2026年3月9日月曜日

ビジネスシーンでの REGAL 2235NA

仕事用の2235NA、ブラックです。


最近は仕事中にスーツを着ることが少なくなり、足元も黒のキャップトウではなく黒系のスニーカーがメインとなってしばらく経ちました。

スニーカーってやっぱり楽で、階段の上り下りなんかを繰り返しても足や膝が痛くなるなんてことがありません。タウンユースなので泥だらけになるようなこともなく、大きく目立つような傷がつくようなこともありません。大半の革靴のように履き始めの修行もいりません。

ただ、なんでしょうか社会人生活二十数年をずっと革靴だったこともあるのか、足元が軽すぎて落ち着かない感じが続いていました。試しに足元だけプレーントウにしてみたりローファーを履いてみたところ、落ち着くというか締まるというか、なんとなくしっくりきます。

どちらかというとスニーカーそのものが悪いのではなくて、慣れていなかったり格好良く履けない本人に問題があるのですが、やっぱり革靴のほうが履きなれしているということもあり、近頃は少しずつ革靴比率が上がっています。

総合的な機能性という点ではスニーカーに軍配が上がると思います。最近の超高機能ではないクラシックなスニーカーでさえもクッション性、通気性、メンテナンスの容易さ、価格などで革靴を上回るところは多いです。科学技術の進歩から生み出されたものが機能面で優位なことは当然なのかもしれません。


でも、やっぱり革靴なんです。

指先の踏ん張る感じとか、大地にへばりついている感じとか、屈曲した時の戻ろうとする力とか、かかと周りのどっしりした感じとか、革靴のほうが自分に合っているということに改めて気づきました。「三つ子の魂百まで」ではないですが、社会人になってずっと平日は革靴、下手すりゃ休日もほぼ革靴で過ごしてきたのである意味そうなんだな、というところでしょうか。

マイケル・ジャクソンのムーンウォーク、あれローファーで初披露ですからね。日本人でもあのサディスティック・ミカ・バンド時代の高橋幸宏さん、ドラム叩く時革靴ですから。ここまでしないビジネスシーンでは履き慣れちゃえば問題が出てくることなんてまずないことに気づきました。


ということもあり、これを書いている2026年春は黒系革靴が個人的トレンドです。

いまの定番スタイルになりつつあるブラックジーンズやチノに合わせることを中心に考えると、ドレスよりな靴よりは少しボリュームがあるほうがバランスが良い気がします。ルーツ的には米国発ですので、足元もやや重めのプレーントウやソールががっしりしたフルブローグがいい感じです。

ネットを見ているとドレスよりの靴を合わせている人なんかもいるようですが、なかなか難易度が高そうです。少なくともオシャレ認定されているようなちょいワルオヤジ(死語?)くらいのセンスと迫力がないと「靴だけが浮いているオジサン」になってしまいそう。

カジュアル革靴の一つの代表とも言えるローファーは、それこそこちらはドレスよりの品の良いデザインを選ばないとどうしてもカジュアルっぽさが強く出てしまい、ビジネスシーンでは(私には)難しい。

私はパンツの丈が短かすぎるのはちょっと... というタイプなので、足首が隠れる丈のストレートパンツに黒のローファーだと野暮ったさが出てしまいます。デニムのレングスで言うと30インチだとノークッションになってつんつるてんになりがちな気がして、32インチを少しクッションさせて履くのがちょうどいいと思うタイプです。しかし格好いいオジサンは決まってスキニーなタイプを短めにして足首見せてローファー決めています。マイケル・ジャクソンも少し短めの丈に白い靴下見せながらムーンウォークを決めてるくらいで、ローファーはやっぱりしっかり見せて履くのが気分。

となると私にとってはやっぱり重厚な靴のほうがうまくいきそう。


そこでリーガルの2235NAなわけです。アメリカンタイプのフルブローグ(ウイングチップ)

ウイングチップという言葉は難しいです。もともとは靴のつま先のW形状の意匠を指し示す言葉であったようですが、このウイングチップデザインの中で穴開けたり革の端をギザギザにしたりとあれこれしたものが出てきて、これを加工の名前をとってフルブローグと呼んだようです。いわばウイングチップの一形態がフルブローグというのがイングランド人の考え方っぽい。

ところが海を渡った米国では、このフルブローグのデザインに少しばかりのひねりを加えて、アメリカンタイプなフルブローグを生み出し、これをウイングチップと呼んだようなのです。同じ単語でも指し示す内容が時と場合によって結構違ってくる一つの例みたいです。


定番2235NAは重厚な作りを感じさせつつ、やや上品な雰囲気も感じられドレスダウン系ビジネスシーンにもおさまりが良いです。アメリカにもルーツを持つリーガルですから、ジーンズやボックスタイプのジャケパンスタイルとも相性がいい。

同じリーガルの中では10ELDDがトリッカーズバートン系だとすれば、こちらの2235NAはフローシャイムのKenmoorといったところでしょうか。同じウイングチップデザインでも方向性が結構違います。 

このスコッチグレインレザー(型押しのシボ革)も足元の重厚感に一役買っています。足元が安っぽいと全体が軽めに見えてしまいがちですが、2235NAをボトムに持ってくることで、センスがない私でもそれなりにキレイめを狙う作戦です。

2235NAや2589Nのようなゴツめのウイングチップはボックスシルエットのアメリカンスタイルスーツであれば似合うのかもしれません。クラシックなスーツスタイルには合わせようとするとやや主張が強すぎて靴だけが浮いてしまいます。ドレススタイル寄りにはドレススタイル寄りな靴が似合います。

一方で、ジャケパンなどのカジュアル要素が多くなってくると途端に収まりが良くなる気がします。シボ革なのでもともと小さな傷は目立たないものの、やはりきちんとお手入れされて品を保つような履き方が似合います。これがビジネスシーンでも活躍するひとつの理由です。


ビジネス上でのウイングチップってどうなの、について私は「限定つきあり」と思っています。

大前提として冠婚葬祭や重要な会議、セレモニーなどのフォーマルが要求されるような場所ではドレス寄りのデザインだとしてもやめておいたほうが無難です。いまや結婚式もくだけたスタイルでいいよという雰囲気だそうですが、だからといってあえて親戚一同集まる両家のお祝いの場に、お気楽カジュアルで登場するのもどうかと思います。招待をされている身であるからこそ自分の好み優先の選択ではなく、相手や集団を立てる選択が大切です。

気持ちがこもっていれば構わないとしても、牧師さんまでグランジスタイルなデニムで新郎新婦の誓約を司ったり、(ハワイの)正装とはいえアロハシャツにチノパン、ソフトモヒカンで決めた住職さんの法要では場が白けてしまいます。知識がなくて外してしまうのは仕方ないところもありますが、わかっていてあえて外しに行ってしまうと、内輪のネタなら許されても、たくさんの人が集まる場であれば単なるおバカさんです。そもそも自分の役割に矜持を持っている人はそんなことはしません。

就職活動や顧客先への初めての訪問など、初対面での印象は後まで残りますので、そういう場がおおいなら、キャップトウかプレーントウを選んでおけば間違いありません。あなたにとっての1/365日は、相手にとっては1/1日かもしれません。せっかく靴に対してほかの人よりも多い情報量を持っているのだから、最適な戦略を選びたいですね。


一方、オフィスカジュアルでポロシャツやチノパンが推奨されるようなシーンにおいては、このウイングチップはとても使いやすいです。何といっても革靴ですので、スニーカーと比べると格段に大人感があります。

ジャケパンとの相性も良く、なんだかんだで全天候型です。よほどフォーマルを要求されるようなお店でなければ、靴が問題になることがありません。いわゆるスマートカジュアルで靴が問題になることはないでしょう。

ビジネス感を出さずに、かつ品よくまとめたいときにはブローグ系の靴がハマります。ここでは逆にホールカットやキャップトウだとよほど上手にまとめるかセンスを評価されている人でないと、カジュアル靴にまで手が回らないおっさんが出来上がります。


釣り込みなのかパターンの微調整なのか、最近購入した2235NAはくるぶし周りが以前よりも気持ち低くなっているように思えます。多少はあたってしまうものの、刺さるような感じは減っています。2504NAの時もそうでしたが、歳とともにこちらの足が少し分厚くなったのか、それともリーガルが微妙に変えてきたのかはわからないものの、個人的にはプラスの方向になっています。また、なぜか踵の収まりもよくなっている気もします。新品だからあまり沈み込みしていないのか、かかとも少し窄まっているだけなのか測ったわけではないので直感でしかありませんが、以前よりも履き始めのフィット感がよくなっています。

この靴は親指側がストレート気味なので比較的親指が自由に使える靴です。リーガルはときどき内側(いわゆる親指側)をカーブさせてくることがあります。同じウイングチップ系の10ELDDとは明らかに親指側が違います。伝統的なラストはこのあたりの作りが私にとってはありがたい。

おまけに羽根の開きも以前に買ったものよりも明らかに開いています。ハーフとは言わないまでも数ミリ単位で全体的にコンパクトとなり、少し締まった印象です。


2235NAのアッパーはステアベースだとは思うものの、2504NAなどのガラスレザーと比べると履き始めからやわらめです。しわも目立ちにくく、シボ革(スコッチグレインレザー)のメリットが感じられます。


ただ、ただでさえギンピングがあってクリーム塗りにくいことに加えてレザー表面も立体的となるとクリームを布で塗るのはなかなか難儀です。塗り切れていないところが多発したり、逆に穴にたまってしまうなんてことも起きがちです。ペネトレイトブラシや使い捨て歯ブラシみたいなもので塗る方が楽かもしれません。

私は布で塗る派なので、できる限り丁寧に塗ってからわりとすぐに豚毛のブラシで馴らします。表面で不均一になっているクリームが延びて、育ったブラシに残っているクリームと合わせて穴やギザギザにクリームがはいればいいなと思っています。

いまとなっては貴重なレザーソールモデル。厚手のソールは相変わらず硬いです。履きはじめはなかなか返りが悪いので、部屋やベランダなどでできる限りソールに曲げ癖をつけてから履くのがおすすめです。つま先はかなり削れますが、そこまで気にして履くのもどうかと思うので一度履き始めたらとりあえず気にしないが正解です。


2235NAは定番とはいえ、街の靴屋さんではほとんど見かけませんね。

リーガル公式通販の価格で税込40,700円(2026年3月現在)と、いつの間にか4万円を超えています。
素材やこれを作るための工賃、機材等の維持費用や流通販売コストを考えると40,700円(税抜なら37,000円)って破格な気がします。通販サイトなどでもう少し安く販売されていることもあります。リーガルの卸値はもっと安いと思うと驚異的ですが、一般的な感覚からするとめちゃくちゃ高い靴、という位置付けです。ほとんどプレミア価格といえるUSA製のNew Balanceの1300が税込44,000円ですからもはやスニーカーの最高レベルに近い価格で、価格だけで比べたら革靴に勝ち目はありません。

2024年の総務省の家計調査によると、1世帯あたりの男子靴の支出額は3,327円。これでも前年比増加しているとのこと。ちなみに1世帯全体では14,488円だそうです。1980年代後半と比べると日本靴の生産は大きく落ち込んでいます。

この波にリーガルコーポレーションものまれてしまい、高級靴の主力工場ともいえる関連会社のチヨダシューズを解散、希望退職者を募集と発表しています(2026年2月9日付「構造改革(希望退職者の募集および連結子会社の操業停止)に関するお知らせ」)。
2021年には米沢製靴を解散しており、その際にチヨダシューズに移った人もいると思います。華々しいリブランドの陰でこうした厳しい決断もまた行われていたりもします。

自分の周りを見ていても、もはやグッドイヤーウェルテッドの革靴を履いている人は少数です。若手に限ってはまず見かけません。公的機関などもスニーカー容認が進んでいますので、この流れは逆らいようがないのかもしれません。

このような環境の中で、1足数万円の靴を作り続けるリーガルの企業努力って本当にすごいと思います。リーガルの主力工場のひとつ岩手製靴さんでは1日600足という数字が2年ほど前に出ていました。ざっと年間15万足とするとちょうど1足1万円くらいが平均的なリーガルから見た原価でしょうか。

少子化でそもそも社会人として革靴を新規購入する若年層自体が減少し、メインの団塊ジュニアは就職氷河期を経験して比較的財布の紐は堅いことに加え、役職定年を迎える時期に差し掛かっていますから、日本国内においてドレス系のビジネスシューズはかつての賑わいは戻らないでしょう。

外部からは実情を知る由もありませんが、将来に向けて構造改革をしたり工場を整理したりするのも、企業経営上避けて通れない決断に思えます。これだけの品質の靴がいつまでも販売され続けるという保証はありません。職人さんの減少もあるでしょうから将来的には海外生産のOEM、なんてことになってもおかしくありません。


とはいえ、革靴を履く人口が減っていく中でも当面は日本人が靴そのものを履かなくなるなんてことはないと思うので、いずれにしても靴を作る会社は必要です。20年くらい先の2050年でも日本人は1億人ほどはいますし、世界では2100年くらいまでは人口が増えると予想されています。

