2025年8月1日金曜日

New Balance CM996

クラシックなスニーカーではひとつの定番、ニューバランスCM996。


CM996はニューバランスの直営店のほか、日本全国に店舗があるABCマートさんからセレクトショップまで、購入できるところがたくさんあり入手が容易です。世界全体でみるとニューバランスの本場米国では996は販売されておらず、英国やフランスではMade in USAモデルだけが取り扱われ、アジアでも大きな市場である中国大陸では扱われず、日本と韓国くらいでしか売られていないリージョナルモデルです。

同じアジア製造でもグローバルモデルといえるML574とはだいぶ違いますね。大谷翔平選手がニューバランスの574をスパイクにしちゃったのは、単に574がグローバルの誰もが知るスタンダードモデルだったからなんでしょう。


一方で、このニッポンではどちらかというとML574と比べても力を入れて販売されているのがこのCM996です。

日本ではすでにスニーカーとして一定のポジションを確立したニューバランス、ML373とかML565とか公式サイトに販売されていないモデルも量販店向けに流通しています。いまやいたるところで「N」マークの靴が売られていて、全国のイオンとか靴流通センターでも価格を抑えたラインが売られています。実際に街中で意識してみるとML373は結構履いている人多いです。

ニューバランスの1万円から2万円の主力ラインはスニーカーの一つの基準点のような作りです。これだけのものを作れるのに、なぜか数千円しか安くないのにあらゆる良さをなくしてしまったモデルがまた量産されているのも不思議なメーカーです。

安物カラコン然り、外しちゃいけないポイントを外した低価格品ってのはどうなんでしょうね。売る側の技術者倫理みたいなものの観点からどうなんでしょう。

そんな靴世界中にいっぱいあるし、歩けなくなる致命傷を与えるようなものでもないし、それなりに真面目に作っている部分はあるってことでしょうか。だとすると矯正靴という出自に対する矜持を期待するのは勝手な部外者のノスタルジーかな。



CM996に話を戻すと、この靴は2万円以下のファッションスニーカーの一つの答えのような気がします。

ランニングとかトレイルランとか特定の目的を持って靴を選ぶ場合を除いて、日常のタウンユースとして出かけるために履く靴、としたらここから引き算をせずにこれ以上を求めるとなかなかいい感じのものが見当たりません。

強いていうならこれに「防水」を求めるとCM996のゴアテックス版、ってことになりますが、ここまで行くともう普段使いの終着点とさえ思えてきます。


このCM996、元々は1988年に登場したランニングシューズM996のアジア製造版です。

M996は米国の工場で半ば手作りしているので値段が高くなってしまいます。製造原価が高いのに加えて関税もかかり、日本では3万円をゆうに超える金額です。グローバルではこちらの米国製996が売られています。

スニーカーは長年履き続けるということに重きを置いていないこともあり、こうなるといくらいい靴と言ってみたところで、国内のアシックスあたりには太刀打ちできません。CM996は関税と製造コストの安いアジア圏で製造している案外ニッチな市場向けモデルです。

オリジナルのM996と比べると、ソールの素材が少し変わっていたりと、まんまレプリカではなく、微妙にアップデートがされているようです。

CM996はランニングシューズを出自としたタウンシューズなので、いまではファッション性で履かれているケースがほとんどとはいえ、デザインだけで勝負をしているような靴ではない基礎力があるような感じです。


まずソールから。

ソールは平坦なロードで履かれることを前提としているため、ML574よりソール全体は薄く見られがちですが、実はそこそこかかとにはボリュームがあります。店頭で見た限りでは米国製のM996より、アジアCM996の方がソールが少し薄い気もしますし、実際に履いてみた感じではML574よりは明らかに薄く軽く感じます。


アウトソールのパターンは基本的には前後(ほとんど前方)に向かって進むことを前提にしているようです。屈曲性がよく、かつ前後に滑りが少ないことを意識したパターンです。


あまり意識したことないですが、ソールの形状的には横滑りには弱いように見えます。タウンユースだと濡れたタイルなんてシチュエーションもあるので、前後全振りなソールは微妙に影響が出そうですがいまのところそのような経験をしたことがありません。凹凸が少ないソールがゆえに水はけがよいのでしょうか。

全てが平行なソールパターンなので屈曲性は良いです。細かく筋が入っていることもあって時計のベルトみたいな感じで足の屈曲に合わせてロールしやすい形状です。

全体的なラストは足なりに内側に振られていますが、ソールパターンは進行方向に垂直になっています。この辺りの割り切りはさすがランニングシューズ。最近ではここまで露骨に並行なのはNIKEの一部モデルくらいでしょうか。

カーボンプレートの登場以降厚底化する以前の考え方であれば、ソールは薄いほうが軽いけどクッション性がなくなる。ランニングの際に母指球から親指に力が抜けていくときには進行方向に向けて靴が垂直な状態になっているので、開発は40年近く前の時点での技術と考えたとき、少し厚めのソールにしても屈曲性が保たれるCM996のソールパターンは理にかなっているように思えます。


ミッドソールは日本の技術も入っているC-CAP。日本の月星化成(いまのムーンスター)がかかわっているとかいないとか。というか、ムーンスターはニューバランスの日本法人設立に大きくかかわっていますし、いまでも会社経営にかかわっている感もありますので、ある意味グループ内技術みたいなものかもしれません。

何となくENCAPよりへたりが早い気がしないでもないですが、トレイルラン向けの靴と比べているのでそう感じるだけかもしれません。

インソールはあまり特長が書かれていることがないですね。ニューバランスからはより高性能なインソールが販売されています。そのレベルのものに取り換えるということであれば初めから最新の技術を使ったランニングシューズを買えばよいので、もともと入っているもので日常使いは十分かと。

傾斜はそれほどでもなく、靴の前半部でつかむような印象のML574と比べると、もう少し足の後ろ側を使う靴です。脛を少しつかむような形になっていることもあり、サイズを合わせてはくと足首周りが安定します。

舗装が行き届いた日本の都市部で履くならCM996のほうが合う人が多そうです。


外見はメッシュとスエードのコンビ。


革の部分は本革を採用しており、なんとなく丈夫そう。人工皮革だとどうしても加水分解したり破けたりがあるので、ボールを蹴ったりなどのシーンも考えると本革が使われているのはいいですね。加水分解しないソールと合わせてそれなりに長持ちするかもしれません。

実際に、これまでも何足かこの手の靴を買っていますが、ニューバランスの本革採用モデルは、たいていは革の部分よりも履き口のビニール系の部分からボロボロになります。

親指側の革は少し大きめに取られており、指先側から穴が開くようなことはないでしょう。


ラストはSL-1ラストと書かれており、ニューバランスの中ではスリムなラストといわれています。とはいえ、この靴もう何十年も前に欧米人向けに開発されているので、甲高幅広が過去の記憶となったいまの日本人にとっては、それほど狭さを感じることはない人も多いかと思います。私も少し幅はタイトに感じることがあるものの、しばらく履いていると(やや形が崩れているような気もしつつ)あまり気にならなくなります。逆に2Eなんてモデルがあったらゆるゆるではないでしょうか。


ランニングシューズだからか、かかとの部分とNマークが反射板になっています。タウンユースとしては少し薄暗いところを歩くとき、車やバイクと事故を起こす可能性が減るのでいいですね。この辺りはトレイルラン用を出自とするML574と異なる設計思想です。



冒頭でも書きましたが、このCM996、北米やヨーロッパ、オセアニアでは販売されていません。Made in USAモデルのM996が扱われている国は多いですが、作っているはずの米国ではM996自体が販売されていません。

グローバルもであるであるML574は世界中のニューバランスショップで売られています。国内ではML574と双璧の人気ともいえるCM996が、海外では全く売られていないのは意外です。ほとんどが日本と韓国向けに作られているような靴なのに、なぜかウイズがDなのも不思議です。

日本国内には565というイオン系で売られているニッチなモデルがあり、別に574か996でいいんじゃない、と思っていましたが、このCM996もグローバルで見ると結構ニッチなモデルだったんですね。


円安をはじめ様々な理由から価格が上昇していても、十分価値ある靴ではないでしょうか。確かに Made in USA モデルはいいのでしょうけれど、このCM996も十分な靴に思えます。ある意味ローカルモデルなのにカラーバリエーションも豊富なのは、それだけ日本ではニューバランスが売れているということの裏返しです。

人と被ることも多いですが、革靴の世界であればみんな同じような靴履いているし、本来のドレスコード的には堅めのビジネスシーンだとよほど靴に興味がない人でなければ区別できない程度の違いしかありません。

靴が被っても、トータルコーディネイトが異なればその印象は全く別モノでしょうから、変に意識せず、定番だからゆえの安心感を買うというのもありです。


実はこれまでCM996はちょっと避けていました。

スニーカーはそんなにいらないし、なんとなく米国製か英国製に惹かれるし、どちらかというと公園で遊ぶ用の靴が欲しかったのでランニング用よりはもうちょっと汎用的な靴のほうが良かったしということで購入する理由がありませんでした。

あまりにもメジャーすぎる感じがするというのも一つの理由だったかもしれません。

ここにきて、仕事上でスニーカーのほうが都合がよいことがあり、そんな中で選ぼうとすると、逆にCM996があっている気がしました。

運動比率が少なくて、むしろタウンユースで普段使いということになると、ML574よりCM996に軍配が上がります。なにせ歩きやすいしML574よりは滑らない。



ML574に比べると少しだけ値段が高いのも、加水分解しにくい素材が使われていることで耐久性が伸びればイーブンではないでしょうか。

湿度が高くて、路面は舗装されていることが多くなったニッポンではCM996が必要だったんですね。

ある意味、ニッポンらしい靴なのかもしれません。



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2025年7月23日水曜日

REGAL 2177N

 ローファーの定番、リーガル2177N


典型的なビーフロール型のコインローファー。
いわゆるローファーのよくあるデザインのひとつ。

ローファー、特にコインローファーは日本では中高生が履く靴という印象を持っている人も多いけれど、かのマイケル・ジャクソンはG.H.Bassのローファー履いてステージで激しいダンスをしていたという話が良く取り上げられるように、アメリカの一つのシンボルであるともいえる。


リーガルの企業サイトによれば2177は1971(昭和46)年に発売開始されたそうな。2025年現在で54年。そう思うと歴史が長いのか短いのか微妙。私とあんまり変わらないくらい。

デザインは発売当初から変わっていないとのこと。製造場所が変わったり調達関連で超マイナーアップデートくらいはあるとしても、実態として古き良き時代から現代まで一貫して生き残っているモデル。それだけでもすごい。当時からグッドイヤーウェルテッドで作られていることが読み解ける。

ローファーを含む紐なし靴はスリッポン(Slip-On)と呼ばれる。寝るとき以外は靴を脱がない欧米文化の中では、日本人の感覚でいうならそれこそスリッパ(Slipper)のような位置づけとして登場したようなことが言われている。日本人の感覚ではわかりづらいけれど、欧米人が靴下を見せるのは日本人が下着を見せるみたいな感覚だそうなんで、家の中に入ったからといっても靴はやっぱり必要で、でも少しリラックスした靴が良いよね、といったニーズがある。

それが次第に(マーケティングもあるだろうけど)室外靴としての地位を確立して、これまたアメリカの一つの象徴みたいな位置づけまで上り詰めた。ローファーを履いて大人になった東海岸の学生たちは、今度はそれをビジネスシーンに持ち込もうとする。それがタッセルローファーの始まりとかなんとか。

で、アメリカのブランドと提携して始まったリーガル(当時は日本製靴株式会社)は当然ながらアメリカでの定番がラインナップの主力となるわけで、VANのローファーを経てこの2177Nが登場する、そんな流れかな。


ローファーはマッケイ製法のような返りの良い軽めな製法が採用されることが多いなか、2177Nはリーガル得意のグッドイヤーウェルテッド製法。
紐がない靴をグッドイヤーウェルテッドという堅めになる製法で作っているので、当初は返りが悪く、足になじむまでに時間がかかる。

リーガルの商品紹介でも「履き始めは堅め」と書いてあるように、まっとうなサイズ合わせをした場合は、履きなれるまでに相当な覚悟が必要な靴。いわゆる昔ながらの靴であり、現代に多い当初からの履きやすさを求める靴とは全く設計思想が異なる。

