2014年4月1日火曜日

Shetland Fox 3055SF ABERDEEN

いままで何度も下書きを更新しては、なかなか公開の機会が無かったシェットランドフォックスで最もエレガントでないかと思う靴。アバディーン(Aberdeen)

細め、低め、ロングノーズのチゼルトウ。
ここまで行くとアバディーンというよりはトリエステ(Trieste)という感じなのだけど、まぁネーミングなんてどうでもいいか。
新宿のイセタンメンズでも売っていて、確か八重洲のリーガルシューズでも見かけたような気がするので、グラスゴーに次いで手に入りやすい(=試着しやすい)靴だと思う。
日比谷のシェットランドフォックスでは30代のリピートが多いそうだ。確かに、一見細身のロングノーズに見えて、実は細すぎないという絶妙なバランスが合うのかもしれない。

前回のペルフェットのパラティーノとほぼ同じコンセプト。
ただ、パラティーノは縫製の感じも含めてイタリアンなエロさを感じるのに対して、アバディーンは日本の工業製品っぽいめちゃくちゃ真面目な雰囲気。REGAL TOKYOのホームページでも紹介されているように、細い糸でピッチの狭いミシン、にじみのないソールのステイン仕上げ、少しひねったカウンターの仕上げなど随所にていねいさが現れている。パラティーノとのデザイン上の大きな違いはハトメ。こちらは6穴で左右のハトメ間もかなり小ぶりにできている。

履いた感じではパラティーノ5.5とアバディーン6がほぼ同じ感じで、同じシェットランドフォックスだとインバネスと同サイズでボールガースがややタイトなフィット、グラスゴーと同サイズで全体の周囲が結構小ぶりという印象。レースの開き具合は「アバディーン>インバネス>>グラスゴー=エジンバラ」といったところか。羽根の開きを気にする人は少し厳しいかもしれない。

正面から見ると峰がかなり内側に寄っていて、そのためなのか甲の外側がややタイト。
人間の足の形を見るに、靴の峰を内側に寄せれば寄せるほどフィット感が良くなりそうに思えるけど、やり過ぎるとかなり格好悪い靴になってしまいそう。各社この辺りはいろいろ工夫しているポイントになっている。ペルフェットのパラティーノは中心はそれほどずらさず外側を大胆に削っている感じで、ソフィスアンドソリッドS701は靴全体をくの字型にして羽の左右の高さを変えている(外側がかなり低い)。
参考までにペルフェットのパラティーノ。
峰は中心にあるが、外側をかなり削っている印象。

シェットランドフォックスは甲の部分で峰を結構内側に持ってきて、全体では親指方向に少し振っている。
このため親指が一番長い僕の足でも親指側があたることが無い。似たような形のオードリー(337E)と比べて指周りのゆとりがある。日本のブランドだけにエジプト型の足にも対応できるように仕上げられているような感じだ。

シェットランドフォックスの中では最も薄め(だと思う。ブリストルはまだ未体験)のラスト。REGAL TOKYOのホームページではグラスゴーに似た感じと書いてあったけれど、グラスゴーより遥かに薄くてコンパクトな印象。インステップガースは5mmから1cmくらい小さいのではないかと思えてくるほど。
指先のあたる感じは意外やインバネスのように左足の小指が窮屈というわけでもない。土踏まずは全体的に強い突き上げを感じないが、足のアーチに沿ってそっと触れる程度。これはシェットランドフォックス(というかリーガル)に共通していると思う。ビンビンに押してくるペルフェットと比べると物足りないかもしれない。健康上どちらが良いのかは知らないけれど、長時間履いているとあまり土踏まずがタイトでないほうが楽な気もする。
インソールのフットプリントを見ると、やっぱり大きい左足の小指が少し外側にはみ出している。インバネスでも小指にややアタリを感じてはいるものの、こちらははみ出していないので、同じEE表記はされているものの、同ブランド他モデルより少し細めなのかもしれない。(しかし前述のようにこなれてきた後はなぜかインバネスより小指が楽)
サイズとしてはEEなので、ボールジョイントの幅は少しゆとりがある。ウイズEのソフィスアンドソリッドS701を履くと、結構ボールジョイントがタイトな感じを受けるので、やっぱりアバディーンはEEなんだなと感じる。
前回のペルフェットのパラティーノと比較すると、ボールジョイント周りはほぼ同じ位だと思うが、トウにかけての絞り込みはアバディーンのほうが緩い、というか少しつま先よりにあると思える。これは右足の小指に対する圧迫感がまるで違うことで気づいた。僕の場合は足長は左のほうが長いので、通常は左足のほうが違和感を感じることが多いが、幅は若干であるけれど右のほうがあるため、右足に違和感を感じる靴というのは捨て寸に入るところが小さいのだと予想される。