日本国内の市場がシュリンクしていても、まだまだ国内1兆円産業であるので業界の再編や構造改革次第では活路はあるのかもしれません。グローバルに目を向ければ靴そのものは成長産業にもなりえます。

ダブルエーとの業務提携は一つの活路になりそうですね。ジェイドグループやエービーシー・マートのように高い営業利益率を生み出す企業もあるので、靴業界自体が儲からないのではなく、企画力とか販売力の差であるともいえます。リーガルもグッドイヤーウェルテッドの靴だけを作っているわけでもないですし、ケンフォードあたりのサブブランドを見ても、決して高価格帯ばかりのこだわりがあるわけでもなさそうです。

違いがあるとすれば卸モデルであることと頻繁なモデルチェンジと廃盤セールでしょうか。エービーシー・マートはナショナルブランドを販売しつつも、一部を協力工場で作って利益率を確保しているそうです。ナショナルブランドといえどもいつ行ってもオールスターやらCM996、U/ML574、ホーキンスとティンバーランドが売っている印象です。たまーに売れなさそうな色のセールをしている気もしますが、メインの棚ではいつも同じものを売っている感じです。

かたやリーガルはかろうじて2235NAや01DRCDは残っていますが、名作の誉れ高いW105、オーダー木型を使ったW121/131/141などのシリーズ、シェットランドフォックスの初期モデル(エジンバラ、アーバイン)はどこへ行ってしまったのか。

エジンバラはマンチェスターに名前を変えて出直しを図っている感があります。当時は踵緩め甲高めで作ったものを少しばかり修正してきていると思われるものの、この出したり引っ込めたり感がブランドを確立できない一つの要因と思えてなりません。気に入ったモデルが出ても廃盤されるリスクが常に付きまとう。

シェットランドフォックスは立ち位置が微妙ですね。ブランド登場当時は価格差でポジションできたものの、これだけ靴が高くなってくると、もはやこのゾーンを維持する意味がなくなりそう。6万円台だと01DRCDとの差別化が難しいですし、かといって10万円近くなるともはや既製靴としてどれだけの市場があるのでしょうか。サラリーマンはおいそれこれだけの金額出せませんって。一昔前はいい靴が3万円台、高い靴が5万円から6万円くらいだったので、「奮発して01DRCD」「いつかはケンジントン」が成り立ちましたが、もはやそれなりにちゃんとした革靴を最初に3足そろえるなんてのは無理な時代になってしまいました。


リーガルコーポレーションという企業は本格靴を作るメーカーという見方をしがちですが、運営実態としてはファッションブランドだったりもしますので、流行を作ったり流行に乗ったりすることもまた企業の存在価値の一つともいえそうです。工場を解散し企業経営をスリム化しつつ、ほかと組みながら店舗を改装する、という戦略はいまのリーガルが生まれ変わろうとしているようにも見えます。

本格靴を量産可能な設備と技術を持つメーカーでありながら、ファッションブランドとしての小ロット作成&セールをしていかなければならない経営って本当に大変だと感じます。

「本格靴メーカー」として多くを私たちが求めてしまっても、それを支えるだけの顧客基盤が将来的に日本国内では期待できない。であれば体力があるうちに次の10年、20年に向けた企業の構造改革をしていくのは経営の覚悟です。多くの技術を有し、良心的な価格で日本の本格靴市場を支えてきたリーガルという企業で働いてきたみなさんがこれからも誇りをもって働くことができるよう、今回の決断が企業の発展につながることを願ってやみません。


リーガルはもちろんのこと、他の多くのメーカーや工房が生み出すグッドイヤーウェルテッド製法でしっかり作られた国産靴は、英国製や米国製にも引けを取らない素晴らしいものです。個人でできることなんてたかが知れているとはわかっているものの、これからもニッポンの靴作りが1日でも続くようにニッポンの靴を履いて(できれば買って)応援していきます。


日本の世界に誇る名作2235NA。
見れば見るほど、履けば履くほど、お手入れをすればするほど日本の靴づくり歴史や技術、考え方が詰まっていることに気づきます。

革靴に興味がある人であれば、一度は試し履きしてほしい靴。
一足はワードローブに加えてほしい靴。





2025年11月1日土曜日

REGAL 10ELDD

リーガルのフラッグシップ、10ELDD。


往年の名作といわれるW10BDJの復刻版。 

復刻に際してリーガルシューズ専売モデルのWから始まる型番から、一般流通もする数字型番に変更されました。リーガルが公式に「復刻」と言っているように、ライニングが山陽抗菌仕様の濃いブルーから一般的な生成色に、ソールの刻印がREGAL SHOES ORIGINALから栃木レザーを前面になどいくつかはあるものの、全体に大きな影響を与えるところはW10BDJと変わっていません(たぶん)。

アッパーは姫路のタンナー山陽のグレージングキップ、ソールは栃木レザーのタンニン鞣しベンズを採用した360度グッドイヤーウェルテッドなカントリー仕様のフルブローグ(ウイングチップ)です。

日本でもこれだけの靴を作ることができるのですから、足の形があいにくい米国仕様や英国仕様のフルブローグを無理して履かなくてもいいのではないかと。私は一度クロケット&ジョーンズで痛い目をみているので国産靴派です。

10ELDDはリーガルの名作中の名作です。革靴市場がどんどんシュリンクしていく中で、その中でもニッチなレザーソールウイングチップに2235NAと並べて提供し続けるのは難しいのかもしれませんが、ぜひ今回の復刻が長く続くことを期待します。

リーガルも公開会社ですから好きなことばかりやってはいられません。ステークホルダーに納得してもらえる企業価値を維持し続けなければならず、国内の靴市場だけでそれを支え続けるのって本当に大変だと思ってしまいます。日本人に比較的合いやすい靴であれば、アジアの一定のマーケットでは米国製や英国製の靴よりもフィットする靴として受け入れられると素人目には思えてなりません。

海外にはそもそも市場の有無、それ相応の現地の商習慣や為替の変動リスクを考慮した貿易・流通、また「REGAL」という商標の問題もありそう簡単にはいかないのだろうなと思いつつ、製造は一部アジアでも行っていることを考えると勝ち筋が全くないわけでもない気がします。このあたりは当然にリーガルコーポレーションの経営陣や企画部門も考えているはずなので、外からはわからない課題があるのだろうとは理解できるものの、これだけの靴を作る技術はこれからこうした靴に対する需要が高まる国への提供を通じて、ぜひニッポンに残ってもらいたいと勝手に思ってしまいます。


今年(2025年)の大幅なリブランドがあったのは、これまでのブランド戦略では十分なブランド価値を保てなかったのかもしれません。「リーガル」と検索しようとすると「リーガル 恥ずかしい」のようなサジェストさえ出てきます。

最近リーガルコーポレーション公式Youtubeの存在を知りました。自分のこれまでのイメージと全く異なる、若い人がおしゃれにチョイスする靴、単なる靴の形をしたものを量産するのではなく機能性とデザインを両立させた靴、それを若い人の力でカタチにする素晴らしく格好いい会社に見えます。最近1年間に作られた公式Youtubeを見てもまだ「恥ずかしい」と思うのならばそれはセンスの違いなので仕方ありませんが、私は浅はかなにわか知識で、勝手なイメージでリーガル見ていた自分がそれこそ恥ずかしくなるくらいの衝撃を受けました。

コンサルや広告代理店に多額の費用をかけて広告出す1/10の予算でもこちらに振り分けたら、ブランドイメージを劇的に変える起爆剤になるのではないか、そんな可能性を感じます。おじさんおばさんが会議室で個人的な経験しかよりどころのない議論をぶつけ合っているのではなくて、靴が好きな若い人たちが自分たちが楽しめる靴についてときには感情で、ときには理論的に取り上げられています。少し堅めな私から見るとコンテンツの中にはメーカーの発信する情報としては一貫性がないものもある気がしますが、お葬式場の砂利の話やパンプスを履けない人に向けた説明など、ときどききらりと光るコンテンツがあります。傾向としては男性の解説はマーケットインというよりは自分の経験やこうした方が良いのではないかという想い中心のプロダクトアウト型、女性の解説としてはユーザー視点のロジカルなものが多くいちユーザーとしての視点のものが多い気がします。メーカー公式Youtubeでも「とぅー」と発音する人が結構いましたので、リーガル的にはここあまりこだわりなさそうです。

いずれにしてもリーガルの今回のリブランドに合わせて、靴のセレクトショップとSPAが共存する靴を中心とした専門型アパレルなんて位置づけも十分狙えるポテンシャルを感じました。続編が楽しみです。これだけのコンテンツが公式サイトからすぐに辿り着けないのが不思議です。


だいぶ話がそれましたが10ELDDに戻します。

リーガルのウイングチップには不動の2235NAがあるので、W10BDJが出た時には「いい靴だけど早めになくなりそう」と思っていたらやっぱり販売終了とお馴染みのパターンではありました。終盤にはセールなんてのもあったみたいで、もうこういう靴は一発企画なんだなと思っていたところ、およそ10年の時を経てまさかの再登場です。しかもリーガルでは専用ページも作る力の入れよう。

2235NAのスコッチグレインレザー(シボ革)は好みもあるので、スムーズレザータイプのウイングチップというところにこの靴のポジションがあります。ウイングチップは過去にも登場しては消え、また登場しては消えるなんてことを繰り返しているデザインではあるので今回も「いつまでもあると思うな」でしょうか。これを書いている2025年10月現在ではまだ在庫は潤沢なようです。この靴は「買い」です。


デザインは2235NAとは異なり、ヒールカウンターが独立しているフルブローグタイプ。全体的なデザインは英国靴寄り。トリッカーズやチャーチ、ジョンロブあたりを意識して極めて普遍的なデザインで作っていったらこうなった、という印象。トウスプリングはあまりとっておらず、いわゆる変な現代的解釈がないクラシックな靴です。

カントリーテイストを強めにする外ハトメやノッチドウェルト、ダブルソールの360度グッドイヤーウエルト製法が採用されており、スーツスタイルに合わせるには少し野暮ったく、カジュアル専用なデザインではないでしょうか。カントリーテイストな靴を狙っていてトリッカーズのバートン買うことを検討している人はぜひ一度どこかでバートンに足入れをした後、リーガルの店頭でこの靴にトライしてみてほしいです。


ラストが伝統的なものと比べるとつま先側を少し内側に振っているものの、少しトウが狭いのかボールジョイントと親指の先が当たります。小指側もトウに向けてシャープなラインとなっていることもありタイトな気もします。ただここは面で当たっているようでタコになるようなことはありません。ふまずも絞ったややメリハリの利いたラストであり、見た目から受ける印象とは異なり、フィッティングはシビアかもしれません。



履き口が少しキュッとしているので履き始めはタンが足首に少し刺さってきます。インソールのヒール部分はややカップ状になっていたり、踏まずの絞りが効いていることもあって、足が前滑りしている感じは受けません。W10BDJの時も思いましたが、タンが靴の外側に向けて少しオフセットされているものだと考えられます。ここはあまり硬くないパーツなので少し履きならせば気にならなくなります。

私は足が薄めなので二の甲(ウエスト)から三の甲(インステップ)が少し大きめに感じます。羽根の形状もあり、二の甲にはやや空間を感じ、歩くときに無理な力が靴にかかるのを感じます。一番足首側の羽根の開きが5mmほどなのでW10BDJと同様に履きこむにつれて締め付けるのが難しくなりそうなのが唯一の難点でしょうか。

くるぶしのあたりは少し下がっていて食い込むようなことはありません。ここのラインは2235NAなどのリーガル定番のパターンから大きく改善(?)されています。足が薄めな人でも問題ないでしょう。

フィッティングは私にとってはリーガルの中では緩め系で若干緩く感じます。ちなみに私、ビジネスシーンではスーツしか着ない人時代が長かったので、ビジネスではドレスの黒靴、カジュアルは茶系の靴と完全に用途が分かれていて、かつざっくり履くような2235NAやらW10BDJやらは厚手の靴下前提でフィッティングを考えていました。今回の黒色はオフィスカジュアルで履いていることもあり、靴下はそこまで厚くなく、それがより一層の緩さの感覚につながっているようです。


インソール、アウトソールともに栃木レザー。ソールにもデカデカと栃木レザーの刻印があります。

栃木レザーのダブルソールはミンクオイルを塗ったうえでベランダと玄関で少しずつ曲げました。家族がいると新品の靴とはいえ靴を履いたまま室内を歩き回るわけにもいかないので狭い玄関とベランダで挌闘です。

ある程度靴が曲がるようになったころを見計らって、室内業務中心の日に履き始めました。室内はカーペットやタイルが中心なのでアスファルトの道路を歩き回るよりつま先のヘリが抑えられそうなのと、足が痛くなっても脱げばいいという気楽な環境です。室内でそこそこ歩くと、自然に自分の足の形に合わせて屈曲しますので、1日が終わるころには最後のプレメンテナンスがしあがる感じです。

