2019年2月10日日曜日

平成の逸品 その1「ブラシ」~ 東急ハンズオリジナルクリーニングブラシ ~

唐突に始めました「平成の逸品」。
平成時代に登場した革靴にまつわる商品を、その想いとともにご紹介するシリーズ。

限定品や廃盤品は除いて、記事を書いた時点で手に入れることができるものを取り上げる予定です。



雑誌を見ながらあれが欲しい、お金を貯めたらこれを買おうなんて想いを馳せた10代後半、自分のお給料でドキドキしながら買った靴をやり方もわからずクリームを塗りたくっていた20代、人生のバブル期とその崩壊を経験し何足も靴をダメにしてしまった30代、やっと人並みの生活に近づいた40代と、僕の人生多くを過ごした「平成」がもう少しで終わる。

そんな中で出会い、いまも愛すべき靴にかかわるモノをつらつら書いていきたい。



記念すべき(?)初回に取り上げるのは

「東急ハンズ×コロンブス 東急ハンズオリジナル クリーニングブラシ 馬毛」。


名前が長い。


2017年の秋冬、長期の出張の際に出会ったブラシ。
当時、出張の際にいくつか靴をもっていったのだけれど、汚れ落とし用のブラシを忘れるという失態をおかしてしまった。ブラシがないことに気づいて、近くにあった東急ハンズで購入したのがコレ。

実はこの東急ハンズのオリジナルブラシは以前からちょっとばかり気になっていた。
ただ、汚れ落とし用のブラシはすでにそこそこ使いやすいコロンブスのジャーマンブラシがあったので、あえて購入する必要もないことから気にはなりつつ買わずにいた。

そんなブラシを結局手に入れることになったのは、一つのご縁ではないかと思う。

当時は、仕事も深夜になることが多くてなかなかクリームをつかったお手入れができない日々が続いていたものの、ほんの数秒このブラシを使って汚れを払うくらいのことはやっていた。



靴のお手入れグッズとして、誰もが一つは持つべきものと思うのがこの「汚れ落とし用のブラシ」。

お手入れの入り口である「汚れを落とす」だけではなく、保管時の埃を落としたり革の表面を整えるなどとにかくこの「汚れ落とし用のブラシ」は必須といえる。

個人的には「汚れ落とし用のブラシ」と「乳化性クリーム」だけ買えば、あとは家にあるもので十分代用できる。このブラシは「あったら良いもの」ではなくて、「ぜひ用意すべきもの」。革靴を履くようになったら真っ先に手に入れるものだと思う。

職人レベルまで行ってしまうともう少しブラシにこだわりが出てくるのかもしれないけれど、僕も含め、靴のお手入れがせいぜい趣味レベルの人にとってはまずは馬毛のそこそこ大きなブラシがあればお手入れは十分ではないだろうか。


そう、汚れ落とし用のブラシは大きさが使い勝手に影響する。
小さいブラシだと扱いにくいし、そもそも全体をブラッシングするのに時間がかかる。ある程度大きくてそれなりに毛がふさふさしていたほうが良い。

よく「初心者向けお手入れグッズ」みたいな感じでクリームやブラシなどのセット商品が売られているけれど、そこに入っているブラシは絶対的に大きさが足りない。毛の絶対量も少ない。僕の周りで靴のお手入れをそれなりにしっかりしている人で、あんな小さなブラシを使っている人はいないので、やっぱり使いづらいのだろう。
「初心者は小さいブラシでOK」なんていう根拠も理由もないので、ブラシこそ単品でしっかりしたものを買うべきである。

セット商品は売手側から見ると単価は上がるしいずれ買い替えるしでいいのかもしれないけれど、靴のお手入れ道具をそろえるのであれば中途半端なものを一式そろえるよりも一品ずつ必要に応じてそろえていったほうが無駄がない。僕はこうしたセット商品を紹介している靴ブログを見ると、本当に自分でそれを使うイメージを持って心から紹介しているのか真意を聞きたくなる。



で、汚れ落とし用のブラシとして、比較的入手がしやすくて価格がお手頃で、そこそこサイズが大きいブラシの一つがこのブラシ。

「東急ハンズオリジナルクリーニングブラシ」(略しました)