よく言えばなじめばとても丈夫で長持ちする靴でもあり、悪く言えばそれ以前に脱落者を大きく生み出す靴ともいえる。グッドイヤーはリペア面では優位とはいえ、いやこれ丈夫だしリペアまでいきませんって。


アッパー素材は2504NAと同じようなガラス仕上げの革。肉厚なレザーを使い、ライニングがない作り。リーガルはこの手のガラスレザーの定番が多い。発売当初から同じデザインの靴ではあるけれど、タンナーが手に入れることのできる原皮の質は変わっているといわれているし、仕上げの段階で使うことができる薬品も変わってきていると思われる。その中で同じような品質を変わらず提供し続けるって結構大変なことなのではないだろうか。

ガラスレザーは表面に樹脂コーティングをしているので、雨にも比較的強く、日常のお手入れにもそれほど気を使わなくてもきれいな状態を維持できる。そこそこ履きこんで、クリームでお手入れするとなかなかの光沢も出る便利な素材。一般的にはメンテナンスに気を使わないようなことが強調されるけれど、鞣して仕上げる過程においては職人の手触りによる仕上がり感の確認が重要という話を聞くに、やはり革としての「何か」がある。


きれいに保ちやすいこととお手入れをしないでもよいことは別。もしお手入れをしなくてもよいという話をする人がいたら、そこには素材そのものに対しての感謝も、自然界のばらつきを相手に一定の高い品質を保つために精魂込めているタンナーの職人さんにも、それらをもとに履きやすさと丈夫さの両立をする靴の形を作り出した靴職人の方にもまるで敬意がない。靴をお手入れするかどうかを決めるのは素材ではなくて、あくまでの態度の問題ではないかと思う。


ソールはリーガル定番ラインで使われているフラットなゴム底。リーガルの解説による滑りにくくクッション性も意識して作られたとある。実際にこのソールはフラットな見た目にも関わらずレザーソールに比べるとはるかに滑りにくい。

ソールの返りはレザーに負けるものの、サイズがあっていればかかとがしっかりついてくるので十分なしなやかさはある。


サドルサイドのビーフロールやかかとのキッカーバックなど、アメリカンスタイルを意識したデザイン。いわゆる拝みモカ縫いもシンプルな印象。これもあってキレイ目ファッションよりも少しカジュアル強めのスタイリングに合うと思う(と、センスのないといわれる私が言ってみる)

キッカーバックはもともとは靴を脱ぐときに他方の足で引っ掛けて手を使わないで脱ぐことができるためのものといわれている。ただ、そもそも紐のないローファーって脱ぐのそんなに大変かな。手でつかんで引っ張るだけで脱げるから、紐を扱わないでいいので手間が少ない。(それすら面倒というLoaferな靴?)
むしろこのキッカーバックがあることで、それこそアメリカンスタイルなデニム(ジーンズ)を合わせるとキッカーバックに裾のステッチが引っかかって歩きにくい。


全体的にはノーズも短く、サイズが小さい人であれば丸みが強調されて実サイズよりコンパクトな印象になる。


定番ラインとしては珍しく製造国はタイ。シンプルな作りでもあるし、価格はそれなりに抑えて定番を維持したいしでの選択かな。おそらくは関税も比較的安いゾーンにあると思われる。

みなさんおなじみ矢野経済研究所さんのレポートによると、紳士靴市場は2025年度予測で1,361億円。コロナ前の2018年度は1,833億円あったので、コロナ禍から戻しつつあるとは言え4分の3。日本では革靴の売上が減りつつある中で、本格靴を作ることができる靴職人さんも減少しているということは予想できる。最近では円安だから日本の丁寧な靴職人さんが作った靴を海外で販売するなんていうこともできそうだけど、日本発だとこれまた関税がかかったりでうまくもいかなそう。




リーガルの歴史が長めな靴は、丈夫であるがゆえになじむのに相当な時間を要する。

購入して半年くらいわりと集中して履いて、延べ50日分くらいは履いてやっと終日履けるようになった。私の体重が軽いこともあるのか、本来多少沈み込むはずのインソールにほとんどフットプリントがつかず、沈んでいる気配がない。ローファーだからあまり靴の内寸が変わらないようになっているのだろうか。相変わらずかかとの外側が痛い気がして、少しサイズがタイトな感じは続いている。

リーガルの公式サイトでは「疲れにくい」と書いてあるけれど、それ以前に「痛い」を通り越すのが大変。次第に革が柔らかくなってきて、そうなると終日履くことに問題はなくなるものの、「履き心地」にフォーカスするような靴でもないと思うので、リーガルの中の人がいうほどの期待感を持つのも危険だなぁという気がしている。

発売当時は当初は固くてもそのうちなじんで、その分丈夫みたいな靴がいい靴の一つの指標だったのかもしれないけれど、その常識がなくなった現代では誤解を招きやすい靴。


ローファーに限らず本格的な革靴はある程度の靴の変形を想定して選ぶ必要もあって、最初はややきつめを選ぶのがセオリーといわれている。だからきちんとしたフィッティングができるお店で相談しながら選ぶ靴になる。サイズを無視して、フィッティングの印象だけで買うほうがいい。

紐がないローファーはその中でもかなりフィッティングがシビア。私は最寄りのリーガルシューズで試し履きして購入。2504NAと同サイズを中心に前後ハーフずつを出してもらい、ふだんやや緩いと思っている2504NAと同じサイズを最初に履いたところ「足がはいらん!なにこれタイト!」という印象だったのでその下のサイズは止めてハーフ上と比較して比べてみた。

ハーフサイズアップだとふだんの履き心地に近い気はするものの、甲の外側にゆとりがありすぎる感じがした。履きなれるにつれ以前のパカパカになりそうな予感がしたため、結構きつめに感じた2504NA同サイズをチョイス。まさか同じサイズ表記でも履いた感じがここまで違うとは、という印象で店を後にした。

紐がなくてアジャストできないがゆえに、ちょっとしたきつい緩いがダイレクトに一日中伝わってくる。

これまで自分で履いた限りだと、最初からいい感じで継続していい感じが継続するローファー(ケンジントン)もあれば、この2177Nのように文字どおり最初は血だらけになるくらい痛いけれど、1年くらいたってやっと履けるようになった靴もある。ただそれでも「履きやすい」という感覚はまだないので、となるとなじむまでにどれだけ履き続ける靴なんだ、という印象。

一足を履きつぶすみたいな履き方であればもう少し早くなじみ、丈夫であるがゆえにそのいい感じの状態が続くといったところだろうか。


ローファーを選ぶ際には「きつめを」というのはある意味あっていると思う。間違いなく多少は緩くなり、それを紐で修正できないので。ただ、この「きつめ」という言葉が独り歩きして間違った解釈でとらわれていることが多い気がする。
(いきすぎて「きつめ」ではなく「小さめ」と書かれることもある)

「きつめ=サイズダウン」ではない。

紐に頼らず靴の構造だけで足を支えるローファーと紐を使って調整が可能なオクスフォードシューズでは靴を作るためのラストの設計思想がそもそも異なっている。

同じリーガルの定番モデルであるローファー2177Nと、プレーントウの2504NAとでは同じサイズでも明らかに履き心地が異なる。2177Nは2504NAと比べてかなり甲を抑え、かかともややタイト目な作りになっている。2504NAだと、仮に紐を結ばないと全長も少し余裕がある感じがする。一方の2177Nはそのゆとりを感じるサイズと同じサイズ表記のものを選んでも、靴ベラなしには絶対に履けないくらい全長全幅ともにタイト。

これまで2504NAを2足、2177Nも2足買って履いているので、この同一サイズだけど履いた感じが全く違うというのは個体差ではなくモデル差だと思っている。2504NAだと少し緩めに感じるから、ローファーということもありハーフサイズ落そうなんて感じでネットで買ってしまうととんでもないことになりそう。

よく「ローファーはハーフサイズ落せ」という意見を目にするけれど、これは「きつめにする」という意味を誤解している。ローファーは専用のラストで作られているので、たいていはオクスフォードシューズと比べると同サイズでも「きつめ」に感じるはずである。

むしろ、同サイズできついからといってサイズアップするな、ローファーなら紐靴と同サイズならきつめになるのだからそれを正解と思いなさい、というアドバイスではないだろうか。

こればかりは実際に履いてみないとわからない。2177Nは2504NAと同サイズだと明らかにタイトに感じる。むしろ同じ感じのサイズ感はローファー側をハーフ上げたくらいかと。シェットランドフォックスのケンジントンのように同一ラストで紐靴とスリッポンを作っている場合については同じサイズだと二の甲からつま先まではそれほど変わらない印象なので、やはり2177Nは専用のラストが使われているか、甲の部分を抑えるために相当きつめにサドル部分を設計している。

ローファーをハーフ落として選択するということは普段の靴のサイズがよほど大きいか、緩めのフィッティングに慣れてしまっているのではないかと。内周のためだけにハーフサイズ落してしまうと全長が変わるので、小指やかかとになんらかのダメージが出る気がする。このあたりは個人の足の形にもよるだろうから、やっぱりローファーはフィッティングしてなんぼであるといえる。

この靴を履いてみると、2177Nを起点にラストを考えた場合2504NAや2235NAがゴツ目の足を想定して大きめに作られているという話は本当にそうなのか、という気さえしてくる。私は足は結構薄目なほうだけれど、それでも購入当初はサドルの部分がかなりタイトで、甲側にマメができそうなくらい痛めつけられた。かかとについては今も外側のあたりが気になっている。

ゴツ目の足だとむしろ入らないか、入ったとしても甲の血管切れてしまうんではないかと思うほど、かなりタイトな作りに感じる。フィッティングのためにサイズを落として履くような靴ではなく、むしろ上げて履く人が出てきてもおかしくない。リーガルが日本人はすぐ緩めの靴を履きたがることを見越して、同一サイズでかなりタイトに仕上げているのではないかと思うくらい。

リーガルの靴は大量生産を前提としているので、ある程度平均的かつ許容度が高めなラスト設計をしているはず。その前提でこれだけフィット感が違うのだから、やっぱりローファーはきちんと履いてみるということが大切。


お手入れはあまり気にせずブートブラックを使っている。ふだんの簡単なメンテナンスにはニュートラルを使い、5回に1回くらいブラックを使う感じ。毎回ブラックでないのはそこまで色を載せてもガラスレザーには色がつかないし、逆に合わせるパンツの裾に色が移りやすいという理由。でもニュートラルだけだとしわの部分やモカの折れ目などが目立つので気休めに。

お手入れはやや回数多めに。この手のローファーは汚れが目立ったりすると急に学生の指定靴っぽさが強くなるので、ピカピカにメンテナンスされているほうがいい。


2177Nは日本のローファーの一つの定番。

高校生が履くには少し値段が高いという気もするけど、一度は履いたことがあるなんて人は結構いるのではないだろうか。

ちなみに私は高校時代はスニーカーオンリーだったので、革靴に目覚めるのは大学生になってからだった。最初に買った靴は2236NAだった。

若気の至りで20代前半のころにJJ17という当時の若者がどうしてこうなったのかというローファーを買ったのだけれど、明らかにサイズミスをして結局履き続けることができずに手放したことがある。当時はスニーカーサイズに比べて大幅に小さなサイズになることが信じられなくて、お店の人の意見もあまり聞かずに購入してしまい、毎日パカパカ履いていた。

この印象を引きずっていたのでローファーは自分に合わない靴という決めつけと、ローファーはビジネスシーンには合わないという教科書による余計な知識があって、毎日スーツスタイルで働く自分としては目を向けることがなくなっていた。

40近くなり(いまさらではあるけど)やっと靴の適正サイズ感が持てるようになってきたころ、やっとローファーに手を出した。当時、シェットランドフォックスのケンジントンの履きやすさに感心していたころ、同ラストのローファーをみて、何となくローファー履いてみたいという気持ちが沸き起こってきた。試着したところこれがまた足にピッタリであることに気をよくして、同じラストで2足も買ってしまう。この体験が自分のローファーイメージを変えることになり、1週回って2177Nにも手を出すことになる。


ローファーは大人が自分の選択で履く靴で、結構履き初めは大変なこともあって、実店舗でじっくりフィッティングしながら買う靴。靴のサイズ感について購入者側もわかっていたほうがいいし、紐がないがゆえに靴全体で足を締め付ける履き方になる。歩き方も微妙に紐靴と違ってくる。若い人は無理して履かなくてもいいデザインの靴だと思う。

このデザインの靴を指定している学校の先生方に聞きたい。なぜこのデザインが必要なのか。紐がないことによって紐が巻き込まれてけがをする事故を減らせるというメリットくらいはありそうなものの、ローファーを指定するメリットが思い浮かばない。

ローファーをまっとうな靴屋さんで買ったことがある人ならば気づいているはず。きちんとしたフィッティングをして選んだとしても、それなりの伝統的な作り方で作られている革靴は履き始めの日から終日歩き回れるほど足にやさしくない。履き始めはかなり修行が必要なので、終日履けるようになるまでかなりの期間を要するということを。

もちろんこれはローファーだけのことではなくて、作りがしっかりしている革靴はたいてい最初は痛いものだし、逆に作りによって柔らかくもできるので全部が全部最初にカチコチなものばかりでもない。ただ、この紐のない構造はどうしても体に負荷がかかる。アジャストするパーツがないので、緩んだら最後、足が緩んだ靴を抑えるために必要以上の負荷を歩くたびにかけ続けてしまう。

外反母趾、ハンマートウ、靴ずれによる障害、腰痛...

