2018年10月14日日曜日

靴を買いました - REGAL 2235NA -

いまさらながら買ってしまいました。国産靴のレジェンド、REGAL 2235NA。



休日用の靴は僕の中でここ数年の傑作 W10BDJ を筆頭にいくつかあって、そもそも履く機会を考えると数の面では充実しちゃっているものの、やっぱりこの靴いいよなぁ、ということで。

国産靴の歴史には欠かせない靴。リーガルの代表作でもある。
いま40代くらいの人たちが若いころに買っていた雑誌やムックにはこの 2235NA が盛んに広告されていた。かかとにかかる重さが飛行機なんちゃらとか、「丸と角」みたいな広告。

2235NA はもともと百貨店の特注品をベースに1972年から現行型番で売られているそうな。2504NAとは違って、その当時からほぼ変わらない姿で今に至る。カジュアルなスタイルに合わせているところをあまり見かけないにも関わらず、どう考えてもカジュアル用途と思われるこのデザインが売られ続けてきたのも、日本では靴のデザインはあまり意識されていなくて黒靴であればなんでもOKということも一つの理由かも。2235NA のブラックをビジネスで履いている人を時々見ますので。

若いころはこういう重厚なウイングチップ(あえて「フルブローグ」ではなく「ウイングチップ」)はちょっと苦手で、どちらかというとプレーントウのホワイトバックスや2236NA のようなシンプルな形が好きだった。不思議と歳をとるとともに好きになってきたこのデザイン。



もともとリーガルは米国の Brown Shoe Company(現在は Caleres。リーガルが販売している Naturalizer ブランドを保有。ちなみにこの会社は今は Allen Edmonds の親会社) が買収した Regal Shoes のブランドをライセンスしたもので、その歴史をみても文字通りアメリカントラッドな靴。そののち Regal の商標権(米国他一部の地域を除く)をブラウン社から取得し、いまは「リーガルコーポレーション」の自社ブランド。

若いうちに手に入れておいて履き続けていたら格好良かっただろうな、と思わずにはいられない。
そろそろと思っていた頃に W10BDJ と衝撃的な出会いをしてしまい、いまさらながらのお付き合い開始となった。


2235NAはなんとなくサントリーウイスキーオールドと立ち位置が似ている気がする。
高度経済成長期に頑張っていたニッポンのお父さんのあこがれで、手に入れたらもうそれは大切に扱う自慢の一品。
いろいろな情報に容易にアクセスできるようになった平成の時代に入ると、相対的にその「ありがたさ」が下がってしまっているけれど、古くから靴に目利きがあった人のクローゼットにあることが多い。



W10BDJ と比べると、もう少し大切(?)に履くような靴。
フルブローグの出で立ちからすれば雨だろうがぬかるみだろうが気にしないのが粋とは思うものの、2235NA のデザインはもう少しきれい目に履く靴にみえる。

W10BDJ は傷がついても格好良いと思うし、むしろ多少の傷があるのだけれどきちんとお手入れされている感があるような履き方が格好良い。言い換えれば、傷ついたり雨に降られたりすることを気にする靴ではないけれど、メンテナンスはしっかりしている道具という位置づけ。

2235NA はその逆に、あまり傷が目立ただず、履きこまれているけれどお手入れ感が出すぎない(自然な感じをほんの少し超える)程度が似合う。この靴は何となく品があるというか優雅なたたずまいというのか、傷だらけになると無理して頑張っている感が出てしまうような。キレイ目ジャケパン系であれば W10BDJ より 2235NA のほうがサマになる気がする。グロメットの違いかもしれない。


さてこの 2235NA、最近の全体的なフィッティング重視のものとは違い、靴の前半部に締め付け感がないゆったりとしたラストに感じる。この靴を履いてから 01DRCD を履いてみると同じメーカーでもラストの考え方がずいぶん違うということに気づく。
前半部がゆったりといっても、箱に足を入れているような感じではなく、かかとは無理のない程度に触れて、甲側は紐で抑えるという感じ。

適切なサイズを選べばそれなりのフィット感があるものの、甲薄め、かかと小さめの最近のトレンドから見るとデカい靴、緩い靴という位置づけになってしまっている。僕は 01DRCD からハーフサイズダウン、2504NA と同じサイズにしている。三の甲は 2504NA よりやや高めなのか、新品時点できつめにひもを結ぶとかなり羽根が閉じてしまい(1cm以下)、沈み込んだら少し緩くなりそうだ。

