2015年9月27日日曜日

革靴を水洗い - SHETLANDFOX 3029SF INVERNESS -

シェットランドフォックスのインバネス。

晴れの日も雨の日もあまり気にせず履いていたせいか、なんとなく艶もなくなってきて、おまけにシミや塩吹きも目立つようになってきた。登板頻度が高いこともあり、ちょっと型崩れもしている。

インバネスに使われている仏アノネイ社ボカルーのようなアニリンカーフは一般的には水に弱いとされている。染料によって仕上げられた透明感のあるブラックが失われてしまうそうだ。
確かに、これまで土砂降りも含めて酷使してしまったので、ボカルー本来のみずみずしさが無いのだけれど、なんとなくインバネスのボカルーは最初からこんな感じだったような気がしないでもない。

毎度まいどの話だけれど、ビジネスシューズは雨に降られることは致し方ないと思って履くしかない。「雨の日履くな!」「天気予報見ろ!」というご意見は一理あるとは思うけれど、それじゃ雨の日は会社に何履いていくんだ、という話になってしまう。(わざわざ雨の日に履くこともない靴も世にはありますが、僕が想定しているのはスーツを着る一般の社会人が仕事上履く靴です)

ビジネスシューズではなくドレスの領域だって、娘の結婚式が大雨だったとしても手持ちで最高のキャップトウ履くべきだし、同じ靴を大切に履き続けて孫の結婚式でも履きたいと僕は思う。
天気がどうであれ出来事がまず中心にあって、それにふさわしい靴を履きたい。そのために僕が知りたいのは「○○するな!」の禁止ではなくて、それでもお気に入りの靴が雨に降られてしまったらどうすればよいのかというプロの意見。
ビジネスパーソンはビジネスをするために靴を履いているのだから、朝から大雨はともかく、天気予報まで気にして履く履かないを決めないとならない靴があったとしたら今の僕には無用の長物。

本格靴を扱う靴屋さんや靴の専門家の方にはぜひ、雨に降られた場合のお手入れをもっと情報公開してほしいと思う。リペアや顧客との対話を通じてお手入れのケーススタディを集められる環境で、靴の製法や素材による特徴などの情報も得やすい立場だけに、一消費者だけの経験則に比べてより多くのケースに基づくアドバイスができるのではないかと強く思う。禁止という安易な結論ではなくて、起こりうる(しかもかなり高い確度で起こる「雨」の)ケースに対してどう対処するかという専門家の意見にはとても興味がある。

僕自身は雨を否定的に捉えすぎないようにしている。もちろん買ったばかりだったり、思い入れのある靴が雨に降られるとちょっと悲しい。
また、どうしてもお気に入りのこの靴を履く、と決めている日は晴れて欲しいと思う。

でもたいていの靴は天気を気にしないで履けるようになった。
それは「雨が降ってもいい日用に格下げ」した靴ではなくて、晴れていても妥協が無く、雨だけの理由で避けることが無い靴で、どれもお気に入りの靴だ。

...と、ちょっと熱くなってきたところで、本題に戻ります。


先日、台風による連日の大雨でひさびさに外から中までびしょ濡れになったので、いっそのこと水洗いすることにした。
インバネスは購入してから何度も雨に降られていたけれど、いまだ一度も水洗いをしたことが無かった。

最近では「革靴に水は厳禁」のようなトーンが少し影を潜めて、むしろお手入れ次第では洗ったほうが良いという雰囲気もある。

「革靴を洗う」という行為は、一歩間違えると靴をダメにするというリスクと隣り合わせだし、実際に洗っている僕も、本当に大丈夫なのかという科学的な確証は全く持っていない。あくまでも実験的な意味合いでやっていて、なんとなく経験則的に大丈夫そうだという程度。見える部分はきれいになっていても、中物は大丈夫なのか、シャンクや釘はどうなっているのかなど見えない部分の状態は不明なまま。繰り返した場合どうなるかということも未知数。

僕がもし靴を縫うことができる技術があれば、一度ばらしてまた戻してみたいけれど、そういう技術を持ち合わせていない以上、見えない部分のリスクを負いながらやるしかないわけで。


※重要※
ここからは個人的な趣味による実験です。
素材や色、靴の作りによっては水洗いすることで取り返しの付かないダメージを与えてしまうことがあります。
高価な靴、大切な靴などは専門家にお任せすることを強くお勧めします。
(だからこそ、大きく濡れたときどうしたらよいかという専門家のアドバイスが欲しいわけです)

これまで、グラスゴー01DRCDを水洗いした記事を書いたので、かぶるところも多いのですが、いくつかやり方を変えたところもあるので、詳細に書いてみようかと。とても面倒な手順です。


今回は、これまでの水道水ではなく、より塩分や余計な脂分が抜けるように摂氏40度のお湯でチャレンジ。
ボカルーの染料まで溶け出してしまいそうとは思いつつ、その時はていねいにクリームで補色すれば良いのかなと。


今回使った道具
  • ステインリムーバー(M. Mowbray)
    ふだんのお手入れでは全く使わなくなったステインリムーバー。今回はお湯に付ける前に軽く塩を浮かせられないかなと思って使用。
  • 洗濯用中性洗剤『エマール』
    ウールなどの動物性繊維を洗うときに、よくある弱アルカリ性の洗剤を使うとごわごわした仕上がりになりやすい。おしゃれ着用として洗浄力は弱めだが生地にやさしい中性洗剤を使う。僕が靴から取り除きたい塩分と古いクリームはお湯で溶け出してしまうだろうから、洗剤はどちらかと言うと全体を清潔にする効果を期待。
  • スポンジ、ナイロンブラシ
    スポンジは全体を洗うために。ナイロンブラシはコバ周りを洗うために使用。
  • タオル、キッチンペーパー
    洗いあがりの水気取りに。最初にタオルで全体を拭って、キッチンペーパーを詰める。コンビニで2ロール100円くらいなので吸水性も良いキッチンペーパーは重宝する。スーパーとかホームセンターだともう少し安く手に入る。
  • サフィールノワールデリケートクリーム
    ずぶ濡れから乾燥に至る過程で、蝋分抜きで適度に加脂したいときはデリケートクリームがちょうどいい。蝋分がないか極力少ないものを選ぶ。
  • サフィールノワールレノベイタークリーム
    乾ききった後のコンディション調整に使う。ブートブラックのリッチモイスチャーもこのタイミングで使うのに良さそう。
  • サフィールノワールクレム1925
    補色と表面保護の仕上げ用。
  • M.モゥブレイモールドクリーナー
    靴の中のカビ防止スプレー。ふだんはめったに使わないが、水洗い後はカビやすいので必需品かと。
  • ソールコンディショナー(シェットランドフォックスでかったコロンブス製)
    水洗いでソールは相当油が抜ける。靴が完全に乾ききってから最後に多めに入れる。
  • コバインキ
    コバインキで仕上げると靴の印象が格段に良くなる。普段からコバの色抜けに注意すると新しい靴を履いているように見える。

汚れ落とし

靴ひもを外し、まずは固く絞った布で汚れ落とし。表面の泥やほこりを落とす。キズをつけないようにていねいに払うような感じで。その後全体を馬毛ブラシでブラッシング。コバの部分にはほこりなどがたまりやすいのでブラシの角をうまく使って落とす。

