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2023年10月26日木曜日

Schoenheit SH111-1D Cap Toe Leather Sole

ショーンハイト (Schoenheit/Schönheit) のマスターピース SH111-1D。

きわめてオーソドックスなスタイルのキャップトウ(ストレートチップ)。

かかと部分がドッグテイル型になり、型番の最後にDが付き従来の武骨な感じの靴から最近の一般的な形の靴になった感じです。


ショーンハイトとのお付き合いは SH111-4 を買ってからなのでもう8年くらいになります。
結論から言うと、めちゃくちゃ丈夫でビジネスユースに最適な靴です。

雨の日も雪の日も、もちろん晴れた日も神経質にならず仕事道具として履き続け、8年を前にして靴の底に穴が開きました。アッパー側も少し切れてきました。

レザーソールの靴はつま先が結構削れるのでそこだけ修理をすることが多いのですが、だいたい週に1回弱くらいのローテーション、比較的軽めな体重だからなのか、足をあまりすらないのかソールが減りにくくショーンハイトの SH111-4 に限ってはつま先の修理はしないまま、そこに穴があくまで履き続けました。

たまにソールをメンテナンスするとはいえ、雨の日も履きますし、1日に12時間以上履くことはざらでお世辞にもていねいに扱っているとは言えないほどです。そんなビジネスシーンで5年を軽く超え、8年ほど履き続けました。

頻繁に買い替えるよりしっかりした靴のほうが長持ちするので結局はお得であるという話をよく耳にします。しかし修理費用、お手入れの手間(time is moneyですので)を考えると必ずしもお得とは言い切れません。むしろ高級靴といわれるゾーンではやっぱり趣味性が高いです。

10万円で5足買ったらそれほど神経質にならないでも、たまにお手入れしていれば5年は持つと思われます。まっとうな革靴を履き続けることに必要なコストが1年あたり2万円、靴クリーム代やらなんやら入れても月2,000円といったところでしょうか。

20年以上お手入れをしながら履き続けるのはなかなか簡易度が高いとはおもうものの、しっかりとした作りであるので、中2日くらいのローテーションができれば数年単位では優に履き続けることができる良い靴です。


ショーンハイトの SH111-1D はきちんとした革靴の入門としてもよさそうです。

初めてレザーソールを履くような場合、雨に降られた後のメンテナンスがわからなくてソールを早めにダメにしてしまったり、ウェルトやられてしまったりすることもあります。

アッパー側も塩が出てきたり、しみがついたり傷ついたりと、ふだんのビジネスシーンで履いていれば少なからず痛みます。

それなりの歴史の中で生き残ってきた革製品ですので、多少の傷には強く、濡れたらすぐにダメになるというほどではありませんが、お手入れ次第で持ちが劇的に変わります。

化繊やビニール等に慣れてしまった現代では、こうしたメンテナンス経験が無く習慣化されていません。雨にぬれてもそのままで、それが革が雨に弱いという印象を強めているように見受けられます。

スムーズレザーでレザーソールというのは高級靴でも根本は同じです。ディテールそのまま、お手入れとかを勉強するにも適していますね。


2023年10月現在で税抜20,000円(税込22,000円)って、8年前と販売価格同じなんですね。どうやったらそういう価格が維持できるのでしょうか?

8年前にも書きました

値段から入るのはどうかと思いつつも、これだけのインパクトがあるとどうしてもここに触れたい。
革の調達価格が上がったということでどんどん革靴が値上げされる中、税抜2万円ジャストの革底グッドイヤーウェルテッドというだけで驚き。

と。

8年の時を経ても全く同じ価格って、革靴界ではもう突き抜けちゃってショーンハイトかそれ以外か状態です。 

製造をしている東立製靴さんがリーガルの工場で比較的生産効率が良いとか材料の調達が有利だとかいろいろあるのでしょうけれど、もはやそれだけでは説明つきません。この8年間で最低時給の全国加重平均が2割くらい上がっています。材料費一定だとしても人件費原価部分は上がっていないとビジネスとして釣り合いません。

というわけでショーンハイトはもともと驚異の価格設定だったのが、さらに実質値下げ状態となって、ビジネスシーンで選択肢に入れない理由が無いくらいの独走状態です。

ここまでそうとうヨイショしていますが、客観的にみてエントリー価格(エントリーレベルではない)でこれだけの品質を担保している靴ってほかにあるんでしょうか?


惜しむらくは購入できる場所が限られていること。
靴のサイズ標記は単なる数字で、しかも同じ数字であっても大きさや履き心地がまるで違うため、試着をしてから買うことが大前提です。

ある程度靴のサイジングに対して理解がある人であれば返品交換できる通販サイトで購入することができますが、初回は店頭で試着しながら店員さんのアドバイスも聞いて選ぶべきものだと思っています。

やっぱり一度は店舗でとなると、首都圏くらいの人しかアクセスできないというところが泣き所でしょうか。



さてこのショーンハイト、外羽根の SH111-4 や SH111-4D と比較すると、内羽根キャップトウの SH111-1D は明らかに緩く感じます。

外羽根モデルは羽根が少し外についているので、履き口で結構しっかり締め付けできます。アジャストの範囲が広めなようで甲が薄い人でもフィットしやすいです。内羽根モデルは筒の最小径が少し大きいので何となく緩い感じです。靴用語的に言うならば、インステップガースの調整幅が少ないです。

8年前に東立製靴さんで試着した際にも内羽根は緩い感じがしたので外羽根プレーントウを買いました。この微妙に感じる緩さ加減は今でも印象が同じです。木型が同じ SH111-4 もボールがーすのあたりは結構ゆとりがある同じような形なのですが、外羽根の作りによって締め付けられる点が異なります。

薄くなる傾向がある現代の若い人にはちょっと全体的に筒が大きめかもしれません。私は若いわけではなく単に足が薄いだけですが。リーガルトーキョーの靴に似ているフィッティングで、東立製靴さんの工場で作られる靴は、もともとのターゲットは当時の30代、いまの50代以上ですかね。スペック上は2Eですが、ボールガースの幅は明らかにハーフサイズ上のインバネスよりもゆとりを感じますのでちょっとほかの靴に比べると緩いです。

SH111-4 で紐をきつく締めた際に足首寄りの穴で羽根と羽根の間が1cm残らない人は SH111-1D だと緩い印象になるはずです。足が比較的薄めで、かつタイトフィッティングが好みの人は通販サイトのレビューやブログにとらわれず、試着して確かめるべき靴です。