靴はそういうものだとして気づかず体を痛め続けてしまう。

学校の先生方(というより理事とか経営の人たち)には声を大にして言いたい。外部が知ることがない明確な理由がないのであれば、ローファー指定を本気で考え直して欲しいと。
将来あるこどもたちが、このローファーで痛いのは嫌だから大きめを買う、ということがどれだけ健康を損ねているのか。

体のことに詳しい体育の先生とか、歴史から学ぶことが身についている社会の先生とか、合理的なデータを集めて分析することを教えている数学の先生とか、そもそも怪我を目の当たりにしている保健の先生とか。みなさんローファーの弊害に気づかないのだろうか。

将来外反母趾やハンマートウで苦しむをことになる児童・生徒をひとりでも減らすことができるのは現場の先生や学校運営に決裁権を持つみなさんにかかっている。


ここまで書くと、ローファーが体に悪い靴みたいになってしまっているけれど、適切なサイズを選んで、きちんとなじませる時間をとって、お手入れしながら履く分には問題ない靴なのだから、その選択する自由と時間の自由ができたときからでも遅くはなくて、若いうちにはもう少し足に対して優しい靴を履いてもらいたいと心から思う。

若い人が化粧をしないでもいい(しないほうがいい)理由と同じで、若いころの体へのダメージはのちのちの人生に大きな影響を与える。どうしてもローファーなら、本格ローファーは半年かけて休日に十分なじませて、最初の一足はスニーカータイプの構造のものにしましょうよ。ただ、ここまでするなら初めから足にやさしい靴履けばいいんじゃないかと...


2177Nはあまりにも定番的なデザインであるがゆえに恥ずかしさを感じてしまう人もたくさんいると思う。それだけ日本ではローファーは一定のポジションを確立しているわけだ。革靴の価格がどんどん高くなって、ローファーも気軽に履く靴ではなくなってきている。


ローファーはいろいろな意味で間違った場所で間違って履かれてしまっている靴。
50を過ぎたおっさんが格好良く履くのは難しいってことはわかっていても、なぜかときどき履いてみたくなる不思議な魅力がある靴。


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2024年12月15日日曜日

New Balance ML574

ニューバランスの中で世界で一番売れていると言われているモデル、ML574。


グローバルスタンダードともいえる定番で、文字通り世界中で広く売られています。


私、ふだんのスニーカーは主にニューバランスのM576を履いています。過去にはM1400を履いていたのですが、販売が終了してしまいました。


それからは同じSL-2ラストということでM576を履いています。休日も含めて革靴がほとんどであったため、スニーカーは1足を数年単位で買い替えるといったことをしていました。

カジュアル使いがメインのため、色はグレー。汚れが目立ちにくいという色合いもあり、公園でのちょっとしたボール遊びなんかもこれ一本でやっています。


今回はビジネスユースを目的として、ブラックのスニーカーを買い足しています。そのうちの1足がこのML574です。

M576が Made in UK であることに対して、ML574は同じコンセプトで製造をアジアの開発途上国で行うことにより原価を下げ、販売価格を抑えたモデルです。特に日本だと関税面から有利です。


公式サイトによれば、アッパー素材は「環境にやさしいエコな材料」である「ECOGREENスエード/メッシュ」です。メッシュ部分は本革と説明されています。


二層構造のミッドソールはニューバランスおなじみのENCAP。クッション性が高いといわれていて、確かに少しふかふかしたような履き心地です。ENCAPはニューバランスの標準ソール素材の一つであり、クラシック系の多くのモデルで採用されています。


ENCAPは軽さと耐久性を両立するためにEVAをポリウレタンで包んだ構造のため、このポリウレタンが加水分解しやすいと多くのサイトで書かれていますが、これまで私が履いたモデルでは特に問題になったことがありません。ソールより先に足首周りの内側がボロボロになります。

日本をはじめとした湿度の高い国々ではさすがに加水分解をするポリウレタンは厳しいとなったのか、アジアモデルのCM996はソールにポリウレタンを含まないC-CAPが採用されています。

おそらくは履き心地と性能(というかコスト?)的にはENCAPがいいのでしょうけど、店頭や倉庫での保管時に加水分解のリスクがあり、この手のクレーム対応するのもなんなので、アジア系モデルにはC-CAPを使っていると言ったところでしょうか。ややニッチな素材であるのか、CM996が欧米で売られていないことと何か関係があるのでしょうか。

個人的には少し硬めな履き心地ではありますが、接地感を感じるC-CAPもいいところあると思っていますが、膝や腰へのダメージ度合いなどいくつかの条件によってENCAPが有利なんでしょうね。もしくはC-CAPのライセンス料などが高いとか、別な理由があるかもしれません。

現在でも高級扱いとされ、ライセンス料などの価格転嫁がしやすいと思われるUSA/UKモデルにおいて、ENCAP採用がそれなりに多いので、第一優先はENCAPなのではなかろうかと思っています。


日本でおなじみCM996と比べると、ML574がトレイルランからオフロードを出自としていて、当初ロードランニングを目的にしていたCM996とはいちおうの差別化をしているフシも見受けられますが、タウンユースを目的として購入するほとんどの人が、この違いでどちらを買うか決めているケースはまずないでしょう。


ラストの違いを置いておくと、大きな違いとしてはやはりソール周りでしょうか。

日本だと996はC-CAP、574はENCAPとミッドソールの素材からその違いを説明されることがありますが、US製造モデルだと996はENCAPを採用しているので、ミッドソール素材ということよりも、あくまでもデザインコンセプトの違いだと思われます。

靴全体のコンセプトとしては元々はML574はオフロードでの安全性、安定性を意識した作りになっているはずです。

ソールのパターンだけでなく、硬さも違います。トレイルラン向けはソールが硬めになります。なので、街中で履くぶんにはCM996の方が屈曲性がよく感じられて履きやすいと思う人が多いはずです。購入のために多くのブログなどを参考にさせていただきましたが、たいていはCM996のほうが履き始めの評価が高かったです。それもそのはず、ソールが固くしっかりしていることも要求の一つであるトレイルラン出自の靴と、返りがよく軽い履き心地を要求されるランニングシューズを出自とする靴とでは、後者のほうが街中では歩きやすいに決まっています。(極端に言えば下駄と草鞋を比べるようなもの)

舗装されていない道を歩くために、ソールのパターンは前後の動きだけでなく、左右の動き(滑り)にも対応するような形状です。ML574の後継モデルのような位置づけもあるU574だと、このパターンの溝の深さがさらに大きくなっています。


この突起のせいか、雨の日のアーケードなど、もともと滑りやすい路面に対しては弱いです。もともとの靴のコンセプトがカバーする範囲からちょっとはみ出ているようなシーンではこの靴のマイナス側面が目立ちます。足腰が弱っている高齢者にはおすすめできません。

574の踵は大味の作りになっている分なのか、足首を包むように少し高めになっていてアキレス腱を掴むような感触が得られます。足首の保護という観点からしても少し包み込む形状のほうがオフロードでは有利と考えられます。

ニューバランスはブランドロゴを入れるためにぐるっと二の甲周りを大きな部材が一周しているので紐を締めた時の安定感があります。甲側を包み込んで、踵をスタビライザーで固めるという安定感重視の作りこみです。

踵の大きさについていうならば、ブーツなども踵が大きめですが、トレイルラン向けってほかの靴もこんな感じなのでしょうか。ニューバランスの利点であるスタビライザーの良さがちょっとだけ減衰してしまうのがもったいない。クロケットアンドジョーンズのオードリー3みたいにかかとが小さいモデルが出たら日本人にはいい感じになりそう。

シューレースの一番上から踵にかけての造形が、CM996はなだらかなカーブを描くのに対して、ML574はL字型になっていて、やや足との接地面積が多めになっています。

いまとなってはML574でトレイルランしようとする人はいないとは思うものの、公園で遊んだり、未舗装道路を散策するなんて時には適していると思います。


ラストはSL-2ラスト、SL-1がランニングを目的とした細めのシルエットであることに対して、ロードからトレイルランまでをカバーするために少し汎用性重視です。継続して単調なクッションを要求されるランニングと、ある程度の力のベクトルが一定ではなく臨機応変な対応が必要とされるトレイルランとの違いなのか、SL-1ラストよりは快適さと堅強性の両立を目指しているバランスがこのラストの最も売りなところです。

履いた感じ全体的にはSL-1ラストのCM996よりゆとりを感じるものの、やや前方へのドロップ気味な感じを受けますので、母指球から指先までを使ってしっかりと地面をつかむような感覚が得られます。

ラストの踵サイズに比べてアウトソールの底面積自体はそれほど大きくはなく、その割にはボールジョイントあたりは広めなことと併せて、やはり靴の前方での踏ん張り重視な印象です。


令和のいまとなっては、トレイルランにはもっと適した靴がたくさんあります。ML574をその目的をメインとして購入する人はいないと思います。もはやファッションとしてデザインが評価されているわけですから、そういう出自のストーリーをもとにした履きやすさ論ではなく、もっと気軽にこの靴は履くものだと思います。ニューバランスも、いまとなっては広くタウンユースも想定してのラインナップとして、オンオフ兼用のふだん使い靴として売っています。

ML574はカジュアル系OKな職場であればビジネスでも使いやすいです。ブラックのML574ではNロゴもブラック、ランニングシューズによくある反射板もないおとなしめのデザインです。購入時点の紐もややトーンが落ち着いたものとなっていて、全体的におとなしいデザインです。

全体的に少し丸っこいためカジュアル感が出がちですが、ボトムにややスリムなパンツを選択すれば全体としてはまとまるのではないでしょうか。(ただ、私はこの辺のセンスはあまりないですのでそんな気がするだけ)

機能面だけを優先して選ぶとどれもデコラティブなデザインに行き着いてしまい、私のセンスではまとめきれずビジネスでは浮いてしまう気がしてなりません。そんなわけで結局のところニューバランスでは定番と言われるML574かCM996が個人的には無難な選択として残ります。

校庭や公園など未舗装のところでちょっと遊ぶなんてケースもカバーできて、全国どこでも入手がしやすい。ミッドソールは高級モデルと同じだしスタビライザーなど機能面でもしっかりとしている。大量に出ていることもあり価格も1万円くらいとそれこそバランスが取れている靴だと思えます。グローバルモデルだからこその価格だと考えます。


スニーカーは一部のコレクターを除いては、履きつぶしてしまって買いなおすという運命になります。運動をするときに履くとなると靴が汚れたり傷ついたりすることは避けられませんし、私にとってはむしろそういうことをするときに必要とする靴です。

