2026年4月1日水曜日

社会人の道具としての靴

4月になりました。
新社会人のみなさん、おめでとうございます。

足早に歩く若い人たちをみていると本当にほほえましく、元気をもらいます。
そんなみなさんが活躍していき、日本にもっともっと活気が出てくることに想いをはせながら今日は私の好きなジャンルである「社会人の革靴」について書いてみたいと思います。


みなさんに最初に与えられる仕事は小さなものかもしれませんが、実はそれ、大きな仕事の大切なピースだったりします。どんな大きな仕事も分解していくと、それに携わる人の小さな仕事の集合体です。
楽しい日もあり、苦しい日もあるかもしれません。真冬の風の冷たさを知っているからこそ一杯のコーヒーが心までを温めてくれることに気づき、真夏のアスファルトの照り返しのなか足早に歩くからこそ、一杯の水の真の美味しさを知ることができます。社会の厳しさはまたみなさんを大きくさせてくれるはずです。

涙が出るくらいの震える感動の前には、泣きたくなるほどの不安や恥ずかしさで逃げ出したくなったり、感情を抑えられず怒りですべてを投げ出してしまいたくなるようなときがあったりします。格好いいと思うような先輩方はみんな、そうした壁や山を越えて経験を積んできた方ばかりです。

御手洗冨士夫さんが「私の履歴書」でこう書かれていました。

「人生は楽ではない。しかし、楽しい。」

人生のシナリオをどう展開するかはみなさん次第。ただ、主人公であるみなさんの周りにいるキャストは想いどおりに動いてくれないので、あらかじめの脚本通りにいくことばかりでもありません。

仕事の楽しさがわかるまでには少し時間がかかるかもしれません。
自転車や逆上がりができたように、それには少しの慣れとコツが必要です。



革靴もそうかもしれません。

買ったばかりの靴は違和感が多くて、場合によっては痛いこともあります。
お店でフィッティングをして買ったものであれば、完全に合わないということはほぼありません。
むしろ最初に痛くないような靴は、逆にそのうち痛い靴になっていくことが多いです。
ちょっとばかりの我慢と、きちんとしたお手入れをすることで完成される履き心地があります。買ったばかりは作り手にとっては完成形でも、あなたにとっては半完成品、履き続けて足に合って初めてあなたにとっての完成品です。



Covid-19が世界的に流行してからは、ビジネスの現場ではリモートワーク化取り入れられ、革靴の出番も減っているようです。
私自身も、その前年までは北は北海道から南は九州までお客様のところにお伺いする機会があたりまえだったのに、2019年以降はほぼすべてがWebミーティングに置き換わりました。
2023年に入ってからは少し雪解け感が出てきましたが、それでもまだまだ外出や訪問の頻度は戻っていません。

一昔前には「スーツは最低2着、靴は最低3足」みたいな数値目標(?)がありました。これがリモートワーク前提である今日、革靴が3足必要かといわれると難しい。新入社員となるみなさんにとって、どんなビジネスアイテムにどれだけ投資(つまるところ「買う」か)するかは、これまでの常識でよいのかどうか、ちょっと悩ましいですね。




一般的にはスーツは堅苦しいものとか、時代遅れ、古臭い考えといったある意味「そちら側の固定概念」で語られることが多いです。

東証プライム企業のホームページを見てみると、多くの企業において代表者の写真はスーツ姿が多いことに気づきます。
これを「だから日本は凋落するのだ」という一言で片づけるのは簡単です。
ただ、いまだに世界から経営の神様扱いされる尊敬を集める日本人経営者の多くがスーツを着用しているという事実もあります。

ファイザー、フォードやGMといった米国の製造業の経営者もタイ着用の写真です。
歴史ある企業は会社の文化やブランド、信頼・信用を大切にするがゆえに、伝統的なスタイルを好み、新興企業は既存のルールを打ち破るイノベーションが源泉であるがゆえに、ルールに基づく過去のスタイルを批判します。

自分が働いている環境、職場内やお客様がどういったポジションを取っているかによって、必要とされるスタイルが変わってきます。
画一的にスーツスタイルが古いという固定観念に縛られず、やっぱりスーツスタイルだよね、という職場があるということも頭の片隅に入れておくのもありだと思っています。

スーツの持つ戦略性を見出して成功することもあります。本来であれば作業的な要素が多い靴磨きの世界でも、スーツスタイルで磨くということでイノベーションが起きました。理容業や花屋さんでもこうした動きがみられます。
動きやすいとか、楽であるということが最優先でなくてもいいんです。スーツしか出せない魅力と威力によって、その仕事のポジションを丸ごと変えてしまっています。

そんな力のあるスーツですから、毛嫌いせずにビジネスに上手に取り入れたいものです。


お堅い会社を相手にする企業に入社された方にとってはスーツスタイルの基本を知っておくことは大きなプラスにならないとしても、マイナスをつけない技術です。

私は比較的スーツを着ることが多い職業に従事しています。
スーツスタイルのときはタイ(ネクタイ)着用です。
会社としてはオフィスカジュアルOKの職場ではありますが、企業の経営者を含む役職者や管理部門の人、堅めの会社さんの営業さんや外資系の一流コンサルタントなど、スーツを戦略的に来ている人と会うこともそれなりにある環境です。

そんな環境にいる私が「社会人の『道具』としての靴」として考えるものはかなり保守寄りです。

・日本国内ならどんな堅い職場でも問題にならない(通用する)
・はずす方向があるとすれば「堅すぎ」
・天気(特に雨天)を必要以上に気にしない
・急な冠婚葬祭でも対応可能
・いま撮られた写真を10年後に見ても恥ずかしくない
・お手入れなどができれば比較的長く使える

といった視点で靴を選んでいます。
ただ、次のようなケースについては私の知識が少なすぎて、書いていることが的外れであることも多いことに気づいています。

・北海道のように雪が何か月も残る地域での常識
・あぜ道やぬかるみを歩いたり、自転車移動の多い職業(地方のリテール金融系営業など)
・職業柄脱ぎ履き頻度が高い職業(不動産の内見担当など)

スーツを着ているが靴に対する要求事項がちょっと違うケースなんて言うのはたくさんありそうで、ひとつの理屈を当てはめるのは難しい。


そんな前提はあるものの、この令和の時代に、お堅い会社にいるおっさんである私が、お堅い会社で働くか、またはお客様(クライアント)にお堅い会社があって好きであるかどうかにかかわらずスーツを着なければならない若者のみなさんに、知りうる情報から「これがありなんじゃないかな」をまとめてみました。

なるべく知識が個人の好みだけに偏らないように世の中のインテリジェンスが高そうな、かつ世界や歴史に詳しそうな人が書いてある本やサイトも参考にしました。それでも好みは入っていますが、10年前くらいからあまり変わっていない考えを中心に、10年後もおそらくは変なことになっていないだろうなということを前提にしています。



まず... どんな格好?

私が想定しているのはスーツスタイルです。
場合によってはクールビスなどでアンタイド(ノーネクタイ)になる場合も含めます。
ネクタイがあるときとない時では厳密には靴も変えるのが良いのでしょうが、そんなにたくさん靴をわけない前提です。
ジャケパンではなく、あくまでもスーツスタイルに合わせています。ジャケパンまで入れると結構チョイスが幅広くなるので、まずはスーツスタイルに合わせて条件を狭めて型を作ります。


どんな仕事?

スーツを着ていて、それなりにアスファルトの上を歩くことを前提にしています。
対面も含む営業であったり、コンサルや企画などとにかく相手に「自分に会いに来る人はスーツを着ている」と思われている職種を基準にしています。

勤務地は東京もしくは首都圏の状況をベースにしています。というのも僕は北海道や北陸のの雪の条件や、沖縄の台風をはじめとした夏の気候、関西圏の文化等知らないことばかりです。
北関東あたりでは夏の晴れた日の夕方は必ず雷雨になったりと、シーズン中はほぼ毎日雨が降る場所もあります。そうした地域地域の事情が必ずあり、私の知る狭い社会の常識では気づきすらできないことがたくさんあると思っています。雨については多少わかるものの雪については実用の想像ができていないので、雪の多い地域の人にとってはサマーシーズンよりになってしまっています。

今回選んだ靴の中には都内もしくはその近郊にしか店舗がないものがあります。その場合でもオーダー会などで全国で入手できるケースもあります。機会があればぜひ足を運んで試し履きしてもらいたいと思っています。オーダーサンプルを使ってしっかりフィッティングすれば、通販で同じ形の色違いや素材違いを選べるようになります。
オーダー会で買わないと悪いかなと気をすることはありません。全国でオーダー会をやるブランドでは、まずすべての店頭に置けないことを補うことも大切で、将来的に通販で買うことも検討しているからサイズを確かめたいという話を誠実にして、靴に興味がわかることがあればきっと相手も一緒になってフィッティングしてくれるはずです。そのためには、必要以上に時間をかけることがないように、自分がフィットしている靴を履いていくなどして、少ない時間でゴールを見つけられる工夫と配慮も必要かなと思います。


シーンは?

靴の選択においてはスーツスタイルでのビジネスシーンを想定しています。
よくミニマリストを標榜する人たちがオンオフ兼用ということを盛んに重視していますが、ワークライフバランスを靴にも適用してはどうでしょうか。仕事とプライベートは一緒がいいんでしょうか。
仕事には仕事に適した格好があるし、オフはオフでサマになるスタイルもあります。
ここで考えているのはスーツスタイルですので、オフでスーツを着る人以外はオンとオフで服装で狙うところは違います。ものによってはたまたまオフで使えるものもありますが、それは結果としてそうなのであって、考えているときはあくまでもオンタイムだけです。


予算は?

1足2万円から5万円にします。
なかなかの大金ではありますが、それ以下となるとこれまた私の得意とする部分でなくなってしまうので候補が良くわかりません。
1万円のゾーンでもいい靴がたくさんあるといわれているので、きっといろいろなホームページなどを見たりGPTあたりに聞けば何か出てくるのでしょうけれど、自分が良くわからないものを聞きかじりで書いてしまうのも気が引けるので、自分の経験と納得できる情報のものを扱います。

最低限のお手入れをすれば、という前置きをすれば、それほど神経質にならなくても数年持ちますからスーツと比べても決して高い投資ではありません。



で、道具として靴のリスト

1. リーガル01DRCD

最初の一足は革靴のド定番ともいえるキャップトウ(ストレートチップ)

まいど同じな展開ですが、最初の一足グループに入れたいなと思います。
お手入れに多少気を使ったり、レザーソールということもあり、お手入れの習慣が無い段階でこれを薦めるのかという意見はあると思います。

それでもなおこれを最初にあげるには、革靴への誤解を生まないファーストチョイスとしてこれが一つの基準であると思うからです。

全国いろいろなところで試し履きできてサイズの大幅なミスをしなくて済む。ラストもそれほど攻めていないので足のダメージが少な目。お手入れの仕方も学べる靴と、革靴とは何か、を体験するための靴であるともいえます。
最初にきちんとした革靴を履いてみると、靴に対する印象も変わります。

別にこの靴を履きまわせばよいとは思いません。ここ一発の靴にしてもいいですし、こういう靴が一つワードローブにあると便利です。

キャップトウはそれこそすべての革靴ブランドで用意がありますが、最初の一足に大切なことはフィッティング。
革靴のサイズはスニーカーのサイズとは数字の取り方が違うので慣れるまでは店舗で店員さんのアドバイスを聞きながら選択する必要があります。その際にはサイズの数字にとらわれず、とにかく数字を無視して選びます。店舗のいいところはとっかえひっかえサイズを試すことができることにあります。

01DRCDは全国のリーガルシューズや百貨店、靴屋さん等で販売されているので比較的入手がしやすいです。ぜひ最初の一足は価格だけにこだわらず店頭でしっかり試し履きをして、お店で購入していろいろなアドバイスを受けることを強くお勧めします。


2. ショーンハイトSH111-1D

購入できるところが限定されるのが痛いところではありますが、これだけの作りがこの価格で購入できる点で候補に入れています。
同一木型、同一デザインでレザーソールとラバーソールのモデルがあります。
個人的にはこの価格差ならレザーソールがいいなと思いますが、ここではラバーソールをお勧めします。

ラバーソールは少しの雨や路面がぬれている程度であれば水が侵入してくることがほとんどありません。お手入れもソールに関してはそれほど気にすることもなく、しかもソールがほとんど減りません。