ソールは小石などが挟まっていたらできる限り取り除いておく。

今回はひさびさにステインリムーバーを使ってみた。

ボトルをよく振ってから布に多めにつけ、塩が吹いているところを中心に靴を湿らせるように軽く拭う。その後、乾いた部分でふき取ると結構色が落ちる。ついでに余計なクリームの一部も取れているようで、全体をぬぐった後はややテカリが無くなっている。

水洗い

全体を水で洗う。黒色の靴なのであまりシミは考えず(というかどうせ目立たないだけでシミはある)、水をかけてしまう。

ここでは洗剤をつけずに、まずソールを指で撫でて汚れ落とし。その後アッパーをよく撫でて表面の塩気やステイリムーバーの残りを落とす。最後に靴のなかによく水を入れてを軽くブラシ掛け。インソールを最後にしているのは、ある程度水が浸みるのに時間がかかるため。

お湯に漬ける

摂氏40度のお湯をためて、その中に漬けておく。洗剤はこの段階では使わない。今回は20分ほどつけて、その後お湯を入れ替えて15分ほど漬けておいた。

水につけておいたときと比べると、明らかに水(というかお湯)が茶色に変色している。それだけ色が落ちているということかな。
あまり高温だとそれこそタンパク質が変性してしまいそうなのでもう少し低い温度のほうがよいのかもしれない。
途中で1度入れ替えるのは、せっかく水に溶けだした塩分や古いクリームが靴全体に再付着するのを防ぐため。

洗剤で洗う

エマールをスポンジにつけてアッパーとインソールを洗う。
最近デザイン変わりましたね。
片足1~2分程度。アッパーは泡で表面を洗うような感じでなでるように洗う。インソールはもう少し力を入れるけれど、それでも軽くこするといった程度。
サドルソープってどうなんでしょう。アルカリ性の洗浄液は牛革のたんぱく質を壊すので良くないという意見がある一方で、靴に造詣が深い方で愛用されている人もたくさんいる。仕上げも洗い流すのではなく、拭きとるだけ。これって次に雨に降られたらまた石鹸成分が溶けだしてしまうのでは無いかといつも思う。
中性洗剤は汚れ落ちがイマイチとされているけれど、今回の洗う目的は雨の中歩いたことによる汚水由来の汚れとか塩分を取り除くため。なので、漬け置きした後は表面に残っている汚れを落とすという感じで。

すすぎ

洗い終わったら水で洗剤を流す。まずは水道水でジャバジャバ水洗いして、泡が無くなったと思った頃に靴の中をシャワーでよく洗い流す。すすぎは泡切れが良いようにふつうの水で。
革靴用ではない洗剤を使っているので、洗剤が残らないようにていねいにすすぐ。

最後に流水に1時間くらい漬けておく。
洗剤と塩分を完全に抜くために少し時間を長くしている。洗剤で洗ったため少し毛穴が開いていたらそこから余計な汚れが取れたらいいなぁと。
ここまでが洗い工程。

水気取り

すすぎ終わってからが靴洗いの難所。完全に濡らしてしまう洗いの工程まではあまり神経質になることもないけれど、ここから乾燥する間は一歩間違えると靴を台無しにしてしまう。
革靴は種類の違う革が縫い合わされていたり、縫い糸は麻だったりナイロンやポリエステルだったりで革とまた伸縮率や乾燥のしやすさも違うだろうから一気に乾燥させるとどこかに負荷がかかりそう。そんな心配もあるのでごくごくていねいに。

アッパーは上から押さえるように、中はふき取るような感じでタオルで水分を取る。ある程度取れたらキッチンペーパーを靴の前半部分だけきつめに詰めて15分くらい放置。その後入れ替えて1時間くらい放置する。靴は風通しの良いところに置いておく。うちでは24時間換気をONにして浴室においている。浴槽は湿気を防ぐために風通しがよく設計されているので、ちょうどよく乾燥できる。靴の置き場所によっては風が当たりすぎるので適度にそよ風が当たるような場所に設置。浴室乾燥機能は温度が高くなるので使わない。あくまでも送風のみで。

靴全体に加脂

1時間くらいたって一度キッチンペーパーを取り除いたら、この段階でアッパーにごく薄く、インナーには少し多めにデリケートクリームを入れる。特にインソールはクリームの塗った量がわかるように指で塗りこむ。キッチンペーパーを入れ替えて一晩放置。
この段階では光らせる必要もないし、そもそも表面に膜を作るようなものは乾燥の邪魔なのでデリケートクリームがベストと思っている。サフィールノワールはミンクオイル配合なので、こういう塗れ状態の保革にはラノリン主体のM.モゥブレイのデリケートクリームのほうが良いのかな。

陰干し乾燥

翌朝にはキッチンペーパーを取り除き、室内でそのまま夜まで放置する。この時表面を触ってみて、ある程度革に柔軟性があるかチェック。今回は少し硬い感じがしたのでごく少しだけデリケートクリームを追加。
カビ防止と乾燥しやすいようにツリーなどは入れない。

調整

夜になったらほぼ靴の表面は乾燥するので、いったんツリーを入れ固く絞ったタオルで表面を吹く。これは乾燥の過程で内部に残った塩分やデリケートクリームが表面に浮き出ているかもしれないという気休め。全体を軽く拭ったらデリケートクリームを再度入れ込む。デリケートクリームは薄く二度塗り。一度目で革に浸透する度合いを見ながら、よく吸収される部分には少し多めに二度目を塗る。
全体が少し息を吹き返したような感じになる。


クリームがリセットされるので、表面はざらざら感が目立つ。最後にクリームで仕上げるのが楽しみな状態。
デリケートクリームを塗り終わったらツリーを抜いてさらに乾燥させる。

保湿

また1日おいてから最後にレノベイタークリームを入れる。この段階では仕上げの調整みたいな感じで薄塗り。
お手入れの時にはツリーを入れるが、お手入れが終わったらモールドクリーナーを靴内部に軽くかけてツリーは抜いておく。モールドクリーナーは屋外まで靴を持っていき、片足2プッシュくらい。1プッシュでもかなりの量が出るので、靴の中が結構湿る。カビは靴の中で甲が当たる側にも生えるので、上側にもよくかかるようにする。
過去にここで靴の形を整えようとしてツリーを入れておいたらカビが生えたことがあった。せっかく洗って清潔になったので、確実に乾燥する前にツリーは入れないことにした。

仕上げ

もう一日くらい置いて、水分がある程度抜けきったら仕上げ。ツリーを入れてから、アッパーに補色も兼ねてクレム1925のブラックを薄塗り。コバ部分にはペネトレイトブラシでクリームを塗りこむ。
ボカルーの黒はブルー系の黒なのでサフィールよりイングリッシュギルドのほうが相性が良いのかなという気もしつつ、使い勝手のよくわかっているクレム1925を使っている。
エッジも色が落ちているのでコバインキを塗る。
最後にソールコンディショナーで乾ききったソールに潤いを与える。中のコルクがなかなか乾燥しないはずなので、ソールのメンテナンスは一番最後がいいと思う。あまり早い段階から油分を入れてしまうと内部の乾燥が遅れてしまいそう。

あとはツリーを入れてしばらく部屋に置いておく。
乾いているように見えても、まだまだ内部には湿り気が残っているのではないかという気がするので、1週間くらい放置しておく。

