2026年6月6日土曜日

ゼルビーノ(ZERBINO)のスーツ

評判の高いゼルビーノさんでスーツを新調しました。



新型コロナ(COVID019)で急激に落ち込んだスーツ市場、少しずつ取り戻しているようですが、帝国データバンクの調査によれば2024年度で上場紳士服7社のスーツ事業売上高は3,564億円だそうです。

総務省の家計調査によれば、1世帯あたりの年間スーツ関連の支出額は1991年には25,000円だったものが2023年には3,000円ちょっとまで下がっています。
1991年というとちょうどバブル時代の最後です。当時はまだDCブームなどもありスーツ単価も高かったので、市場としてはずっと活気がありました。

最近では、確かに昼間に山手線乗ってもスーツ姿の人は激減しましたもんね。

ビジネスでのカジュアル化が進み、新卒の絶対数も少なくなる中で、市場全体がシュリンクしてしまうのは避けられそうないのですが、業界トップの青山商事は売上高は減少したものの、オーダースーツが堅調で、営業利益が増加したそうです。薄利多売の安価なスーツから、いわば高収益が見込める受注生産モデルへの切り替えで成功する企業が出てきているようです。


で、ゼルビーノ。

今回スーツを新調するにあたり、オーダー系のお店を都内で何店舗か巡ってみたところ、圧倒的にお客様が入っていたのがこのゼルビーノさんでした。

ゼルビーノはテーラーフクオカを展開する株式会社福岡さんのブランド。
ホームページを見てみると、2020年に7億円弱であった売上が2023年には10億に届こうかというところまで伸びていて、このスーツ逆風時代に驚異的な成長をしている企業です。

カタログを見るに、50を超えるおっさんがチョイスするブランドなのかは悩ましいところもあって、テーラーフクオカや銀座山形屋のほうが無難な感じもしつつ、サンプル見る限りベーシックに作ったらいけそうでしたので思い切って作ってみました。


ゼルビーノは元になる型紙をベースに、体形に合わせて補正を入れるいわゆるイージーオーダーです。

オーダーの流れとしては生地を選んで、採寸しながら微調整していくなんて形になります。パンツはウエストを基準にゲージ服を着て、渡りや裾幅を調整、ジャケットも同じようにゲージを着て体型とのずれを埋めていきます。

パターンオーダーとは異なり、胸囲やウエストなど調整できる部分が多く、標準からのずれ幅の大きな体系でもスマートに着こなせそうです。


利用シーンはビジネスなので、春から夏を意識してダークネイビーからワントーン明るくしたネイビーの無地をチョイス。タグが付くような銘柄生地ではありませんが、ウール100%で選んでいます。最後までダークネイビーの尾州生地と悩んだものの、ダークネイビーは手持ちもあるので、少しだけ明るめにしました。

ゼルビーノではパンチブックではなく、反物(というのが正しいのか?)で確認できるので、仕上がりの色のイメージがしやすいです。数センチ四方の生地だと、仕上がりが思っていたものと少しばかり違う(特に光のあたった時の艶や奥行き感)ことがほとんどです。ある程度の大きさになると、肌の色との相性や、光にあたった時の光沢感、ドレープなどがイメージしやすいです。

ユニバーサルランゲージメジャーズ(ULM)のような「実際にその生地で作った既成も販売」がされていると、その生地に限ってではありますが出来上がり状態がわかります。色の基準もわかるので、パンチブックでより暗い(濃い)、より明るいで多少の感覚がつかめることもあります。ネイビー系は結構色が難しいので、ゼルビーノのような大きなサイズで確認できるのは大きなメリットです。

生地の艶感やドレープの出方なども比較しながら生地をどれにするかを選べます。


生地が決まればあとは採寸。おそらくヘキストマスのメジャーを使ってしっかり採寸してくれます。言われるがままに測ってもらうことから始め、サイズ感のこだわりなどがあればその都度相談すればいいと思っています。

スーツを作りに行った日が、たまたま夜に家族と食事なんて日でしたのでスーツではなくカジュアルスタイルで行きましたが、ジャケットのイメージがずれないようにカジュアル用のホワイトシャツとパンツの丈を正確にしたいので革靴を履いていきました。こだわりが大きい人ほど、いま気に入っているサイズのスーツを着ていくといいです。(普段は私もそうしています)

スーツの袖の長さや首周り、肩幅を決めるにはシャツが必須です。

「スーツは肩で着る」とよく言われますが、より正確に言うなら「首回りから肩で着る」でしょうね。だから襟をどう作るかが着心地に大きな影響をするわけで。
首周りのフィットや肩幅、袖丈を正確に詰めていくためには、いま着ているスーツとシャツで行くべきだと強く思います。ジャケットのサイズを決めるためには首周りがしっかりと沿っている前提で適正な肩幅が。肩幅が決まれば後は裄丈となります。それを決めることができるシャツは必須です。

ちなみに私のカジュアル用のシャツはビジネス用途に比べて裄丈が少し短くなっています。これは座って腕を曲げてもカフスが動かないようにする必要が少なく、むしろシャツ単体で腕をおろしている状態でもきれいに見えることを重視した長さになっています。なのでジャケットのサイズを決めるときに腕を下げた状態であれば問題ありません。カジュアル用とはいえオーダーで左右の腕の長さの違いを補正しているのと、ネックサイズも必要以上に大きくならないサイズにしているため、立ち姿であればビジネス用途と実質的には同じになります。

このようなカジュアルシャツがない場合は、いちばんしっくりくるシャツを着たうえで採寸してもらうのが必須です。シャツとの関係性なくしてジャケットは作れないです。


パンツのデザインは少しゆったりとしたワンタックに、裾幅は気持ち大きめにしてハーフクッションのダブルをチョイスしています。ウエスト測ってから持ってきてくれたサイズが思いのほか大きかったのは驚きでしたが、まぁ、ぴったりとしていたので自分のウエストサイズを改めて確認した次第です。