ラバーソールのキャップトウで、日本製のしっかりした作りでここまでの価格はショーンハイトくらいです。


3. ショーンハイトSH111-4D

同じくショーンハイト。
ビジネスシーンから冠婚葬祭まで広くカバーできるプレーントウ。外羽根によるサイズ調整のしやすさがあるので、ハーフサイズくらいであれば大き目なものを買ってしまってもそれほど違和感なく履けるはず。こちらもラバーソールでよいと思います。
キャップトウのSH111-1Dより細い足でもはまります。長さに対して周囲が少なめ(Eとか)の人はこちらを買うのがいいかもしれません。キャップトウを先に買っていれば、同じサイズでいけます。


4. リーガル2504NA

全天候型万能プレーヤーです。
たいていの革靴は雨にぬれてもお手入れをすればそれなりに戻るとはいうものの、最初のうちはお手入れも習慣化していませんので、できる限りメンテナンスが楽な靴を用意しておくとよいです。
2504NAに使われているガラスレザーはお手入れ不要の素材というわけでは決してないのですが、実用上お手入れにかかる時間が少なくてもコンディションを維持できるというのも事実ですので候補に入れています。
私の履き方のせいなのか、ウェルトが傷みやすい靴である気がしていますが、修理もできますし、なんならまた同じデザインを買うこともできます。
この靴だけはカジュアルにも合いそうです。



ここに挙げた4足の靴はどれを選んでも社会人の靴として間違いがありません。
取引先との会食で、靴を脱いでこれが出てきたら感動してしまうレベルです。

おそらく社会人の多くは、靴のお手入れにそれほど時間をかけられません。
サイズもうまく選べなかったりすることを考えると、いきなり1足10万円レベルではなく、グッドイヤーウェルト製法でのベーシックな靴を履くのがいいと思っています。
ショーンハイトは購入場所が限られますので、展示会等があればサイズだけでも試しておいたほうが良いです。サイズがわかれば後日通販で好みのモデルを買うことができます。

この辺りは根拠のない靴好きの考えですが、きれいな靴を履いてマイナスになることはないです。私の知る限り若くして一流の仕事をしていたり、ある程度の年齢になってそれなりの資産を形成している人はみんな靴が高価かどうかは別として、きれいです。

靴にまで気が回るから成功したのか、それとも成功したから高い靴をメンテナンスできるのかはわかりませんが、少なくともビジネスというものがある意味プロとプロが切磋琢磨する真剣勝負の場と考えるのであれば、身なりが持つ道具としての重要度は無視できないのではないかと思っています。それがスーツスタイルの職場であればスーツであり、靴であり、鞄やベルトなのではないかと。

身なりに意識が向き始めると仕事のクオリティも上がる気がします。
身なりを気にするということは他社の目を通して自分を見ることにもつながりますから、コミュニケーション上は結構大切だったりします。

見た目より中身が大切だということはだれでも知っているけれど、だからと言って見た目をおろそかにしていいというわけでもない。つまるところ、仕事ができる人はマーケットインの視点があって、世の中で成功するために必要な手段の一つとして身なりをしっかりしているのだと気づきます。




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ある記事で「初任給は親へのプレゼントより、まずは『靴』」といったことが書かれていました。

ものすごい違和感とちょっとした嫌悪感を感じてしまいました。

「親に金使え!」ではなくって、靴は欲しいなら買ったらいいんです。初任給でどうしても買いたかった靴を買ったなら、残りの500円でボールペンと便箋をかって手紙でもいい。自分が使うための靴は道具であり、親へのプレゼントはモノそのものよりも感謝の気持ちだから、比べるものではないから。

息子が初任給をもらったときに、そんな感じで自己投資と周囲への感謝の両方ができたら嬉しい。プレゼントは金額の多寡なんて関係ない。親としてはその気持ちが最高に嬉しい。



2026年3月9日月曜日

ビジネスシーンでの REGAL 2235NA

仕事用の2235NA、ブラックです。


最近は仕事中にスーツを着ることが少なくなり、足元も黒のキャップトウではなく黒系のスニーカーがメインとなってしばらく経ちました。

スニーカーってやっぱり楽で、階段の上り下りなんかを繰り返しても足や膝が痛くなるなんてことがありません。タウンユースなので泥だらけになるようなこともなく、大きく目立つような傷がつくようなこともありません。大半の革靴のように履き始めの修行もいりません。

ただ、なんでしょうか社会人生活二十数年をずっと革靴だったこともあるのか、足元が軽すぎて落ち着かない感じが続いていました。試しに足元だけプレーントウにしてみたりローファーを履いてみたところ、落ち着くというか締まるというか、なんとなくしっくりきます。

どちらかというとスニーカーそのものが悪いのではなくて、慣れていなかったり格好良く履けない本人に問題があるのですが、やっぱり革靴のほうが履きなれしているということもあり、近頃は少しずつ革靴比率が上がっています。

総合的な機能性という点ではスニーカーに軍配が上がると思います。最近の超高機能ではないクラシックなスニーカーでさえもクッション性、通気性、メンテナンスの容易さ、価格などで革靴を上回るところは多いです。科学技術の進歩から生み出されたものが機能面で優位なことは当然なのかもしれません。


でも、やっぱり革靴なんです。

指先の踏ん張る感じとか、大地にへばりついている感じとか、屈曲した時の戻ろうとする力とか、かかと周りのどっしりした感じとか、革靴のほうが自分に合っているということに改めて気づきました。「三つ子の魂百まで」ではないですが、社会人になってずっと平日は革靴、下手すりゃ休日もほぼ革靴で過ごしてきたのである意味そうなんだな、というところでしょうか。

マイケル・ジャクソンのムーンウォーク、あれローファーで初披露ですからね。日本人でもあのサディスティック・ミカ・バンド時代の高橋幸宏さん、ドラム叩く時革靴ですから。ここまでしないビジネスシーンでは履き慣れちゃえば問題が出てくることなんてまずないことに気づきました。


ということもあり、これを書いている2026年春は黒系革靴が個人的トレンドです。

いまの定番スタイルになりつつあるブラックジーンズやチノに合わせることを中心に考えると、ドレスよりな靴よりは少しボリュームがあるほうがバランスが良い気がします。ルーツ的には米国発ですので、足元もやや重めのプレーントウやソールががっしりしたフルブローグがいい感じです。

ネットを見ているとドレスよりの靴を合わせている人なんかもいるようですが、なかなか難易度が高そうです。少なくともオシャレ認定されているようなちょいワルオヤジ(死語?)くらいのセンスと迫力がないと「靴だけが浮いているオジサン」になってしまいそう。

カジュアル革靴の一つの代表とも言えるローファーは、それこそこちらはドレスよりの品の良いデザインを選ばないとどうしてもカジュアルっぽさが強く出てしまい、ビジネスシーンでは(私には)難しい。

私はパンツの丈が短かすぎるのはちょっと... というタイプなので、足首が隠れる丈のストレートパンツに黒のローファーだと野暮ったさが出てしまいます。デニムのレングスで言うと30インチだとノークッションになってつんつるてんになりがちな気がして、32インチを少しクッションさせて履くのがちょうどいいと思うタイプです。しかし格好いいオジサンは決まってスキニーなタイプを短めにして足首見せてローファー決めています。マイケル・ジャクソンも少し短めの丈に白い靴下見せながらムーンウォークを決めてるくらいで、ローファーはやっぱりしっかり見せて履くのが気分。

となると私にとってはやっぱり重厚な靴のほうがうまくいきそう。


そこでリーガルの2235NAなわけです。アメリカンタイプのフルブローグ(ウイングチップ)

ウイングチップという言葉は難しいです。もともとは靴のつま先のW形状の意匠を指し示す言葉であったようですが、このウイングチップデザインの中で穴開けたり革の端をギザギザにしたりとあれこれしたものが出てきて、これを加工の名前をとってフルブローグと呼んだようです。いわばウイングチップの一形態がフルブローグというのがイングランド人の考え方っぽい。

ところが海を渡った米国では、このフルブローグのデザインに少しばかりのひねりを加えて、アメリカンタイプなフルブローグを生み出し、これをウイングチップと呼んだようなのです。同じ単語でも指し示す内容が時と場合によって結構違ってくる一つの例みたいです。


定番2235NAは重厚な作りを感じさせつつ、やや上品な雰囲気も感じられドレスダウン系ビジネスシーンにもおさまりが良いです。アメリカにもルーツを持つリーガルですから、ジーンズやボックスタイプのジャケパンスタイルとも相性がいい。

同じリーガルの中では10ELDDがトリッカーズバートン系だとすれば、こちらの2235NAはフローシャイムのKenmoorといったところでしょうか。同じウイングチップデザインでも方向性が結構違います。 

このスコッチグレインレザー(型押しのシボ革)も足元の重厚感に一役買っています。足元が安っぽいと全体が軽めに見えてしまいがちですが、2235NAをボトムに持ってくることで、センスがない私でもそれなりにキレイめを狙う作戦です。

2235NAや2589Nのようなゴツめのウイングチップはボックスシルエットのアメリカンスタイルスーツであれば似合うのかもしれません。クラシックなスーツスタイルには合わせようとするとやや主張が強すぎて靴だけが浮いてしまいます。ドレススタイル寄りにはドレススタイル寄りな靴が似合います。

一方で、ジャケパンなどのカジュアル要素が多くなってくると途端に収まりが良くなる気がします。シボ革なのでもともと小さな傷は目立たないものの、やはりきちんとお手入れされて品を保つような履き方が似合います。これがビジネスシーンでも活躍するひとつの理由です。


ビジネス上でのウイングチップってどうなの、について私は「限定つきあり」と思っています。

大前提として冠婚葬祭や重要な会議、セレモニーなどのフォーマルが要求されるような場所ではドレス寄りのデザインだとしてもやめておいたほうが無難です。いまや結婚式もくだけたスタイルでいいよという雰囲気だそうですが、だからといってあえて親戚一同集まる両家のお祝いの場に、お気楽カジュアルで登場するのもどうかと思います。招待をされている身であるからこそ自分の好み優先の選択ではなく、相手や集団を立てる選択が大切です。

気持ちがこもっていれば構わないとしても、牧師さんまでグランジスタイルなデニムで新郎新婦の誓約を司ったり、(ハワイの)正装とはいえアロハシャツにチノパン、ソフトモヒカンで決めた住職さんの法要では場が白けてしまいます。知識がなくて外してしまうのは仕方ないところもありますが、わかっていてあえて外しに行ってしまうと、内輪のネタなら許されても、たくさんの人が集まる場であれば単なるおバカさんです。そもそも自分の役割に矜持を持っている人はそんなことはしません。

就職活動や顧客先への初めての訪問など、初対面での印象は後まで残りますので、そういう場がおおいなら、キャップトウかプレーントウを選んでおけば間違いありません。あなたにとっての1/365日は、相手にとっては1/1日かもしれません。せっかく靴に対してほかの人よりも多い情報量を持っているのだから、最適な戦略を選びたいですね。


一方、オフィスカジュアルでポロシャツやチノパンが推奨されるようなシーンにおいては、このウイングチップはとても使いやすいです。何といっても革靴ですので、スニーカーと比べると格段に大人感があります。

ジャケパンとの相性も良く、なんだかんだで全天候型です。よほどフォーマルを要求されるようなお店でなければ、靴が問題になることがありません。いわゆるスマートカジュアルで靴が問題になることはないでしょう。

ビジネス感を出さずに、かつ品よくまとめたいときにはブローグ系の靴がハマります。ここでは逆にホールカットやキャップトウだとよほど上手にまとめるかセンスを評価されている人でないと、カジュアル靴にまで手が回らないおっさんが出来上がります。


釣り込みなのかパターンの微調整なのか、最近購入した2235NAはくるぶし周りが以前よりも気持ち低くなっているように思えます。多少はあたってしまうものの、刺さるような感じは減っています。2504NAの時もそうでしたが、歳とともにこちらの足が少し分厚くなったのか、それともリーガルが微妙に変えてきたのかはわからないものの、個人的にはプラスの方向になっています。また、なぜか踵の収まりもよくなっている気もします。新品だからあまり沈み込みしていないのか、かかとも少し窄まっているだけなのか測ったわけではないので直感でしかありませんが、以前よりも履き始めのフィット感がよくなっています。

この靴は親指側がストレート気味なので比較的親指が自由に使える靴です。リーガルはときどき内側(いわゆる親指側)をカーブさせてくることがあります。同じウイングチップ系の10ELDDとは明らかに親指側が違います。伝統的なラストはこのあたりの作りが私にとってはありがたい。

おまけに羽根の開きも以前に買ったものよりも明らかに開いています。ハーフとは言わないまでも数ミリ単位で全体的にコンパクトとなり、少し締まった印象です。


2235NAのアッパーはステアベースだとは思うものの、2504NAなどのガラスレザーと比べると履き始めからやわらめです。しわも目立ちにくく、シボ革(スコッチグレインレザー)のメリットが感じられます。


