2013年8月1日木曜日

Shetland Fox 3029SF INVERNESS

シェットランドフォックスが定番として位置づけているインバネス(Inverness)。


とはいえラインナップされているものはデザインがかなりアグレッシブなので、定番とはいえベーシックなモデルといえるのはこのストレートチップ(3029SF)くらいなんじゃ...
ホールカットのようなウィングチップだったり、羽根の部分だけ色違いのプレーントウだとか変わり種のデザインを用意しているのに、ストレートチップはブラックしか無い等、正直商品開発の人は何を考えて定番としているのか謎なモデルといえる。

丸めのトウ、小さめのかかと、低いけれどあまりそう見えない甲周り。ややロングノーズ。

アッパー素材は仏アノネイ社のボカルー。
キメの細かさとか、手入れしてる時の楽しさとか、磨きこむにつれて鈍く光るところとか、価格を考えるとかなり満足度の高い靴。
ボカルーやベガノは購入時点だとやや艶やかさが足りなくて、どちらかと言うとさらっとした感じなのだけれど、手入れを繰り返すと恐ろしいほどに底光りしてくる。イルチアのラディカとは異なり、ムラ感は無くて極めてシンプルにブラック。クリームの乗りというか吸収が他の革よりも良くて、極めて薄く塗るとどこまで塗ったかわからなくなるくらい。

ボカルーはちょっとでも水が跳ねるとすぐにシミになる。濡れた直後は少し水ぶくれっぽくなって、その後乾いてくるに従いシミとして残る。この手のアニリンカーフの靴を購入するたびに、「今度はていねいに扱おう」と思うのだけれど、帰宅後ていねいにブラッシングすればある程度目立たなくなることが多いし、きちんとメンテナンスすればほぼ元通りになることが多いのでしばらく経つと気にしなくなってしまう。(ズボラになる)

履き心地としてはグラスゴーが見た目以上にゆったりなのに対して、こちらは見た目よりタイト。
甲が低いので、シワが出にくく、また二の甲、三の甲ともに低めで薄めの足でも羽根が適度に開くため、紐でキリキリ締めることができる。購入時点ではキツ目に締めて左足で1cmくらい、右足で1.5cm弱開いていたが、20回くらい履いて左足で数ミリ、右足で5mmちょっとくらいに落ち着いた。
グラスゴーはボールジョイントのどちらかと言うと親指側で支持する感じが強いが、インバネスは親指側のフィット感はそのままに、小指側のフィット感をさらに強めた感じ。ロングノーズとはいえ靴の先端のカーブに入るところが早いのかもしれない。。
土踏まずの感じはグラスゴーとそれほど差がないと思う。
このラストはかかとがコンパクトなため、いい感じにかかとを掴む。このかかとのフィッティングを体験してしまうと、緩めのかかとでは物足りなくなる。

ソールの返りもよく、歩きやすい。ソールのデザインも新品状態ではややもするとゴム底っぽい見た目のグラスゴーよりインバネスのほうがクラシックな感じがする。(誰も見ないけど)
しかも、エジンバラやグラスゴーのソールより減りにくい。

シェットランドフォックスはフラッグシップのケンジントンがかなりマニアックな作りをしているため他の靴が目立たないのだけれど、このインバネスはボカルーを使いていねいな縫製。シンプルなグッドイヤーウェルトであればソールの張替えが何度かできるので、長く履くことができそうなのも安心感。目立たないけど、優等生な靴。
価格もほぼ4万円で、靴が好きな人から見たら高くない、というかむしろ安いくらい。靴はある程度履きこまないとその良さがわからないし、10年後どうなるかはまだわからないけれど、海外のスタンダードクラスの靴と比べても決して劣るところは無いのではないかと期待している。

返すがえすもなぜ定番ラストといっておきながら、セミブローグだとかプレーントウだとかの定番デザインが出てこないのだろう。(REGAL TOKYOの九分仕立てにあるようなプレーントウがあったら速攻で「買い」なのだが)この手の先端が丸い靴のほうがプレーントウとして使い勝手が良いと思う。Vフロントよりは5アイレット外羽根あたりが似合いそう。

インバネスはシェットランドフォックスのパターンオーダーでもモデル別2位と人気なモデルだし、とんがり靴が苦手な人にはベーシックなデザインはウケると思うけどなぁ。
インバネスのようなモデルはチャーチのコンサルやディプロマットのような長く愛されるモデルになってほしい。この辺りのポジションは比較的新しいアーバインがその役割を担うのか?アーバインは甲が緩すぎるのが欠点。

シューツリーは靴のサイズ6に対して、ディプロマットヨーロピアンの39を入れている。
購入当初はバネが完全に閉じるくらいキツキツだったが、今だと5mmから1cmくらいの隙間がある。
バネ式ツリーは常にテンションが掛かった状態になるので、長期に(1ヶ月以上)入れたままだとトウスプリングがなくなってしまうので、ネジ式がいいらしいと日比谷のシェットランドフォックスでは言っていた。プロが言うんだからそうなのだろうけれど、ただネジ式でもそれなりにパンパンにセッティングしたらやっぱり伸びた状態で固定されるんじゃないかなと素人的には思ったりもする。ま、テンションが掛かったままなのと、一定以上は伸びないのとでは確かに長期保管に差が出るかもしれない。

メンテナンスは日々はブラッシングだけ。だいたい3、4回履いたら薄めにサフィールノワールクレム1925を塗り、何回に一回かM.モゥブレイのデリケートクリームを薄く塗る(気休め)。10回も繰り返せば見た目もしなやかになってきて、ソールも馴染んできてかかとが抜けなくなる。

シェットランドフォックスで最初のストレートチップを買うならば、インバネスの3029SFがイチオシ。デザインは奇をてらったものではないし、アッパーも手入れ次第でどんどん成長する。リペアも全国のリーガルシューズで受け付けてくれるしで、安心してガンガン履ける。ブラックはシミになるといっても目立ちにくいので雨に降られてもきちんとアフターケアすれば良いのだから。

0 件のコメント:

コメントを投稿