2019年3月18日月曜日

平成の逸品 その3「靴」 ~ RENDO R7702 ~

僕の平成における想いを綴る平成の逸品の最終回、今回は「靴」。


やはり平成を代表する靴といえばこれになる。

RENDO R7702 Punched Cap Toe Oxford」



平成の時代に登場し、この先もずっと輝きを失わないだろうと思われる靴。


団塊の世代に愛され、信頼されてきたリーガルの 2504NA2235NA は昭和という時代を色濃く反映した靴だと感じる。
いま思えば父が僕の今の年齢だったころは世の中がもっと活気づいていたこともあるのか、僕に比べるとずっと骨太な生き方をしていたと思う。

そうした時代を生き抜いた人に愛されてきた 2504NA やサントリーオールドやカミュは、今では価格だけを見ればミドルレンジ(下手したらローエンド扱い)かもしれないけれど、なんとなくごつさというか歴史の重み的なものを感じずにはいられない。


その団塊の世代の子どもたちにあたる団塊ジュニア世代が義務教育を終えるころ平成という時代が始まった。バブルははじけ、繊細かつ弱気な世の中に移っていったように感じる。
こうした時代にも力強い人がいて、いまではだれもが知る企業をスタートアップし、これまでの暗い印象から一転して華やかな世界観を持つようになったテックベンチャーでのスマートな仕事のスタイルが共感を集めるようになってきた。
ベンチャーの成功者は成金が多いので持つもの身に着けるものはより高価でファッショナブルなものとなり、インターネットの普及でそうした人たちのライフスタイルを身近に知るようになった。苦しい時代ではあったものの希望も同じくらいある時代。それが僕にとっての平成だった。

バブルという狂騒曲が終焉し、地に足をつけて地道に生きていくことの価値を見直すことになった平成においては、日本の独自進化すぎた高番手の打ち込み本数を競うソフトスーツよりもややしっかりした生地のクラシックスタイルが合っていた。そしてその足元もビットモカシンよりはクラシックな靴が似合うようになった。



RENDOの靴は英国調のクラシックをベースに、日本の素材を一部使って、ニッポンの感性でまとめ上げた実用靴。


価格は相対的な感覚的なものなので、4万円の靴を妥当を思う人もいれば、ありえないと思う人もいる。20万円の靴を妥当と思う人もいるし、ビスポークがあたりまえの人もいる。そもそもモノを売価と原価の差額といったモノサシだけで測るのは失礼だという意見もある。それらの意見があることを理解したうえでなお言いたい。RENDOの価格設定は極めて良心的で、僕にとっては過度に神経質にならずに履けて、でもここいちばんという時にも履きたい靴なのだ。コストパフォーマンスなどという言葉は似合わない。僕が買うことできて、履いていることがとても嬉しくなる靴だから。


平成に入ったばかりの頃はオールデンやらジョンロブやらがまだ10万円前後くらいに手に入り、ストール・マンテラッシやドゥカルも元気で、とにかく色気、作り、イメージともに海外勢の圧勝だったように思える。
国産も平和堂さんだとかが頑張っていたけれど、いわゆる「靴好き」というカテゴリーに属する人が見ていたのは海外であり、いまでいうとスーツの生地のように海外のブランドが上位、国産はあか抜けないけれど実用的、みたいな位置づけだった。並木通りにあったこのころの REGAL TOKYO は靴のセレクトショップっぽくって確かオールデンのVチップをダブルネームで売っていたり、アルフレッド・サージェントのOEMと思われる靴を自社ブランドで販売したりもしていた(記憶がややあいまいですが)。

平成も20年も過ぎると日本でもチャーチやらクロケットアンドジョーンズやらを履いている人が増えてきて、そうした海外の靴を好んでいた層に直球勝負をするブランドも登場してきた。


そのひとつが RENDO だった。


僕はたまたまAll Aboutの飯野さんの記事で RENDO を知り、単純に文字通りに受け止めてよいものだという先入観を持って購入した。

ところが最初のうちはかかとは痛いわ小指はマメできるわで、フィッティングはそれほどでもないどころかただの痛い靴だった。
よく RENDO の靴を最初に履いた瞬間にピッタリ感を感じるという意見を目にするけれど、そうして購入した人がその後3か月くらいどうだったのかぜひ聞いてみたい。