実際には初日から足が痛くなるようなことはなく、それなりに屈曲の癖をつけてから履いていますのでつま先の減りも気になるほどではありませんでした。

靴は履いてなんぼですので、よく言われるような無理やりキャッチャーすわりをしたり手で折り曲げるなんて苦行をしなくても、痛くなっても何とかなる環境で歩くのがベストです。外回り中心の仕事であれば通勤時だけでも、もしくは土日のショッピングセンターあたりである程度履きこめば十分です。足に合わせながら曲がりの癖をつけるのが自分にとっては気持ちがいいです。

私は新品時にソールにミンクオイルを入れるため、履き始めはかなり滑ります。徹底した本気ソールメンテナンスの後も似たような感じなので慣れっこではありますが、革靴を履きなれていない人はこうした滑る状態で動き続けるのも危険ですので、逆にソールが少し剥けるように硬い路面を歩くもありなのかもしれません。革靴が滑るのは結構最初のうちだけで、ソールが少しすれてくると私はそれほど滑るような印象はもっていません。

いろいろな人がレザーソールについて語っている内容を見るに、レザーソールは滑るとか、雨の日はもっと滑るなんてことが書かれていますので、スニーカーなどのゴム底に慣れている人にとっては結構違う感じなのかもしれません。いずれにしても、履きはじめのうち人が革靴に慣れるまでと、革靴が履いている人に馴染むまでは注意が必要なのかもしれませんね。

室内履きを最初のうちにたっぷりしたことあってつま先のヘリは最小限です。靴の構造的にはどうしても歩くと新品状態からはつま先が削れるはずです。その削も多少は意識してパーツが組み合わさっているのが革靴だと思っています。私はつま先スチールはめちゃくちゃ格好悪いと思う人なので、多少に減りはレザーソールならではと思っています。初回のうちはつま先の削部分にしっかりとミンクオイルを入れて、かつ革を締めるようにしてヘリを減らします。スチールの取り付けも、信頼できる職人さんや工房でない限り、帰って靴を傷つけてしまうようなので、あえて履き始めからつま先をいじることはないと思っています。



アッパー側はBoot Blackのデリケートクリームを気持ち多めに塗ってから、これまたBoot Blackのクリームを薄めに塗りました。製造から1年ほど経過したモデルということもあるのか、初回はデリケートクリームがよく入ります。その後ブラックの乳化性クリームをまんべんなく塗りました。Boot Blackのクリームは程よく艶が出るのでカジュアルには重宝します。アッパーだけでなく、ウエルトの部分もブラシでよく塗りこみました。

色の違いなのか素材の微妙な違いなのか、それとも初回のお手入れの違いなのか、黒色のほうが少し大雑把なしわが入ります。ただこれまでREGALや初期RENDOで採用が謳われていた国産キップに比べると明らかにきめが細かく、それでいてしっかりとした革という印象です。


これまで黒のカントリーテイストなウイングチップはどのようなシーンで履くものなのかイマイチわかっていませんでした。ビジネス寄りな堅めのスーツスタイルの足元には少しヘビーすぎるきらいがありますし、かといってブルージーンズや明るめのチノに合わせるには今度は靴だけがお仕事モードのような雰囲気になってしまう気がします。

このデザインであればどちらかというと茶系の方が合わせる服が多そうに思えます。

黒についてはこればかりは私のセンスのなさではあるとしても、暗めのジャケパンやフランネルのグレーくらいしかスイートスポットないんじゃないかとさえ思っていて、このデザインだったら茶系だよね、とずっと思っていました。

毎日スーツ族であった私も、最近はビジネスカジュアルでブラックデニムなんて日が増えました。当初は足元にスニーカーを合わてこれはこれで歩きやすさや気軽さなどいいところはたくさんあるものの、やはり足元が軽快すぎてなんとなく物足りなさを感じていました。単に革靴が好きだというところも大きいかもしれません。

そんなわけで、少し足元を大人に戻してみたらどうかなと思えてきました。ここで黒のウイングチップの登場です。

パンツが黒系なのでいちばん下の靴に黒をもってきてもまったく違和感がありません。むしろ中途半端にカジュアルな明るい色のほうが大ハズレです。ドレス寄りの靴だと、今度は靴がないから仕事用を休日に無理やり履いているおっさんになってしまい、これまた逆効果。

外羽根スタイルの重厚な黒のウイングチップだと、それなりに大人感のあるカジュアルスタイルに落ち着く感じです。ダブルソールのコバ張り出したがっちりな見た目も、大人の重厚感に一役買っています。



不思議なことに、わざわざ一般流通可能か型番で再登場しているにもかかわらずリーガルの公式サイトくらいでしか買えません。近くに店舗があれば店舗でお試し対象なので2235NAと同サイズと上下ハーフサイズくらいを取り寄せれば自分にあったサイズが見つかります。私はW10BDJを履いているため同サイズ狙い撃ちでしたが、個体差があるのであまりサイズ表記に拘らずに直感的にその日履いている靴と比べてどうかでいい気がします。

これを書いている2025年11月現在で税込52,800円(税抜48,000円)。
スニーカーも含めた紳士靴全般のなかではとても高い靴ではありますが、これだけこだわった靴をある程度手作業も入れて作ったらこのくらいしないとニッポンの所得も増えないわな、という印象です。

流通や小売りがあるので私たちは実物へのアクセスが容易になり、素材や色をこの目で確かめたりフィッティングについて相談に乗ってもらえます。一度に複数の商品を比べながら選択できるなど必ずしも流通マージンが悪いわけではありません。海外のブランドなどでは正規代理店には一定品質の合格品の中でも特に高い品質のものを回しているなんて話もあります。

せっかく全国のパートナーと開拓しているREGAL SHOESがあるのに、やっぱり価格が高い靴も一般流通(特に通販)を狙いに行くあたりが大きなメーカーの苦しいところでしょうか。各地のフランチャイジーが十分な利益をあげるモデルって作れないもんでしょうかね。靴全般が売れなくなる中、真っ先に高級靴を扱っていた法人が苦境に立たされているようです。フランチャイジーは独立して経営しているので各自の経営努力に委ねるほかありませんが、リブランドをしてまで守ろうとしているリーガルというブランドこれまで一緒に支えてきたパートナーを単なる販売のエンドポイントとしてではなく文字どおりのパートナーとして共生できるしくみができるといいですね。

「リーガルを扱いっていたから苦境を乗り越えられた」と全国各地のREGAL SHOESオーナーが思えるようなリブランドの成功を願ってやみません。


10ELDDはとても素晴らしい靴です。見た目も、作りも、履き心地も。

これが私の手元にあるということは、企画をする人がいて、靴を作る人がいて、それを工場から運ぶ人がいて、販売をする人がいて。

そうした仕組みを作って維持している会社があって、インフラを支える企業があって、そこに人を送り出す学校があって。そうした多くの繋がりの中からこの靴ができたことが一つの奇跡です。この靴に関わる人の誰か一人が違う人生を歩んでいたら、この靴が私の手元にきていたかどうかわかりません。

多くの人の関わりがあって、10ELDDという靴がここにある。


2025年8月1日金曜日

New Balance CM996

クラシックなスニーカーではひとつの定番、ニューバランスCM996。


CM996はニューバランスの直営店のほか、日本全国に店舗があるABCマートさんからセレクトショップまで、購入できるところがたくさんあり入手が容易です。世界全体でみるとニューバランスの本場米国では996は販売されておらず、英国やフランスではMade in USAモデルだけが取り扱われ、アジアでも大きな市場である中国大陸では扱われず、日本と韓国くらいでしか売られていないリージョナルモデルです。

同じアジア製造でもグローバルモデルといえるML574とはだいぶ違いますね。大谷翔平選手がニューバランスの574をスパイクにしちゃったのは、単に574がグローバルの誰もが知るスタンダードモデルだったからなんでしょう。


一方で、このニッポンではどちらかというとML574と比べても力を入れて販売されているのがこのCM996です。

日本ではすでにスニーカーとして一定のポジションを確立したニューバランス、ML373とかML565とか公式サイトに販売されていないモデルも量販店向けに流通しています。いまやいたるところで「N」マークの靴が売られていて、全国のイオンとか靴流通センターでも価格を抑えたラインが売られています。実際に街中で意識してみるとML373は結構履いている人多いです。

ニューバランスの1万円から2万円の主力ラインはスニーカーの一つの基準点のような作りです。これだけのものを作れるのに、なぜか数千円しか安くないのにあらゆる良さをなくしてしまったモデルがまた量産されているのも不思議なメーカーです。

安物カラコン然り、外しちゃいけないポイントを外した低価格品ってのはどうなんでしょうね。売る側の技術者倫理みたいなものの観点からどうなんでしょう。

そんな靴世界中にいっぱいあるし、歩けなくなる致命傷を与えるようなものでもないし、それなりに真面目に作っている部分はあるってことでしょうか。だとすると矯正靴という出自に対する矜持を期待するのは勝手な部外者のノスタルジーかな。



CM996に話を戻すと、この靴は2万円以下のファッションスニーカーの一つの答えのような気がします。

ランニングとかトレイルランとか特定の目的を持って靴を選ぶ場合を除いて、日常のタウンユースとして出かけるために履く靴、としたらここから引き算をせずにこれ以上を求めるとなかなかいい感じのものが見当たりません。

強いていうならこれに「防水」を求めるとCM996のゴアテックス版、ってことになりますが、ここまで行くともう普段使いの終着点とさえ思えてきます。


このCM996、元々は1988年に登場したランニングシューズM996のアジア製造版です。

M996は米国の工場で半ば手作りしているので値段が高くなってしまいます。製造原価が高いのに加えて関税もかかり、日本では3万円をゆうに超える金額です。グローバルではこちらの米国製996が売られています。

スニーカーは長年履き続けるということに重きを置いていないこともあり、こうなるといくらいい靴と言ってみたところで、国内のアシックスあたりには太刀打ちできません。CM996は関税と製造コストの安いアジア圏で製造している案外ニッチな市場向けモデルです。

オリジナルのM996と比べると、ソールの素材が少し変わっていたりと、まんまレプリカではなく、微妙にアップデートがされているようです。

CM996はランニングシューズを出自としたタウンシューズなので、いまではファッション性で履かれているケースがほとんどとはいえ、デザインだけで勝負をしているような靴ではない基礎力があるような感じです。


まずソールから。

ソールは平坦なロードで履かれることを前提としているため、ML574よりソール全体は薄く見られがちですが、実はそこそこかかとにはボリュームがあります。店頭で見た限りでは米国製のM996より、アジアCM996の方がソールが少し薄い気もしますし、実際に履いてみた感じではML574よりは明らかに薄く軽く感じます。


アウトソールのパターンは基本的には前後(ほとんど前方)に向かって進むことを前提にしているようです。屈曲性がよく、かつ前後に滑りが少ないことを意識したパターンです。


あまり意識したことないですが、ソールの形状的には横滑りには弱いように見えます。タウンユースだと濡れたタイルなんてシチュエーションもあるので、前後全振りなソールは微妙に影響が出そうですがいまのところそのような経験をしたことがありません。凹凸が少ないソールがゆえに水はけがよいのでしょうか。

全てが平行なソールパターンなので屈曲性は良いです。細かく筋が入っていることもあって時計のベルトみたいな感じで足の屈曲に合わせてロールしやすい形状です。

全体的なラストは足なりに内側に振られていますが、ソールパターンは進行方向に垂直になっています。この辺りの割り切りはさすがランニングシューズ。最近ではここまで露骨に並行なのはNIKEの一部モデルくらいでしょうか。

カーボンプレートの登場以降厚底化する以前の考え方であれば、ソールは薄いほうが軽いけどクッション性がなくなる。ランニングの際に母指球から親指に力が抜けていくときには進行方向に向けて靴が垂直な状態になっているので、開発は40年近く前の時点での技術と考えたとき、少し厚めのソールにしても屈曲性が保たれるCM996のソールパターンは理にかなっているように思えます。


ミッドソールは日本の技術も入っているC-CAP。日本の月星化成(いまのムーンスター)がかかわっているとかいないとか。というか、ムーンスターはニューバランスの日本法人設立に大きくかかわっていますし、いまでも会社経営にかかわっている感もありますので、ある意味グループ内技術みたいなものかもしれません。

何となくENCAPよりへたりが早い気がしないでもないですが、トレイルラン向けの靴と比べているのでそう感じるだけかもしれません。

インソールはあまり特長が書かれていることがないですね。ニューバランスからはより高性能なインソールが販売されています。そのレベルのものに取り換えるということであれば初めから最新の技術を使ったランニングシューズを買えばよいので、もともと入っているもので日常使いは十分かと。

傾斜はそれほどでもなく、靴の前半部でつかむような印象のML574と比べると、もう少し足の後ろ側を使う靴です。脛を少しつかむような形になっていることもあり、サイズを合わせてはくと足首周りが安定します。

舗装が行き届いた日本の都市部で履くならCM996のほうが合う人が多そうです。


外見はメッシュとスエードのコンビ。


革の部分は本革を採用しており、なんとなく丈夫そう。人工皮革だとどうしても加水分解したり破けたりがあるので、ボールを蹴ったりなどのシーンも考えると本革が使われているのはいいですね。加水分解しないソールと合わせてそれなりに長持ちするかもしれません。

