個人的にちょっとホットな東立製靴のオリジナルブランド、ショーンハイト(Schoenheit)。
Google+のコミュニティでも購入報告や気になるひとが続出(してると思うの)です。
ショーンハイトのレザーソールモデル、プレーントウ(SH111-4)。ショーンハイトのスペルは正しくは
O-Umlaut なのだけれど、ウムラウトの英文タイプ表記にならってタイトルは Schoenheit と書いてみました。
ショーンハイトはこのブログを記事で紹介いただいている Life Style Image さんで知りました。
ブリティッシュトラッドタイプのレザーソールでお値段21,600円(8%税込)。
値段から入るのはどうかと思いつつも、これだけのインパクトがあるとどうしてもここに触れたい。
革の調達価格が上がったということでどんどん革靴が値上げされる中、税抜2万円ジャストの革底グッドイヤーウェルテッドというだけで驚き。スムーズレザーを使った2万円台のレザーソールとなると東南アジア製が一部あるくらいで国産ではなかなか見当たらない。よく「革靴は3万円台後半から」みたいな話が言われる(僕もそう思っていた)けれど、そんな定義を覆してしまう。
キャップトウ2足とプレーントウ買って税込65,000円って、シェットランドフォックスの新作ブライトン1
足とほぼ同じ。ラバーソールだともっと低価格。10万円あったら5足くらい買えてしまう。デザイン違い、色違い揃えていきなり一週間のワードローブ完成もそう大きな話でもない。山陽のボックスキップを使った既製モデルで税抜29,000円。
日々多くの靴を生産する過程で蓄積された調達・製造のノウハウをいかんなく発揮してできた靴。工場直販で店舗維持費用がかからないとしても、在庫はある程度(各サイズ1足くらい)確保されているみたいだし、オンラインショップの管理や発送、問い合わせ対応などの人件費は劇的に変わるわけではない。大手ファクトリーとしての材料の調達や繁閑調整、人員の効率的な活用によるところは大きいと思う。
僕は靴をネットで購入することはほとんどない。同じメーカーでもラストが違うと同一サイズでも履き心地は全然違うことがあるし、お店できちんと紐を締めて多少歩いてみて足のどの部分にあたるとか、どの部分が余るなどを把握して買いたいということもある。
ショーンハイトのこのモデルはYahoo!のオンラインショッピングか柏市の本社に行かないと手に入らない。散歩がてらに柏まで足を運ぶということで行ってきました。
東京在住の僕は常磐線で南柏駅まで行き、そこからバス。
南柏駅の西口(栄えていない方?)から流山ぐりーんバスに乗って20分弱くらい。野々下4号公園下車で歩いて数分。このバスは土日30分おきなので行きも帰りもタイミングを合わせないと結構待たされる。後から気づいたけどいまは東京駅からJRで乗り換え無しで柏駅まで行ける。柏駅からバスのほうが東立製靴の近くのバス停(笹原)が使える。
今回は土曜日訪問なので本社はひっそりしていた。販売店舗というわけではないので、予め電話で予約して行くと良いかも。土日は人も少ないし、その中で仕事を進めているのだからこちらもある程度の時間を決めていくほうが良かったなと。僕は朝に何時までやっているかだけを確認して適当に訪問したのでその点反省。
目的はブリティッシュ・トラッドタイプのためし履き。
このラスト、オンラインショップの写真を見るとチャーチの173ラストに似ているなと思っていたけれど、実際にチャーチを意識してラウンドトウを作ってみたとのこと。キャップトウのトウ先あたりは微妙に丸長くボリュームがあるという感じで確かにチャーチっぽさがある。とはいえレースステイの位置や足首周りはより小さめに仕上げられているなど、単なるパクリラストではない。ウェルトの目付けによって受ける印象も結構違う。ちなみにこのラストは東立製靴さんのオリジナル。
全体的なサイズ感としては伝統的なリーガルの靴に近い。シェットランドフォックスのインバネスや最近の01DRCDあたりと比べるとハーフサイズ大きい感覚。
左の01DRCDよりハーフサイズ下げているけれど、全長は同じくらい。
捨て寸がある程度確保されているためか01DRCDよりハーフサイズ下げてもゆとりを感じるけれど、これ以上下げると捨て寸に足が入る感じがした。足長が長い左足は意識するとかかと側が当たっている感じがするので全長はこれ以上下げるのは厳しいと思う。二の甲と三の甲はリーガルトーキョーの旧ジョンストンアンドマーフィー型ラストを少しシェイプした感じ。踵周りはややコンパクトにつくられている。