クッションについてはお店の人もパンツ丈が短めで、仕上がりも短めになる傾向が見られます。私はビジネスシーンにおいては立ち姿で靴下が見えるのは格好悪いと思ってしまうことからハーフクッション、ないしはワンクッションのほうがあっていると考えています。今回もハーフクッションでお願いしています。

余談ですが、ほぼすべてのパターンオーダーのお店で「絶対に靴下見せたくない」としてハーフからワンクッションくらいの長さになるよう合わせてもらうのですが、初回仕上がりはノークッションから微妙クッション(ハーフもなくクッションするかしないか)くらいに仕上がってきます。私の採寸時の感覚がおかしいのか、いつも謎です。

ビジネス、しかもお堅いビジネス向けであればお店の人のような靴下丸見えの長さは適切とは思えません。最低でもハーフクッションくらいは入れるべきと考えています。

年配の方でビジネスの成功者を見ているとシングルかつ少し長めのワンクッションあたりが多いです。これらの人とそれなりの額をディールする仕事をするのであれば、やはり短すぎる丈はプラスになることがないでしょう。

結構お堅いスーツ屋さんのがエグゼクティブ向けに解説している内容を見ると、「相手のためのスーツ」「職場の品位を守る立場としてのスーツ」という記載が多いので、色やサイジング、素材やデザインはやはりメインにターゲットとする層に受け入れられる選択をすべきでしょう。

逆に、もし若手経営者中心でスーツを伝統にとらわれない攻めた着方をするのであれば、それはまたそれにあったスタイルがあります。(ゼルビーノはややこっち寄りな気がする)


ジャケットは肩幅とパット、袖丈や胸板周りを調整できます。私は右肩が少し下がっているようなので、右側に少し厚めのパッドを入れて正面から見たときのバランスを整える補正が入りました。それと合わせて右腕が気持ち長いので、右腕側を長めにしています。シャツでも右側を長めにしているのでこの補正は大正解です。

パターンオーダーに分類されるULMでもジャケットのウエストや肩幅の補正が多少できます。基本となるゲージが体系別に細かく分かれているので、実質的には細かな補正ができます。補正自体の項目数のみでイージーオーダーとパターンオーダーを区別するのはフェアではありません。イージーオーダー(というかフルオーダー)を掲げる某スーツ屋さんは、仕上がりの写真を見る限り肩補正は入っていないようですから、画一的なくくりではなく実質的にどういうアプローチで歪んだ人間をきれいに見せるか、に尽きます。

体に合わせるというサイズの側面と、美しく見せるという両面からアプローチでしっかり対応できるところにゼルビーノの大きな優位性があります。


基本は総裏がおすすめされています。私は盛夏での着用も想定してあえて背抜きにしています。
たいていは1着目にトライするときは春夏向けから入ることが多く、あまり総裏にこだわっていません。スーツのジャケットは総裏というのがベーシック(というかこれ一択感も強い)で、確かに耐久性や皺の入りにくさではそんな気がしていますが、春夏あたりは軽さと通気性を重視して背抜きにすることが増えています。

本切羽や台場にはあまり興味がないので今回は追加オプション無し。裏地も標準で選べるものから選択しています。ワイン系のカラーも惹かれましたが、ビジネス中心春夏重視ということもあり涼しげな色にしました。ゼルビーノではキュプラが標準なのがありがたい。

腕の長さは既成でも調整を入れるか入れないかで大きく見た目が変わる部分です。私は一般的なパターンオーダーの場合ではジャケットの袖丈は左右に1cmほど差をつけます。

シャツは右腕側を0.5~1cm長めに作製しているため、既成で補正していないスーツだと右腕のほうがシャツが出ている量が増えてしまいます。なので、既成でもほとんどの場合は補正を入れます。左右が完全に対象であるからこそ美しいようにデザインされているスーツですから、最低でも袖丈は補正すべきです。

既製品は袖の補正あってなんぼなのに、既製品なのに本切羽とかいうスーツは何がしたいのかわかりません。スーツをのことをよく知らない人が企画しているとこういうプロダクトアウトなスーツができてしまうのでしょうか。ディスプレに飾るだけの用途であればいいのでしょうが、購入する側にとってのメリットがあまりありません。


スーツのメリットは、自然の産物であるが故の人間に生じているゆがみを打ち消し、左右対称の美しい状態にすることなので、体に合った補正してこその価値があります。ゼルビーノの細かな修正はスーツの本来の役目をしっかりと実現するための手段で、仕上がり後に着てみるとなぜその補正が必要だったのかがよくわかります。


ジャケットはゴージラインが少し下がっている大き目な襟を持っています。ハイゴージでおなか一杯になりつつあるせいなのかこれはこれで新鮮ではあります。ULMでもFirenzeモデルというゴージラインが思いっきり下がったモデルが出てきました。振り返れば戦後高度成長期までの日本のスーツもこんな感じだったようです。私はゴージラインが高め広めなほうが見慣れているせいか格好良く思ってしまうタイプなので、ここが唯一気になる点でしょうか。

パターンは日本人の特徴に合わせた前肩仕様です。今回のCustom Lineではラインが直線的ですね。

ブランドの方向性なのか、特に指定をしない場合は気持ち短めな丈で作られるようです。初回は推奨に合わせましたが、比較的伝統的に作るジャケットに比べると着丈が1cmほど短くなっています。(誤差かも)


出来あがりはさすがで、体系的に弱いところが補正されていて着心地が良いです。パンツのウエストはベルトレスでもきつすぎず緩すぎず。ジャケットは首周りに無駄な皺が出ることがなく、肩からウエストにかけても自然です。腕もきちんと前振りされていてこちらも横じわがほとんど出ません。