全体的には足長と同じようなサイズ感だと思われます。足の長さの実測が23.5cmであれば23.5、25cmであれば25が合う気がします。タイト目フィッティングを好むのであればハーフマイナスという考え方もありますが、靴の形的に長さを下げると小指側の指先が当たりやすくなるのでフィッティング向上を目的にサイズダウンするのは要検討です。

踏まずは特に押し上げるような感覚はなく、一方でかかとは小さくはありませんが、底面はやや収まるような作りです。

タンパッドなどで調整できる範囲であれば入れてみるのもありです。逆にインソールはせっかくの足あたりを変えてしまうので個人的にはあまり好きではないです。レザーソールの革靴はやっぱり余計なインソールを入れないほうが良いですし、それであればもう少し小さいウィズでカスタムオーダーを検討するほうがよさそうです。


アッパーは山陽のキップレザー。東立製靴さんのウェブサイトを見ると「オランダ製の原皮を、姫路の工場にて丁寧に鞣(なめ)し、美しく仕上げたキップ」だそうです。特段グレードなどは書かれておらずきめが細かいとまではいきません。ぷつぷつ感があるものの、きちんとお手入れすると普通に艶が出ます。実用上は十分です。


初回に履き下ろす前、しっかりとクリームを入れていることもあり、しわは結構細かく入ります。履きおろし時点では多少硬さを感じるものの、しわができる部分では革自体はしなやかな印象です。以前購入した SH111-4 よりも柔らかくなっている気もします。

トラが目立つところもあります。ここが価格を抑える一つのポイントであるとすれば、個人的には気にならないのである意味歓迎。

ソールは以前より少しばかり薄くなった気がしないでもないです。以前はちょっと厚手の底という印象でしたが、いまはほかの靴と同程度ですね。ドッグテイルと合わせて現代的なスマートさに寄せてきたような印象です。コンビネーションオーダーに2.5mm厚底というのがありますが、これをやると従来の印象に近くなるのかな。

少し乾きやすい印象のソールです。まだ履き始めということがあるのと、今回はミンクオイル薄塗だけをしているので脂分がそれほどないからかもしれません。ソールはやりすぎてもべたべたになってしまうと滑るし通気性も落ちそうだし、でも一方で乾きすぎるとヘリが早いし雨の日水吸いすぎてしまうしと、スイートスポットはどこなんでしょう。個人的には全天候型を目指して、気持ち多めにミンクオイルを塗っています。継続的にメンテナンスをしてどうなるか興味深いです。

かかとはオリジナルのゴムヒール。ビジネスの定番ですね。
かかとがゴムになるだけでだいぶ滑りやすさが変わると思います。そのへんもビジネスユース向けとして有利な点です。

全体的にソールはシンプルです。ステインも必要最低限に仕上げられています。
前回購入した8年前に比べると安定的にきれいな感じです。

ソール凝りまくってもすぐ削れるしビジネスシーンではあんまり役に立たないし、変にデザインに流行を入れて商品入れ替え対象になることもないし、同じような形を繰り返し作るから作りても経験値がたまりやすいしと、総じてビジネスシーンで必要十分な靴をまとめ上げたらこうなるというお手本のような靴です。

REGALの01DRCDもビジネス定番としてかなりのポジションにあると思っていますが、SH111-1D をはじめとしたショーンハイトの破壊力たるや、右に出る靴を見つけるのは大変そうです。



購入して箱を開けてみて気が付いたのは、とても丁寧に梱包されていること。


作り手が大切に作って、大切に使ってほしいという気持ちが伝わってきました。
シューズバッグがついているような靴を除いては、たいていは紙に包まれて箱に入っています。これまで見てきた中ではその梱包の丁寧さについて3万円の靴も8万円の靴も案外大差がない。

ショーンハイトの梱包は、この手の2倍、3倍もする価格の靴とは一線を画す丁寧さで梱包されてきました。今回の購入で一度交換してもらうことがありましたが、交換前も交換後も梱包の丁寧さは変わりませんでしたので、たまたまよかったというのではなく、これがショーンハイトの「あたりまえ」なんだと思います。
(一方で私は包み方がヘタクソで、きれいにお返しできませんでした... すみません)

その包み紙をおそるおそる開いて出てきた靴は、それこそきれいに仕上げがされていました。

ショーンハイトのコストパフォーマンスについて語るのであれば、そのパフォーマンスはプロダクトとしての靴に対する作り手側の気持ちが圧倒的に高いというところにあるのではないでしょうか。

「オレたちの靴すげーだろ」的なものでは決してなくて、ニッポンのビジネスシーンを支える靴として一つ一つ丁寧に、それこそ職人の仕事に対する姿勢が伝わってくる靴。

靴を包んでいる紙なんて、履き心地には何の影響もないし、包み方が丁寧であっても中身はよくなるわけでもない。そこで値段を上げることもできない。

ただ、そうした細やかなことができる人たちが作り出す製品にはインチキなんてあるわけがなく、自分たちがしている仕事に対する矜持が伝わってきます。


大切にしたいと思うものは、価格で決まるのではない。

今回ショーンハイトの靴を買って改めてそんなことを感じました。
買ってよかったです。


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2023年10月12日木曜日

革靴のプレメンテナンス

ひさしぶりに革靴を買いました。

今回もビジネスユースなので必要以上に気にせず、最初によく手入れをしておくと結果的に長持ちするのではないかという程度の気持ちで、インターネットで最近の情報を調べながら自分なりにプレメンテナンス(プレメンテ)してみました。

初回のお手入れについては、いろいろな方が研究(?)されていたりして、確かにコレはいいなと思うものがたくさんあります。

ほぼすべてのところで共通しているのが初回メンテナンスの理由です。「保管されている間乾燥したかもしれない革靴に油分を補給する」ということをどうやるかということに尽きる感じです。

その目的に沿って、ある人は何種類ものクリームを順序良く塗り、またある人は乳化性のシュークリーム一本で完結しています。

革に油分を補給するという意味でいうならば、デリケートクリーム塗っておけば事足りるのですが、ちょっと渋めに光るとかお手入れ頻度を少し減らしたいとか考えるとやっぱり乳化性クリームもあったほうがいいかなと思っています。

用意したもの

  • 大きめの馬毛のブラシ
  • 豚毛のブラシ
  • 適当な布切れ
  • Boot Black デリケートクリーム
  • Boot Black シュークリーム(黒)
  • コロンブスミンクオイル
  • ウェットティッシュ
  • シューツリーを買ったときにおまけでついていたグローブ
とりあえずこれを用意。