ただ、ただでさえギンピングがあってクリーム塗りにくいことに加えてレザー表面も立体的となるとクリームを布で塗るのはなかなか難儀です。塗り切れていないところが多発したり、逆に穴にたまってしまうなんてことも起きがちです。ペネトレイトブラシや使い捨て歯ブラシみたいなもので塗る方が楽かもしれません。

私は布で塗る派なので、できる限り丁寧に塗ってからわりとすぐに豚毛のブラシで馴らします。表面で不均一になっているクリームが延びて、育ったブラシに残っているクリームと合わせて穴やギザギザにクリームがはいればいいなと思っています。

いまとなっては貴重なレザーソールモデル。厚手のソールは相変わらず硬いです。履きはじめはなかなか返りが悪いので、部屋やベランダなどでできる限りソールに曲げ癖をつけてから履くのがおすすめです。つま先はかなり削れますが、そこまで気にして履くのもどうかと思うので一度履き始めたらとりあえず気にしないが正解です。


2235NAは定番とはいえ、街の靴屋さんではほとんど見かけませんね。

リーガル公式通販の価格で税込40,700円(2026年3月現在)と、いつの間にか4万円を超えています。
素材やこれを作るための工賃、機材等の維持費用や流通販売コストを考えると40,700円(税抜なら37,000円)って破格な気がします。通販サイトなどでもう少し安く販売されていることもあります。リーガルの卸値はもっと安いと思うと驚異的ですが、一般的な感覚からするとめちゃくちゃ高い靴、という位置付けです。ほとんどプレミア価格といえるUSA製のNew Balanceの1300が税込44,000円ですからもはやスニーカーの最高レベルに近い価格で、価格だけで比べたら革靴に勝ち目はありません。

2024年の総務省の家計調査によると、1世帯あたりの男子靴の支出額は3,327円。これでも前年比増加しているとのこと。ちなみに1世帯全体では14,488円だそうです。1980年代後半と比べると日本靴の生産は大きく落ち込んでいます。

この波にリーガルコーポレーションものまれてしまい、高級靴の主力工場ともいえる関連会社のチヨダシューズを解散、希望退職者を募集と発表しています(2026年2月9日付「構造改革(希望退職者の募集および連結子会社の操業停止)に関するお知らせ」)。
2021年には米沢製靴を解散しており、その際にチヨダシューズに移った人もいると思います。華々しいリブランドの陰でこうした厳しい決断もまた行われていたりもします。

自分の周りを見ていても、もはやグッドイヤーウェルテッドの革靴を履いている人は少数です。若手に限ってはまず見かけません。公的機関などもスニーカー容認が進んでいますので、この流れは逆らいようがないのかもしれません。

このような環境の中で、1足数万円の靴を作り続けるリーガルの企業努力って本当にすごいと思います。リーガルの主力工場のひとつ岩手製靴さんでは1日600足という数字が2年ほど前に出ていました。ざっと年間15万足とするとちょうど1足1万円くらいが平均的なリーガルから見た原価でしょうか。

少子化でそもそも社会人として革靴を新規購入する若年層自体が減少し、メインの団塊ジュニアは就職氷河期を経験して比較的財布の紐は堅いことに加え、役職定年を迎える時期に差し掛かっていますから、日本国内においてドレス系のビジネスシューズはかつての賑わいは戻らないでしょう。

外部からは実情を知る由もありませんが、将来に向けて構造改革をしたり工場を整理したりするのも、企業経営上避けて通れない決断に思えます。これだけの品質の靴がいつまでも販売され続けるという保証はありません。職人さんの減少もあるでしょうから将来的には海外生産のOEM、なんてことになってもおかしくありません。


とはいえ、革靴を履く人口が減っていく中でも当面は日本人が靴そのものを履かなくなるなんてことはないと思うので、いずれにしても靴を作る会社は必要です。20年くらい先の2050年でも日本人は1億人ほどはいますし、世界では2100年くらいまでは人口が増えると予想されています。

日本国内の市場がシュリンクしていても、まだまだ国内1兆円産業であるので業界の再編や構造改革次第では活路はあるのかもしれません。グローバルに目を向ければ靴そのものは成長産業にもなりえます。

ダブルエーとの業務提携は一つの活路になりそうですね。ジェイドグループやエービーシー・マートのように高い営業利益率を生み出す企業もあるので、靴業界自体が儲からないのではなく、企画力とか販売力の差であるともいえます。リーガルもグッドイヤーウェルテッドの靴だけを作っているわけでもないですし、ケンフォードあたりのサブブランドを見ても、決して高価格帯ばかりのこだわりがあるわけでもなさそうです。

違いがあるとすれば卸モデルであることと頻繁なモデルチェンジと廃盤セールでしょうか。エービーシー・マートはナショナルブランドを販売しつつも、一部を協力工場で作って利益率を確保しているそうです。ナショナルブランドといえどもいつ行ってもオールスターやらCM996、U/ML574、ホーキンスとティンバーランドが売っている印象です。たまーに売れなさそうな色のセールをしている気もしますが、メインの棚ではいつも同じものを売っている感じです。

かたやリーガルはかろうじて2235NAや01DRCDは残っていますが、名作の誉れ高いW105、オーダー木型を使ったW121/131/141などのシリーズ、シェットランドフォックスの初期モデル(エジンバラ、アーバイン)はどこへ行ってしまったのか。

エジンバラはマンチェスターに名前を変えて出直しを図っている感があります。当時は踵緩め甲高めで作ったものを少しばかり修正してきていると思われるものの、この出したり引っ込めたり感がブランドを確立できない一つの要因と思えてなりません。気に入ったモデルが出ても廃盤されるリスクが常に付きまとう。

シェットランドフォックスは立ち位置が微妙ですね。ブランド登場当時は価格差でポジションできたものの、これだけ靴が高くなってくると、もはやこのゾーンを維持する意味がなくなりそう。6万円台だと01DRCDとの差別化が難しいですし、かといって10万円近くなるともはや既製靴としてどれだけの市場があるのでしょうか。サラリーマンはおいそれこれだけの金額出せませんって。一昔前はいい靴が3万円台、高い靴が5万円から6万円くらいだったので、「奮発して01DRCD」「いつかはケンジントン」が成り立ちましたが、もはやそれなりにちゃんとした革靴を最初に3足そろえるなんてのは無理な時代になってしまいました。


リーガルコーポレーションという企業は本格靴を作るメーカーという見方をしがちですが、運営実態としてはファッションブランドだったりもしますので、流行を作ったり流行に乗ったりすることもまた企業の存在価値の一つともいえそうです。工場を解散し企業経営をスリム化しつつ、ほかと組みながら店舗を改装する、という戦略はいまのリーガルが生まれ変わろうとしているようにも見えます。

本格靴を量産可能な設備と技術を持つメーカーでありながら、ファッションブランドとしての小ロット作成&セールをしていかなければならない経営って本当に大変だと感じます。

「本格靴メーカー」として多くを私たちが求めてしまっても、それを支えるだけの顧客基盤が将来的に日本国内では期待できない。であれば体力があるうちに次の10年、20年に向けた企業の構造改革をしていくのは経営の覚悟です。多くの技術を有し、良心的な価格で日本の本格靴市場を支えてきたリーガルという企業で働いてきたみなさんがこれからも誇りをもって働くことができるよう、今回の決断が企業の発展につながることを願ってやみません。


リーガルはもちろんのこと、他の多くのメーカーや工房が生み出すグッドイヤーウェルテッド製法でしっかり作られた国産靴は、英国製や米国製にも引けを取らない素晴らしいものです。個人でできることなんてたかが知れているとはわかっているものの、これからもニッポンの靴作りが1日でも続くようにニッポンの靴を履いて(できれば買って)応援していきます。


日本の世界に誇る名作2235NA。
見れば見るほど、履けば履くほど、お手入れをすればするほど日本の靴づくり歴史や技術、考え方が詰まっていることに気づきます。

革靴に興味がある人であれば、一度は試し履きしてほしい靴。
一足はワードローブに加えてほしい靴。





2025年11月1日土曜日

REGAL 10ELDD

リーガルのフラッグシップ、10ELDD。


往年の名作といわれるW10BDJの復刻版。 

復刻に際してリーガルシューズ専売モデルのWから始まる型番から、一般流通もする数字型番に変更されました。リーガルが公式に「復刻」と言っているように、ライニングが山陽抗菌仕様の濃いブルーから一般的な生成色に、ソールの刻印がREGAL SHOES ORIGINALから栃木レザーを前面になどいくつかはあるものの、全体に大きな影響を与えるところはW10BDJと変わっていません(たぶん)。

アッパーは姫路のタンナー山陽のグレージングキップ、ソールは栃木レザーのタンニン鞣しベンズを採用した360度グッドイヤーウェルテッドなカントリー仕様のフルブローグ(ウイングチップ)です。

日本でもこれだけの靴を作ることができるのですから、足の形があいにくい米国仕様や英国仕様のフルブローグを無理して履かなくてもいいのではないかと。私は一度クロケット&ジョーンズで痛い目をみているので国産靴派です。

10ELDDはリーガルの名作中の名作です。革靴市場がどんどんシュリンクしていく中で、その中でもニッチなレザーソールウイングチップに2235NAと並べて提供し続けるのは難しいのかもしれませんが、ぜひ今回の復刻が長く続くことを期待します。

リーガルも公開会社ですから好きなことばかりやってはいられません。ステークホルダーに納得してもらえる企業価値を維持し続けなければならず、国内の靴市場だけでそれを支え続けるのって本当に大変だと思ってしまいます。日本人に比較的合いやすい靴であれば、アジアの一定のマーケットでは米国製や英国製の靴よりもフィットする靴として受け入れられると素人目には思えてなりません。

海外にはそもそも市場の有無、それ相応の現地の商習慣や為替の変動リスクを考慮した貿易・流通、また「REGAL」という商標の問題もありそう簡単にはいかないのだろうなと思いつつ、製造は一部アジアでも行っていることを考えると勝ち筋が全くないわけでもない気がします。このあたりは当然にリーガルコーポレーションの経営陣や企画部門も考えているはずなので、外からはわからない課題があるのだろうとは理解できるものの、これだけの靴を作る技術はこれからこうした靴に対する需要が高まる国への提供を通じて、ぜひニッポンに残ってもらいたいと勝手に思ってしまいます。


今年(2025年)の大幅なリブランドがあったのは、これまでのブランド戦略では十分なブランド価値を保てなかったのかもしれません。「リーガル」と検索しようとすると「リーガル 恥ずかしい」のようなサジェストさえ出てきます。

最近リーガルコーポレーション公式Youtubeの存在を知りました。自分のこれまでのイメージと全く異なる、若い人がおしゃれにチョイスする靴、単なる靴の形をしたものを量産するのではなく機能性とデザインを両立させた靴、それを若い人の力でカタチにする素晴らしく格好いい会社に見えます。最近1年間に作られた公式Youtubeを見てもまだ「恥ずかしい」と思うのならばそれはセンスの違いなので仕方ありませんが、私は浅はかなにわか知識で、勝手なイメージでリーガル見ていた自分がそれこそ恥ずかしくなるくらいの衝撃を受けました。

コンサルや広告代理店に多額の費用をかけて広告出す1/10の予算でもこちらに振り分けたら、ブランドイメージを劇的に変える起爆剤になるのではないか、そんな可能性を感じます。おじさんおばさんが会議室で個人的な経験しかよりどころのない議論をぶつけ合っているのではなくて、靴が好きな若い人たちが自分たちが楽しめる靴についてときには感情で、ときには理論的に取り上げられています。少し堅めな私から見るとコンテンツの中にはメーカーの発信する情報としては一貫性がないものもある気がしますが、お葬式場の砂利の話やパンプスを履けない人に向けた説明など、ときどききらりと光るコンテンツがあります。傾向としては男性の解説はマーケットインというよりは自分の経験やこうした方が良いのではないかという想い中心のプロダクトアウト型、女性の解説としてはユーザー視点のロジカルなものが多くいちユーザーとしての視点のものが多い気がします。メーカー公式Youtubeでも「とぅー」と発音する人が結構いましたので、リーガル的にはここあまりこだわりなさそうです。

いずれにしてもリーガルの今回のリブランドに合わせて、靴のセレクトショップとSPAが共存する靴を中心とした専門型アパレルなんて位置づけも十分狙えるポテンシャルを感じました。続編が楽しみです。これだけのコンテンツが公式サイトからすぐに辿り着けないのが不思議です。


だいぶ話がそれましたが10ELDDに戻します。

リーガルのウイングチップには不動の2235NAがあるので、W10BDJが出た時には「いい靴だけど早めになくなりそう」と思っていたらやっぱり販売終了とお馴染みのパターンではありました。終盤にはセールなんてのもあったみたいで、もうこういう靴は一発企画なんだなと思っていたところ、およそ10年の時を経てまさかの再登場です。しかもリーガルでは専用ページも作る力の入れよう。