ハンガーにかけているときはなんだか変だが、着るとフィットするということが鈍感な私でも何となくわかります。持つと重いのですが、着るとそこまでに感じないのは一枚襟のなす技なのか。

パンツは最近のトレンドであるタック入り。ワンタックなところがツボです。フロントホックなどなんとなく安っぽさを感じるところがなくもないですが、総じて着心地が良いスーツを6万円台で手に入れることができるので満足感は最高レベルに高いです。

オーダースーツ界では1着2万円台のスーツも十分に良いものが出ているようですが、革靴の4万円ラインと同じように、スーツには6万円あたりに一つの境目があるような感じです。


こうなってくると、既成の10万円近いスーツの立ち位置が微妙です。生地タグ付けて「スーツの形をした生地」を売るようなビジネスも多い中で、「スーツを作るビジネス」に生地をつけているゼルビーノのビジネスモデルは実直に思えます。

どんな提灯記事を入れようと、やっぱり真面目にいいものを作っているところほど多くの人が支持しているのは間違いありません。オーダースーツ屋さんなんて訪れるお客様もマニアが結構いるでしょうからそうした人たちの高度なニーズに対して様々な価値を提供してこそビジネスが持続可能ですからね。


オーダーは2着目からが本番的なところもあります。次はもう少しこだわりを入れて作ってみたくなる、そんな1着目でした。





2026年4月1日水曜日

社会人の道具としての靴

4月になりました。
新社会人のみなさん、おめでとうございます。

足早に歩く若い人たちをみていると本当にほほえましく、元気をもらいます。
そんなみなさんが活躍していき、日本にもっともっと活気が出てくることに想いをはせながら今日は私の好きなジャンルである「社会人の革靴」について書いてみたいと思います。


みなさんに最初に与えられる仕事は小さなものかもしれませんが、実はそれ、大きな仕事の大切なピースだったりします。どんな大きな仕事も分解していくと、それに携わる人の小さな仕事の集合体です。
楽しい日もあり、苦しい日もあるかもしれません。真冬の風の冷たさを知っているからこそ一杯のコーヒーが心までを温めてくれることに気づき、真夏のアスファルトの照り返しのなか足早に歩くからこそ、一杯の水の真の美味しさを知ることができます。社会の厳しさはまたみなさんを大きくさせてくれるはずです。

涙が出るくらいの震える感動の前には、泣きたくなるほどの不安や恥ずかしさで逃げ出したくなったり、感情を抑えられず怒りですべてを投げ出してしまいたくなるようなときがあったりします。格好いいと思うような先輩方はみんな、そうした壁や山を越えて経験を積んできた方ばかりです。

御手洗冨士夫さんが「私の履歴書」でこう書かれていました。

「人生は楽ではない。しかし、楽しい。」

人生のシナリオをどう展開するかはみなさん次第。ただ、主人公であるみなさんの周りにいるキャストは想いどおりに動いてくれないので、あらかじめの脚本通りにいくことばかりでもありません。

仕事の楽しさがわかるまでには少し時間がかかるかもしれません。
自転車や逆上がりができたように、それには少しの慣れとコツが必要です。



革靴もそうかもしれません。

買ったばかりの靴は違和感が多くて、場合によっては痛いこともあります。
お店でフィッティングをして買ったものであれば、完全に合わないということはほぼありません。
むしろ最初に痛くないような靴は、逆にそのうち痛い靴になっていくことが多いです。
ちょっとばかりの我慢と、きちんとしたお手入れをすることで完成される履き心地があります。買ったばかりは作り手にとっては完成形でも、あなたにとっては半完成品、履き続けて足に合って初めてあなたにとっての完成品です。



Covid-19が世界的に流行してからは、ビジネスの現場ではリモートワーク化取り入れられ、革靴の出番も減っているようです。
私自身も、その前年までは北は北海道から南は九州までお客様のところにお伺いする機会があたりまえだったのに、2019年以降はほぼすべてがWebミーティングに置き換わりました。
2023年に入ってからは少し雪解け感が出てきましたが、それでもまだまだ外出や訪問の頻度は戻っていません。

一昔前には「スーツは最低2着、靴は最低3足」みたいな数値目標(?)がありました。これがリモートワーク前提である今日、革靴が3足必要かといわれると難しい。新入社員となるみなさんにとって、どんなビジネスアイテムにどれだけ投資(つまるところ「買う」か)するかは、これまでの常識でよいのかどうか、ちょっと悩ましいですね。




一般的にはスーツは堅苦しいものとか、時代遅れ、古臭い考えといったある意味「そちら側の固定概念」で語られることが多いです。

東証プライム企業のホームページを見てみると、多くの企業において代表者の写真はスーツ姿が多いことに気づきます。
これを「だから日本は凋落するのだ」という一言で片づけるのは簡単です。
ただ、いまだに世界から経営の神様扱いされる尊敬を集める日本人経営者の多くがスーツを着用しているという事実もあります。

ファイザー、フォードやGMといった米国の製造業の経営者もタイ着用の写真です。
歴史ある企業は会社の文化やブランド、信頼・信用を大切にするがゆえに、伝統的なスタイルを好み、新興企業は既存のルールを打ち破るイノベーションが源泉であるがゆえに、ルールに基づく過去のスタイルを批判します。

自分が働いている環境、職場内やお客様がどういったポジションを取っているかによって、必要とされるスタイルが変わってきます。
画一的にスーツスタイルが古いという固定観念に縛られず、やっぱりスーツスタイルだよね、という職場があるということも頭の片隅に入れておくのもありだと思っています。

スーツの持つ戦略性を見出して成功することもあります。本来であれば作業的な要素が多い靴磨きの世界でも、スーツスタイルで磨くということでイノベーションが起きました。理容業や花屋さんでもこうした動きがみられます。
動きやすいとか、楽であるということが最優先でなくてもいいんです。スーツしか出せない魅力と威力によって、その仕事のポジションを丸ごと変えてしまっています。