リッチデリケートクリームだとか、プレミアムクリームだとか靴のお手入れグッズもバブル状態のようで、どれを選んでいいのか迷います。そんな時だから、いったん初心にかえってシンプルイズザベストな感じのものを選びました。

適当な布切れは着古したインナー用のシャツから作りました。おまけグローブはまぁ、ネル生地の代わりみたいなものです。

お手入れ期間は2日間(と外での慣らし履き)。最初の日はデリケートクリームとソールのミンクオイル、2日目に乳化性クリームと室内での試し履きをしました。週末を使ってやりましたので、2日に分けていますが、日にちをあけることに特に意味はありません。


今回のターゲット

今回お手入れするのはショーンハイトのSH111-1D。既製品のキャップトウです。国内タンナーのキップが使われているといわれています。


ショーンハイトさんはグッドイヤーウェルト製法の本格靴をどうしたらこの価格で提供できると思うほどにインパクトのある価格で販売しているビジネスパーソンの頼もしいパートナー。

ここ何年かにわたり革靴の値段が高騰しまくっていますが、レザーソールの既製品は消費税8%の時代から変わらず税抜き2万円、税込みで22,000円です。プレーントウのSH111-4に至ってはセールとなって当時より値段下がってたりします。Made in Jpaanで従来からのこの価格のどこに値上げしない企業努力の余地があるのかと驚きとしか言いようがありません。

リーガルの01DRCDがこの11月から税込46,200円だということを考えると、交換の手間考えても通販したり、都内の人なら本社とかサロンとか行ってショーンハイトを試し履きして買ってもいいんじゃないかと思うレベルです。

それなりにお手入れすればかなりヘビーローテーションでも5年は余裕、ソールの張替えも驚きの1万円以下。おそらくラバーソールを買えばアッパー側がダメになるほうが先かと。既製品は高級路線ではないかもしれませんが、同一価格帯の中では素材も含め、フェルスタッペンばり断トツのクオリティです。

何らかの理由で採算度外視でやっているのでなければ、この金額で展開できる技術・ノウハウは世界レベルで展開できちゃう実力なのでは、と思わずにはいられません。

おっと、今回はプレメンテの話ですのでショーンハイトの話題はこのへんで。



では早速始めてみます。

1日目

全体をブラッシングしてウェットティッシュで拭う

まずは全体を軽くブラッシング、次いでアルコール含有のウェットティッシュでぬぐいます。除菌とか油分の汚れ落としというよりは、ほとんどおまじないとか儀式みたいなものです。

今回購入した靴は、ていねいに仕上げをされているのかきれいな状態で届きました。なのでさっとやって終わりです。


お湯を固く絞ったタオルでていねいに拭う

ここからお手入れ本番。40度ちょっとのお湯を使い、固く絞ったタオルで靴全体をしっかりと拭います。これは靴の表面を少しばかりふやかせ毛穴を開くことでクリームが入りやすいようにするという意図です。

ふだんのお手入れの時はお湯ではなくいわゆる「おしりふき」で代用することが多いです。今回は初回のプレメンテナンスなので少していねいにしています。


デリケートクリームをたっぷり塗る

まずは油分や水分補給のデリケートクリームを塗ります。後ほど仕上げに乳化性の靴クリームを塗るので、ここでは乾いた革に油分がしっかり入ればいいという感じです。

今回はブートブラックのデリケートクリームを使っています。ブートブラックの良いところは主成分が「ろう、油脂」とされていて有機溶剤が入っていません。(入っていたとしても表示の義務以下です)

ブートブラックのデリケートクリームは塗っているときにややべとつくものの、乾くとそれほどでもなく感じられるので靴の内部にも使っています。カビとかどうなんだろうと思うこともありますが、いまのところデリケートクリームを塗って内部がかびたことはありません。

塗る量はそれこそたっぷりといった感じで、靴がデリクリ中毒になるほどべたべたに塗ります。これでよいのかまったく根拠はありませんが、靴を洗う時などは靴がびしょびしょになって、それでも乾けばもとに戻ると思えば、少し多めに塗っても問題ないのではないかと思っています。

デリケートクリームは2回に分けて塗り、1回目は表面に少しばかりデリケートクリームが残るかなという程度の量で様子を見ながら塗り、数時間おいて表面がもとに戻っているように見えたところで2回目にべたべた塗ります。今回は黒の靴なのであまり意識しませんでしたが、薄い色の靴であれば1回目は慎重にして様子を見て2回目の量を決めるのがいいかもしれません。

時間が無い場合は、2回目のデリケートクリームを翌日にして、都合3日でやってもよいと思います。日数が大切なのではなく、そもそもの油分を補給するという目的にかなっていればよいので、急いでいるなら寝かせの時間を短くして、忙しいなら少しずつ進めてもよいのではないかと。気にすれば多少の仕上がりの違いはあるにせよ、履く前にそこそこ油分さえ補給できればいいので。

ブートブラックやM.モウブレイのデリケートクリームやは過去にもたくさん塗りまくったことがあります。雨に濡れた後や水洗いの時などは、もはや水なのかデリケートクリームなのかわからないくらい塗りましたが、塗りすぎて靴がダメになった気はしていないので気にせずたくさん塗ります。目安としては片足で小さじすりきり一杯くらいの量を使いました。


ソールにミンクオイルを塗る

ソールは伝統的なミンクオイル。スムーズレザーではあまり使い道が無いということもあり最近では話題にも上がらないようですが、一昔前までは硬めの革を柔らかくする系では大活躍のオイルでした。今でもリーズナブルかつ意外と手に入りやすいメリットがあります。

最近はソールケアの商品もたくさん出ていて、それぞれがソールの特性に合った製品であることは間違いないのですが、今回はシンプルにいこうとしているので従来型のミンクオイル作戦で行きます。

ミンクオイルは浸透性が強いことからスムーズレザーの表面に使ってしまうとどうしようもなくベタベタして、質感が変わってしまうと言われています(確かめたことはないです)

ただその浸透性の良さは、ソールのような固くて稠密な仕上げがされている革には却って都合が良かったりもします。

新品のソールはつるつるですのでごくごく少量を伸ばします。表面が少し油っぽくなったなーという程度で、塗り込むというよりは表面にごくごく薄い膜ができたところで十分としています。

どうせ滑るならそもそもミンクオイルを買わなくてもニュートラル(無色)の乳化性クリームでもよいのではないかという気もします。ミニマル志向であれば、乳化性クリームは黒でなくてニュートラルにしてもうこれ1本でいけちゃいます。ミンクオイルよりは浸透力は低いのではないかと推察しますが、まぁそもそも外で履いてもいない状態で浸透も何もあったもんではないので。とりあえず何か塗っておこうという程度です。