2235NAのスコッチグレインレザー(シボ革)は好みもあるので、スムーズレザータイプのウイングチップというところにこの靴のポジションがあります。ウイングチップは過去にも登場しては消え、また登場しては消えるなんてことを繰り返しているデザインではあるので今回も「いつまでもあると思うな」でしょうか。これを書いている2025年10月現在ではまだ在庫は潤沢なようです。この靴は「買い」です。


デザインは2235NAとは異なり、ヒールカウンターが独立しているフルブローグタイプ。全体的なデザインは英国靴寄り。トリッカーズやチャーチ、ジョンロブあたりを意識して極めて普遍的なデザインで作っていったらこうなった、という印象。トウスプリングはあまりとっておらず、いわゆる変な現代的解釈がないクラシックな靴です。

カントリーテイストを強めにする外ハトメやノッチドウェルト、ダブルソールの360度グッドイヤーウエルト製法が採用されており、スーツスタイルに合わせるには少し野暮ったく、カジュアル専用なデザインではないでしょうか。カントリーテイストな靴を狙っていてトリッカーズのバートン買うことを検討している人はぜひ一度どこかでバートンに足入れをした後、リーガルの店頭でこの靴にトライしてみてほしいです。


ラストが伝統的なものと比べるとつま先側を少し内側に振っているものの、少しトウが狭いのかボールジョイントと親指の先が当たります。小指側もトウに向けてシャープなラインとなっていることもありタイトな気もします。ただここは面で当たっているようでタコになるようなことはありません。ふまずも絞ったややメリハリの利いたラストであり、見た目から受ける印象とは異なり、フィッティングはシビアかもしれません。



履き口が少しキュッとしているので履き始めはタンが足首に少し刺さってきます。インソールのヒール部分はややカップ状になっていたり、踏まずの絞りが効いていることもあって、足が前滑りしている感じは受けません。W10BDJの時も思いましたが、タンが靴の外側に向けて少しオフセットされているものだと考えられます。ここはあまり硬くないパーツなので少し履きならせば気にならなくなります。

私は足が薄めなので二の甲(ウエスト)から三の甲(インステップ)が少し大きめに感じます。羽根の形状もあり、二の甲にはやや空間を感じ、歩くときに無理な力が靴にかかるのを感じます。一番足首側の羽根の開きが5mmほどなのでW10BDJと同様に履きこむにつれて締め付けるのが難しくなりそうなのが唯一の難点でしょうか。

くるぶしのあたりは少し下がっていて食い込むようなことはありません。ここのラインは2235NAなどのリーガル定番のパターンから大きく改善(?)されています。足が薄めな人でも問題ないでしょう。

フィッティングは私にとってはリーガルの中では緩め系で若干緩く感じます。ちなみに私、ビジネスシーンではスーツしか着ない人時代が長かったので、ビジネスではドレスの黒靴、カジュアルは茶系の靴と完全に用途が分かれていて、かつざっくり履くような2235NAやらW10BDJやらは厚手の靴下前提でフィッティングを考えていました。今回の黒色はオフィスカジュアルで履いていることもあり、靴下はそこまで厚くなく、それがより一層の緩さの感覚につながっているようです。


インソール、アウトソールともに栃木レザー。ソールにもデカデカと栃木レザーの刻印があります。

栃木レザーのダブルソールはミンクオイルを塗ったうえでベランダと玄関で少しずつ曲げました。家族がいると新品の靴とはいえ靴を履いたまま室内を歩き回るわけにもいかないので狭い玄関とベランダで挌闘です。

ある程度靴が曲がるようになったころを見計らって、室内業務中心の日に履き始めました。室内はカーペットやタイルが中心なのでアスファルトの道路を歩き回るよりつま先のヘリが抑えられそうなのと、足が痛くなっても脱げばいいという気楽な環境です。室内でそこそこ歩くと、自然に自分の足の形に合わせて屈曲しますので、1日が終わるころには最後のプレメンテナンスがしあがる感じです。

実際には初日から足が痛くなるようなことはなく、それなりに屈曲の癖をつけてから履いていますのでつま先の減りも気になるほどではありませんでした。

靴は履いてなんぼですので、よく言われるような無理やりキャッチャーすわりをしたり手で折り曲げるなんて苦行をしなくても、痛くなっても何とかなる環境で歩くのがベストです。外回り中心の仕事であれば通勤時だけでも、もしくは土日のショッピングセンターあたりである程度履きこめば十分です。足に合わせながら曲がりの癖をつけるのが自分にとっては気持ちがいいです。

私は新品時にソールにミンクオイルを入れるため、履き始めはかなり滑ります。徹底した本気ソールメンテナンスの後も似たような感じなので慣れっこではありますが、革靴を履きなれていない人はこうした滑る状態で動き続けるのも危険ですので、逆にソールが少し剥けるように硬い路面を歩くもありなのかもしれません。革靴が滑るのは結構最初のうちだけで、ソールが少しすれてくると私はそれほど滑るような印象はもっていません。

いろいろな人がレザーソールについて語っている内容を見るに、レザーソールは滑るとか、雨の日はもっと滑るなんてことが書かれていますので、スニーカーなどのゴム底に慣れている人にとっては結構違う感じなのかもしれません。いずれにしても、履きはじめのうち人が革靴に慣れるまでと、革靴が履いている人に馴染むまでは注意が必要なのかもしれませんね。

室内履きを最初のうちにたっぷりしたことあってつま先のヘリは最小限です。靴の構造的にはどうしても歩くと新品状態からはつま先が削れるはずです。その削も多少は意識してパーツが組み合わさっているのが革靴だと思っています。私はつま先スチールはめちゃくちゃ格好悪いと思う人なので、多少に減りはレザーソールならではと思っています。初回のうちはつま先の削部分にしっかりとミンクオイルを入れて、かつ革を締めるようにしてヘリを減らします。スチールの取り付けも、信頼できる職人さんや工房でない限り、帰って靴を傷つけてしまうようなので、あえて履き始めからつま先をいじることはないと思っています。



アッパー側はBoot Blackのデリケートクリームを気持ち多めに塗ってから、これまたBoot Blackのクリームを薄めに塗りました。製造から1年ほど経過したモデルということもあるのか、初回はデリケートクリームがよく入ります。その後ブラックの乳化性クリームをまんべんなく塗りました。Boot Blackのクリームは程よく艶が出るのでカジュアルには重宝します。アッパーだけでなく、ウエルトの部分もブラシでよく塗りこみました。

色の違いなのか素材の微妙な違いなのか、それとも初回のお手入れの違いなのか、黒色のほうが少し大雑把なしわが入ります。ただこれまでREGALや初期RENDOで採用が謳われていた国産キップに比べると明らかにきめが細かく、それでいてしっかりとした革という印象です。


これまで黒のカントリーテイストなウイングチップはどのようなシーンで履くものなのかイマイチわかっていませんでした。ビジネス寄りな堅めのスーツスタイルの足元には少しヘビーすぎるきらいがありますし、かといってブルージーンズや明るめのチノに合わせるには今度は靴だけがお仕事モードのような雰囲気になってしまう気がします。

このデザインであればどちらかというと茶系の方が合わせる服が多そうに思えます。

黒についてはこればかりは私のセンスのなさではあるとしても、暗めのジャケパンやフランネルのグレーくらいしかスイートスポットないんじゃないかとさえ思っていて、このデザインだったら茶系だよね、とずっと思っていました。

毎日スーツ族であった私も、最近はビジネスカジュアルでブラックデニムなんて日が増えました。当初は足元にスニーカーを合わてこれはこれで歩きやすさや気軽さなどいいところはたくさんあるものの、やはり足元が軽快すぎてなんとなく物足りなさを感じていました。単に革靴が好きだというところも大きいかもしれません。

そんなわけで、少し足元を大人に戻してみたらどうかなと思えてきました。ここで黒のウイングチップの登場です。

パンツが黒系なのでいちばん下の靴に黒をもってきてもまったく違和感がありません。むしろ中途半端にカジュアルな明るい色のほうが大ハズレです。ドレス寄りの靴だと、今度は靴がないから仕事用を休日に無理やり履いているおっさんになってしまい、これまた逆効果。

外羽根スタイルの重厚な黒のウイングチップだと、それなりに大人感のあるカジュアルスタイルに落ち着く感じです。ダブルソールのコバ張り出したがっちりな見た目も、大人の重厚感に一役買っています。



不思議なことに、わざわざ一般流通可能か型番で再登場しているにもかかわらずリーガルの公式サイトくらいでしか買えません。近くに店舗があれば店舗でお試し対象なので2235NAと同サイズと上下ハーフサイズくらいを取り寄せれば自分にあったサイズが見つかります。私はW10BDJを履いているため同サイズ狙い撃ちでしたが、個体差があるのであまりサイズ表記に拘らずに直感的にその日履いている靴と比べてどうかでいい気がします。

これを書いている2025年11月現在で税込52,800円(税抜48,000円)。
スニーカーも含めた紳士靴全般のなかではとても高い靴ではありますが、これだけこだわった靴をある程度手作業も入れて作ったらこのくらいしないとニッポンの所得も増えないわな、という印象です。

流通や小売りがあるので私たちは実物へのアクセスが容易になり、素材や色をこの目で確かめたりフィッティングについて相談に乗ってもらえます。一度に複数の商品を比べながら選択できるなど必ずしも流通マージンが悪いわけではありません。海外のブランドなどでは正規代理店には一定品質の合格品の中でも特に高い品質のものを回しているなんて話もあります。

せっかく全国のパートナーと開拓しているREGAL SHOESがあるのに、やっぱり価格が高い靴も一般流通(特に通販)を狙いに行くあたりが大きなメーカーの苦しいところでしょうか。各地のフランチャイジーが十分な利益をあげるモデルって作れないもんでしょうかね。靴全般が売れなくなる中、真っ先に高級靴を扱っていた法人が苦境に立たされているようです。フランチャイジーは独立して経営しているので各自の経営努力に委ねるほかありませんが、リブランドをしてまで守ろうとしているリーガルというブランドこれまで一緒に支えてきたパートナーを単なる販売のエンドポイントとしてではなく文字どおりのパートナーとして共生できるしくみができるといいですね。

「リーガルを扱いっていたから苦境を乗り越えられた」と全国各地のREGAL SHOESオーナーが思えるようなリブランドの成功を願ってやみません。


10ELDDはとても素晴らしい靴です。見た目も、作りも、履き心地も。

これが私の手元にあるということは、企画をする人がいて、靴を作る人がいて、それを工場から運ぶ人がいて、販売をする人がいて。

そうした仕組みを作って維持している会社があって、インフラを支える企業があって、そこに人を送り出す学校があって。そうした多くの繋がりの中からこの靴ができたことが一つの奇跡です。この靴に関わる人の誰か一人が違う人生を歩んでいたら、この靴が私の手元にきていたかどうかわかりません。

多くの人の関わりがあって、10ELDDという靴がここにある。


2025年8月1日金曜日

New Balance CM996

クラシックなスニーカーではひとつの定番、ニューバランスCM996。


CM996はニューバランスの直営店のほか、日本全国に店舗があるABCマートさんからセレクトショップまで、購入できるところがたくさんあり入手が容易です。世界全体でみるとニューバランスの本場米国では996は販売されておらず、英国やフランスではMade in USAモデルだけが取り扱われ、アジアでも大きな市場である中国大陸では扱われず、日本と韓国くらいでしか売られていないリージョナルモデルです。

同じアジア製造でもグローバルモデルといえるML574とはだいぶ違いますね。大谷翔平選手がニューバランスの574をスパイクにしちゃったのは、単に574がグローバルの誰もが知るスタンダードモデルだったからなんでしょう。


一方で、このニッポンではどちらかというとML574と比べても力を入れて販売されているのがこのCM996です。

日本ではすでにスニーカーとして一定のポジションを確立したニューバランス、ML373とかML565とか公式サイトに販売されていないモデルも量販店向けに流通しています。いまやいたるところで「N」マークの靴が売られていて、全国のイオンとか靴流通センターでも価格を抑えたラインが売られています。実際に街中で意識してみるとML373は結構履いている人多いです。

ニューバランスの1万円から2万円の主力ラインはスニーカーの一つの基準点のような作りです。これだけのものを作れるのに、なぜか数千円しか安くないのにあらゆる良さをなくしてしまったモデルがまた量産されているのも不思議なメーカーです。

