2018年7月1日日曜日

Boot Black と M.Mowbray 比較その後

ショーンハイトで続けているブートブラックとM.モゥブレイ比較。


塗分けしているショーンハイト SH111-4 は天候をあまり気にしないで履いているということもあり、雨に降られたりもするとそのたびにリセットされるのか、革の変化に大きな違いはない感じ。


お手入れに時間をかけた後ははっきりとわかるその違いも、しばらく(1カ月ほど)履き続けるとどちらがどちらなのかわからなくなるくらいに落ち着いてくる。

ふだんのお手入れはブラッシングとからぶき、ときどき固く絞ったタオルでの水拭き程度なのでクリームが蓄積されて変化をもたらすほどの影響を与えていない感じ。

この辺りは僕の技量にも拠るところなので、靴磨きに一言ある人であれば継続的に違いを際立たせることができるかもしれない。


ブートブラックはそれ単体で仕上げることができる便利なクリーム。
成分についてはメーカーの言い分なのでどれほど靴に良いかは不明なものの、仕上がりはじっとりとしていて、いかにもお手入れしましたという雰囲気が出る。
コロンブスの高めのラインはビーズワックス多めな感じなのでつやつや仕上げがしやすい。

一方、M.モゥブレイはロウによる表面上の変化は多少感じるものの、やはりブートブラックと比べるとかなりサラッとしたテクスチャー感を活かした仕上がりになる。正直、これ単体では靴の輝きがイマイチなため単独で使うとインパクトが少ない。


僕はふだん使いのビジネスシューズにはほとんどワックスをほとんど使わない人なので、ブートブラックのような単体でそこそこ光るクリームのほうが好き。光らせることを重視するとクレム1925のほうが使い勝手が良いので、きめ細かなカーフの靴にはクレム1925を使う。

逆に、表面がある程度ポツポツしているようなキップ系の場合は、クレム1925のような油性クリームは厚塗りしがちなのでブートブラックのような柔らかめのクリームのほうが良さそうな気がしている。(あくまで気がするだけ)

少し立体感を出したいときは同じブートブラックのアーティストパレットをつま先とかかとに塗っている。


もし僕がワックスを使った本格的な鏡面派だとすれば、モゥブレイのようなあまり光りすぎないクリームをベースにして、つま先やかかとをワックス使って立体的に仕上げる。鏡面のメンテナンスをするついでにそれ以外の部分にクリームを入れることになるだろうから、基本は薄塗して頻度を増やす。

いまの僕のスタイルはクリーム中心にお手入れして、そのサイクルは長めのためやや艶のあるクリームを少し多めに塗ることが多い。この場合はブートブラックのほうがやや有利。

そんなわけで、ブートブラックのクリームはこれ一本的な道具としての登板頻度が上がる。



ブートブラックもM.モゥブレイもどちらも個性のある良いクリーム。どちらを使ってもクラックは起きていないし、雨に何度も降られるハードユースでも革が固くなることもない。カビが生えるということもないし、色が落ちることもない。

雨の日も晴れの日もあまり天候を気にしないで履いていれば、どちらにしても塩が浮き出る。


どちらも足の親指側に塩が出やすい。塩は足の汗由来といわれているので、どちらでお手入れしても通気性というか、浸透性は大きな変化がないのではないかと考えられる。


ソールについてもブートブラックとM.モゥブレイどちらの商品を使っていても減り具合に顕著な差は見られないし、
体感的な浸水も違うということもない。ブートブラックのほうがソールステインの色を若干落とす傾向があるような気がするものの、履き心地に関する部分で言えば違いに気づかない。
このあたり、僕は鈍感であるとはいえ、それほど大きな差を見つけられないのだから実用上はどちらにしても満足できる。


靴のお手入れに関して言えば、たいして靴磨きに時間をかけない素人レベルであるなら、永い間支持を受けてきたものであればよほどの違いはない感じ。むしろ、頻度だとか一回に塗る量といったほうが影響が大きそう。


ところで、よく雑誌とかで靴磨き屋さんに仕上げてもらった写真などを見ると、じっとりと光るような靴をよく見かける気がする。
そこによく書かれているのが「革に栄養がいきわたっている感じ」
これってビーズワックスがちょっと強めに入っているクリームを薄塗何回か繰り返すと同じように見えるのだけれど、それって革に栄養が入ったからなのだろうか。
僕には表面にとどまるロウ分の艶感がそう思わせているように見える。