ここまでやったらいったん初日は終了。時間があれば次もそのまま進めてしまって終わらせるもありなんですが、デリケートクリームの油分が浸透し、水分が蒸発して落ち着く時間もいるのではないかということで、一晩おきます。一日パターンであれば休日の午前中にここまでやって、夜に次の作業でもいいかもしれません。


2日目

コバに乳化性クリームを塗る

見落としがちですが、コバ、特にウェルトの部分にクリームを塗りこみます。

アッパーより先に塗っておくと、アッパー側に少しばかりクリームがついても気にすることありませんし、一緒にブラッシングできるので楽です。

使い捨ての歯ブラシなどが無くても、布の切れ端を使ってもある程度はできます。布に少し多めにクリームをとり、ぐいぐい押し込むような感じで塗っていきます。多少のムラが出たり、隙間にクリームが詰まりますが、どうせ最後に豚毛ブラシでブラッシングするのであまり気にせず進めます。

今回は用意していませんが、ふだんのお手入れではコバのメンテナンスに使い捨ての歯ブラシを使うことが多いです。出張が多い人はアメニティで出てくる歯ブラシを使ったら、きれいに洗って持ち帰りストックしておくのもありかと。ちなみに、新品でも業務用の歯ブラシだと1本20円以下で買えるので何もペネトレイトブラシを買う必要ないんじゃないかと思ったりしています。


アッパー側に乳化性クリームを塗る

最後に表面に乳化性クリームを塗ります。

初回なのでふだんのお手入れよりは少し多めに塗ります。僕はウエスで塗る人なので、軽く取っては表面に塗りこみ、しみこんでいくような感じであれば追加するみたいなイメージで塗っていきます。

ブローグ系の靴であればウエスだけだとどうしても塗りにくいので、ここでは歯ブラシを使うことが多いです。

ブートブラック(シルバーラインではないほう)の乳化性クリームはやや粘度が低く、するすると表面からクリームが吸収される感じです。いったん表面に留まってからじわじわ浸透していくようなクレム1925のような油性クリームとは塗っている感覚が違います。

少し表面がべたついてきたような気がするようなしないようなという程度で塗ります。靴の片方で小指の爪にクリーム山盛りといった程度の量でしょうか。

ひととおり塗ったらすぐに豚毛のブラシで全体をシャッシャと手際よく、少し力を入れてブラッシング。先ほど塗ったコバの部分もていねいにブラッシングします。

終わったら10分ほど寝かせて、布切れで余ったクリームをぬぐいます。あまり色がつかないようであれば初回より少しクリームの量を減らしながらもう一度繰り返し、布切れにクリームが過剰に残るような感じがしてきたら終了です。

塗り終えた直後は気持ち全体がべたべたした感じになりますが、その一方で革が少しだけ柔らかくなっていることがわかります。

目的は油分を革の内部に浸透させることなので、表面に残ったクリームは不要です。ここでは布切れで光沢を出すというよりは、余計なクリームをとるというイメージでふき取っていきます。

もし光らせるとか表面を整える方向であれば Boot Black アーティストパレットやクレム1925などの油性クリームを最後に使い整えれば良いかと。


履きならし

靴は割と長時間履いて歩くものですので、一日中履く前にまずは軽く履き慣らします。室内でややきつめに紐を結んで少しずつ曲げていきます。

まずは足を入れ、紐を結び足の形と靴の形の違いに意識します。ボールガースが少し抑えられているなとか、一の甲が緩いなとか、少し踏み込んだり力をかけたりして足を通して靴の形をイメージします。

次は屈曲です。最初は踵を数センチ上げるような感覚でつま先立ちをします。かかとをあげたり下げたり、あまり大きな動きではなく軽めに動かします。本格的に曲げたらどの辺が折れるのかを確認する意味合いもあります。

何度か繰り返してシワが表面に入り、靴の折り目のようなものができてきたら少し歩いてみます。最初は靴が硬くてかかとが付いてこない(靴が折れない)ですが、最初はあまり無理をせず少しずつつま先に力を入れるようにして靴を曲げていきます。

手でおるような強者もいるようですが、体重に任せてふつうに歩くほうが折れ曲がる位置や折れ曲がり方が足と合うので良い気がしています。

ある程度曲がるようになったら、つま先に力を入れるような感じで少し強めにしわを入れていきます。新しい靴はここでミシミシ音が出たりします。ソール側が少しずつ伸びるようにゆっくりと行います。

最後はキャッチャー座りのような感じで、靴が90度屈曲、と言いたいところですがまだ靴が固いので、無駄な負荷をかけないよう45度~60度くらいは折れるように屈みます。実際に履こうとすると靴ひもを結ぶときにはもう片方の足は90度以上折れるようになるので、ここでしっかりと曲げておくとよいです。

事前にしっかりと曲げておくと、歩く際のつま先にかかる負担を少し減らせるので、新品時にありがちなつま先が猛烈に減っていくことを少し軽減できます。

90度以上曲がるようになったら仕上げとしてソールにミンクオイルを薄塗りします。靴底が伸ばされて、曲がった部分は革が少し開く(傷ついて広がる)ので、そこから浸透させ、潤いを与えることが目的です。量は少な目で、その代わりていねいに擦り込むように塗ります。その後は半日くらい放置しておきます。


外履き前のお手入れ

いよいよ外出デビューです。

家の中ではなかなか歩くということができませんので、靴を曲げるところまでやったら外で歩きます。できればアスファルトよりはOAフロアのようなところのほうが良いですが、気にしだすときりが無いのでふつうに外出します。

外履きしていよいよ本格的に1日履く前に、最後のお手入れをします。

アッパー側は馬毛のブラシでていねいにブラッシングしたら、ウェルトの部分にクリームを再度入れます。しわの部分にごくごく薄く乳化性クリームを塗り、ネル生地のようなもので徹底的にからぶきです。しわの部分はほかの部分に比べて水分を吸収しやすいため、少しクリームを追加したうえで、全体的に光沢を出して終了です。


本格運用

いよいよ外出デビューです。

一日連続して履くと足が痛くなることが予想されるので、できれば靴を脱ぐことができるような日に投入します(オフィスワーク中心とか、歩く移動が少ない時とか)