水分が抜けて元通りになったと思われるころを見計らって、クレム1925を再度塗る。
さすがに油分が抜けているのか、クリームが良く入るのでいつもより気持ち多めに塗る。
つま先やかかとなど保護が必要なところがより多めに。

豚毛のブラシでよくよくブラッシングしてから、最後に乾拭き。
乾拭きには少し時間をかけてていねいに。


仕上がりは想像以上に艶が回復している。
毎度水洗いの後の仕上がりを見ると、靴を全部洗いたくなる。
紐も新品に交換して完成。


今回はインバネスに続いて01DRCD洗ったので比較の参考画像。

インバネスの仕上がり


同時に洗った01DRCDの仕上がり


01DRCDのほうが少しきめが細かい。
思ったより靴全体に艶が出ているので、つま先をちょっとだけポリッシュしたほうがメリハリがついてよいかな。

ちなみにグラスゴーは洗った直後はこんな感じ。
この靴は独特の光沢が出る。

どの靴も洗ってていねいに仕上げた後は、新品とは異なる何とも言えない仕上がりになる。
僕はこういうことが趣味なので時間を費やすことにためらいが無いけれど、実際にこれをメンテナンスと考えてやったら大変だなと。やっぱりプロの技術や機材はすごいなと思うのです。


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ステインリムーバーは表面を湿らせて拭う程度に使えば汚れ落としには便利。水性だからワックス落ちないという人もいるみたいだけれど、界面活性剤なのだからそれなりに落ちると思う。小さいサイズがあれば十分かと。


デリケートクリームはサフィールノワールを使用。M.モゥブレイでも良いかも。


保革にはレノベイタークリーム。補色は無いけれど、下地にこれを入れると仕上がりが恐ろしく艶やかになる気がして、よく乾燥させた後に塗るようにしている。


仕上げのクリームはサフィールノワールクレム1925で。


カビ防止のモールドクリーナー。カビが生えた靴でもこれを使ってお手入れをすると、その後はカビが生えてこないので効き目は絶大かと。片足2プッシュくらいで靴の中がしっかり湿るくらいにかける。


ソールが完全に乾いたころにソールコンディショナーを入れる。僕はシェットランドフォックスのものを使っているけれど、ソールケアを目的に出されているものならなんでもよさそう。


仕上げはコバインキ。水洗いをするとコバ周りの艶がなくなってしまう。黒のワックスでもよいとは思うけれど、水性インキはお手入れが楽。コバクレヨンよりも簡単かつ結果が安定している。ざらざらな表面はやすりがけしたほうが良いと思う。

2015年9月5日土曜日

SHETLANDFOX 3048SF GLASGOW 2nd Report

ここ最近、このブログのいちばん人気の記事は「革靴のサイズ選び」で、次が「革靴を水洗い - REGAL 01DRCD -
靴個別で見るとW10BDJ01DRCD、に続いてこのグラスゴーが3番目に付けている。


シェットランドフォックスでもいま風のロングノーズ、抑えめな価格、比較的懐が深いラストで、入手もし易いこともあり人気のモデル。
購入から3年くらい経過したので、その後について書いてみたいと思う。

一部、というか結構な人が残念としているアッパーのフラスキーニ社チプリアは後からワックスなどで色を乗せたような革。アニリンカーフとは全く異なる質感で、それがきめ細かな素材感と奥からじわりと光る革を好む通からみるとややチープな印象をもたれてしまいがち。ちょうどその逆張りで、これはこれで良い所もたくさんある。
特に、履きこむとかなり柔らかくなり、薄めのソールと相まってとても履きやすい靴。柔らかくなるということは型崩れもしやすいのだけれど、長時間履いた時の足への負担は小さい。

チプリアはクリームを多めに入れると簡単に艶が出る。ボックスカーフのような湿った感じの鈍い光り方ではなく、ワックスなどを活かすような艶やかな光り方をする。こういうわかりやすい光り方は派手目を好む向きには向いている。クリームを多めに塗っても曇ることが少なく、革靴のお手入れになれていない人にも優しい。

僕はこの靴はサフィールノワールクレム1925を使ってお手入れしている。よく乾拭きしているせいか、ちょっとした雨くらいなら余裕で水をはじいてくれる。クリームが十分浸透した後はそれほど神経質にならなくてもいいかも。シミにもなりにくい。
ただ、クリームの量が多いのか、それとも登板頻度が高いのか、塩を吹きやすい靴のような気がする。この靴はこれまで2度ほど水洗いをしているのだけれど、それでも塩を吹くということはひょっとすると内部の湿気を吸収しやすい素材なのかもしれない。

 
かなりの雨に濡れて乾いた後はこんな感じ。ここまで出るようになると、水洗いをしないと跡が取れない。

購入してから週に1回弱程度の登板で、天候を気にせず履いている。これまで一度つま先の補修をしたくらいで、そろそろかかとの補修をしようと思っているところ。

ワックスを使った鏡面仕上げをしない僕でも、クレム1925だけで靴全体が強烈に艶やかになる。一度ごく少量の水を浸けて少し多めにクリームを入れたら、簡単に鏡面の手前くらいになってしまった。
水洗いをしても型崩れをしないように乾燥させ、適宜クリームをいれているせいか大きな型崩れもないし、むしろアッパーの革が馴染んできていい感じ。

よく言われる擦り傷も、クリームをていねいに入れると目立たない。

しわも当初は深く入っていたのが、履き続けていくうちにたいていの部分は細かなしわに落ち着いてきた。インバネスのボカルーのほうがよっぽどキツイしわが入る。
ツリーはシェットランドフォックスの純正か、ディプロマットヨーロピアンをつかっている。

ある程度時間が経つと脂分が浸透して革の表面が強くなるみたいで、購入当初感じていたパサつき感はそれほど感じない。購入直後にはわからない特長がじわじわ出てきている感じ。

グラスゴーは履き始めからあまり痛いところがない靴だった。実はゆったりとしたラストであることもその理由のひとつ。この靴は同サイズで見るとインバネスよりもはるかにゆったり。特に二の甲あたりはその後に出たシェットランドフォックスのモデルよりもはるかに大きい。

グラスゴーはエジンバラの廃止に入れ替わるような形で出てきたため、当初はエジンバラのリファインモデルのように受け取られる事もあった。(製造元も同じっぽいし)
スクエア寄りのデザインということを除いてはエジンバラとは全く異なる別コンセプトの靴だと思う。

エジンバラや初代ナイツブリッジなど、シェットランドフォックス復活直後に設計されたモデルで評判があまり良くなかったかかとはコンパクトに修正され、登場当時人気のあったチゼルなロングノーズに変更。甲の高さも気持ち抑えている。
正統なクラシックど真ん中からみると異端ともいえるこれらのキーワードを、無難かつスマートにまとめているデザインは秀逸で、意外と似たような靴が見当たらない。

またこのグラスゴーはかかとのクッションが少し集めでおわん形に整形されていることもあり、やや立体的な履き心地。この作りもかかとの収まりが良いような印象につながっている。

グラスゴーは最近のモデルと比較すると履き口まわりは少し大きい。登場当初は薄めな若い人向けのラストのような意見もあったけれど、いまとなってはシェットランドフォックスの中では大きめなモデル。
グラスゴー。右側くるぶしのあたりに少し余りがある。グラスゴーは足首回りはゆったり取っていて、甲もそれほど果敢に攻めていない。わりと万人向けかも。ただ、かかとの収まりはとても良いので、ゆるい感じはしない。僕の足では1cm弱羽根が開く。

