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2021年4月1日木曜日

靴クリームの比較 - Boot Black と Boot Black Silver Line その後 -

もうずっと前になってしまうのだけれど、W134でずっとやっていた Boot Black(ブートブラック)と Boot Black Silver Line(シルバーライン)の比較。

大きな違いはないような気がする。


この靴自体はそれほど登板機会がないので、クリームをしっかり入れて磨くのは年に数回程度、なので、始めてからいままで合計しても十数回程度しかクリームでお手入れしていない状態。

当初、シルバーラインのほうが青みが強いブラックだとわかったものの、別に靴が青くなるわけでもなくいまに至る。(当然)

結論としては素人には見た目レベルではよくわからないというところだった。

シルバーラインの左足。
ブートブラック(黒蓋)の右足。

区別つきません。


細かく見るとシルバーラインのほうが気持ち光が鋭く、ブートブラックのほうが表面のテクスチャー感を残す仕上がりな気はする。これはクリーム自体の成分的なものよりも、もともとの硬さによるところが大きいと思う。硬い分ワックス効果が大きくなるみたいな。ていねいにブラッシングとからぶきしてしまうとその差は誤差という程度になる。

ブートブラックの黒蓋は固形のワックス掛けまでやるような向きもターゲットなので、柔らかめのクリームはどちらかというとじっとりと浸透させる方向で、まずは浸透するようなじっとりとした仕上がりにして、ぱっきーんな光り方はワックスに任せるという意図かな。

逆にシルバーラインはこれ一本のオールインワンを狙って、クリームだけでもなかなか光っている感覚が得られるような作りのため、少し硬めに作り上げているのではないかと思われる。

素材自体はブートブラックのほうが高価なものを使っているようだけれど、実用上はシルバーラインでも全く問題がないので、単に仕上がりの好みで選んでもよいという程度かもしれない。

細かいこと言えば靴のお手入れが趣味みたいな人はブートブラックのほうが楽しめるだろうし、どちらかというとお手入れにそれほど時間をかけない人にはシルバーラインのほうが向いている。このあたり、やっぱりもともとの製品コンセプトどおりで、靴のお手入れをこれから始めるような人にとってはシルバーラインのほうが無駄に塗りすぎることもなさそうだし、容易にいい感じの仕上がりが得られるはず。


同一メーカーが同じような目的のために作っている製品なので、基材についてはある程度共有しているところもあるだろうし、一定の品質基準なんてのもあるだろうから、短期的な見た目や使い勝手は変わってくるものの、長期的な保革効果にはそう差がないのかもしれない。

Boot Black に関して言えば、素人がちょっと靴お手入れしています程度の頻度や量ではほとんど効果に差がない。もしかするとワックスをしっかり塗って仕上げると、そのベースとしての感覚は大幅に異なるのかもしれないけれど、ふだんはクリームオンリーなんていう場合はどちらを使っても困ることがない。

もし僕がおすすめをするような立場であるとすれば、どんな靴クリームが良いかを聞いてくるような人にはシルバーラインを薦めるくらい。黒蓋買うような人はわざわざそんな質問してくることないので。

逆に、お手入れが趣味の人が試してみるなら黒蓋のほうがいい。仕上がりの足りない部分は自分で補える人にとっては、多少顔料多めのクリームは靴の表情をはっきりさせやすくほかのアイテムと相性が良い。


長期でやってきたクリーム比較は同一メーカーだとあまり面白い結果にならなかった。
この先も大きく変化するとも思えないし、これからはアーティストパレットでお手入れしよう。


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2016年2月7日日曜日

靴クリームの比較 - Boot Black と M. Mowbray -

ブートブラックとブートブラックシルバーラインの比較に次いで、同時並行第二弾を始めてみました。

靴のお手入れ方法なんてもう百年以上も変わることは無いのだろうけれど、情報の発信者が、より広く多くの情報を容易に届けることができるようになった今の時代では、より多くの情報を付加した新商品を開発していかないと競争力が落ちてしてしまうのだから販売者も大変だと思う。

もちろん、科学技術が発達することで今までよりもより良い商品が開発されることもあるだろうし、高付加価値商品を開発することはビジネスとして正当な行為なので、市場が活性化することはいいことだと思う。一方で新商品については売り手と買い手の情報格差があるため、新しい商品の真のメリットはわかりにくい。なんとなくプレミアム感を与えて、かつあまり意識しないで買うことができる数千円という価格設定は絶妙である。

また、あまりにも商品が増えてきて、お手入れに興味が無い人に取っては余計に面倒さが強調され、何をやれば良いのかかえってわかりづらくなっているのもあると思う。

僕は新しいものが出ると使いたくなるミーハーなので、こういう新商品が出てくるとついつい欲しくなってしまう。けれど、新しいクリームを買っても、それを使い続ける靴が無ければ結局は使い道がないし、いまでも数年はクリーム買わなくても大丈夫なくらいあったりもする。
よく言われる「米粒数粒」しかクリームを使わなければ、毎月お手入れしても一足あたり年間で米粒100粒分も減らないわけで、ひと瓶使いきるのはなかなか大変。