結果として歩くことになったり、天気予報が外れて土砂降りになったりするかもしれませんが、もうここまで来たら大きく気にせず履くことにします。

ちなみに、仮にずぶぬれになってしまっても、ちょうど油分がたっぷり入っている状況ですので、軽く水洗いしてデリケートクリームからやり直しの油分補給すればもとに戻ります。

むしろ連騰してクリームが抜けかけた(靴が疲れているような)時に濡れるほうが靴に対するダメージが多いです。

最初の数時間はアスファルトを歩く時だけかかとからの着地を意識して、それ以外は全く気にせず歩きます。初日は5,000歩くらい歩きました。



満員電車で踏まれてしまったり、思わぬ雨に降られてしまったり、思わず段差でガリっと傷つけてしまったりとか、靴を履いて歩いている以上こうしたトラブル(?)は避けようがありません。

そんなことを心配しながら履かなければならない靴だとすると、もはやその人を幸せにするアイテムではなく、不安の種でしかありません。靴を踏まれれば踏んだ人を、天気予報が外れれば予報士を悪人に仕立て上げ、おまけに「きょうの自分は運が悪い」という暗示をかけてしまいます。

でもそれって確率の話ですよね。工夫や努力で減らすことはできてもゼロにするのは難しい。

だからこそ、自分でコントロールできるお手入れでリカバリすればよいと思っています。雨に降られるのが嫌だから履かないではなく、雨に降られることは避けようが無いので心のダメージを減らすためにも正しいお手入れを知るというスタンスです。

もし雨に降られたならこの手順でお手入れすれば元どおり、もしくはこれをやると実はより一層革が丈夫になるなんて方法を知っていれば天気なんてどうでもよくなります。(面倒という別の感情はありますが)

「レザーソールは雨の日履くな」と言っている靴屋さんは晴れの日と思って出かけても雨に降られることがあるという事実を直視していないだけです。天気予報でも雨は降らないとなっていて、確かに空を見ても晴れていたので出かけて振られた経験ないでしょうか。

私たちは将来を確実に予測なんてできないので、晴れかと思って雨に降られることはあるあるです。地域によっては晴れの日は必ずと言っていいほど夕立が来るなんてところもあります。

降られてしまったのは事実なのだから「履かなければよかった」ではなく「履いていた時に雨が降った」という単なる事実からどうするかが考えるところ。

「昨日の天気が晴れだったら...」と嘆いても「俺の見た目が竹野内豊だったら...」と言っているおっさんと何も変わらず、もうすでにそうでないのだからいまの状況から考えうるベストにフォーカスしたほうが健康的です。

ネットでは靴のお手入れのプロの方々から、それこそ靴磨きが趣味の個人の方までそれぞれの立場と重視することに沿ったお手入れ方法がたくさん紹介されています。そのどれもが靴を大切にしようとするところから始まっているのですから、ダイバーシティの時代、こうした多様性の中で情報の受け手がどうするか考えるのもまた面白いのかもしれませんね。


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デリケートクリームは万能です。ひとつあってもいいかも。

2017年10月11日水曜日

Schoenheight SH111-4 1年10か月

ショーンハイトの SH111-4 を購入してから2年弱。
晴れの日も雨の日もあまり気にせず履いてきた。

左足をM.モゥブレイ系、右足をブートブラック系でのお手入れも継続中。
おおまかなところで言えば、最初に受けた印象のまま継続といったところ。
見た目の味付けは違えど、柔らかさや保革といった部分は大差が無いようだ。

1度洗っている時点でクリームがリセットされていることもあり、結果として「劇的に左右が違ってきた」という多くの人が期待する結果になっていないのがなんともというところ。

M.モゥブレイを塗っている左足。

こうしてみると、M.モゥブレイは素材を活かすような仕上がり。
べとつくようなこともなく、SH111-4に使われている素材の特徴であるさらっとした表面の仕上がりをそのまま残すような感じ。
ワックスを使う下地としてには余計な蝋分入れないので良いのではないかな。


ブートブラックはそれ単独で完結するような仕上がり。

ブラッシングを丁寧にしてからぶきするとそこそこ光る。
保革しつつも一定の光具合がほしいというときは便利かな。
靴のお手入れ自体が趣味な人は別として、できる限り時間をかけずに光る効果を得たいというときにはいいかもしれない。

ちなみに僕はM.モゥブレイよりもブートブラックを使うことが多い。
特に国産キップでしわが大味に入るようなものにはコレ一択。
ワックスをほとんど使わない僕にとっては、一本でそこそこ光るブートブラックは使い勝手が良い。


ソールに関しても機能的に大きな違いを感じられないというのが本当のところ。
(僕は鈍感です)

ショーンハイトのレザーソールは意外に丈夫。
週1程度、晴れの日も雨の日も比較的酷使しても、つま先はもう少し持ちそうだし、ヒールもまだまだいけそう。
ソール全体がもともと厚いということもあり、レザーソールであっても雨の日でもソールの摩耗を気にしないでも良さそう。

というか、雨の日に履いたことでエラく摩耗をするという印象は無いのだけれど、本当にヤスリがけのように減るのだろうか?
コバのお手入れで軽くヤスリかけると結構削れるけれど、そんな感じでソールが減っていく感じは受けない。

減るのって雨の日に歩くからではなくて、一度濡れてふやけたものが乾燥したことでひび割れやささくれを起こし、その状態でアスファルト歩くからではないのだろうか。

左足はM.モゥブレイのソールモイスチャライザー、右足はブートブラックのレザーソールコンディショナーを使い続けた限りでは、減り具合に大差は無いように見える。
滑り具合とか履いた感じに関してもそれほどの差を感じない。どちらかが明らかに滑るということもなければ、どちらかが水が染みてきやすいと体感的にわかる程でもない。

唯一違いがあったのが元のステインへの影響。M.モゥブレイは濡れてもあまり変化がない一方で、ブートブラックはシミが出やすい。

M.モゥブレイのソールモイスチャライザーを使っている左足。

ブートブラックの右足。

以前、RENDOのソールもステインが雨に弱いという印象を受けたけれど、ひょっとしたらブートブラックのソールコンディショナーの影響もあるかもしれない。

単に個体の問題かもしれないが、ソールにこった仕上げがしてある場合はM.モゥブレイのほうが安心かな。


1年10か月ほど履いて、2泊くらいまでの出張の時などはコレ1足なんてときも結構あった。それなりにヘビーユースをしたのではないかと思う。

いまのところ解れたり破けたりということはない。しっかりと作られていることがわかる。
インソールも擦れるところが少ないのか、比較的きれいな状態を維持している。
よく起きがちなかかとの擦れがないことからも、ショーンハイトのかかとのつくりはややゆとりがあることがわかる。