踵から土踏まずにかけて、やや土踏まずの絞りが踵寄りになっているようにも感じる。(気のせいかも)。踵ぴったりに履いているので前のめりしているわけでもなく、僕の足だともう数ミリ前にある方が気持ちいい。
サイズ表記は2E(EE)。ボールジョイントあたりの幅は少しだけゆとりを持たせて(リーガルの伝統的ラストよりは)高さを抑えているやや平べったい作り。キャップトウを試しに履いてみたところ、01DRCDよりハーフダウンしても気持ちゆるい感じがして、沈み込むと羽根が完全に閉じそうな気がした。外羽根プレーントウだと羽根が少し外側に付いているのか、かなりきつく締めても閉じることが無く、1cmくらい開いている。相当沈み込んでも閉じきることはなさそう。幅ふつうで薄めの足である僕には外羽根のほうがフィット感が良い感じ。履き口もやや小さめということも相まって踵と三の甲あたりで締めて、前半部分は縦横ともにゆったりとしている。最近キツ目の靴を履いているせいか、足入れした瞬間は緩い感じを受けたけれど、超時間履いていても緩さは感じられず、むしろあまり靴を意識しない自然な履き心地。緩くもなく、タイトでもなく当たる部分もあまりない靴。全体としては親指側にトウが振られていることも楽な履き心地につながっているのかもしれない。
今回はトライしていないけれど、ロングノーズモデルはややボールジョイント部分に幅をもたせているようなので、僕にとってはフィット感が弱くなるかもしれない。
2日間でトータル30時間くらい、うち1日は結構歩いた後の感覚としては、新品の靴なのに痛い部分が無いに等しい。結構歩くので甲を意識的にキツ目に結んでいても、いつも痛くなる骨が出ている部分のダメージがあまり無い。また、左の小指や薬指も当たる感じが無い。踵は食いつくような感じが無いと思うけれど、擦れもせず歩くたびにきちんと付いてくる。
細かいことを言えば、左足の外側ボールジョイントから踵に向けてのあたりが少し当たっている。ということはこの部分は必ずしも大きくないのかもしれない。
多くの靴が足をガシッと包むような履き心地なのに対して、ふわっとした感じさえしてくる。
素材は「国内タンナー産高級キップ」とされている。
ショーンハイトのオーダーで使われているキップは山陽のグレージング仕上げのキップとされているけれど、こちらはそれとは別っぽい。
初見では表面上にポツポツとした感じで全体的にはサラッとしたフラットな印象。黒々とした黒というよりは表面の凹凸によってやや銀色的な光り方をする。艶はそれほどでもなく、しわはキップらしいやや大味なものが入る。プレーントウ自体がのっぺりしていることもあり、つま先にはワックス入れて黒を強調し、立体的にしたほうが格好良いかも。
ソールはやや厚め。靴のデザインもあり、全体として少しぽってりとした靴に見える。ソールが厚いからなのか、コルクが詰まっているからなのか、底がしっかりしている感じがして路面の凹凸に対して足にやさしく、履き始めにしては想像以上に反りが良い。
靴そのもののつくりは至ってベーシック。靴を作るための基本を集めて作ったような靴。
ウェルト周りはきれいに仕上げられているし、レザーソール部分がステイン仕上げがされていたりちょっとしたこだわりが感じられる。この靴の立ち位置なら無くても十分なのではないかと思うけど、「ショーンハイト」であるが故かな。
仕上げはふつう。必要以上のコストを掛けずに手の届きやすい価格を実現するというのも経営手腕の見せ所。品質を担保するギリギリのところにしているようにも見えてこれは僕としてはありがたい。
手持ちのクリーム比較として、今回左足を M. Mowbray シュークリームジャー、右足をBoot Black(黒蓋)シュークリームで塗り分けてみた。ソールも左足はモゥブレイ、右足はブートブラックのものを使っている。
購入時点でお湯で固く絞ったタオルを使ってみたけれど、色がほとんど落ちない。仕上げはあまりされていないと思う。どうせ好きなクリーム塗るのだからこれで十分。
初回はクリームが良く入る。薄塗り3回繰り返して磨いてみた段階ではそれほどツヤツヤに光る感じでもなく、最初の状態と変わらない気がする。最初はそんなもんかな。このへんの細かい比較については改めて。
日本にはいい靴を作るファクトリーがたくさんあるし、実際にいい靴もたくさん売られている。
いわゆる本格靴という市場は国内全体ではまだそれほど大きくなくて、その市場では主に欧米製の人気が高い。
国産靴は垢抜けないイメージを持たれることがあったけれど、市場の成熟とともに創り手も切磋琢磨されるわけで、高級靴ブームがあったおかげで日本製の良さを活かした洗練された靴が増えてきたように思う。
