2015年2月9日月曜日

ビジネスシーンでのド定番「白シャツ」

たまにはちょっと靴以外のことを書いてみます。
靴に関しても素人ですが、ファッション全般素人なので、単純に自分の「思い」を書いてみようと思います。

ビジネスシューズの定石がストレートチップ(キャップトウ)であるなら、シャツのド定番といえばホワイトのセミワイドシャツではないかと思う。ブラックのストレートチップを持っているような人であれば、ホワイトのシャツもワードローブにあるのではないかと思う。
白地ブロードのセミワイドシャツなんて若い人には見向きもされないのかもしれないけれど、そうした若い人たちが高齢者と呼ばれるようになる時代でも、間違いなくこのデザインは残っているだろう。

僕が社会人デビューした時、自分にいくつかのルールを課した。
そのひとつが「クラシックな定番スタイルを心がけること」だった。
真の意味のクラシックということになると、スーツはブリオーニ、シャツはフライあたりになってしまうので、全体のトーンをクラシック志向にしていただけなんですが。

靴であればブラックのカーフで作られたグッドイヤーウェルテッド
シャツであればホワイト無地でコットン100%
タイはシルク100%ネイビー系のストライプとエンジのレジメンタル
スーツはネイビーとチャコールグレーの無地3つボタン(当時は3つボタンが主流)でウール100%
ベルトや靴下、カバンはすべてブラックで統一

いま思えば靴のチョイスが少し甘い(本来であればストレートチップのみ買うべきだった)けれど、自分なりのルールを決めてセンスを確立したいというのが強かった。
よく言われる「型破りなスタイル」というものは、型ができている人がさらにその上に到達する状態であって、破るべき型がなければ「形無し」か、せいぜい「型崩れ」になってしまう。

そんななかでももっとも重要なこだわりだったのがホワイトのシャツ。

僕は入社して最初の1年間は白いシャツ、なかでもブロードかピンポイントオクスフォードしか着ないと決めていた。
ホワイトのシャツはタイとスーツを選ばない。逆に言えばタイとスーツの関係をより明確にする。これまでタイとスーツを身につけるような機会が無かった僕は、まずは全体のトーンを決めるこのふたつについて自分なりの型を作りたかった。それまでスーツを来たことがなかった僕にとって、組み合わせはシンプルな方がいい。
ホワイトのシャツばかり揃えれば、きちんと洗濯とアイロンがけをしているという前提であれば、手持ちが少なくてもあまり少ないように見えないというメリットもある。色違い、デザイン違いばかりを揃えるからかえって少なさが目立つ。(「あ、それ一昨日も着てたよね!」)

ホワイトのシャツは正装で、ビジネスには薄いブルーあたりが合う、なんて記事をたまに見かける。これは真のクラシックという意味ではそうなのかもしれないけれど、ここは日本。ワイシャツの語源はホワイトシャツという話もあるくらいで、ビジネスシーンのド定番はホワイトのシャツ。TPOのPを意識したら、新人はホワイトシャツ以外の選択肢は無いと思っていた。(いまでもそう思っている)

シャツは靴と違って方向性のバリエーションが大きい。

前立や襟の内側だけ色が変わっていたり、ボタンホールやボタンを留める糸が色違いだったり、襟が極端に大きかったりと。
で、なぜかそういうデコラティブなものが「格好いいい」と思われる傾向にある。

侘び寂び文化である日本人の感性からすれば見た目の派手よりも、伝統に裏打ちされた形や素材の質感や肌触り、それらが織りなすドレープの美しさといった、引き算をし尽くしてもなお残る良さが求められてもおかしくないのに、いまは何かを付け加えた足し算デザインのほうが評価されるきらいがある。

確かに僕自身、中学生くらいの頃はわかりやすい差別化に憧れていた時期もあったのは事実。でもやっぱり大人になるに連れてそういう差別化が逆に恥ずかしくなって、むしろ「同じようだけれどなにか違う」という素材とか、作りなどのちょっとした差別化であったり、自分にあったサイズ、フィット感や着やすさのほうを好むようになった。