そんな力のあるスーツですから、毛嫌いせずにビジネスに上手に取り入れたいものです。


お堅い会社を相手にする企業に入社された方にとってはスーツスタイルの基本を知っておくことは大きなプラスにならないとしても、マイナスをつけない技術です。

私は比較的スーツを着ることが多い職業に従事しています。
スーツスタイルのときはタイ(ネクタイ)着用です。
会社としてはオフィスカジュアルOKの職場ではありますが、企業の経営者を含む役職者や管理部門の人、堅めの会社さんの営業さんや外資系の一流コンサルタントなど、スーツを戦略的に来ている人と会うこともそれなりにある環境です。

そんな環境にいる私が「社会人の『道具』としての靴」として考えるものはかなり保守寄りです。

・日本国内ならどんな堅い職場でも問題にならない(通用する)
・はずす方向があるとすれば「堅すぎ」
・天気(特に雨天)を必要以上に気にしない
・急な冠婚葬祭でも対応可能
・いま撮られた写真を10年後に見ても恥ずかしくない
・お手入れなどができれば比較的長く使える

といった視点で靴を選んでいます。
ただ、次のようなケースについては私の知識が少なすぎて、書いていることが的外れであることも多いことに気づいています。

・北海道のように雪が何か月も残る地域での常識
・あぜ道やぬかるみを歩いたり、自転車移動の多い職業(地方のリテール金融系営業など)
・職業柄脱ぎ履き頻度が高い職業(不動産の内見担当など)

スーツを着ているが靴に対する要求事項がちょっと違うケースなんて言うのはたくさんありそうで、ひとつの理屈を当てはめるのは難しい。


そんな前提はあるものの、この令和の時代に、お堅い会社にいるおっさんである私が、お堅い会社で働くか、またはお客様(クライアント)にお堅い会社があって好きであるかどうかにかかわらずスーツを着なければならない若者のみなさんに、知りうる情報から「これがありなんじゃないかな」をまとめてみました。

なるべく知識が個人の好みだけに偏らないように世の中のインテリジェンスが高そうな、かつ世界や歴史に詳しそうな人が書いてある本やサイトも参考にしました。それでも好みは入っていますが、10年前くらいからあまり変わっていない考えを中心に、10年後もおそらくは変なことになっていないだろうなということを前提にしています。



まず... どんな格好?

私が想定しているのはスーツスタイルです。
場合によってはクールビスなどでアンタイド(ノーネクタイ)になる場合も含めます。
ネクタイがあるときとない時では厳密には靴も変えるのが良いのでしょうが、そんなにたくさん靴をわけない前提です。
ジャケパンではなく、あくまでもスーツスタイルに合わせています。ジャケパンまで入れると結構チョイスが幅広くなるので、まずはスーツスタイルに合わせて条件を狭めて型を作ります。


どんな仕事?

スーツを着ていて、それなりにアスファルトの上を歩くことを前提にしています。
対面も含む営業であったり、コンサルや企画などとにかく相手に「自分に会いに来る人はスーツを着ている」と思われている職種を基準にしています。

勤務地は東京もしくは首都圏の状況をベースにしています。というのも僕は北海道や北陸のの雪の条件や、沖縄の台風をはじめとした夏の気候、関西圏の文化等知らないことばかりです。
北関東あたりでは夏の晴れた日の夕方は必ず雷雨になったりと、シーズン中はほぼ毎日雨が降る場所もあります。そうした地域地域の事情が必ずあり、私の知る狭い社会の常識では気づきすらできないことがたくさんあると思っています。雨については多少わかるものの雪については実用の想像ができていないので、雪の多い地域の人にとってはサマーシーズンよりになってしまっています。

今回選んだ靴の中には都内もしくはその近郊にしか店舗がないものがあります。その場合でもオーダー会などで全国で入手できるケースもあります。機会があればぜひ足を運んで試し履きしてもらいたいと思っています。オーダーサンプルを使ってしっかりフィッティングすれば、通販で同じ形の色違いや素材違いを選べるようになります。
オーダー会で買わないと悪いかなと気をすることはありません。全国でオーダー会をやるブランドでは、まずすべての店頭に置けないことを補うことも大切で、将来的に通販で買うことも検討しているからサイズを確かめたいという話を誠実にして、靴に興味がわかることがあればきっと相手も一緒になってフィッティングしてくれるはずです。そのためには、必要以上に時間をかけることがないように、自分がフィットしている靴を履いていくなどして、少ない時間でゴールを見つけられる工夫と配慮も必要かなと思います。


シーンは?

靴の選択においてはスーツスタイルでのビジネスシーンを想定しています。
よくミニマリストを標榜する人たちがオンオフ兼用ということを盛んに重視していますが、ワークライフバランスを靴にも適用してはどうでしょうか。仕事とプライベートは一緒がいいんでしょうか。
仕事には仕事に適した格好があるし、オフはオフでサマになるスタイルもあります。
ここで考えているのはスーツスタイルですので、オフでスーツを着る人以外はオンとオフで服装で狙うところは違います。ものによってはたまたまオフで使えるものもありますが、それは結果としてそうなのであって、考えているときはあくまでもオンタイムだけです。


予算は?