安物カラコン然り、外しちゃいけないポイントを外した低価格品ってのはどうなんでしょうね。売る側の技術者倫理みたいなものの観点からどうなんでしょう。

そんな靴世界中にいっぱいあるし、歩けなくなる致命傷を与えるようなものでもないし、それなりに真面目に作っている部分はあるってことでしょうか。だとすると矯正靴という出自に対する矜持を期待するのは勝手な部外者のノスタルジーかな。



CM996に話を戻すと、この靴は2万円以下のファッションスニーカーの一つの答えのような気がします。

ランニングとかトレイルランとか特定の目的を持って靴を選ぶ場合を除いて、日常のタウンユースとして出かけるために履く靴、としたらここから引き算をせずにこれ以上を求めるとなかなかいい感じのものが見当たりません。

強いていうならこれに「防水」を求めるとCM996のゴアテックス版、ってことになりますが、ここまで行くともう普段使いの終着点とさえ思えてきます。


このCM996、元々は1988年に登場したランニングシューズM996のアジア製造版です。

M996は米国の工場で半ば手作りしているので値段が高くなってしまいます。製造原価が高いのに加えて関税もかかり、日本では3万円をゆうに超える金額です。グローバルではこちらの米国製996が売られています。

スニーカーは長年履き続けるということに重きを置いていないこともあり、こうなるといくらいい靴と言ってみたところで、国内のアシックスあたりには太刀打ちできません。CM996は関税と製造コストの安いアジア圏で製造している案外ニッチな市場向けモデルです。

オリジナルのM996と比べると、ソールの素材が少し変わっていたりと、まんまレプリカではなく、微妙にアップデートがされているようです。

CM996はランニングシューズを出自としたタウンシューズなので、いまではファッション性で履かれているケースがほとんどとはいえ、デザインだけで勝負をしているような靴ではない基礎力があるような感じです。


まずソールから。

ソールは平坦なロードで履かれることを前提としているため、ML574よりソール全体は薄く見られがちですが、実はそこそこかかとにはボリュームがあります。店頭で見た限りでは米国製のM996より、アジアCM996の方がソールが少し薄い気もしますし、実際に履いてみた感じではML574よりは明らかに薄く軽く感じます。


アウトソールのパターンは基本的には前後(ほとんど前方)に向かって進むことを前提にしているようです。屈曲性がよく、かつ前後に滑りが少ないことを意識したパターンです。


あまり意識したことないですが、ソールの形状的には横滑りには弱いように見えます。タウンユースだと濡れたタイルなんてシチュエーションもあるので、前後全振りなソールは微妙に影響が出そうですがいまのところそのような経験をしたことがありません。凹凸が少ないソールがゆえに水はけがよいのでしょうか。

全てが平行なソールパターンなので屈曲性は良いです。細かく筋が入っていることもあって時計のベルトみたいな感じで足の屈曲に合わせてロールしやすい形状です。

全体的なラストは足なりに内側に振られていますが、ソールパターンは進行方向に垂直になっています。この辺りの割り切りはさすがランニングシューズ。最近ではここまで露骨に並行なのはNIKEの一部モデルくらいでしょうか。

カーボンプレートの登場以降厚底化する以前の考え方であれば、ソールは薄いほうが軽いけどクッション性がなくなる。ランニングの際に母指球から親指に力が抜けていくときには進行方向に向けて靴が垂直な状態になっているので、開発は40年近く前の時点での技術と考えたとき、少し厚めのソールにしても屈曲性が保たれるCM996のソールパターンは理にかなっているように思えます。


ミッドソールは日本の技術も入っているC-CAP。日本の月星化成(いまのムーンスター)がかかわっているとかいないとか。というか、ムーンスターはニューバランスの日本法人設立に大きくかかわっていますし、いまでも会社経営にかかわっている感もありますので、ある意味グループ内技術みたいなものかもしれません。

何となくENCAPよりへたりが早い気がしないでもないですが、トレイルラン向けの靴と比べているのでそう感じるだけかもしれません。

インソールはあまり特長が書かれていることがないですね。ニューバランスからはより高性能なインソールが販売されています。そのレベルのものに取り換えるということであれば初めから最新の技術を使ったランニングシューズを買えばよいので、もともと入っているもので日常使いは十分かと。

傾斜はそれほどでもなく、靴の前半部でつかむような印象のML574と比べると、もう少し足の後ろ側を使う靴です。脛を少しつかむような形になっていることもあり、サイズを合わせてはくと足首周りが安定します。

舗装が行き届いた日本の都市部で履くならCM996のほうが合う人が多そうです。


外見はメッシュとスエードのコンビ。


革の部分は本革を採用しており、なんとなく丈夫そう。人工皮革だとどうしても加水分解したり破けたりがあるので、ボールを蹴ったりなどのシーンも考えると本革が使われているのはいいですね。加水分解しないソールと合わせてそれなりに長持ちするかもしれません。

実際に、これまでも何足かこの手の靴を買っていますが、ニューバランスの本革採用モデルは、たいていは革の部分よりも履き口のビニール系の部分からボロボロになります。

親指側の革は少し大きめに取られており、指先側から穴が開くようなことはないでしょう。


ラストはSL-1ラストと書かれており、ニューバランスの中ではスリムなラストといわれています。とはいえ、この靴もう何十年も前に欧米人向けに開発されているので、甲高幅広が過去の記憶となったいまの日本人にとっては、それほど狭さを感じることはない人も多いかと思います。私も少し幅はタイトに感じることがあるものの、しばらく履いていると(やや形が崩れているような気もしつつ)あまり気にならなくなります。逆に2Eなんてモデルがあったらゆるゆるではないでしょうか。


ランニングシューズだからか、かかとの部分とNマークが反射板になっています。タウンユースとしては少し薄暗いところを歩くとき、車やバイクと事故を起こす可能性が減るのでいいですね。この辺りはトレイルラン用を出自とするML574と異なる設計思想です。



冒頭でも書きましたが、このCM996、北米やヨーロッパ、オセアニアでは販売されていません。Made in USAモデルのM996が扱われている国は多いですが、作っているはずの米国ではM996自体が販売されていません。

グローバルもであるであるML574は世界中のニューバランスショップで売られています。国内ではML574と双璧の人気ともいえるCM996が、海外では全く売られていないのは意外です。ほとんどが日本と韓国向けに作られているような靴なのに、なぜかウイズがDなのも不思議です。

日本国内には565というイオン系で売られているニッチなモデルがあり、別に574か996でいいんじゃない、と思っていましたが、このCM996もグローバルで見ると結構ニッチなモデルだったんですね。


円安をはじめ様々な理由から価格が上昇していても、十分価値ある靴ではないでしょうか。確かに Made in USA モデルはいいのでしょうけれど、このCM996も十分な靴に思えます。ある意味ローカルモデルなのにカラーバリエーションも豊富なのは、それだけ日本ではニューバランスが売れているということの裏返しです。

人と被ることも多いですが、革靴の世界であればみんな同じような靴履いているし、本来のドレスコード的には堅めのビジネスシーンだとよほど靴に興味がない人でなければ区別できない程度の違いしかありません。

靴が被っても、トータルコーディネイトが異なればその印象は全く別モノでしょうから、変に意識せず、定番だからゆえの安心感を買うというのもありです。


実はこれまでCM996はちょっと避けていました。

スニーカーはそんなにいらないし、なんとなく米国製か英国製に惹かれるし、どちらかというと公園で遊ぶ用の靴が欲しかったのでランニング用よりはもうちょっと汎用的な靴のほうが良かったしということで購入する理由がありませんでした。

あまりにもメジャーすぎる感じがするというのも一つの理由だったかもしれません。

ここにきて、仕事上でスニーカーのほうが都合がよいことがあり、そんな中で選ぼうとすると、逆にCM996があっている気がしました。

運動比率が少なくて、むしろタウンユースで普段使いということになると、ML574よりCM996に軍配が上がります。なにせ歩きやすいしML574よりは滑らない。



ML574に比べると少しだけ値段が高いのも、加水分解しにくい素材が使われていることで耐久性が伸びればイーブンではないでしょうか。

湿度が高くて、路面は舗装されていることが多くなったニッポンではCM996が必要だったんですね。

ある意味、ニッポンらしい靴なのかもしれません。



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2025年7月23日水曜日

REGAL 2177N

 ローファーの定番、リーガル2177N


典型的なビーフロール型のコインローファー。
いわゆるローファーのよくあるデザインのひとつ。

ローファー、特にコインローファーは日本では中高生が履く靴という印象を持っている人も多いけれど、かのマイケル・ジャクソンはG.H.Bassのローファー履いてステージで激しいダンスをしていたという話が良く取り上げられるように、アメリカの一つのシンボルであるともいえる。


リーガルの企業サイトによれば2177は1971(昭和46)年に発売開始されたそうな。2025年現在で54年。そう思うと歴史が長いのか短いのか微妙。私とあんまり変わらないくらい。

デザインは発売当初から変わっていないとのこと。製造場所が変わったり調達関連で超マイナーアップデートくらいはあるとしても、実態として古き良き時代から現代まで一貫して生き残っているモデル。それだけでもすごい。当時からグッドイヤーウェルテッドで作られていることが読み解ける。

ローファーを含む紐なし靴はスリッポン(Slip-On)と呼ばれる。寝るとき以外は靴を脱がない欧米文化の中では、日本人の感覚でいうならそれこそスリッパ(Slipper)のような位置づけとして登場したようなことが言われている。日本人の感覚ではわかりづらいけれど、欧米人が靴下を見せるのは日本人が下着を見せるみたいな感覚だそうなんで、家の中に入ったからといっても靴はやっぱり必要で、でも少しリラックスした靴が良いよね、といったニーズがある。

それが次第に(マーケティングもあるだろうけど)室外靴としての地位を確立して、これまたアメリカの一つの象徴みたいな位置づけまで上り詰めた。ローファーを履いて大人になった東海岸の学生たちは、今度はそれをビジネスシーンに持ち込もうとする。それがタッセルローファーの始まりとかなんとか。

で、アメリカのブランドと提携して始まったリーガル(当時は日本製靴株式会社)は当然ながらアメリカでの定番がラインナップの主力となるわけで、VANのローファーを経てこの2177Nが登場する、そんな流れかな。


ローファーはマッケイ製法のような返りの良い軽めな製法が採用されることが多いなか、2177Nはリーガル得意のグッドイヤーウェルテッド製法。
紐がない靴をグッドイヤーウェルテッドという堅めになる製法で作っているので、当初は返りが悪く、足になじむまでに時間がかかる。

リーガルの商品紹介でも「履き始めは堅め」と書いてあるように、まっとうなサイズ合わせをした場合は、履きなれるまでに相当な覚悟が必要な靴。いわゆる昔ながらの靴であり、現代に多い当初からの履きやすさを求める靴とは全く設計思想が異なる。

よく言えばなじめばとても丈夫で長持ちする靴でもあり、悪く言えばそれ以前に脱落者を大きく生み出す靴ともいえる。グッドイヤーはリペア面では優位とはいえ、いやこれ丈夫だしリペアまでいきませんって。


アッパー素材は2504NAと同じようなガラス仕上げの革。肉厚なレザーを使い、ライニングがない作り。リーガルはこの手のガラスレザーの定番が多い。発売当初から同じデザインの靴ではあるけれど、タンナーが手に入れることのできる原皮の質は変わっているといわれているし、仕上げの段階で使うことができる薬品も変わってきていると思われる。その中で同じような品質を変わらず提供し続けるって結構大変なことなのではないだろうか。

ガラスレザーは表面に樹脂コーティングをしているので、雨にも比較的強く、日常のお手入れにもそれほど気を使わなくてもきれいな状態を維持できる。そこそこ履きこんで、クリームでお手入れするとなかなかの光沢も出る便利な素材。一般的にはメンテナンスに気を使わないようなことが強調されるけれど、鞣して仕上げる過程においては職人の手触りによる仕上がり感の確認が重要という話を聞くに、やはり革としての「何か」がある。


きれいに保ちやすいこととお手入れをしないでもよいことは別。もしお手入れをしなくてもよいという話をする人がいたら、そこには素材そのものに対しての感謝も、自然界のばらつきを相手に一定の高い品質を保つために精魂込めているタンナーの職人さんにも、それらをもとに履きやすさと丈夫さの両立をする靴の形を作り出した靴職人の方にもまるで敬意がない。靴をお手入れするかどうかを決めるのは素材ではなくて、あくまでの態度の問題ではないかと思う。


ソールはリーガル定番ラインで使われているフラットなゴム底。リーガルの解説による滑りにくくクッション性も意識して作られたとある。実際にこのソールはフラットな見た目にも関わらずレザーソールに比べるとはるかに滑りにくい。