そんなあまたに出てくる靴お手入れグッズの中で、定番としてこれから先も残ってほしいなぁと思うものがある。

「M. Mowbray シュークリームジャー」と「Boot Black シュークリーム」

M. Mowbray(以下「モゥブレイ」)はかつての英国王室ご用達であった旧メルトニアンの流れをくみ「欧州の靴クリーム作りの伝統と品質、こだわりを現代に受け継いで」いる定番クリーム。日本のR&D社が旧メルトニアンのレシピを求めて再現させたクリームということで、古くからの靴好き(特に英国靴好き)に人気がある。
永い間使われ続けているということは、それだけ多くの靴に使われ、その経年変化による影響の実績が証明されているわけで、雨後の筍のように出てきた新商品よりはずっと安心感がある。

Boot Black (以下「ブートブラック」)は日本のコロンブスが(恵比寿のリファーレの協力を得て)「その知識と開発力を集結して作り上げた」渾身のクリーム。日本では大量に使われる仕上げ材や長年にわたる製造販売の経験が投入された新商品。職人の知識や技術の蓄積をきっちり均一な製品に仕上げてくるところが日本の製品っぽい。極寒の地でも固まらないとかテレビでやっていた。この製品発売以降、百貨店におけるコロンブスの扱いが変わっている気がする。

どちらも百貨店やネットで購入でき、また国内革靴ブランドでもお手入れ用品として推奨されている。(モゥブレイは山陽山長やRENDOなど、ブートブラックはスコッチグレイン)

「おまえはいつもクレム1925を使っているだろうが!」
という声が聞こえてきそうですが、これはもう独自のポジションを確立しているので100年後も相変わらず存在していると思います、ハイ。


今回は、そんなふたつのクリームを比べてみようかと。

All About の飯野さんの記事によれば、モゥブレイは「やや青み、緑みがかかったダークグレイ」、ブートブラックは「モゥブレイよりは青みの少ないニュートラルかつしっかりとしたダークグレイ」とのこと。実用品としての靴に対するお手入れは「細けぇことはどうでもいいんだよ!」という話もあるけれど、お手入れ好きとしてはこういう違いを見るのが面白かったりするわけです。

ところで、よく雑誌などでは「養分が~」とか「施術が~」とか書かれているけれど、皮革製品になった時点で生き物ではないのでこの比喩にはやや違和感を感じる。(この辺は感覚の問題だけれど、特に施術って言葉はなぜか見ている方が恥ずかしくなってしまう)

なんとなく革(レザー)を人間の肌(スキン)と混同させることで、天然素材・成分が良くて、化学合成されたものが良くないものという印象を与え、高いものを売る理由を作っている気がする。
以前、ある化粧品メーカーの人が言っていたけれど、合成のシャンプーと天然素材のシャンプーで、化学式レベルまで見ていくとそれほど差がないものを作ることはできるし、合成はきちんとその効果と安全性を確かめている。天然素材は科学的に解っていない効用もあるだろうから否定はしないが、盲目的に天然素材というだけでよいと思ってしまう人が多いのは技術者としては残念であると。

そもそも皮が革になる過程を考えれば、顔に塗っても問題ないクリームである必要性がないことはなんとなく想像できる。むしろ革(レザー)肌(スキン)を混同することで、本当に革に必要なモノを与えることができなくなっている可能性だってある。
永い間使われているレシピよりもこれまで靴クリームを手がけていなかったメーカーが「人間のスキンケアに使われている天然素材」を作って作ったクリームが本当に良いのか。靴磨き屋さんが素手で塗りこんでも皮膚に優しいという理由はあるだろうけれど、そもそも僕のような素人には優位点がよくわからない。

給油、給水、補色のバランスと、履かれた状況(暑い寒いや雨に降られたなど)、汚れの除去、保管の状況(風通し、光、温度、湿度)の相互作用が経年変化ではないかと思うし、であればある定点での特定の項目で優劣を論じるよりも、長期戦の比較結果があったら面白いのになと思う。

そこで、まず自分でやってみようということで、最近購入した靴で試してみることに。個人の興味ベースなので一般消費者が気づく程度の目線で。(違いが判るプロがやったら相当面白いだろうなと思いつつ...)

今回使った靴。
ショーンハイトSH111-4(レザーソールモデル)
素材は国産のキップ。購入時点ではあまりクリームが入っていないと思うのでちょうどいいかなと。
靴を買って、初めてクリームを塗る段階から分けてみた。

左足はモゥブレイ
・M.モゥブレイ デリケートクリーム
・M.モゥブレイ シュークリームジャー(ブラック)
・M.モゥブレイ ソールモイスチャライザー
を使う。

右足はブートブラック
・ブートブラック デリケートクリーム
・ブートブラック シュークリーム(ブラック)
・ブートブラック レザーソールコンディショナー
を使った。

デリケートクリームは新品の状態の時に使ってみた程度でふだんは乳化性クリームのみ。またソールはそれぞれのコンディショナーを使って体感的に違いが出るのかを。
ちなみに僕は鈍感なので細かい違いは判らないと思うけれど、それでも気が付くほどの違いがあればやっぱりそれはクリームの特徴なのだろう。


ここからはいつもの購入時のお手入れに近い感じでスタート。
ショーンハイトのこのモデルは仕上げにワックス等は使われていないようなので、タオルにもあまり色が移らない。比べる前提としてはちょうどいい感じ。