しわの入り方は僕が知る2015年頃の国産キップよりはややマイルド。
リーガルのW131とRENDOはほぼ同じ傾向の太めのしわが入る。ショーンハイトのSH111-4は同系統ではありつつも、やや穏やかに入る。
クリームがきちんと入った状態では結構柔らかくなるため、指に刺さるような感触もない。

ちょっとばかりゴツい見た目なのに、履き心地はとても良い。
タイトな履き心地ではなくあまりきつくない履き心地。ソールの返りもよくて、かかともついてくる。
RENDOが甲全体とかかとでフィットするような履き心地とすると、ショーンハイト(のSH111-4)は三の甲あたりでフィットさせてあとは自由にしているような。結果、タコができることも無い、足にやさしい靴という印象。


靴を大切に履くことはとても重要ではあるけれど、「大切」が天気を気にすることだったり、満員電車でヒヤヒヤするということであれば僕にとってはオーバースペック。

ショーンハイトのレザーソールシリーズ(税抜き2万円のライン)は靴に必要以上の意識を持つことのない、道具としての重要なポイントがしっかり押さえられた靴。
そのポイントの一つの理由に価格があるわけで、この価格だから雨の日も気にせず履けたり、水洗いする勇気が出ているこということも事実。2万円という制約の中で、スムーズレザーを使い、ソールもレザーのグッドイヤーウェルテッド製法。
リーズナブルな価格でリペアができるため、ソールの減りを気にするよりも、どんどん履いて仕事に集中できる靴。

素材一つひとつを細かく見たり、ソールの仕上げにおける手のかけようなど10万円の靴と比べて足りない部分をあげることはいくらでもできる。
だが、同じ価格帯でショーンハイトと勝負できる靴はほとんどないのではないだろうか。
雨の日も晴れの日も気軽に履けて、お手入れの楽しさも感じることができる。愛着がわいたら修理をして永く付き合っていける。極めて実用的な部分で他社との差別化されているオンリーワンの靴。


最近(でもないか)は浅草にオーダーサロンもできたようで、ここなら素材の変更やらデザインの微調整やらができてそれでも4万円以下って、もう東京近郊の人で木型と足が合うならここで完結できちゃいそうな勢い。
いまはシングルEの木型もあるんですね。サンプルシューズが無いようなので確かめようが無いけれど、甲周りが少しタイトになるのであれば、オーダーでもいいよなぁ。

もちろん、ショーンハイトがカバーできない領域もあるので、それはそれで魅力的な靴はたくさんある。ショーンハイトは結構「ふつうの靴」。だが、その「ふつうの靴」をビジネス展開し、維持していくことは意外と難しい。

「英国の良心」がチャーチなら、ショーンハイトは「日本の良心」の有力候補ではないかな。

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左足のお手入れに使っているM.モゥブレイ。定番かつ長い間使っても安心な感じがします。





新進気鋭のブートブラック。これ一つで結構光らせることができるので、お手入れの時間をかけなくてもしっとりとした仕上がりに。






2016年5月22日日曜日

Schoenheit SH111-4 2nd Report

ショーンハイトを購入してほぼ5ヶ月経過。


この間だいたい週に1回くらい履いているので20回ちょっと履いた後の感想。

履き始めに柔らかい感じを受けたけれど、それはそのまま継続。不思議と痛くなるところがない靴。
いままで購入時キツ目の傾向があったのでたいていの靴は靴ずれしたりマメができることが多いのに、この靴はいまのところそういったことが無い。
足首に近い三の甲できっちり締めて、それより先の部分にゆとりがあるためなのか、ソールの反りが厚手の割には比較的柔らかいためなのか明らかに他の靴に比べてダメージが少ない。履き口が小さい分、全体的な緩さを感じないということもあるかもしれない。

何度か小雨に振られたり、濡れた路面を歩くことがあって気がついたのは、ショーンハイトのこのレザーソールは湿っていると結構滑る。特にソールにブートブラックのコンディショナーを塗った右足側は滑ることが多く、水分を含んだ状況で摩擦係数が少ない路面を歩くのは注意が必要かも。

アッパーのキップは意外にしわが綺麗に落ち着いてきた。
リーガルのW13xやRENDOに比べると明らかに繊細なしわが入るため、見た目だけで言えば質が高く感じる点は高評価。クリームはあまり多くは塗っていないので、表面の凹凸感は残るものの、単に「丈夫そう」だけではなく、しなやかさな感じも残っている。

この靴は左右でクリームを分けている。
左足のM.モゥブレイシュークリームジャーは極めてフラットな感じ。


買った時の状態に近い。
このクリームはワックスで仕上げることを前提にしているか、そもそも靴にあまりギラツキが必要ない(保革を重視)する人向けかな。

一方でブートブラックは評判通りギラツキ感が強く出るクリーム。


クリームを入れた直後は結構差がでる。
しばらく履いて乾拭きだけを繰り返すと、やや光沢という観点では落ちてくるものの、様々なワックスを入れて光らせることも目的にしているクリームという感じ。少し塗りすぎるとビーワックスなどに特有の乾拭き時の引っ掛かりとムラが出やすいので、意識的に薄塗りする必要がありそう。

ソールが厚めなのと、まだそれほどすり減っていないということもあり、今のところ多少の雨(土砂降りではなくて)くらいだと靴の内部に水が侵入してくることも無い。
ソールも雨に濡れても削れやすいという印象は無いので、耐久性もあるのかもしれない。(ここはまだ良くわかっていないので、あくまでも「気がする」レベル)

ショーンハイトは見た目や履き心地の方向性は、最初の革靴には最適かもしれない。
よくありがちなEEEやEEEEなどのぽってりとした靴に近い外見は、細い靴を怖がる人にも安心感を与えそうだし、ふわっとした柔かい履き心地は革靴に慣れていない人でも我慢できる範囲にあるような気もする。
ラバーソールなら税込み2万円以下という価格も、2504NAよりも押さえられているし、それでいてスムーズレザーでお手入れの楽しみもある。
靴は試履して買うのが大前提とはいえ、リーガルで言えば2504NAあたりとサイズ感が近いと思うので、返品覚悟の通販で買うならば、あまり外しがないような気もする。

靴が大きく沈み込むというのもなんとなく無さそうなので、次回はボックスキップの既製かオーダーかな。


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左足に使っているM.モゥブレイ。
きわめてベーシックなクリームだと思います。
定番なので変わらない良さがある一方で、最近のビーズワックス多めなクリームと比較するとやや艶感にかけるので、これ一本というよりはワックスと組み合わせる人向けかな。