ソールの返りはレザーに負けるものの、サイズがあっていればかかとがしっかりついてくるので十分なしなやかさはある。


サドルサイドのビーフロールやかかとのキッカーバックなど、アメリカンスタイルを意識したデザイン。いわゆる拝みモカ縫いもシンプルな印象。これもあってキレイ目ファッションよりも少しカジュアル強めのスタイリングに合うと思う(と、センスのないといわれる私が言ってみる)

キッカーバックはもともとは靴を脱ぐときに他方の足で引っ掛けて手を使わないで脱ぐことができるためのものといわれている。ただ、そもそも紐のないローファーって脱ぐのそんなに大変かな。手でつかんで引っ張るだけで脱げるから、紐を扱わないでいいので手間が少ない。(それすら面倒というLoaferな靴?)
むしろこのキッカーバックがあることで、それこそアメリカンスタイルなデニム(ジーンズ)を合わせるとキッカーバックに裾のステッチが引っかかって歩きにくい。


全体的にはノーズも短く、サイズが小さい人であれば丸みが強調されて実サイズよりコンパクトな印象になる。


定番ラインとしては珍しく製造国はタイ。シンプルな作りでもあるし、価格はそれなりに抑えて定番を維持したいしでの選択かな。おそらくは関税も比較的安いゾーンにあると思われる。

みなさんおなじみ矢野経済研究所さんのレポートによると、紳士靴市場は2025年度予測で1,361億円。コロナ前の2018年度は1,833億円あったので、コロナ禍から戻しつつあるとは言え4分の3。日本では革靴の売上が減りつつある中で、本格靴を作ることができる靴職人さんも減少しているということは予想できる。最近では円安だから日本の丁寧な靴職人さんが作った靴を海外で販売するなんていうこともできそうだけど、日本発だとこれまた関税がかかったりでうまくもいかなそう。




リーガルの歴史が長めな靴は、丈夫であるがゆえになじむのに相当な時間を要する。

購入して半年くらいわりと集中して履いて、延べ50日分くらいは履いてやっと終日履けるようになった。私の体重が軽いこともあるのか、本来多少沈み込むはずのインソールにほとんどフットプリントがつかず、沈んでいる気配がない。ローファーだからあまり靴の内寸が変わらないようになっているのだろうか。相変わらずかかとの外側が痛い気がして、少しサイズがタイトな感じは続いている。

リーガルの公式サイトでは「疲れにくい」と書いてあるけれど、それ以前に「痛い」を通り越すのが大変。次第に革が柔らかくなってきて、そうなると終日履くことに問題はなくなるものの、「履き心地」にフォーカスするような靴でもないと思うので、リーガルの中の人がいうほどの期待感を持つのも危険だなぁという気がしている。

発売当時は当初は固くてもそのうちなじんで、その分丈夫みたいな靴がいい靴の一つの指標だったのかもしれないけれど、その常識がなくなった現代では誤解を招きやすい靴。


ローファーに限らず本格的な革靴はある程度の靴の変形を想定して選ぶ必要もあって、最初はややきつめを選ぶのがセオリーといわれている。だからきちんとしたフィッティングができるお店で相談しながら選ぶ靴になる。サイズを無視して、フィッティングの印象だけで買うほうがいい。

紐がないローファーはその中でもかなりフィッティングがシビア。私は最寄りのリーガルシューズで試し履きして購入。2504NAと同サイズを中心に前後ハーフずつを出してもらい、ふだんやや緩いと思っている2504NAと同じサイズを最初に履いたところ「足がはいらん!なにこれタイト!」という印象だったのでその下のサイズは止めてハーフ上と比較して比べてみた。

ハーフサイズアップだとふだんの履き心地に近い気はするものの、甲の外側にゆとりがありすぎる感じがした。履きなれるにつれ以前のパカパカになりそうな予感がしたため、結構きつめに感じた2504NA同サイズをチョイス。まさか同じサイズ表記でも履いた感じがここまで違うとは、という印象で店を後にした。

紐がなくてアジャストできないがゆえに、ちょっとしたきつい緩いがダイレクトに一日中伝わってくる。

これまで自分で履いた限りだと、最初からいい感じで継続していい感じが継続するローファー(ケンジントン)もあれば、この2177Nのように文字どおり最初は血だらけになるくらい痛いけれど、1年くらいたってやっと履けるようになった靴もある。ただそれでも「履きやすい」という感覚はまだないので、となるとなじむまでにどれだけ履き続ける靴なんだ、という印象。

一足を履きつぶすみたいな履き方であればもう少し早くなじみ、丈夫であるがゆえにそのいい感じの状態が続くといったところだろうか。


ローファーを選ぶ際には「きつめを」というのはある意味あっていると思う。間違いなく多少は緩くなり、それを紐で修正できないので。ただ、この「きつめ」という言葉が独り歩きして間違った解釈でとらわれていることが多い気がする。
(いきすぎて「きつめ」ではなく「小さめ」と書かれることもある)

「きつめ=サイズダウン」ではない。

紐に頼らず靴の構造だけで足を支えるローファーと紐を使って調整が可能なオクスフォードシューズでは靴を作るためのラストの設計思想がそもそも異なっている。

同じリーガルの定番モデルであるローファー2177Nと、プレーントウの2504NAとでは同じサイズでも明らかに履き心地が異なる。2177Nは2504NAと比べてかなり甲を抑え、かかともややタイト目な作りになっている。2504NAだと、仮に紐を結ばないと全長も少し余裕がある感じがする。一方の2177Nはそのゆとりを感じるサイズと同じサイズ表記のものを選んでも、靴ベラなしには絶対に履けないくらい全長全幅ともにタイト。

これまで2504NAを2足、2177Nも2足買って履いているので、この同一サイズだけど履いた感じが全く違うというのは個体差ではなくモデル差だと思っている。2504NAだと少し緩めに感じるから、ローファーということもありハーフサイズ落そうなんて感じでネットで買ってしまうととんでもないことになりそう。

よく「ローファーはハーフサイズ落せ」という意見を目にするけれど、これは「きつめにする」という意味を誤解している。ローファーは専用のラストで作られているので、たいていはオクスフォードシューズと比べると同サイズでも「きつめ」に感じるはずである。

むしろ、同サイズできついからといってサイズアップするな、ローファーなら紐靴と同サイズならきつめになるのだからそれを正解と思いなさい、というアドバイスではないだろうか。

こればかりは実際に履いてみないとわからない。2177Nは2504NAと同サイズだと明らかにタイトに感じる。むしろ同じ感じのサイズ感はローファー側をハーフ上げたくらいかと。シェットランドフォックスのケンジントンのように同一ラストで紐靴とスリッポンを作っている場合については同じサイズだと二の甲からつま先まではそれほど変わらない印象なので、やはり2177Nは専用のラストが使われているか、甲の部分を抑えるために相当きつめにサドル部分を設計している。

ローファーをハーフ落として選択するということは普段の靴のサイズがよほど大きいか、緩めのフィッティングに慣れてしまっているのではないかと。内周のためだけにハーフサイズ落してしまうと全長が変わるので、小指やかかとになんらかのダメージが出る気がする。このあたりは個人の足の形にもよるだろうから、やっぱりローファーはフィッティングしてなんぼであるといえる。

この靴を履いてみると、2177Nを起点にラストを考えた場合2504NAや2235NAがゴツ目の足を想定して大きめに作られているという話は本当にそうなのか、という気さえしてくる。私は足は結構薄目なほうだけれど、それでも購入当初はサドルの部分がかなりタイトで、甲側にマメができそうなくらい痛めつけられた。かかとについては今も外側のあたりが気になっている。

ゴツ目の足だとむしろ入らないか、入ったとしても甲の血管切れてしまうんではないかと思うほど、かなりタイトな作りに感じる。フィッティングのためにサイズを落として履くような靴ではなく、むしろ上げて履く人が出てきてもおかしくない。リーガルが日本人はすぐ緩めの靴を履きたがることを見越して、同一サイズでかなりタイトに仕上げているのではないかと思うくらい。

リーガルの靴は大量生産を前提としているので、ある程度平均的かつ許容度が高めなラスト設計をしているはず。その前提でこれだけフィット感が違うのだから、やっぱりローファーはきちんと履いてみるということが大切。


お手入れはあまり気にせずブートブラックを使っている。ふだんの簡単なメンテナンスにはニュートラルを使い、5回に1回くらいブラックを使う感じ。毎回ブラックでないのはそこまで色を載せてもガラスレザーには色がつかないし、逆に合わせるパンツの裾に色が移りやすいという理由。でもニュートラルだけだとしわの部分やモカの折れ目などが目立つので気休めに。

お手入れはやや回数多めに。この手のローファーは汚れが目立ったりすると急に学生の指定靴っぽさが強くなるので、ピカピカにメンテナンスされているほうがいい。


2177Nは日本のローファーの一つの定番。

高校生が履くには少し値段が高いという気もするけど、一度は履いたことがあるなんて人は結構いるのではないだろうか。

ちなみに私は高校時代はスニーカーオンリーだったので、革靴に目覚めるのは大学生になってからだった。最初に買った靴は2236NAだった。

若気の至りで20代前半のころにJJ17という当時の若者がどうしてこうなったのかというローファーを買ったのだけれど、明らかにサイズミスをして結局履き続けることができずに手放したことがある。当時はスニーカーサイズに比べて大幅に小さなサイズになることが信じられなくて、お店の人の意見もあまり聞かずに購入してしまい、毎日パカパカ履いていた。

この印象を引きずっていたのでローファーは自分に合わない靴という決めつけと、ローファーはビジネスシーンには合わないという教科書による余計な知識があって、毎日スーツスタイルで働く自分としては目を向けることがなくなっていた。

40近くなり(いまさらではあるけど)やっと靴の適正サイズ感が持てるようになってきたころ、やっとローファーに手を出した。当時、シェットランドフォックスのケンジントンの履きやすさに感心していたころ、同ラストのローファーをみて、何となくローファー履いてみたいという気持ちが沸き起こってきた。試着したところこれがまた足にピッタリであることに気をよくして、同じラストで2足も買ってしまう。この体験が自分のローファーイメージを変えることになり、1週回って2177Nにも手を出すことになる。


ローファーは大人が自分の選択で履く靴で、結構履き初めは大変なこともあって、実店舗でじっくりフィッティングしながら買う靴。靴のサイズ感について購入者側もわかっていたほうがいいし、紐がないがゆえに靴全体で足を締め付ける履き方になる。歩き方も微妙に紐靴と違ってくる。若い人は無理して履かなくてもいいデザインの靴だと思う。

このデザインの靴を指定している学校の先生方に聞きたい。なぜこのデザインが必要なのか。紐がないことによって紐が巻き込まれてけがをする事故を減らせるというメリットくらいはありそうなものの、ローファーを指定するメリットが思い浮かばない。

ローファーをまっとうな靴屋さんで買ったことがある人ならば気づいているはず。きちんとしたフィッティングをして選んだとしても、それなりの伝統的な作り方で作られている革靴は履き始めの日から終日歩き回れるほど足にやさしくない。履き始めはかなり修行が必要なので、終日履けるようになるまでかなりの期間を要するということを。

もちろんこれはローファーだけのことではなくて、作りがしっかりしている革靴はたいてい最初は痛いものだし、逆に作りによって柔らかくもできるので全部が全部最初にカチコチなものばかりでもない。ただ、この紐のない構造はどうしても体に負荷がかかる。アジャストするパーツがないので、緩んだら最後、足が緩んだ靴を抑えるために必要以上の負荷を歩くたびにかけ続けてしまう。

外反母趾、ハンマートウ、靴ずれによる障害、腰痛...

靴はそういうものだとして気づかず体を痛め続けてしまう。

学校の先生方(というより理事とか経営の人たち)には声を大にして言いたい。外部が知ることがない明確な理由がないのであれば、ローファー指定を本気で考え直して欲しいと。
将来あるこどもたちが、このローファーで痛いのは嫌だから大きめを買う、ということがどれだけ健康を損ねているのか。

体のことに詳しい体育の先生とか、歴史から学ぶことが身についている社会の先生とか、合理的なデータを集めて分析することを教えている数学の先生とか、そもそも怪我を目の当たりにしている保健の先生とか。みなさんローファーの弊害に気づかないのだろうか。

将来外反母趾やハンマートウで苦しむをことになる児童・生徒をひとりでも減らすことができるのは現場の先生や学校運営に決裁権を持つみなさんにかかっている。


ここまで書くと、ローファーが体に悪い靴みたいになってしまっているけれど、適切なサイズを選んで、きちんとなじませる時間をとって、お手入れしながら履く分には問題ない靴なのだから、その選択する自由と時間の自由ができたときからでも遅くはなくて、若いうちにはもう少し足に対して優しい靴を履いてもらいたいと心から思う。

若い人が化粧をしないでもいい(しないほうがいい)理由と同じで、若いころの体へのダメージはのちのちの人生に大きな影響を与える。どうしてもローファーなら、本格ローファーは半年かけて休日に十分なじませて、最初の一足はスニーカータイプの構造のものにしましょうよ。ただ、ここまでするなら初めから足にやさしい靴履けばいいんじゃないかと...