1足2万円から5万円にします。
なかなかの大金ではありますが、それ以下となるとこれまた私の得意とする部分でなくなってしまうので候補が良くわかりません。
1万円のゾーンでもいい靴がたくさんあるといわれているので、きっといろいろなホームページなどを見たりGPTあたりに聞けば何か出てくるのでしょうけれど、自分が良くわからないものを聞きかじりで書いてしまうのも気が引けるので、自分の経験と納得できる情報のものを扱います。

最低限のお手入れをすれば、という前置きをすれば、それほど神経質にならなくても数年持ちますからスーツと比べても決して高い投資ではありません。



で、道具として靴のリスト

1. リーガル01DRCD

最初の一足は革靴のド定番ともいえるキャップトウ(ストレートチップ)

まいど同じな展開ですが、最初の一足グループに入れたいなと思います。
お手入れに多少気を使ったり、レザーソールということもあり、お手入れの習慣が無い段階でこれを薦めるのかという意見はあると思います。

それでもなおこれを最初にあげるには、革靴への誤解を生まないファーストチョイスとしてこれが一つの基準であると思うからです。

全国いろいろなところで試し履きできてサイズの大幅なミスをしなくて済む。ラストもそれほど攻めていないので足のダメージが少な目。お手入れの仕方も学べる靴と、革靴とは何か、を体験するための靴であるともいえます。
最初にきちんとした革靴を履いてみると、靴に対する印象も変わります。

別にこの靴を履きまわせばよいとは思いません。ここ一発の靴にしてもいいですし、こういう靴が一つワードローブにあると便利です。

キャップトウはそれこそすべての革靴ブランドで用意がありますが、最初の一足に大切なことはフィッティング。
革靴のサイズはスニーカーのサイズとは数字の取り方が違うので慣れるまでは店舗で店員さんのアドバイスを聞きながら選択する必要があります。その際にはサイズの数字にとらわれず、とにかく数字を無視して選びます。店舗のいいところはとっかえひっかえサイズを試すことができることにあります。

01DRCDは全国のリーガルシューズや百貨店、靴屋さん等で販売されているので比較的入手がしやすいです。ぜひ最初の一足は価格だけにこだわらず店頭でしっかり試し履きをして、お店で購入していろいろなアドバイスを受けることを強くお勧めします。


2. ショーンハイトSH111-1D

購入できるところが限定されるのが痛いところではありますが、これだけの作りがこの価格で購入できる点で候補に入れています。
同一木型、同一デザインでレザーソールとラバーソールのモデルがあります。
個人的にはこの価格差ならレザーソールがいいなと思いますが、ここではラバーソールをお勧めします。

ラバーソールは少しの雨や路面がぬれている程度であれば水が侵入してくることがほとんどありません。お手入れもソールに関してはそれほど気にすることもなく、しかもソールがほとんど減りません。

ラバーソールのキャップトウで、日本製のしっかりした作りでここまでの価格はショーンハイトくらいです。


3. ショーンハイトSH111-4D

同じくショーンハイト。
ビジネスシーンから冠婚葬祭まで広くカバーできるプレーントウ。外羽根によるサイズ調整のしやすさがあるので、ハーフサイズくらいであれば大き目なものを買ってしまってもそれほど違和感なく履けるはず。こちらもラバーソールでよいと思います。
キャップトウのSH111-1Dより細い足でもはまります。長さに対して周囲が少なめ(Eとか)の人はこちらを買うのがいいかもしれません。キャップトウを先に買っていれば、同じサイズでいけます。


4. リーガル2504NA

全天候型万能プレーヤーです。
たいていの革靴は雨にぬれてもお手入れをすればそれなりに戻るとはいうものの、最初のうちはお手入れも習慣化していませんので、できる限りメンテナンスが楽な靴を用意しておくとよいです。
2504NAに使われているガラスレザーはお手入れ不要の素材というわけでは決してないのですが、実用上お手入れにかかる時間が少なくてもコンディションを維持できるというのも事実ですので候補に入れています。
私の履き方のせいなのか、ウェルトが傷みやすい靴である気がしていますが、修理もできますし、なんならまた同じデザインを買うこともできます。
この靴だけはカジュアルにも合いそうです。



ここに挙げた4足の靴はどれを選んでも社会人の靴として間違いがありません。
取引先との会食で、靴を脱いでこれが出てきたら感動してしまうレベルです。

おそらく社会人の多くは、靴のお手入れにそれほど時間をかけられません。
サイズもうまく選べなかったりすることを考えると、いきなり1足10万円レベルではなく、グッドイヤーウェルト製法でのベーシックな靴を履くのがいいと思っています。
ショーンハイトは購入場所が限られますので、展示会等があればサイズだけでも試しておいたほうが良いです。サイズがわかれば後日通販で好みのモデルを買うことができます。

この辺りは根拠のない靴好きの考えですが、きれいな靴を履いてマイナスになることはないです。私の知る限り若くして一流の仕事をしていたり、ある程度の年齢になってそれなりの資産を形成している人はみんな靴が高価かどうかは別として、きれいです。

靴にまで気が回るから成功したのか、それとも成功したから高い靴をメンテナンスできるのかはわかりませんが、少なくともビジネスというものがある意味プロとプロが切磋琢磨する真剣勝負の場と考えるのであれば、身なりが持つ道具としての重要度は無視できないのではないかと思っています。それがスーツスタイルの職場であればスーツであり、靴であり、鞄やベルトなのではないかと。

身なりに意識が向き始めると仕事のクオリティも上がる気がします。
身なりを気にするということは他社の目を通して自分を見ることにもつながりますから、コミュニケーション上は結構大切だったりします。

見た目より中身が大切だということはだれでも知っているけれど、だからと言って見た目をおろそかにしていいというわけでもない。つまるところ、仕事ができる人はマーケットインの視点があって、世の中で成功するために必要な手段の一つとして身なりをしっかりしているのだと気づきます。




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ある記事で「初任給は親へのプレゼントより、まずは『靴』」といったことが書かれていました。

ものすごい違和感とちょっとした嫌悪感を感じてしまいました。

「親に金使え!」ではなくって、靴は欲しいなら買ったらいいんです。初任給でどうしても買いたかった靴を買ったなら、残りの500円でボールペンと便箋をかって手紙でもいい。自分が使うための靴は道具であり、親へのプレゼントはモノそのものよりも感謝の気持ちだから、比べるものではないから。

息子が初任給をもらったときに、そんな感じで自己投資と周囲への感謝の両方ができたら嬉しい。プレゼントは金額の多寡なんて関係ない。親としてはその気持ちが最高に嬉しい。