右足に使っているブートブラック。
結構単体で光るので、ワックスで立体的な靴を作りたい人以外にはいいかも。




2016年1月23日土曜日

Schoenheit SH111-4 Plain Toe Leather Sole

個人的にちょっとホットな東立製靴のオリジナルブランド、ショーンハイト(Schoenheit)。
Google+のコミュニティでも購入報告や気になるひとが続出(してると思うの)です。

ショーンハイトのレザーソールモデル、プレーントウ(SH111-4)。ショーンハイトのスペルは正しくは
O-Umlaut なのだけれど、ウムラウトの英文タイプ表記にならってタイトルは Schoenheit と書いてみました。

ショーンハイトはこのブログを記事で紹介いただいている Life Style Image さんで知りました。
ブリティッシュトラッドタイプのレザーソールでお値段21,600円(8%税込)。

値段から入るのはどうかと思いつつも、これだけのインパクトがあるとどうしてもここに触れたい。
革の調達価格が上がったということでどんどん革靴が値上げされる中、税抜2万円ジャストの革底グッドイヤーウェルテッドというだけで驚き。スムーズレザーを使った2万円台のレザーソールとなると東南アジア製が一部あるくらいで国産ではなかなか見当たらない。よく「革靴は3万円台後半から」みたいな話が言われる(僕もそう思っていた)けれど、そんな定義を覆してしまう。
キャップトウ2足とプレーントウ買って税込65,000円って、シェットランドフォックスの新作ブライトン1
足とほぼ同じ。ラバーソールだともっと低価格。10万円あったら5足くらい買えてしまう。デザイン違い、色違い揃えていきなり一週間のワードローブ完成もそう大きな話でもない。山陽のボックスキップを使った既製モデルで税抜29,000円。

日々多くの靴を生産する過程で蓄積された調達・製造のノウハウをいかんなく発揮してできた靴。工場直販で店舗維持費用がかからないとしても、在庫はある程度(各サイズ1足くらい)確保されているみたいだし、オンラインショップの管理や発送、問い合わせ対応などの人件費は劇的に変わるわけではない。大手ファクトリーとしての材料の調達や繁閑調整、人員の効率的な活用によるところは大きいと思う。

僕は靴をネットで購入することはほとんどない。同じメーカーでもラストが違うと同一サイズでも履き心地は全然違うことがあるし、お店できちんと紐を締めて多少歩いてみて足のどの部分にあたるとか、どの部分が余るなどを把握して買いたいということもある。
ショーンハイトのこのモデルはYahoo!のオンラインショッピングか柏市の本社に行かないと手に入らない。散歩がてらに柏まで足を運ぶということで行ってきました。

東京在住の僕は常磐線で南柏駅まで行き、そこからバス。
南柏駅の西口(栄えていない方?)から流山ぐりーんバスに乗って20分弱くらい。野々下4号公園下車で歩いて数分。このバスは土日30分おきなので行きも帰りもタイミングを合わせないと結構待たされる。後から気づいたけどいまは東京駅からJRで乗り換え無しで柏駅まで行ける。柏駅からバスのほうが東立製靴の近くのバス停(笹原)が使える。

今回は土曜日訪問なので本社はひっそりしていた。販売店舗というわけではないので、予め電話で予約して行くと良いかも。土日は人も少ないし、その中で仕事を進めているのだからこちらもある程度の時間を決めていくほうが良かったなと。僕は朝に何時までやっているかだけを確認して適当に訪問したのでその点反省。

目的はブリティッシュ・トラッドタイプのためし履き。

このラスト、オンラインショップの写真を見るとチャーチの173ラストに似ているなと思っていたけれど、実際にチャーチを意識してラウンドトウを作ってみたとのこと。キャップトウのトウ先あたりは微妙に丸長くボリュームがあるという感じで確かにチャーチっぽさがある。とはいえレースステイの位置や足首周りはより小さめに仕上げられているなど、単なるパクリラストではない。ウェルトの目付けによって受ける印象も結構違う。ちなみにこのラストは東立製靴さんのオリジナル。

全体的なサイズ感としては伝統的なリーガルの靴に近い。シェットランドフォックスのインバネスや最近の01DRCDあたりと比べるとハーフサイズ大きい感覚。
左の01DRCDよりハーフサイズ下げているけれど、全長は同じくらい。
捨て寸がある程度確保されているためか01DRCDよりハーフサイズ下げてもゆとりを感じるけれど、これ以上下げると捨て寸に足が入る感じがした。足長が長い左足は意識するとかかと側が当たっている感じがするので全長はこれ以上下げるのは厳しいと思う。二の甲と三の甲はリーガルトーキョーの旧ジョンストンアンドマーフィー型ラストを少しシェイプした感じ。踵周りはややコンパクトにつくられている。
踵から土踏まずにかけて、やや土踏まずの絞りが踵寄りになっているようにも感じる。(気のせいかも)。踵ぴったりに履いているので前のめりしているわけでもなく、僕の足だともう数ミリ前にある方が気持ちいい。

サイズ表記は2E(EE)。ボールジョイントあたりの幅は少しだけゆとりを持たせて(リーガルの伝統的ラストよりは)高さを抑えているやや平べったい作り。キャップトウを試しに履いてみたところ、01DRCDよりハーフダウンしても気持ちゆるい感じがして、沈み込むと羽根が完全に閉じそうな気がした。外羽根プレーントウだと羽根が少し外側に付いているのか、かなりきつく締めても閉じることが無く、1cmくらい開いている。相当沈み込んでも閉じきることはなさそう。幅ふつうで薄めの足である僕には外羽根のほうがフィット感が良い感じ。履き口もやや小さめということも相まって踵と三の甲あたりで締めて、前半部分は縦横ともにゆったりとしている。最近キツ目の靴を履いているせいか、足入れした瞬間は緩い感じを受けたけれど、超時間履いていても緩さは感じられず、むしろあまり靴を意識しない自然な履き心地。緩くもなく、タイトでもなく当たる部分もあまりない靴。全体としては親指側にトウが振られていることも楽な履き心地につながっているのかもしれない。