2177Nはあまりにも定番的なデザインであるがゆえに恥ずかしさを感じてしまう人もたくさんいると思う。それだけ日本ではローファーは一定のポジションを確立しているわけだ。革靴の価格がどんどん高くなって、ローファーも気軽に履く靴ではなくなってきている。


ローファーはいろいろな意味で間違った場所で間違って履かれてしまっている靴。
50を過ぎたおっさんが格好良く履くのは難しいってことはわかっていても、なぜかときどき履いてみたくなる不思議な魅力がある靴。


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2024年12月15日日曜日

New Balance ML574

ニューバランスの中で世界で一番売れていると言われているモデル、ML574。


グローバルスタンダードともいえる定番で、文字通り世界中で広く売られています。


私、ふだんのスニーカーは主にニューバランスのM576を履いています。過去にはM1400を履いていたのですが、販売が終了してしまいました。


それからは同じSL-2ラストということでM576を履いています。休日も含めて革靴がほとんどであったため、スニーカーは1足を数年単位で買い替えるといったことをしていました。

カジュアル使いがメインのため、色はグレー。汚れが目立ちにくいという色合いもあり、公園でのちょっとしたボール遊びなんかもこれ一本でやっています。


今回はビジネスユースを目的として、ブラックのスニーカーを買い足しています。そのうちの1足がこのML574です。

M576が Made in UK であることに対して、ML574は同じコンセプトで製造をアジアの開発途上国で行うことにより原価を下げ、販売価格を抑えたモデルです。特に日本だと関税面から有利です。


公式サイトによれば、アッパー素材は「環境にやさしいエコな材料」である「ECOGREENスエード/メッシュ」です。メッシュ部分は本革と説明されています。


二層構造のミッドソールはニューバランスおなじみのENCAP。クッション性が高いといわれていて、確かに少しふかふかしたような履き心地です。ENCAPはニューバランスの標準ソール素材の一つであり、クラシック系の多くのモデルで採用されています。


ENCAPは軽さと耐久性を両立するためにEVAをポリウレタンで包んだ構造のため、このポリウレタンが加水分解しやすいと多くのサイトで書かれていますが、これまで私が履いたモデルでは特に問題になったことがありません。ソールより先に足首周りの内側がボロボロになります。

日本をはじめとした湿度の高い国々ではさすがに加水分解をするポリウレタンは厳しいとなったのか、アジアモデルのCM996はソールにポリウレタンを含まないC-CAPが採用されています。

おそらくは履き心地と性能(というかコスト?)的にはENCAPがいいのでしょうけど、店頭や倉庫での保管時に加水分解のリスクがあり、この手のクレーム対応するのもなんなので、アジア系モデルにはC-CAPを使っていると言ったところでしょうか。ややニッチな素材であるのか、CM996が欧米で売られていないことと何か関係があるのでしょうか。

個人的には少し硬めな履き心地ではありますが、接地感を感じるC-CAPもいいところあると思っていますが、膝や腰へのダメージ度合いなどいくつかの条件によってENCAPが有利なんでしょうね。もしくはC-CAPのライセンス料などが高いとか、別な理由があるかもしれません。

現在でも高級扱いとされ、ライセンス料などの価格転嫁がしやすいと思われるUSA/UKモデルにおいて、ENCAP採用がそれなりに多いので、第一優先はENCAPなのではなかろうかと思っています。


日本でおなじみCM996と比べると、ML574がトレイルランからオフロードを出自としていて、当初ロードランニングを目的にしていたCM996とはいちおうの差別化をしているフシも見受けられますが、タウンユースを目的として購入するほとんどの人が、この違いでどちらを買うか決めているケースはまずないでしょう。


ラストの違いを置いておくと、大きな違いとしてはやはりソール周りでしょうか。

日本だと996はC-CAP、574はENCAPとミッドソールの素材からその違いを説明されることがありますが、US製造モデルだと996はENCAPを採用しているので、ミッドソール素材ということよりも、あくまでもデザインコンセプトの違いだと思われます。

靴全体のコンセプトとしては元々はML574はオフロードでの安全性、安定性を意識した作りになっているはずです。

ソールのパターンだけでなく、硬さも違います。トレイルラン向けはソールが硬めになります。なので、街中で履くぶんにはCM996の方が屈曲性がよく感じられて履きやすいと思う人が多いはずです。購入のために多くのブログなどを参考にさせていただきましたが、たいていはCM996のほうが履き始めの評価が高かったです。それもそのはず、ソールが固くしっかりしていることも要求の一つであるトレイルラン出自の靴と、返りがよく軽い履き心地を要求されるランニングシューズを出自とする靴とでは、後者のほうが街中では歩きやすいに決まっています。(極端に言えば下駄と草鞋を比べるようなもの)

舗装されていない道を歩くために、ソールのパターンは前後の動きだけでなく、左右の動き(滑り)にも対応するような形状です。ML574の後継モデルのような位置づけもあるU574だと、このパターンの溝の深さがさらに大きくなっています。


この突起のせいか、雨の日のアーケードなど、もともと滑りやすい路面に対しては弱いです。もともとの靴のコンセプトがカバーする範囲からちょっとはみ出ているようなシーンではこの靴のマイナス側面が目立ちます。足腰が弱っている高齢者にはおすすめできません。

574の踵は大味の作りになっている分なのか、足首を包むように少し高めになっていてアキレス腱を掴むような感触が得られます。足首の保護という観点からしても少し包み込む形状のほうがオフロードでは有利と考えられます。

ニューバランスはブランドロゴを入れるためにぐるっと二の甲周りを大きな部材が一周しているので紐を締めた時の安定感があります。甲側を包み込んで、踵をスタビライザーで固めるという安定感重視の作りこみです。

踵の大きさについていうならば、ブーツなども踵が大きめですが、トレイルラン向けってほかの靴もこんな感じなのでしょうか。ニューバランスの利点であるスタビライザーの良さがちょっとだけ減衰してしまうのがもったいない。クロケットアンドジョーンズのオードリー3みたいにかかとが小さいモデルが出たら日本人にはいい感じになりそう。

シューレースの一番上から踵にかけての造形が、CM996はなだらかなカーブを描くのに対して、ML574はL字型になっていて、やや足との接地面積が多めになっています。

いまとなってはML574でトレイルランしようとする人はいないとは思うものの、公園で遊んだり、未舗装道路を散策するなんて時には適していると思います。


ラストはSL-2ラスト、SL-1がランニングを目的とした細めのシルエットであることに対して、ロードからトレイルランまでをカバーするために少し汎用性重視です。継続して単調なクッションを要求されるランニングと、ある程度の力のベクトルが一定ではなく臨機応変な対応が必要とされるトレイルランとの違いなのか、SL-1ラストよりは快適さと堅強性の両立を目指しているバランスがこのラストの最も売りなところです。

履いた感じ全体的にはSL-1ラストのCM996よりゆとりを感じるものの、やや前方へのドロップ気味な感じを受けますので、母指球から指先までを使ってしっかりと地面をつかむような感覚が得られます。

ラストの踵サイズに比べてアウトソールの底面積自体はそれほど大きくはなく、その割にはボールジョイントあたりは広めなことと併せて、やはり靴の前方での踏ん張り重視な印象です。


令和のいまとなっては、トレイルランにはもっと適した靴がたくさんあります。ML574をその目的をメインとして購入する人はいないと思います。もはやファッションとしてデザインが評価されているわけですから、そういう出自のストーリーをもとにした履きやすさ論ではなく、もっと気軽にこの靴は履くものだと思います。ニューバランスも、いまとなっては広くタウンユースも想定してのラインナップとして、オンオフ兼用のふだん使い靴として売っています。

ML574はカジュアル系OKな職場であればビジネスでも使いやすいです。ブラックのML574ではNロゴもブラック、ランニングシューズによくある反射板もないおとなしめのデザインです。購入時点の紐もややトーンが落ち着いたものとなっていて、全体的におとなしいデザインです。

全体的に少し丸っこいためカジュアル感が出がちですが、ボトムにややスリムなパンツを選択すれば全体としてはまとまるのではないでしょうか。(ただ、私はこの辺のセンスはあまりないですのでそんな気がするだけ)

機能面だけを優先して選ぶとどれもデコラティブなデザインに行き着いてしまい、私のセンスではまとめきれずビジネスでは浮いてしまう気がしてなりません。そんなわけで結局のところニューバランスでは定番と言われるML574かCM996が個人的には無難な選択として残ります。

校庭や公園など未舗装のところでちょっと遊ぶなんてケースもカバーできて、全国どこでも入手がしやすい。ミッドソールは高級モデルと同じだしスタビライザーなど機能面でもしっかりとしている。大量に出ていることもあり価格も1万円くらいとそれこそバランスが取れている靴だと思えます。グローバルモデルだからこその価格だと考えます。


スニーカーは一部のコレクターを除いては、履きつぶしてしまって買いなおすという運命になります。運動をするときに履くとなると靴が汚れたり傷ついたりすることは避けられませんし、私にとってはむしろそういうことをするときに必要とする靴です。

いつかは買い替えることになるからこそ、そのいつかの日にもまた手に入るだろうと思える安心感がこのML574にはあります。テクノロジーの進化の中で、でも変わらないモデルをニューバランスが作り続けるのは、こうした「変わらない安心感」もブランドイメージの一つとして大切に残しているからではないでしょうか。

革靴の世界にはリペア(修理)という考え方があって、ソールが減ったら直すことができます。なぜまた新しい靴を買わずにソールだけ直して履き続けるのかといえば、履き心地を重視するからです。ソールを変えてもいわゆるアッパー側はなじんだものを残すことで、少しでも見た目、履き心地を継続させようとします。修理してもどこか一部は「うん、やっぱりこれだよな」を感じることができるのです。

スニーカーの世界ではリペアができない(できるの?)分、全取り換えしつつも、以前の履き心地を再現するためには同じ素材、同じつくりと外観のモデルが必要なんです。そういった意味でニューバランスは「うん、やっぱりこれだよな」という人と靴の関係を大切にしているメーカーとして私の目に映ります。


ふだんはタウンユースがメインだけど、休日たまには舗装されていないところで走り回ったりボールを蹴ったりなんて時にはやっぱりこの靴になります。ニューバランスは574の良さを「汎用性」といっています。

そう、用途に分けて細かくスニーカーを分けるなんてことじゃなくて、とにかくいつもこれを履いていればいい。ML574が世界中で売れているからこそ得られる安心感。



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ML574は日本全国購入しやすい靴だと思います。

2024年11月3日日曜日

Onitsuka Tiger TIGER ALLY

黒のスニーカー、TIGER ALLY。

アシックスが擁するブランドの一つ、オニツカタイガー(Onitsuka Tiger)の定番です。


仕事で黒のスニーカーが何足か必要になったため、おとなしめで上品なデザインな気がして、以前から気になっていたタイガーアリーを購入しました。

仕事上では革靴がほとんどで、たまの休日にもローファーやカジュアル系革靴を履くことがほとんどになってしまったので、スニーカー系はこどもたちと公園で遊ぶ時くらいしか履かなくなっていました。

今回、仕事でかなり動き回ることがあり、スーツスタイルではなくカジュアルに寄せたこともあって、足元もこてこてなビジネスシューズからスニーカーに変えることにしました。


中学生の時にニューバランスに出会ってから40年近く、ニューバランスくらいしかまともなスニーカー履いたことがありません。ときどきファッション系ブランドに浮気したこともありましたが、特に他を比べることもなく、コレクションすることもなく、単に一足が履けなくなると次を買う、なんてサイクルです。もう当初の型番などは覚えていませんが、後半はM1400を買い替えながら、販売されなくなってからは同ラストと言われているM576を履き続けてきました。

ランニングどころかウォーキングもしませんし、そもそも月にせいぜい4回履けばいいほうなのでこれ一足で困ることもありません。

余談ですが、ニューバランスで言われるソールの加水分解についてはこれまで経験したことがありません。月数回しか履いていないけれど、公園で走り回ったりするので砂埃が乾燥させてくれたんでしょうか。


ちょっと調べてみると、スポーツシューズの技術革新はこの50年くらいで大きく進化していて、最新の技術を搭載した靴は足や膝、腰など体全体に優しいことはわかりました。

ソールはどんどん厚く広くなり、重厚感のあるデザインに進化(?)を遂げています。まるで生物の適応放散ごとく、いろいろな目的に合わせてデザインも多様化しています。

しかし、革靴のシンプルなデザインに慣れ親しんだ自分から見ると、そのデコラティブなデザインは飛躍しすぎる印象で、これからビジネスで履く靴として選ぼうとすると、どうもしっくり来ません。このあたりは主観的な問題であるとはいえ、シンプルイズザベストの引き算の哲学が好きな私には、ちょっと行き過ぎ感を感じずにはいられません。