いつかは買い替えることになるからこそ、そのいつかの日にもまた手に入るだろうと思える安心感がこのML574にはあります。テクノロジーの進化の中で、でも変わらないモデルをニューバランスが作り続けるのは、こうした「変わらない安心感」もブランドイメージの一つとして大切に残しているからではないでしょうか。

革靴の世界にはリペア(修理)という考え方があって、ソールが減ったら直すことができます。なぜまた新しい靴を買わずにソールだけ直して履き続けるのかといえば、履き心地を重視するからです。ソールを変えてもいわゆるアッパー側はなじんだものを残すことで、少しでも見た目、履き心地を継続させようとします。修理してもどこか一部は「うん、やっぱりこれだよな」を感じることができるのです。

スニーカーの世界ではリペアができない(できるの?)分、全取り換えしつつも、以前の履き心地を再現するためには同じ素材、同じつくりと外観のモデルが必要なんです。そういった意味でニューバランスは「うん、やっぱりこれだよな」という人と靴の関係を大切にしているメーカーとして私の目に映ります。


ふだんはタウンユースがメインだけど、休日たまには舗装されていないところで走り回ったりボールを蹴ったりなんて時にはやっぱりこの靴になります。ニューバランスは574の良さを「汎用性」といっています。

そう、用途に分けて細かくスニーカーを分けるなんてことじゃなくて、とにかくいつもこれを履いていればいい。ML574が世界中で売れているからこそ得られる安心感。



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ML574は日本全国購入しやすい靴だと思います。

2024年11月3日日曜日

Onitsuka Tiger TIGER ALLY

黒のスニーカー、TIGER ALLY。

アシックスが擁するブランドの一つ、オニツカタイガー(Onitsuka Tiger)の定番です。


仕事で黒のスニーカーが何足か必要になったため、おとなしめで上品なデザインな気がして、以前から気になっていたタイガーアリーを購入しました。

仕事上では革靴がほとんどで、たまの休日にもローファーやカジュアル系革靴を履くことがほとんどになってしまったので、スニーカー系はこどもたちと公園で遊ぶ時くらいしか履かなくなっていました。

今回、仕事でかなり動き回ることがあり、スーツスタイルではなくカジュアルに寄せたこともあって、足元もこてこてなビジネスシューズからスニーカーに変えることにしました。


中学生の時にニューバランスに出会ってから40年近く、ニューバランスくらいしかまともなスニーカー履いたことがありません。ときどきファッション系ブランドに浮気したこともありましたが、特に他を比べることもなく、コレクションすることもなく、単に一足が履けなくなると次を買う、なんてサイクルです。もう当初の型番などは覚えていませんが、後半はM1400を買い替えながら、販売されなくなってからは同ラストと言われているM576を履き続けてきました。

ランニングどころかウォーキングもしませんし、そもそも月にせいぜい4回履けばいいほうなのでこれ一足で困ることもありません。

余談ですが、ニューバランスで言われるソールの加水分解についてはこれまで経験したことがありません。月数回しか履いていないけれど、公園で走り回ったりするので砂埃が乾燥させてくれたんでしょうか。


ちょっと調べてみると、スポーツシューズの技術革新はこの50年くらいで大きく進化していて、最新の技術を搭載した靴は足や膝、腰など体全体に優しいことはわかりました。

ソールはどんどん厚く広くなり、重厚感のあるデザインに進化(?)を遂げています。まるで生物の適応放散ごとく、いろいろな目的に合わせてデザインも多様化しています。

しかし、革靴のシンプルなデザインに慣れ親しんだ自分から見ると、そのデコラティブなデザインは飛躍しすぎる印象で、これからビジネスで履く靴として選ぼうとすると、どうもしっくり来ません。このあたりは主観的な問題であるとはいえ、シンプルイズザベストの引き算の哲学が好きな私には、ちょっと行き過ぎ感を感じずにはいられません。

また、実務上階段の上り下りなんてのは頻発するものの、走ったり跳んだりみたいな激しい運動をするわけではないので、ソールをはじめとした機能面への要求水準はそれほど高くもありません。

私がもう30年近く革靴中心だったためか、足や体全体もその前提で変化しているのだと思います。実際、レザーソールの靴は返りについて言うならばたいていのラバーソールの靴よりも人間の体にフィットします。走り回ることすら少ないオフィスワークにおいては、もしかするとそれほど大きなマイナスはないのかもしれません。

そんな私ですので、デザインはクラシックと呼ばれる範疇のものが候補になりました。スーツの世界も革靴の世界も、結局のところクラシックに行き着くのが自分のスタイルなんだと。つくづく思います。


クラシックにも色々な方向性があるようですが、今回の候補は、

・ランニングシューズを原型としたもの(バスケやテニスの出自ではない)
・それなりにクッション性を重視だが、階段上り下りが多いため必要以上の厚底は避ける
・コストは1万円から2万円、生産国にはこだわらない

といった基準で選びました。


前置きが長くなりましたが、そんな基準で選んだのが今回のTIGER ALLYです。

TIGER ALLYにはレギュラーモデル(?)であるベトナム製のTIGER ALLYと、日本製のTIGER ALLY DELUXEがあります。私が購入したのは前者、18,700円(税込、2024年10月時点)です。

もともとはTIGER ALLIANCEという名前で販売されていたモデルのアップデート版のようです。Onitsuka Tigerのアーカイブにある画像を見てみると、ほぼTIGER ALLYと同じデザインで売られていたものを2017年に踵周りの安定性とfuzeGEL搭載で更新、その際に名前をTIGER ALLIANCEからTIGER ALLYに変更したようです。

TIGER ALLYはクラシックなランニングシューズの形、モノトーンのスエードによる落ち着いたデザインと、まさに大人のスニーカーという印象です。

アシックスの靴の特徴であるアシックスストライプ(メキシコライン)って、機能面はさておきとして、学校の指定靴だったり田舎の少年時代の印象が強くて、そのデザインの押し出しが強いと却って購入意欲が減ってしまうのですが、このTIGER ALLYのように全体のデザインの中に溶け込んでいると今度は信頼の意匠に見えてくるので不思議です。

BLACK/BLACK、CREAM/CREAMといったカラーの靴は上品に見えます。


今回購入したサイズは日本サイズで25.5、US7.5です。
普段の革靴はリーガルではほぼ24、サージェントなどのUSでは6、チャーチなどUKでは5.5を履いています。ざっと1.5くらいサイズを上げています。

TIGER ALLYは小さ目なつくりというのが定説で、ワンサイズ、またはそれ以上のアップをしたほうが良いということも書かれています。ワンサイズの定義が0.5単位なのか1単位なのか、足の実測からなのか特定のスニーカーサイズなのかわかりませんが、一般的なスニーカーで履いているサイズより大きめを買うほうがいいという意見が主流のようです。

今回は近くにお店がない環境での購入ということもあり、通販で購入しました。
ふだん履くニューバランスM576では25.5/US7.5でやや緩め、CM996でも25.5/US7.5でもうハーフ下でも履けないことはないくらいに感じますので、今回25.5を選びました。


到着して足入れをしてみると...

「んー、なかなか小さいか?」

サイズをミスった感がよぎって一抹の不安を感じつつも、冷静に判断してみると足が締め付けられるかというとそんなことはなく、単に新品だからふわふわなフィット感になっているだけのようにも感じます。指が抑えられることもなく、甲の血行が悪くなるようでもない。履けないというほどの小ささではないし、多少沈み込んだらぴったりになりそうな気もしてきます。

革靴と違い、ふかふかな部分があるスニーカーは直感的にサイズがわからない気がします。少し当たるのが小さいのか、それとも構造上そういうものなのか、感覚的にもう少しわかりたかったので早速履いて出かけることにしました。

革靴であればここでプレメンテ、ということになるのですが、スニーカーでは特に過保護になることもないと思うので、気休めに防水スプレーをかけてみました。防水スプレーはスエードの靴にごく稀に使うくらいで、スニーカーにはふだんはつかいません。購入時は汚れがついていないし、おまじないとしてやっています。


履き心地はかなり「ふかふか」

ニューバランスの靴(ENCAPミッドソール)についてよく「雲の上を歩くよう」という名言が引用されますが、TIGER ALLYはその点ではもうちょっと上をいっている印象です。

踵部分にはfuzeGELと呼ばれる衝撃吸収素材が埋め込まれているようですが、それだけではない全体的なふかふか感があります。実際の厚み以上にソールの厚みを感じて、慣れないうちはかえって力が入らないような不思議な感覚です。ちょっと不安定なスポンジの上に立っているような。

あまりにもふかふかふわふわなので、足の長さを見誤ることがあり、右足をつっかけるようなことが何度かありました。

慣れてくると、このふかふかを利用して歩いていることに気づきます。衝撃が少ないので重いものを持っているような時は少し踏み込んで歩くなんて感じになります。

初回はそんな印象でしたが、当然のことながら革靴にありがちなマメができることもなく、歩けば歩くほどサイズ感に慣れてきて当初の窮屈感は消えてきます。店頭で足入れをした段階ではなかなかわからない靴との相性が少しわかった感じです。


クラシカルなデザインをまとめるアッパーは天然皮革のスエード。ドレスシューズ系によく使われるCharles F. Steadあたりと比べてしまうとそこまで良いというわけではありませんが、価格を考えるとフルスエードというのはかなり頑張っているのではないでしょうか。コストのためかタンはナイロンメッシュになっています。今回購入したブラック(BLACK/BLACK)については特に変な差し色もなく、シンプルに黒基調といった感じです。


1980年代の靴をルーツにしているので、デザインそのものは40年前のものになります。踵のクッション素材はアップデートされているとはいえ最近のハイテク靴には機能面で負けてしまうかもしれません。

ランニングシューズであるが故、安全性のために踵にリフレクターがついているくらいで、このくらい黒っぽいとビジネスで使いやすいのでありがたいです。

靴紐も黒で完全なブラックモデルになっています。幅の大きめな平紐ですが伸縮性はなく薄っぺらい紐です。紐の伸縮に頼るのではなく靴全体で足の形の変化を捉えるという設計思想であれば、ひもはしっかり固定する役割に徹した方が良いと考えています。その意味では、履いていて足が痛くなるようなことはないので、靴紐の役割としてはしっかり面で支えてぶれないという役割に徹しているものと考えられます。


TIGER ALLYのスエードでまとめられたアッパーやソールのデザインを見ると、あくでもタウンユース向けです。(もともとランニングシューズですし)

価格帯的に近いCM996と比べると、明らかにCM996の方がタウンユースよりに感じます。アスファルトの地面との一体感というか情報のやり取りは明らかにCM996に分配が上がります。レザーソールの靴ではダイレクトに地面を感じるので、地面とのコミュニケーションがある靴の方が慣れているといった方が正しいでしょうか。

一方TIGER ALLYの特徴は甲の緊張感が少ないというか、より足との一体感を感じます。CM996は私の場合は「靴を履いている」という感覚が常にあるのですが、TIGER ALLYは靴の存在を忘れてしまうようなことが多いです。地面の種類に限らず、足裏に入ってくる情報はほぼ同じなので、こちらのタイプになれると「歩く」ということのストレスが減るのではないかと思われます。

購入当初感じたサイズの小ささ感は終日履き続けているとまったく気にならないものになりました。確かに同サイズのCM996と比べると気持ちタイトな感じはするものの、私は実測から1.5ほど大きいサイズですので、小さいということはなかったのかもしれません。

同サイズでも比較的大きめに感じるML574と比べると体感的にハーフサイズは小さい感じがするので、ML574をそれなりにタイト目に履いているのであればハーフ(0.5)くらいは上げてもいいかもしれません。

このあたり、街中の靴屋さんでフィッティングを試しやすいニューバランスに対して不利な点であることは否めません。


TIGER ALLYは特にクラシックをそのまま復刻するといったこだわりに重きを置いている訳では無さそうで、デザインはクラシックなものでありながら、現代の技術を取り入れながらアップデートされています。

踵の後ろ側のカーブはややきつめ、踵を掴むデザインになっています。踵自体はそれほど小さくはありませんが、インソールに少しカーブがついているなど収まりが良いです。踵のスタビライザーの素材が柔らかいため「これ機能するのか?」と一瞬不安になるものの、指でぐにぐに押してみてもしっかりと支えている感があるので十分な機能があるのでしょう。(当然天下のasicsさんはその辺調査済みか)つま先側に向けて少し長めに入っているので、ここも計算済みって感じでしょうか。