インバネス。履き口がグラスゴーよりコンパクト。くるぶしの外側がフィットしている。甲の開き具合も少し広く、抑えめな甲であることが解る。グラスゴーとそれほど違わない時期に買ったけれど、こちらはまだ革が硬い。ボカルーにもピンキリでインバネスに使われているもののグレードは高くなさそう。

01DRCD。こちらも甲から履き口まわりはインバネスと似た印象。インバネスより少し羽根が閉じている。二の甲に余裕がある。指周りはこちらのほうがゆったり。

アバディーン。さすがに甲が低い。足が薄いけれどロングノーズが履きたい人はこっちでしょう。僕の場合は二の甲あたりからすでに羽根が開いていて、ちょっとばかり格好悪い。

全体のデザインはややカジュアルに振られている。
キャップトウのモデルはスワンネックを採用しながらも、ステッチの糸が少し太めで切り返しの内側にもステッチがある。開発時のターゲットは少し若い人向けかな。

スマートな印象を受けるシングルソールは真ん中がへこみやすい。
グラスゴーのソールはドットが配されていて独特。ややグリーンが入ったようなブラウンの色合いも独特で、新品の状態だと一風変わったラバーソールのようにも見える。

また、雨の日に履くことが多いこともあって、革の締りが良くなった。細かく見るとひび割れらしきものもあるけれど、革が割れるようなことはない感じ。底を押した感じではもう少しいけそうな。

屈曲部分はステッチが表に出てきているけれど、切れることもなく案外丈夫。

コバ周りは普段はホコリ取りのブラッシングくらいで余りクリームも入れてないのだけれど、ほつれも全く見られず、ウェルトもまだ行けそう。

そんな状態なのでもう少しいけそうな感じもしつつ、今度ヒールの修理に行ったときにオールソールにすべきかどうか聞いてみよう。

登場してからもう5年くらいになるけれど、いまでも売れ筋モデルではないかと思う。このモデルは価格も比較的抑えられていることもあり、伊勢丹をはじめとした百貨店、ミマツ靴などの一般的な靴屋さんでも売られている。(逆にREGAL SHOESではあまり見ない気がする)
かかとのように抑えても余り違和感を感じないところは収まり良く抑えて、ボールジョイントや甲の部分は控えめに押さえる作りは、革靴を初めて履く人でも受け入れやすい。
そんな懐深いラストであることからも、売りやすいモデルなんだろうと思う。

ロングノーズといってもとんがりでもなく、足がスマートに見える靴。どちらかというと細めのスーツに合いそう。店頭では結構きれいな鏡面仕上げがされていたりもするので高級そうな靴にも見える。
僕は最初アバディーンを見たとき、これはやりすぎだろうと思ったけれど、グラスゴーを初めて見たときは少し長いとは思いつつ、キャップが気持ち大きめなせいか全体ではバランスが取れていて格好良く見えた。

およそ3年経って当初受けた印象よりもずっと良い靴であることを実感する。これだから革製品(特に靴)は経年変化を見るまではわからないな、と思わずにはいられない。
長時間歩くとき、天気がどうなるかわからない時、マメができて痛い時などはこの靴を自然に選んでしまう。まさにビジネスシーンで活躍する靴。僕の身の丈に合った靴と言えるかな。



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グラスゴーにはサフィールノワールクレム1925が合う気がする。気持ち多めにいれてよくブラッシングと乾拭きすると当初の欠点に思えた部分が解消されるかも。

2015年8月29日土曜日

Saphir Noir

革靴を履いて、磨いてもう20年以上になるけれど、いまの定番クリームはこれ。

サフィールノワールクレム1925。(Saphir Noir Crem 1925)

いろいろな雑誌でも取り上げられて、プレステージの靴クリームとしてはNo.1のポジションを確立しているように感じられる。

僕が最初に革靴を買った頃(20年以上前)に使っていたのは、日本の定番コロンブスのチューブ入りだった。いま思えばかなり厚塗していて、頻度も高く、おまけにクリーナーなんかもつかっていたので、相当靴にとっては厳しい状況だっただろう。
この頃はそれほどインターネット上にも靴のお手入れなんて情報はなかったし、なんかあれこれつけて磨いていると楽しいのでついついやりすぎにやっていた。

時が経って、靴だけでなく、お手入れ用品にもちょっと興味が出てきた頃に出会ったのが、コルドヌリ・アングレーズ(LA CORDONNERIE ANGLAISE)のビーワックスクリーム。

これまでのチューブ入りと違って瓶入り。この瓶は格好よかった。店頭でも「このクリームは伸びるので、ごくごく薄く塗ってください」とアドバイスされた。
さっそく家に帰ってわくわくしながら蓋を開けてみると、いままで僕が知っていた靴クリームと違う独特の香りがして、これまた靴磨きが楽しくなった。
コルドヌリ・アングレーズはコードバン専用のクリームもあって、素材ごとに必要なクリームが違うんだということを初めて知った。
当時は確かコロンブスが代理店で、リーガルブランドでもサフィールが売られていた。

サフィールのクリームはとても甘い香りがして、これまでの有機溶剤っぽいにおいとはまるで違う、靴磨きをしたくなるような香りだった。

さらに時は経ち、代理店がルボウになったころからサフィールノワールブランドが百貨店や通販で簡単に手に入るようになった。
当初の丸瓶から四角い瓶に代わって「量が少なくなった」なんて批判も受けたけれど、結果として高級感を出した差別化に成功したと思う。
靴を磨く頻度と1回に使う量からすれば、業者さんでもない限りなかなか使い切ることはないはず。靴を磨くのが趣味の一つの僕でも数年前に買ったクリームがまだ半分以上残っている。使い切る前に変質が進んでしまいそうなくらい。
シアバター配合で浸透力がアップとかいう薀蓄があるのだけれど、個人的にはそれがどう良い影響を与えているのかわからない。それよりも、なんといってもあの香りが好きだということが使い続けている大きな要因。
同じサフィールでももう一つの定番のビーズワックスクリームは香りが全然違うので、やっぱりクレム1925ということになる。

サフィールノワールシリーズには、マルチパーパスの「スペシャルナッパデリケートクリーム」、靴だけでなく革全般に控えめな光沢を与える「レノベイタークリーム」、靴磨きの定番「クレム1925」などがある。

デリケートクリームといえばM.モゥブレイが定番と言われている。ラノリンベースのモゥブレイとミンクオイル配合のサフィールノワール。後者のほうが水分配合度合いが少ないのか、比べると少し固い。

レノベイタークリームはまさにアニリンカーフクリームと言う感じ。デリケートクリームより水っぽく、クリームと言うか小岩井乳業のプレーンヨーグルトみたいな感じ。

そのせいか、レノベイタークリームは革のダメージ補修力は相当に期待できる。
僕は靴を水洗いした後は、生乾きの状態まではデリケートクリームを軽く入れるのだけれど、一旦乾いたと思った時にレノベイタークリームを気持ち多めに塗る。少しおいてからブラッシングすると恐ろしく革が復活したように光りだす。