スコッチグレイン(型押し)仕様の革は箱から出した時点では結構硬くて、これは難儀しそうという印象を受けたけれど、デリケートクリーム多めに塗って、そのあとクリームをいつもより少し多めに入れたら柔らかくなった。ボールジョイントあたりの屈曲部はかなり柔らかい。

外側のくるぶしがあたるという感じは 2504NA に似ている。ここはとてももったいないポイント。もっともっと人気が出てもよさそうな靴なのに、間違ったサイズを売られ、おまけにパターンが古めなため「痛い靴」「疲れる靴」といったネガティブな印象ばかりが広まってしまっている。

ライニングは伝統的に布と革の併用。レザーソールの本格革靴ということを考えると、結構頑張っている値段設定。
2504NA あたりと比べるとビジネスシーンでこれを履こうとする人は少ないだろうから販売数量も限られてくるだろうし、この靴を購入する層はそれなりに靴を大切にする人も多いだろうからバカ売れするような靴ではないけれど、この靴が廃番になることはなさそうなので修理を繰り返しながら長く履けそう。

作りはとてもていねいで、さすがにリーガルの代表作だと感じる。
ソールのステッチやコバステッチ、靴の内部縫製のすべてに日本の工業製品っぽい均質な仕上げがされている。



リーガルを代表する靴でありながら、大人の男性が購入する革靴としての優先度が低いデザインの靴だったりもする。

「欲しい」とは思うけれど、手に入れる必然性がないというか...

僕も、やっと購入したという感じ。W10BDJ と 2504BD があれば休日靴はすべての天気問題なしだし、そのほかローファーやらスニーカーやらもあるしで、後から追加して購入する理由があまりなくなってしまっていたので。

それなのにあきらめきれなくて買ってしまったのは、靴の完成度や使われている部材については W10BDJ のほうが一歩上をいっているのに、それに負けない存在感は僕が歴史を感じてしまうが故か。



初回のお手入れ。
この靴は型押しの厚手な革を使っているため、ブートブラックのデリケートクリームを気持ち多めに塗り込む。
塗ったら型押しのしわ部分やメダリオン部分にも入るように軽くブラッシング。その後30分くらい放っておいた。
ある程度浸透したかなと思うくらいで、再度デリケートクリームを入れる。歩くとしわが入りそうな部分は気持ち多めに塗り込んでいく。
この時点で表面が少しべたつくというかしっとりとしているというか、ややふっくらした感じになってきた。

そのあとは乳化性クリームを。型押しの部分があるためどうしてもいつもより多めに塗らないとまんべんなくいきわたらない(気がする)。余分なものは後で拭き取ればよいので、まずは全体に伸びるように少し多め(片足米粒10個にもいかないくらい)を塗る。
ついでにコバの部分にも塗り込んでおく。
型押し革の凹凸やブローギング、ギンピング(ギザギザ)があって塗りにくいので、クリームを少し塗っては軽くブラッシングの繰り返し。



ソールはいったんブートブラックのソールコンディショナーを塗ってみるものの、新品時はあまり浸透しないで意味がなさそう。こちらはある程度履いてからもう一度塗ることで初めて意味があるような。

クリームを塗り終えて10分ほどしたら軽く室内履きしてみる。
この最初のしわ入れの時が結構ドキドキしたりする。

僕は靴の構造と足との相性で自然にできるしわが良いと考えているクチなので、特にボールペンなどは使わないで自分の足を曲げることでしわを入れる。

まずは気持ち曲げる程度。
これでだいたいどこに力がかかるかが何となくわかる。

次第に曲げる角度を深めていっては戻してを繰り返し、最後に思い切り曲げる。
この時、クリームをある程度入れて革が柔らかくなっていればなっているほど自然なしわが入る。ボールガースに余裕がある靴だと大きくしわが寄ったりすることもあるが、気にしだしたらキリがないので、自然についたしわは受け入れることにする。2235NA は型押しの革ということもあり、しわがあまり目立たない。


今後もお手入れはブートブラックのデリケートクリームを中心にときどきニュートラル乳化性クリームで。


ネットで紹介されているいろいろな方の靴を見ると、やや濃いめのクリームでお手入れをして深みを増すようなお手入れをされていることが多いような気がする。もともとの赤が入った茶色を少し落ち着かせて、ダークな感じに寄せている。