CM996と比べると、踵の芯自体は少し小さめなので、その分スタビライザーの長さで安定性を担保しているようにも思えます。

踵のアウトソール側面積はかなり大きめで、歩行時の衝撃吸収と安定性を意識していることが伝わります。踵大きめ、つま先小さめの作りです。

アウトソールはタウンユースを想定してか凹凸は少なめ。このソール、雨の日はなぜか滑りやすいです。せっかくアッパーがスエードで雨に強いのに、ソールが弱いというのはちょっと残念。

ソールのパターンを見ると、足の形状に合わせて靴が内側に振られている通りにパターンもやや内側に向けられています。私は比較的進行方向に対して平行にボールジョイントが折れ曲がりますので、足が屈曲する角度とパターンの角度が微妙にずれています。パターン的には足の力が入る方向を重視しているようです。雨の時などにこの差によってソールにかかる負荷、一部は伸びきり、一部は緩むために路面に対して効果的になっていないのではなかと思えてしまいます。

ソールを見ても分かるとおり、ラストは全体的に内側に振っていて足なりです。

つま先側は足の屈曲を意識して、大きく抉っているので、レザー素材ということも併せてなんとなく穴が開く人出てきそう... という印象もありますね。

こうして靴をよく見てみると、ニューバランスはあの「N」を刺繍するために台座となる部分が必要になり、そこにあてがわれている革が二の甲をしっかり一周していますね。いわゆるローファーでいうところのフルサドルになっているので、足にしっかり巻きついて安定しますねこれ。


TIGER ALLYは足にあったサイズを選べば満足度が高い靴であることは間違いありません。ニューバランスやナイキは他の人と被るから嫌、という時には選択肢の一つとなるものの、圧倒的な差別化はないような気がします。

クラシックなデザインのタウンユースにおいては、さすがCM996は完璧に近い完成度になっています。しかも全国どの都道府県でも購入できるとなるとごく一部の取扱店舗でしか試し履きができないTIGER ALLYを無理して買わなくても、ということになってしまいます。直営店でしっかりと売りたいという意図なのでしょうけれど、日本のメーカーがせっかく世界で売れている靴に真っ向勝負できる靴を作っているのにもったいないなぁと思ってしまうのです。

細かくみるほど、さすがに世界レベルで売れているニューバランスの長老モデルは完成されています。淘汰を逃れて生き延びたともいえます。もう40年前のテクノロジーと言っても他にとって変わって廃れるほどでもない、出自はランニングシューズとはいえもはやこれで走ろうという人はほとんどいなくて無問題。ファッションとして生き残ると言われながらも、一定の履きやすさという評価も得ている。

TIGER ALLYも似たような位置付けの中では十分に戦える、むしろ勝てる靴であると思えます。テクノロジー面では十分勝てますし、ファッションとしてみると程よくクラシック。大人が履いてもサマになる落ち着いたデザインは他では意外とありません。Onitsuka Tigerの他のラインや、asics全体を見ても、これだけの大人デザインのランニングシューズベースのモデルはないようです。ニューバランスでも一部のレザーML574が対抗馬かなという気配もしますが、安定供給が期待されるフラッグシップではありません。ミズノのMR1にも惹かれますがちょっと路線が違いますし、入手難易度はさらに上です。


同じ黒でもナイロン系メッシュに比べたらスエードのモノトーン靴なのでジャケパンでも使えます。十分ありとなる職場もスニーカーの中では多いでしょう。ロゴや意匠も目立たないので、単なる黒スエード靴のように履けます。

スポーツをするのではなく、どちらかというと歩きを中心としたタウンユースを前提に、シンプルな足元を、ということであればTIGER ALLYはその有力候補になります。

願わくはTIGER ALLY DELUXEの在庫が復活してくれれば...


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2024年6月6日木曜日

Regal 01DRCD 2nd pair

日本を代表する靴のひとつ、リーガルの01DRCD。



スーツスタイルを必要とする人で、日本国内でビジネスシューズを買うことがあればこの01DRCDを一度は試し履きする価値はあると思う。

実際に購入されてその良さを書かれているブログからリンク目的の提灯サイトまで、それこそ数多くのウェブページで01DRCDの良さが紹介されている。

僕にとってこの靴はスペックによるうんちくベースの「オススメ商品」ではなく、10年間履いてほかの靴とも比べてみて、やっぱり「買ってよかった」靴。リペアが税込みで約27,000円(2024年1月現在)となってしまったため、いまは2023年10月に買い足した2足目を履いている。


リーガルは「高い靴」と「安い靴」という両方の見方がされていて、多くの人の意見としては「高い靴」「ちょっといい靴」であり、靴好きといわれる人たちからは「安い靴」「デザインが変な靴」という評価がされがち。

毎年たくさんのモデルを発表しては廃盤にするリーガルが、10年以上にわたり世界でも通用するこだわりで作り続けている数少ない靴、01DRCD。

もともとは一発屋的な企画商品だったような気がしないでもないものの、標準的なキャップトウ(ストレートチップ)で比較的手に入れやすい価格帯であったことから日本製のキャップトウを探していた層にハマってしまい、リーガルの期待以上にヒットしたのではないかなと思ってしまう。価格改定を繰り返しながら今日まで何とか継続販売されている。

同一ラストのプレーントウである04MRCFは廃盤になっていたりするので、01DRCDが残っていることはなかなかの奇跡ではないだろうか。他社でもレザーソールのシンプルなプレーントウはあまり売られていないので市場がないのかな。いまのところ01/02/03DRCDは継続されているのは、それだけ多くの人に購入されている=支持されているともいえる。

最近のリーガルはマスターリーガルのような宣伝効果を狙っているとは思うものの何の宣伝になるのかわからない商品企画だとか、高級ラインのはずのシェットランドフォックスでモデルの出し入れに必死感が漂っていたりと迷走を感じつつあるのだけれど、まともにグッドイヤーウェルテッドのモデルを作ると、もうその価格では他社太刀打ちできないんじゃないかという程に作り上げる実力があったりする。

無理して足の形に合わないノーザンプトンの靴履くより、もう少しフィット感が良くて十分に作りこまれた靴が国内で手に入るニッポンは素晴らしい。

マスターリーガルなんてもう定番化して10年も続いたら、それこそ日本のハイレベルな革靴の代表になってしまうのではないかと思うほどの末恐ろしいポテンシャルを感じるけれど、さっそく限定モデルとかやり始めているので、おそらくは採算的にもあんまりな宣伝用モデルかなという空気を強く感じてしまい手が出せない。

過去にもW121のような国内のみならず世界のスタンダードになっていたかもしれない靴を作ることができるのに、なぜか廉価的な印象が強くなってしまうのはラインナップに「新しさ」を入れないと販売を稼げないほど企業規模が大きくなってしまったが故なのか。

全国のREGAL SHOESを維持するのって大変なんでしょうね。


いつの間にかリーガルを代表するような定番キャップトウに育ってしまったともいえる01DRCDはREGAL SHOES専売商品じゃないからどうしても価格の安いところに流れてしまう。なのでそのちょっと上の価格でほかにない魅力を詰め込んでみたマスターリーガルを出したかと思えば、W10BDJのようにそれこそ靴屋さんの本領発揮商品作ってもそれほど数が出なくて今度は型番変えてほかでも販売できるようにしたりとか、REGAL SHOESにいって靴を買うというわくわく感がなくなってしまってきているのは少しばかり残念。日本人はブランドが好きなので、きちんとした信頼感のあるブランドであればお値段定価でも買いますので。エルメスやヴィトンを並行輸入で買う人もいるけれど、ロゴではなく信頼を求める人たちに支持された店舗は一等地にどーんと構えている。


振り返れば01DRCDも定番としてロングセラーになるキャップトウを作ろうというよりは、少し攻めた企画商品だったのかもしれない。

当時のリーガルでのスタンダードキャップトウともいえるW121はパターンオーダーのサンプル的な位置づけもあって微妙なスクエアトウ。当時はややスクエア感がブリティッシュみたいな空気があったものの、定番ラウンドトウで作られていたらいまの01DRCDの立ち位置だったのかもしれない。古いラストなのでかかとが緩いけれど、2504NAだってそうなわけで、ラストを超越してしまう人気が出てもおかしくなかった。キャップトウを定番だ、という人たちに向けてリーガルの中の人が他社にもあるようなもっと普通っぽい(でもちょっとばかり艶っぽい)キャップトウを作りたい。でもそのままだと落ちちゃいそうだからちょっと捻らせて社内を通そう、といった感じで出てきた気がしてならない。

このまた捻りの方向が多くの革靴好きに刺さる方向だったのだと思う。

まずはラスト。リーガルの実力見せつけちゃいましょ、ともいわんばかりのふまずのシェイプ。当然それを見るためにソール側をひっくり返すとこれまた「いちばんの素材で作った日本のグッドイヤーウェルトだよ」との型押し。厨感たくさんの文字に目が行くようだけど、実際にはくびれたウエストに気付くような仕掛け。話題性も含めてコバは矢筈仕上げ。リーガルの定番モデルとは似ても似つかないグラマラスなシェイプ。

3万円以上の靴だからレザーソールはマスト、やっぱりビジネスシーンで履かれる靴を想定して、減りを軽減し、かつ歩きやすくするためのゴムヒール。発売当時あたりはリペアの世界でもビジネス用途はゴムヒールが人気という話も聞いたことがあるので、ふだん使いを意識していることが伝わってくる。

素材はわかりやすくインポートレザー。それも国内ではわりと名前が通ったアノネイ製。しかも敢えてブラックまでもアニリン仕上げのベガノカーフ。茶系のベガノはわりと使われていたけれど、黒を使ったところはあまりなかった。比較的テカテカした靴が多いREGAL SHOESの店頭で、上品な印象の01DRCDはなかなか衝撃的だった。ガラスレザーが多い店舗だから逆にこの上品さが目立つというコントラスト。この点も「定番モデル」と言われるシリーズとは逆向き。

見た目的にはちょいとロングノーズでキャップ大きめではあるけれど、まとまりの良いオーソドックスな形。変に海外やらビスポークやらを意識してつま先をいじることなく、切り替えしにも変な意匠を入れずにどちらかというと正統派。デコラティブにすることが好きなリーガル社内では、ある意味これも逆を突いた捻りだったのかも。

ラストも欧米に比べると日本人平均に寄せているということもあり、履きやすいと感じる人が多い(と思う)。定番モデルでよく話題に出るくるぶしのあたりはかなり下げていて、もうことごとくこれまで定番の逆張り戦略靴を出してみたらどうなるかということを試したかったのではないかと思うほど。

履き始めからややソフトな印象になるようにかかとはクッション性を強めに、小指やタンといった当たりやすい部分は軟らかめ。革靴は痛いという印象を抑える調整も入っている。少し華奢なつくりな気がするのはコストの関係かそれとも繊細さを出すためのものなのか。

つまるところ、形は正統派寄り、話題になる素材は派手め、革靴に慣れていない人の不満を抑える作りをポイントとした、まさにメーカーにおける革靴好きの企画らしい。個人的にはもう少しこてこてなベーシックシューズが好きだけれど、それだとW121と比べての訴求が無い。コスト面からするとあまり儲からないようにも思えて、当時のリーガルでこれが良く通ったなという印象。定番化を目的としていなかったがゆえに通った企画に思えてしまう。


発売当初はアノネイ社のベガノカーフを使っていると前面に出していた。セミアニリン仕上げのボカルーよりもアニリン仕上げのベガノのほうが一般的には柔らかく革の素材感を感じられるといわれている。ベガノと言われていた当時の01DRCDはきめ細やかさや柔らかさがボカルーと言われている靴よりも勝っていた。

最近ではタンナー名を公開しないようになったので、リーガルが変えようと思えばいつでも変えられるのだろうけれど、ベガノの黒が廃盤にならない限りはわざわざボカルーやそのほかの革に変更する理由もないと思うので現時点でもベガノを使っていると思われる。