2026年3月9日月曜日

ビジネスシーンでの REGAL 2235NA

仕事用の2235NA、ブラックです。


最近は仕事中にスーツを着ることが少なくなり、足元も黒のキャップトウではなく黒系のスニーカーがメインとなってしばらく経ちました。

スニーカーってやっぱり楽で、階段の上り下りなんかを繰り返しても足や膝が痛くなるなんてことがありません。タウンユースなので泥だらけになるようなこともなく、大きく目立つような傷がつくようなこともありません。大半の革靴のように履き始めの修行もいりません。

ただ、なんでしょうか社会人生活二十数年をずっと革靴だったこともあるのか、足元が軽すぎて落ち着かない感じが続いていました。試しに足元だけプレーントウにしてみたりローファーを履いてみたところ、落ち着くというか締まるというか、なんとなくしっくりきます。

どちらかというとスニーカーそのものが悪いのではなくて、慣れていなかったり格好良く履けない本人に問題があるのですが、やっぱり革靴のほうが履きなれしているということもあり、近頃は少しずつ革靴比率が上がっています。

総合的な機能性という点ではスニーカーに軍配が上がると思います。最近の超高機能ではないクラシックなスニーカーでさえもクッション性、通気性、メンテナンスの容易さ、価格などで革靴を上回るところは多いです。科学技術の進歩から生み出されたものが機能面で優位なことは当然なのかもしれません。


でも、やっぱり革靴なんです。

指先の踏ん張る感じとか、大地にへばりついている感じとか、屈曲した時の戻ろうとする力とか、かかと周りのどっしりした感じとか、革靴のほうが自分に合っているということに改めて気づきました。「三つ子の魂百まで」ではないですが、社会人になってずっと平日は革靴、下手すりゃ休日もほぼ革靴で過ごしてきたのである意味そうなんだな、というところでしょうか。

マイケル・ジャクソンのムーンウォーク、あれローファーで初披露ですからね。日本人でもあのサディスティック・ミカ・バンド時代の高橋幸宏さん、ドラム叩く時革靴ですから。ここまでしないビジネスシーンでは履き慣れちゃえば問題が出てくることなんてまずないことに気づきました。


ということもあり、これを書いている2026年春は黒系革靴が個人的トレンドです。

いまの定番スタイルになりつつあるブラックジーンズやチノに合わせることを中心に考えると、ドレスよりな靴よりは少しボリュームがあるほうがバランスが良い気がします。ルーツ的には米国発ですので、足元もやや重めのプレーントウやソールががっしりしたフルブローグがいい感じです。

ネットを見ているとドレスよりの靴を合わせている人なんかもいるようですが、なかなか難易度が高そうです。少なくともオシャレ認定されているようなちょいワルオヤジ(死語?)くらいのセンスと迫力がないと「靴だけが浮いているオジサン」になってしまいそう。

カジュアル革靴の一つの代表とも言えるローファーは、それこそこちらはドレスよりの品の良いデザインを選ばないとどうしてもカジュアルっぽさが強く出てしまい、ビジネスシーンでは(私には)難しい。

私はパンツの丈が短かすぎるのはちょっと... というタイプなので、足首が隠れる丈のストレートパンツに黒のローファーだと野暮ったさが出てしまいます。デニムのレングスで言うと30インチだとノークッションになってつんつるてんになりがちな気がして、32インチを少しクッションさせて履くのがちょうどいいと思うタイプです。しかし格好いいオジサンは決まってスキニーなタイプを短めにして足首見せてローファー決めています。マイケル・ジャクソンも少し短めの丈に白い靴下見せながらムーンウォークを決めてるくらいで、ローファーはやっぱりしっかり見せて履くのが気分。

となると私にとってはやっぱり重厚な靴のほうがうまくいきそう。


そこでリーガルの2235NAなわけです。アメリカンタイプのフルブローグ(ウイングチップ)

ウイングチップという言葉は難しいです。もともとは靴のつま先のW形状の意匠を指し示す言葉であったようですが、このウイングチップデザインの中で穴開けたり革の端をギザギザにしたりとあれこれしたものが出てきて、これを加工の名前をとってフルブローグと呼んだようです。いわばウイングチップの一形態がフルブローグというのがイングランド人の考え方っぽい。

ところが海を渡った米国では、このフルブローグのデザインに少しばかりのひねりを加えて、アメリカンタイプなフルブローグを生み出し、これをウイングチップと呼んだようなのです。同じ単語でも指し示す内容が時と場合によって結構違ってくる一つの例みたいです。


定番2235NAは重厚な作りを感じさせつつ、やや上品な雰囲気も感じられドレスダウン系ビジネスシーンにもおさまりが良いです。アメリカにもルーツを持つリーガルですから、ジーンズやボックスタイプのジャケパンスタイルとも相性がいい。

同じリーガルの中では10ELDDがトリッカーズバートン系だとすれば、こちらの2235NAはフローシャイムのKenmoorといったところでしょうか。同じウイングチップデザインでも方向性が結構違います。 

このスコッチグレインレザー(型押しのシボ革)も足元の重厚感に一役買っています。足元が安っぽいと全体が軽めに見えてしまいがちですが、2235NAをボトムに持ってくることで、センスがない私でもそれなりにキレイめを狙う作戦です。

2235NAや2589Nのようなゴツめのウイングチップはボックスシルエットのアメリカンスタイルスーツであれば似合うのかもしれません。クラシックなスーツスタイルには合わせようとするとやや主張が強すぎて靴だけが浮いてしまいます。ドレススタイル寄りにはドレススタイル寄りな靴が似合います。

一方で、ジャケパンなどのカジュアル要素が多くなってくると途端に収まりが良くなる気がします。シボ革なのでもともと小さな傷は目立たないものの、やはりきちんとお手入れされて品を保つような履き方が似合います。これがビジネスシーンでも活躍するひとつの理由です。


