評判の高いゼルビーノさんでスーツを新調しました。
新型コロナ(COVID019)で急激に落ち込んだスーツ市場、少しずつ取り戻しているようですが、帝国データバンクの調査によれば2024年度で上場紳士服7社のスーツ事業売上高は3,564億円だそうです。
総務省の家計調査によれば、1世帯あたりの年間スーツ関連の支出額は1991年には25,000円だったものが2023年には3,000円ちょっとまで下がっています。
1991年というとちょうどバブル時代の最後です。当時はまだDCブームなどもありスーツ単価も高かったので、市場としてはずっと活気がありました。
最近では、確かに昼間に山手線乗ってもスーツ姿の人は激減しましたもんね。
ビジネスでのカジュアル化が進み、新卒の絶対数も少なくなる中で、市場全体がシュリンクしてしまうのは避けられそうないのですが、業界トップの青山商事は売上高は減少したものの、オーダースーツが堅調で、営業利益が増加したそうです。薄利多売の安価なスーツから、いわば高収益が見込める受注生産モデルへの切り替えで成功する企業が出てきているようです。
で、ゼルビーノ。
今回スーツを新調するにあたり、オーダー系のお店を都内で何店舗か巡ってみたところ、圧倒的にお客様が入っていたのがこのゼルビーノさんでした。
ゼルビーノはテーラーフクオカを展開する株式会社福岡さんのブランド。
ホームページを見てみると、2020年に7億円弱であった売上が2023年には10億に届こうかというところまで伸びていて、このスーツ逆風時代に驚異的な成長をしている企業です。
カタログを見るに、50を超えるおっさんがチョイスするブランドなのかは悩ましいところもあって、テーラーフクオカや銀座山形屋のほうが無難な感じもしつつ、サンプル見る限りベーシックに作ったらいけそうでしたので思い切って作ってみました。
ゼルビーノは元になる型紙をベースに、体形に合わせて補正を入れるいわゆるイージーオーダーです。
オーダーの流れとしては生地を選んで、採寸しながら微調整していくなんて形になります。パンツはウエストを基準にゲージ服を着て、渡りや裾幅を調整、ジャケットも同じようにゲージを着て体型とのずれを埋めていきます。
パターンオーダーとは異なり、胸囲やウエストなど調整できる部分が多く、標準からのずれ幅の大きな体系でもスマートに着こなせそうです。
利用シーンはビジネスなので、春から夏を意識してダークネイビーからワントーン明るくしたネイビーの無地をチョイス。タグが付くような銘柄生地ではありませんが、ウール100%で選んでいます。最後までダークネイビーの尾州生地と悩んだものの、ダークネイビーは手持ちもあるので、少しだけ明るめにしました。
ゼルビーノではパンチブックではなく、反物(というのが正しいのか?)で確認できるので、仕上がりの色のイメージがしやすいです。数センチ四方の生地だと、仕上がりが思っていたものと少しばかり違う(特に光のあたった時の艶や奥行き感)ことがほとんどです。ある程度の大きさになると、肌の色との相性や、光にあたった時の光沢感、ドレープなどがイメージしやすいです。
ユニバーサルランゲージメジャーズ(ULM)のような「実際にその生地で作った既成も販売」がされていると、その生地に限ってではありますが出来上がり状態がわかります。色の基準もわかるので、パンチブックでより暗い(濃い)、より明るいで多少の感覚がつかめることもあります。ネイビー系は結構色が難しいので、ゼルビーノのような大きなサイズで確認できるのは大きなメリットです。
生地の艶感やドレープの出方なども比較しながら生地をどれにするかを選べます。
生地が決まればあとは採寸。おそらくヘキストマスのメジャーを使ってしっかり採寸してくれます。言われるがままに測ってもらうことから始め、サイズ感のこだわりなどがあればその都度相談すればいいと思っています。
スーツを作りに行った日が、たまたま夜に家族と食事なんて日でしたのでスーツではなくカジュアルスタイルで行きましたが、ジャケットのイメージがずれないようにカジュアル用のホワイトシャツとパンツの丈を正確にしたいので革靴を履いていきました。こだわりが大きい人ほど、いま気に入っているサイズのスーツを着ていくといいです。(普段は私もそうしています)
スーツの袖の長さや首周り、肩幅を決めるにはシャツが必須です。
