2023年11月19日日曜日

Regal 2504NA 再び

ニッポンのレジェンド靴 2504NA。

いまの時代、レトロ感のあるモデルとして評価されているけれど、フィッティング重視のトレンドからは少し離れた位置にある靴

これまでも、そしてこれからも唯一無二の立ち位置で「定番」として受け継がれていくであろう靴。

「REGAL/リーガル」の商標はもともとは米国企業のものだったことからもわかるように、この2504NAもアメリカ靴を意識したことを感じるようなデザイン。J.PRESSのジャケパンスタイルやBrooks Brothersのスーツあたりに合いそう。


今年、2504NAを買い足しました。


2023年11月に値上げがあり28,600円、10%税込みでは30,800円とついに3万円を超える靴に。たった10年ころ前には個人輸入でチャーチのコンサルが日本円換算で5万円台で買えていたと思うと隔世の感がある。

革靴の中ではエントリー的な価格ともいえるけれど、ふだん使いにそこそこいいスニーカーが1万円~2万円程度で手に入るとなると、やっぱり革靴は少し高いねという印象を持つ人多そう。


以前と比べフィッティングやパターンに微妙なマイナー修正があったのか、履き初めにあった外側のくるぶしにあたる感じが全くなく、タンの足首へのあたりも柔らかい。土踏まずからかかとのサポートが若干入ったような気さえする。かかともほんの少し丸みを帯びたような。


2504NAって履き始めはくるぶしや足首あたりにエッジが食い込んでくるような靴という印象があって、履きおろし日を選ぶと思ってしまっていたのに、今回はとても拍子抜け。購入して軽く慣らし履きしたらあとは丸一日履いてみても全く痛いところがない。不思議。

見た目の印象とは違い甲の革はあまり固くはないという点は変わらず。タンや羽根のあたりのカチコチな硬さもやや軽減されている。履き始めのギシギシいうようなところが全体的に少ない。

ラストそのものは従来と同じはずだから、この足首周りの印象からすると僕の足が少しふっくらと変わったというよりは、外側のくるぶし周りのパターンにおいてラインが微妙に下がっている可能性が高い。全体的なパターン自体の修正が入っているのか、それとも単にこの個体を作るときの差異なのか。どちらにしても僕にとっては良い方向だからアタリと言える。


結構薄めの足である僕でさえこれなのだから、もし本当にパターン修正がされているのであれば2504NAでの最初の難関であるくるぶしや足首へのアタックを受ける人が減ることになる。やや立体的なつくりになったようで、「定番」として続けるにはいい方向への変化ではないだろうか。

今回の2504NAは当年製造っぽいのでまだ日がたっていないこともあるのかな。ガラス仕上げの甲革はその樹脂仕上げによりちょっとビニールっぽさが感じられるものの、しわの入り方は穏やか。このぴかぴか具合がオンオフ兼用のポイントだったりもする。


リーガルの定番はこの2504NAといい、2589N、2235NAといい外羽根スタイルが多い。あとはスリッポン系も。


あくまで経験則上、自分の周りにいる先輩方を見るに、その先輩方のさらに先輩方をターゲットとした販売開始当初の日本人の足の形は現代の平均よりももう少しごついと思われることに加え、当時の日本文化的に靴の脱ぎ履きにおいてひもを緩めない人たちがたくさんいたであろうから、踵をあまり攻めずにしておいて、フィッティングは紐の締め具合で設計しているのではないだろうか。

単なる緩い靴になってしまうと長時間の歩行で疲れが多くなる。足首から前方は歩くことを前提にある程度のフィット感を担保しなければならない。

「日本人の足」といっても千差万別で一つの形に集約させるのは難しい中で、外羽根モデルは羽根の開きを少し多めに取っておけばゴツイ足から薄っぺらい華奢な足までアジャストできる範囲が広くなる。

足首に近いところでしっかり抑えることができれば、かかとが多少大きくても脱げることは無い。逆に指先側にも余裕が出るので指に与えるダメージもほとんどない。

極上の履き心地を目指すのではなく、広く浅く、草履履きの日本人にとって無理のない履き心地を狙うとこうなるのではないかという気がする。大量生産をする場合のお手本のようなラストとデザイン。

少しごつい靴ではあるが、スーツスタイルも以前はずっとゆったりしていたので、この靴くらいのバランスで良かったと思われる。

2235NAのほうが少し足首周りの締め付け度合いは少ない気がするのは、ひょっとして履く靴下の厚みまで考慮されてミリ単位の修正が入っていたりして。


そんなわけで、ちいさめ薄めは僕の足に対しては紐を緩めている時点ではやや大振り感が出るけれど、しっかり紐を締めると緩さを感じない歩きやすい靴に変化する。

計算上EからEEの範囲(EE寄り)の僕は01DRCDと比較してハーフサイズダウン、ショーンハイトSH111ラストと同サイズを選択している。01DRCDは少し緩めな感じなので、01DRCDをタイト目に履いているのであれば同サイズ、SH111は外羽根タイプのSH111-4と同サイズだと気持ち大きめのような感じだが問題ないというサイズ感。外羽根比較ではシェットランドフォックスのインバネスよりハーフ落としてもまだ2504NAのほうが大きめに感じる。