実際に、これまでも何足かこの手の靴を買っていますが、ニューバランスの本革採用モデルは、たいていは革の部分よりも履き口のビニール系の部分からボロボロになります。

親指側の革は少し大きめに取られており、指先側から穴が開くようなことはないでしょう。


ラストはSL-1ラストと書かれており、ニューバランスの中ではスリムなラストといわれています。とはいえ、この靴もう何十年も前に欧米人向けに開発されているので、甲高幅広が過去の記憶となったいまの日本人にとっては、それほど狭さを感じることはない人も多いかと思います。私も少し幅はタイトに感じることがあるものの、しばらく履いていると(やや形が崩れているような気もしつつ)あまり気にならなくなります。逆に2Eなんてモデルがあったらゆるゆるではないでしょうか。


ランニングシューズだからか、かかとの部分とNマークが反射板になっています。タウンユースとしては少し薄暗いところを歩くとき、車やバイクと事故を起こす可能性が減るのでいいですね。この辺りはトレイルラン用を出自とするML574と異なる設計思想です。



冒頭でも書きましたが、このCM996、北米やヨーロッパ、オセアニアでは販売されていません。Made in USAモデルのM996が扱われている国は多いですが、作っているはずの米国ではM996自体が販売されていません。

グローバルもであるであるML574は世界中のニューバランスショップで売られています。国内ではML574と双璧の人気ともいえるCM996が、海外では全く売られていないのは意外です。ほとんどが日本と韓国向けに作られているような靴なのに、なぜかウイズがDなのも不思議です。

日本国内には565というイオン系で売られているニッチなモデルがあり、別に574か996でいいんじゃない、と思っていましたが、このCM996もグローバルで見ると結構ニッチなモデルだったんですね。


円安をはじめ様々な理由から価格が上昇していても、十分価値ある靴ではないでしょうか。確かに Made in USA モデルはいいのでしょうけれど、このCM996も十分な靴に思えます。ある意味ローカルモデルなのにカラーバリエーションも豊富なのは、それだけ日本ではニューバランスが売れているということの裏返しです。

人と被ることも多いですが、革靴の世界であればみんな同じような靴履いているし、本来のドレスコード的には堅めのビジネスシーンだとよほど靴に興味がない人でなければ区別できない程度の違いしかありません。

靴が被っても、トータルコーディネイトが異なればその印象は全く別モノでしょうから、変に意識せず、定番だからゆえの安心感を買うというのもありです。


実はこれまでCM996はちょっと避けていました。

スニーカーはそんなにいらないし、なんとなく米国製か英国製に惹かれるし、どちらかというと公園で遊ぶ用の靴が欲しかったのでランニング用よりはもうちょっと汎用的な靴のほうが良かったしということで購入する理由がありませんでした。

あまりにもメジャーすぎる感じがするというのも一つの理由だったかもしれません。

ここにきて、仕事上でスニーカーのほうが都合がよいことがあり、そんな中で選ぼうとすると、逆にCM996があっている気がしました。

運動比率が少なくて、むしろタウンユースで普段使いということになると、ML574よりCM996に軍配が上がります。なにせ歩きやすいしML574よりは滑らない。



ML574に比べると少しだけ値段が高いのも、加水分解しにくい素材が使われていることで耐久性が伸びればイーブンではないでしょうか。

湿度が高くて、路面は舗装されていることが多くなったニッポンではCM996が必要だったんですね。

ある意味、ニッポンらしい靴なのかもしれません。



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2025年7月23日水曜日

REGAL 2177N

 ローファーの定番、リーガル2177N


典型的なビーフロール型のコインローファー。
いわゆるローファーのよくあるデザインのひとつ。

ローファー、特にコインローファーは日本では中高生が履く靴という印象を持っている人も多いけれど、かのマイケル・ジャクソンはG.H.Bassのローファー履いてステージで激しいダンスをしていたという話が良く取り上げられるように、アメリカの一つのシンボルであるともいえる。


リーガルの企業サイトによれば2177は1971(昭和46)年に発売開始されたそうな。2025年現在で54年。そう思うと歴史が長いのか短いのか微妙。私とあんまり変わらないくらい。

デザインは発売当初から変わっていないとのこと。製造場所が変わったり調達関連で超マイナーアップデートくらいはあるとしても、実態として古き良き時代から現代まで一貫して生き残っているモデル。それだけでもすごい。当時からグッドイヤーウェルテッドで作られていることが読み解ける。

ローファーを含む紐なし靴はスリッポン(Slip-On)と呼ばれる。寝るとき以外は靴を脱がない欧米文化の中では、日本人の感覚でいうならそれこそスリッパ(Slipper)のような位置づけとして登場したようなことが言われている。日本人の感覚ではわかりづらいけれど、欧米人が靴下を見せるのは日本人が下着を見せるみたいな感覚だそうなんで、家の中に入ったからといっても靴はやっぱり必要で、でも少しリラックスした靴が良いよね、といったニーズがある。

それが次第に(マーケティングもあるだろうけど)室外靴としての地位を確立して、これまたアメリカの一つの象徴みたいな位置づけまで上り詰めた。ローファーを履いて大人になった東海岸の学生たちは、今度はそれをビジネスシーンに持ち込もうとする。それがタッセルローファーの始まりとかなんとか。

で、アメリカのブランドと提携して始まったリーガル(当時は日本製靴株式会社)は当然ながらアメリカでの定番がラインナップの主力となるわけで、VANのローファーを経てこの2177Nが登場する、そんな流れかな。


ローファーはマッケイ製法のような返りの良い軽めな製法が採用されることが多いなか、2177Nはリーガル得意のグッドイヤーウェルテッド製法。
紐がない靴をグッドイヤーウェルテッドという堅めになる製法で作っているので、当初は返りが悪く、足になじむまでに時間がかかる。

リーガルの商品紹介でも「履き始めは堅め」と書いてあるように、まっとうなサイズ合わせをした場合は、履きなれるまでに相当な覚悟が必要な靴。いわゆる昔ながらの靴であり、現代に多い当初からの履きやすさを求める靴とは全く設計思想が異なる。

よく言えばなじめばとても丈夫で長持ちする靴でもあり、悪く言えばそれ以前に脱落者を大きく生み出す靴ともいえる。グッドイヤーはリペア面では優位とはいえ、いやこれ丈夫だしリペアまでいきませんって。


アッパー素材は2504NAと同じようなガラス仕上げの革。肉厚なレザーを使い、ライニングがない作り。リーガルはこの手のガラスレザーの定番が多い。発売当初から同じデザインの靴ではあるけれど、タンナーが手に入れることのできる原皮の質は変わっているといわれているし、仕上げの段階で使うことができる薬品も変わってきていると思われる。その中で同じような品質を変わらず提供し続けるって結構大変なことなのではないだろうか。

ガラスレザーは表面に樹脂コーティングをしているので、雨にも比較的強く、日常のお手入れにもそれほど気を使わなくてもきれいな状態を維持できる。そこそこ履きこんで、クリームでお手入れするとなかなかの光沢も出る便利な素材。一般的にはメンテナンスに気を使わないようなことが強調されるけれど、鞣して仕上げる過程においては職人の手触りによる仕上がり感の確認が重要という話を聞くに、やはり革としての「何か」がある。


きれいに保ちやすいこととお手入れをしないでもよいことは別。もしお手入れをしなくてもよいという話をする人がいたら、そこには素材そのものに対しての感謝も、自然界のばらつきを相手に一定の高い品質を保つために精魂込めているタンナーの職人さんにも、それらをもとに履きやすさと丈夫さの両立をする靴の形を作り出した靴職人の方にもまるで敬意がない。靴をお手入れするかどうかを決めるのは素材ではなくて、あくまでの態度の問題ではないかと思う。


ソールはリーガル定番ラインで使われているフラットなゴム底。リーガルの解説による滑りにくくクッション性も意識して作られたとある。実際にこのソールはフラットな見た目にも関わらずレザーソールに比べるとはるかに滑りにくい。

ソールの返りはレザーに負けるものの、サイズがあっていればかかとがしっかりついてくるので十分なしなやかさはある。


サドルサイドのビーフロールやかかとのキッカーバックなど、アメリカンスタイルを意識したデザイン。いわゆる拝みモカ縫いもシンプルな印象。これもあってキレイ目ファッションよりも少しカジュアル強めのスタイリングに合うと思う(と、センスのないといわれる私が言ってみる)

キッカーバックはもともとは靴を脱ぐときに他方の足で引っ掛けて手を使わないで脱ぐことができるためのものといわれている。ただ、そもそも紐のないローファーって脱ぐのそんなに大変かな。手でつかんで引っ張るだけで脱げるから、紐を扱わないでいいので手間が少ない。(それすら面倒というLoaferな靴?)
むしろこのキッカーバックがあることで、それこそアメリカンスタイルなデニム(ジーンズ)を合わせるとキッカーバックに裾のステッチが引っかかって歩きにくい。


全体的にはノーズも短く、サイズが小さい人であれば丸みが強調されて実サイズよりコンパクトな印象になる。


定番ラインとしては珍しく製造国はタイ。シンプルな作りでもあるし、価格はそれなりに抑えて定番を維持したいしでの選択かな。おそらくは関税も比較的安いゾーンにあると思われる。

みなさんおなじみ矢野経済研究所さんのレポートによると、紳士靴市場は2025年度予測で1,361億円。コロナ前の2018年度は1,833億円あったので、コロナ禍から戻しつつあるとは言え4分の3。日本では革靴の売上が減りつつある中で、本格靴を作ることができる靴職人さんも減少しているということは予想できる。最近では円安だから日本の丁寧な靴職人さんが作った靴を海外で販売するなんていうこともできそうだけど、日本発だとこれまた関税がかかったりでうまくもいかなそう。




リーガルの歴史が長めな靴は、丈夫であるがゆえになじむのに相当な時間を要する。

購入して半年くらいわりと集中して履いて、延べ50日分くらいは履いてやっと終日履けるようになった。私の体重が軽いこともあるのか、本来多少沈み込むはずのインソールにほとんどフットプリントがつかず、沈んでいる気配がない。ローファーだからあまり靴の内寸が変わらないようになっているのだろうか。相変わらずかかとの外側が痛い気がして、少しサイズがタイトな感じは続いている。

リーガルの公式サイトでは「疲れにくい」と書いてあるけれど、それ以前に「痛い」を通り越すのが大変。次第に革が柔らかくなってきて、そうなると終日履くことに問題はなくなるものの、「履き心地」にフォーカスするような靴でもないと思うので、リーガルの中の人がいうほどの期待感を持つのも危険だなぁという気がしている。

発売当時は当初は固くてもそのうちなじんで、その分丈夫みたいな靴がいい靴の一つの指標だったのかもしれないけれど、その常識がなくなった現代では誤解を招きやすい靴。


ローファーに限らず本格的な革靴はある程度の靴の変形を想定して選ぶ必要もあって、最初はややきつめを選ぶのがセオリーといわれている。だからきちんとしたフィッティングができるお店で相談しながら選ぶ靴になる。サイズを無視して、フィッティングの印象だけで買うほうがいい。

紐がないローファーはその中でもかなりフィッティングがシビア。私は最寄りのリーガルシューズで試し履きして購入。2504NAと同サイズを中心に前後ハーフずつを出してもらい、ふだんやや緩いと思っている2504NAと同じサイズを最初に履いたところ「足がはいらん!なにこれタイト!」という印象だったのでその下のサイズは止めてハーフ上と比較して比べてみた。

ハーフサイズアップだとふだんの履き心地に近い気はするものの、甲の外側にゆとりがありすぎる感じがした。履きなれるにつれ以前のパカパカになりそうな予感がしたため、結構きつめに感じた2504NA同サイズをチョイス。まさか同じサイズ表記でも履いた感じがここまで違うとは、という印象で店を後にした。

紐がなくてアジャストできないがゆえに、ちょっとしたきつい緩いがダイレクトに一日中伝わってくる。

これまで自分で履いた限りだと、最初からいい感じで継続していい感じが継続するローファー(ケンジントン)もあれば、この2177Nのように文字どおり最初は血だらけになるくらい痛いけれど、1年くらいたってやっと履けるようになった靴もある。ただそれでも「履きやすい」という感覚はまだないので、となるとなじむまでにどれだけ履き続ける靴なんだ、という印象。

一足を履きつぶすみたいな履き方であればもう少し早くなじみ、丈夫であるがゆえにそのいい感じの状態が続くといったところだろうか。


ローファーを選ぶ際には「きつめを」というのはある意味あっていると思う。間違いなく多少は緩くなり、それを紐で修正できないので。ただ、この「きつめ」という言葉が独り歩きして間違った解釈でとらわれていることが多い気がする。
(いきすぎて「きつめ」ではなく「小さめ」と書かれることもある)

「きつめ=サイズダウン」ではない。

紐に頼らず靴の構造だけで足を支えるローファーと紐を使って調整が可能なオクスフォードシューズでは靴を作るためのラストの設計思想がそもそも異なっている。

同じリーガルの定番モデルであるローファー2177Nと、プレーントウの2504NAとでは同じサイズでも明らかに履き心地が異なる。2177Nは2504NAと比べてかなり甲を抑え、かかともややタイト目な作りになっている。2504NAだと、仮に紐を結ばないと全長も少し余裕がある感じがする。一方の2177Nはそのゆとりを感じるサイズと同じサイズ表記のものを選んでも、靴ベラなしには絶対に履けないくらい全長全幅ともにタイト。

