2013年7月1日月曜日

Shetland Fox 3048SF GLASGOW

ビジネスシーンではストレートチップを履くことが多いのだけれど、その中でも最近ローテーション頻度が上がっているのがシェットランドフォックスのグラスゴー (Glasgow)。
エジンバラ後継モデルとされている

シェットランドフォックスの中で人気もあるモデルなのか、百貨店からミマツ靴屋まで、いろいろな場所で売っている。

デザインはややロングノーズのセミスクエアトウ(チゼルトウ)。ストレートチップのキャップは大きめ。
控えめなチゼルトウなので、ややスクエアなちょいロングノーズと言った感じ。甲薄め、かかと小さめと言われている。

エジンバラと似ているところはつま先が少しスクエアなところくらいで、別モデルと考えたほうがよさそうなくらい変化している。むしろパッと見はクロケットアンドジョーンズのオードリーに近いかも。
左がオードリー、右がグラスゴー。オードリーより履口が狭い。

ストレートチップの3048SFのほか、クオーターブローグの3049SFもなかなか捨てがたい。

アッパーにはイタリアのフラスキーニ社チプリアを使っている。
このチプリア、ネットでの評判はイマイチ。
確かにアノネイのボカルーやベガノと比較してみると、表面は顔料厚塗りで銀擦りしたようなフラットな感じでクリームの乗りもあまり良くない。

グラスゴー(フラスキーニ社チプリア)のトウ
 
表面が平坦なせいか光が強めに反射している。

参考までにインバネス(アノネイ社ボカルー)のトウ
表面がどちらかと言うと透き通るような感じでさらっとしながらもしっとりしているというなんとも矛盾な感じ。

どちらも同じクリーム(サフィールノワールクレム1925)を使っていて、鏡面仕上げなどはせず仕上げはブラッシングと乾拭きのみ。ボカルーにクリームを塗ると、どんどんクリームを吸い込んで行くため、途中でどこまで塗り終わったかわからなくなることがある。チプリアは油分を弾くのか、表面に薄い膜が張るためどこまで塗ったかわかりやすい。

購入した当初は革が表面的な光り方をして、ボカルーのような深みがなくまた傷もつきやすい感じがした。なんでシェットランドフォックスはこの革を採用したのかなと。
しばらく履いてお手入れを繰り返していくと、柔らかくて足馴染みしやすい革なんじゃないかと思うようになってきた。柔らかい部分はパサついた感じであまり光らなくなってくるものの、トウの部分は相変わらずピカピカだ。
擦れた部分は白くなりやすい。チプリアはどちらかと言うと表面がしっとり柔らかいので擦れたり引っかかったりすることに弱い。履きこんでいくと全体の艶がなくなってくる。最初は色が抜けてきているのかと思ったのだけれど、どうやら表面に細かなシワが増えて、最初のツルッとした表面から反射する光が柔らかくなっているっぽい。外的要因によって影響を受けやすい革かな。結果、アッパーに表情が出てくる。ムラといえばそうなのかもしれないが、ブラックの場合はあまり美しくはない。
このためクリームはニュートラルよりもブラックが良さそう。(購入後はニュートラルばかり使っていたので気がついた。ブラック中心に変えたら少し落ち着いた)

5、6回クリームを塗りこんだ後くらいに初めて雨に降られることがあったが、あまり染み込まず表面でブロックしていた。その後も何度か降られても、今のところシミにもなっていないので、多少の雨ならあまり気にしないで履けると思う。(ただし、きちんとお手入れする必要はある)

デザインやラストなどの靴そのもののポテンシャルはとても大きいと感じる。
冒頭のオードリーと並べてみた画像でもわかるけれど、ロングノーズといってもイマドキのトンガリ靴ではなく、むしろデザイン的に評価されることが多いパリラストと並べても違和感がない出来上がり。
ロングノーズやチゼルトウについては好き嫌いはあるものの、どうしてもダメと思えるほど極端なものではなく、実際はいてみるとそれほどでもなく感じられる。クロケットアンドジョーンズのオードリーがokな人なら問題ないかと。サイズが6の小さめな僕の足だとちょうどいいバランスになる。