欧米の靴に人気があるひとつの理由は、ジェームズ・ボンドがチャーチからクロケットアンドジョーンズになったことが話題になったり、オバマ大統領が初登庁にコールハーンを履いたことでアレン・エドモンズが「USA製ですら無いコールハーンで初登庁なんてがっかりだ」とコメント出したりとブランドにストーリーがあるということもある。トリッカーズなんて世界レベルの洒落者ともいえるチャールズ皇太子のワラントだからこれまたストーリーになる。
日本人はもともと日本製が好き。なにもジョン・ロブやベルルッティと真っ向勝負では無くても、天気を必要以上に気にしないで済むビジネスの心強い道具としての立ち位置ならこつこつと真面目に作られる日本製に分があると思う。形を真似てもブランドのストーリーは手に入らないのだから、もっと気軽に履ける正統な靴っていいなと。長く使えるしっかりとしたものづくりという点では国産って素晴らしいと思うのです。
ショーンハイトはベーシックな形、まっとうな素材ときちんとした作り、修理対応の安心感などふつうのサラリーマンにとってありがたい要素がたくさんある。
残念なのはためし履きをしての入手が困難なこと。国産靴の多くはいつもこれに直面してしまう。ペルフェットしかり、RENDOしかり、大塚のM-5しかり。通販主体の場合はサイズ選びと交換の手続きが面倒だなと二の足を踏んでしまうし、交換コスト(手間と金額)が気になってしまう。
靴って、一度フィッティングがわかれば次からは同ラストを通販で買うこともできる。でも、その一度目に到達するまでが大変。
ショーンハイトの最大のデメリットはここにある。ホームページを見ると三越で試着できそうな雰囲気だけれど、実際には置いていない。(僕は日本橋と銀座の三越に試着したくて行ったけれど、扱っていなかった。ホームページが紛らわしい。)
百貨店に卸したりするといろいろ制約があったり、この価格では提供できないなどの事情があるかもしれない。
スコッチグレインのオデッサやライトカーフあたりと比べてどうかという情報があったら結構通販でも売れそう。リーガルとの比較は流石に問題が出そうにしても、それ以外のブランドなら出してしまっても良さそうだけれど、そういうのは業界的にダメなのかな。
柏の本社で履いてみれば一発解決。大手町あたりからだと乗り換え入れて本社まで1時間30分弱。往復3時間を遠いとみるか近いとみるか。
僕は遠足のつもりで実際に行ってみた。あえて靴購入だけを目的としてしまうと往復交通費と時間が上乗せさせるので交換前提の通販のほうが気楽だけれど、都内の人だったらなんとか行ける距離かなと。
店舗とは違うので応対は朴訥な感じを受けたけれど、とても感じが良く時間があれば次回も訪問して買いたいと思う。
すべての革靴が高級靴を目指すのではなくて、必要十分なビジネスパーソンのためのオーソドックスな靴があってもいい。ショーンハイトのこの靴はそのど真ん中にあるように思える。
でも、東立製靴さんの目指すところの主力は素材、作りにもう少しこだわったパターンオーダーのドレスかな。
しばらく履いて特に大きな問題がなければオーダーもしてみたいな。普段履きからオーダーによるドレスまで懐深いショーンハイトは今後の注目株かと。
--------
クリームは右左で塗り分けています。左足はM.モゥブレイ。
右足はブートブラック。デリケートクリームを使うのは最初だけ。後は水拭きしてから乳化性クリームのみ。
ブラシもクリーム塗り分けのために新調しました。
貴重なフィッティング情報有り難うございます。
返信削除shoe*さんの記事を拝見すると、フィッティングの方向性や自分が履いた場合のイメージが湧いてくるので、とても参考になります。
都内の三越では以前はパターンオーダーも取り扱っていたと聞きましたが、取扱いがなくなってしまったようですね。
試着に行くときは営業日確認の上、本社に行ってみます。
皺の入り方も素敵ですね。アウトソールの厚みはHP販売画像では気付きませんでした。しっかりしていそうで好感度上がりました。
東立製靴さんのようにあまり知られてはいないものの、真面目な靴を普通に販売している昔からの靴メーカーって探したら他にもありそうな気がしてなりません。
やはり革靴市場でもフォロワーにカテゴライズされる企業は、ニーズを持つ人たちへのアクセスと認知度が一番の課題なのかもと思います。
私もショーンハイトの存在を鈴木さんのコミュニティで知りましたので、企業がSNSやブログを活用してターゲットへ認知度向上やプロモーションを掛けているのも頷けます。
私も国産が好きです。
欧米発祥のモノでも、日本製のモノって良い物が多いですよね。