これまで2504NAを2足、2177Nも2足買って履いているので、この同一サイズだけど履いた感じが全く違うというのは個体差ではなくモデル差だと思っている。2504NAだと少し緩めに感じるから、ローファーということもありハーフサイズ落そうなんて感じでネットで買ってしまうととんでもないことになりそう。

よく「ローファーはハーフサイズ落せ」という意見を目にするけれど、これは「きつめにする」という意味を誤解している。ローファーは専用のラストで作られているので、たいていはオクスフォードシューズと比べると同サイズでも「きつめ」に感じるはずである。

むしろ、同サイズできついからといってサイズアップするな、ローファーなら紐靴と同サイズならきつめになるのだからそれを正解と思いなさい、というアドバイスではないだろうか。

こればかりは実際に履いてみないとわからない。2177Nは2504NAと同サイズだと明らかにタイトに感じる。むしろ同じ感じのサイズ感はローファー側をハーフ上げたくらいかと。シェットランドフォックスのケンジントンのように同一ラストで紐靴とスリッポンを作っている場合については同じサイズだと二の甲からつま先まではそれほど変わらない印象なので、やはり2177Nは専用のラストが使われているか、甲の部分を抑えるために相当きつめにサドル部分を設計している。

ローファーをハーフ落として選択するということは普段の靴のサイズがよほど大きいか、緩めのフィッティングに慣れてしまっているのではないかと。内周のためだけにハーフサイズ落してしまうと全長が変わるので、小指やかかとになんらかのダメージが出る気がする。このあたりは個人の足の形にもよるだろうから、やっぱりローファーはフィッティングしてなんぼであるといえる。

この靴を履いてみると、2177Nを起点にラストを考えた場合2504NAや2235NAがゴツ目の足を想定して大きめに作られているという話は本当にそうなのか、という気さえしてくる。私は足は結構薄目なほうだけれど、それでも購入当初はサドルの部分がかなりタイトで、甲側にマメができそうなくらい痛めつけられた。かかとについては今も外側のあたりが気になっている。

ゴツ目の足だとむしろ入らないか、入ったとしても甲の血管切れてしまうんではないかと思うほど、かなりタイトな作りに感じる。フィッティングのためにサイズを落として履くような靴ではなく、むしろ上げて履く人が出てきてもおかしくない。リーガルが日本人はすぐ緩めの靴を履きたがることを見越して、同一サイズでかなりタイトに仕上げているのではないかと思うくらい。

リーガルの靴は大量生産を前提としているので、ある程度平均的かつ許容度が高めなラスト設計をしているはず。その前提でこれだけフィット感が違うのだから、やっぱりローファーはきちんと履いてみるということが大切。


お手入れはあまり気にせずブートブラックを使っている。ふだんの簡単なメンテナンスにはニュートラルを使い、5回に1回くらいブラックを使う感じ。毎回ブラックでないのはそこまで色を載せてもガラスレザーには色がつかないし、逆に合わせるパンツの裾に色が移りやすいという理由。でもニュートラルだけだとしわの部分やモカの折れ目などが目立つので気休めに。

お手入れはやや回数多めに。この手のローファーは汚れが目立ったりすると急に学生の指定靴っぽさが強くなるので、ピカピカにメンテナンスされているほうがいい。


2177Nは日本のローファーの一つの定番。

高校生が履くには少し値段が高いという気もするけど、一度は履いたことがあるなんて人は結構いるのではないだろうか。

ちなみに私は高校時代はスニーカーオンリーだったので、革靴に目覚めるのは大学生になってからだった。最初に買った靴は2236NAだった。

若気の至りで20代前半のころにJJ17という当時の若者がどうしてこうなったのかというローファーを買ったのだけれど、明らかにサイズミスをして結局履き続けることができずに手放したことがある。当時はスニーカーサイズに比べて大幅に小さなサイズになることが信じられなくて、お店の人の意見もあまり聞かずに購入してしまい、毎日パカパカ履いていた。

この印象を引きずっていたのでローファーは自分に合わない靴という決めつけと、ローファーはビジネスシーンには合わないという教科書による余計な知識があって、毎日スーツスタイルで働く自分としては目を向けることがなくなっていた。

40近くなり(いまさらではあるけど)やっと靴の適正サイズ感が持てるようになってきたころ、やっとローファーに手を出した。当時、シェットランドフォックスのケンジントンの履きやすさに感心していたころ、同ラストのローファーをみて、何となくローファー履いてみたいという気持ちが沸き起こってきた。試着したところこれがまた足にピッタリであることに気をよくして、同じラストで2足も買ってしまう。この体験が自分のローファーイメージを変えることになり、1週回って2177Nにも手を出すことになる。


ローファーは大人が自分の選択で履く靴で、結構履き初めは大変なこともあって、実店舗でじっくりフィッティングしながら買う靴。靴のサイズ感について購入者側もわかっていたほうがいいし、紐がないがゆえに靴全体で足を締め付ける履き方になる。歩き方も微妙に紐靴と違ってくる。若い人は無理して履かなくてもいいデザインの靴だと思う。

このデザインの靴を指定している学校の先生方に聞きたい。なぜこのデザインが必要なのか。紐がないことによって紐が巻き込まれてけがをする事故を減らせるというメリットくらいはありそうなものの、ローファーを指定するメリットが思い浮かばない。

ローファーをまっとうな靴屋さんで買ったことがある人ならば気づいているはず。きちんとしたフィッティングをして選んだとしても、それなりの伝統的な作り方で作られている革靴は履き始めの日から終日歩き回れるほど足にやさしくない。履き始めはかなり修行が必要なので、終日履けるようになるまでかなりの期間を要するということを。

もちろんこれはローファーだけのことではなくて、作りがしっかりしている革靴はたいてい最初は痛いものだし、逆に作りによって柔らかくもできるので全部が全部最初にカチコチなものばかりでもない。ただ、この紐のない構造はどうしても体に負荷がかかる。アジャストするパーツがないので、緩んだら最後、足が緩んだ靴を抑えるために必要以上の負荷を歩くたびにかけ続けてしまう。

外反母趾、ハンマートウ、靴ずれによる障害、腰痛...

靴はそういうものだとして気づかず体を痛め続けてしまう。

学校の先生方(というより理事とか経営の人たち)には声を大にして言いたい。外部が知ることがない明確な理由がないのであれば、ローファー指定を本気で考え直して欲しいと。
将来あるこどもたちが、このローファーで痛いのは嫌だから大きめを買う、ということがどれだけ健康を損ねているのか。

体のことに詳しい体育の先生とか、歴史から学ぶことが身についている社会の先生とか、合理的なデータを集めて分析することを教えている数学の先生とか、そもそも怪我を目の当たりにしている保健の先生とか。みなさんローファーの弊害に気づかないのだろうか。

将来外反母趾やハンマートウで苦しむをことになる児童・生徒をひとりでも減らすことができるのは現場の先生や学校運営に決裁権を持つみなさんにかかっている。


ここまで書くと、ローファーが体に悪い靴みたいになってしまっているけれど、適切なサイズを選んで、きちんとなじませる時間をとって、お手入れしながら履く分には問題ない靴なのだから、その選択する自由と時間の自由ができたときからでも遅くはなくて、若いうちにはもう少し足に対して優しい靴を履いてもらいたいと心から思う。

若い人が化粧をしないでもいい(しないほうがいい)理由と同じで、若いころの体へのダメージはのちのちの人生に大きな影響を与える。どうしてもローファーなら、本格ローファーは半年かけて休日に十分なじませて、最初の一足はスニーカータイプの構造のものにしましょうよ。ただ、ここまでするなら初めから足にやさしい靴履けばいいんじゃないかと...


2177Nはあまりにも定番的なデザインであるがゆえに恥ずかしさを感じてしまう人もたくさんいると思う。それだけ日本ではローファーは一定のポジションを確立しているわけだ。革靴の価格がどんどん高くなって、ローファーも気軽に履く靴ではなくなってきている。


ローファーはいろいろな意味で間違った場所で間違って履かれてしまっている靴。
50を過ぎたおっさんが格好良く履くのは難しいってことはわかっていても、なぜかときどき履いてみたくなる不思議な魅力がある靴。


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2024年12月15日日曜日

New Balance ML574

ニューバランスの中で世界で一番売れていると言われているモデル、ML574。


グローバルスタンダードともいえる定番で、文字通り世界中で広く売られています。


私、ふだんのスニーカーは主にニューバランスのM576を履いています。過去にはM1400を履いていたのですが、販売が終了してしまいました。


それからは同じSL-2ラストということでM576を履いています。休日も含めて革靴がほとんどであったため、スニーカーは1足を数年単位で買い替えるといったことをしていました。

カジュアル使いがメインのため、色はグレー。汚れが目立ちにくいという色合いもあり、公園でのちょっとしたボール遊びなんかもこれ一本でやっています。


今回はビジネスユースを目的として、ブラックのスニーカーを買い足しています。そのうちの1足がこのML574です。

M576が Made in UK であることに対して、ML574は同じコンセプトで製造をアジアの開発途上国で行うことにより原価を下げ、販売価格を抑えたモデルです。特に日本だと関税面から有利です。


公式サイトによれば、アッパー素材は「環境にやさしいエコな材料」である「ECOGREENスエード/メッシュ」です。メッシュ部分は本革と説明されています。


二層構造のミッドソールはニューバランスおなじみのENCAP。クッション性が高いといわれていて、確かに少しふかふかしたような履き心地です。ENCAPはニューバランスの標準ソール素材の一つであり、クラシック系の多くのモデルで採用されています。


ENCAPは軽さと耐久性を両立するためにEVAをポリウレタンで包んだ構造のため、このポリウレタンが加水分解しやすいと多くのサイトで書かれていますが、これまで私が履いたモデルでは特に問題になったことがありません。ソールより先に足首周りの内側がボロボロになります。

日本をはじめとした湿度の高い国々ではさすがに加水分解をするポリウレタンは厳しいとなったのか、アジアモデルのCM996はソールにポリウレタンを含まないC-CAPが採用されています。

おそらくは履き心地と性能(というかコスト?)的にはENCAPがいいのでしょうけど、店頭や倉庫での保管時に加水分解のリスクがあり、この手のクレーム対応するのもなんなので、アジア系モデルにはC-CAPを使っていると言ったところでしょうか。ややニッチな素材であるのか、CM996が欧米で売られていないことと何か関係があるのでしょうか。

個人的には少し硬めな履き心地ではありますが、接地感を感じるC-CAPもいいところあると思っていますが、膝や腰へのダメージ度合いなどいくつかの条件によってENCAPが有利なんでしょうね。もしくはC-CAPのライセンス料などが高いとか、別な理由があるかもしれません。

現在でも高級扱いとされ、ライセンス料などの価格転嫁がしやすいと思われるUSA/UKモデルにおいて、ENCAP採用がそれなりに多いので、第一優先はENCAPなのではなかろうかと思っています。


日本でおなじみCM996と比べると、ML574がトレイルランからオフロードを出自としていて、当初ロードランニングを目的にしていたCM996とはいちおうの差別化をしているフシも見受けられますが、タウンユースを目的として購入するほとんどの人が、この違いでどちらを買うか決めているケースはまずないでしょう。


ラストの違いを置いておくと、大きな違いとしてはやはりソール周りでしょうか。

日本だと996はC-CAP、574はENCAPとミッドソールの素材からその違いを説明されることがありますが、US製造モデルだと996はENCAPを採用しているので、ミッドソール素材ということよりも、あくまでもデザインコンセプトの違いだと思われます。

靴全体のコンセプトとしては元々はML574はオフロードでの安全性、安定性を意識した作りになっているはずです。

ソールのパターンだけでなく、硬さも違います。トレイルラン向けはソールが硬めになります。なので、街中で履くぶんにはCM996の方が屈曲性がよく感じられて履きやすいと思う人が多いはずです。購入のために多くのブログなどを参考にさせていただきましたが、たいていはCM996のほうが履き始めの評価が高かったです。それもそのはず、ソールが固くしっかりしていることも要求の一つであるトレイルラン出自の靴と、返りがよく軽い履き心地を要求されるランニングシューズを出自とする靴とでは、後者のほうが街中では歩きやすいに決まっています。(極端に言えば下駄と草鞋を比べるようなもの)

舗装されていない道を歩くために、ソールのパターンは前後の動きだけでなく、左右の動き(滑り)にも対応するような形状です。ML574の後継モデルのような位置づけもあるU574だと、このパターンの溝の深さがさらに大きくなっています。


この突起のせいか、雨の日のアーケードなど、もともと滑りやすい路面に対しては弱いです。もともとの靴のコンセプトがカバーする範囲からちょっとはみ出ているようなシーンではこの靴のマイナス側面が目立ちます。足腰が弱っている高齢者にはおすすめできません。