全体的にボールジョイントでの窮屈さは全く感じない。指先に行くほどゆとりがあり、いちばん足首側のひもはしっかりと締めることができて履いて歩く分には緩さを感じない。

こうした巾着のような靴の作りだから、足幅が細めの人だとさすがにこの靴は厳しいのかもしれない。足首のホールドが不十分だと、指先にむけた左右のゆとりがあだとなって歩く際に指に力が入りづらくなる。タンの足首への影響も大きくなる。大きい靴の欠点が出てしまい、歩くストレスが増えてしまう。

タイトフィッティングで行くならもうハーフサイズ下げても履けそうとは思いつつ、全長詰めて買ったばかりの靴で小指にタコマメを作るのはもう歳的にターンオーバー不可能な不可逆損傷になるのでここ数年はあまり攻めていないチョイスになっている。

ローファーの2177Nを履くと、2504NAと同サイズだと明らかに甲まわりがタイトかつボールジョイントの先が窮屈に感じる。特に小指部分。伸びる部分を計算しているのか、それともラストの違いなのか。2177Nだと全長は2504NAのハーフ上げのほうが快適、ただ今度はくるぶし周りにゆとりがありすぎて踵ではなくサイドのぶかぶか感が出てしまう。僕自身の足に厚みがないところが目立つ感じ。なので、同じリーガルの定番というカテゴリーであっても単に数字上のサイズ比較ではなくラストとの相性も含めてフィッティングをして靴は買うべきという思いは変わらない。

ちなみに、僕の中で最高に小指と踵がやられたのがRENDO R7702サイズ6で、全体的にきつすぎて購入当初に頭痛したりで挫折しそうになったのがW134の24。RENDOは何とか当時は頑張って履くものという意識が強かったため乗り越え、W134はしばらくお蔵入りしていたものを、経済的に苦しい時期に単に履く靴がなくなってあきらめて履いたことで、両方とも最後には靴が変化してとても履きやすい靴に変貌した。どちらもある意味事情があったので履き続けられたものの、その過程において足にも相当な負担をかけたので、若くないいまとなっては指に負担の少ない靴を選びたくなる。

あくまでもターンオーバー能力の劣化(?)によって、以前よりも緩さに対しての許容度が上がり、きつさに対してのそれが減った。



2504NAは多くの声がいうその靴の立ち位置が故に、ほかのスムーズレザーの靴に比べて扱いが雑になりがち。

雨に降られた後も、ほかのスムーズレザーの靴は軽く水ぶき(場合によっては洗ってしまう)して乾いたころにクリームを入れるなんてことをやるのだけれど、ガラス仕上げの2504NAはついつい表面の汚れを落としたらそのまま放置なんてことをやらかしてしまう。

ラバーソールも濡れたからといって手入れが必要なものでもなく、靴全体が水に強そうに見えるぶん、お手入れもおざなりになってしまっていた。

そうなるとどこが最初にダメージ食らうかというと、ウェルトがダメになる。ここは普通に革が使われている部分であり、ウェルトにはしっかりとクリームを入れておかないと表面は何ともないように見えてボロボロな靴が出来上がる。最後はウェルトが我慢しきれなくなり、ソールをつなぎ留められなくなる。


グッドイヤーウェルト製法のキモはこのウェルトにあるので、いくらアッパー素材やソールが雨に強そうとはいっても、靴全体で見てウィークポイントになるところをしっかりケアする必要があるというのもこの靴から学んだ。


よく「ガラスレザーは雨に強い」とか「お手入れが楽」とか言われることがあるけれど、それはこのガラスレザー単体の話で、靴としてみるとウェルトやインソール、靴紐とかほかのスムーズレザーと変わらないものがたくさんあるので、靴全体で見たときにお手入れの必要性という意味では変わらないと思う。2504NAについていえば、アッパーやソールのお手入れ頻度を下げても、ウェルトだけはクリームやミンクオイルを使い捨ての歯ブラシみたいなものでときどき塗り込んでおくといい。

ラバーソールだからってお手入れ頻度が少なくていいことないので、あくまでも製法全体で見た靴としてどうかという観点でお手入れ頻度や方法が決まるのであって、特定の場所の部材で決まるわけではない。