僕はもうだめかと何度か思うものの、RENDO 設立のストーリーに共感していたこともあるし、痛い靴でもそのうちフィットが良くなるという教科書的な話も頭の片隅にあるし、そもそもせっかく買った靴なので何とかしようと履いているうちに、驚くほどフィット感が良くなった。
いまはややかかとのタイト感がやや失われている気がするものの、総じてフィット感は良く、履いていて気持ちいい。

長時間歩くような場合は 01DRCD に軍配が上がるけれど、オフィス履きでちょっと外出するくらいならこれほど快適な靴はない、という印象。



僕が RENDO に惹かれたところは、素材がどこ産だとかデザインがどうだとかではなくて、単純にビジネスパーソン(に限らないが)にとって良い靴とは何かを突き詰めていったときの一つの答えがここにあるような気がしたから。
僕がビジネスで履きたいと思っていた靴を具現化したものと出会ったような気がした。
外国コンプレックスなどはなく、単純に「いい靴とは何だろうか」を考えていったらできました、という雰囲気がものすごく素敵に感じた。


アッパーに使われている国産キップは少なくても僕が購入したものはしわが大味に入るなど見た目の良さではおフランスのカーフにはかなわない。



だけど、ソールもヒールも丈夫でほつれてくるようなこともなく、国産キップもいつの間にか柔らかくしなやかになった。厚手に感じるけれど柔らかい。
つくりに関しては製造を請け負っているといわれるセントラルの実力がとてつもないのだろうけれど、きっちりと企画して品質管理して自らのブランドで売っているのは RENDO なのだから、ここは RENDO を評価すべきだと僕は思う。



昭和の時代に生まれた 2504NA が平成になっても全く色あせないのと同じように、RENDO R7702も次の時代、そのまた次の時代になっても決して色あせずに、むしろ輝きが増すだろう。

作り手としてはもう少しお洒落な領域に位置付けているとは思うものの、僕にはとてもビジネス向けの靴に思える。こういう靴がこのニッポンで企画され、Made in Jpaan であることは日本人である僕にとってはこのうえなく嬉しい。

もちろん、RENDO の靴は実用靴である一方で、ちょっとした色気もある。伊達男な色気ではなくて、理系男子的な理詰めな恰好良さ。



RENDO は頑張ってお金をためて買うに値する靴。
だからこそ、初回は絶対に店頭でサイズ合わせをして履いてほしい。リピーターであれば通販を使うのもありかなと思うけれど、初めの一足は店頭でじっくりと履き比べ、見比べて欲しい。RENDO の良さを感じる最初の一歩がそこにある。




6 件のコメント:

  1. 突然のコメント、失礼します。
    今回の記事とは、関係がありませんが、もし、よろしければ、ご意見いただけると助かります。40代になり、リーガル二足、その他の靴一足で、仕事で履いています。今まで、特にこだわりもなく、選んでいました。三足とも黒色ですので、茶色を買おうかなと検討中で、このブログに行き着きました。01drcdに惹かれて、買おうかなと検討していて、近くのリーガル取り扱いの靴屋に行くと、革底はあまり薦めない、買う人もいないし、取り扱ってないと言われました。地方にすんでいるので、01drcdを買うなら、ネットになりそうです。ネットで買うか、その店にあった型落ちで30%オフになってたストレートチップ、定価28000位、革がすごい柔らかくて掃きやすかった(品番不明)のを買おうか、迷ってます。独り言に近いですが、ご意見もらえるとうれしいです。

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    1. コメントありがとうございます。

      革靴はお手入れ次第で何年も使えるものなので、可能であれば県庁所在地などにあるREGAL SHOESで01DRCDの試し履きをしてみることをお勧めします。
      地方によっては県に一店舗というところもあり、なかなかお店へのアクセスが難しいなんてこともありますが、やはり履き比べができてある程度革靴に理解のある店員さんがいるお店で試し履きするのがいいかなと。