「スーツは肩で着る」とよく言われますが、より正確に言うなら「首回りから肩で着る」でしょうね。だから襟をどう作るかが着心地に大きな影響をするわけで。
首周りのフィットや肩幅、袖丈を正確に詰めていくためには、いま着ているスーツとシャツで行くべきだと強く思います。ジャケットのサイズを決めるためには首周りがしっかりと沿っている前提で適正な肩幅が。肩幅が決まれば後は裄丈となります。それを決めることができるシャツは必須です。
ちなみに私のカジュアル用のシャツはビジネス用途に比べて裄丈が少し短くなっています。これは座って腕を曲げてもカフスが動かないようにする必要が少なく、むしろシャツ単体で腕をおろしている状態でもきれいに見えることを重視した長さになっています。なのでジャケットのサイズを決めるときに腕を下げた状態であれば問題ありません。カジュアル用とはいえオーダーで左右の腕の長さの違いを補正しているのと、ネックサイズも必要以上に大きくならないサイズにしているため、立ち姿であればビジネス用途と実質的には同じになります。
このようなカジュアルシャツがない場合は、いちばんしっくりくるシャツを着たうえで採寸してもらうのが必須です。シャツとの関係性なくしてジャケットは作れないです。
パンツのデザインは少しゆったりとしたワンタックに、裾幅は気持ち大きめにしてハーフクッションのダブルをチョイスしています。ウエスト測ってから持ってきてくれたサイズが思いのほか大きかったのは驚きでしたが、まぁ、ぴったりとしていたので自分のウエストサイズを改めて確認した次第です。
クッションについてはお店の人もパンツ丈が短めで、仕上がりも短めになる傾向が見られます。私はビジネスシーンにおいては立ち姿で靴下が見えるのは格好悪いと思ってしまうことからハーフクッション、ないしはワンクッションのほうがあっていると考えています。今回もハーフクッションでお願いしています。
余談ですが、ほぼすべてのパターンオーダーのお店で「絶対に靴下見せたくない」としてハーフからワンクッションくらいの長さになるよう合わせてもらうのですが、初回仕上がりはノークッションから微妙クッション(ハーフもなくクッションするかしないか)くらいに仕上がってきます。私の採寸時の感覚がおかしいのか、いつも謎です。
ビジネス、しかもお堅いビジネス向けであればお店の人のような靴下丸見えの長さは適切とは思えません。最低でもハーフクッションくらいは入れるべきと考えています。
年配の方でビジネスの成功者を見ているとシングルかつ少し長めのワンクッションあたりが多いです。これらの人とそれなりの額をディールする仕事をするのであれば、やはり短すぎる丈はプラスになることがないでしょう。
結構お堅いスーツ屋さんのがエグゼクティブ向けに解説している内容を見ると、「相手のためのスーツ」「職場の品位を守る立場としてのスーツ」という記載が多いので、色やサイジング、素材やデザインはやはりメインにターゲットとする層に受け入れられる選択をすべきでしょう。
逆に、もし若手経営者中心でスーツを伝統にとらわれない攻めた着方をするのであれば、それはまたそれにあったスタイルがあります。(ゼルビーノはややこっち寄りな気がする)
ジャケットは肩幅とパット、袖丈や胸板周りを調整できます。私は右肩が少し下がっているようなので、右側に少し厚めのパッドを入れて正面から見たときのバランスを整える補正が入りました。それと合わせて右腕が気持ち長いので、右腕側を長めにしています。シャツでも右側を長めにしているのでこの補正は大正解です。
パターンオーダーに分類されるULMでもジャケットのウエストや肩幅の補正が多少できます。基本となるゲージが体系別に細かく分かれているので、実質的には細かな補正ができます。補正自体の項目数のみでイージーオーダーとパターンオーダーを区別するのはフェアではありません。イージーオーダー(というかフルオーダー)を掲げる某スーツ屋さんは、仕上がりの写真を見る限り肩補正は入っていないようですから、画一的なくくりではなく実質的にどういうアプローチで歪んだ人間をきれいに見せるか、に尽きます。
体に合わせるというサイズの側面と、美しく見せるという両面からアプローチでしっかり対応できるところにゼルビーノの大きな優位性があります。
基本は総裏がおすすめされています。私は盛夏での着用も想定してあえて背抜きにしています。
