2015年6月20日土曜日

革靴を選ぶ

6月も後半です。

4月から社会人になった人は、会社によってはそろそろ最初のボーナスが出ることではないかと。
そんな時期、靴を新たに新調しようとしてインターネットで調べてみる、なんてことをしている人も多いかと思います。

誰もが限られた予算の中で最良の選択をしたい。調べる動機はそんなところにあったりするわけですが、玉石混交のネットの世界で提示されているアドバイスは、いったい誰をターゲットにしているかわからないものがしばしば見られます。ファッションに唯一の正解はないけれど、王道や正統はあると思いますし、狭い範囲に限定すれば求める答えに近いものが得られることもあります。そんなことを考えながら軽く僕なりの革靴の選び方を考えてみました。

以下、いつもの文体で。

僕は靴に関しては堅めな人なので、巷にあふれる革靴を3足選ぶみたいな記事を見るたびに「?」な気がすることが多い。

僕自身、人様に靴の選び方を偉そうに語るほどの素養があるとは思っていないのだけれど、それでもあまりにも個々人が置かれる「環境」を無視した「靴選びの基本」が蔓延していて不安になる。書き手の「企業」に対する理解度があまりにも限定的、というかどういう職場を想定して書かれているのかわからないものが多い気がする。

その靴選びはどの業界のどんな仕事に従事する人のためのものなのか?

商社や金融、コンサルやファッションなど業種や日系、外資などマネジメント層のカラーによって靴選びの基準は千差万別であるのに、誰に向けての記事なのかが書かれていることが殆ど無い。
文脈から想定するに、日本企業の最大公約数的なビジネスパーソン向けではないかと思われるが、そこには最も大切な視点が抜け落ちている。

「靴選びは平均ではない、最も手堅い路線で選ぶべき」

いまでこそ茶靴も許容される職場が多いけれど、黒靴が暗黙の了解として履かれている職場がある。そういう企業に内定を受けたフレッシュマンが、3足目は茶色のUチップなんて話を真に受けて購入してしまったらどうだろうか?会社で減点をくらい、靴はお蔵入り。残りの2足でローテーションというハメになってしまう。

最初の3足というテーマであれば、どんな職場でも外しのない、極めて保守的な選択をするほうがリスクが少ない。そうでなければ、たとえばこんな企業を想定みたいなガイドがあってもよいと思う。

ビジネスシーンで要求される個性とは、環境を無視した身勝手な主張とは全然違う。社会にはそれ相応の職場観があって、そこから逸脱していると一般的な評価はマイナスに傾く。
金髪鼻ピアスの小学校の先生だとか、古着Tシャツから見える腕にタトゥーの住職だとか、ジャージ姿のホテルフロントなど、実際に能力が高かったとしても僕は避けたい。

それぞれの場には相応しい(=他者がそうであると期待する)スタイルがあり、スーツを着る職場であれば、その範疇で期待されるスタイルが存在する。

集団の中で、外見は同じようなのだが何かが違う。突き詰めていえば外見は同じなのに、ほかの人とは同じとは思えない、というのが社会人に要求される個性なのだと思う。

手堅い選択をして外すケースは少ない。
手堅いということは基本であり、基本が基本たるゆえんは時代を超越して存在するからだ。人類の進化レベルの話まで行くと靴を履いている期間なんでごく最近始まったのかもしれないけれど、それでも個々人の一生からみたら十分長い間クラシックな靴の基準は変わっていない。

どうしても見た目の差別化をしたいというのであれば、靴がいつもお手入れされていてメチャクチャ綺麗だとか、実はツープライススーツでも、いつもプレスがきちんときいているだとか、そういうところにまず気を配る差別化のほうが受け入れられやすい。仕事をするうえでのモノに対する情熱はビジネスシーンという場に限定すれば人に仕事上より良い印象を与えるのは間違いない。

ここでは一般的なスーツ着用が求められている職場をイメージしている。だから、ジャケパンスタイルやブレーザーが許されたり年中ノータイでも構わないような職場向けではなくて、ファッションにあまり興味のない上司が大半で、でも顧客はあなたがスーツを着ることが当たり前だと思っている職場で通用する靴選びというテーマで考えることにする。


よくある3足の選び方でまず違和感を受けるのが、どれもこれもストレートチップ(キャップトウ)が1足しかチョイスされていないこと。

前回の記事でも書いたのだけれど、ストレートチップが冠婚葬祭に必要と言うのであれば、むしろ最初の3足すべてストレートチップにするべきだと思う。
結婚式の日が雨で、次の日お葬式で、その次お堅い会社の大切な商談だったりしたら同じ靴を3日連続して履くのだろうか。「婚」はともかく「葬」はいつ起きるかわからないし。
シーン、TPOを語るなら、連続してストレートチップが必要とされる状況を当然に考えるべきではないのか。なのに1足しかないというのも変な話。よく言われているからストレートチップを入れているだけで、真のTPOを考えていないのではないかとさえ思ってしまう。

次に茶靴やUチップが出てきてしまう点。
茶靴をダメとする職場がある。僕の最初に勤めた会社は「黒い靴」というドレスコードがあった。こんなドレスコードがある会社で、それ知る前に茶靴買っていたら悲劇。
よほどカジュアルな職場ならまだしも、スーツを着るということが要求されている職場であれば入社した後に慎重にチョイスすべき靴になる。
確かに茶靴は女性にもウケがいい。色にグラデーションがついていたりするとさらにポイントが上がったりする。茶靴を履くことが洒落者というような風潮さえある。
しかし、大半のビジネスシーンでは「洒落者であること」が評価されるのではない。

最後に「ストレートチップ」「プレーントウ」といった靴のカテゴリだけが紹介されていて、靴全体の形に関する考察がない。
いくらストレートチップと言ってもロングノーズつま先反り返りでは本来「なぜストレートチップ選ぶんでしたっけ?」という視点からすれば疑問符が付く。
実際にはほとんどのシーンで、「ふさわしいストレートチップ」が要求されることはない。だから一般論的には黒を選択しさえすれば後はなんでも良いということになるのだけれど、「冠婚葬祭に必要だから〜」の件でストレートチップというのであれば、「冠婚葬祭に使える」ストレートチップをチョイスしないことには話の辻褄があわない。