これ、逸品である。

僕は黒い靴にもそれ以外の靴にもこのブラシ一本でお手入れしている。汚れ落とし用のブラシはそれほどクリームの影響を受けないので。

大きさは靴のサイズと比較しても十分な大きさがあり、また毛の長さもそこそこ長く、あまり力を入れずに全体をサッサッとブラッシングするだけで日々のお手入れは完了してしまうラクチンさ。


ブートブラックの缶と比較してみるとこんな感じ。それなりに大きい。

コロンブス定番商品のジャーマンブラシに比べると、毛並みがやや大雑把であるものの、比較的柔らかめかつ長めの毛足のため、普段使いの汚れ落としにはちょうどいい。
コバの奥など少し硬めのブラシ入れたいときは使い終わった歯ブラシあたりでも十分なので、全体にはこのブラシだけ。


色のついたクリームを塗っている靴も、最後にからぶきしている段階で余計なクリームが取れていることもあり、同じブラシを使っていても色移りするようなことはない(ような気がする。ミクロレベルで見ると影響あるかもしれないけど)

淡い色の靴が多い人は黒(そのほか濃いめ)用と薄い色用に分けてもよいかもしれないが、しっかりからぶきしている人であればそれほど気にすることないと思う。
色移りを気にするよりも、ブラシがかかっていない状態のほうがよっぽど靴に悪いので、そっちを優先して気にしたほうが良いかも。

もし、舗装されていない道路を歩くことが多くて、泥などが付きやすい環境にある人は、泥落としを中心に使うブラシを用意してもよいかもしれない。その場合、ブラシに移った泥に含まれる砂によって傷だらけになるのを防ぐために、少し小さめの馬毛ブラシを用意するか、事前に丁寧にからぶきか場合によってはウェットティッシュで汚れ落としをしておくと安心。


東急ハンズのコロンブスコラボシリーズはデザインも含めなかなか凝ったものが多い。コラボ商品なので購入できる場所が限られるのが難点であるものの、店舗が近い人はぜひ一度店頭で見てみてほしい。


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東急ハンズのブラシ。コレ一本で汚れ落としは十分かと。



コロンブスのブラシ。店頭でみて気に入ればこれでもよいと思います。

2019年2月7日木曜日

REGAL 2235NA

REGAL 2235NA。

日本在住で革靴に興味がある人は一度は目にしたことのある靴ではないだろうか。2504NA と並ぶニッポン革靴界のレジェンド。


正直、僕がまだ学生だった頃はこのデザインはあまり好みではなかった。20代前半まではどちらかというとシンプルなデザインが好みで、革靴でもカジュアル系であればウォークオーバーのビブラムソールみたいなモノとか、スエードのチャッカなどを好んで履いていた。

2235NA をはじめとしたウイングチップに施されるブローギングはジジ臭い、なぜデコラティブが受けるのかとさえ思っていた。スコッチグレインレザーもまたシンプルの対極にありとにかく押し出しが強くて苦手だった。


どうして同じモノに対する見方が180度変わってしまったのか自分でも不思議なくらい、いまはこうしたブローグ系の革靴「も」好きになっている。特に秋冬のカジュアルには茶系のブローグは本当に合う。

ここ数年、いわゆる高級靴ブームといわれる波があって、そのあおりなのかそうではないのかリーガルが軽く見られることがあるような気がしないでもないけれど、3万円台でこのレベルを安定供給できるのは国産の底力なのではないだろうか。

ビジネスシーンで定着しているデザインではないし、カジュアルに革靴を履く人が少ない日本で、これだけの長い間作られ続けてきたことが奇跡な靴。
僕はこの靴の魅力に気付くのに20年を要してしまったけれど、若い人が「フルブローグの教科書的呪縛」にとらわれずに自由にこの手の靴を楽しんでいる姿をみると、格式・礼節が求められる場合を除き、もう少し肩の力を抜いてもいいときあるんだよな、という気持ちになったりもする。



2235NAを購入して3カ月くらい。
この間ほぼ毎週末に履いている。

当初予想したほど痛いところも出ず、思ったより付き合いやすい靴。
つま先も多少削れてきて、足に合ってきたという感じか。

当初、室内履きでトータル2時間ほど履きならした後に外出投入。
初回のお手入れが終わって、ある程度クリームが馴染んだかなと思うくらいで早速外に出てみた。靴は外で履いてなんぼ。
初日は夜のコンビニ買い物程度(平日だったので)。次の日に履いて出かけたら結構な雨にいきなり遭遇するというなかなかのデビューだった。