574の踵は大味の作りになっている分なのか、足首を包むように少し高めになっていてアキレス腱を掴むような感触が得られます。足首の保護という観点からしても少し包み込む形状のほうがオフロードでは有利と考えられます。

ニューバランスはブランドロゴを入れるためにぐるっと二の甲周りを大きな部材が一周しているので紐を締めた時の安定感があります。甲側を包み込んで、踵をスタビライザーで固めるという安定感重視の作りこみです。

踵の大きさについていうならば、ブーツなども踵が大きめですが、トレイルラン向けってほかの靴もこんな感じなのでしょうか。ニューバランスの利点であるスタビライザーの良さがちょっとだけ減衰してしまうのがもったいない。クロケットアンドジョーンズのオードリー3みたいにかかとが小さいモデルが出たら日本人にはいい感じになりそう。

シューレースの一番上から踵にかけての造形が、CM996はなだらかなカーブを描くのに対して、ML574はL字型になっていて、やや足との接地面積が多めになっています。

いまとなってはML574でトレイルランしようとする人はいないとは思うものの、公園で遊んだり、未舗装道路を散策するなんて時には適していると思います。


ラストはSL-2ラスト、SL-1がランニングを目的とした細めのシルエットであることに対して、ロードからトレイルランまでをカバーするために少し汎用性重視です。継続して単調なクッションを要求されるランニングと、ある程度の力のベクトルが一定ではなく臨機応変な対応が必要とされるトレイルランとの違いなのか、SL-1ラストよりは快適さと堅強性の両立を目指しているバランスがこのラストの最も売りなところです。

履いた感じ全体的にはSL-1ラストのCM996よりゆとりを感じるものの、やや前方へのドロップ気味な感じを受けますので、母指球から指先までを使ってしっかりと地面をつかむような感覚が得られます。

ラストの踵サイズに比べてアウトソールの底面積自体はそれほど大きくはなく、その割にはボールジョイントあたりは広めなことと併せて、やはり靴の前方での踏ん張り重視な印象です。


令和のいまとなっては、トレイルランにはもっと適した靴がたくさんあります。ML574をその目的をメインとして購入する人はいないと思います。もはやファッションとしてデザインが評価されているわけですから、そういう出自のストーリーをもとにした履きやすさ論ではなく、もっと気軽にこの靴は履くものだと思います。ニューバランスも、いまとなっては広くタウンユースも想定してのラインナップとして、オンオフ兼用のふだん使い靴として売っています。

ML574はカジュアル系OKな職場であればビジネスでも使いやすいです。ブラックのML574ではNロゴもブラック、ランニングシューズによくある反射板もないおとなしめのデザインです。購入時点の紐もややトーンが落ち着いたものとなっていて、全体的におとなしいデザインです。

全体的に少し丸っこいためカジュアル感が出がちですが、ボトムにややスリムなパンツを選択すれば全体としてはまとまるのではないでしょうか。(ただ、私はこの辺のセンスはあまりないですのでそんな気がするだけ)

機能面だけを優先して選ぶとどれもデコラティブなデザインに行き着いてしまい、私のセンスではまとめきれずビジネスでは浮いてしまう気がしてなりません。そんなわけで結局のところニューバランスでは定番と言われるML574かCM996が個人的には無難な選択として残ります。

校庭や公園など未舗装のところでちょっと遊ぶなんてケースもカバーできて、全国どこでも入手がしやすい。ミッドソールは高級モデルと同じだしスタビライザーなど機能面でもしっかりとしている。大量に出ていることもあり価格も1万円くらいとそれこそバランスが取れている靴だと思えます。グローバルモデルだからこその価格だと考えます。


スニーカーは一部のコレクターを除いては、履きつぶしてしまって買いなおすという運命になります。運動をするときに履くとなると靴が汚れたり傷ついたりすることは避けられませんし、私にとってはむしろそういうことをするときに必要とする靴です。

いつかは買い替えることになるからこそ、そのいつかの日にもまた手に入るだろうと思える安心感がこのML574にはあります。テクノロジーの進化の中で、でも変わらないモデルをニューバランスが作り続けるのは、こうした「変わらない安心感」もブランドイメージの一つとして大切に残しているからではないでしょうか。

革靴の世界にはリペア(修理)という考え方があって、ソールが減ったら直すことができます。なぜまた新しい靴を買わずにソールだけ直して履き続けるのかといえば、履き心地を重視するからです。ソールを変えてもいわゆるアッパー側はなじんだものを残すことで、少しでも見た目、履き心地を継続させようとします。修理してもどこか一部は「うん、やっぱりこれだよな」を感じることができるのです。

スニーカーの世界ではリペアができない(できるの?)分、全取り換えしつつも、以前の履き心地を再現するためには同じ素材、同じつくりと外観のモデルが必要なんです。そういった意味でニューバランスは「うん、やっぱりこれだよな」という人と靴の関係を大切にしているメーカーとして私の目に映ります。


ふだんはタウンユースがメインだけど、休日たまには舗装されていないところで走り回ったりボールを蹴ったりなんて時にはやっぱりこの靴になります。ニューバランスは574の良さを「汎用性」といっています。

そう、用途に分けて細かくスニーカーを分けるなんてことじゃなくて、とにかくいつもこれを履いていればいい。ML574が世界中で売れているからこそ得られる安心感。



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ML574は日本全国購入しやすい靴だと思います。

2024年11月3日日曜日

Onitsuka Tiger TIGER ALLY

黒のスニーカー、TIGER ALLY。

アシックスが擁するブランドの一つ、オニツカタイガー(Onitsuka Tiger)の定番です。


仕事で黒のスニーカーが何足か必要になったため、おとなしめで上品なデザインな気がして、以前から気になっていたタイガーアリーを購入しました。

仕事上では革靴がほとんどで、たまの休日にもローファーやカジュアル系革靴を履くことがほとんどになってしまったので、スニーカー系はこどもたちと公園で遊ぶ時くらいしか履かなくなっていました。

今回、仕事でかなり動き回ることがあり、スーツスタイルではなくカジュアルに寄せたこともあって、足元もこてこてなビジネスシューズからスニーカーに変えることにしました。


中学生の時にニューバランスに出会ってから40年近く、ニューバランスくらいしかまともなスニーカー履いたことがありません。ときどきファッション系ブランドに浮気したこともありましたが、特に他を比べることもなく、コレクションすることもなく、単に一足が履けなくなると次を買う、なんてサイクルです。もう当初の型番などは覚えていませんが、後半はM1400を買い替えながら、販売されなくなってからは同ラストと言われているM576を履き続けてきました。

ランニングどころかウォーキングもしませんし、そもそも月にせいぜい4回履けばいいほうなのでこれ一足で困ることもありません。

余談ですが、ニューバランスで言われるソールの加水分解についてはこれまで経験したことがありません。月数回しか履いていないけれど、公園で走り回ったりするので砂埃が乾燥させてくれたんでしょうか。


ちょっと調べてみると、スポーツシューズの技術革新はこの50年くらいで大きく進化していて、最新の技術を搭載した靴は足や膝、腰など体全体に優しいことはわかりました。

ソールはどんどん厚く広くなり、重厚感のあるデザインに進化(?)を遂げています。まるで生物の適応放散ごとく、いろいろな目的に合わせてデザインも多様化しています。

しかし、革靴のシンプルなデザインに慣れ親しんだ自分から見ると、そのデコラティブなデザインは飛躍しすぎる印象で、これからビジネスで履く靴として選ぼうとすると、どうもしっくり来ません。このあたりは主観的な問題であるとはいえ、シンプルイズザベストの引き算の哲学が好きな私には、ちょっと行き過ぎ感を感じずにはいられません。

また、実務上階段の上り下りなんてのは頻発するものの、走ったり跳んだりみたいな激しい運動をするわけではないので、ソールをはじめとした機能面への要求水準はそれほど高くもありません。

私がもう30年近く革靴中心だったためか、足や体全体もその前提で変化しているのだと思います。実際、レザーソールの靴は返りについて言うならばたいていのラバーソールの靴よりも人間の体にフィットします。走り回ることすら少ないオフィスワークにおいては、もしかするとそれほど大きなマイナスはないのかもしれません。

そんな私ですので、デザインはクラシックと呼ばれる範疇のものが候補になりました。スーツの世界も革靴の世界も、結局のところクラシックに行き着くのが自分のスタイルなんだと。つくづく思います。


クラシックにも色々な方向性があるようですが、今回の候補は、

・ランニングシューズを原型としたもの(バスケやテニスの出自ではない)
・それなりにクッション性を重視だが、階段上り下りが多いため必要以上の厚底は避ける
・コストは1万円から2万円、生産国にはこだわらない

といった基準で選びました。


前置きが長くなりましたが、そんな基準で選んだのが今回のTIGER ALLYです。

TIGER ALLYにはレギュラーモデル(?)であるベトナム製のTIGER ALLYと、日本製のTIGER ALLY DELUXEがあります。私が購入したのは前者、18,700円(税込、2024年10月時点)です。

もともとはTIGER ALLIANCEという名前で販売されていたモデルのアップデート版のようです。Onitsuka Tigerのアーカイブにある画像を見てみると、ほぼTIGER ALLYと同じデザインで売られていたものを2017年に踵周りの安定性とfuzeGEL搭載で更新、その際に名前をTIGER ALLIANCEからTIGER ALLYに変更したようです。

TIGER ALLYはクラシックなランニングシューズの形、モノトーンのスエードによる落ち着いたデザインと、まさに大人のスニーカーという印象です。

アシックスの靴の特徴であるアシックスストライプ(メキシコライン)って、機能面はさておきとして、学校の指定靴だったり田舎の少年時代の印象が強くて、そのデザインの押し出しが強いと却って購入意欲が減ってしまうのですが、このTIGER ALLYのように全体のデザインの中に溶け込んでいると今度は信頼の意匠に見えてくるので不思議です。

BLACK/BLACK、CREAM/CREAMといったカラーの靴は上品に見えます。


今回購入したサイズは日本サイズで25.5、US7.5です。
普段の革靴はリーガルではほぼ24、サージェントなどのUSでは6、チャーチなどUKでは5.5を履いています。ざっと1.5くらいサイズを上げています。

TIGER ALLYは小さ目なつくりというのが定説で、ワンサイズ、またはそれ以上のアップをしたほうが良いということも書かれています。ワンサイズの定義が0.5単位なのか1単位なのか、足の実測からなのか特定のスニーカーサイズなのかわかりませんが、一般的なスニーカーで履いているサイズより大きめを買うほうがいいという意見が主流のようです。

今回は近くにお店がない環境での購入ということもあり、通販で購入しました。
ふだん履くニューバランスM576では25.5/US7.5でやや緩め、CM996でも25.5/US7.5でもうハーフ下でも履けないことはないくらいに感じますので、今回25.5を選びました。


到着して足入れをしてみると...

「んー、なかなか小さいか?」

サイズをミスった感がよぎって一抹の不安を感じつつも、冷静に判断してみると足が締め付けられるかというとそんなことはなく、単に新品だからふわふわなフィット感になっているだけのようにも感じます。指が抑えられることもなく、甲の血行が悪くなるようでもない。履けないというほどの小ささではないし、多少沈み込んだらぴったりになりそうな気もしてきます。

革靴と違い、ふかふかな部分があるスニーカーは直感的にサイズがわからない気がします。少し当たるのが小さいのか、それとも構造上そういうものなのか、感覚的にもう少しわかりたかったので早速履いて出かけることにしました。

革靴であればここでプレメンテ、ということになるのですが、スニーカーでは特に過保護になることもないと思うので、気休めに防水スプレーをかけてみました。防水スプレーはスエードの靴にごく稀に使うくらいで、スニーカーにはふだんはつかいません。購入時は汚れがついていないし、おまじないとしてやっています。


履き心地はかなり「ふかふか」

ニューバランスの靴(ENCAPミッドソール)についてよく「雲の上を歩くよう」という名言が引用されますが、TIGER ALLYはその点ではもうちょっと上をいっている印象です。

踵部分にはfuzeGELと呼ばれる衝撃吸収素材が埋め込まれているようですが、それだけではない全体的なふかふか感があります。実際の厚み以上にソールの厚みを感じて、慣れないうちはかえって力が入らないような不思議な感覚です。ちょっと不安定なスポンジの上に立っているような。

あまりにもふかふかふわふわなので、足の長さを見誤ることがあり、右足をつっかけるようなことが何度かありました。

慣れてくると、このふかふかを利用して歩いていることに気づきます。衝撃が少ないので重いものを持っているような時は少し踏み込んで歩くなんて感じになります。

初回はそんな印象でしたが、当然のことながら革靴にありがちなマメができることもなく、歩けば歩くほどサイズ感に慣れてきて当初の窮屈感は消えてきます。店頭で足入れをした段階ではなかなかわからない靴との相性が少しわかった感じです。


クラシカルなデザインをまとめるアッパーは天然皮革のスエード。ドレスシューズ系によく使われるCharles F. Steadあたりと比べてしまうとそこまで良いというわけではありませんが、価格を考えるとフルスエードというのはかなり頑張っているのではないでしょうか。コストのためかタンはナイロンメッシュになっています。今回購入したブラック(BLACK/BLACK)については特に変な差し色もなく、シンプルに黒基調といった感じです。


