4月になりました。
新社会人のみなさん、おめでとうございます。
足早に歩く若い人たちをみていると本当にほほえましく、元気をもらいます。
そんなみなさんが活躍していき、日本にもっともっと活気が出てくることに想いをはせながら今日は私の好きなジャンルである「社会人の革靴」について書いてみたいと思います。
みなさんに最初に与えられる仕事は小さなものかもしれませんが、実はそれ、大きな仕事の大切なピースだったりします。どんな大きな仕事も分解していくと、それに携わる人の小さな仕事の集合体です。
楽しい日もあり、苦しい日もあるかもしれません。真冬の風の冷たさを知っているからこそ一杯のコーヒーが心までを温めてくれることに気づき、真夏のアスファルトの照り返しのなか足早に歩くからこそ、一杯の水の真の美味しさを知ることができます。社会の厳しさはまたみなさんを大きくさせてくれるはずです。
涙が出るくらいの震える感動の前には、泣きたくなるほどの不安や恥ずかしさで逃げ出したくなったり、感情を抑えられず怒りですべてを投げ出してしまいたくなるようなときがあったりします。格好いいと思うような先輩方はみんな、そうした壁や山を越えて経験を積んできた方ばかりです。
御手洗冨士夫さんが「私の履歴書」でこう書かれていました。
「人生は楽ではない。しかし、楽しい。」
人生のシナリオをどう展開するかはみなさん次第。ただ、主人公であるみなさんの周りにいるキャストは想いどおりに動いてくれないので、あらかじめの脚本通りにいくことばかりでもありません。
仕事の楽しさがわかるまでには少し時間がかかるかもしれません。
自転車や逆上がりができたように、それには少しの慣れとコツが必要です。
革靴もそうかもしれません。
買ったばかりの靴は違和感が多くて、場合によっては痛いこともあります。
お店でフィッティングをして買ったものであれば、完全に合わないということはほぼありません。
むしろ最初に痛くないような靴は、逆にそのうち痛い靴になっていくことが多いです。
ちょっとばかりの我慢と、きちんとしたお手入れをすることで完成される履き心地があります。買ったばかりは作り手にとっては完成形でも、あなたにとっては半完成品、履き続けて足に合って初めてあなたにとっての完成品です。
Covid-19が世界的に流行してからは、ビジネスの現場ではリモートワーク化取り入れられ、革靴の出番も減っているようです。
私自身も、その前年までは北は北海道から南は九州までお客様のところにお伺いする機会があたりまえだったのに、2019年以降はほぼすべてがWebミーティングに置き換わりました。
2023年に入ってからは少し雪解け感が出てきましたが、それでもまだまだ外出や訪問の頻度は戻っていません。
一昔前には「スーツは最低2着、靴は最低3足」みたいな数値目標(?)がありました。これがリモートワーク前提である今日、革靴が3足必要かといわれると難しい。新入社員となるみなさんにとって、どんなビジネスアイテムにどれだけ投資(つまるところ「買う」か)するかは、これまでの常識でよいのかどうか、ちょっと悩ましいですね。
一般的にはスーツは堅苦しいものとか、時代遅れ、古臭い考えといったある意味「そちら側の固定概念」で語られることが多いです。
東証プライム企業のホームページを見てみると、多くの企業において代表者の写真はスーツ姿が多いことに気づきます。
これを「だから日本は凋落するのだ」という一言で片づけるのは簡単です。
ただ、いまだに世界から経営の神様扱いされる尊敬を集める日本人経営者の多くがスーツを着用しているという事実もあります。
ファイザー、フォードやGMといった米国の製造業の経営者もタイ着用の写真です。
