Made in Japan の量産型既製靴最高峰クラス。
素材、製法、ラストも含めたデザインにおいてこだわりが随所に見られる靴。
メダリオンのないフルブローグは個人的にはスーツスタイルに合わせやすいので好印象。メダリオンがないセミブローグがクォーターブローグなら、これは3/4ブローグなのか?
デザインは一見ごく普通のラウンドトウ(ややポインテッドか)。しかしその造形はめちゃくちゃ曲線が複雑に入り組んでいる。中心線を入れようとしても無理みたいな。
前半部分は耐久性と履き心地に有利なグッドイヤー・ウェルテッド、土踏まずあたりの中央部分は薄く仕上げることのできる(屈曲性が良い)マッケイの合わせ技。こういうマニアックな作り方って海外のメーカーにもあるのだろうか?
トウは少しばかりボリュームがある一方で、土踏まずのあたりは思いっきりえぐってあり、しかも厚みも薄い。甲とかかとはシェットランドフォックス再スタート時からのモデル、つまり初期モデルのためやや保守的に大きめ。同じシェットランドフォックスのインバネスやグラスゴーに比べるとハーフサイズ大きい感じで、実際僕はインバネスは6でも指先にキツさを感じるが、ケンジントンは5ハーフでもキツさを感じない。
ハースサイズ落としても、むしろ指周りはインバネスより余裕があって、新品時の小指の圧迫感がほとんど無い。同サイズで比較すると旧ジョンストンアンドマーフィーよりも指周りははるかに大き一方、かと言って全体が緩いわけではなく、甲周り、特に外側が少し薄めにできているようでフィット感はいい。インバネスだとハーフサイズ大きいにもかかわらず小指の先に行くほど圧迫感があるが、ケンジントンではボールジョイントの外側全体がタイトな感じ。(サイズを落としているためボールジョイント周りが小さいのかもしれない)
特に土踏まずの内側もそうだが、外側から甲を抑える感覚は他の靴に無い独特のもの。
比較的緩いと言われるかかとも、ハーフサイズ下げていることとソールの返りの良さのおかげで特に問題ない。
エジプト型の自分の足との相性という意味では、これまで履いた靴の中で1、2を争う履き心地。
アッパーはシェットランドフォックスがイチオシの伊イルチア社ラディカ。独特のムラ感と艶は素晴らしい。エジプト型の自分の足との相性という意味では、これまで履いた靴の中で1、2を争う履き心地。
この革(ブラック)は購入時はややムラ感のあるブラックで、ニュートラルでお手入れを繰り返していくと、少し赤みがかってくる。こうなると、光加減、光の種類(日光、蛍光灯、白熱灯)、角度によってさまざまな表情を見せる。
冠婚葬祭用ストレートチップであればブラックを使い続けてみるのもありだろうし、ニュートラルだけでお手入れをしていってブラウン度合いを増すのもありなのかと。表情が多彩なだけに化粧のさじ加減が印象を変える革。
エジンバラの時にも書いたのだけれど、このラディカはリーガルの通販サイトではニュートラルで手入れをしたほうが良いと書いてあるが、リーガルトーキョーではブラックのクリームを使っていた。ニュートラルだけだと全体的に色が抜けてくるので、補色をしつつ、色が入り過ぎたらニュートラルで落とすとか。
ブラックといってもどちらかと言うと赤系のブラックなので、ブラックのクリームを使うならサフィールノワールあたりと相性が良さそう。隠し味としてネイビーを使うのはラディカにおいてはやめたほうが無難かも。僕の中でこの靴はビジネスシーン用とはいえややくだけたポジションなので、ニュートラルでメンテナンスをしている。
ところでこのケンジントン、履き心地に関しては全く問題ない最高の靴なのだが、敢えて苦言を言うならば検品がいい加減なのではないかと感じるところが見られる。
僕の購入したブローグは、ブローギングがきちんと繰り抜かれていないところが3か所あった。ちょっと見ればすぐわかるし、そもそもブローグのウリのひとつはこのブローギングにあるのだから、1足(左右合わせて)で3つもある事自体検品しているのかと疑う。
写真真ん中あたり。他にも大きいもので1つ、小さい穴で1つきちんと抜かれていないものがあった。穴を抜くときにも、縫うときにも、検品でもすり抜けてしまうとはいかがなものか。
ソールの仕上げも結構いい加減である。(購入時に撮った写真)
かかと部分なら試着で多少減るだろうが、全く他に触れることがない土踏まずが全体的に白っぽい。染料が悪いのか検品が悪いのか、そもそもこの程度のクオリティなのか不明。リーガル通販サイトの写真ではもう少し綺麗な感じがする。ちなみに他のケンジントンもソールのヒドゥンチャネル仕上げが雑だったりと、パターンオーダーでオプション価格払ってこの仕上りが出てきたらさすがに怒るわな。
こちらも購入時の写真。この前シェットランドフォックスのBグレードセールの時に似たようなものを見た気がする。(これは正規品)
よく「職人が〜」という表現がなされるが、どう見てもこれは熟練ではない作業員レベルの完成度。手作業の工程があって、さまざまな熟練度の人が作っているのだから、製造過程である程度のエラーは当然に起きるだろう。ただ、製品に最終責任を持つ人がフラッグシップを作っているという自負があれば素人でも気になる程度ものはハネるのがあたりまえで、それが十分にできていないのはリーガル社の体制にどこか問題があるのだろう。リーガルの検品は厳しいということが書かれているブログもあるけれど、安定していないのかもしれない。
ビスポークは別として、既製靴は工業製品なのだから、きちっと仕様どおりに作るってことが大切なわけで、今後のクオリティの向上に期待したい。
ま、このあたりは靴としての実用には全く問題がないので個人的にはどうでもいいのだけれど、靴作りの姿勢や情熱が足りない感じがしてしまうのが残念だった。気になる人はケンジントンを買うときに良くチェックすると良いと思う。