この靴は毎朝履くときにはかなりタイトな感じがするが、しばらく経つと足がなれるのか、むしろ程よくぴったり感に変わる。履き始めからいままで(通算30回くらい着用)この靴は一切タコになることがないので、キツイように思えて意外にぴったりなのかもしれない。違和感を感じやすい小指についても、長時間履いていてもダメージを感じない。もともと僕はシェットランドフォックスの靴では全体的に靴ずれが起きにくい。指の上部に靴ずれが起きたのはインバネス購入当初くらい。逆にヒドかったのはリーガルW131とペルフェットLGW3001というショートノーズモデル。前者はかかと外側にかなりヒドイマメができた(いまでもわりと残っている)。後者はかかとと指にアタリを感じる。両社ともに他の靴に比べショートノーズ。ひょっとしてこの手の靴は捨て寸短い分、ワンサイズ上げるべきだったのかもしれない。
基本的に僕は小さい方の右足ジャストフィットで購入するため、馴染むまではわりと強烈に、馴染んだ後でもなんとなく左足のほうが違和感を感じることが多い。履きこむとソールが多少沈むことと、靴が指にあって多少の変形をすることもあり、左足ジャストに合わせるより長い目で見ると結局はマトモになることが多い。

このアバディーンは内羽根と外羽根で少し印象が変わって、外羽根(3054SF)はインステップが細いのか履口が結構笑ってしまう。かかとも言われるほどコンパクトさを感じない(履口が開いちゃっているからかもしれない)。アバディーンは最初にこの外羽根Vチップを買ったため、あまり合わないラストと思っていたが、内羽根を買ってみたら結構合っていたので意外だった。
エジンバラもそうだけれど、包み込まれる感じは同一ラストの時は内羽根のほうが強く感じることが多い。ひょっとしたらデザインによって釣り込みに差が出ているのか、羽根の構造上なんらかの違いがあるのかもしれない。

アッパーはもう日本でおなじみ仏アノネイ社ボカルー。なんか国産4万円台クラスの定番なんじゃないかという気がしてくるほどよく見かける。イルチアなきいまとなっては、このプライスゾーンの国産靴のアッパーはアノネイかウエインハイムレダーかどちらか。アノネイのボカルーはその透明感のあるブラックの評価が高いが、実は雨に降られてもきちんとメンテナンスするとわりとしなやかさを戻すので、お手入れ次第では実用範囲が広く、コストパフォーマンスが高いと思う。(僕は好きだ)
手入れがうまくいかないと少し曇った感じになる。僕の場合は雨に降られることもあるし、お手入れの際に堅く絞ったタオルで拭くことがおおいので、染料が抜けてしまうのかも。
世界的に質の低下が言われている皮革素材だけれど、僕のように違いがあまりわからない人にとっては十分満足ができる。雨に弱いと言われるものの、きちんと乾かしてクリームぬりぬりすると結構戻るし、お値段的にもダメージが少ないので、本当に使い勝手が良いと思う。
右にちらっと見えるのがイルチアのラディカによるパラティーノ。色合いが全然違う。

靴底は仕上げの見た目通り、おろしたてはかなり滑る。このあたりはクロケットのオードリーに似ているかも。ちなみにロングノーズのせいか当初つま先が勢い良く減る。ある程度履きこむと減り具合も落ち着くのだけれど、この手のロングノーズはつま先補修までの期間が結構短くなる覚悟が必要か。つま先修理位ならそれほどコストも掛からないので、最初からスチール入れるよりはすり減ってから補修をするというのが僕のパターン。

アバディーンはリーガルの公式通販で見るとなんだかやたらシャープなロングノーズに見えるけれど、実物はそこまででないように思える。確かにトウの先端はかなり薄くて本当にチゼルっぽいのだけれど、キャップが大きめだからか、僕がロングノーズに見慣れたからかちょっと長いだけという感じ。どちらかというと「低い(=薄い)」という印象のほうが強い。

アバディーンの良さは「ミリ単位で修正を加えながら完成された木型」だという。でもこれ当たり前じゃないの。センチ単位で作られたらたまらん。靴のサイズは0.5cm(つまり、ミリ)単位で販売されているのだから。もっと木型の特徴がわかると試し履きするときに参考になるのに。アルフレッド・サージェントのホームページはラストごとの概形が載っていたりして、すでに1モデル持っていればなんとなく他のラストのイメージくらいはできる。靴は試し履きして感性で買うからこそ、気になる部分に注意を注ぐことができる情報があればとってもありがたい。
それにしてもこのシェットランドフォックスにしてもペルフェットにしても、公式ホームページでラインナップを確認できないというのはどうかと思う。いくら公式通販サイトがあるとはいえ、ブランド公式のホームページで基本的な情報くらい入手したい。比較的情報のあるリーガル公式通販でも「ポカルー革」と書いてあって脱力する。"Vo"calouですよ。