ホワイトのシャツと一口に言っても、生地(織り)によって表情ががらっと変わる。
ブロードと高番手ツイルはドレス寄りなので、きっちりした場所に出るときのためワードローブに欠かせないし、ピンポイントオクスフォードやドビーストライプなどはビジネスシーンに使いやすい。
オクスフォードや鹿の子になるとボタンダウンでざっくりと着こなすのに向いてくる。夏にシャツがベッタリというのも少ない。

もし僕がホワイトシャツを3枚だけ選べと言われたら、次の組み合わせになると思う。

・ 高番手ツイルのセミワイドカラー
・ ピンポイントオクスフォードのセミワイドカラー
・ ドビーストライプのセミワイド若しくはウインザーカラー

高番手ツイルはドレープもきれいに出るし、ブロードより透けない感じがするので主にドレス・ビジネス兼用。ピンポイントオクスフォードはビジネスド定番。全年齢層に受けがいい。ドビーストライプは無地のスーツに合わせると映える。

いまは、僕は靴とは違ってシャツは少しだけ冒険するので、ピンクのクレリックとかブルーのストライプを着る。僕の職場はオフィスカジュアルまでOKなので、この程度は許される。ただ、お客様先に出向くときはホワイト系のシャツが多くなる。この辺り、歳とともにTPOの塩梅が掴めてきたことと、自分の会社の社風などを踏まえてシャツを選択するようにしている。

最近のお気に入りは「土井縫工所」(通称土井シャツ)

ここのダーツモデルはややタイトな作りで、締めるところを締めている。そして袖(裄丈)がちょうどいい長さなのが気に入っている。

日本製のシャツは丁寧な作りのものが多いとは思うけれど、どうしてなのか全て袖が短い。コンブリオや鎌倉シャツの上位ラインはつくりや素材感は気に入っているのだけれど、袖が短くてスーツに合わない。スーツから少しシャツを出すには、ボタンを止める前の段階である程度ゆとりがないと長さが足りない。

土井シャツのレギュラーモデルは日本製生地(敷島綿布)を使って日本で縫製している。本縫い、ガゼット、白蝶貝ボタンといった本格仕様で約7千円。

素材の敷島綿布は他のブロードよりも気持ちしわになりにくいかな。同じブロードなら鎌倉シャツの新彊綿よりははるかにアイロンがかけやすい。織りでいうなら刷毛目のシャツはすぐにしわが伸びるので、朝忙しい時にアイロンがけしなければならない時などは結構重宝する。襟や袖口の芯地も鎌倉シャツよりは耐久性が高い。洗濯を繰り返してもアイロンがけで結構ハリが出る。2年くらい前からはほぼビジネスシャツは土井シャツで買うようになってしまった。(それまでは鎌倉シャツが多かった)

土井シャツも鎌倉シャツもどちらも良いシャツだと思う。全体的なイメージで言えば、かっちり系の土井シャツに、ふんわり系の鎌倉シャツという感じ。

ただ、土井シャツはかっちりと言っても、アームホール、ヨーク、背中のダーツが立体的に縫われていることが分かる。単にベタッとアイロンをかけると生地が余ってしわになるので。日本製の生地を日本国内でていねいに縫製しているという個人的にはドンピシャのシャツメーカー。

シャツは靴よりもはるかに耐用年数が短いので、思い切って高いものを買ってみようかと思いながらも、やっぱり適度なプライスで安心して買うことができるところばかりを買ってしまう。靴ならば3万円辺りに大きな境目があるような気がするけれど、シャツは5,000円位にあるような気がする。この辺りから貝ボタンだったり、伏せ縫いだったり、生地の番手が上がってくる。逆に1万円を超えてくるとさらに高番手になり肌触りは良くなる一方で、取り扱いに気を使うようになる。シャツは1回着るごとに洗うものだから、あまり深く考えないで洗濯できるものが僕の好み。また、買い替え頻度がいちばん高いものだからこそ、定番をいつも買うことができるいう安心感を重視している。

なんだかんだで定番と言われているものは飽きが来ないし、何年か経って昔の写真を見る機会があっても恥ずかしくない。たまに冒険しない人生はつまらないけれど、クラシックなモノに囲まれるほうが自分には合っている気がする。