今回はトライしていないけれど、ロングノーズモデルはややボールジョイント部分に幅をもたせているようなので、僕にとってはフィット感が弱くなるかもしれない。

2日間でトータル30時間くらい、うち1日は結構歩いた後の感覚としては、新品の靴なのに痛い部分が無いに等しい。結構歩くので甲を意識的にキツ目に結んでいても、いつも痛くなる骨が出ている部分のダメージがあまり無い。また、左の小指や薬指も当たる感じが無い。踵は食いつくような感じが無いと思うけれど、擦れもせず歩くたびにきちんと付いてくる。
細かいことを言えば、左足の外側ボールジョイントから踵に向けてのあたりが少し当たっている。ということはこの部分は必ずしも大きくないのかもしれない。
多くの靴が足をガシッと包むような履き心地なのに対して、ふわっとした感じさえしてくる。

素材は「国内タンナー産高級キップ」とされている。
ショーンハイトのオーダーで使われているキップは山陽のグレージング仕上げのキップとされているけれど、こちらはそれとは別っぽい。
初見では表面上にポツポツとした感じで全体的にはサラッとしたフラットな印象。黒々とした黒というよりは表面の凹凸によってやや銀色的な光り方をする。艶はそれほどでもなく、しわはキップらしいやや大味なものが入る。プレーントウ自体がのっぺりしていることもあり、つま先にはワックス入れて黒を強調し、立体的にしたほうが格好良いかも。

ソールはやや厚め。靴のデザインもあり、全体として少しぽってりとした靴に見える。ソールが厚いからなのか、コルクが詰まっているからなのか、底がしっかりしている感じがして路面の凹凸に対して足にやさしく、履き始めにしては想像以上に反りが良い。

靴そのもののつくりは至ってベーシック。靴を作るための基本を集めて作ったような靴。
ウェルト周りはきれいに仕上げられているし、レザーソール部分がステイン仕上げがされていたりちょっとしたこだわりが感じられる。この靴の立ち位置なら無くても十分なのではないかと思うけど、「ショーンハイト」であるが故かな。
仕上げはふつう。必要以上のコストを掛けずに手の届きやすい価格を実現するというのも経営手腕の見せ所。品質を担保するギリギリのところにしているようにも見えてこれは僕としてはありがたい。

手持ちのクリーム比較として、今回左足を M. Mowbray シュークリームジャー、右足をBoot Black(黒蓋)シュークリームで塗り分けてみた。ソールも左足はモゥブレイ、右足はブートブラックのものを使っている。
購入時点でお湯で固く絞ったタオルを使ってみたけれど、色がほとんど落ちない。仕上げはあまりされていないと思う。どうせ好きなクリーム塗るのだからこれで十分。
初回はクリームが良く入る。薄塗り3回繰り返して磨いてみた段階ではそれほどツヤツヤに光る感じでもなく、最初の状態と変わらない気がする。最初はそんなもんかな。このへんの細かい比較については改めて。

日本にはいい靴を作るファクトリーがたくさんあるし、実際にいい靴もたくさん売られている。
いわゆる本格靴という市場は国内全体ではまだそれほど大きくなくて、その市場では主に欧米製の人気が高い。
国産靴は垢抜けないイメージを持たれることがあったけれど、市場の成熟とともに創り手も切磋琢磨されるわけで、高級靴ブームがあったおかげで日本製の良さを活かした洗練された靴が増えてきたように思う。

欧米の靴に人気があるひとつの理由は、ジェームズ・ボンドがチャーチからクロケットアンドジョーンズになったことが話題になったり、オバマ大統領が初登庁にコールハーンを履いたことでアレン・エドモンズが「USA製ですら無いコールハーンで初登庁なんてがっかりだ」とコメント出したりとブランドにストーリーがあるということもある。トリッカーズなんて世界レベルの洒落者ともいえるチャールズ皇太子のワラントだからこれまたストーリーになる。

日本人はもともと日本製が好き。なにもジョン・ロブやベルルッティと真っ向勝負では無くても、天気を必要以上に気にしないで済むビジネスの心強い道具としての立ち位置ならこつこつと真面目に作られる日本製に分があると思う。形を真似てもブランドのストーリーは手に入らないのだから、もっと気軽に履ける正統な靴っていいなと。長く使えるしっかりとしたものづくりという点では国産って素晴らしいと思うのです。

ショーンハイトはベーシックな形、まっとうな素材ときちんとした作り、修理対応の安心感などふつうのサラリーマンにとってありがたい要素がたくさんある。
残念なのはためし履きをしての入手が困難なこと。国産靴の多くはいつもこれに直面してしまう。ペルフェットしかり、RENDOしかり、大塚のM-5しかり。通販主体の場合はサイズ選びと交換の手続きが面倒だなと二の足を踏んでしまうし、交換コスト(手間と金額)が気になってしまう。
靴って、一度フィッティングがわかれば次からは同ラストを通販で買うこともできる。でも、その一度目に到達するまでが大変。

ショーンハイトの最大のデメリットはここにある。ホームページを見ると三越で試着できそうな雰囲気だけれど、実際には置いていない。(僕は日本橋と銀座の三越に試着したくて行ったけれど、扱っていなかった。ホームページが紛らわしい。)
百貨店に卸したりするといろいろ制約があったり、この価格では提供できないなどの事情があるかもしれない。
スコッチグレインのオデッサやライトカーフあたりと比べてどうかという情報があったら結構通販でも売れそう。リーガルとの比較は流石に問題が出そうにしても、それ以外のブランドなら出してしまっても良さそうだけれど、そういうのは業界的にダメなのかな。

柏の本社で履いてみれば一発解決。大手町あたりからだと乗り換え入れて本社まで1時間30分弱。往復3時間を遠いとみるか近いとみるか。
僕は遠足のつもりで実際に行ってみた。あえて靴購入だけを目的としてしまうと往復交通費と時間が上乗せさせるので交換前提の通販のほうが気楽だけれど、都内の人だったらなんとか行ける距離かなと。
店舗とは違うので応対は朴訥な感じを受けたけれど、とても感じが良く時間があれば次回も訪問して買いたいと思う。

すべての革靴が高級靴を目指すのではなくて、必要十分なビジネスパーソンのためのオーソドックスな靴があってもいい。ショーンハイトのこの靴はそのど真ん中にあるように思える。
でも、東立製靴さんの目指すところの主力は素材、作りにもう少しこだわったパターンオーダーのドレスかな。

しばらく履いて特に大きな問題がなければオーダーもしてみたいな。普段履きからオーダーによるドレスまで懐深いショーンハイトは今後の注目株かと。


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クリームは右左で塗り分けています。左足はM.モゥブレイ。



右足はブートブラック。デリケートクリームを使うのは最初だけ。後は水拭きしてから乳化性クリームのみ。



ブラシもクリーム塗り分けのために新調しました。