当時はシェットランドフォックスがボカルー、01DRCDがベガノとわざわざ分けて販売していたので、調達価格が違ったりするのかもしれないし、単にリーガルの中の人がベガノ黒というちょっとほかにない立ち位置をやってみたかっただけなのかもしれない。

この辺りの違いは言われてみないと素人目にはなんとなくそんな感じ、といった具合で、黒色の場合はお手入れを続けて何年か経ってしまうと当初の仕上げがどうかということは気にならないはず。むしろどのクリームを使ってきたのかで印象変わってくる。

理屈上はアニリン仕上げのベガノを使った01DRCDのほうが、セミアニリン仕上げのボカルーで作られた靴よりも透明感のある仕上がりだが水に弱い、ということになるのだろうけれど、水洗いをしたりお手入れ繰り返したりしている限りでは途中からあまり気にならなくなる。リーガルは国産キップも素晴らしい品質なので、仮に素材が変更になっていてもあまり気にしなくてもよいとすら思う。
そのくらい01DRCDは安心して履き続けることができる靴。

一部のコレクターを除き、靴は履いて歩くことに意味があるのでフィット感はとても重要。靴の見た目が気に入っても、どうしても履けない靴というのもある。

01DRCDは多くの人にとってスペック的にはベストバイではあるとしても、万人にフィットする靴ではない。スーツにY体やB体があるくらいだから、一律に「日本人の体形」というものはないのと同様、足だって民族的な傾向はあるだろうけど一律に足型としたサイズを決めるのは難しい。「ミリ単位」で木型削ってるんですから。多様性の時代に旧来の固定観念的なイメージの「日本人」という概念で語るのもいかがなものかなと。とにかくいったんそうした先入観は無しにして店頭で試し履きして合う合わないを感じるところからがこの靴のスタートになる。

靴の形の元となるラスト(木型:これに革を貼り付けて靴を作る)がどれだけ自分の足の形に近いか、というところがフィット感の一つの大きな要素というのは誰でもわかること。木型はふだん目にすることができないから、店頭で実際に靴を履いてみて、それが自分の足とどう合うか、具体的には余っている部分、当たる部分、きつい部分をみてみて初めて分かる。

木型はあくまでも靴を作るための型であるので、そこと足が一致していなくても、抑えるべきポイントのところがあっていれば案外問題なく、場合によっては快適だったりすることもある。ボールジョイントや甲の抑えと土踏まずのラインが許容範囲であれば、あとは既成靴である以上どこかの妥協が必要になる。

ボールジョイントは過度にきつすぎなければいずれは馴染む。01DRCDはむしろここは少し大きめに作られているので、実測EEを大きく超えない限りきついという感じはそれほど受けないのではないかと思う。

三の甲(インステップガース)と呼ばれる甲の一番高いところが抑え込めれば、足は前にずれることがなく、よほど全長が長くない限りは程よい履き心地になる。2504なんてここ一点集中で履く靴にも思えてくるほど。三の甲から二の甲、一の甲の順に合うほどより履きやすい靴になる。靴ひもが無いローファーだと二の甲が結構重要になる。履いたことないけどパンプスは一の甲しか抑えるところが無いように見えるので、これはなかなか履くのが大変そう。

革靴は製品としては完成品でも、個々人にとっては半完成品。ある程度履きこんでなじんでからが本領発揮。野球のグラブのように、買った直後となじんだ後ではツールとしての使いやすさがまるで違う。革靴もその「なじんだ後」を意識して買うことができればよいのだけれど、なかなかわからないものなので、少なくとも最初のうちは専門家の力を借りて選ぶのがいい。

革靴を買いなれていない場合はシューフィッターといった専門家の力を借りるのが得策。シューフィッターになるにはたくさんの足を見ながらフィッティングの経験を積む必要がありることから、足の形と靴の形から「合う」「合わない」のアドバイスが参考になる。完ぺきではないとしても自己流では気づかないアドバイスが得られることが多い。リーガルの店頭の場合は店舗によってフィッティングサービスの差異が大きい気がするものの、サイズを選ぶ視点とか、見た目的にどうなのかとかの話は聞けるので、サイジングに不安がある場合は店頭で確認するのがお勧め。


僕は旧タイプのケンジントン(内羽根)とインバネス(外羽根)を一つの指標としていて、これとの比較でどこが緩いか、きついかを考えることが多い。01DRCDはケンジントンと同サイズだと全長はいい感じであるものの心なしか窮屈感が強く、ハーフサイズ上げると今度は少し緩い。長い時間を履くことを考えるとどちらかと言えばハーフ上げたものがいいと感じている。靴のサイズ表記は無視して買うのが鉄則。僕は2504NAと01DRCDでハーフサイズ違っていていい感じではあるけれど、全長は2504NAと01DRCDで同じようなので、足の形によっては同一サイズのほうが良い人もいるだろうし、足長に合わせてサイズを決めたほうが良い人もいれば足周に合わせたほうが良い人もいるだろう。リーガルだから大きいとか小さいとかは一意に決まらない。サイズ標記の数字だけで決めるのは難しいということは、リーガル店頭で外羽根プレーントウの2504NAとひもなしローファー2177Nの同サイズをトライしてみればそれが良くわかる。
僕にとっては2504で気持ち緩いサイズが、2177Nだと血が出るくらい小さく感じる。


今回買ったものは心なしか以前に買った01DRCDより少し大きく作られているような感じがする。

2504NAを基準にハーフ上げだと僕にとってはちょっと一の甲(ボールガース)が緩い感じがしないでもないけれど、足首周りがきちっと締まるので歩行時にはかえって指が自由に動かせていることもあり、長時間歩いても足に障害が起きにくい感覚。最近は小指が痛い系を避ける傾向にあるのと、靴の数もそこそこあるためローテーション感覚が長いので、結果として迷ったときは緩めのチョイスをすることが多い。

購入時してペン入れなどをせずについたしわは微妙な感じになった。もう少し横一線だったら格好良いのだけれど、足入れした時点で靴に最もストレスがかからない曲がり方がこれなんだろうなと。購入当初にガイドしてきれいにしわをいれるのと、最初に入ったものから繰り返し歩くことで何度も修正が自然に入ったものとどちらが長い目で見たときに靴にストレスないんでしょうね。自然なしわ入れだとどうしても親指の付け根あたりにストレスかかりそう。繰り返し履いているうちに本来曲がるべきところに落ち着いてくるので、このしわ入れがいちばんかと思っている。


リーガルは比較的広い層をターゲットにするので靴全体はすごく攻めているかというとそうでもない。ボールジョイントや踵についても2235NAが有名なゆえにこれと比較して「小さい」「甲が低い」と思いがちだけれど三陽山長やRENDOといったセントラル系や、同じリーガルでもシェットランドフォックスのアバディーンほどは攻めていない。

インバネスもシェットランドフォックスでは中庸の攻め具合に思えるけど、01DRCDよりははるかにタイトな靴。

リーガルブランドは攻めているように見えてどこか万人受けの要素を残している。

まず全体的に緩めなところを作る。これはサイズどうこう、ウィズどうこうではなくて、明らかに緩めの余地を入れている。

シェットランドフォックスのアバディーンのような「ほんとにコレ2Eか?」くらい攻めている靴もあるので、技術の問題というより販売チャネル特性を踏まえたマーケティング的(クレーム対応的?)なところで設計しているように思えるところがある。

細い足が増えているはずなのに、W131のようなシングルEベースの靴はいつの間にか消えているのだからリーガルとしては細めの足幅に向けて靴を作っても売れなかった(もしくは売ることによるマイナス経験)という体験かデータがあるはず。よりは広く足幅に対応できるような中庸デザインのほうが利益が出やすいみたいな。

01DRCDは甲もそれほどタイトではないし、ボールガースもそれほど攻めていない。踏まずは絞っているけれど、内側を刺激的になるように盛り上げたりはしない。土踏まずから後ろ、かかともちょっと緩やか。カップを少し整形しておさまりをよくすることで収まりが良くなるような感じに仕上げている。


ややロングノーズであることと、矢筈コバも相まって少しソールが薄い感じのため、つま先は減りやすい。ローテーションにもよるけれど、週1登板くらいでは2~3年ごとにつま先メンテナンスが必要。

ソールはコルクの盛り方なのか中央が膨らんでいるので減り始めは真ん中が大きく削れる感じになる。購入当初はすぐに穴があくのではないかと心配になったけど、ソールそのものはコンディショナーなどを塗っているとヘリが少なく案外持つ。多少雨の日に履いたところで足をするような歩き方でなければ年単位で持つはず。

このソールはなぜここまで穴があかなかったのかは少し不思議だと思っている。同じような履きかたをしたショーンハイトはもう少し短かったし、雪の日などはあまり履かず、多少丁寧に扱ったと思われるシェットランドフォックスのブリストルは5年ももたず穴があいた。

踵もゴムヒールでこれまた減りにくいので、トップリフト交換みたいなものは考えなくてもよさそう。僕は10年間平均的には週に1回弱はいているけれど踵は持ちこたえている。これは驚異的。

2足目の01DRCDは購入当初からBootBlackを使っていて、ソールは雨に降られたタイミングでブートブラックのコンディショナーを塗っている。


馬鹿の一つ覚えと言われてもやっぱり01DRCDはいい靴。

世の中にもっといい靴があるかもしれないということは頭でわかる。靴ジャーナリストでもない限り何足も評論できないなかで、自分で買って履き続けた数少ない靴の中ではこれが良かったという話でしかない。

それでも、出張で土砂降りにあったり、雪の北海道の出張に履いていってしまったり、夏の暑い日もカラカラの冬の日も、そんなさまざまな日々をあまり気にせず履いていても何年もいい状態を保ってくれた靴。

日本全国で比較的手に入りやすくて、冠婚葬祭でもビジネスシーンの一線でも使える。お手入れをすればそこそこ長持ちで価格もレザーソールの中では手に入れやすいほう。

Xやインスタ見ても、きちんとお手入れしている人の01DRCDは5年くらいたっても新品かと思うようなきれいさが維持できているし、むしろ艶感が増して魅力的な靴になっている。僕の経験でもそれほどお手入れを神経質にしなくても週1回くらいのローテーション頻度なら10年くらいは履くことができる。

重箱の隅をつつけばいくらでもでてくるのだろうけれど、価格や品質、アフターサービスといった総合力でこの靴の右に出る靴はすぐには思いつかない。

海外ブランドには既製品での定番のキャップトウがある、チェルシーやシティ、オードリー、コンサル、etc.