それを踏まえて3足選ぶなら、次のチョイスになる。

1足目:ブラックのストレートチップ(キャップトウ)
2足目:ブラックのストレートチップ(キャップトウ)
3足目:ブラックのプレーントウ

これ、以前に書いたものと同じ組み合わせ。何回考えても、この組み合わせしか考えられない。

まず色は黒に限る。
少なくとも手持ち5足までは全部黒でいいくらい。
男の革靴は「黒に始まり、黒で一息つき、黒を追い求める」とさえ思う。(終わりは無い)
こと日本社会でいえば、黒の靴、白のシャツ、紺のスーツを極めるのが王道なんではないかと。この格好で就活生とはまるで違う、エグゼクティブな雰囲気が出せたら、その人のビジネスファッションは超一流といえるのではないだろうか。僕もそうでありたいといつも思う。

ブラックのストレートチップが2足になるのは、先に上げた2日連続冠婚葬祭でも対応できるようにするため。また冠婚葬祭+堅い営業先などの組み合わせも考えられる。
それと単純にストレートチップならスーツスタイルに外しがないという理由。

ストレートチップが真面目で面白くないと考える人もいるかもしれない。たいてい基本とか基礎というものは面白くないもの。基礎トレーニングとか、基礎問題とか、つまらないものかもしれないけれど極めて応用範囲が広い。基礎問題・基本問題で満足してしまうのではなく、その過程を経て鋭い応用に活かすのが大多数の人の定石ではないだろうか。基礎をしっかり作るのが真面目な大工の仕事。ゲルニカなどの作品ばかりが注目されるが、ピカソは普通に絵をかいてもやっぱり一流。

靴に変化を求めるならば、某靴ファクトリーの社長さんのように人様から賞をいただくという大切なシーンでもカジュアルで攻めればいいのではないかと。なぜそういうシーンでこそ自社最高のドレスシューズを履かないのかは僕には理解できないけれど、そういう真面目な仕事として作ったプロダクトより、コンセプトシューズのほうが会社を代表するということなのだろう。このブランドは真面目さを売りにしていて好印象をもっていたけれど、ブランドが言う「真面目」の定義が少し僕の感覚と違う気がして、購入意欲がガクッと減ってしまった。
(頑張っている職人さんの名誉のために書き足せば、お店で見た限りはとてもいい靴で、それを比較的リーズナブルに展開できるのはよい職人さんがいてよい技術があるからだと思います)

最後がプレーントウなのは、最低限の変化をつけるならこれという選択。プレーントウは冠婚葬祭でも許容範囲であるため、意味合い的には3足ストレートチップとそう変わらない。3日連続ストレートチップが必要になる確率は小さいこともあるし、1足くらいは違ってもいいのかなと。

2015年時点で、この基準にあてはまり、現実的なプライスの靴は次のものあたりでないかと思っている。ストレートチップのみ書いてみる。

「リーガル 01DRCD」
これはリーガルの新定番と言ってもいいくらいのベーシックなストレートチップ。アノネイベガノは水に弱いと言われているけれど、ボカルーよりはふやけの度合いも少ないし、水洗いしても大丈夫だった。5万円以下のビジネスシーンでは最強クラスの靴。

「リーガル W131/W121」
01DRCDが出るまでは、これが定番ともいえた靴。国産キップでデザインも古典的と普通すぎるためあまりヒットしていないと思うけれど、これこそ日本の靴ではないかな。

「シェットランドフォックス インバネス」
リーガルの回し者みたいな感じになってしまうけれど、この靴も比較的手に入りやすいオーソドックスな靴。01DRCDより薄く、小さく作ってあるので若い人向けかな。ボカルーは雨に降られるとかなりふやける感じがするので天気を気にしてしまう人は最初の靴に選ばないほうが精神上よいかもしれない。

「RENDO R7701」
W131を現代風に再構築したような靴。いまイチバンのおすすめかもしれない。最初はかなり固い靴なので、足が頑張れるかどうか。かかとは確かに小さめ。入手が困難なので東京以外に住んでいる人は通販でしか買えないのが難点か。

国産以外に目を向けると、アルフレッドサージェントのEPSOMもビジネスっぽい。
サージェントは輸入で関税がかかっていることを考えると、手に入れやすい価格でいい靴を作る。以前は履き心地がふかふかしていて革靴の概念を覆してくれた。いまはどうなのかな。


電車に乗っても、街を歩いても、意外と定番の靴をしっかりお手入れして履いている人は少ない。だから、ちゃんとお手入れして、適度に履きこんだ靴を履くだけでも十分な差別化になる。よほどの上級者でないと形や色の差別化は難しそう。
僕はあまりファッションは得意ではないので、どうしてもこういう定番から抜け出せないのだけれど、僕の身の程からするとこのくらいがちょうどいいのかなと思いながらパンチドキャップトウでささやかな差別化を楽しんでたりするのでした。

2015年6月14日日曜日

RENDO R7702 2nd Report

RENDOの7702が10か月経過した。

この靴、いままで履いた靴で購入直後に初めて小指に強烈なタコができたりかかとが擦れたり、第一印象は自分に合わない靴だった。

ところが10ヶ月経ったいまでは当初こうなるとは思えなかったほどにジャストフィットになっている。購入当初といまとの印象はまるで別の靴のよう。

RENDOの靴は芯地がほかの靴に比べて固いと感じる。またラストは細いと言われている。
おそらくはEEの僕の足では少し横幅が窮屈なことと、このような靴作りのコンセプトから最初に固いと感じたのだろう。

いまはそういう痛い思いは全くない。
だいたい週に1度くらいの登板頻度なので延べ50回くらい履いたことになる。
底面の減り具合から想像するに、比較的詰められているコルクも厚い。これも購入当初からの変化の一因か。
ヒドゥンチャネルの部分が減らないのはコルクが体重で変化することを想定してある程度中央を盛っているからだと推察される。
この靴は天候を気にせず雨の日も履いているが、ソールのヘリは少ないし、乾くと何事もなかったように戻っている(気がする)。ソールにはごくごくたまにソール用のクリームを入れている。