1980年代の靴をルーツにしているので、デザインそのものは40年前のものになります。踵のクッション素材はアップデートされているとはいえ最近のハイテク靴には機能面で負けてしまうかもしれません。

ランニングシューズであるが故、安全性のために踵にリフレクターがついているくらいで、このくらい黒っぽいとビジネスで使いやすいのでありがたいです。

靴紐も黒で完全なブラックモデルになっています。幅の大きめな平紐ですが伸縮性はなく薄っぺらい紐です。紐の伸縮に頼るのではなく靴全体で足の形の変化を捉えるという設計思想であれば、ひもはしっかり固定する役割に徹した方が良いと考えています。その意味では、履いていて足が痛くなるようなことはないので、靴紐の役割としてはしっかり面で支えてぶれないという役割に徹しているものと考えられます。


TIGER ALLYのスエードでまとめられたアッパーやソールのデザインを見ると、あくでもタウンユース向けです。(もともとランニングシューズですし)

価格帯的に近いCM996と比べると、明らかにCM996の方がタウンユースよりに感じます。アスファルトの地面との一体感というか情報のやり取りは明らかにCM996に分配が上がります。レザーソールの靴ではダイレクトに地面を感じるので、地面とのコミュニケーションがある靴の方が慣れているといった方が正しいでしょうか。

一方TIGER ALLYの特徴は甲の緊張感が少ないというか、より足との一体感を感じます。CM996は私の場合は「靴を履いている」という感覚が常にあるのですが、TIGER ALLYは靴の存在を忘れてしまうようなことが多いです。地面の種類に限らず、足裏に入ってくる情報はほぼ同じなので、こちらのタイプになれると「歩く」ということのストレスが減るのではないかと思われます。

購入当初感じたサイズの小ささ感は終日履き続けているとまったく気にならないものになりました。確かに同サイズのCM996と比べると気持ちタイトな感じはするものの、私は実測から1.5ほど大きいサイズですので、小さいということはなかったのかもしれません。

同サイズでも比較的大きめに感じるML574と比べると体感的にハーフサイズは小さい感じがするので、ML574をそれなりにタイト目に履いているのであればハーフ(0.5)くらいは上げてもいいかもしれません。

このあたり、街中の靴屋さんでフィッティングを試しやすいニューバランスに対して不利な点であることは否めません。


TIGER ALLYは特にクラシックをそのまま復刻するといったこだわりに重きを置いている訳では無さそうで、デザインはクラシックなものでありながら、現代の技術を取り入れながらアップデートされています。

踵の後ろ側のカーブはややきつめ、踵を掴むデザインになっています。踵自体はそれほど小さくはありませんが、インソールに少しカーブがついているなど収まりが良いです。踵のスタビライザーの素材が柔らかいため「これ機能するのか?」と一瞬不安になるものの、指でぐにぐに押してみてもしっかりと支えている感があるので十分な機能があるのでしょう。(当然天下のasicsさんはその辺調査済みか)つま先側に向けて少し長めに入っているので、ここも計算済みって感じでしょうか。

CM996と比べると、踵の芯自体は少し小さめなので、その分スタビライザーの長さで安定性を担保しているようにも思えます。

踵のアウトソール側面積はかなり大きめで、歩行時の衝撃吸収と安定性を意識していることが伝わります。踵大きめ、つま先小さめの作りです。

アウトソールはタウンユースを想定してか凹凸は少なめ。このソール、雨の日はなぜか滑りやすいです。せっかくアッパーがスエードで雨に強いのに、ソールが弱いというのはちょっと残念。

ソールのパターンを見ると、足の形状に合わせて靴が内側に振られている通りにパターンもやや内側に向けられています。私は比較的進行方向に対して平行にボールジョイントが折れ曲がりますので、足が屈曲する角度とパターンの角度が微妙にずれています。パターン的には足の力が入る方向を重視しているようです。雨の時などにこの差によってソールにかかる負荷、一部は伸びきり、一部は緩むために路面に対して効果的になっていないのではなかと思えてしまいます。

ソールを見ても分かるとおり、ラストは全体的に内側に振っていて足なりです。

つま先側は足の屈曲を意識して、大きく抉っているので、レザー素材ということも併せてなんとなく穴が開く人出てきそう... という印象もありますね。

こうして靴をよく見てみると、ニューバランスはあの「N」を刺繍するために台座となる部分が必要になり、そこにあてがわれている革が二の甲をしっかり一周していますね。いわゆるローファーでいうところのフルサドルになっているので、足にしっかり巻きついて安定しますねこれ。


TIGER ALLYは足にあったサイズを選べば満足度が高い靴であることは間違いありません。ニューバランスやナイキは他の人と被るから嫌、という時には選択肢の一つとなるものの、圧倒的な差別化はないような気がします。

クラシックなデザインのタウンユースにおいては、さすがCM996は完璧に近い完成度になっています。しかも全国どの都道府県でも購入できるとなるとごく一部の取扱店舗でしか試し履きができないTIGER ALLYを無理して買わなくても、ということになってしまいます。直営店でしっかりと売りたいという意図なのでしょうけれど、日本のメーカーがせっかく世界で売れている靴に真っ向勝負できる靴を作っているのにもったいないなぁと思ってしまうのです。

細かくみるほど、さすがに世界レベルで売れているニューバランスの長老モデルは完成されています。淘汰を逃れて生き延びたともいえます。もう40年前のテクノロジーと言っても他にとって変わって廃れるほどでもない、出自はランニングシューズとはいえもはやこれで走ろうという人はほとんどいなくて無問題。ファッションとして生き残ると言われながらも、一定の履きやすさという評価も得ている。

TIGER ALLYも似たような位置付けの中では十分に戦える、むしろ勝てる靴であると思えます。テクノロジー面では十分勝てますし、ファッションとしてみると程よくクラシック。大人が履いてもサマになる落ち着いたデザインは他では意外とありません。Onitsuka Tigerの他のラインや、asics全体を見ても、これだけの大人デザインのランニングシューズベースのモデルはないようです。ニューバランスでも一部のレザーML574が対抗馬かなという気配もしますが、安定供給が期待されるフラッグシップではありません。ミズノのMR1にも惹かれますがちょっと路線が違いますし、入手難易度はさらに上です。


同じ黒でもナイロン系メッシュに比べたらスエードのモノトーン靴なのでジャケパンでも使えます。十分ありとなる職場もスニーカーの中では多いでしょう。ロゴや意匠も目立たないので、単なる黒スエード靴のように履けます。

スポーツをするのではなく、どちらかというと歩きを中心としたタウンユースを前提に、シンプルな足元を、ということであればTIGER ALLYはその有力候補になります。

願わくはTIGER ALLY DELUXEの在庫が復活してくれれば...


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2024年6月6日木曜日

Regal 01DRCD 2nd pair

日本を代表する靴のひとつ、リーガルの01DRCD。



スーツスタイルを必要とする人で、日本国内でビジネスシューズを買うことがあればこの01DRCDを一度は試し履きする価値はあると思う。

実際に購入されてその良さを書かれているブログからリンク目的の提灯サイトまで、それこそ数多くのウェブページで01DRCDの良さが紹介されている。

僕にとってこの靴はスペックによるうんちくベースの「オススメ商品」ではなく、10年間履いてほかの靴とも比べてみて、やっぱり「買ってよかった」靴。リペアが税込みで約27,000円(2024年1月現在)となってしまったため、いまは2023年10月に買い足した2足目を履いている。


リーガルは「高い靴」と「安い靴」という両方の見方がされていて、多くの人の意見としては「高い靴」「ちょっといい靴」であり、靴好きといわれる人たちからは「安い靴」「デザインが変な靴」という評価がされがち。

毎年たくさんのモデルを発表しては廃盤にするリーガルが、10年以上にわたり世界でも通用するこだわりで作り続けている数少ない靴、01DRCD。

もともとは一発屋的な企画商品だったような気がしないでもないものの、標準的なキャップトウ(ストレートチップ)で比較的手に入れやすい価格帯であったことから日本製のキャップトウを探していた層にハマってしまい、リーガルの期待以上にヒットしたのではないかなと思ってしまう。価格改定を繰り返しながら今日まで何とか継続販売されている。

同一ラストのプレーントウである04MRCFは廃盤になっていたりするので、01DRCDが残っていることはなかなかの奇跡ではないだろうか。他社でもレザーソールのシンプルなプレーントウはあまり売られていないので市場がないのかな。いまのところ01/02/03DRCDは継続されているのは、それだけ多くの人に購入されている=支持されているともいえる。

最近のリーガルはマスターリーガルのような宣伝効果を狙っているとは思うものの何の宣伝になるのかわからない商品企画だとか、高級ラインのはずのシェットランドフォックスでモデルの出し入れに必死感が漂っていたりと迷走を感じつつあるのだけれど、まともにグッドイヤーウェルテッドのモデルを作ると、もうその価格では他社太刀打ちできないんじゃないかという程に作り上げる実力があったりする。

無理して足の形に合わないノーザンプトンの靴履くより、もう少しフィット感が良くて十分に作りこまれた靴が国内で手に入るニッポンは素晴らしい。

マスターリーガルなんてもう定番化して10年も続いたら、それこそ日本のハイレベルな革靴の代表になってしまうのではないかと思うほどの末恐ろしいポテンシャルを感じるけれど、さっそく限定モデルとかやり始めているので、おそらくは採算的にもあんまりな宣伝用モデルかなという空気を強く感じてしまい手が出せない。

過去にもW121のような国内のみならず世界のスタンダードになっていたかもしれない靴を作ることができるのに、なぜか廉価的な印象が強くなってしまうのはラインナップに「新しさ」を入れないと販売を稼げないほど企業規模が大きくなってしまったが故なのか。

全国のREGAL SHOESを維持するのって大変なんでしょうね。


いつの間にかリーガルを代表するような定番キャップトウに育ってしまったともいえる01DRCDはREGAL SHOES専売商品じゃないからどうしても価格の安いところに流れてしまう。なのでそのちょっと上の価格でほかにない魅力を詰め込んでみたマスターリーガルを出したかと思えば、W10BDJのようにそれこそ靴屋さんの本領発揮商品作ってもそれほど数が出なくて今度は型番変えてほかでも販売できるようにしたりとか、REGAL SHOESにいって靴を買うというわくわく感がなくなってしまってきているのは少しばかり残念。日本人はブランドが好きなので、きちんとした信頼感のあるブランドであればお値段定価でも買いますので。エルメスやヴィトンを並行輸入で買う人もいるけれど、ロゴではなく信頼を求める人たちに支持された店舗は一等地にどーんと構えている。


振り返れば01DRCDも定番としてロングセラーになるキャップトウを作ろうというよりは、少し攻めた企画商品だったのかもしれない。

当時のリーガルでのスタンダードキャップトウともいえるW121はパターンオーダーのサンプル的な位置づけもあって微妙なスクエアトウ。当時はややスクエア感がブリティッシュみたいな空気があったものの、定番ラウンドトウで作られていたらいまの01DRCDの立ち位置だったのかもしれない。古いラストなのでかかとが緩いけれど、2504NAだってそうなわけで、ラストを超越してしまう人気が出てもおかしくなかった。キャップトウを定番だ、という人たちに向けてリーガルの中の人が他社にもあるようなもっと普通っぽい(でもちょっとばかり艶っぽい)キャップトウを作りたい。でもそのままだと落ちちゃいそうだからちょっと捻らせて社内を通そう、といった感じで出てきた気がしてならない。

このまた捻りの方向が多くの革靴好きに刺さる方向だったのだと思う。

まずはラスト。リーガルの実力見せつけちゃいましょ、ともいわんばかりのふまずのシェイプ。当然それを見るためにソール側をひっくり返すとこれまた「いちばんの素材で作った日本のグッドイヤーウェルトだよ」との型押し。厨感たくさんの文字に目が行くようだけど、実際にはくびれたウエストに気付くような仕掛け。話題性も含めてコバは矢筈仕上げ。リーガルの定番モデルとは似ても似つかないグラマラスなシェイプ。

3万円以上の靴だからレザーソールはマスト、やっぱりビジネスシーンで履かれる靴を想定して、減りを軽減し、かつ歩きやすくするためのゴムヒール。発売当時あたりはリペアの世界でもビジネス用途はゴムヒールが人気という話も聞いたことがあるので、ふだん使いを意識していることが伝わってくる。

素材はわかりやすくインポートレザー。それも国内ではわりと名前が通ったアノネイ製。しかも敢えてブラックまでもアニリン仕上げのベガノカーフ。茶系のベガノはわりと使われていたけれど、黒を使ったところはあまりなかった。比較的テカテカした靴が多いREGAL SHOESの店頭で、上品な印象の01DRCDはなかなか衝撃的だった。ガラスレザーが多い店舗だから逆にこの上品さが目立つというコントラスト。この点も「定番モデル」と言われるシリーズとは逆向き。

