2015年8月29日土曜日

Saphir Noir

革靴を履いて、磨いてもう20年以上になるけれど、いまの定番クリームはこれ。

サフィールノワールクレム1925。(Saphir Noir Crem 1925)

いろいろな雑誌でも取り上げられて、プレステージの靴クリームとしてはNo.1のポジションを確立しているように感じられる。

僕が最初に革靴を買った頃(20年以上前)に使っていたのは、日本の定番コロンブスのチューブ入りだった。いま思えばかなり厚塗していて、頻度も高く、おまけにクリーナーなんかもつかっていたので、相当靴にとっては厳しい状況だっただろう。
この頃はそれほどインターネット上にも靴のお手入れなんて情報はなかったし、なんかあれこれつけて磨いていると楽しいのでついついやりすぎにやっていた。

時が経って、靴だけでなく、お手入れ用品にもちょっと興味が出てきた頃に出会ったのが、コルドヌリ・アングレーズ(LA CORDONNERIE ANGLAISE)のビーワックスクリーム。

これまでのチューブ入りと違って瓶入り。この瓶は格好よかった。店頭でも「このクリームは伸びるので、ごくごく薄く塗ってください」とアドバイスされた。
さっそく家に帰ってわくわくしながら蓋を開けてみると、いままで僕が知っていた靴クリームと違う独特の香りがして、これまた靴磨きが楽しくなった。
コルドヌリ・アングレーズはコードバン専用のクリームもあって、素材ごとに必要なクリームが違うんだということを初めて知った。
当時は確かコロンブスが代理店で、リーガルブランドでもサフィールが売られていた。

サフィールのクリームはとても甘い香りがして、これまでの有機溶剤っぽいにおいとはまるで違う、靴磨きをしたくなるような香りだった。

さらに時は経ち、代理店がルボウになったころからサフィールノワールブランドが百貨店や通販で簡単に手に入るようになった。
当初の丸瓶から四角い瓶に代わって「量が少なくなった」なんて批判も受けたけれど、結果として高級感を出した差別化に成功したと思う。
靴を磨く頻度と1回に使う量からすれば、業者さんでもない限りなかなか使い切ることはないはず。靴を磨くのが趣味の一つの僕でも数年前に買ったクリームがまだ半分以上残っている。使い切る前に変質が進んでしまいそうなくらい。
シアバター配合で浸透力がアップとかいう薀蓄があるのだけれど、個人的にはそれがどう良い影響を与えているのかわからない。それよりも、なんといってもあの香りが好きだということが使い続けている大きな要因。
同じサフィールでももう一つの定番のビーズワックスクリームは香りが全然違うので、やっぱりクレム1925ということになる。

サフィールノワールシリーズには、マルチパーパスの「スペシャルナッパデリケートクリーム」、靴だけでなく革全般に控えめな光沢を与える「レノベイタークリーム」、靴磨きの定番「クレム1925」などがある。

デリケートクリームといえばM.モゥブレイが定番と言われている。ラノリンベースのモゥブレイとミンクオイル配合のサフィールノワール。後者のほうが水分配合度合いが少ないのか、比べると少し固い。

レノベイタークリームはまさにアニリンカーフクリームと言う感じ。デリケートクリームより水っぽく、クリームと言うか小岩井乳業のプレーンヨーグルトみたいな感じ。

そのせいか、レノベイタークリームは革のダメージ補修力は相当に期待できる。
僕は靴を水洗いした後は、生乾きの状態まではデリケートクリームを軽く入れるのだけれど、一旦乾いたと思った時にレノベイタークリームを気持ち多めに塗る。少しおいてからブラッシングすると恐ろしく革が復活したように光りだす。

もしクリームを1つだけ選ぶなら、レノベイタークリームがまさに万能選手だと言える。
注意していることは、サフィールノワールのデリケートクリームと同様にミンクオイル配合なので、必要以上に塗りすぎると革が柔らかくなりすぎて型崩れの原因になりそうなこと。僕はクレム1925をメインに使うので、レノベイタークリームは極稀に使うくらい。

クレム1925は、仕上がりからちょっとした艶出しまでカバーするまさに靴磨きのためのクリーム。

このクリームの特徴は、油性ということによる伸びの良さ。浸透するというよりは伸びるという印象のクリームで、少量でもかなりの面積を塗ることができる。伸びるということは瞬間的な浸透をあまりしないということだから、単に伸びるだけでは革の内部まで必要な量の油分がいきわたりづらいか、不足になってしまう。

サフィールノワールクレム1925、ブートブラック、モゥブレイを比べてみると、後者ふたつは乳化性特有の「革に水が染み込む感じ」が得られるのに対して、クレム1925は表面にとどまって油膜を形成する感じが強い。

クレム1925は油分が多い(というか油性)ためか、クリームそのものも少し硬い感じで、ブートブラックが少しプルプルとした感じであることに対して、クレム1925のブラックはしっとりとしたマーガリンのような感じ。ニュートラルはもう少し水々しい感じなのだけれど染料配合すると何か違うのだろうか。どちらにしてもスッと革に浸透するような感覚がある乳化性クリームとは違い、しっとりと表面に残る。これが特有の光沢を生み出している。

表面にとどまる理由の一つがクリームそのものの硬さによるのだろうけれど、それが表面の凹凸を多少滑らかにする効果があるようで、他のクリームより光りやすい印象を受ける。あるかないかくらいのほんのちょっと水をつけながら多少厚塗りすると恐ろしく光沢の出る靴になる。
では浸透していないのかといえば、薄い色の靴にニュートラルを塗ってみると、ごく軽く表面を湿らせたような色変化をするので革に浸透していることが伺える。時間をかけてじわじわ浸み込んでいくクリーム。