まずはデリケートクリームを軽く塗る。
M.モゥブレイのデリケートクリームは独特の香りがする。しばらく使っていなかったけれどなんとなく懐かしい香り。水分が多いこともあり、塗っている途中では表面が濡れるような感じになる。ワンテンポ遅れて浸透していく感じ。
一方のブートブラックは昔のチューブ糊みたいな感じでプルプルとした感じであまり香りはない。比べてみてわかったのだけれど、ブートブラックのデリケートクリームは驚くほど浸透性が高い。塗っている傍から浸透していくので最初は布にクリームがついていないのではないかと一瞬思ったほど。またどこまで塗ったのか判りにくい。でもこれすごいな。


そのあと、左足はモゥブレイ、右足はブートブラックのクリームを入れる。ここでもブートブラックは明らかに浸透が早い。いくらでも入りそうな錯覚を受けるけど、実際に同じくらいの量を使うと、最後に表面に残る皮膜はモゥブレイと同じような感じ。

ちなみに、新品の靴だとクリームがよく入る。今回は薄塗りを繰り返し、いったん革がおなか一杯になるくらいまでクリームを塗っている。塗りすぎの是非はあるにしても、履き始めは多めでも良いのではないかという気分的な問題。ウェルト部分には小さなブラシで少し多めに塗りこんでおく。

クリームの後は豚毛のブラシを軽くかける。ブラシは今回それぞれのクリーム用に2つのブラシを新調した。

最後にソールにそれぞれのコンディショナーを塗る。
新品なのでソールに処理がされていることもありあまりクリームが入らない。一度クロスにとってから強めに塗りつける。
モゥブレイはラノリン主体のクリーム。濃い目のデリケートクリームみたいな。歯磨き粉のジェルのような形状保持するクリーム。勢い余って出過ぎることが多い。一方のブートブラックはオイルに加えて防カビ剤配合など日本の靴箱の状況を踏まえているのかなと思わせるトロッとした乳液。
塗った感じはモゥブレイのソールモイスチャライザーはステインの色を結構落とす。

モウブレイを塗った直後。全体的にステインが落ちる。

ブートブラックもやや落ちるが、モゥブレイ程でもない。

翌日もう一度軽くブラシをかけてから仕上げにクリームをていねいに塗りこむ。
クリームが良く入る部分には気持ち多めに、入らないところはごく薄くと調整しながら全体に塗りこむ。
クリームを塗り終えたら、片足3分くらいのブラッシング。

最後にクロスで片足1分くらい気持ち強めに磨く(1分と書くと短いようだけれど、仕上げと思うと結構な時間)。

ブラシはとりあえずコロンブスのジャーマンブラシ、クロスはモゥブレイにした。(ここまでブランドごとにそろえようとは思わかなったため、同じ種類のものを使っている)

ここまでのプレメンテで思うのは、ブートブラックの浸透性の良さ。
とにかく革にどんどん吸い込まれていく感じは独特。瓶に入っている状態ではモゥブレイより水分が少ない感じなのに、塗り始めるとサラッと表面から吸い込まれていく。伸びるというよりさらさら吸い込まれていく感じ。
それが逆にお手入れの感覚値がない人にとってはクリーム入れすぎにもなりかねない。なんか塗れてない気がしてしまうので。(これが「プロ用」の所以?)

概ね5、6回くらい履いてクリームを2度ほど入れた状態ではブートブラックのほうが素人目に見てもわかるほど光る。

写真右(左足)がモゥブレイ、左(右足)がブートブラック。ブートブラックのほうが明らかに艶がある。色も少し濃くなっている。これはクリームを塗った直後ではなくて、ふつうに1日履いてていねいにブラッシング、乾拭きした後の状態。これが革の個体差によるものなのか、クリームの特性によるものなのかはもう少し続けてみないと確定できないにしても、思ったより早くから傾向が違うことに気づく。

サラッとした仕上がりで、元の素材感そのままに近い状態をキープするモゥブレイに対して、

やや湿り気のあるような仕上がりになるブートブラック。

クリームを拭きとったクロスは左がモゥブレイ、右がブートブラック(靴の写真と逆)。
確かにモゥブレイのほうが少し青みがある。ブートブラックはより暖色系に近い黒というところだろうか。

ソールは左(右足)がブートブラック、右(左足)がモゥブレイ。歩き方の癖もあるので削れ具合に差が出るとしても、全体的にはブートブラックのほうがしっかり浸透しているように見える。ただ、僕はどちらかと言うと左足が軸足なので削れが多いだけかもしれない。
履き始めに一度塗って、その後多少削れた段階で追加で塗った結果、体感的にはブートブラックのほうが滑りやすい。

ブートブラックは浸透力が高い気がするので、メンテナンス回数が少ないうちから色に深みが出やすいのかもしれない。またワックスがそれなりに入っていそう。逆にモゥブレイは昔ながらのレシピだから、それほどワックスが無いか、光らせるための役割を過度に期待しない仕上がりになっているのかもしれない。長期で味を出す可能性もあるので、もうしばらく様子を見ていきたいと思う。

また、いまのところ雨に遭遇していないけれど、これから晴れの日雨の日経験することで差が出るかもしれない。今回は長期レポでいこうと思う。


※ブートブラックが「Artist Palette」という油性クリームの新製品を出している。なんか、このパッケージっておもいっきりパクリに見えてしまう。満を持して発表する新製品に対するジャパン・ブランドとしての矜持はどこにあるのかと。これだけデザインのパクリが問題になるご時世に、どう見てもオリジナルとは言いがたいパッケージングはどうかと。しかも本家の瓶形状より高さが低くて口と瓶の幅比が大きいのでクリーム取りづらいのではないのかな。僕はメイド・イン・ジャパン推しだし、コロンブスの技術は信頼しているけれど、これを海外の人に「某フランス製よりも優れている日本の最高級クリームだ!」と紹介するのはちょっと恥ずかしい。