見た目的にはちょいとロングノーズでキャップ大きめではあるけれど、まとまりの良いオーソドックスな形。変に海外やらビスポークやらを意識してつま先をいじることなく、切り替えしにも変な意匠を入れずにどちらかというと正統派。デコラティブにすることが好きなリーガル社内では、ある意味これも逆を突いた捻りだったのかも。

ラストも欧米に比べると日本人平均に寄せているということもあり、履きやすいと感じる人が多い(と思う)。定番モデルでよく話題に出るくるぶしのあたりはかなり下げていて、もうことごとくこれまで定番の逆張り戦略靴を出してみたらどうなるかということを試したかったのではないかと思うほど。

履き始めからややソフトな印象になるようにかかとはクッション性を強めに、小指やタンといった当たりやすい部分は軟らかめ。革靴は痛いという印象を抑える調整も入っている。少し華奢なつくりな気がするのはコストの関係かそれとも繊細さを出すためのものなのか。

つまるところ、形は正統派寄り、話題になる素材は派手め、革靴に慣れていない人の不満を抑える作りをポイントとした、まさにメーカーにおける革靴好きの企画らしい。個人的にはもう少しこてこてなベーシックシューズが好きだけれど、それだとW121と比べての訴求が無い。コスト面からするとあまり儲からないようにも思えて、当時のリーガルでこれが良く通ったなという印象。定番化を目的としていなかったがゆえに通った企画に思えてしまう。


発売当初はアノネイ社のベガノカーフを使っていると前面に出していた。セミアニリン仕上げのボカルーよりもアニリン仕上げのベガノのほうが一般的には柔らかく革の素材感を感じられるといわれている。ベガノと言われていた当時の01DRCDはきめ細やかさや柔らかさがボカルーと言われている靴よりも勝っていた。

最近ではタンナー名を公開しないようになったので、リーガルが変えようと思えばいつでも変えられるのだろうけれど、ベガノの黒が廃盤にならない限りはわざわざボカルーやそのほかの革に変更する理由もないと思うので現時点でもベガノを使っていると思われる。



当時はシェットランドフォックスがボカルー、01DRCDがベガノとわざわざ分けて販売していたので、調達価格が違ったりするのかもしれないし、単にリーガルの中の人がベガノ黒というちょっとほかにない立ち位置をやってみたかっただけなのかもしれない。

この辺りの違いは言われてみないと素人目にはなんとなくそんな感じ、といった具合で、黒色の場合はお手入れを続けて何年か経ってしまうと当初の仕上げがどうかということは気にならないはず。むしろどのクリームを使ってきたのかで印象変わってくる。

理屈上はアニリン仕上げのベガノを使った01DRCDのほうが、セミアニリン仕上げのボカルーで作られた靴よりも透明感のある仕上がりだが水に弱い、ということになるのだろうけれど、水洗いをしたりお手入れ繰り返したりしている限りでは途中からあまり気にならなくなる。リーガルは国産キップも素晴らしい品質なので、仮に素材が変更になっていてもあまり気にしなくてもよいとすら思う。
そのくらい01DRCDは安心して履き続けることができる靴。

一部のコレクターを除き、靴は履いて歩くことに意味があるのでフィット感はとても重要。靴の見た目が気に入っても、どうしても履けない靴というのもある。

01DRCDは多くの人にとってスペック的にはベストバイではあるとしても、万人にフィットする靴ではない。スーツにY体やB体があるくらいだから、一律に「日本人の体形」というものはないのと同様、足だって民族的な傾向はあるだろうけど一律に足型としたサイズを決めるのは難しい。「ミリ単位」で木型削ってるんですから。多様性の時代に旧来の固定観念的なイメージの「日本人」という概念で語るのもいかがなものかなと。とにかくいったんそうした先入観は無しにして店頭で試し履きして合う合わないを感じるところからがこの靴のスタートになる。

靴の形の元となるラスト(木型:これに革を貼り付けて靴を作る)がどれだけ自分の足の形に近いか、というところがフィット感の一つの大きな要素というのは誰でもわかること。木型はふだん目にすることができないから、店頭で実際に靴を履いてみて、それが自分の足とどう合うか、具体的には余っている部分、当たる部分、きつい部分をみてみて初めて分かる。

木型はあくまでも靴を作るための型であるので、そこと足が一致していなくても、抑えるべきポイントのところがあっていれば案外問題なく、場合によっては快適だったりすることもある。ボールジョイントや甲の抑えと土踏まずのラインが許容範囲であれば、あとは既成靴である以上どこかの妥協が必要になる。

ボールジョイントは過度にきつすぎなければいずれは馴染む。01DRCDはむしろここは少し大きめに作られているので、実測EEを大きく超えない限りきついという感じはそれほど受けないのではないかと思う。

三の甲(インステップガース)と呼ばれる甲の一番高いところが抑え込めれば、足は前にずれることがなく、よほど全長が長くない限りは程よい履き心地になる。2504なんてここ一点集中で履く靴にも思えてくるほど。三の甲から二の甲、一の甲の順に合うほどより履きやすい靴になる。靴ひもが無いローファーだと二の甲が結構重要になる。履いたことないけどパンプスは一の甲しか抑えるところが無いように見えるので、これはなかなか履くのが大変そう。

革靴は製品としては完成品でも、個々人にとっては半完成品。ある程度履きこんでなじんでからが本領発揮。野球のグラブのように、買った直後となじんだ後ではツールとしての使いやすさがまるで違う。革靴もその「なじんだ後」を意識して買うことができればよいのだけれど、なかなかわからないものなので、少なくとも最初のうちは専門家の力を借りて選ぶのがいい。

革靴を買いなれていない場合はシューフィッターといった専門家の力を借りるのが得策。シューフィッターになるにはたくさんの足を見ながらフィッティングの経験を積む必要がありることから、足の形と靴の形から「合う」「合わない」のアドバイスが参考になる。完ぺきではないとしても自己流では気づかないアドバイスが得られることが多い。リーガルの店頭の場合は店舗によってフィッティングサービスの差異が大きい気がするものの、サイズを選ぶ視点とか、見た目的にどうなのかとかの話は聞けるので、サイジングに不安がある場合は店頭で確認するのがお勧め。


僕は旧タイプのケンジントン(内羽根)とインバネス(外羽根)を一つの指標としていて、これとの比較でどこが緩いか、きついかを考えることが多い。01DRCDはケンジントンと同サイズだと全長はいい感じであるものの心なしか窮屈感が強く、ハーフサイズ上げると今度は少し緩い。長い時間を履くことを考えるとどちらかと言えばハーフ上げたものがいいと感じている。靴のサイズ表記は無視して買うのが鉄則。僕は2504NAと01DRCDでハーフサイズ違っていていい感じではあるけれど、全長は2504NAと01DRCDで同じようなので、足の形によっては同一サイズのほうが良い人もいるだろうし、足長に合わせてサイズを決めたほうが良い人もいれば足周に合わせたほうが良い人もいるだろう。リーガルだから大きいとか小さいとかは一意に決まらない。サイズ標記の数字だけで決めるのは難しいということは、リーガル店頭で外羽根プレーントウの2504NAとひもなしローファー2177Nの同サイズをトライしてみればそれが良くわかる。
僕にとっては2504で気持ち緩いサイズが、2177Nだと血が出るくらい小さく感じる。


今回買ったものは心なしか以前に買った01DRCDより少し大きく作られているような感じがする。

2504NAを基準にハーフ上げだと僕にとってはちょっと一の甲(ボールガース)が緩い感じがしないでもないけれど、足首周りがきちっと締まるので歩行時にはかえって指が自由に動かせていることもあり、長時間歩いても足に障害が起きにくい感覚。最近は小指が痛い系を避ける傾向にあるのと、靴の数もそこそこあるためローテーション感覚が長いので、結果として迷ったときは緩めのチョイスをすることが多い。

購入時してペン入れなどをせずについたしわは微妙な感じになった。もう少し横一線だったら格好良いのだけれど、足入れした時点で靴に最もストレスがかからない曲がり方がこれなんだろうなと。購入当初にガイドしてきれいにしわをいれるのと、最初に入ったものから繰り返し歩くことで何度も修正が自然に入ったものとどちらが長い目で見たときに靴にストレスないんでしょうね。自然なしわ入れだとどうしても親指の付け根あたりにストレスかかりそう。繰り返し履いているうちに本来曲がるべきところに落ち着いてくるので、このしわ入れがいちばんかと思っている。


リーガルは比較的広い層をターゲットにするので靴全体はすごく攻めているかというとそうでもない。ボールジョイントや踵についても2235NAが有名なゆえにこれと比較して「小さい」「甲が低い」と思いがちだけれど三陽山長やRENDOといったセントラル系や、同じリーガルでもシェットランドフォックスのアバディーンほどは攻めていない。

インバネスもシェットランドフォックスでは中庸の攻め具合に思えるけど、01DRCDよりははるかにタイトな靴。

リーガルブランドは攻めているように見えてどこか万人受けの要素を残している。

まず全体的に緩めなところを作る。これはサイズどうこう、ウィズどうこうではなくて、明らかに緩めの余地を入れている。

シェットランドフォックスのアバディーンのような「ほんとにコレ2Eか?」くらい攻めている靴もあるので、技術の問題というより販売チャネル特性を踏まえたマーケティング的(クレーム対応的?)なところで設計しているように思えるところがある。

細い足が増えているはずなのに、W131のようなシングルEベースの靴はいつの間にか消えているのだからリーガルとしては細めの足幅に向けて靴を作っても売れなかった(もしくは売ることによるマイナス経験)という体験かデータがあるはず。よりは広く足幅に対応できるような中庸デザインのほうが利益が出やすいみたいな。

01DRCDは甲もそれほどタイトではないし、ボールガースもそれほど攻めていない。踏まずは絞っているけれど、内側を刺激的になるように盛り上げたりはしない。土踏まずから後ろ、かかともちょっと緩やか。カップを少し整形しておさまりをよくすることで収まりが良くなるような感じに仕上げている。


ややロングノーズであることと、矢筈コバも相まって少しソールが薄い感じのため、つま先は減りやすい。ローテーションにもよるけれど、週1登板くらいでは2~3年ごとにつま先メンテナンスが必要。

ソールはコルクの盛り方なのか中央が膨らんでいるので減り始めは真ん中が大きく削れる感じになる。購入当初はすぐに穴があくのではないかと心配になったけど、ソールそのものはコンディショナーなどを塗っているとヘリが少なく案外持つ。多少雨の日に履いたところで足をするような歩き方でなければ年単位で持つはず。

このソールはなぜここまで穴があかなかったのかは少し不思議だと思っている。同じような履きかたをしたショーンハイトはもう少し短かったし、雪の日などはあまり履かず、多少丁寧に扱ったと思われるシェットランドフォックスのブリストルは5年ももたず穴があいた。

踵もゴムヒールでこれまた減りにくいので、トップリフト交換みたいなものは考えなくてもよさそう。僕は10年間平均的には週に1回弱はいているけれど踵は持ちこたえている。これは驚異的。

2足目の01DRCDは購入当初からBootBlackを使っていて、ソールは雨に降られたタイミングでブートブラックのコンディショナーを塗っている。


馬鹿の一つ覚えと言われてもやっぱり01DRCDはいい靴。

世の中にもっといい靴があるかもしれないということは頭でわかる。靴ジャーナリストでもない限り何足も評論できないなかで、自分で買って履き続けた数少ない靴の中ではこれが良かったという話でしかない。

それでも、出張で土砂降りにあったり、雪の北海道の出張に履いていってしまったり、夏の暑い日もカラカラの冬の日も、そんなさまざまな日々をあまり気にせず履いていても何年もいい状態を保ってくれた靴。

日本全国で比較的手に入りやすくて、冠婚葬祭でもビジネスシーンの一線でも使える。お手入れをすればそこそこ長持ちで価格もレザーソールの中では手に入れやすいほう。

Xやインスタ見ても、きちんとお手入れしている人の01DRCDは5年くらいたっても新品かと思うようなきれいさが維持できているし、むしろ艶感が増して魅力的な靴になっている。僕の経験でもそれほどお手入れを神経質にしなくても週1回くらいのローテーション頻度なら10年くらいは履くことができる。

重箱の隅をつつけばいくらでもでてくるのだろうけれど、価格や品質、アフターサービスといった総合力でこの靴の右に出る靴はすぐには思いつかない。

海外ブランドには既製品での定番のキャップトウがある、チェルシーやシティ、オードリー、コンサル、etc.

リーガルならこの01DRCDだろうか。W121もよかったけれど定番にはならなかった。01DRCDのラストを使ったモデルも出てきたものの長続きしない。「もう一足」を買わせるための戦略なのか次々にモデルが出て次々になくなってしまうので、逆に10年続いた01DRCDの安心感が際立ってきている。ここまで続いてきたので「01DRCD」という型番で製品が語られるようになってきた。


もしリーガルに01DRCDが無かったとしたら、正統派のレザーソールで定番と呼べる靴はあったのだろうか。どこかで出てきたのだろうか。フレッシャーズから年配までスーツを着る社会人が安心して買うことができる靴。履き続けることができる靴。

01DRCD、素晴らしい靴。


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