歴史ある企業は会社の文化やブランド、信頼・信用を大切にするがゆえに、伝統的なスタイルを好み、新興企業は既存のルールを打ち破るイノベーションが源泉であるがゆえに、ルールに基づく過去のスタイルを批判します。
自分が働いている環境、職場内やお客様がどういったポジションを取っているかによって、必要とされるスタイルが変わってきます。
画一的にスーツスタイルが古いという固定観念に縛られず、やっぱりスーツスタイルだよね、という職場があるということも頭の片隅に入れておくのもありだと思っています。
スーツの持つ戦略性を見出して成功することもあります。本来であれば作業的な要素が多い靴磨きの世界でも、スーツスタイルで磨くということでイノベーションが起きました。理容業や花屋さんでもこうした動きがみられます。
動きやすいとか、楽であるということが最優先でなくてもいいんです。スーツしか出せない魅力と威力によって、その仕事のポジションを丸ごと変えてしまっています。
そんな力のあるスーツですから、毛嫌いせずにビジネスに上手に取り入れたいものです。
お堅い会社を相手にする企業に入社された方にとってはスーツスタイルの基本を知っておくことは大きなプラスにならないとしても、マイナスをつけない技術です。
私は比較的スーツを着ることが多い職業に従事しています。
スーツスタイルのときはタイ(ネクタイ)着用です。
会社としてはオフィスカジュアルOKの職場ではありますが、企業の経営者を含む役職者や管理部門の人、堅めの会社さんの営業さんや外資系の一流コンサルタントなど、スーツを戦略的に来ている人と会うこともそれなりにある環境です。
そんな環境にいる私が「社会人の『道具』としての靴」として考えるものはかなり保守寄りです。
・日本国内ならどんな堅い職場でも問題にならない(通用する)
・はずす方向があるとすれば「堅すぎ」
・天気(特に雨天)を必要以上に気にしない
・急な冠婚葬祭でも対応可能
・いま撮られた写真を10年後に見ても恥ずかしくない
・お手入れなどができれば比較的長く使える
といった視点で靴を選んでいます。
ただ、次のようなケースについては私の知識が少なすぎて、書いていることが的外れであることも多いことに気づいています。
・北海道のように雪が何か月も残る地域での常識
・あぜ道やぬかるみを歩いたり、自転車移動の多い職業(地方のリテール金融系営業など)
・職業柄脱ぎ履き頻度が高い職業(不動産の内見担当など)
スーツを着ているが靴に対する要求事項がちょっと違うケースなんて言うのはたくさんありそうで、ひとつの理屈を当てはめるのは難しい。
そんな前提はあるものの、この令和の時代に、お堅い会社にいるおっさんである私が、お堅い会社で働くか、またはお客様(クライアント)にお堅い会社があって好きであるかどうかにかかわらずスーツを着なければならない若者のみなさんに、知りうる情報から「これがありなんじゃないかな」をまとめてみました。
なるべく知識が個人の好みだけに偏らないように世の中のインテリジェンスが高そうな、かつ世界や歴史に詳しそうな人が書いてある本やサイトも参考にしました。それでも好みは入っていますが、10年前くらいからあまり変わっていない考えを中心に、10年後もおそらくは変なことになっていないだろうなということを前提にしています。
まず... どんな格好?
私が想定しているのはスーツスタイルです。
場合によってはクールビスなどでアンタイド(ノーネクタイ)になる場合も含めます。
ネクタイがあるときとない時では厳密には靴も変えるのが良いのでしょうが、そんなにたくさん靴をわけない前提です。
ジャケパンではなく、あくまでもスーツスタイルに合わせています。ジャケパンまで入れると結構チョイスが幅広くなるので、まずはスーツスタイルに合わせて条件を狭めて型を作ります。
どんな仕事?