肝心の履き心地については、とても気に入っている。
日本のメーカーが、日本人の売りたい層に合わせてラストを調整したものは、こうなるんだと思わせる出来栄え。
僕はクロケットアンドジョーンズの337Eラストを履くと爪先部分はタイトなのに履口部分外側が余り気味になってしまう。グラスゴーではそれがない。幅はふつうで薄めの足に合いやすいデザイン。

欧米人の足を見たことがある人はわかると思うのだけれど、彼らはかなり幅が狭くて丸い足をしている。その割に肉付きがよかったりしてちょうどさつまいものような感じ。一方自分の足をみてみると、平べったくて四角に近い。この差が337Eラストの履口外側の緩さの原因のひとつでないかと。(ただ、絶対的な理由ではないと思う。チャーチの173ラストはワリとしっくりくるので、どちらも定番だが両方に合う人は少ないと思われる)
グラスゴーは薄めの足にフォーカスしてラストを作成しているというプラシーボ効果もあってか、足入れした時の感触は良かった。

グラスゴーのラストは細いわけではない。甲が低いことによって周がやや小さめになっているが、つま先はイタリア製の靴みたいにきついという感じでもなく、見た目以上に余裕がある。かかとが小さめということもあり、ボールジョイント左右(特に親指側)とかかとの三点で足がホールドされ、指は比較的自由だ。見た目よりもはるかに幅がある。土踏まずのアーチもこれまでのリーガルに比べたらはるかに絞っており、そっと良い感じに触れる。(土踏まずをぐいぐい押し上げるような感覚はない)
ケンジントンのようにかなり親指側に寄せたラストなので甲の外側がタイト感を期待したが、こちらはそれほどでもない。アグレッシブなように見えて、わりと懐が広いラストなのではないかと感じる。ちなみに、ケンジントンでピッタリのサイズからハーフサイズ上げるとグラスゴーではぴったり。

足幅ふつう、甲薄めの自分の足(エジプト型)にはなかなかフィット。たいていの靴はジャストサイズ(ややキツ目のフィッティング)にした場合、購入当初は左足の小指と薬指が、しばらく経つとなぜか右足の小指がかなり圧迫されることが多いのだけれど、グラスゴーはそこまででもない。小指側への負担が少ないことがハッキリわかる。

強いて言えばボールガース(ボールジョイントの周囲)の幅というより高さが少しゆるめでアッパーに皺が入りやすいのと、インステップが少し狭いのか履口の外側が少し開いてしまう(いわゆる「履口が笑う」状態)。ま、許容範囲だけど。

シューツリーはディプロマットヨーロピアンの39を入れている。ややきついかな。リーガルトーキョーのネジ式38(たぶんコルドヌリ・アングレーズのOEM)よりもディプロマットのほうがあっている感じ。手元のシェットランドフォックスオリジナルのバネ式ツリーSだとかなりピッタリ。
シェットランドフォックスの靴は木型の中心が内側に寄っているので、一般的なシューツリーを入れると最も高い部分が若干ずれることが多いのだけれど、シェットランドフォックスのシューツリーはその辺りが考慮されていてピッタリはまる。ただ、お値段がディプロマットヨーロピアンがミマツ靴店で5,000円で買えるのに対して、シェットランドフォックスのシューツリーは7,875円もする。

日本のメーカーが現代の日本人(特に若い人)の足型を考慮して、靴オタを満足させるべく、革にもこだわって作っている。いい傾向だと思う。シェットランド価格についてもまぁ、インポート物と比較すれば、むしろバリューなくらいだ。
パターンオーダーでこのストレートチップの先頭にメダリオン入れてパンチドキャップトウ、アッパーをボカルーにして作ったらクロケットアンドジョーンズのベルグレイブ買わなくても済むかなぁ。

0 件のコメント:

コメントを投稿