もしクリームを1つだけ選ぶなら、レノベイタークリームがまさに万能選手だと言える。
注意していることは、サフィールノワールのデリケートクリームと同様にミンクオイル配合なので、必要以上に塗りすぎると革が柔らかくなりすぎて型崩れの原因になりそうなこと。僕はクレム1925をメインに使うので、レノベイタークリームは極稀に使うくらい。

クレム1925は、仕上がりからちょっとした艶出しまでカバーするまさに靴磨きのためのクリーム。

このクリームの特徴は、油性ということによる伸びの良さ。浸透するというよりは伸びるという印象のクリームで、少量でもかなりの面積を塗ることができる。伸びるということは瞬間的な浸透をあまりしないということだから、単に伸びるだけでは革の内部まで必要な量の油分がいきわたりづらいか、不足になってしまう。

サフィールノワールクレム1925、ブートブラック、モゥブレイを比べてみると、後者ふたつは乳化性特有の「革に水が染み込む感じ」が得られるのに対して、クレム1925は表面にとどまって油膜を形成する感じが強い。

クレム1925は油分が多い(というか油性)ためか、クリームそのものも少し硬い感じで、ブートブラックが少しプルプルとした感じであることに対して、クレム1925のブラックはしっとりとしたマーガリンのような感じ。ニュートラルはもう少し水々しい感じなのだけれど染料配合すると何か違うのだろうか。どちらにしてもスッと革に浸透するような感覚がある乳化性クリームとは違い、しっとりと表面に残る。これが特有の光沢を生み出している。

表面にとどまる理由の一つがクリームそのものの硬さによるのだろうけれど、それが表面の凹凸を多少滑らかにする効果があるようで、他のクリームより光りやすい印象を受ける。あるかないかくらいのほんのちょっと水をつけながら多少厚塗りすると恐ろしく光沢の出る靴になる。
では浸透していないのかといえば、薄い色の靴にニュートラルを塗ってみると、ごく軽く表面を湿らせたような色変化をするので革に浸透していることが伺える。時間をかけてじわじわ浸み込んでいくクリーム。

水分が少ないということは少なからず革がふやける方向を抑制するわけで、これもまた仕上がりの艶やかさに影響していると思われる。みずみずしさの補給が足りないと感じる向きにはクレム1925の前にデリケートクリームかレノベイタークリームを入れれば十分だと思う。というか、光らせるということをあまり重要視しなければレノベイタークリームだけでも十分。(蝋は入っているので控えめに光る)

クレム1925の少しギラつく感じは好き嫌いがあれど、上手に使うとワックスが無くてもそこそこ光らせることができる。乳化性だけでワックス並みに光らせることが出来る人もいるくらいだし。

このクリームはやっぱり靴磨き好き向けで、当初の僕のように、クリーム塗布が少なすぎる方向より多すぎる方向に行く人には向かないのではないかな。却って光沢が無くなり、また保革上もワックス厚塗り状態みたいになってしまう。ブラッシングや乾拭きをあまりしない人だと古いクリームが皺に残ってクラックの原因にもなってしまう。その点、乳化性の水分多めのクリームはさらっとした感じもあり、多めに塗ってもべたつき感が出にくく、さっとブラッシングするだけでシワの間に入ったクリームも均しやすい。

なので、もし靴に興味がない人にクリームを一つだけ選んでほしいと言われたら、本当のクリームってこういうもんだよ、という前置きをしたうえでレノベイタークリームを薦めると思う。

僕は靴磨きが趣味みたいなものなのでクリームを何種類も塗りたくっているけれど、忙しい時期にはレノベイタークリームだけ軽く塗っておくことがある。このクリームは適度に光るし、ブラッシングもそれほど神経質にならなくても良いし、靴の染料にもどちらかと言えば優しめ。靴によっては春夏しか履かない物があって、そういう靴をしまっておく時に塗っておくのもレノベイタークリーム。

一つの靴には同じブランドで固めたいので、ほとんどの靴がこの3つの組み合わせで塗っている。残りの靴は日本の最高峰クリーム(と思う)BootBlackを使っている。なんとなく国産キップの靴には国産クリームを使いたくなってしまう性分なので。

デリケートクリーム、レノベイタークリーム、クレム1925とソールコンディショナー(僕はシェットランドフォックスで買ったコロンブス製)、コバインキがあればメンテナンスは十分にできるかな。

と、頭ではわかっているのだけれどときどき新しいクリームが気になったりしちゃうのが困ったところです。



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サフィールノワールシリーズではレノベイタークリームで下地を作って、クレム1925で保護するみたいな使い方をしています。レノベイタークリームは万能選手だから一つあると結構重宝します。 (真ん中)



コルドヌリ・アングレーズも根強い人気です。個人的には香りはこちらのほうが好き。


2015年6月20日土曜日

革靴を選ぶ

6月も後半です。

4月から社会人になった人は、会社によってはそろそろ最初のボーナスが出ることではないかと。
そんな時期、靴を新たに新調しようとしてインターネットで調べてみる、なんてことをしている人も多いかと思います。

誰もが限られた予算の中で最良の選択をしたい。調べる動機はそんなところにあったりするわけですが、玉石混交のネットの世界で提示されているアドバイスは、いったい誰をターゲットにしているかわからないものがしばしば見られます。ファッションに唯一の正解はないけれど、王道や正統はあると思いますし、狭い範囲に限定すれば求める答えに近いものが得られることもあります。そんなことを考えながら軽く僕なりの革靴の選び方を考えてみました。

以下、いつもの文体で。

僕は靴に関しては堅めな人なので、巷にあふれる革靴を3足選ぶみたいな記事を見るたびに「?」な気がすることが多い。

僕自身、人様に靴の選び方を偉そうに語るほどの素養があるとは思っていないのだけれど、それでもあまりにも個々人が置かれる「環境」を無視した「靴選びの基本」が蔓延していて不安になる。書き手の「企業」に対する理解度があまりにも限定的、というかどういう職場を想定して書かれているのかわからないものが多い気がする。

その靴選びはどの業界のどんな仕事に従事する人のためのものなのか?

商社や金融、コンサルやファッションなど業種や日系、外資などマネジメント層のカラーによって靴選びの基準は千差万別であるのに、誰に向けての記事なのかが書かれていることが殆ど無い。
文脈から想定するに、日本企業の最大公約数的なビジネスパーソン向けではないかと思われるが、そこには最も大切な視点が抜け落ちている。

「靴選びは平均ではない、最も手堅い路線で選ぶべき」

いまでこそ茶靴も許容される職場が多いけれど、黒靴が暗黙の了解として履かれている職場がある。そういう企業に内定を受けたフレッシュマンが、3足目は茶色のUチップなんて話を真に受けて購入してしまったらどうだろうか?会社で減点をくらい、靴はお蔵入り。残りの2足でローテーションというハメになってしまう。

最初の3足というテーマであれば、どんな職場でも外しのない、極めて保守的な選択をするほうがリスクが少ない。そうでなければ、たとえばこんな企業を想定みたいなガイドがあってもよいと思う。

ビジネスシーンで要求される個性とは、環境を無視した身勝手な主張とは全然違う。社会にはそれ相応の職場観があって、そこから逸脱していると一般的な評価はマイナスに傾く。
金髪鼻ピアスの小学校の先生だとか、古着Tシャツから見える腕にタトゥーの住職だとか、ジャージ姿のホテルフロントなど、実際に能力が高かったとしても僕は避けたい。