リーガルならこの01DRCDだろうか。W121もよかったけれど定番にはならなかった。01DRCDのラストを使ったモデルも出てきたものの長続きしない。「もう一足」を買わせるための戦略なのか次々にモデルが出て次々になくなってしまうので、逆に10年続いた01DRCDの安心感が際立ってきている。ここまで続いてきたので「01DRCD」という型番で製品が語られるようになってきた。


もしリーガルに01DRCDが無かったとしたら、正統派のレザーソールで定番と呼べる靴はあったのだろうか。どこかで出てきたのだろうか。フレッシャーズから年配までスーツを着る社会人が安心して買うことができる靴。履き続けることができる靴。

01DRCD、素晴らしい靴。


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2023年11月19日日曜日

Regal 2504NA 再び

ニッポンのレジェンド靴 2504NA。

いまの時代、レトロ感のあるモデルとして評価されているけれど、フィッティング重視のトレンドからは少し離れた位置にある靴

これまでも、そしてこれからも唯一無二の立ち位置で「定番」として受け継がれていくであろう靴。

「REGAL/リーガル」の商標はもともとは米国企業のものだったことからもわかるように、この2504NAもアメリカ靴を意識したことを感じるようなデザイン。J.PRESSのジャケパンスタイルやBrooks Brothersのスーツあたりに合いそう。


今年、2504NAを買い足しました。


2023年11月に値上げがあり28,600円、10%税込みでは30,800円とついに3万円を超える靴に。たった10年ころ前には個人輸入でチャーチのコンサルが日本円換算で5万円台で買えていたと思うと隔世の感がある。

革靴の中ではエントリー的な価格ともいえるけれど、ふだん使いにそこそこいいスニーカーが1万円~2万円程度で手に入るとなると、やっぱり革靴は少し高いねという印象を持つ人多そう。


以前と比べフィッティングやパターンに微妙なマイナー修正があったのか、履き初めにあった外側のくるぶしにあたる感じが全くなく、タンの足首へのあたりも柔らかい。土踏まずからかかとのサポートが若干入ったような気さえする。かかともほんの少し丸みを帯びたような。


2504NAって履き始めはくるぶしや足首あたりにエッジが食い込んでくるような靴という印象があって、履きおろし日を選ぶと思ってしまっていたのに、今回はとても拍子抜け。購入して軽く慣らし履きしたらあとは丸一日履いてみても全く痛いところがない。不思議。

見た目の印象とは違い甲の革はあまり固くはないという点は変わらず。タンや羽根のあたりのカチコチな硬さもやや軽減されている。履き始めのギシギシいうようなところが全体的に少ない。

ラストそのものは従来と同じはずだから、この足首周りの印象からすると僕の足が少しふっくらと変わったというよりは、外側のくるぶし周りのパターンにおいてラインが微妙に下がっている可能性が高い。全体的なパターン自体の修正が入っているのか、それとも単にこの個体を作るときの差異なのか。どちらにしても僕にとっては良い方向だからアタリと言える。


結構薄めの足である僕でさえこれなのだから、もし本当にパターン修正がされているのであれば2504NAでの最初の難関であるくるぶしや足首へのアタックを受ける人が減ることになる。やや立体的なつくりになったようで、「定番」として続けるにはいい方向への変化ではないだろうか。

今回の2504NAは当年製造っぽいのでまだ日がたっていないこともあるのかな。ガラス仕上げの甲革はその樹脂仕上げによりちょっとビニールっぽさが感じられるものの、しわの入り方は穏やか。このぴかぴか具合がオンオフ兼用のポイントだったりもする。


リーガルの定番はこの2504NAといい、2589N、2235NAといい外羽根スタイルが多い。あとはスリッポン系も。


あくまで経験則上、自分の周りにいる先輩方を見るに、その先輩方のさらに先輩方をターゲットとした販売開始当初の日本人の足の形は現代の平均よりももう少しごついと思われることに加え、当時の日本文化的に靴の脱ぎ履きにおいてひもを緩めない人たちがたくさんいたであろうから、踵をあまり攻めずにしておいて、フィッティングは紐の締め具合で設計しているのではないだろうか。

単なる緩い靴になってしまうと長時間の歩行で疲れが多くなる。足首から前方は歩くことを前提にある程度のフィット感を担保しなければならない。

「日本人の足」といっても千差万別で一つの形に集約させるのは難しい中で、外羽根モデルは羽根の開きを少し多めに取っておけばゴツイ足から薄っぺらい華奢な足までアジャストできる範囲が広くなる。

足首に近いところでしっかり抑えることができれば、かかとが多少大きくても脱げることは無い。逆に指先側にも余裕が出るので指に与えるダメージもほとんどない。

極上の履き心地を目指すのではなく、広く浅く、草履履きの日本人にとって無理のない履き心地を狙うとこうなるのではないかという気がする。大量生産をする場合のお手本のようなラストとデザイン。

少しごつい靴ではあるが、スーツスタイルも以前はずっとゆったりしていたので、この靴くらいのバランスで良かったと思われる。

2235NAのほうが少し足首周りの締め付け度合いは少ない気がするのは、ひょっとして履く靴下の厚みまで考慮されてミリ単位の修正が入っていたりして。


そんなわけで、ちいさめ薄めは僕の足に対しては紐を緩めている時点ではやや大振り感が出るけれど、しっかり紐を締めると緩さを感じない歩きやすい靴に変化する。

計算上EからEEの範囲(EE寄り)の僕は01DRCDと比較してハーフサイズダウン、ショーンハイトSH111ラストと同サイズを選択している。01DRCDは少し緩めな感じなので、01DRCDをタイト目に履いているのであれば同サイズ、SH111は外羽根タイプのSH111-4と同サイズだと気持ち大きめのような感じだが問題ないというサイズ感。外羽根比較ではシェットランドフォックスのインバネスよりハーフ落としてもまだ2504NAのほうが大きめに感じる。

全体的にボールジョイントでの窮屈さは全く感じない。指先に行くほどゆとりがあり、いちばん足首側のひもはしっかりと締めることができて履いて歩く分には緩さを感じない。

こうした巾着のような靴の作りだから、足幅が細めの人だとさすがにこの靴は厳しいのかもしれない。足首のホールドが不十分だと、指先にむけた左右のゆとりがあだとなって歩く際に指に力が入りづらくなる。タンの足首への影響も大きくなる。大きい靴の欠点が出てしまい、歩くストレスが増えてしまう。

タイトフィッティングで行くならもうハーフサイズ下げても履けそうとは思いつつ、全長詰めて買ったばかりの靴で小指にタコマメを作るのはもう歳的にターンオーバー不可能な不可逆損傷になるのでここ数年はあまり攻めていないチョイスになっている。

ローファーの2177Nを履くと、2504NAと同サイズだと明らかに甲まわりがタイトかつボールジョイントの先が窮屈に感じる。特に小指部分。伸びる部分を計算しているのか、それともラストの違いなのか。2177Nだと全長は2504NAのハーフ上げのほうが快適、ただ今度はくるぶし周りにゆとりがありすぎて踵ではなくサイドのぶかぶか感が出てしまう。僕自身の足に厚みがないところが目立つ感じ。なので、同じリーガルの定番というカテゴリーであっても単に数字上のサイズ比較ではなくラストとの相性も含めてフィッティングをして靴は買うべきという思いは変わらない。

ちなみに、僕の中で最高に小指と踵がやられたのがRENDO R7702サイズ6で、全体的にきつすぎて購入当初に頭痛したりで挫折しそうになったのがW134の24。RENDOは何とか当時は頑張って履くものという意識が強かったため乗り越え、W134はしばらくお蔵入りしていたものを、経済的に苦しい時期に単に履く靴がなくなってあきらめて履いたことで、両方とも最後には靴が変化してとても履きやすい靴に変貌した。どちらもある意味事情があったので履き続けられたものの、その過程において足にも相当な負担をかけたので、若くないいまとなっては指に負担の少ない靴を選びたくなる。

あくまでもターンオーバー能力の劣化(?)によって、以前よりも緩さに対しての許容度が上がり、きつさに対してのそれが減った。



2504NAは多くの声がいうその靴の立ち位置が故に、ほかのスムーズレザーの靴に比べて扱いが雑になりがち。

雨に降られた後も、ほかのスムーズレザーの靴は軽く水ぶき(場合によっては洗ってしまう)して乾いたころにクリームを入れるなんてことをやるのだけれど、ガラス仕上げの2504NAはついつい表面の汚れを落としたらそのまま放置なんてことをやらかしてしまう。

ラバーソールも濡れたからといって手入れが必要なものでもなく、靴全体が水に強そうに見えるぶん、お手入れもおざなりになってしまっていた。

そうなるとどこが最初にダメージ食らうかというと、ウェルトがダメになる。ここは普通に革が使われている部分であり、ウェルトにはしっかりとクリームを入れておかないと表面は何ともないように見えてボロボロな靴が出来上がる。最後はウェルトが我慢しきれなくなり、ソールをつなぎ留められなくなる。


グッドイヤーウェルト製法のキモはこのウェルトにあるので、いくらアッパー素材やソールが雨に強そうとはいっても、靴全体で見てウィークポイントになるところをしっかりケアする必要があるというのもこの靴から学んだ。


よく「ガラスレザーは雨に強い」とか「お手入れが楽」とか言われることがあるけれど、それはこのガラスレザー単体の話で、靴としてみるとウェルトやインソール、靴紐とかほかのスムーズレザーと変わらないものがたくさんあるので、靴全体で見たときにお手入れの必要性という意味では変わらないと思う。2504NAについていえば、アッパーやソールのお手入れ頻度を下げても、ウェルトだけはクリームやミンクオイルを使い捨ての歯ブラシみたいなものでときどき塗り込んでおくといい。

ラバーソールだからってお手入れ頻度が少なくていいことないので、あくまでも製法全体で見た靴としてどうかという観点でお手入れ頻度や方法が決まるのであって、特定の場所の部材で決まるわけではない。

それと、2504NAに使われているガラス仕上げの革はお手入れし甲斐がないみたいなこと言われることが多い。そうかなぁ、BootBlackの黒色クリーム塗ると結構イメージ変わるよ、特に何年か履いて靴が少しくたびれてきたときには特に。


多くの2504NAがこうしたよく言われる情報のもと、案外雨の日向けみたいに扱われていたり、簡単お手入れな靴として扱われているケースが多そう。ただ、逆に言えば扱いやすいというアピールがされることでたくさんの人に履いてもらうからこそ「定番」であり続けることができている。

2504NAのターゲットはビジネスで(一部カジュアルでも)革靴を履く人全体を見ているよう。みんながみんなお手入れをしっかりできているわけでもないだろうし、そもそも興味がない人もたくさんいる。ローテーションをせずに同じ靴を履き続ける人もたくさんいて、むしろそちらのほうが多数派でもある。

2504NAは決して履きつぶすような靴ではないけれど、ここまで売られ続けるとニッポンのビジネスパーソン層における使われ方もある程度わかったうえで作られ、販売されているのだろう。修理もできるけれど、買い替えしながらずっとこれ一本という人がいたっていい、という雰囲気。

だからデザインを毎年変えたり、ラストを微調整し続けたりなんてのはこの靴のビジネスではなくて、むしろ同じじゃないと困るという人たちにいつまでも過剰に高い価格にならないように大量生産しつつ販売し続けるような靴である必要がある。同じ形をたくさん作ることができるということは、生産コストをわずかながらでも下げることができる。

それは材料の調達であったり、作り手の確保、設備やツールの投資であったり、一定量を裁くための販売チャネルであったり。リーガルシューズ専売モデルではないから、通販サイトで何割引きなんて売られ方もしている。

日本の商習慣的に結局のところ定価からの割引みたいな感じになってしまうので、リーガルシューズのようなリーガル管理下の店舗では一定の価格を維持しないとならないからこうした定番モデルが却って売りにくいなんてことにならないのかな。モラルが完全に欠如してしまうと、お店で試着、通販で購入なんてフリーライダーも出かねない。もっとも、その肝心な店舗でもバックヤードのサイズや在庫の関係もあり、すべてのモデルですべてのサイズを常時置いておくのは難しい。取り寄せに数日かかってまた店舗に行くくらいなら、通販サイトで家に送ってもらっても一緒、になってしまいかねない。

そこまで含めてリーガルが全社的に戦略をとっている可能性もあるのだろうけれど、さすがにそれはないかな、どうなんでしょうね。割り切って店頭をフィッティング相談室にできるのであれば、それはそれでとてもありがたく重要な場として機能しそう。全体的にはリーガルシューズの試し履きは本当に履いてみて確かめてちょっとしたアドバイスがあるくらいで、ボールジョイントのフィッティングだとか甲の締め具合、履き口のフィット感などはほとんどみてもらったことがない。最終的な判断はお客様というのがある意味徹底されてしまっていて、フィッティングについてよくわからない初心者は何度か履けばフィットするはずのサイズは「小さいものを勧められた」といい、夕方に店頭でフィットした靴が「やっぱりリーガルサイズは大きい」とかいうコメントにつながったりする。フィッティングに詳しい人がいるのに残念。

大きい市場で、靴に対する知識がほとんどない人も相手にしなければならないリーガルでは、こうした本来大切なアドバイスがしたくてもできないというのはなんとなく予想が付く。なので、顧客側としてはあくまでも靴の販売と切り離したフィッティング重視の場がどうしても欲しくなってしまう。ラスト毎に色違いでもフルサイズさえそろえておけば、フィッティングはできる。なんなら倉庫併設の場所でもいいくらい。

最近は行っていないのでわからないけれど、以前のREGAL TOKYOはそのあたり、結構細かく見てくれた。メジャーで全長やボールジョイントの周囲を測って、そのうえでいくつか靴を履いて、でもやっぱり買わなくて帰るなんてこともあったけれど、そうした安心感があってシェットランドフォックスも含めたリーガル系の靴はすべてここで修理に出していた。修理についても「これはまだ出さなくてOK」とか、靴についてよくわからない常連でもない僕に修理のタイミングやらクリームの塗り方やら丁寧に説明してくれるなど、いわゆる靴好きがいうところの本格靴についてのリーガルの真の実力を垣間見ることができる店舗だった。定番靴がないのが残念。ここはオーダーとビスポーク以外はあまりやる気ないかな。