RENDOはビジネスマンの靴というコンセプトもあるみたいで、その通りの真面目で朴訥な印象で、これはこれである意味日本の靴っぽい。

いまのところほつれたり型崩れしたりもなく、あまりロングノーズでないこともあるのかつま先の減りも少ない。僕の場合は週1ローテーションなら1年くらいは軽く持ちそう。

アッパーに使われている国産キップは履きこむにつれてだんだんと柔らかく、しなやかになる。購入時は固い印象を受けるが、きちんとクリームを入れて履きこむことで、想像以上に変化する。

リーガルの国産キップと同じタンナーなのか、それともキップというグレードに共通なのか、しわはかなり大味に入る。購入するときに受けた説明では良い部分を使っているとのことだけれど、僕のレベルではよくわからない。表面のつぶつぶ感が目立つことからも、W10BDJ1のようにしっかりグレージング仕上げされたキップとは違う気がする。

太いしわが入ってもクラック防止のため丁寧にブラッシングさえすれば実用上は全く問題がないと思うのだが、しわの入った靴は一般的にウケが悪い。うちの家庭内でもこの靴のほうが、これよりはるかに履きこんでいる01DRCDより「古く見える」といわれる。

この靴のお手入れにはBoot Blackを使っている。
Boot Blackの乳化性クリームは革に浸透し易いため、表面は素材を活かす仕上がりになる。このクリームのみだとキャップの部分も凹凸感が残ってしまうので、鏡面寄りに仕上げたいときはサフィールノワールクレム1925を使うか、ワックス併用のほうが良さそう。

表面の仕上がり点ではヨーロッパタンナーのボックスカーフとは傾向が違う。表面の凹凸が目立つ感じで、これが光の反射を分散させてしまい、結果として艶が出にくい。
ガラス仕上げの靴が格好良く見える向きには向いていないかもしれない。
左がウェインハイムレダー、右が国産キップ。艶感がだいぶ違う。これは仕上げによるものかな。グレージングをしまくれば意外と近いものができたりして。
ただ、ネットでRENDOの靴を見ると、僕のものとはまた違った艶をもっているものがちらほらあるので、クリームやワックスの使い方でより高級感が出せるはず。

若いサラリーマンでも、お小遣い制のお父さんでも何とか頑張って買える範囲で長く使える本格的な靴。履きこむことでわかる靴の良さがこの靴にはある。

冒頭にも書いたように購入した当初は小指にもかかとにも結構なダメージがあって、この靴でできたタコがいまだに残っているが、いつの間にかこの靴はどこも痛くないジャストフィットの靴になっている。固い作りではあるけれど、きちんと足に合わせて変わる靴。
購入時にも「足の形状からすると、ラストのほうが少し細いのできついかもしれない。その時はストレッチします」という提案を受けたのだけれど、結果としてストレッチなしで十分なフィットを得られる靴になった。このあたりは試着だけではわからない。そこが靴購入の難しいところ。
逆に言えば、僕のようなEEではなくもう少し細いい人だとコルクの沈み込みなどによって少し余ることが出てくるのかもしれない。

よく言われる「小さめのかかと」については、確かに他のブランドの靴よりコンパクトな仕上がり。前回も書いたように購入時そのまま履くとかかとのサイドがかなり当たり、まともに履けたものではなかった。当たる部分の芯地を指で慣らしてみることで、ちょうどいい感じのコンパクトさを感じられるかかと周りになった。

ところでこの靴、ネット上の情報からするとセントラル製だと思われるのだけれど、同じセントラル製と思われる三陽山長のおよそ6割の価格。アッパーで使われている革が違うにしても、かなり良心的な価格設定なのではないだろうか。

RENDOって、靴好きの人ならそのコンセプトとそれから導き出される良さが理解できると思うのだけれど、これから靴好きになる予備軍である若い世代に訴求するには今ひとつパンチが足りない気がする。いわゆる真面目すぎてモテない君で、作り手の伝えたいメッセージを受け取る側もこの真面目さを受け止めるだけの余裕が必要とされてしまう。
一巡して、クラシックな普段履きが欲しくなった人が立ち返る靴なのではないかと。

個人的にはこうした真面目なコンセプトにもっと光があたって欲しいし、こういう靴こそが日本のベーシックとして広まったらいいなと思う。実際に自分で購入してみて履いてみて解ったのは、本当に期待を裏切らない靴。目立たないけれどなぜか安心。

足馴染みも良いし、ビジネスシーンで必要十分なRENDO。これからも天気を気にせずどんどん履いていきますよ。


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AmazonでRENDOの取り扱いが始まっています。いまのところ7702はダイナイトソールモデルのみみたい。キャップトウはレザーもある。万人向けでいい靴だと思う。中でもAmazon専売のネイビースエードはかなり格好いい。これがレザーソールだったらなぁ...



ツリーはディプロマットヨーロピアンを入れています。


クリームは何となくブートブラック。


2015年4月23日木曜日

CROCKETT&JONES AUDLEY LAST337

チャーチのコンサルと並んで、英国靴として人気が高いクロケットアンドジョーンズのオードリー(Audley)。

もうだいぶ前に買ったのだけれど、あまり足に合わない感じがして(だいぶ緩い)しばらくお蔵入りだった。いくらエレガントでも、作りにこだわりがあっても、知名度が高くても(これはあまり関係ないか)、やっぱり靴って履いて歩くものだから、合わない靴はだんだんローテーション頻度が低くなる。

いきなり低評価っぽい書き出しなのは、靴の良し悪しではなくて、単に僕と靴との相性がゆえ。

あまり履かない靴について書くのもどうかと思うところもあれど、クロケットアンドジョーンズは日本製の靴とはあまりにも違いが大きい気がするのに、日本で売れている(百貨店の取扱いも多い)靴みたいなので、ちょっとメモとして記録しておこうと思う。