革靴については私はまだ国産靴の一部しか知らないので、なんとも言えませんがゆくゆくは舶来物の靴も履いた上で自分なりの判断をしてみたいと思います。
コメントありがとうございます。
削除SH111-4は最近買った靴の中でも、履き始めがとても快適な靴でした。
今日も履いていますが、踵がほんの気持ち浮いている感じがするくらいで極めてフィットしているようです。踵も意識をすればという程度で、ソールの反りが良くなるに連れさらに合うのではないかと。しわも意外ときれいに入っている気がします。
ショーンハイトって結構前からあるブランドですが、最近になって知りました。
雑誌に取り上げられたり、影響力のある媒体で紹介されたりしないとなかなか私のような一般の情報ルートしか持っていない人には到達しないなぁと。今回はたまたまいつも見ているブログ、Life Style Image さんで知り得たのは大きかったです。
RENDOもAll aboutで紹介されていなければひょっとしたら知らなかったかもしれないですし。
良い物を作るだけではそれを理解してくれるひとに届くとは限りませんから、プロモーションってすごく大切だなと思います。
チャーチなど欧米の靴も素晴らしく良いと思いますし、国産の靴も良いところがたくさんあると思います。一軸の優劣ではなくてそれぞれの良いところを見つけるのが楽しくてついついまた靴を買ってしまっているのかもしれません。こういう趣味があっても良いのかなと。
最近、トリッカーズに走ってましたがショーンハイトの記事を拝見して強烈にに欲しくなりました。
返信削除ここ数年で一番インパクトのある靴です。
コメントありがとうございます。
削除私もW10BDJを買ったあたりからカントリー系のブーツもいいなぁと思い始めました。トリッカーズはカントリー系に限らずドレスラインもいいですね。
仰るとおり、私も結構なインパクトを受けました。
私が買ったモデルは比較的安価なモデルですが、ビジネスシーンにおいては十分と言える完成度でとても満足度が高いです。
ショーンハイトのラストはポテッとした形なので、普段履きにもいいのかなと思っています。
しばらく履いてみてからまたその状況を書いてみたいと思っていますのでこれからもよろしくお願いします。
ご返信ありがとうございます。
返信削除トリッカーズにはくれぐれもお気をつけください。
気を緩めると虜にされますよ。
私はW1BDJとショーンハイトという衝動を抑えるのに必死です。
お互い足が10本ぐらいあればいいですね。
いつも読み応えのあるブログありがとうございます。
コメントありがとうございます。
削除カントリー系の靴は確かにハマると奥が深そうです。
フルブローグのブーツもいいなぁとは思うのですが、これに手を出すとまた世界が大きく広がりそうで止めています。
W10BDJはいい靴だと思います。
個人的には2235NAよりも普段履き向きなのかなと。
1日1足しか履けないので、そろそろ新規購入はペースダウンになってきました。靴は履いてなんぼなので、確かに履く機会を増やしたいのですが新しい物を買うたびにローテーション間隔が長くなるのが考えものですね。
今年は靴自体のネタはあまり増えないと思いますが、グッズ系はいろいろと試してみたいものがあるので気が向いた時にまた見に来てもらえると嬉しいです。
初めまして、最近靴に興味を持ち始め、勉強していたらブログにたどり着けました。Schoenheitの記事を見ていて、価格なども含めてすごく気になったので私も見学検討してみたいと思います。ほかに手を出しやすいブランドなどありましたら、教えていただければ幸いです。
返信削除コメントありがとうございます。
削除ショーンハイトはまだ数回しか履いていませんが、柏の本社で試し履きできる環境であればおすすめです。
個人的には手を出しやすい靴としてはリーガルの01/02/03DRCDあたりかなと思います。割引で売られていることもあるので3万円台前半で買えることがあります。
私は履いたことが無いのですが、きっとスコッチグレインのOP0656などのキップを使ったモデルもいいのかなと思います。こちらも3万円ちょっとで本格靴と同じ作りのはずです。
最近靴に興味を持ち始めたということですので、まずは試し履きができる靴屋さんを数店舗回って試着してみると良いかもしれません。買ってしまってからキツイ緩いとなるよりも、数多く試着してなんとなくでもサイズ感を体験するというのは無駄ではないと思います。革靴って結構高いですし。
たくさんのお店をまわると高価な靴にも目が行きがちですが、まずはあまり高くない範囲で直感にあった靴を見つけるというのもなかなか楽しいと思います。