなくなってしまった。
アングロサクソン向けのやや薄いラストのようで、ボールガースから甲までタイト目で薄い僕の足にはわりと合っている。ただ、かかと大きめな作り(だと思う)。あと、当たるほどでは無いけれど、くるぶしのあたりは高めな気がする。
フィッティングはなんとも特徴がなく、土踏まずの絞り込みもがカスタムグレードというたいそうな名前がついている割にはそれほどでもなく、突き上げられる感もない。ボールジョイント周りにも特筆すべき点もなく、いたって何もない。ただ、それだけ履いている間に意識をさせない靴であるとも言える。
チャーチのコンサルは不思議な靴だ。素材も、作りも、履き心地もこれといって目立つところが無いのに、じゃぁたいした靴じゃないかというと絶対にそんなことは無い。デザインのなせる技なのか素材感なのか、極めてフォーマルなスタイルだけでなく、アンタイドの少しラフな格好でも決まってしまう。同じラストと作りでプレーントウがあれば、それこそジーンズにもいけてしまうだろう。コンサルはフォーマルの範疇のカジュアル寄りもカバーする懐の深さがある。
このあたりはクロケットアンドジョーンズのオードリーやシェットランドフォックスのケンジントンのキャップトウとは決定的に異なるところで、こちらの2つはよほどの洒落者でも無い限りは、やっぱりきっちりとしたスーツスタイルにのみ合うように思える。
お手入れはサフィールノワールのブラックを使っている。もともと僕は鏡面仕上げはしない人なのだが、コンサルに関しては特に鏡面じゃないほうがその良さを活かせるような気がする。
シューツリーはいつものディプロマットヨーロピアンを使っている。ネットの情報を見ると、ヨーロピアンでは少し幅が足りないかなという感じも受けたけれど、実際に入れてみると特に革が余っている感じがしないので、多分フィットしているのだろう。
どこかで
「コンサルに始まり、コンサルに終わる」
という名文句を見た。本当にそう思う。
チャーチのどこがいいの、コンサルのどこがいいのと聞かれてピンポイントでどこがいいと答えるのは難しい。でもコンサルは履いてみればわかる靴で、これほどまでに良さを具体的に説明するのが難しい靴も無い。
よく「質実剛健」というキーワードで語られるチャーチ。でも正直、質実剛健だけならリーガルあたりもすごいよ。20年前に買った2236NAなんていまでもふつうに履けるし。(ま、この靴は異常に長持ち。あとに買ったジョンストンアンドマーフィーLS46のほうが先にダメになってしまった)
もし僕が今後手持ちの革靴から一種類しか履けないとなったら、選ぶのはこのコンサルになるだろう。項目別に見るとコンサルに勝っている靴は山ほどある。でも懐の広さでコンサルに勝る靴はそうそう見かけない。
不思議な魅力のある靴なんだな、チャーチのコンサルは。
0 件のコメント:
コメントを投稿