スーツを着ていて、それなりにアスファルトの上を歩くことを前提にしています。
対面も含む営業であったり、コンサルや企画などとにかく相手に「自分に会いに来る人はスーツを着ている」と思われている職種を基準にしています。
勤務地は東京もしくは首都圏の状況をベースにしています。というのも僕は北海道や北陸のの雪の条件や、沖縄の台風をはじめとした夏の気候、関西圏の文化等知らないことばかりです。
北関東あたりでは夏の晴れた日の夕方は必ず雷雨になったりと、シーズン中はほぼ毎日雨が降る場所もあります。そうした地域地域の事情が必ずあり、私の知る狭い社会の常識では気づきすらできないことがたくさんあると思っています。雨については多少わかるものの雪については実用の想像ができていないので、雪の多い地域の人にとってはサマーシーズンよりになってしまっています。
今回選んだ靴の中には都内もしくはその近郊にしか店舗がないものがあります。その場合でもオーダー会などで全国で入手できるケースもあります。機会があればぜひ足を運んで試し履きしてもらいたいと思っています。オーダーサンプルを使ってしっかりフィッティングすれば、通販で同じ形の色違いや素材違いを選べるようになります。
オーダー会で買わないと悪いかなと気をすることはありません。全国でオーダー会をやるブランドでは、まずすべての店頭に置けないことを補うことも大切で、将来的に通販で買うことも検討しているからサイズを確かめたいという話を誠実にして、靴に興味がわかることがあればきっと相手も一緒になってフィッティングしてくれるはずです。そのためには、必要以上に時間をかけることがないように、自分がフィットしている靴を履いていくなどして、少ない時間でゴールを見つけられる工夫と配慮も必要かなと思います。
シーンは?
靴の選択においてはスーツスタイルでのビジネスシーンを想定しています。
よくミニマリストを標榜する人たちがオンオフ兼用ということを盛んに重視していますが、ワークライフバランスを靴にも適用してはどうでしょうか。仕事とプライベートは一緒がいいんでしょうか。
仕事には仕事に適した格好があるし、オフはオフでサマになるスタイルもあります。
ここで考えているのはスーツスタイルですので、オフでスーツを着る人以外はオンとオフで服装で狙うところは違います。ものによってはたまたまオフで使えるものもありますが、それは結果としてそうなのであって、考えているときはあくまでもオンタイムだけです。
予算は?
1足2万円から5万円にします。
なかなかの大金ではありますが、それ以下となるとこれまた私の得意とする部分でなくなってしまうので候補が良くわかりません。
1万円のゾーンでもいい靴がたくさんあるといわれているので、きっといろいろなホームページなどを見たりGPTあたりに聞けば何か出てくるのでしょうけれど、自分が良くわからないものを聞きかじりで書いてしまうのも気が引けるので、自分の経験と納得できる情報のものを扱います。
最低限のお手入れをすれば、という前置きをすれば、それほど神経質にならなくても数年持ちますからスーツと比べても決して高い投資ではありません。
で、道具として靴のリスト
1. リーガル01DRCD
最初の一足は革靴のド定番ともいえるキャップトウ(ストレートチップ)
まいど同じな展開ですが、最初の一足グループに入れたいなと思います。
お手入れに多少気を使ったり、レザーソールということもあり、お手入れの習慣が無い段階でこれを薦めるのかという意見はあると思います。
それでもなおこれを最初にあげるには、革靴への誤解を生まないファーストチョイスとしてこれが一つの基準であると思うからです。
全国いろいろなところで試し履きできてサイズの大幅なミスをしなくて済む。ラストもそれほど攻めていないので足のダメージが少な目。お手入れの仕方も学べる靴と、革靴とは何か、を体験するための靴であるともいえます。
最初にきちんとした革靴を履いてみると、靴に対する印象も変わります。
別にこの靴を履きまわせばよいとは思いません。ここ一発の靴にしてもいいですし、こういう靴が一つワードローブにあると便利です。
キャップトウはそれこそすべての革靴ブランドで用意がありますが、最初の一足に大切なことはフィッティング。
革靴のサイズはスニーカーのサイズとは数字の取り方が違うので慣れるまでは店舗で店員さんのアドバイスを聞きながら選択する必要があります。その際にはサイズの数字にとらわれず、とにかく数字を無視して選びます。店舗のいいところはとっかえひっかえサイズを試すことができることにあります。
01DRCDは全国のリーガルシューズや百貨店、靴屋さん等で販売されているので比較的入手がしやすいです。ぜひ最初の一足は価格だけにこだわらず店頭でしっかり試し履きをして、お店で購入していろいろなアドバイスを受けることを強くお勧めします。