オードリー自体は本当にいい靴。合う人は羨ましい。
微妙なロングノーズ加減に大きすぎず小さすぎずまとめられたキャップ。しっとりとしたレザーの質感など見た目の良さでは僕の手持ちの中ではいちばんだと思う。ラウンドトウ好きな僕から見ても、このなんとも言えない造形は「定番」と読んでもおかしくない。クロケットアンドジョーンズ社長のジョナサン・ジョーンズ氏がいうように、「良い革、作り、クラシック」といった言葉でまとめることができる。
もちろん、予算に上限を入れなければ、もっと良い革、もっと凝った作り(ハンドとか)はある。でも、そこそこの(とはいえ割引あるところで買っても8万円近くするけど)靴としては満足度が高いのではないだろうか。

日本でクロケットアンドジョーンズが流行りだしたのは、多分20年以上前だった気がする。その頃はOEM主力の工場が自社ブランドで打って出たみたいな位置付けで、ちょうどいま国内で言うところのビナセーコーやMIYAGIKOGYOみたいな印象だった。

いまでは正規代理店経由だと10万円近い靴になってしまった。日本ではチャーチと並んで人気が高い英国靴なのではないかな。

日本製の靴に比べるとボールジョイントから先がかなり狭い。ギリシア型の足に合いそう。僕が履くと夕方ころにはかなり小指側が痛くなる。点で当たるというよりも面で内側に寄せられる感じ。

一方、くるぶしから甲の外側はかなり(というか、ありすぎるほど)ゆとりがあって。足首周りはブカブカになってしまう。全長はかなりタイトめなのでつま先がきつくて足首回りが緩いという感じ(Eウイズ)。
アバディーンやパラティーノで足首周りがいい感じの人はかなり余ってしまうと思う。

大きいといわれるかかとは、ほかの国産靴と比べてもそれほど極端に大きいわけではない。底面は少し幅広ではあるけれど、上面に向かって絞り込まれている。実際に履いてみてもかかとがぶかぶかというわけではない。むしろ履き口、特に甲の外側が大きく、足首回りの容積が大きいことがフィットしない主要因。ここに過度なゆとりがあるためかかとが収まる感じが弱く、またインソールが全敷のため結果として前すべりして、それが指への負担を強めている。明らかに捨て寸のところまで足が入ってしまっている。(靴の後半部分をまとめて「かかと」と呼ぶのであれば確かにかかとが大きいと言える)
右がオードリー、左がシェットランドフォックスのアバディーン。下部が少しポテっとしているけれど、上に行くに従って絞りこまれている。

一方、履き口周りは明らかに周が大きい。かかと側はそれほど差がなく、甲側の大きさが結構違う。

甲も足首近くまで覆うアバディーンと比べるとかなり手前で終わっている。

国産靴(と一概には言えないが)と比較して全体的に、とくに足首近くの甲からかかとの肉付きが良い人向け。薄い人だと足首回りの甲の部分でのフィット感が弱いと思う。
伊勢丹でかかとをハーフサイズ小さくしたと言われるAUDLEY3を履いてみたけれどくるぶしから外側が余る感じだった。クロケットアンドジョーンズのラストは僕にはあわないというのが結論で、見た目で言えばベルグレイヴが最高に格好良くて履きたいのだけれど、合わない靴はやっぱり買えない。

ボックスカーフと思われるアッパーはかなり上質な革を使っていて、みずみずしいもちもち感がする。チョットクリームを付けて磨くだけでものすごく奥深い光沢になる。ボックスカーフは手入れ次第でしっとりとした質感になるのが好きだ。特にオードリーは品を感じる光り方で、これはご祝儀系に合いそう。

シワの入り方もきれい。この入り方を見るに僕のボールジョイントあたりの甲上面と相性が良いのか、それとも釣り込みなど靴全体の作りで無理がないのか、自然に履いてここまできれいに入るケースも珍しい。(僕は一切ボールペンなどは使わない人なので)
きめ細かなしわが入り、ツリーを入れるときちんと伸びる。

クロケットアンドジョーンズのソールは滑りやすいことで有名なので最初は気合を入れて履いてみた。確かに滑りやすいのは事実。とはいえハンドグレードラインのソールに限って言えば他の靴に比べて際立って滑りやすいというわけでもない。やや固めなソールなので新しいうちは滑りやすいということはあるかもしれない。むしろペイントなどのソールの仕上げ方と、縁より中心をややボリュームを持たせる造形によるところが大きい気がする。新品時点で滑るのはアバディーンと同じ感じ。どちらかと言うと釘打ちの多いソフィスアンドソリッドのほうがはるかに滑る。

それにしてもオードリーは惚れぼれするくらい美しい靴。パリラストとも呼ばれる337ラストは、全体の長さと嫌みのないスクエア感、エッジをあまり効かせずやや丸みを帯びた造形と、その美しさはベルルッティみたいな技巧の評価が高い芸術品というわけではなく、シンプルな美しさ。冠婚葬祭ビジネスどのシーンでもまったく自然に溶け込むようなスタイリング。伝統的なスマートといったところ。似たようなコンセプトのシェットランドフォックスのエジンバラと比較すると、意外とシャープなつま先形状でありながら、コバが比較的ゆるいカーブで仕上げられていることとキャップからボールジョイントにかけてのエッジが目立たないため単独で見ると結構丸っこい印象になる。

これだけの靴がぴったり合う人は羨ましい。
でも逆に、オードリーが合う人は、シェットランドフォックスで言えばグラスゴーはともかく、アバディーンは入らないのではないだろうか。羽根開きまくりだし、甲に靴が食い込むのではないだろうか。
日本のブランドはかかとを小さく、甲を低く、口を小さく、幅もやや細目に仕上げることが多くなってきたので、そういった形に合わない人には向いているかも。

購入した当時はいまほどフィッティングへのこだわりというか理解もなくて、試着した時にやたら口が余るなぁと思って聞いてみたところ、「履きこんでくるうちに合いますよ」というアドバイスを信じて買ってみた。いま思えばこれだけ自分の足との物理的形状が違うのだから、変形してどうのという話ではなくて、こちらがよく太るか革が縮まない限りフィットすることはなさそう。