ビジネス上でのウイングチップってどうなの、について私は「限定つきあり」と思っています。

大前提として冠婚葬祭や重要な会議、セレモニーなどのフォーマルが要求されるような場所ではドレス寄りのデザインだとしてもやめておいたほうが無難です。いまや結婚式もくだけたスタイルでいいよという雰囲気だそうですが、だからといってあえて親戚一同集まる両家のお祝いの場に、お気楽カジュアルで登場するのもどうかと思います。招待をされている身であるからこそ自分の好み優先の選択ではなく、相手や集団を立てる選択が大切です。

気持ちがこもっていれば構わないとしても、牧師さんまでグランジスタイルなデニムで新郎新婦の誓約を司ったり、(ハワイの)正装とはいえアロハシャツにチノパン、ソフトモヒカンで決めた住職さんの法要では場が白けてしまいます。知識がなくて外してしまうのは仕方ないところもありますが、わかっていてあえて外しに行ってしまうと、内輪のネタなら許されても、たくさんの人が集まる場であれば単なるおバカさんです。そもそも自分の役割に矜持を持っている人はそんなことはしません。

就職活動や顧客先への初めての訪問など、初対面での印象は後まで残りますので、そういう場がおおいなら、キャップトウかプレーントウを選んでおけば間違いありません。あなたにとっての1/365日は、相手にとっては1/1日かもしれません。せっかく靴に対してほかの人よりも多い情報量を持っているのだから、最適な戦略を選びたいですね。


一方、オフィスカジュアルでポロシャツやチノパンが推奨されるようなシーンにおいては、このウイングチップはとても使いやすいです。何といっても革靴ですので、スニーカーと比べると格段に大人感があります。

ジャケパンとの相性も良く、なんだかんだで全天候型です。よほどフォーマルを要求されるようなお店でなければ、靴が問題になることがありません。いわゆるスマートカジュアルで靴が問題になることはないでしょう。

ビジネス感を出さずに、かつ品よくまとめたいときにはブローグ系の靴がハマります。ここでは逆にホールカットやキャップトウだとよほど上手にまとめるかセンスを評価されている人でないと、カジュアル靴にまで手が回らないおっさんが出来上がります。


釣り込みなのかパターンの微調整なのか、最近購入した2235NAはくるぶし周りが以前よりも気持ち低くなっているように思えます。多少はあたってしまうものの、刺さるような感じは減っています。2504NAの時もそうでしたが、歳とともにこちらの足が少し分厚くなったのか、それともリーガルが微妙に変えてきたのかはわからないものの、個人的にはプラスの方向になっています。また、なぜか踵の収まりもよくなっている気もします。新品だからあまり沈み込みしていないのか、かかとも少し窄まっているだけなのか測ったわけではないので直感でしかありませんが、以前よりも履き始めのフィット感がよくなっています。

この靴は親指側がストレート気味なので比較的親指が自由に使える靴です。リーガルはときどき内側(いわゆる親指側)をカーブさせてくることがあります。同じウイングチップ系の10ELDDとは明らかに親指側が違います。伝統的なラストはこのあたりの作りが私にとってはありがたい。

おまけに羽根の開きも以前に買ったものよりも明らかに開いています。ハーフとは言わないまでも数ミリ単位で全体的にコンパクトとなり、少し締まった印象です。


2235NAのアッパーはステアベースだとは思うものの、2504NAなどのガラスレザーと比べると履き始めからやわらめです。しわも目立ちにくく、シボ革(スコッチグレインレザー)のメリットが感じられます。


ただ、ただでさえギンピングがあってクリーム塗りにくいことに加えてレザー表面も立体的となるとクリームを布で塗るのはなかなか難儀です。塗り切れていないところが多発したり、逆に穴にたまってしまうなんてことも起きがちです。ペネトレイトブラシや使い捨て歯ブラシみたいなもので塗る方が楽かもしれません。

私は布で塗る派なので、できる限り丁寧に塗ってからわりとすぐに豚毛のブラシで馴らします。表面で不均一になっているクリームが延びて、育ったブラシに残っているクリームと合わせて穴やギザギザにクリームがはいればいいなと思っています。

いまとなっては貴重なレザーソールモデル。厚手のソールは相変わらず硬いです。履きはじめはなかなか返りが悪いので、部屋やベランダなどでできる限りソールに曲げ癖をつけてから履くのがおすすめです。つま先はかなり削れますが、そこまで気にして履くのもどうかと思うので一度履き始めたらとりあえず気にしないが正解です。


2235NAは定番とはいえ、街の靴屋さんではほとんど見かけませんね。

リーガル公式通販の価格で税込40,700円(2026年3月現在)と、いつの間にか4万円を超えています。
素材やこれを作るための工賃、機材等の維持費用や流通販売コストを考えると40,700円(税抜なら37,000円)って破格な気がします。通販サイトなどでもう少し安く販売されていることもあります。リーガルの卸値はもっと安いと思うと驚異的ですが、一般的な感覚からするとめちゃくちゃ高い靴、という位置付けです。ほとんどプレミア価格といえるUSA製のNew Balanceの1300が税込44,000円ですからもはやスニーカーの最高レベルに近い価格で、価格だけで比べたら革靴に勝ち目はありません。

2024年の総務省の家計調査によると、1世帯あたりの男子靴の支出額は3,327円。これでも前年比増加しているとのこと。ちなみに1世帯全体では14,488円だそうです。1980年代後半と比べると日本靴の生産は大きく落ち込んでいます。

この波にリーガルコーポレーションものまれてしまい、高級靴の主力工場ともいえる関連会社のチヨダシューズを解散、希望退職者を募集と発表しています(2026年2月9日付「構造改革(希望退職者の募集および連結子会社の操業停止)に関するお知らせ」)。
2021年には米沢製靴を解散しており、その際にチヨダシューズに移った人もいると思います。華々しいリブランドの陰でこうした厳しい決断もまた行われていたりもします。