ツリーはサルトレカミエSR300のサイズ38。シェットランドフォックス純正のバネ式だと心なしかかかとが大きいのではないかという気がする。
この純正シューツリーはケンジントンやエジンバラをベースに開発されているのではないかな。アバディーンの小さめかかとを広げてしまいそう(自分のかかとの形と比べると気のせいかもしれないけど...)

アバディーンは最初にリーガルのサイトでみた時は「うわ、いくらなんでもやり過ぎだよ」とあまり好意的に受け止めることは無かった。よくあるデザイン優先のロングノーズに形が似ているような気が。エッジも強烈に立っていて、かつロングノーズなため、古典的なラウンドトウ好きから見ると、異端な感じがありありして。
でも実際に店頭で見て見るとそんなにドギツイ印象でもなく、写真から受けるいやらしさはそれほど感じない。実際に履いてみると結構懐が広いラストな印象。僕は足のサイズが6なので履いてみるとたいしてロングにならない(身長比でバランスが良くなる)。靴のサイズと身長のバランスは結構重要で、足の小さい人がショートノーズを履くとマスオさんみたいになってしまうし、足の大きい人がロングノーズを履くとピエロになってしまう。
というわけで、この靴は、どちらかというと身長比で足の小さい人のほうが全体のバランスが取れるのではないかな。サイズも5から展開しているのはその辺りも考慮されているのだろうか。
シェットランドフォックスで唯一、キャップトウ、セミブローグ、プレーントウ(外羽根Vフロント、内羽根)という王道ラインナップが揃っていて、アッパーは上質かつ無難なボカルーを採用したモデル。小さめの足向けにはアバディーンで、大きめの足にはこちらもキャップトウ、セミブローグ、フルブローグ、ホールカットと定番ラインナップを擁するアーバインと分けているのかなぁ。

2 件のコメント:

  1. 初めまして。匿名で失礼いたします。
    四十路を目前にして、年相応の身嗜みを整えようと思い立ち、ネットで情報を集めていたところ貴ブログに遭遇して以来、参考にさせていただいております。
    特に靴毎のフィット感や耐久性、耐水性など、販売員に聞いても所有し実用している方からでないと得られない情報を発信して下さっている点と、同じキャップトゥで括られる靴でも素材やデザインの違いによって、shoe*さんがどのような印象を持たれるかを靴毎にわかりやすく説明して下さっている点が、私にとってはとても勉強になります。

    普段、リーガルのゴム底ガラス革メインでローテしている私がお願いするのも烏滸がましく、また貴ブログの主方針から外れることかもしれませんが、可能であればチャーチのコンサルのように『オードリー』も取り上げて頂けませんでしょうか。(フィット感の違いを具体的に述べておられたので所有されている(いた?)と勝手に推測しました)

    舶来の靴を購入する予定は今のところありませんが(金銭的に購入できませんw)、なぜ世間で高い評価を得ているのかを知りたく思っており、靴については一家言あるshoe*さんはどのように感じておられるのか教えて頂ければ幸いです。

    これからもメンテやレビューを楽しみにしています。(白シャツもお願いします)









    返信削除
    返信
    1. 嬉しいコメントありがとうございます。

      ちょうどネタ尽きてきた頃でしたが、そういえばオードリーは書いていませんでした。
      最近は輸入靴は高くなりすぎて私も手が出なくなりました...
      オードリーは私にとってフィット感はイマイチなのですが、アッパーの質感は(私の所有する靴の中では)他を圧倒している感じがします。
      そう思ってみているせいか、佇まいも独特のオーラがあります。

      もうだいぶ前に購入して、何度か履いてもいまひとつしっくりこない感じがして、下駄箱に入ったままになっていました。購入時にも少し足に合わない感じはしたのですが、販売員の「履いたいるうちに馴染む」というアドバイスと、当時はいまほどフィッティングにこだわりが無かったのでこんなもんかなと思って購入した覚えがあります。ブログで取り上げるには履いた回数が少ないのと最近履いていないため忘れてしまったこともあるので、これからときどき履いてネタ集めをするようにします。公開が遅くなってしまうかもしれませんが、少しずつ書き進めてみようと思います。

      削除