どんなにいい靴といわれても、結局は足に合うか合わないかの基準が最初にありきということを教えてもらった靴。また、自分には日本靴のほうが合う場合が多いという事実を否が応でも気づかされた靴。履く機会はあまりないけれど、この靴だけは手放すことができなくて手元に置いている。

2015年4月19日日曜日

SHETLANDFOX 524F EDINBURGH

Shoe*にコメントをいただく Life Style Image さんのブログでコレスポンド(コンビ)シューズが紹介されていたので、改めて自分の靴も見直してみた。

シェットランドフォックス30周年記念モデルとして売られていたエジンバラ。
僕は一部限定や入手しづらいものもあるけれど、これまで記事を書いている時点で入手可能なものを公開するようにしていた。次はAudleyを書き進めているのだけれど、今回はちょっと番外編として先にこの靴を取り上げてみたくなった。

コンビシューズ。クラシックな靴の配色パターンを変えることでガラッと印象が変わる。靴屋さんでもあまり売られていないので、よほど靴に興味があってPOするようなことがなければワードローブに無い靴。まわりをちょっと見渡してみても、クラッシックなデザインのコンビシューズを履いている人はあまり見かけない。

シェットランドフォックスもあくまで記念モデルだからこそ作ったモデルなんだろうなと。ふつうはPOでなければやらないような組み合わせのほうがアイコンとしての意味がありそうだし。
エジンバラのラストは気に入っていたし、コンビシューズを持っていなかったこともあり日比谷のシェットランドフォックスで購入。

524Fの濃い茶色の部分はイルチア社ラディカ、薄い部分は同じくイルチア社とされており、シェットランドフォックスの公式ブログでもパターンオーダー例でそのような紹介があるけれど、このベージュはそれほどムラ感が無い。あまりむら染めしていない革なのだろうか。
この組み合わせはかなり的を射ていて、おまけにデザインはパンチドキャップトウと、これまた絶妙。「パーフォレーションを施すことによりフォーマルになり過ぎない」という説明が公式ブログにあったけれど、まさにそんな感じ。クオーターブローグでも良かったくらい。
製造元と思われるビナセーコーのペルフェットPOでもこれとそっくりなカンピドリオのサンプルがあった。

シェットランドフォックスはこれまでもラディカを採用した靴のトウにはメダリオンを入れていない。3014SFしかり、502Fしかり。ラディカはそれ自体に表情があるので、トウに持ってきたときはメダリオンを入れないというのは一つの解だと思っている。歴史的な背景はおいておくと、いまはメダリオンは意匠だし、ムラ感による立体感という意匠がすでにあるところにメダリオンが入ると、せっかくの表情がピンぼけしてしまう。

さてこのコンビシューズ、色の組み合わせで受ける印象が結構変わるから面白い。
スポーツ観戦用(極めて限定的なシーンだな)として履かれたというスペクテイターシューズ(spectator:スポーツなどの観客)はトウを黒(茶色もある)、アッパーが白というパンダデザイン。でもこれ、合わせる洋服をすごく選ぶような組み合わせ。
出自をあまり考えないとすれば個人的にはコンビは黒白よりも、トウにはブラウンやワインのほうが合わせやすい気がする。黒白はコントラストがきつすぎて、靴だけが異常に目立ってしまう。これを収まりよく履きこなすには相当の実力が必要で、その自信がない僕はやっぱりブラウンベースが安心なわけです。

ベージュ部分は雨があたるとかなり色が変わる繊細な革。いまのところ小雨程度しか降られていないためなのか、乾くととくにシミになるわけでもなく元通りに回復している。ベージュなどの明るい色は濡れた時の変化が大きいので、雨が降らない予報が出ている日に履いたほうが良いかもしれない。

ソールも定番モデルとは異なりベージュのおとなしめなもの。至ってクラシック。こちらも雨の日履くと結構色が変わることと、路面から拾った汚れも目立って汚らしくなる。革靴だからという理由ではなくて、履いている時の色合いや表情を大切にするなら天気を気にしたほうが良い靴。

履き心地はエジンバラそのもの。最近の細め薄め系からすると気持ち甲が高くかかとが大き目なつくりではあるのだけれど、僕のように幅普通薄めの足には指への負担が少ないので休日履きとしては履きやすい。
全長も現在の標準よりは短めでこれまたジーンズからジャケットまで違和感無く履くことができる。ややスクエアで立体的な形状のため、どちらかというときれい目スタイルに合うのではないかな。
シェットランドフォックスはアーバインでコンビを売っている(3077SF)。これ、なかなか通好みのモデルな気がする。これぞ正統派スペクテイターシューズみたいな。アーバインは靴そのものの造形はとてもクラシックで、展開しているデザインもド定番。もう少し甲が低かったら...

イルチアのラディカの立体感と、何とも言えないベージュの質感なのか、この靴を履いているとかなりの確率で「いい靴ですね」と言われる。靴好きでなくても直感的にわかる素材の良さはさすが旧イルチアだなと。
最近は休みがなかなか取れないこともあって、休日用の革靴はW10BDJと3043SFだけで事足りてしまうのだけれど、よくよく見てみると、こういうコンビシューズってわくわくする靴だと思ったわけです。

ソフィスアンドソリッドでもコンビの新作が出ていますね。なかなかレギュラーモデルでは用意されないデザインなので、POする機会があったらコンビシューズも見なおしてみようと改めて思うのでした。

2015年4月14日火曜日

REGAL TOKYO

僕の最もお気に入りのお店、REGAL TOKYO。

銀座には数多くの靴屋があるけれど僕の一つの原点ともいえる。

僕はプロフィールの通り、リーガル系の靴を買うことが多い。なので必然的にREGAL TOKYOと日比谷のシェットランドフォックスに行くことが多いのだけれど、このREGAL TOKYOの接客の質は素晴らしいと思う。

僕はビスポークをしたことが無いし、ここの上得意さんと比べると取るに足らない金額しか使っていないと思うのだけれど、いつも満足できる接客を受ける。特に(最近見ないけど)斉藤さんの接客はスペシャルで、本当に勉強になることが多かった。

最近は日比谷にシェットランドフォックスができたため、REGAL TOKYOではオリジナルモデルが中心で、どちらかというとパターンオーダーやビスポーク中心の店舗。だからこそ、オリジナルモデルで少し遊びができるところも強みなのだろう。