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左足はモゥブレイ。もう定番すぎて何も言うことがありません。今回の比較では艶がおとなしめなのでピカピカ靴が好きな人には向かないかも知れませんが、モゥブレイのもとになった旧メルトニアンは「これ1つですべてOK」という人もいるくらい鉄板です。




右足はブートブラック。日本の技術を集めて作った期待のクリーム。程よく光り、革もしっとりとした感じになるので僕は国産キップ系の靴にはよく使います。




2016年1月18日月曜日

靴クリームの比較 - Boot Black と Boot Black Silver Line 2回目 -

Boot Black(黒蓋)と Boot Black Silver Line の比較をはじめて1ヶ月。
この間登板は3回ほど。
改めてクリームを塗りなおしてみた。

磨いたあとに比べてみると、あまり違いがわからない。
シルバーラインの仕上がり。

ブートブラックの仕上がり。

1ヶ月くらいでは差がでないのか、そもそも差が無いのかはこの時点ではよくわからなかったが、今回敢えて差がでるかなと思ってほんの少しだけつま先にワックスかけてみたら意外な違いがあることに気がついた。(後述)

塗っている感じは結構違いがある。瓶に入っている状態だとクリームそのものはシルバーラインのほうが固めな印象を受けるが、塗っている感じでは意外と水っぽいクリーム。
ブートブラックは塗った直後から革に入り込むような感じがするのに対して、シルバーラインは一度表面に留まってから吸い込まれていくような違いがある。

正直、その後磨いている時もあまり違いを感じなかったので、細かく光を当てたりしないかぎりはその差に気づくことはなさそう。

ただ、意識して見てみると、シルバーラインのほうが角のある光り方をしている。
この光かたの傾向からすると、ブートブラックはスムーズレザー向けでワックス仕上げを前提にしている仕上がり。ハイシャインベース、ハイシャインコートを使うことを前提に、クリームの段階では控えめして、油性クリームの乗りを良くしているような感じ。
一方のシルバーラインはクリーム単体で完結することも想定して、クリームにややワックス成分を多めに入れている可能性がありそう。ガラス仕上げの靴からスムーズレザーまでお手入れの時間をかけずにそこそこきれいにしたいというニーズに合いそう。

また、今回は少しだけ缶入りワックスを入れてみた。
ワックスはプロ向きと言われているブートブラックのほうがあまり時間をかけずに光る。

ワックスを仕上げるために磨いた布を見ると、明確に方向性が違うことが解る。
左がシルバーラインで右がブートブラック。

シルバーラインは結構青みが強いグレー、ブートブラックやや青みを感じるものの黒いという感じ。
また、シルバーラインのほうが布に色が付着しやすい。
僕の技術的な部分があるので、絶対的な差だと断定するのは少し早いかなとも思いつつ、意外と違ったなというのがいまのところの感想。

数日間履いてみたところ、ブートブラックのほうが少し潤いのある感覚が持続する。
ただこれもそれまでの革の状態によるのかもしれない。

1ヶ月で結論を出すのは早いので、もう少し様子を見ていきたいと思う。


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ブートブラックはしっとりとした仕上がり。



あまり時間をかけないでクリームのみでお手入れをするのであればシルバーラインのほうがいいかも。今回はワックスも使ってみました。

2015年12月6日日曜日

Boot Black と Boot Black シルバーラインの違い

最近は靴だけではなくて、靴のお手入れグッズも高級志向にあるみたいで、たくさんの新商品が出てきている。

お手入れが趣味になってくると、どうしても薀蓄が先行(といっても雑誌やネットで得た程度)して、やれこのクリームは、やれこのブラシはとなってきて、ひとつひとつはそう高価なものでもないので、ついつい買ってしまう。

気が付くと、我が家にはクリームだけでも何種類もたまってしまった。

ここしばらくはクレム1925とブートブラックくらいしか使っていないのだけれど、コルドヌリ・アングレーズだとかM.モゥブレイだとかが無駄に下駄箱の一角に置かれている。

ふと思う。

「これらクリームっていったいどんな違いがあるのだろう?」

メーカーや代理店の売り文句に踊らされるのではなく、自らの信じるこれ一本でいく、というのがまっとうな人のスタンスだとは思うけれど、お手入れ好きの僕としてはせっかくなので実際に比べてみようと思うわけです。


比較に使う靴は、先日水洗いしたW134。
きれいさっぱり古いクリームが落ちたところで、これからしばらく片足ずつ違うクリームを塗って、何が違うかを確かめてみたくなった。
(実は新しい靴を買ったら新品状態から比べてみたいふたつがあるのですが、それはまた次の機会に)

今回のターゲットは同じコロンブスがわざわざ別のラインとして販売している黒い蓋のBoot Blackと、銀色の蓋のBoot Black シルバーライン。
このふたつ、わざわざ分けて売る理由がなんかあるのだろうか。

メーカーであるコロンブス社が言うには、Boot Black(以下「ブートブラック」)は満を持して発売した「プロのための」クリーム。
Boot Black Silver Line(以下「シルバーライン」)はブートブラックのコンセプトを受け継ぎつつ、より「一般の人」向けに発売しているクリーム。