2. ショーンハイトSH111-1D
購入できるところが限定されるのが痛いところではありますが、これだけの作りがこの価格で購入できる点で候補に入れています。
同一木型、同一デザインでレザーソールとラバーソールのモデルがあります。
個人的にはこの価格差ならレザーソールがいいなと思いますが、ここではラバーソールをお勧めします。
ラバーソールは少しの雨や路面がぬれている程度であれば水が侵入してくることがほとんどありません。お手入れもソールに関してはそれほど気にすることもなく、しかもソールがほとんど減りません。
ラバーソールのキャップトウで、日本製のしっかりした作りでここまでの価格はショーンハイトくらいです。
3. ショーンハイトSH111-4D
同じくショーンハイト。
ビジネスシーンから冠婚葬祭まで広くカバーできるプレーントウ。外羽根によるサイズ調整のしやすさがあるので、ハーフサイズくらいであれば大き目なものを買ってしまってもそれほど違和感なく履けるはず。こちらもラバーソールでよいと思います。
キャップトウのSH111-1Dより細い足でもはまります。長さに対して周囲が少なめ(Eとか)の人はこちらを買うのがいいかもしれません。キャップトウを先に買っていれば、同じサイズでいけます。
4. リーガル2504NA
全天候型万能プレーヤーです。
たいていの革靴は雨にぬれてもお手入れをすればそれなりに戻るとはいうものの、最初のうちはお手入れも習慣化していませんので、できる限りメンテナンスが楽な靴を用意しておくとよいです。
2504NAに使われているガラスレザーはお手入れ不要の素材というわけでは決してないのですが、実用上お手入れにかかる時間が少なくてもコンディションを維持できるというのも事実ですので候補に入れています。
私の履き方のせいなのか、ウェルトが傷みやすい靴である気がしていますが、修理もできますし、なんならまた同じデザインを買うこともできます。
この靴だけはカジュアルにも合いそうです。
ここに挙げた4足の靴はどれを選んでも社会人の靴として間違いがありません。
取引先との会食で、靴を脱いでこれが出てきたら感動してしまうレベルです。
おそらく社会人の多くは、靴のお手入れにそれほど時間をかけられません。
サイズもうまく選べなかったりすることを考えると、いきなり1足10万円レベルではなく、グッドイヤーウェルト製法でのベーシックな靴を履くのがいいと思っています。
ショーンハイトは購入場所が限られますので、展示会等があればサイズだけでも試しておいたほうが良いです。サイズがわかれば後日通販で好みのモデルを買うことができます。
この辺りは根拠のない靴好きの考えですが、きれいな靴を履いてマイナスになることはないです。私の知る限り若くして一流の仕事をしていたり、ある程度の年齢になってそれなりの資産を形成している人はみんな靴が高価かどうかは別として、きれいです。
靴にまで気が回るから成功したのか、それとも成功したから高い靴をメンテナンスできるのかはわかりませんが、少なくともビジネスというものがある意味プロとプロが切磋琢磨する真剣勝負の場と考えるのであれば、身なりが持つ道具としての重要度は無視できないのではないかと思っています。それがスーツスタイルの職場であればスーツであり、靴であり、鞄やベルトなのではないかと。
身なりに意識が向き始めると仕事のクオリティも上がる気がします。
身なりを気にするということは他社の目を通して自分を見ることにもつながりますから、コミュニケーション上は結構大切だったりします。
見た目より中身が大切だということはだれでも知っているけれど、だからと言って見た目をおろそかにしていいというわけでもない。つまるところ、仕事ができる人はマーケットインの視点があって、世の中で成功するために必要な手段の一つとして身なりをしっかりしているのだと気づきます。
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ある記事で「初任給は親へのプレゼントより、まずは『靴』」といったことが書かれていました。
ものすごい違和感とちょっとした嫌悪感を感じてしまいました。
「親に金使え!」ではなくって、靴は欲しいなら買ったらいいんです。初任給でどうしても買いたかった靴を買ったなら、残りの500円でボールペンと便箋をかって手紙でもいい。自分が使うための靴は道具であり、親へのプレゼントはモノそのものよりも感謝の気持ちだから、比べるものではないから。
息子が初任給をもらったときに、そんな感じで自己投資と周囲への感謝の両方ができたら嬉しい。プレゼントは金額の多寡なんて関係ない。親としてはその気持ちが最高に嬉しい。
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