リーガルと並ぶ日本の雄であるスコッチグレインの銀座店は、どうもいつもお客さんが多いためか(それだけ繁盛しているので良いのだが)、単に試着をするにも気が引ける。接客待ちのためのリストにも試着という欄がなくて(以前はそうだった。いまではどうなのだろう?)、もう買うのが前提みたいなところがあるし。よく言えば元気な、悪く言えば落ち着かない接客をしているスタッフが多い気もする。接客の方向性はREGAL TOKYOとは別物という感じ。(扱う商品のプライスが違うと言われればそうだが、既成で6万円以上、モノによっては10万円オーバーの靴を売る店である)

トレーディングポストは扱っている商品は結構好みだけれど、若い店員さんが多いせいか、なんとなく靴好きは伝わるけれど、ストイックさが無いような雰囲気があるし、WFGは常連さん向けのお店な気がしてしまい(特に銀座のお店)いつも外様感を感じてしまう。

というわけで、僕は結局REGAL TOKYOが好きなのだ。

並木通りにあった頃のREGAL TOKYOはオールデンが置いてあったりしてちょっとセレクトショップ風な印象を漂わせていた。2Fのビスポークや九分仕立てが置いてあるゾーンは見ていても飽きない感動があった。残念ながらいまはスペースが狭いためか既製の展開はごくごく一部で、他のブランドのものは置いていない。

そのリーガルトーキョーのオリジナルで、このところ立て続けに面白いモデルが出ている。

最近出た10周年記念(まだ10年なの?)モデルは、この10年の歴史と、この先10年見据えたモデルだと思う。Vフロント、パンチドキャップトウなどガチ定番から一歩だけ踏み出したラインナップもまた憎い。
素材もブラックはウェインハイムレダー、茶色はアノネイ、ソールは栃木レザーと気合の入ったモデル。以前もメルクスのボックスカーフを使ったモデルがあったりと、国産タンナー素材の採用があるのも嬉しい。

リーガルトーキョーは5、6万円クラスの靴としてはとても満足度が高い。
このモデルもかなりがっしりとした印象。ちょうどW10BDJのビジネスバージョンと言った感じ。
デザインはごくごくベーシックなパンチドキャップトウやVフロント。やっぱりこのデザイン、ビジネスシーンにマッチする。


シェットランドフォックスとは客層の違いを意識しているのか、全体的に大きめな作りに感じる。たいていはシェットランドフォックスよりハーフサイズ落としてちょうどいいか、それでも余る程度。くるぶしにややあたる感じもあるので、若者に多い細く華奢な足よりはけというよりは年配のゴツイ足向けか。

ただ、サイズを単純に落とすと寸詰まりになりやすく、指にきつさを感じる。01DRCDで緩い人だとハーフサイズ落としてもフィット感は感じられないが、指先がきつくなるはず。僕は10DRCDはかなり履きやすい靴だと思っていて、ハーフサイズ落としたこのモデルでは緩く感じるので、薄め・細めの足だとブカブカしそう。くるぶしのあたりも少し高いので、最近の細い靴では入りきらない足の人にはいいかも。


リーガルはブランドの育て方がイマイチに思える。
ビスポークまでやっているリーガルトーキョーの既製にはビジネスを意識しすぎた実用重視の靴は似合わない。そういう靴こそリーガルブランドで全国展開すればよいし、リーガルトーキョーまでわざわざくるお客さんがそういう靴を求めているとも思えない。「革底でも雨の日履けますけど何か?」「クラシックを理解したいなら当店ですね」くらいの雰囲気を感じたいといつも思う。
そういう意味では最近の「九分仕立てラストの既製靴」や「定番っぽいローファー」が立て続けに出てくるほうがドキドキ感が半端ない。できれば全部ほしい。

せっかくシェットランドフォックスという比較的攻めている既製ブランドを持っているのだから、超定番の安心感をベースに、時々驚くモデルを出すような感じだといいなと個人的には思ってしまう。ロイドのホワイトホールみたいな感じの代表モデルって無いですもん。(BTOもしくは九分がそれなのか?)
このあたり、リーガルのブランドマネージャーさんの手腕なのだろうけれど、実際、リーガルトーキョーは次の10年、何を目指すのでしょう。

2015年2月9日月曜日

ビジネスシーンでのド定番「白シャツ」

たまにはちょっと靴以外のことを書いてみます。
靴に関しても素人ですが、ファッション全般素人なので、単純に自分の「思い」を書いてみようと思います。

ビジネスシューズの定石がストレートチップ(キャップトウ)であるなら、シャツのド定番といえばホワイトのセミワイドシャツではないかと思う。ブラックのストレートチップを持っているような人であれば、ホワイトのシャツもワードローブにあるのではないかと思う。
白地ブロードのセミワイドシャツなんて若い人には見向きもされないのかもしれないけれど、そうした若い人たちが高齢者と呼ばれるようになる時代でも、間違いなくこのデザインは残っているだろう。

僕が社会人デビューした時、自分にいくつかのルールを課した。
そのひとつが「クラシックな定番スタイルを心がけること」だった。
真の意味のクラシックということになると、スーツはブリオーニ、シャツはフライあたりになってしまうので、全体のトーンをクラシック志向にしていただけなんですが。

靴であればブラックのカーフで作られたグッドイヤーウェルテッド
シャツであればホワイト無地でコットン100%
タイはシルク100%ネイビー系のストライプとエンジのレジメンタル
スーツはネイビーとチャコールグレーの無地3つボタン(当時は3つボタンが主流)でウール100%
ベルトや靴下、カバンはすべてブラックで統一

いま思えば靴のチョイスが少し甘い(本来であればストレートチップのみ買うべきだった)けれど、自分なりのルールを決めてセンスを確立したいというのが強かった。
よく言われる「型破りなスタイル」というものは、型ができている人がさらにその上に到達する状態であって、破るべき型がなければ「形無し」か、せいぜい「型崩れ」になってしまう。