(ブローグのところはむしろ盗まれた時など特定できるから却っていいかもしれないな)
とまぁ、細かいところでのオイタはあったにしても、やっぱりケンジントンはトータルでは素晴らしい靴で、買ってよかったという気持ちに変わりはない。メイド・イン・ジャパンの靴として応援したいし、日々一生懸命作っている現場の人には敬意を示したいとおもう。より品質を向上してもらって、世界に打って出るくらいの気持ちでやって欲しい。
フィッティングはこれまでにない感覚で、レースアップのほかローファー(3043SF)に足入れした時も紐がないのに足に吸い付くというかなんとも言えない感覚。この靴は指周りに余裕があるので、いつもより小さめなサイズにしたほうがフィッティングの真価を発揮しそう。内羽根はこのセミブローグの3014SFのほか、キャップトウの3013SFがある。ぜひケンジントンのラストでセミブローグやVフロントあたりを作って欲しいと本気で思う。タッセルよりも需要がありそうな気がするけど。
シューツリーはケンジントン専用の291を入れている。専用にしては値段も税込み10,500円と良心的だと思う。このツリーはトウスプリングがしっかり取ってあるのがありがたい。入れるときはわりとゆるく、どちらかと言うと抜くときに気合がいるツリー。ちょっと生産量が少なすぎるかな。もう店頭販売の在庫全部オンラインショップに集めて、もう少し在庫をおいてほしい。靴が売っているのにツリーがいつも売り切れではなんのための専用ツリーかわからないので。
ケンジントンの最大の特徴である前半グッドイヤー、後半マッケイという特殊な作りのためリペアが心配だったが、状態にも依るが1、2回はできるっぽい。靴の構造からすればマッケイ部分の状態次第ということだろうか。ただ、オールソールは2万円くらいになるだろうとのこと。
僕は歩く時間が多い日はもちろん、雨でもお気に入りの靴を履きたい人なのだけれど、それは革底はリペアできるという理由だから。グッドイヤーウェルテッドより交換回数が少ないのは気になるところではあるけれど、ケンジントンのソールはシェットランドフォックスの中でも減りにくいと感じているし、いままでも3度以上交換した靴は無いのでローテーションを工夫すればそれほど気にする必要はないかもしれないかな。
まだ、オールソールに出したことはありませんが、大阪駅近くのオーダーシューズ&リペアのお店に伺ったら10,000円以下でできるとのことでした。
返信削除結構安くできるお店もあるのですね。
返信削除僕の自宅からは少し遠いですが、オールソール1万円ならケンジントンに限らず出張ついでに他の靴を出してみてもいいかなと思うくらいです。
ケンジントンはソールが堅いのか減りが少なく、オールソールは僕もまだ未経験です。ネットを見てもオールソールに関する情報は純正リペア以外は見かけませんね。もし僕がトライすることがあったらいつかはその結果を書きたいなと思っています。
店の関係者でありませんが、念のためurlを書かせていただきます。
返信削除オーダーシューズのお店なので他店では引き受けないようなことにもチャレンジされています。
http://bonta-bonta.com/ ← ここからブログをご覧ください。
私はケンジントンにヴィンテージスチールをつけてもらいましたが2000円以下でした。
お店のブログを見てみました。
削除ソールだけではなくアッパーについても結構ヒドイ状態の靴もていねいに直してくれるんですね。
修理の例をみると値段も良心的で、大阪はたまに行くので第2ビルなら持ち込みしてもいいかも。
情報ありがとうございます。
先日梅田に行ったついでにbontaさんを覗いてみました(ホントに覗いただけですが)
削除その日は予定が詰まっていたので場所を確認したくらいになってしまいましたが、お店の奥の方にきれいに磨かれた靴がいくつか並んでいて興味深かったです。
今度は少し時間の余裕を持って入ってみようと思います。
ジョンロブに「前半グッドイヤー、後半マッケイ」という作りの靴があります。この製法の靴を履いてみたいと思っていたところケンジントンがこの作りだったので購入しました。
返信削除やっぱり先人がいるんですね。
削除しかもジョン・ロブだったとは。
超一流シューメーカーの製法が国産で手に入りやすい価格だっただけに、ケンジントンの製造中止は残念です。
2014春夏モデルあたりで同じような作りの靴、復活しないかなぁ。
途中から「私もケンジントン」を名乗りましたが、書き込みは全て私です。
削除シェットランドフォックスは3013、3064、3017の3足を持ってますが、3013(ケンジントン)が一番足に合ってましたので生産中止は非常に残念です。
3017はギリーというだけで商品を見もせずにネットで買ってしまいましたが、なかな馴染まず四苦八苦しています。
SFについて書かれているブログは少ないので、今後ともちょくちょく遊びに来させていただきますのでよろしくお願いします。
理想的なラインナップですね!
削除私も3017のギリーは欲しいなと思いつつ、どんなシーンで履けば良いのだろうと思っているうちに廃盤になり、結局手に入れられなかったんです。
また、3064は日比谷で足入れした時にはものすごくインソールが足の形に合っている気がして履き心地はよさそうだったものの、甲が緩すぎて諦めました。アーバインはデザインが無難で、しかもセミブローグという最高のデザインだっただけに残念です。
私もやっぱりケンジントンが一番好きです。特に3043は傑作だと思っています。レースアップよりややタイトで、また見た目もなぜかぽてっとした3014とくらべてロングノーズっぽく見えるし、本当に生産中止が残念でしかたありません。ただ、聞くところによるとケンジントンラストでグッドイヤーの商品も企画しているようなので、再開を心待ちにしています。