たいていは1着目にトライするときは春夏向けから入ることが多く、あまり総裏にこだわっていません。スーツのジャケットは総裏というのがベーシック(というかこれ一択感も強い)で、確かに耐久性や皺の入りにくさではそんな気がしていますが、春夏あたりは軽さと通気性を重視して背抜きにすることが増えています。
本切羽や台場にはあまり興味がないので今回は追加オプション無し。裏地も標準で選べるものから選択しています。ワイン系のカラーも惹かれましたが、ビジネス中心春夏重視ということもあり涼しげな色にしました。ゼルビーノではキュプラが標準なのがありがたい。
腕の長さは既成でも調整を入れるか入れないかで大きく見た目が変わる部分です。私は一般的なパターンオーダーの場合ではジャケットの袖丈は左右に1cmほど差をつけます。
シャツは右腕側を0.5~1cm長めに作製しているため、既成で補正していないスーツだと右腕のほうがシャツが出ている量が増えてしまいます。なので、既成でもほとんどの場合は補正を入れます。左右が完全に対象であるからこそ美しいようにデザインされているスーツですから、最低でも袖丈は補正すべきです。
既製品は袖の補正あってなんぼなのに、既製品なのに本切羽とかいうスーツは何がしたいのかわかりません。スーツをのことをよく知らない人が企画しているとこういうプロダクトアウトなスーツができてしまうのでしょうか。ディスプレに飾るだけの用途であればいいのでしょうが、購入する側にとってのメリットがあまりありません。
スーツのメリットは、自然の産物であるが故の人間に生じているゆがみを打ち消し、左右対称の美しい状態にすることなので、体に合った補正してこその価値があります。ゼルビーノの細かな修正はスーツの本来の役目をしっかりと実現するための手段で、仕上がり後に着てみるとなぜその補正が必要だったのかがよくわかります。
ジャケットはゴージラインが少し下がっている大き目な襟を持っています。ハイゴージでおなか一杯になりつつあるせいなのかこれはこれで新鮮ではあります。ULMでもFirenzeモデルというゴージラインが思いっきり下がったモデルが出てきました。振り返れば戦後高度成長期までの日本のスーツもこんな感じだったようです。私はゴージラインが高め広めなほうが見慣れているせいか格好良く思ってしまうタイプなので、ここが唯一気になる点でしょうか。
パターンは日本人の特徴に合わせた前肩仕様です。今回のCustom Lineではラインが直線的ですね。
ブランドの方向性なのか、特に指定をしない場合は気持ち短めな丈で作られるようです。初回は推奨に合わせましたが、比較的伝統的に作るジャケットに比べると着丈が1cmほど短くなっています。(誤差かも)
出来あがりはさすがで、体系的に弱いところが補正されていて着心地が良いです。パンツのウエストはベルトレスでもきつすぎず緩すぎず。ジャケットは首周りに無駄な皺が出ることがなく、肩からウエストにかけても自然です。腕もきちんと前振りされていてこちらも横じわがほとんど出ません。
ハンガーにかけているときはなんだか変だが、着るとフィットするということが鈍感な私でも何となくわかります。持つと重いのですが、着るとそこまでに感じないのは一枚襟のなす技なのか。
パンツは最近のトレンドであるタック入り。ワンタックなところがツボです。フロントホックなどなんとなく安っぽさを感じるところがなくもないですが、総じて着心地が良いスーツを6万円台で手に入れることができるので満足感は最高レベルに高いです。
オーダースーツ界では1着2万円台のスーツも十分に良いものが出ているようですが、革靴の4万円ラインと同じように、スーツには6万円あたりに一つの境目があるような感じです。
こうなってくると、既成の10万円近いスーツの立ち位置が微妙です。生地タグ付けて「スーツの形をした生地」を売るようなビジネスも多い中で、「スーツを作るビジネス」に生地をつけているゼルビーノのビジネスモデルは実直に思えます。
どんな提灯記事を入れようと、やっぱり真面目にいいものを作っているところほど多くの人が支持しているのは間違いありません。オーダースーツ屋さんなんて訪れるお客様もマニアが結構いるでしょうからそうした人たちの高度なニーズに対して様々な価値を提供してこそビジネスが持続可能ですからね。
オーダーは2着目からが本番的なところもあります。次はもう少しこだわりを入れて作ってみたくなる、そんな1着目でした。
0 件のコメント:
コメントを投稿