そんななかでももっとも重要なこだわりだったのがホワイトのシャツ。

僕は入社して最初の1年間は白いシャツ、なかでもブロードかピンポイントオクスフォードしか着ないと決めていた。
ホワイトのシャツはタイとスーツを選ばない。逆に言えばタイとスーツの関係をより明確にする。これまでタイとスーツを身につけるような機会が無かった僕は、まずは全体のトーンを決めるこのふたつについて自分なりの型を作りたかった。それまでスーツを来たことがなかった僕にとって、組み合わせはシンプルな方がいい。
ホワイトのシャツばかり揃えれば、きちんと洗濯とアイロンがけをしているという前提であれば、手持ちが少なくてもあまり少ないように見えないというメリットもある。色違い、デザイン違いばかりを揃えるからかえって少なさが目立つ。(「あ、それ一昨日も着てたよね!」)

ホワイトのシャツは正装で、ビジネスには薄いブルーあたりが合う、なんて記事をたまに見かける。これは真のクラシックという意味ではそうなのかもしれないけれど、ここは日本。ワイシャツの語源はホワイトシャツという話もあるくらいで、ビジネスシーンのド定番はホワイトのシャツ。TPOのPを意識したら、新人はホワイトシャツ以外の選択肢は無いと思っていた。(いまでもそう思っている)

シャツは靴と違って方向性のバリエーションが大きい。

前立や襟の内側だけ色が変わっていたり、ボタンホールやボタンを留める糸が色違いだったり、襟が極端に大きかったりと。
で、なぜかそういうデコラティブなものが「格好いいい」と思われる傾向にある。

侘び寂び文化である日本人の感性からすれば見た目の派手よりも、伝統に裏打ちされた形や素材の質感や肌触り、それらが織りなすドレープの美しさといった、引き算をし尽くしてもなお残る良さが求められてもおかしくないのに、いまは何かを付け加えた足し算デザインのほうが評価されるきらいがある。

確かに僕自身、中学生くらいの頃はわかりやすい差別化に憧れていた時期もあったのは事実。でもやっぱり大人になるに連れてそういう差別化が逆に恥ずかしくなって、むしろ「同じようだけれどなにか違う」という素材とか、作りなどのちょっとした差別化であったり、自分にあったサイズ、フィット感や着やすさのほうを好むようになった。

ホワイトのシャツと一口に言っても、生地(織り)によって表情ががらっと変わる。
ブロードと高番手ツイルはドレス寄りなので、きっちりした場所に出るときのためワードローブに欠かせないし、ピンポイントオクスフォードやドビーストライプなどはビジネスシーンに使いやすい。
オクスフォードや鹿の子になるとボタンダウンでざっくりと着こなすのに向いてくる。夏にシャツがベッタリというのも少ない。

もし僕がホワイトシャツを3枚だけ選べと言われたら、次の組み合わせになると思う。

・ 高番手ツイルのセミワイドカラー
・ ピンポイントオクスフォードのセミワイドカラー
・ ドビーストライプのセミワイド若しくはウインザーカラー

高番手ツイルはドレープもきれいに出るし、ブロードより透けない感じがするので主にドレス・ビジネス兼用。ピンポイントオクスフォードはビジネスド定番。全年齢層に受けがいい。ドビーストライプは無地のスーツに合わせると映える。

いまは、僕は靴とは違ってシャツは少しだけ冒険するので、ピンクのクレリックとかブルーのストライプを着る。僕の職場はオフィスカジュアルまでOKなので、この程度は許される。ただ、お客様先に出向くときはホワイト系のシャツが多くなる。この辺り、歳とともにTPOの塩梅が掴めてきたことと、自分の会社の社風などを踏まえてシャツを選択するようにしている。

最近のお気に入りは「土井縫工所」(通称土井シャツ)

ここのダーツモデルはややタイトな作りで、締めるところを締めている。そして袖(裄丈)がちょうどいい長さなのが気に入っている。

日本製のシャツは丁寧な作りのものが多いとは思うけれど、どうしてなのか全て袖が短い。コンブリオや鎌倉シャツの上位ラインはつくりや素材感は気に入っているのだけれど、袖が短くてスーツに合わない。スーツから少しシャツを出すには、ボタンを止める前の段階である程度ゆとりがないと長さが足りない。

土井シャツのレギュラーモデルは日本製生地(敷島綿布)を使って日本で縫製している。本縫い、ガゼット、白蝶貝ボタンといった本格仕様で約7千円。

素材の敷島綿布は他のブロードよりも気持ちしわになりにくいかな。同じブロードなら鎌倉シャツの新彊綿よりははるかにアイロンがかけやすい。織りでいうなら刷毛目のシャツはすぐにしわが伸びるので、朝忙しい時にアイロンがけしなければならない時などは結構重宝する。襟や袖口の芯地も鎌倉シャツよりは耐久性が高い。洗濯を繰り返してもアイロンがけで結構ハリが出る。2年くらい前からはほぼビジネスシャツは土井シャツで買うようになってしまった。(それまでは鎌倉シャツが多かった)

土井シャツも鎌倉シャツもどちらも良いシャツだと思う。全体的なイメージで言えば、かっちり系の土井シャツに、ふんわり系の鎌倉シャツという感じ。

ただ、土井シャツはかっちりと言っても、アームホール、ヨーク、背中のダーツが立体的に縫われていることが分かる。単にベタッとアイロンをかけると生地が余ってしわになるので。日本製の生地を日本国内でていねいに縫製しているという個人的にはドンピシャのシャツメーカー。

シャツは靴よりもはるかに耐用年数が短いので、思い切って高いものを買ってみようかと思いながらも、やっぱり適度なプライスで安心して買うことができるところばかりを買ってしまう。靴ならば3万円辺りに大きな境目があるような気がするけれど、シャツは5,000円位にあるような気がする。この辺りから貝ボタンだったり、伏せ縫いだったり、生地の番手が上がってくる。逆に1万円を超えてくるとさらに高番手になり肌触りは良くなる一方で、取り扱いに気を使うようになる。シャツは1回着るごとに洗うものだから、あまり深く考えないで洗濯できるものが僕の好み。また、買い替え頻度がいちばん高いものだからこそ、定番をいつも買うことができるいう安心感を重視している。