また、実務上階段の上り下りなんてのは頻発するものの、走ったり跳んだりみたいな激しい運動をするわけではないので、ソールをはじめとした機能面への要求水準はそれほど高くもありません。

私がもう30年近く革靴中心だったためか、足や体全体もその前提で変化しているのだと思います。実際、レザーソールの靴は返りについて言うならばたいていのラバーソールの靴よりも人間の体にフィットします。走り回ることすら少ないオフィスワークにおいては、もしかするとそれほど大きなマイナスはないのかもしれません。

そんな私ですので、デザインはクラシックと呼ばれる範疇のものが候補になりました。スーツの世界も革靴の世界も、結局のところクラシックに行き着くのが自分のスタイルなんだと。つくづく思います。


クラシックにも色々な方向性があるようですが、今回の候補は、

・ランニングシューズを原型としたもの(バスケやテニスの出自ではない)
・それなりにクッション性を重視だが、階段上り下りが多いため必要以上の厚底は避ける
・コストは1万円から2万円、生産国にはこだわらない

といった基準で選びました。


前置きが長くなりましたが、そんな基準で選んだのが今回のTIGER ALLYです。

TIGER ALLYにはレギュラーモデル(?)であるベトナム製のTIGER ALLYと、日本製のTIGER ALLY DELUXEがあります。私が購入したのは前者、18,700円(税込、2024年10月時点)です。

もともとはTIGER ALLIANCEという名前で販売されていたモデルのアップデート版のようです。Onitsuka Tigerのアーカイブにある画像を見てみると、ほぼTIGER ALLYと同じデザインで売られていたものを2017年に踵周りの安定性とfuzeGEL搭載で更新、その際に名前をTIGER ALLIANCEからTIGER ALLYに変更したようです。

TIGER ALLYはクラシックなランニングシューズの形、モノトーンのスエードによる落ち着いたデザインと、まさに大人のスニーカーという印象です。

アシックスの靴の特徴であるアシックスストライプ(メキシコライン)って、機能面はさておきとして、学校の指定靴だったり田舎の少年時代の印象が強くて、そのデザインの押し出しが強いと却って購入意欲が減ってしまうのですが、このTIGER ALLYのように全体のデザインの中に溶け込んでいると今度は信頼の意匠に見えてくるので不思議です。

BLACK/BLACK、CREAM/CREAMといったカラーの靴は上品に見えます。


今回購入したサイズは日本サイズで25.5、US7.5です。
普段の革靴はリーガルではほぼ24、サージェントなどのUSでは6、チャーチなどUKでは5.5を履いています。ざっと1.5くらいサイズを上げています。

TIGER ALLYは小さ目なつくりというのが定説で、ワンサイズ、またはそれ以上のアップをしたほうが良いということも書かれています。ワンサイズの定義が0.5単位なのか1単位なのか、足の実測からなのか特定のスニーカーサイズなのかわかりませんが、一般的なスニーカーで履いているサイズより大きめを買うほうがいいという意見が主流のようです。

今回は近くにお店がない環境での購入ということもあり、通販で購入しました。
ふだん履くニューバランスM576では25.5/US7.5でやや緩め、CM996でも25.5/US7.5でもうハーフ下でも履けないことはないくらいに感じますので、今回25.5を選びました。


到着して足入れをしてみると...

「んー、なかなか小さいか?」

サイズをミスった感がよぎって一抹の不安を感じつつも、冷静に判断してみると足が締め付けられるかというとそんなことはなく、単に新品だからふわふわなフィット感になっているだけのようにも感じます。指が抑えられることもなく、甲の血行が悪くなるようでもない。履けないというほどの小ささではないし、多少沈み込んだらぴったりになりそうな気もしてきます。

革靴と違い、ふかふかな部分があるスニーカーは直感的にサイズがわからない気がします。少し当たるのが小さいのか、それとも構造上そういうものなのか、感覚的にもう少しわかりたかったので早速履いて出かけることにしました。

革靴であればここでプレメンテ、ということになるのですが、スニーカーでは特に過保護になることもないと思うので、気休めに防水スプレーをかけてみました。防水スプレーはスエードの靴にごく稀に使うくらいで、スニーカーにはふだんはつかいません。購入時は汚れがついていないし、おまじないとしてやっています。


履き心地はかなり「ふかふか」

ニューバランスの靴(ENCAPミッドソール)についてよく「雲の上を歩くよう」という名言が引用されますが、TIGER ALLYはその点ではもうちょっと上をいっている印象です。

踵部分にはfuzeGELと呼ばれる衝撃吸収素材が埋め込まれているようですが、それだけではない全体的なふかふか感があります。実際の厚み以上にソールの厚みを感じて、慣れないうちはかえって力が入らないような不思議な感覚です。ちょっと不安定なスポンジの上に立っているような。

あまりにもふかふかふわふわなので、足の長さを見誤ることがあり、右足をつっかけるようなことが何度かありました。

慣れてくると、このふかふかを利用して歩いていることに気づきます。衝撃が少ないので重いものを持っているような時は少し踏み込んで歩くなんて感じになります。

初回はそんな印象でしたが、当然のことながら革靴にありがちなマメができることもなく、歩けば歩くほどサイズ感に慣れてきて当初の窮屈感は消えてきます。店頭で足入れをした段階ではなかなかわからない靴との相性が少しわかった感じです。


クラシカルなデザインをまとめるアッパーは天然皮革のスエード。ドレスシューズ系によく使われるCharles F. Steadあたりと比べてしまうとそこまで良いというわけではありませんが、価格を考えるとフルスエードというのはかなり頑張っているのではないでしょうか。コストのためかタンはナイロンメッシュになっています。今回購入したブラック(BLACK/BLACK)については特に変な差し色もなく、シンプルに黒基調といった感じです。


1980年代の靴をルーツにしているので、デザインそのものは40年前のものになります。踵のクッション素材はアップデートされているとはいえ最近のハイテク靴には機能面で負けてしまうかもしれません。

ランニングシューズであるが故、安全性のために踵にリフレクターがついているくらいで、このくらい黒っぽいとビジネスで使いやすいのでありがたいです。

靴紐も黒で完全なブラックモデルになっています。幅の大きめな平紐ですが伸縮性はなく薄っぺらい紐です。紐の伸縮に頼るのではなく靴全体で足の形の変化を捉えるという設計思想であれば、ひもはしっかり固定する役割に徹した方が良いと考えています。その意味では、履いていて足が痛くなるようなことはないので、靴紐の役割としてはしっかり面で支えてぶれないという役割に徹しているものと考えられます。


TIGER ALLYのスエードでまとめられたアッパーやソールのデザインを見ると、あくでもタウンユース向けです。(もともとランニングシューズですし)

価格帯的に近いCM996と比べると、明らかにCM996の方がタウンユースよりに感じます。アスファルトの地面との一体感というか情報のやり取りは明らかにCM996に分配が上がります。レザーソールの靴ではダイレクトに地面を感じるので、地面とのコミュニケーションがある靴の方が慣れているといった方が正しいでしょうか。

一方TIGER ALLYの特徴は甲の緊張感が少ないというか、より足との一体感を感じます。CM996は私の場合は「靴を履いている」という感覚が常にあるのですが、TIGER ALLYは靴の存在を忘れてしまうようなことが多いです。地面の種類に限らず、足裏に入ってくる情報はほぼ同じなので、こちらのタイプになれると「歩く」ということのストレスが減るのではないかと思われます。

購入当初感じたサイズの小ささ感は終日履き続けているとまったく気にならないものになりました。確かに同サイズのCM996と比べると気持ちタイトな感じはするものの、私は実測から1.5ほど大きいサイズですので、小さいということはなかったのかもしれません。

同サイズでも比較的大きめに感じるML574と比べると体感的にハーフサイズは小さい感じがするので、ML574をそれなりにタイト目に履いているのであればハーフ(0.5)くらいは上げてもいいかもしれません。

このあたり、街中の靴屋さんでフィッティングを試しやすいニューバランスに対して不利な点であることは否めません。


TIGER ALLYは特にクラシックをそのまま復刻するといったこだわりに重きを置いている訳では無さそうで、デザインはクラシックなものでありながら、現代の技術を取り入れながらアップデートされています。

踵の後ろ側のカーブはややきつめ、踵を掴むデザインになっています。踵自体はそれほど小さくはありませんが、インソールに少しカーブがついているなど収まりが良いです。踵のスタビライザーの素材が柔らかいため「これ機能するのか?」と一瞬不安になるものの、指でぐにぐに押してみてもしっかりと支えている感があるので十分な機能があるのでしょう。(当然天下のasicsさんはその辺調査済みか)つま先側に向けて少し長めに入っているので、ここも計算済みって感じでしょうか。

CM996と比べると、踵の芯自体は少し小さめなので、その分スタビライザーの長さで安定性を担保しているようにも思えます。

踵のアウトソール側面積はかなり大きめで、歩行時の衝撃吸収と安定性を意識していることが伝わります。踵大きめ、つま先小さめの作りです。

アウトソールはタウンユースを想定してか凹凸は少なめ。このソール、雨の日はなぜか滑りやすいです。せっかくアッパーがスエードで雨に強いのに、ソールが弱いというのはちょっと残念。

ソールのパターンを見ると、足の形状に合わせて靴が内側に振られている通りにパターンもやや内側に向けられています。私は比較的進行方向に対して平行にボールジョイントが折れ曲がりますので、足が屈曲する角度とパターンの角度が微妙にずれています。パターン的には足の力が入る方向を重視しているようです。雨の時などにこの差によってソールにかかる負荷、一部は伸びきり、一部は緩むために路面に対して効果的になっていないのではなかと思えてしまいます。

ソールを見ても分かるとおり、ラストは全体的に内側に振っていて足なりです。

つま先側は足の屈曲を意識して、大きく抉っているので、レザー素材ということも併せてなんとなく穴が開く人出てきそう... という印象もありますね。

こうして靴をよく見てみると、ニューバランスはあの「N」を刺繍するために台座となる部分が必要になり、そこにあてがわれている革が二の甲をしっかり一周していますね。いわゆるローファーでいうところのフルサドルになっているので、足にしっかり巻きついて安定しますねこれ。


TIGER ALLYは足にあったサイズを選べば満足度が高い靴であることは間違いありません。ニューバランスやナイキは他の人と被るから嫌、という時には選択肢の一つとなるものの、圧倒的な差別化はないような気がします。

クラシックなデザインのタウンユースにおいては、さすがCM996は完璧に近い完成度になっています。しかも全国どの都道府県でも購入できるとなるとごく一部の取扱店舗でしか試し履きができないTIGER ALLYを無理して買わなくても、ということになってしまいます。直営店でしっかりと売りたいという意図なのでしょうけれど、日本のメーカーがせっかく世界で売れている靴に真っ向勝負できる靴を作っているのにもったいないなぁと思ってしまうのです。

細かくみるほど、さすがに世界レベルで売れているニューバランスの長老モデルは完成されています。淘汰を逃れて生き延びたともいえます。もう40年前のテクノロジーと言っても他にとって変わって廃れるほどでもない、出自はランニングシューズとはいえもはやこれで走ろうという人はほとんどいなくて無問題。ファッションとして生き残ると言われながらも、一定の履きやすさという評価も得ている。

TIGER ALLYも似たような位置付けの中では十分に戦える、むしろ勝てる靴であると思えます。テクノロジー面では十分勝てますし、ファッションとしてみると程よくクラシック。大人が履いてもサマになる落ち着いたデザインは他では意外とありません。Onitsuka Tigerの他のラインや、asics全体を見ても、これだけの大人デザインのランニングシューズベースのモデルはないようです。ニューバランスでも一部のレザーML574が対抗馬かなという気配もしますが、安定供給が期待されるフラッグシップではありません。ミズノのMR1にも惹かれますがちょっと路線が違いますし、入手難易度はさらに上です。


同じ黒でもナイロン系メッシュに比べたらスエードのモノトーン靴なのでジャケパンでも使えます。十分ありとなる職場もスニーカーの中では多いでしょう。ロゴや意匠も目立たないので、単なる黒スエード靴のように履けます。

スポーツをするのではなく、どちらかというと歩きを中心としたタウンユースを前提に、シンプルな足元を、ということであればTIGER ALLYはその有力候補になります。

願わくはTIGER ALLY DELUXEの在庫が復活してくれれば...


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