前者のほうがよりケア重視で、後者のほうが光りやすいそうだ。

ブートブラックはプロ向けと言いつつ、誰もが訪れる百貨店だったり、靴磨きのプロが立ち寄る感じがあまりしない既製紳士服店で売られていたりする一方で、ケアグッズが豊富でプロが立ち寄りそうな東急ハンズや町の靴屋さんではシルバーラインが売られていたりする。マーケティング的に何か意図があるのでしょうか。


ブートブラックはW10BDJやRendo R7702など、国産キップを使っている靴に使うことが多い。僕は Made in Japan を信じているクチなので、最近はブートブラックでそろえることが多くなってきた。先日スエード靴を買った時もブートブラックのスエードスプレー買ったくらい。


で、クリームをさっそく塗って比べてみることにします。
いまから2年半くらい前にちょっとだけやってみたことがあるのだけれど、今回は長期にわたってやってみようかと。

靴は洗った後、乾燥の過程でこれまたブートブラックのデリケートクリームを軽く入れている。デリケートクリームは左右とも黒蓋のものを使用。ここまでは違い無し。
本当はここから二つのラインの違いを見たら面白いのだろうなぁと思いつつ、そのためだけに買うのもなんなので乾かすまでは同条件。

まずは洗った後中1日置いた状態。ここからスタート。


左足をシルバーラインで、右足をブートブラックで。
まずはいつものように軽くクリームを布にとり全体的にあまり力を入れずに薄く伸ばす。


どちらかというとブートブラックのほうが革に吸収しやすい感じがする。塗っていてもサッと表面から水気がなくなる感じで、気を付けないとついつい塗りすぎてしまいそう。これはブートブラックのほうが水っぽいのでその差かもしれない。o/w型のクリームでw比率が高いのかなぁ。
今回はだいたい同じくらいの量になるようにして塗っている。

クリームを塗ってブラシをかけた状態。
ちなみに、ブラシは黒靴用の新しめのブラシを併用。このためお互いがやや中和されてしまうかな。


以前も思ったけれど、シルバーラインのほうがやや光沢が強い。


左足。シルバーライン。


右足。ブートブラック

光の当たり方やこれまでの歩き癖などもあるので一概には言えないのだけれど、どちらかというとシルバーラインは芯の通った光り方をするのに対して、ブートブラックはやや柔らかな光り方をするような印象を受ける。

いちにち履いてみてブラシがけした感じでは今のところ違いがよくわからない。



まだ初回なのでほどんど差が出ていないのだけれど、3ヶ月、半年、それ以上になると何か変わるのだろうか。
このまましばらく続けてどのように差が出てくるのかやってみよう。




-------- 今回使ったデリケートクリーム


クリームはこちら


記事にはあまり書いていませんが、ソールには今回からブートブラックを使っています。

2015年8月29日土曜日

Saphir Noir

革靴を履いて、磨いてもう20年以上になるけれど、いまの定番クリームはこれ。

サフィールノワールクレム1925。(Saphir Noir Crem 1925)

いろいろな雑誌でも取り上げられて、プレステージの靴クリームとしてはNo.1のポジションを確立しているように感じられる。

僕が最初に革靴を買った頃(20年以上前)に使っていたのは、日本の定番コロンブスのチューブ入りだった。いま思えばかなり厚塗していて、頻度も高く、おまけにクリーナーなんかもつかっていたので、相当靴にとっては厳しい状況だっただろう。
この頃はそれほどインターネット上にも靴のお手入れなんて情報はなかったし、なんかあれこれつけて磨いていると楽しいのでついついやりすぎにやっていた。

時が経って、靴だけでなく、お手入れ用品にもちょっと興味が出てきた頃に出会ったのが、コルドヌリ・アングレーズ(LA CORDONNERIE ANGLAISE)のビーワックスクリーム。

これまでのチューブ入りと違って瓶入り。この瓶は格好よかった。店頭でも「このクリームは伸びるので、ごくごく薄く塗ってください」とアドバイスされた。
さっそく家に帰ってわくわくしながら蓋を開けてみると、いままで僕が知っていた靴クリームと違う独特の香りがして、これまた靴磨きが楽しくなった。
コルドヌリ・アングレーズはコードバン専用のクリームもあって、素材ごとに必要なクリームが違うんだということを初めて知った。
当時は確かコロンブスが代理店で、リーガルブランドでもサフィールが売られていた。

サフィールのクリームはとても甘い香りがして、これまでの有機溶剤っぽいにおいとはまるで違う、靴磨きをしたくなるような香りだった。

さらに時は経ち、代理店がルボウになったころからサフィールノワールブランドが百貨店や通販で簡単に手に入るようになった。
当初の丸瓶から四角い瓶に代わって「量が少なくなった」なんて批判も受けたけれど、結果として高級感を出した差別化に成功したと思う。
靴を磨く頻度と1回に使う量からすれば、業者さんでもない限りなかなか使い切ることはないはず。靴を磨くのが趣味の一つの僕でも数年前に買ったクリームがまだ半分以上残っている。使い切る前に変質が進んでしまいそうなくらい。
シアバター配合で浸透力がアップとかいう薀蓄があるのだけれど、個人的にはそれがどう良い影響を与えているのかわからない。それよりも、なんといってもあの香りが好きだということが使い続けている大きな要因。
同じサフィールでももう一つの定番のビーズワックスクリームは香りが全然違うので、やっぱりクレム1925ということになる。