自分の周りを見ていても、もはやグッドイヤーウェルテッドの革靴を履いている人は少数です。若手に限ってはまず見かけません。公的機関などもスニーカー容認が進んでいますので、この流れは逆らいようがないのかもしれません。

このような環境の中で、1足数万円の靴を作り続けるリーガルの企業努力って本当にすごいと思います。リーガルの主力工場のひとつ岩手製靴さんでは1日600足という数字が2年ほど前に出ていました。ざっと年間15万足とするとちょうど1足1万円くらいが平均的なリーガルから見た原価でしょうか。

少子化でそもそも社会人として革靴を新規購入する若年層自体が減少し、メインの団塊ジュニアは就職氷河期を経験して比較的財布の紐は堅いことに加え、役職定年を迎える時期に差し掛かっていますから、日本国内においてドレス系のビジネスシューズはかつての賑わいは戻らないでしょう。

外部からは実情を知る由もありませんが、将来に向けて構造改革をしたり工場を整理したりするのも、企業経営上避けて通れない決断に思えます。これだけの品質の靴がいつまでも販売され続けるという保証はありません。職人さんの減少もあるでしょうから将来的には海外生産のOEM、なんてことになってもおかしくありません。


とはいえ、革靴を履く人口が減っていく中でも当面は日本人が靴そのものを履かなくなるなんてことはないと思うので、いずれにしても靴を作る会社は必要です。20年くらい先の2050年でも日本人は1億人ほどはいますし、世界では2100年くらいまでは人口が増えると予想されています。

日本国内の市場がシュリンクしていても、まだまだ国内1兆円産業であるので業界の再編や構造改革次第では活路はあるのかもしれません。グローバルに目を向ければ靴そのものは成長産業にもなりえます。

ダブルエーとの業務提携は一つの活路になりそうですね。ジェイドグループやエービーシー・マートのように高い営業利益率を生み出す企業もあるので、靴業界自体が儲からないのではなく、企画力とか販売力の差であるともいえます。リーガルもグッドイヤーウェルテッドの靴だけを作っているわけでもないですし、ケンフォードあたりのサブブランドを見ても、決して高価格帯ばかりのこだわりがあるわけでもなさそうです。

違いがあるとすれば卸モデルであることと頻繁なモデルチェンジと廃盤セールでしょうか。エービーシー・マートはナショナルブランドを販売しつつも、一部を協力工場で作って利益率を確保しているそうです。ナショナルブランドといえどもいつ行ってもオールスターやらCM996、U/ML574、ホーキンスとティンバーランドが売っている印象です。たまーに売れなさそうな色のセールをしている気もしますが、メインの棚ではいつも同じものを売っている感じです。

かたやリーガルはかろうじて2235NAや01DRCDは残っていますが、名作の誉れ高いW105、オーダー木型を使ったW121/131/141などのシリーズ、シェットランドフォックスの初期モデル(エジンバラ、アーバイン)はどこへ行ってしまったのか。

エジンバラはマンチェスターに名前を変えて出直しを図っている感があります。当時は踵緩め甲高めで作ったものを少しばかり修正してきていると思われるものの、この出したり引っ込めたり感がブランドを確立できない一つの要因と思えてなりません。気に入ったモデルが出ても廃盤されるリスクが常に付きまとう。

シェットランドフォックスは立ち位置が微妙ですね。ブランド登場当時は価格差でポジションできたものの、これだけ靴が高くなってくると、もはやこのゾーンを維持する意味がなくなりそう。6万円台だと01DRCDとの差別化が難しいですし、かといって10万円近くなるともはや既製靴としてどれだけの市場があるのでしょうか。サラリーマンはおいそれこれだけの金額出せませんって。一昔前はいい靴が3万円台、高い靴が5万円から6万円くらいだったので、「奮発して01DRCD」「いつかはケンジントン」が成り立ちましたが、もはやそれなりにちゃんとした革靴を最初に3足そろえるなんてのは無理な時代になってしまいました。


リーガルコーポレーションという企業は本格靴を作るメーカーという見方をしがちですが、運営実態としてはファッションブランドだったりもしますので、流行を作ったり流行に乗ったりすることもまた企業の存在価値の一つともいえそうです。工場を解散し企業経営をスリム化しつつ、ほかと組みながら店舗を改装する、という戦略はいまのリーガルが生まれ変わろうとしているようにも見えます。

本格靴を量産可能な設備と技術を持つメーカーでありながら、ファッションブランドとしての小ロット作成&セールをしていかなければならない経営って本当に大変だと感じます。

「本格靴メーカー」として多くを私たちが求めてしまっても、それを支えるだけの顧客基盤が将来的に日本国内では期待できない。であれば体力があるうちに次の10年、20年に向けた企業の構造改革をしていくのは経営の覚悟です。多くの技術を有し、良心的な価格で日本の本格靴市場を支えてきたリーガルという企業で働いてきたみなさんがこれからも誇りをもって働くことができるよう、今回の決断が企業の発展につながることを願ってやみません。


リーガルはもちろんのこと、他の多くのメーカーや工房が生み出すグッドイヤーウェルテッド製法でしっかり作られた国産靴は、英国製や米国製にも引けを取らない素晴らしいものです。個人でできることなんてたかが知れているとはわかっているものの、これからもニッポンの靴作りが1日でも続くようにニッポンの靴を履いて(できれば買って)応援していきます。


日本の世界に誇る名作2235NA。
見れば見るほど、履けば履くほど、お手入れをすればするほど日本の靴づくり歴史や技術、考え方が詰まっていることに気づきます。

革靴に興味がある人であれば、一度は試し履きしてほしい靴。
一足はワードローブに加えてほしい靴。