それぞれの場には相応しい(=他者がそうであると期待する)スタイルがあり、スーツを着る職場であれば、その範疇で期待されるスタイルが存在する。

集団の中で、外見は同じようなのだが何かが違う。突き詰めていえば外見は同じなのに、ほかの人とは同じとは思えない、というのが社会人に要求される個性なのだと思う。

手堅い選択をして外すケースは少ない。
手堅いということは基本であり、基本が基本たるゆえんは時代を超越して存在するからだ。人類の進化レベルの話まで行くと靴を履いている期間なんでごく最近始まったのかもしれないけれど、それでも個々人の一生からみたら十分長い間クラシックな靴の基準は変わっていない。

どうしても見た目の差別化をしたいというのであれば、靴がいつもお手入れされていてメチャクチャ綺麗だとか、実はツープライススーツでも、いつもプレスがきちんときいているだとか、そういうところにまず気を配る差別化のほうが受け入れられやすい。仕事をするうえでのモノに対する情熱はビジネスシーンという場に限定すれば人に仕事上より良い印象を与えるのは間違いない。

ここでは一般的なスーツ着用が求められている職場をイメージしている。だから、ジャケパンスタイルやブレーザーが許されたり年中ノータイでも構わないような職場向けではなくて、ファッションにあまり興味のない上司が大半で、でも顧客はあなたがスーツを着ることが当たり前だと思っている職場で通用する靴選びというテーマで考えることにする。


よくある3足の選び方でまず違和感を受けるのが、どれもこれもストレートチップ(キャップトウ)が1足しかチョイスされていないこと。

前回の記事でも書いたのだけれど、ストレートチップが冠婚葬祭に必要と言うのであれば、むしろ最初の3足すべてストレートチップにするべきだと思う。
結婚式の日が雨で、次の日お葬式で、その次お堅い会社の大切な商談だったりしたら同じ靴を3日連続して履くのだろうか。「婚」はともかく「葬」はいつ起きるかわからないし。
シーン、TPOを語るなら、連続してストレートチップが必要とされる状況を当然に考えるべきではないのか。なのに1足しかないというのも変な話。よく言われているからストレートチップを入れているだけで、真のTPOを考えていないのではないかとさえ思ってしまう。

次に茶靴やUチップが出てきてしまう点。
茶靴をダメとする職場がある。僕の最初に勤めた会社は「黒い靴」というドレスコードがあった。こんなドレスコードがある会社で、それ知る前に茶靴買っていたら悲劇。
よほどカジュアルな職場ならまだしも、スーツを着るということが要求されている職場であれば入社した後に慎重にチョイスすべき靴になる。
確かに茶靴は女性にもウケがいい。色にグラデーションがついていたりするとさらにポイントが上がったりする。茶靴を履くことが洒落者というような風潮さえある。
しかし、大半のビジネスシーンでは「洒落者であること」が評価されるのではない。

最後に「ストレートチップ」「プレーントウ」といった靴のカテゴリだけが紹介されていて、靴全体の形に関する考察がない。
いくらストレートチップと言ってもロングノーズつま先反り返りでは本来「なぜストレートチップ選ぶんでしたっけ?」という視点からすれば疑問符が付く。
実際にはほとんどのシーンで、「ふさわしいストレートチップ」が要求されることはない。だから一般論的には黒を選択しさえすれば後はなんでも良いということになるのだけれど、「冠婚葬祭に必要だから〜」の件でストレートチップというのであれば、「冠婚葬祭に使える」ストレートチップをチョイスしないことには話の辻褄があわない。


それを踏まえて3足選ぶなら、次のチョイスになる。

1足目:ブラックのストレートチップ(キャップトウ)
2足目:ブラックのストレートチップ(キャップトウ)
3足目:ブラックのプレーントウ

これ、以前に書いたものと同じ組み合わせ。何回考えても、この組み合わせしか考えられない。

まず色は黒に限る。
少なくとも手持ち5足までは全部黒でいいくらい。
男の革靴は「黒に始まり、黒で一息つき、黒を追い求める」とさえ思う。(終わりは無い)
こと日本社会でいえば、黒の靴、白のシャツ、紺のスーツを極めるのが王道なんではないかと。この格好で就活生とはまるで違う、エグゼクティブな雰囲気が出せたら、その人のビジネスファッションは超一流といえるのではないだろうか。僕もそうでありたいといつも思う。

ブラックのストレートチップが2足になるのは、先に上げた2日連続冠婚葬祭でも対応できるようにするため。また冠婚葬祭+堅い営業先などの組み合わせも考えられる。
それと単純にストレートチップならスーツスタイルに外しがないという理由。

ストレートチップが真面目で面白くないと考える人もいるかもしれない。たいてい基本とか基礎というものは面白くないもの。基礎トレーニングとか、基礎問題とか、つまらないものかもしれないけれど極めて応用範囲が広い。基礎問題・基本問題で満足してしまうのではなく、その過程を経て鋭い応用に活かすのが大多数の人の定石ではないだろうか。基礎をしっかり作るのが真面目な大工の仕事。ゲルニカなどの作品ばかりが注目されるが、ピカソは普通に絵をかいてもやっぱり一流。

靴に変化を求めるならば、某靴ファクトリーの社長さんのように人様から賞をいただくという大切なシーンでもカジュアルで攻めればいいのではないかと。なぜそういうシーンでこそ自社最高のドレスシューズを履かないのかは僕には理解できないけれど、そういう真面目な仕事として作ったプロダクトより、コンセプトシューズのほうが会社を代表するということなのだろう。このブランドは真面目さを売りにしていて好印象をもっていたけれど、ブランドが言う「真面目」の定義が少し僕の感覚と違う気がして、購入意欲がガクッと減ってしまった。
(頑張っている職人さんの名誉のために書き足せば、お店で見た限りはとてもいい靴で、それを比較的リーズナブルに展開できるのはよい職人さんがいてよい技術があるからだと思います)

最後がプレーントウなのは、最低限の変化をつけるならこれという選択。プレーントウは冠婚葬祭でも許容範囲であるため、意味合い的には3足ストレートチップとそう変わらない。3日連続ストレートチップが必要になる確率は小さいこともあるし、1足くらいは違ってもいいのかなと。

2015年時点で、この基準にあてはまり、現実的なプライスの靴は次のものあたりでないかと思っている。ストレートチップのみ書いてみる。

「リーガル 01DRCD」
これはリーガルの新定番と言ってもいいくらいのベーシックなストレートチップ。アノネイベガノは水に弱いと言われているけれど、ボカルーよりはふやけの度合いも少ないし、水洗いしても大丈夫だった。5万円以下のビジネスシーンでは最強クラスの靴。

「リーガル W131/W121」
01DRCDが出るまでは、これが定番ともいえた靴。国産キップでデザインも古典的と普通すぎるためあまりヒットしていないと思うけれど、これこそ日本の靴ではないかな。

「シェットランドフォックス インバネス」
リーガルの回し者みたいな感じになってしまうけれど、この靴も比較的手に入りやすいオーソドックスな靴。01DRCDより薄く、小さく作ってあるので若い人向けかな。ボカルーは雨に降られるとかなりふやける感じがするので天気を気にしてしまう人は最初の靴に選ばないほうが精神上よいかもしれない。