サフィールノワールシリーズには、マルチパーパスの「スペシャルナッパデリケートクリーム」、靴だけでなく革全般に控えめな光沢を与える「レノベイタークリーム」、靴磨きの定番「クレム1925」などがある。

デリケートクリームといえばM.モゥブレイが定番と言われている。ラノリンベースのモゥブレイとミンクオイル配合のサフィールノワール。後者のほうが水分配合度合いが少ないのか、比べると少し固い。

レノベイタークリームはまさにアニリンカーフクリームと言う感じ。デリケートクリームより水っぽく、クリームと言うか小岩井乳業のプレーンヨーグルトみたいな感じ。

そのせいか、レノベイタークリームは革のダメージ補修力は相当に期待できる。
僕は靴を水洗いした後は、生乾きの状態まではデリケートクリームを軽く入れるのだけれど、一旦乾いたと思った時にレノベイタークリームを気持ち多めに塗る。少しおいてからブラッシングすると恐ろしく革が復活したように光りだす。

もしクリームを1つだけ選ぶなら、レノベイタークリームがまさに万能選手だと言える。
注意していることは、サフィールノワールのデリケートクリームと同様にミンクオイル配合なので、必要以上に塗りすぎると革が柔らかくなりすぎて型崩れの原因になりそうなこと。僕はクレム1925をメインに使うので、レノベイタークリームは極稀に使うくらい。

クレム1925は、仕上がりからちょっとした艶出しまでカバーするまさに靴磨きのためのクリーム。

このクリームの特徴は、油性ということによる伸びの良さ。浸透するというよりは伸びるという印象のクリームで、少量でもかなりの面積を塗ることができる。伸びるということは瞬間的な浸透をあまりしないということだから、単に伸びるだけでは革の内部まで必要な量の油分がいきわたりづらいか、不足になってしまう。

サフィールノワールクレム1925、ブートブラック、モゥブレイを比べてみると、後者ふたつは乳化性特有の「革に水が染み込む感じ」が得られるのに対して、クレム1925は表面にとどまって油膜を形成する感じが強い。

クレム1925は油分が多い(というか油性)ためか、クリームそのものも少し硬い感じで、ブートブラックが少しプルプルとした感じであることに対して、クレム1925のブラックはしっとりとしたマーガリンのような感じ。ニュートラルはもう少し水々しい感じなのだけれど染料配合すると何か違うのだろうか。どちらにしてもスッと革に浸透するような感覚がある乳化性クリームとは違い、しっとりと表面に残る。これが特有の光沢を生み出している。

表面にとどまる理由の一つがクリームそのものの硬さによるのだろうけれど、それが表面の凹凸を多少滑らかにする効果があるようで、他のクリームより光りやすい印象を受ける。あるかないかくらいのほんのちょっと水をつけながら多少厚塗りすると恐ろしく光沢の出る靴になる。
では浸透していないのかといえば、薄い色の靴にニュートラルを塗ってみると、ごく軽く表面を湿らせたような色変化をするので革に浸透していることが伺える。時間をかけてじわじわ浸み込んでいくクリーム。

水分が少ないということは少なからず革がふやける方向を抑制するわけで、これもまた仕上がりの艶やかさに影響していると思われる。みずみずしさの補給が足りないと感じる向きにはクレム1925の前にデリケートクリームかレノベイタークリームを入れれば十分だと思う。というか、光らせるということをあまり重要視しなければレノベイタークリームだけでも十分。(蝋は入っているので控えめに光る)

クレム1925の少しギラつく感じは好き嫌いがあれど、上手に使うとワックスが無くてもそこそこ光らせることができる。乳化性だけでワックス並みに光らせることが出来る人もいるくらいだし。

このクリームはやっぱり靴磨き好き向けで、当初の僕のように、クリーム塗布が少なすぎる方向より多すぎる方向に行く人には向かないのではないかな。却って光沢が無くなり、また保革上もワックス厚塗り状態みたいになってしまう。ブラッシングや乾拭きをあまりしない人だと古いクリームが皺に残ってクラックの原因にもなってしまう。その点、乳化性の水分多めのクリームはさらっとした感じもあり、多めに塗ってもべたつき感が出にくく、さっとブラッシングするだけでシワの間に入ったクリームも均しやすい。

なので、もし靴に興味がない人にクリームを一つだけ選んでほしいと言われたら、本当のクリームってこういうもんだよ、という前置きをしたうえでレノベイタークリームを薦めると思う。

僕は靴磨きが趣味みたいなものなのでクリームを何種類も塗りたくっているけれど、忙しい時期にはレノベイタークリームだけ軽く塗っておくことがある。このクリームは適度に光るし、ブラッシングもそれほど神経質にならなくても良いし、靴の染料にもどちらかと言えば優しめ。靴によっては春夏しか履かない物があって、そういう靴をしまっておく時に塗っておくのもレノベイタークリーム。

一つの靴には同じブランドで固めたいので、ほとんどの靴がこの3つの組み合わせで塗っている。残りの靴は日本の最高峰クリーム(と思う)BootBlackを使っている。なんとなく国産キップの靴には国産クリームを使いたくなってしまう性分なので。

デリケートクリーム、レノベイタークリーム、クレム1925とソールコンディショナー(僕はシェットランドフォックスで買ったコロンブス製)、コバインキがあればメンテナンスは十分にできるかな。