それと、2504NAに使われているガラス仕上げの革はお手入れし甲斐がないみたいなこと言われることが多い。そうかなぁ、BootBlackの黒色クリーム塗ると結構イメージ変わるよ、特に何年か履いて靴が少しくたびれてきたときには特に。


多くの2504NAがこうしたよく言われる情報のもと、案外雨の日向けみたいに扱われていたり、簡単お手入れな靴として扱われているケースが多そう。ただ、逆に言えば扱いやすいというアピールがされることでたくさんの人に履いてもらうからこそ「定番」であり続けることができている。

2504NAのターゲットはビジネスで(一部カジュアルでも)革靴を履く人全体を見ているよう。みんながみんなお手入れをしっかりできているわけでもないだろうし、そもそも興味がない人もたくさんいる。ローテーションをせずに同じ靴を履き続ける人もたくさんいて、むしろそちらのほうが多数派でもある。

2504NAは決して履きつぶすような靴ではないけれど、ここまで売られ続けるとニッポンのビジネスパーソン層における使われ方もある程度わかったうえで作られ、販売されているのだろう。修理もできるけれど、買い替えしながらずっとこれ一本という人がいたっていい、という雰囲気。

だからデザインを毎年変えたり、ラストを微調整し続けたりなんてのはこの靴のビジネスではなくて、むしろ同じじゃないと困るという人たちにいつまでも過剰に高い価格にならないように大量生産しつつ販売し続けるような靴である必要がある。同じ形をたくさん作ることができるということは、生産コストをわずかながらでも下げることができる。

それは材料の調達であったり、作り手の確保、設備やツールの投資であったり、一定量を裁くための販売チャネルであったり。リーガルシューズ専売モデルではないから、通販サイトで何割引きなんて売られ方もしている。

日本の商習慣的に結局のところ定価からの割引みたいな感じになってしまうので、リーガルシューズのようなリーガル管理下の店舗では一定の価格を維持しないとならないからこうした定番モデルが却って売りにくいなんてことにならないのかな。モラルが完全に欠如してしまうと、お店で試着、通販で購入なんてフリーライダーも出かねない。もっとも、その肝心な店舗でもバックヤードのサイズや在庫の関係もあり、すべてのモデルですべてのサイズを常時置いておくのは難しい。取り寄せに数日かかってまた店舗に行くくらいなら、通販サイトで家に送ってもらっても一緒、になってしまいかねない。

そこまで含めてリーガルが全社的に戦略をとっている可能性もあるのだろうけれど、さすがにそれはないかな、どうなんでしょうね。割り切って店頭をフィッティング相談室にできるのであれば、それはそれでとてもありがたく重要な場として機能しそう。全体的にはリーガルシューズの試し履きは本当に履いてみて確かめてちょっとしたアドバイスがあるくらいで、ボールジョイントのフィッティングだとか甲の締め具合、履き口のフィット感などはほとんどみてもらったことがない。最終的な判断はお客様というのがある意味徹底されてしまっていて、フィッティングについてよくわからない初心者は何度か履けばフィットするはずのサイズは「小さいものを勧められた」といい、夕方に店頭でフィットした靴が「やっぱりリーガルサイズは大きい」とかいうコメントにつながったりする。フィッティングに詳しい人がいるのに残念。

大きい市場で、靴に対する知識がほとんどない人も相手にしなければならないリーガルでは、こうした本来大切なアドバイスがしたくてもできないというのはなんとなく予想が付く。なので、顧客側としてはあくまでも靴の販売と切り離したフィッティング重視の場がどうしても欲しくなってしまう。ラスト毎に色違いでもフルサイズさえそろえておけば、フィッティングはできる。なんなら倉庫併設の場所でもいいくらい。

最近は行っていないのでわからないけれど、以前のREGAL TOKYOはそのあたり、結構細かく見てくれた。メジャーで全長やボールジョイントの周囲を測って、そのうえでいくつか靴を履いて、でもやっぱり買わなくて帰るなんてこともあったけれど、そうした安心感があってシェットランドフォックスも含めたリーガル系の靴はすべてここで修理に出していた。修理についても「これはまだ出さなくてOK」とか、靴についてよくわからない常連でもない僕に修理のタイミングやらクリームの塗り方やら丁寧に説明してくれるなど、いわゆる靴好きがいうところの本格靴についてのリーガルの真の実力を垣間見ることができる店舗だった。定番靴がないのが残念。ここはオーダーとビスポーク以外はあまりやる気ないかな。


2504NAは定番と言われつつ、身近で履いている人を見つけにくい靴でもあったりする。職場や取引先などでも履いている人見たことないし、いっぱい売れているような気もするけれど、いったいどこで履かれているんだ?という気もする靴。


靴好きであれば一度は通るところのような靴だけど、その一度で通り過ぎちゃったままなのはなんとももったいない。


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