「RENDO R7701」
W131を現代風に再構築したような靴。いまイチバンのおすすめかもしれない。最初はかなり固い靴なので、足が頑張れるかどうか。かかとは確かに小さめ。入手が困難なので東京以外に住んでいる人は通販でしか買えないのが難点か。

国産以外に目を向けると、アルフレッドサージェントのEPSOMもビジネスっぽい。
サージェントは輸入で関税がかかっていることを考えると、手に入れやすい価格でいい靴を作る。以前は履き心地がふかふかしていて革靴の概念を覆してくれた。いまはどうなのかな。


電車に乗っても、街を歩いても、意外と定番の靴をしっかりお手入れして履いている人は少ない。だから、ちゃんとお手入れして、適度に履きこんだ靴を履くだけでも十分な差別化になる。よほどの上級者でないと形や色の差別化は難しそう。
僕はあまりファッションは得意ではないので、どうしてもこういう定番から抜け出せないのだけれど、僕の身の程からするとこのくらいがちょうどいいのかなと思いながらパンチドキャップトウでささやかな差別化を楽しんでたりするのでした。

2015年6月14日日曜日

RENDO R7702 2nd Report

RENDOの7702が10か月経過した。

この靴、いままで履いた靴で購入直後に初めて小指に強烈なタコができたりかかとが擦れたり、第一印象は自分に合わない靴だった。

ところが10ヶ月経ったいまでは当初こうなるとは思えなかったほどにジャストフィットになっている。購入当初といまとの印象はまるで別の靴のよう。

RENDOの靴は芯地がほかの靴に比べて固いと感じる。またラストは細いと言われている。
おそらくはEEの僕の足では少し横幅が窮屈なことと、このような靴作りのコンセプトから最初に固いと感じたのだろう。

いまはそういう痛い思いは全くない。
だいたい週に1度くらいの登板頻度なので延べ50回くらい履いたことになる。
底面の減り具合から想像するに、比較的詰められているコルクも厚い。これも購入当初からの変化の一因か。
ヒドゥンチャネルの部分が減らないのはコルクが体重で変化することを想定してある程度中央を盛っているからだと推察される。
この靴は天候を気にせず雨の日も履いているが、ソールのヘリは少ないし、乾くと何事もなかったように戻っている(気がする)。ソールにはごくごくたまにソール用のクリームを入れている。

RENDOはビジネスマンの靴というコンセプトもあるみたいで、その通りの真面目で朴訥な印象で、これはこれである意味日本の靴っぽい。

いまのところほつれたり型崩れしたりもなく、あまりロングノーズでないこともあるのかつま先の減りも少ない。僕の場合は週1ローテーションなら1年くらいは軽く持ちそう。

アッパーに使われている国産キップは履きこむにつれてだんだんと柔らかく、しなやかになる。購入時は固い印象を受けるが、きちんとクリームを入れて履きこむことで、想像以上に変化する。

リーガルの国産キップと同じタンナーなのか、それともキップというグレードに共通なのか、しわはかなり大味に入る。購入するときに受けた説明では良い部分を使っているとのことだけれど、僕のレベルではよくわからない。表面のつぶつぶ感が目立つことからも、W10BDJ1のようにしっかりグレージング仕上げされたキップとは違う気がする。

太いしわが入ってもクラック防止のため丁寧にブラッシングさえすれば実用上は全く問題がないと思うのだが、しわの入った靴は一般的にウケが悪い。うちの家庭内でもこの靴のほうが、これよりはるかに履きこんでいる01DRCDより「古く見える」といわれる。

この靴のお手入れにはBoot Blackを使っている。
Boot Blackの乳化性クリームは革に浸透し易いため、表面は素材を活かす仕上がりになる。このクリームのみだとキャップの部分も凹凸感が残ってしまうので、鏡面寄りに仕上げたいときはサフィールノワールクレム1925を使うか、ワックス併用のほうが良さそう。

表面の仕上がり点ではヨーロッパタンナーのボックスカーフとは傾向が違う。表面の凹凸が目立つ感じで、これが光の反射を分散させてしまい、結果として艶が出にくい。
ガラス仕上げの靴が格好良く見える向きには向いていないかもしれない。
左がウェインハイムレダー、右が国産キップ。艶感がだいぶ違う。これは仕上げによるものかな。グレージングをしまくれば意外と近いものができたりして。
ただ、ネットでRENDOの靴を見ると、僕のものとはまた違った艶をもっているものがちらほらあるので、クリームやワックスの使い方でより高級感が出せるはず。

若いサラリーマンでも、お小遣い制のお父さんでも何とか頑張って買える範囲で長く使える本格的な靴。履きこむことでわかる靴の良さがこの靴にはある。

冒頭にも書いたように購入した当初は小指にもかかとにも結構なダメージがあって、この靴でできたタコがいまだに残っているが、いつの間にかこの靴はどこも痛くないジャストフィットの靴になっている。固い作りではあるけれど、きちんと足に合わせて変わる靴。
購入時にも「足の形状からすると、ラストのほうが少し細いのできついかもしれない。その時はストレッチします」という提案を受けたのだけれど、結果としてストレッチなしで十分なフィットを得られる靴になった。このあたりは試着だけではわからない。そこが靴購入の難しいところ。
逆に言えば、僕のようなEEではなくもう少し細いい人だとコルクの沈み込みなどによって少し余ることが出てくるのかもしれない。

よく言われる「小さめのかかと」については、確かに他のブランドの靴よりコンパクトな仕上がり。前回も書いたように購入時そのまま履くとかかとのサイドがかなり当たり、まともに履けたものではなかった。当たる部分の芯地を指で慣らしてみることで、ちょうどいい感じのコンパクトさを感じられるかかと周りになった。

ところでこの靴、ネット上の情報からするとセントラル製だと思われるのだけれど、同じセントラル製と思われる三陽山長のおよそ6割の価格。アッパーで使われている革が違うにしても、かなり良心的な価格設定なのではないだろうか。

RENDOって、靴好きの人ならそのコンセプトとそれから導き出される良さが理解できると思うのだけれど、これから靴好きになる予備軍である若い世代に訴求するには今ひとつパンチが足りない気がする。いわゆる真面目すぎてモテない君で、作り手の伝えたいメッセージを受け取る側もこの真面目さを受け止めるだけの余裕が必要とされてしまう。
一巡して、クラシックな普段履きが欲しくなった人が立ち返る靴なのではないかと。

個人的にはこうした真面目なコンセプトにもっと光があたって欲しいし、こういう靴こそが日本のベーシックとして広まったらいいなと思う。実際に自分で購入してみて履いてみて解ったのは、本当に期待を裏切らない靴。目立たないけれどなぜか安心。

足馴染みも良いし、ビジネスシーンで必要十分なRENDO。これからも天気を気にせずどんどん履いていきますよ。


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AmazonでRENDOの取り扱いが始まっています。いまのところ7702はダイナイトソールモデルのみみたい。キャップトウはレザーもある。万人向けでいい靴だと思う。中でもAmazon専売のネイビースエードはかなり格好いい。これがレザーソールだったらなぁ...