      それが難しいようであれば、次の策として返品交換ができるところで通販したほうが良いと思います。そして最低でもふたつのサイズは試してほしいです。
      一つは自分がこれだと思っているサイズ。もうひとつはその一つ下のサイズです。小さいほうでも緩さを感じなければ小さいほうがフィットです。ひょっとすると小さいほうでもまだ緩いかもしれないので、窮屈さを感じないようであればさらにその一つ下のサイズくらいまでは試してみたいです。全長が足りていれば、横幅はある程度履きこむことでフィットします。サイズについてはあまり妥協をしないのが、疲れなくて長持ちする靴を選ぶ秘訣です。

      近くのお店で見かけた型落ち品も直感で気に入った場合は買ってしまうのもひとつの手ですが、リーガルはときどき商品入れ替えるのでそのたびにセールが入ることもあり、もともと欲しかった靴以外は「安いから」という理由を優先させて買うほどでもないかなと思っています。

      履き心地や雰囲気などが気に入って運命を感じたのであればお店の靴。そこまででなければ01DRCDにトライという感じでしょうか。
      おそらくどちらを選ばれても満足されると思います。

      革底の靴はややお手入れをていねいにする必要がありますので、そうした時間を持てるかどうか(気持ちも含めて)や、雨に降られた時の心のダメージ度合いなどを含めてお店の靴にするか01DRCDにするかを考えてみてもよいかもしれません。
      革底はいろいろとメンドクサイ部分があるものの、革底でしか体験できない感覚もあります。もし今回はお店の靴にしたとしても将来的な候補に入れておいてみてください。

      お気に入りの一足がクロークに加わるといいですね。

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  2. ホント、独り言のようなコメントに丁寧な回答ありがとうございます。返品可能のネットは、思い付かなかったです。せっかく、レザーソールに興味がわいたので、01drcdを買いたいと思います。元々、革が比較的好きで、財布もセミオーダーしたコードバンを10年使っており、長く大事に使うのが好きなので、01drcdをネットで思いきって買ってみます!返事ありがとうございました‼

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    1. 財布を10年使い続けるというのはすごいです。恐れ入ります。
      革製品は新品時も悪くはないのですが、やはりある程度使いこまれてからが本領発揮な気がします。

      01DRCDはネットでも評判良く、履き心地や素材感といったトータルバランスに優れている稀有な靴ですのでお気に入りになると思います。
      最初のうちはあまり雨の日には履かない、逆に数カ月経って革にクリームが馴染んでからは極度に天気を気にしないで履ける靴なのかなと。

      レザーソールの靴は雨に濡れるとソールが情けない感じになるものの、風通しの良いところで乾かして、たまにソールコンディショナー(ソール用のクリーム)を塗ってあげると長持ちします。
      レザーソールでしか味わうことができない感覚も、またクセになるかもしれません。

      早く手に入れたい気持ちが高まってしまうとサイズ選びに妥協をしがちですが、長く使うためにも最初のサイズ選びは慎重に、しつこくされることをお勧めします。

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  3. 『革質イマイチなキップでもすごくいい』という感覚が私にはよく分かりませんでしたが、オリエンタルの靴を履いて全く同じように感じました。
    ラストと造りは本当に大切なんだと理解できましたので、次はRENDOにも手を出してみたいと思います。

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    1. コメントありがとうございます。

      見た目重視でいくと旧イルチアあたりはきめの細かさからくる艶感が何とも言えないのですが、仕事のうえでは足元ばかり見ているわけでもないですし、きちんとお手入れしていればわかる人には結局わかるので、素材自体はあまり気にならなくなりました。

      やっぱりラストが自分の足とあっているかどうかというのがあって、あとは雰囲気とかブランドストーリーとかに共感できたものを手に入れるというのが最近の自分には合っている気がしています。

      もっとも、2504NAあたりは後者の雰囲気重視そのものなので、必ずしも足に合うものばかりでは無いところもありますが...

      RENDOは日本のモノづくりの良さを感じることのできる素晴らしい靴です。ぜひ店頭で試し履きしてみてください。合うとよいですね。

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