なんだかんだで定番と言われているものは飽きが来ないし、何年か経って昔の写真を見る機会があっても恥ずかしくない。たまに冒険しない人生はつまらないけれど、クラシックなモノに囲まれるほうが自分には合っている気がする。

2015年1月31日土曜日

プレーントウについて思いを語ってみる

ブラックのプレーントウ。

30代後半以上で革靴好きの人であれば一度は足を入れたことがあると思われる靴。
僕のフレッシュマン時代の憧れの靴のひとつはオールデンのプレーントウだった。

プレーントウ (Plain Toe)は読んで字のごとく、飾りのないシンプルな(プレーンな)つま先を持つ靴。
"Plain"なのだから「プレイントウ」のほうが本来の発音に近いとは思うのだけれど、一般的にはプレーントウと書かれることが多い(「プレーントゥ」も多い)ので、今回はプレーントウと書くことにする。

日本でよく見るフレッシュマンのビジネススタイル指南によると、外羽根プレーントウは必ず最初の3足、その中でもいの一番にそろえるべき靴として挙げられている事が多い。
このあたりは少なくとも僕の知るところである二十数年前から一貫して変わっていない。


トウにメダリオンなどの装飾がないあまりにも単純なデザインであるため、靴(ラスト)の形が如実に印象に直結する。
ラウンド寄りになるほどやさしさと温かさを感じるし、シャープになるほどクール(デザインによっては攻撃的)な雰囲気を醸し出す。

お手入れし易い、外羽根によりサイズの調整がし易い、クールビズなどのややラフなスタイルにも合いやすいとオールマイティに思われがちな靴。しかし、僕は思う。

「プレーントウは難しい」


ビジネスシーンでブラックのプレーントウを格好良く履きこなすのは相当の洒落者でないと無理ではないか、と思えてならない。

デザインレスなスタイルは一見何にでも合いそうではあるけれど、足元はスーツスタイルの中で一番下に位置するためにその部分がシンプルすぎると心許ない感じなってしまう。
アクセントが無く、表情を出しにくいプレーントウ。ラウンドトウならなおさら。

僕はどちらかと言うと薄手の繊細な生地で作られたスーツが好きなので、プレーントウも必然的にドレス寄りのものになる。
ドレスを意識すればするほど全体的なコーディネートにおける足元、という意味ではキャップトウにはかなわない感じが増してくるし、少しカジュアル寄りに持って行こうとするとスーツスタイルにはブローグのほうがしっくり来る。

街でビジネスパーソンの靴を見てみると、スーツに運動靴みたいな人を除くとブラックはツーシームとUチップが圧倒的に多くて、ドレス系のプレーントウを履いている人は殆ど見かけない。たまに見かけるプレーントウはソールがゴツメのワークブーツ寄りな人が多い。
レザーソールのブラックなプレーントウに出会う確率はコードバンのセミブローグに出会う確率と同じくらい少ない。

ま、そもそもレザーソールかつカーフ素材の黒いプレーントウってなかなか売ってませんもん。
売っていなくは無いのだけれど、ブランドの中でもやや控えめなグループに用意されていたりで、フラッグシップ扱いになっていることが少ない。(だからオールデンの人気がでるのかも?)

こういったシンプルなものは一般的には「格好いい」と思われにくい。
デコラティブな方が一般的には「デザインがある=仕事している=格好いい」に思われやすく、プレーントウのような何の飾りもないものは安物っぽく思われがち。
最近の若い人の間ではそれほど支持のあるデザインでもないだろうし、逆に靴好きは最初のころにプレーントウを買って、買い増しはキャップトウやブローグに走るだろうからそれほど販売数量も期待できないと思われる。

おまけにプレーントウはきちんと手入れをしないと途端にみすぼらしくなる。汚れがデザインの代わりになって靴を目立たせてしまう。つま先がちょっと擦れてしまうともう目立つのなんの。

プレーントウは「フレッシュマンが初めにそろえるべき靴」とみんなが言うので、靴に興味がある人は比較的初期に手を出す。現在手に入るレザーソールのプレーントウが3万円台に多いのも、フレッシュマンががんばって買えるプライスゾーンというところか。
年齢が上がるにつれキャップトウやブローグ系の靴の使い勝手がよくなるので、経済的に余裕が出てきたあたりでは結局買い増ししない。だからイルチアのプレーントウなんて存在しなかったわけだ。


僕個人のプレーントウとの付き合いで言えば、カジュアルのほうが長い。

最初に買ったグッドイヤーウェルテッドの靴は2235NAで、赤茶のプレーントウ。次はウォークオーバーのスエード靴、次はアルフレッドサージェント製のブラックのホールカットで、その後やっと外羽根5穴プレーントウ。
特にこの外羽プレーントウは僕自身が経済的に厳しかった時期に買ったこともあって、結構酷使してしまった。ソールに穴が開いて初めて修理に出すといった感じで。


その後歳を重ねるごとにキャップトウが僕の中でのスタンダードになり、プレーントウの登板機会は減っていった。一時期はキャップトウ9割、他ブローグ系1割みたいな感じで、プレーントウは出番なしという月も多くなった。


ところが最近、なぜかプレーントウが格好良く思えてきた。

究極に突き詰めていくとシンプルというものがいちばん難しく、故に格好良い。そう思って改めてブラックのプレーントウを履いてみるとまだまだ自分の至らなさを感じて不思議な気持ちになる靴でもある。だからこそ思う。

「プレーントウは奥が深い」


ていねいにお手入れされて履きこまれたプレーントウは水面のような輝きを見せる。黒い宝石のような輝きを出しながらそれ以上の主張をしない佇まいはこのデザインならでは。
やや細身の無地スーツに磨きこまれたドレス寄りのプレーントウを合わせるといったきわめてシンプルなスタイルこそが内面をきちんと映しだしてくれるのではないかと。

つま先を磨きこんで少し立体感を出しても面白いし、逆にプレーントウのプレーンさを強調するために全体を同じトーンで仕上げてもそれはそれで格好良い。

なんて思いながらプレーントウをもう少し見直してみようと思った土曜日でした。