ツリーはディプロマットヨーロピアンを入れています。


クリームは何となくブートブラック。


2015年4月23日木曜日

CROCKETT&JONES AUDLEY LAST337

チャーチのコンサルと並んで、英国靴として人気が高いクロケットアンドジョーンズのオードリー(Audley)。

もうだいぶ前に買ったのだけれど、あまり足に合わない感じがして(だいぶ緩い)しばらくお蔵入りだった。いくらエレガントでも、作りにこだわりがあっても、知名度が高くても(これはあまり関係ないか)、やっぱり靴って履いて歩くものだから、合わない靴はだんだんローテーション頻度が低くなる。

いきなり低評価っぽい書き出しなのは、靴の良し悪しではなくて、単に僕と靴との相性がゆえ。

あまり履かない靴について書くのもどうかと思うところもあれど、クロケットアンドジョーンズは日本製の靴とはあまりにも違いが大きい気がするのに、日本で売れている(百貨店の取扱いも多い)靴みたいなので、ちょっとメモとして記録しておこうと思う。

オードリー自体は本当にいい靴。合う人は羨ましい。
微妙なロングノーズ加減に大きすぎず小さすぎずまとめられたキャップ。しっとりとしたレザーの質感など見た目の良さでは僕の手持ちの中ではいちばんだと思う。ラウンドトウ好きな僕から見ても、このなんとも言えない造形は「定番」と読んでもおかしくない。クロケットアンドジョーンズ社長のジョナサン・ジョーンズ氏がいうように、「良い革、作り、クラシック」といった言葉でまとめることができる。
もちろん、予算に上限を入れなければ、もっと良い革、もっと凝った作り(ハンドとか)はある。でも、そこそこの(とはいえ割引あるところで買っても8万円近くするけど)靴としては満足度が高いのではないだろうか。

日本でクロケットアンドジョーンズが流行りだしたのは、多分20年以上前だった気がする。その頃はOEM主力の工場が自社ブランドで打って出たみたいな位置付けで、ちょうどいま国内で言うところのビナセーコーやMIYAGIKOGYOみたいな印象だった。

いまでは正規代理店経由だと10万円近い靴になってしまった。日本ではチャーチと並んで人気が高い英国靴なのではないかな。

日本製の靴に比べるとボールジョイントから先がかなり狭い。ギリシア型の足に合いそう。僕が履くと夕方ころにはかなり小指側が痛くなる。点で当たるというよりも面で内側に寄せられる感じ。

一方、くるぶしから甲の外側はかなり(というか、ありすぎるほど)ゆとりがあって。足首周りはブカブカになってしまう。全長はかなりタイトめなのでつま先がきつくて足首回りが緩いという感じ(Eウイズ)。
アバディーンやパラティーノで足首周りがいい感じの人はかなり余ってしまうと思う。

大きいといわれるかかとは、ほかの国産靴と比べてもそれほど極端に大きいわけではない。底面は少し幅広ではあるけれど、上面に向かって絞り込まれている。実際に履いてみてもかかとがぶかぶかというわけではない。むしろ履き口、特に甲の外側が大きく、足首回りの容積が大きいことがフィットしない主要因。ここに過度なゆとりがあるためかかとが収まる感じが弱く、またインソールが全敷のため結果として前すべりして、それが指への負担を強めている。明らかに捨て寸のところまで足が入ってしまっている。(靴の後半部分をまとめて「かかと」と呼ぶのであれば確かにかかとが大きいと言える)
右がオードリー、左がシェットランドフォックスのアバディーン。下部が少しポテっとしているけれど、上に行くに従って絞りこまれている。

一方、履き口周りは明らかに周が大きい。かかと側はそれほど差がなく、甲側の大きさが結構違う。

甲も足首近くまで覆うアバディーンと比べるとかなり手前で終わっている。

国産靴(と一概には言えないが)と比較して全体的に、とくに足首近くの甲からかかとの肉付きが良い人向け。薄い人だと足首回りの甲の部分でのフィット感が弱いと思う。
伊勢丹でかかとをハーフサイズ小さくしたと言われるAUDLEY3を履いてみたけれどくるぶしから外側が余る感じだった。クロケットアンドジョーンズのラストは僕にはあわないというのが結論で、見た目で言えばベルグレイヴが最高に格好良くて履きたいのだけれど、合わない靴はやっぱり買えない。

ボックスカーフと思われるアッパーはかなり上質な革を使っていて、みずみずしいもちもち感がする。チョットクリームを付けて磨くだけでものすごく奥深い光沢になる。ボックスカーフは手入れ次第でしっとりとした質感になるのが好きだ。特にオードリーは品を感じる光り方で、これはご祝儀系に合いそう。

シワの入り方もきれい。この入り方を見るに僕のボールジョイントあたりの甲上面と相性が良いのか、それとも釣り込みなど靴全体の作りで無理がないのか、自然に履いてここまできれいに入るケースも珍しい。(僕は一切ボールペンなどは使わない人なので)
きめ細かなしわが入り、ツリーを入れるときちんと伸びる。

クロケットアンドジョーンズのソールは滑りやすいことで有名なので最初は気合を入れて履いてみた。確かに滑りやすいのは事実。とはいえハンドグレードラインのソールに限って言えば他の靴に比べて際立って滑りやすいというわけでもない。やや固めなソールなので新しいうちは滑りやすいということはあるかもしれない。むしろペイントなどのソールの仕上げ方と、縁より中心をややボリュームを持たせる造形によるところが大きい気がする。新品時点で滑るのはアバディーンと同じ感じ。どちらかと言うと釘打ちの多いソフィスアンドソリッドのほうがはるかに滑る。

それにしてもオードリーは惚れぼれするくらい美しい靴。パリラストとも呼ばれる337ラストは、全体の長さと嫌みのないスクエア感、エッジをあまり効かせずやや丸みを帯びた造形と、その美しさはベルルッティみたいな技巧の評価が高い芸術品というわけではなく、シンプルな美しさ。冠婚葬祭ビジネスどのシーンでもまったく自然に溶け込むようなスタイリング。伝統的なスマートといったところ。似たようなコンセプトのシェットランドフォックスのエジンバラと比較すると、意外とシャープなつま先形状でありながら、コバが比較的ゆるいカーブで仕上げられていることとキャップからボールジョイントにかけてのエッジが目立たないため単独で見ると結構丸っこい印象になる。

これだけの靴がぴったり合う人は羨ましい。
でも逆に、オードリーが合う人は、シェットランドフォックスで言えばグラスゴーはともかく、アバディーンは入らないのではないだろうか。羽根開きまくりだし、甲に靴が食い込むのではないだろうか。
日本のブランドはかかとを小さく、甲を低く、口を小さく、幅もやや細目に仕上げることが多くなってきたので、そういった形に合わない人には向いているかも。

購入した当時はいまほどフィッティングへのこだわりというか理解もなくて、試着した時にやたら口が余るなぁと思って聞いてみたところ、「履きこんでくるうちに合いますよ」というアドバイスを信じて買ってみた。いま思えばこれだけ自分の足との物理的形状が違うのだから、変形してどうのという話ではなくて、こちらがよく太るか革が縮まない限りフィットすることはなさそう。

どんなにいい靴といわれても、結局は足に合うか合わないかの基準が最初にありきということを教えてもらった靴。また、自分には日本靴のほうが合う場合が多いという事実を否が応でも気づかされた靴。履く機会はあまりないけれど、この靴だけは手放すことができなくて手元に置いている。