それも格好良いけれど、購入時点でも何となく立体感のある仕上がりだし、そのまま様子を見てみようと思う。


僕はジーンズやチノパンの時に履くので、テカリはそれほど必要ではない。
ちょっとしっとりと落ち着いているくらいのほうが良い。
この靴だったらブートブラックよりM.モゥブレイのほうがあっている気がしないでもないけれど、リーガルブランドクリームの製造元であるコロンブスを使うことにする。



登場から45年以上販売されているモデルで、もう何足売れているのかわからないくらいなのに、特にこの茶系のものは案外履いている人に出会うことが少ない。地下鉄の駅でも、繁華街でも見かけることがほとんどない。
持っている人は多いとするのであれば、この靴を持っている人はほかにもたくさん靴を持っていて登板頻度が低いのかな。
いかにも定番すぎて、ちょっとわかる人ならだれもが 2235NA だってわかるところが気恥ずかしさを生んでしまうのかも。

形、色、素材のどれを見ても、あまり似たような靴は国産では見かけない。
いわゆるただゴツイ系のフルブローグは数多くあるけれど、アイビー寄りなデザインでありながら、日本人がていねいに作り上げた無骨と繊細が共存するデザインは独特な雰囲気を醸し出している。

僕が靴を買うのはもはや道楽に近い趣味みたいなもので、数が増えてくると一つひとつのローテーション間隔が必然的に長くなってしまう。一つ靴を買うと、ほかの靴の当番頻度が伸びてしまったりめったに履かなくなる靴が出てきてしまう。
靴って履いて、お手入れしてなんぼなのでそろそろ打ち止めにしようと思ってはいるものの、また買ってしまった。

2236NA 購入から25年経て購入した 2235NA。
リーガルの定番といわれる靴はいろいろな意味で「重い」。



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2235NAはやっぱりいいですね。



2018年10月5日金曜日

革靴の状態を見える化

革靴の状態って、素人の僕にはよくわからない。

何年も靴のお手入れをしていたところで、せいぜい自分の靴を磨いている程度ではどのくらいクリームを入れればよいのかということはいまだ確信を持てないでいる。
表面の状態からは判断できる技量も感性も経験もないので、何となく期間が空いたり酷使したりしているなと思ったときに乳化性のクリームを塗る、なんてことを繰り返してきた。


先日、ひょんなことから革靴の状態を見える化できることに気が付いた。

Google+ のコミュニティ「靴好きもそうでないひとも、革靴について話そう。」で「おしりふきを使って靴のお手入れをする」ことが紹介されていたので、僕も家にあったおしりふきを使って W10BDJ を拭いてみた。



おしりふきは比較的水分が多いので、均等に拭いているつもりでも水が良くしみるところとそうでないところがはっきりわかる。

これまでは固めに絞った布を使っていたので気づかなかったのだけれど、半びしょびしょ状態にしてみると水をよく吸う(しみる)ところとそうでないところが一目瞭然。


僕にとってはなかなかの大発見だった。


一見しみているように見えても、すぐに乾燥してわからなくなる。おしりふきはそのほとんどがただの水ということもあり、乾いてしまえばもとに戻る。
靴を拭いたらすぐに写真を撮って状態を記録しておくことにした。

拭き方の問題もあるかもしれないので何度かしみないところを意識的に拭いてみたけれど、やっぱり水がしみこまないところは何度やってもしみこまない。

意外だったのはしわの部分はそれほどしみにならず、しわによって革が寄る部分のほうがしみこみ具合が多かった。
考えてみればもともと平らだったものが変形して谷になるより山になるほうが表面上の密度が下がるので、繊維が開くことで水がしみこみやすくなっているのかもしれない。

どちらかというとクラックを気にしてしわのところをていねいに塗り込んでいたけれど、これからは革が寄る部分も意識してみよう。
しわになる部分はしっかりとしわが伸びる状態になってからクリームを入れたほうがよさそうだ。



ちなみにこのおしりふきは雨に濡れて表面がボコボコになった時や塩を吹いたときなどにも活躍している。いままでティッシュを濡らして使っていたけれど、こちらのほうが楽だし扱いやすい。

鏡面磨きのハンドラップではないけれど、本来の用途とは違うものの靴のお手入れにはこれほど便利なものはない気がしてきている。

箱買いしていると1枚2円以下になることもあるのでウェットティッシュより安上がり。

Google+ のコミュニティは多くの人の体験談が書かれていていつも発見がある、感謝。


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