と、頭ではわかっているのだけれどときどき新しいクリームが気になったりしちゃうのが困ったところです。



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サフィールノワールシリーズではレノベイタークリームで下地を作って、クレム1925で保護するみたいな使い方をしています。レノベイタークリームは万能選手だから一つあると結構重宝します。 (真ん中)



コルドヌリ・アングレーズも根強い人気です。個人的には香りはこちらのほうが好き。


2013年6月9日日曜日

ブートブラックとシルバーラインの比較

前回 boot black のクリームを塗り分けた靴だけれど、その後2回ほどメンテナンスをしたところ、なんとなく違いができてきたので追記 。

ブートブラック(黒い蓋)とシルバーライン(銀色の蓋)は初回に塗ったときでもしっとり感が違う気がしていたが、しばらく使い分けていると明らかに光り方が違ってきた。

この間、履いたらていねいに両足ブラッシング(このブラッシング用のブラシだけは黒色共通のものなので、多少サフィールなどが上乗せされてしまっているかも)して、翌日キレイな布で磨く。基本的には雨の日用の靴なのだけれど、あれから大雨に降られたことが無いので、クリームは3回履いたら1回塗るくらいのタイミング。(通常のお手入れよりやや頻度高め)
ステインリムーバーなど他のお手入れグッズは一切使わず、きつく絞った布で拭ったあとにクリームを単純に塗り重ねているだけ。(ちなみに一度に塗る量は片足米粒数粒程度)

左側がシルバーライン、右側がブートブラック(黒い蓋の方)
写真で見てもなんとなくわかるようにブートブラックのほうがやや青い色の光をしている。

シルバーラインは表面的に強い光を返すので、光がはっきりとした白色になる。一方ブートブラックはやや奥深い光なので革に(というか多分クリームの色に)含まれる青色を帯びた反射をする。

単体で見ていると全く気にならないが、こうして比較してみるとシルバーラインは少しラップをかけたような感じになっている。やっぱりブートブラックのほうが光り方は好みだ。

シルバーラインはやはり表面で反射をさせるような革向きに思える。「一般向け」とされている所以はガラスの靴にも使いやすいクリーム、ってところだろうか。まぁ、ワックス無しでここ一発で少し光った感じがほしい時なんかも役に立ちそう。 ポリッシュするような向きではなく、手入れにはあまり時間を掛けたくなくてクリーム一つでなんでも済ませてしまうような人たちにはいいかもしれない。

逆に、それなりのカーフを時間をかけて手入れをしていくような場合はブートブラックのほうが軍配が上がる。しっとりつややかな感じのほうが個人的にも好み。

もうしばらく続けてみようかな。

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2013年5月17日金曜日

BootBlack

革靴のクリームと言ったらサフィールやM.モゥブレイあたりが有名ドコロで、靴のお手入れが半ば趣味みたいな人ならば誰もが持っているだろうけれど、わが日本でもこれらに負けない(と思う)靴クリームがある。日本の靴ケア商品の最大手であるコロンブスが販売しているBoot Blackだ。


コロンブスというと、どうもチューブ入りの靴クリームや、アンメルツヨコヨコの容器みたいなものに入っている水っぽいケアグッズなど、どちらかと言うと本格的な革靴のメンテナンスというよりは、単に靴を光らせるだけのものという印象が強くて、これまでは縁がなかった。レザリアンシリーズなど普通の靴クリームもあったのだけれど、はっきり言ってコルドヌリ・アングレーズやモゥブレイと比べて、あえて買うほどのものでもなかった。


ベビーブーマーが就職する前後から、いわゆる高級靴ブームが一部の間に出てきて、革靴の素材に注目が集まるにつれ、そのメンテナンスも脚光を浴びるようになった。そこで満を持しての登場である。


ちなみにこれまた日本のメーカーであるリーガルブランドのケアグッズの多くもコロンブスが提供しているが、高級ラインのクリームはサフィールだったし、リーガルトーキョーではコルドヌリ・アングレーズが売られていた。ちなみに現在リーガルトーキョーに置かれているクリームはサフィールノワールとシェットランドフォックスのクリームで、後者はコロンブス製である。やっと日本のメーカーで靴とクリームを揃えることができるようになった。

(ま、日本の革靴市場が成熟していなったというのもあるけれど、職人気質のあるメーカーだったらニュートラルとブラックだけでも良いので高級靴にも使えるクリームを前々から用意しておいて欲しかったな。)


ふだんのメンテナンスにはモゥブレイのデリケートクリーム、それにコルドヌリ・アングレーズのビーズワックス、かなり稀にモゥブレイのステインリムーバーでやっているのだけれど、せっかく日本のメーカーが本格的なメンテナンスグッズを出したのだから買ってみようということで購入した。

Boot Blackには「プロ向け」のBoot Blackシリーズ(黒い蓋のほう、以下ブートブラック)と、「中級者向け」のブートブラックシルバーライン(銀色の蓋、以下シルバーライン)がある。今回はどちらが良いのかわからないので両方買っちゃいました。
靴磨きに関して私はプロではないので、まぁシルバーラインで十分なのだろうが、なんとなくコロンブスだけにディフュージョンラインは「とにかく艶を出さないと」的な商品になってそうな予感がする。



外観

ブートブラックはシールで、シルバーラインは瓶に直接印字されている。印字のほうが良さげなのだが...
大きさとしてはM.モゥブレイのクリームの瓶を一回り大きくした感じ。



クリームの感じ

ブートブラックのほうがウエット。どちらも蓋ギリギリまで充填されている。買ってきた時瓶が傾いてもクリームが偏ることが無いので良いかも。でもその程度のメリット。



シルバーラインは乳化性クリームの割りには固めな印象。果たして伸びはどんな感じか。





香り

致命的に悪いと思う、どちらも。
いかにも灯油っぽい臭いがする。サフィールあたりはクリームそのものの香りも良くて、それが一種のアクセントになっているけれど、ブートブラックもシルバーラインもこの点はまるでダメ。ケアが楽しくなくなる。プロは香りなんてこだわらないのかもしれないが、シルバーラインのターゲットである人たちはこれで満足するのかな。
サフィールはなぜあんなに良い香りなのだろう。この差はなんなんだ?