2504NAは定番と言われつつ、身近で履いている人を見つけにくい靴でもあったりする。職場や取引先などでも履いている人見たことないし、いっぱい売れているような気もするけれど、いったいどこで履かれているんだ?という気もする靴。


靴好きであれば一度は通るところのような靴だけど、その一度で通り過ぎちゃったままなのはなんとももったいない。


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2023年10月26日木曜日

Schoenheit SH111-1D Cap Toe Leather Sole

ショーンハイト (Schoenheit/Schönheit) のマスターピース SH111-1D。

きわめてオーソドックスなスタイルのキャップトウ(ストレートチップ)。

かかと部分がドッグテイル型になり、型番の最後にDが付き従来の武骨な感じの靴から最近の一般的な形の靴になった感じです。


ショーンハイトとのお付き合いは SH111-4 を買ってからなのでもう8年くらいになります。
結論から言うと、めちゃくちゃ丈夫でビジネスユースに最適な靴です。

雨の日も雪の日も、もちろん晴れた日も神経質にならず仕事道具として履き続け、8年を前にして靴の底に穴が開きました。アッパー側も少し切れてきました。

レザーソールの靴はつま先が結構削れるのでそこだけ修理をすることが多いのですが、だいたい週に1回弱くらいのローテーション、比較的軽めな体重だからなのか、足をあまりすらないのかソールが減りにくくショーンハイトの SH111-4 に限ってはつま先の修理はしないまま、そこに穴があくまで履き続けました。

たまにソールをメンテナンスするとはいえ、雨の日も履きますし、1日に12時間以上履くことはざらでお世辞にもていねいに扱っているとは言えないほどです。そんなビジネスシーンで5年を軽く超え、8年ほど履き続けました。

頻繁に買い替えるよりしっかりした靴のほうが長持ちするので結局はお得であるという話をよく耳にします。しかし修理費用、お手入れの手間(time is moneyですので)を考えると必ずしもお得とは言い切れません。むしろ高級靴といわれるゾーンではやっぱり趣味性が高いです。

10万円で5足買ったらそれほど神経質にならないでも、たまにお手入れしていれば5年は持つと思われます。まっとうな革靴を履き続けることに必要なコストが1年あたり2万円、靴クリーム代やらなんやら入れても月2,000円といったところでしょうか。

20年以上お手入れをしながら履き続けるのはなかなか簡易度が高いとはおもうものの、しっかりとした作りであるので、中2日くらいのローテーションができれば数年単位では優に履き続けることができる良い靴です。


ショーンハイトの SH111-1D はきちんとした革靴の入門としてもよさそうです。

初めてレザーソールを履くような場合、雨に降られた後のメンテナンスがわからなくてソールを早めにダメにしてしまったり、ウェルトやられてしまったりすることもあります。

アッパー側も塩が出てきたり、しみがついたり傷ついたりと、ふだんのビジネスシーンで履いていれば少なからず痛みます。

それなりの歴史の中で生き残ってきた革製品ですので、多少の傷には強く、濡れたらすぐにダメになるというほどではありませんが、お手入れ次第で持ちが劇的に変わります。

化繊やビニール等に慣れてしまった現代では、こうしたメンテナンス経験が無く習慣化されていません。雨にぬれてもそのままで、それが革が雨に弱いという印象を強めているように見受けられます。

スムーズレザーでレザーソールというのは高級靴でも根本は同じです。ディテールそのまま、お手入れとかを勉強するにも適していますね。


2023年10月現在で税抜20,000円(税込22,000円)って、8年前と販売価格同じなんですね。どうやったらそういう価格が維持できるのでしょうか?

8年前にも書きました

値段から入るのはどうかと思いつつも、これだけのインパクトがあるとどうしてもここに触れたい。
革の調達価格が上がったということでどんどん革靴が値上げされる中、税抜2万円ジャストの革底グッドイヤーウェルテッドというだけで驚き。

と。

8年の時を経ても全く同じ価格って、革靴界ではもう突き抜けちゃってショーンハイトかそれ以外か状態です。 

製造をしている東立製靴さんがリーガルの工場で比較的生産効率が良いとか材料の調達が有利だとかいろいろあるのでしょうけれど、もはやそれだけでは説明つきません。この8年間で最低時給の全国加重平均が2割くらい上がっています。材料費一定だとしても人件費原価部分は上がっていないとビジネスとして釣り合いません。

というわけでショーンハイトはもともと驚異の価格設定だったのが、さらに実質値下げ状態となって、ビジネスシーンで選択肢に入れない理由が無いくらいの独走状態です。

ここまでそうとうヨイショしていますが、客観的にみてエントリー価格(エントリーレベルではない)でこれだけの品質を担保している靴ってほかにあるんでしょうか?


惜しむらくは購入できる場所が限られていること。
靴のサイズ標記は単なる数字で、しかも同じ数字であっても大きさや履き心地がまるで違うため、試着をしてから買うことが大前提です。

ある程度靴のサイジングに対して理解がある人であれば返品交換できる通販サイトで購入することができますが、初回は店頭で試着しながら店員さんのアドバイスも聞いて選ぶべきものだと思っています。

やっぱり一度は店舗でとなると、首都圏くらいの人しかアクセスできないというところが泣き所でしょうか。



さてこのショーンハイト、外羽根の SH111-4 や SH111-4D と比較すると、内羽根キャップトウの SH111-1D は明らかに緩く感じます。

外羽根モデルは羽根が少し外についているので、履き口で結構しっかり締め付けできます。アジャストの範囲が広めなようで甲が薄い人でもフィットしやすいです。内羽根モデルは筒の最小径が少し大きいので何となく緩い感じです。靴用語的に言うならば、インステップガースの調整幅が少ないです。

8年前に東立製靴さんで試着した際にも内羽根は緩い感じがしたので外羽根プレーントウを買いました。この微妙に感じる緩さ加減は今でも印象が同じです。木型が同じ SH111-4 もボールがーすのあたりは結構ゆとりがある同じような形なのですが、外羽根の作りによって締め付けられる点が異なります。

薄くなる傾向がある現代の若い人にはちょっと全体的に筒が大きめかもしれません。私は若いわけではなく単に足が薄いだけですが。リーガルトーキョーの靴に似ているフィッティングで、東立製靴さんの工場で作られる靴は、もともとのターゲットは当時の30代、いまの50代以上ですかね。スペック上は2Eですが、ボールガースの幅は明らかにハーフサイズ上のインバネスよりもゆとりを感じますのでちょっとほかの靴に比べると緩いです。

SH111-4 で紐をきつく締めた際に足首寄りの穴で羽根と羽根の間が1cm残らない人は SH111-1D だと緩い印象になるはずです。足が比較的薄めで、かつタイトフィッティングが好みの人は通販サイトのレビューやブログにとらわれず、試着して確かめるべき靴です。


全体的には足長と同じようなサイズ感だと思われます。足の長さの実測が23.5cmであれば23.5、25cmであれば25が合う気がします。タイト目フィッティングを好むのであればハーフマイナスという考え方もありますが、靴の形的に長さを下げると小指側の指先が当たりやすくなるのでフィッティング向上を目的にサイズダウンするのは要検討です。

踏まずは特に押し上げるような感覚はなく、一方でかかとは小さくはありませんが、底面はやや収まるような作りです。

タンパッドなどで調整できる範囲であれば入れてみるのもありです。逆にインソールはせっかくの足あたりを変えてしまうので個人的にはあまり好きではないです。レザーソールの革靴はやっぱり余計なインソールを入れないほうが良いですし、それであればもう少し小さいウィズでカスタムオーダーを検討するほうがよさそうです。


アッパーは山陽のキップレザー。東立製靴さんのウェブサイトを見ると「オランダ製の原皮を、姫路の工場にて丁寧に鞣(なめ)し、美しく仕上げたキップ」だそうです。特段グレードなどは書かれておらずきめが細かいとまではいきません。ぷつぷつ感があるものの、きちんとお手入れすると普通に艶が出ます。実用上は十分です。


初回に履き下ろす前、しっかりとクリームを入れていることもあり、しわは結構細かく入ります。履きおろし時点では多少硬さを感じるものの、しわができる部分では革自体はしなやかな印象です。以前購入した SH111-4 よりも柔らかくなっている気もします。

トラが目立つところもあります。ここが価格を抑える一つのポイントであるとすれば、個人的には気にならないのである意味歓迎。

ソールは以前より少しばかり薄くなった気がしないでもないです。以前はちょっと厚手の底という印象でしたが、いまはほかの靴と同程度ですね。ドッグテイルと合わせて現代的なスマートさに寄せてきたような印象です。コンビネーションオーダーに2.5mm厚底というのがありますが、これをやると従来の印象に近くなるのかな。

少し乾きやすい印象のソールです。まだ履き始めということがあるのと、今回はミンクオイル薄塗だけをしているので脂分がそれほどないからかもしれません。ソールはやりすぎてもべたべたになってしまうと滑るし通気性も落ちそうだし、でも一方で乾きすぎるとヘリが早いし雨の日水吸いすぎてしまうしと、スイートスポットはどこなんでしょう。個人的には全天候型を目指して、気持ち多めにミンクオイルを塗っています。継続的にメンテナンスをしてどうなるか興味深いです。

かかとはオリジナルのゴムヒール。ビジネスの定番ですね。
かかとがゴムになるだけでだいぶ滑りやすさが変わると思います。そのへんもビジネスユース向けとして有利な点です。

全体的にソールはシンプルです。ステインも必要最低限に仕上げられています。
前回購入した8年前に比べると安定的にきれいな感じです。

ソール凝りまくってもすぐ削れるしビジネスシーンではあんまり役に立たないし、変にデザインに流行を入れて商品入れ替え対象になることもないし、同じような形を繰り返し作るから作りても経験値がたまりやすいしと、総じてビジネスシーンで必要十分な靴をまとめ上げたらこうなるというお手本のような靴です。

REGALの01DRCDもビジネス定番としてかなりのポジションにあると思っていますが、SH111-1D をはじめとしたショーンハイトの破壊力たるや、右に出る靴を見つけるのは大変そうです。



購入して箱を開けてみて気が付いたのは、とても丁寧に梱包されていること。


作り手が大切に作って、大切に使ってほしいという気持ちが伝わってきました。
シューズバッグがついているような靴を除いては、たいていは紙に包まれて箱に入っています。これまで見てきた中ではその梱包の丁寧さについて3万円の靴も8万円の靴も案外大差がない。

ショーンハイトの梱包は、この手の2倍、3倍もする価格の靴とは一線を画す丁寧さで梱包されてきました。今回の購入で一度交換してもらうことがありましたが、交換前も交換後も梱包の丁寧さは変わりませんでしたので、たまたまよかったというのではなく、これがショーンハイトの「あたりまえ」なんだと思います。
(一方で私は包み方がヘタクソで、きれいにお返しできませんでした... すみません)

その包み紙をおそるおそる開いて出てきた靴は、それこそきれいに仕上げがされていました。

ショーンハイトのコストパフォーマンスについて語るのであれば、そのパフォーマンスはプロダクトとしての靴に対する作り手側の気持ちが圧倒的に高いというところにあるのではないでしょうか。

「オレたちの靴すげーだろ」的なものでは決してなくて、ニッポンのビジネスシーンを支える靴として一つ一つ丁寧に、それこそ職人の仕事に対する姿勢が伝わってくる靴。

靴を包んでいる紙なんて、履き心地には何の影響もないし、包み方が丁寧であっても中身はよくなるわけでもない。そこで値段を上げることもできない。

ただ、そうした細やかなことができる人たちが作り出す製品にはインチキなんてあるわけがなく、自分たちがしている仕事に対する矜持が伝わってきます。


大切にしたいと思うものは、価格で決まるのではない。

今回ショーンハイトの靴を買って改めてそんなことを感じました。
買ってよかったです。


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