くるぶしにあたる感じはやはり健在で、特に右足側に違和感を感じるところは 2504NA と一緒。かかと周りのパターンは似ているようだ。

同じフルブローグの W10BDJ と比べるとくるぶし周りのえぐりがないフラットなパターン。伝統的なリーガルの靴はこの部分のパターンで損をしているように思える。


一方で、履き口周りは意外とコンパクトで足首が包み込まれるせいなのか、同じサイズでの比較では W10BDJ に比べて甲の外側のフィット感が良い。


こうしてみると、W10BDJ はかなりかかとを絞っている一方で、履き口が少し広い。

タンは作りが違うのか、足首への洗礼はほとんどなくて、ここはちょっとばかり覚悟をしていたので一安心。2504NA のような足首に食い込んで血が出そうみたいなこともなくて、履き始めからそれなりに快適。

甲のフィット感の違いなのか、長時間履いた時の快適度は 2235NA のほうが W10BDJ より上。明らかに歩きやすい。僕の足との相性なのかもしれないけれど、この点は意外だった。
正面から見るとやや峰の外側が削られているようにも見えるので、そこがフィット感に影響しているかもしれない。



アッパー側は購入時点で思っていたほどの硬さはなくて、2504NA よりは馴染みやすい印象。屈曲部が柔らかめなので指に乗るような感覚もそれほどでもない。
履くにつれ、屈曲部が少し下に湾曲するようなしわの入り方になったので、やはりアッパー側は少し余裕が多いようだ。


とはいえ、2504NA のように大きくしわが寄らないということもあり、見た目的にもきれいにまとまっている。

クリームは適量がわからないのでとりあえず薄塗りの繰り返しをしている。僕はコットンにクリームを掬って塗る派なので、こういう凹凸のあるスコッチグレインレザーかつブローグシューズは磨きにくい。ギンピングの部分は塗りにくい、というか塗るのが無理。適当にクリーム入れたあと、豚毛のブラシでなじませているので、その時に塗れているものと思いたい。使っているのはブートブラックのニュートラル。


ソールはさすがに硬い。購入当初に室内履きで軽くスクワットしてみたのと比較的タイト目に紐を縛っているのでかかとがついてこない感じはそれほどないものの、手で曲げるとか無理でしょうコレという感じ。なのに歩いているときにはその硬さをあまり感じない。やっぱりサイジングをきちんとして紐をきちんと縛ると歩きやすい。


伝統的なラストでありながら、意外やちょっとした包み込まれる感があって、購入直後は 2504NA よりは足と一体化している感があるなと気づいた。かかとに少しだけ柔らかさを感じるところは W10BDJ に近いかも。

惜しいのはやはり甲が少し高い点。
僕はきつめに結ぶので、力を入れると羽根がほぼ閉じてしまう。
新品の時点でこの状態なので、いずれ緩い靴になってしまうのは間違いなさそうだ。中敷きを入れるのも気分ではないし、その時にどうするか。

似たような靴との比較で言えば、2504NA よりは全体的に柔らかみがある感じ。



2235NA の良さに改めて気づく。

これだけの靴を、4万円を軽く切る価格で手に入れることができるのは長年販売され続けられているモデルならでは。
パターンや木型の償却も終わっているだろうし、よくよく見れば比較的原価を抑えた革やパーツを使っているという理由があるにしても、これだけの満足度が得られる靴はそうないのではないかとも思えてくる。

2504NA と同じように REGAL SHOES 専売モデルではないので、街の靴屋さんから通信販売まで広く売られているし、ディスカウントされていることもある。

フィッティングが命の靴でもあるので、初回は通販ではなくて靴屋さんで履いてみて選ぶことを強くお勧めしたい。きちんとしたサイズを選べば、決して「大きな靴」ではない。



2235NA や 2504NA は40年以上販売され続けてきた実績がある。20年後ももし残っているようであれば二世代どころか三世代で同じ靴を履くことができる。
売れる時期も売れない時期も一貫して守られてきた歴史的な重み。そんなウンチクが頭に入っているのでこの靴を履くときは何か凛とした気分になる。僕の中で想い出を積み重ねていく安心感のある靴、REGAL 2235NA。



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2235NA にはブートブラックを使っています。




ソールはこれで拭いています。アッパーに使っても安心かと。




きわめてまれにソールにのメンテナンス。いつものブートブラックで。