で、この2つのラインにどれほどの違いがあるのか、実際に確かめてみた。


今回比較に使う靴は、これまた日本のリーガルが販売するプレーントウのW134。
リーガルブランドのBTOのラストを使ったモデルで、アッパー素材はキップ。生後6ヶ月から2年くらいの革で、カーフ程ではないがそこそこキメが細かい革と言われている。
アネノイのボカルーあたりと比べてみると締りのない感じがあるけれど、比較的シミになりにくいし、革も厚めなのでデイリーユースには十分ありだと思う。


比較をするにあたって、まずモゥブレイのステインリムーバーで古いクリームを落とす。この靴は最近はサフィールクレム1925のニュートラルで磨いているので、いつもよりていねいめにリムーバーをかけてみた。

ちなみに、ステインリムーバーはあまり使わないほうが良いという意見もあり、個人的にもそう思う。ふだんは固く絞った綿布で表面を拭ったり、汚れや塩吹きがひどい場合は濡れたティッシュを貼り付けて汚れをとっているので。(濡れティッシュによるメンテナンスを始めてから、ステインリムーバーやサドルソープの出番がほとんど無くなった。これについては後日書いてみたいと思う)

前処理として、ふだんはM.モウブレイのデリケートクリームを薄く塗るのだけれど、今回はBoot Blackの素の実力だめしということでいきなりクリームを塗ることにする。

※この方法は色が薄い革だとシミになりやすいかもしれない。


クリームは布に取り、出来る限りうすーく塗り伸ばした。
クリームの量が結果の差にならないように、出来る限り同じ量を入れるように注意した。よく言われる米粒単位で数えて4から5粒程度の量を塗りこんだ。デリケートクリームを塗っていないためふだんよりちょっと多め。

塗り終わって15分くらい放置して、それからひたすら乾拭き。
ブラシを使うと他のクリームが移ってしまい、違いがわからなくなりそうだったので、今回はていねいに乾拭きをした。

コルドヌリ・アングレーズのクリームはしばらくおいてから乾拭きをすると、なんとなく引っかかるような感じを受けるけれど、Boot Blackはどちらのラインもそういうことがない。ワックスに含まれる蜜蝋の違いだろうか。


結果


右足(向かって左)がブートブラック、左足がシルバーライン。

一度だけしか塗っていないのであまり差がわからない...
しばらく使い続けると差が出るのだろうか?

強いて違いをあげるならば、写真ではわかりにくいがブートブラックのほうが光に当てた時白くなる部分が明らかに広い。最初は同じ靴でも革の違いが出ているのかなと思ったのだけれど、あちこちの部分でみてみると、全てブートブラックのほうが光の帯の幅が広かった。一方シルバーラインは光がまとまるというか、幅は細くても反射の最大値は高い傾向がある。何度も磨いて同じような状況にしていると考えられるので、思うに、ブートブラックのほうが多少ウェットな仕上がりをしているのだと思う。プロが磨いたら大きな違いがわかるのだろうか。

つま先を拡大するとこんな感じ


ネットの書き込みをみるとブートブラックシリーズは艶がキツメに出るというものが多いけれど、まぁ、確かにそんな感じがする。
サフィールノワールはしっとり鈍く光ることに比べると、特にシルバーラインはピカピカした感じに仕上る。

今回はあまりキメの細かい革ではなかったので、この反射感がかえってビニールっぽさと言うか、なんとなく安物っぽい方向に出てしまっている。まだ1回目なのと、磨いた直後ということもあり、しばらく様子を見ると変わるのかもしれない。

私自身は靴磨きは全然プロでもないし、上手い方でも無いと思う。ただ、これまでずっとコルドヌリ・アングレーズを使ってきてその質感に慣れているので、どちらかと言うと瓶を開けた時の見た目としてはブートブラックのほうが違和感が無い。

ということで、価格差も数百円なので自分で使うならブートブラックとなる。どこでも売っているというわけではないが、ちょっと高級な靴を扱う百貨店の靴売り場でふつうに売っている。(私は出張先のそごうで買った)

なんといっても残念なのはあの灯油のような臭い。靴磨きがどうしても作業のような感じになってしまう。素材を突き詰めていってあの臭いになってしまうのであれば、変な香料を入れるよりもマシな部分もあるのだろうけれど、せめてシルバーラインは一般向けなのだからもう少し何とかならなかったのだろうか。

ひとつのクリームを塗り重ねることで靴を育てていくというポリシーがある人にはわざわざ乗り換えを薦めるほどのものでも無いというのが正直な感想だけれど、日本の環境に合わせて日本で作ったクリームと言うことらしいので、しばらく使い続けて様子をみてみようと思う。



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