水分が少ないということは少なからず革がふやける方向を抑制するわけで、これもまた仕上がりの艶やかさに影響していると思われる。みずみずしさの補給が足りないと感じる向きにはクレム1925の前にデリケートクリームかレノベイタークリームを入れれば十分だと思う。というか、光らせるということをあまり重要視しなければレノベイタークリームだけでも十分。(蝋は入っているので控えめに光る)

クレム1925の少しギラつく感じは好き嫌いがあれど、上手に使うとワックスが無くてもそこそこ光らせることができる。乳化性だけでワックス並みに光らせることが出来る人もいるくらいだし。

このクリームはやっぱり靴磨き好き向けで、当初の僕のように、クリーム塗布が少なすぎる方向より多すぎる方向に行く人には向かないのではないかな。却って光沢が無くなり、また保革上もワックス厚塗り状態みたいになってしまう。ブラッシングや乾拭きをあまりしない人だと古いクリームが皺に残ってクラックの原因にもなってしまう。その点、乳化性の水分多めのクリームはさらっとした感じもあり、多めに塗ってもべたつき感が出にくく、さっとブラッシングするだけでシワの間に入ったクリームも均しやすい。

なので、もし靴に興味がない人にクリームを一つだけ選んでほしいと言われたら、本当のクリームってこういうもんだよ、という前置きをしたうえでレノベイタークリームを薦めると思う。

僕は靴磨きが趣味みたいなものなのでクリームを何種類も塗りたくっているけれど、忙しい時期にはレノベイタークリームだけ軽く塗っておくことがある。このクリームは適度に光るし、ブラッシングもそれほど神経質にならなくても良いし、靴の染料にもどちらかと言えば優しめ。靴によっては春夏しか履かない物があって、そういう靴をしまっておく時に塗っておくのもレノベイタークリーム。

一つの靴には同じブランドで固めたいので、ほとんどの靴がこの3つの組み合わせで塗っている。残りの靴は日本の最高峰クリーム(と思う)BootBlackを使っている。なんとなく国産キップの靴には国産クリームを使いたくなってしまう性分なので。

デリケートクリーム、レノベイタークリーム、クレム1925とソールコンディショナー(僕はシェットランドフォックスで買ったコロンブス製)、コバインキがあればメンテナンスは十分にできるかな。

と、頭ではわかっているのだけれどときどき新しいクリームが気になったりしちゃうのが困ったところです。



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サフィールノワールシリーズではレノベイタークリームで下地を作って、クレム1925で保護するみたいな使い方をしています。レノベイタークリームは万能選手だから一つあると結構重宝します。 (真ん中)




6 件のコメント:

  1. ブログ拝見し、レノベイター購入しました。このクリーム、1925同様、古いクリームやワックス落ちると感じてますが、使用されていかがでしょうか。ミンク配合のようですので、やはり塗り過ぎ注意ですかね。今度、ソールにもちょっといれてみます

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    1. コメントありがとうございます。

      レノベイタークリーム、いいですよね。
      私はどちらかというと茶系の靴に使うことが多いのですが、若干色落ちする気はしていました。
      おっしゃる通りミンクオイルが入っているので、比較的クリーム頻度が少ない靴とか水洗いした後の靴などに使うケースが多いです。薄めに塗ってしっとりとした光り方をするのが好きです。

      ソールに塗る場合はやや滑りやすいと思うので、塗った後初めて履くときは固めの床よりもアスファルトのようなところで少し慣らしをすると良いかもしれません。以前クレム1925をソールに塗った靴で地下鉄に乗ろうとしたら駅で無駄に気を使う必要があったので。

      レノベイタークリームはあまりレポートなども無いようなので、しばらく使ってみて気づいたことなどを教えてもらえると嬉しいです。

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    2. ご返信ありがとうございました。やはり滑りますか。ヴィオラのソールクリームも買ってみたので今度使用感、比べてみたいなと考えておりますが、レノベイターのみは、ちょっと勇気いりますね。最近は、クレム黒のぎらつく感じが、どうも好きではなくなり無色や単なる乳化クリームを入れることが多くなってきました。好みも変わるものです。

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    3. コメントありがとうございます。

      専用のソールクリームは滑りが抑えられているような気はしています。その昔はソールもクリームを塗っている人が多かったようですが、いまは適材適所なものがあるのでせっかくなのでそちらを使うようにしています。

      私も最近は自然な感じのほうが好きになってきたのか、ブートブラックを薄塗してていねいにブラッシングで艶を整えるような感じが好きです。少し立体的にしたいときはアーティストパレットをつま先に少しだけ載せます。
      黒以外の靴はあまり光りすぎないほうが好みなので、この点やさしめな艶を出すレノベイタークリームが好きです。

      近々クリームネタも書いてみようかなと思っています。

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    4. クリームネタ、是非、お願い致します。シルバーラインとブートの比較など、あの記事のその後、など気になります。クレム黒は絶品なのだと思いますが、何かその革のもつ赴きが無くなるというか、ノッペリしちゃうというか、革の個性がスポイルする感じであまり使わなくなりました。

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    5. コメントありがとうございます。

      クレム1925は確かにそんな感じがします。艶感のあるやや硬めのクリームなので、少し多めに塗ると素材感よりつややかさが勝ってしまうので似てしまうのかなと。ピカピカ好みだといいのかもしれませんが、私もどちらかというと革のテクスチャー感を活かしたいと思う向きなので、使うときはごくごく少量を伸ばすようにしています。

      ショーンハイトでやっているブートブラックとM.モゥブレイの比較をまとめていたところなので、近々(?)仕上がるのではないかと思います。ある程度書き終わって見直すともう少し変えてみたくなったりして、なかなか公開までに至らないというのはありますが...

      これからもよろしくお願いします。

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