と思うようになったのも、この比較でほぼ同じようにクリームを塗ったとき、明らかにブートブラックのほうがそういった印象を受けるけれど、実際にはどちらも同じくらいクリームが入っているようだし、ある程度塗り続けた後のコンディションに大差がないようにも感じている。

もし栄養分(というか、保革成分)がそういう見た目の印象を与えるのであればこの比較では明らかにブートブラックのほうが良いコンディションに仕上がってくるはず。数年単位でお手入れを分けているので、印象的な違いがみられてもおかしくない。
こういう「栄養がいきわたっている感じ」とか感覚的な言葉は商品の売り手が使うにはいいのだけれど、比較に使おうとするのであれば何らかの数値化できたら面白いのに。
コロンブスなど本格的な研究をしているところにはデータあるのかな。

もちろん、僕が仕上げた状態とプロが仕上げた状態とでは、一見似たように見えて革の内部的には全く異なる状態になっているということも考えられる。だからこそ、プロがやったものと素人がやったものを比較する指標があればよいのになと思う。定量データなどの客観的指標で比較できれば、それはもうプロに依頼する大きな根拠になるのだから、だれかやってみるひと出てきてもよいのにな、と思う。



どんどん新しい商品が出てくるので、僕のようなお手入れ好きというかお手入れ用品好きは試してみたくなるものの、おそらく普段履きに一般的なお手入れをしている限りではその差を際立たせることはできないのかもしれない。メーカーの差別化要因を僕が再現できないというのは製品を活かしきれずにもったいない気もしないでもない。

とはいえクリームを塗るという行為は保革のためのメンテナンスというだけではなく、それ自体が楽しみでもある僕には、表面上の小さな違いでも「面白い」と思ってしまう。

それは光り方だったり、革に吸い込まれていく感覚だったり、時には香りだったり。クリームにはいろいろな性格があるので面白い。

4 件のコメント:

  1. おはようございます。

    2年以上の贅沢で貴重な実験結果ありがとうございます。
    どちらのクリームでも2年半程度の期間では、革そのものに大きな変化無さそうという結果がとても参考になりました。
    見た目の違いが革の状態そのものを表しているかどうかというのは、私も似たような疑問を感じることがあります。最近、私はクリーム入れることで安心している部分があるとも感じています。クリーム入れたから革の状態は良くなったはずと思い込んでいる部分があり、その先入観でクリーム塗った後は状態が良くなったように見えたりしているのではないかと。私の個人的な感想で済みません(汗。

    定量的な指標で比較出来たら明確になりそうですが、ブラックボックスのままのほうがロマンも楽しさもあって幸せなような気がします。万が一、身も蓋もない結果が出てしまったらと考えると、色々な問題が発生しそうで怖いです。

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    1. 早速のコメントありがとうございます。

      技術的な要因が多分にある気がしているものの、状態に明らかな違いがあるかというと気が付かない程度な感じです。
      ただ、お手入れ自体が楽しい人にも興味があまりない人にも、せっかく手を動かしたのだからそれなりの変化があったほうが良いですよね。

      今日はブートブラックとシルバーラインの比較をしているW134を履いているのですが、こちらはよく見ると前者のほうが艶が落ち着いていて後者のほうがテカテカしている気がします。革の表面状態は何となく前者のほうが良い気がするので、クリーム間の差がある気がします。あくまでも意識してみているからであって、傍目には違いは判らない感じではありますが...

      このあたりはもはや趣味的な領域なので、確かにロマンや楽しさがあるから定量的な指標がない、感覚的なところがよいのかな。「オマエの仕上がり偏差値は○○!」とかわかってしまうとやる気出ませんものね(笑)

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  2. こちらの記事を拝見してモゥブレイシュークリームジャーを買ってきました。ツヤ感抑えたい仕事の革靴には、丁度良さそうです。また何か伝統レシピなる言葉にはなぜか惹かれるものがあります。

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    1. コメントありがとうございます。

      M.モゥブレイのシュークリームジャー、永い間販売され続けているモノにはなんとも言えない良さを感じてしまいますよね。
      英国王室ご用達メルトニアンのレシピを受け継ぐと言われると、なんだかブリティッシュトラッドな靴にはベストマッチな雰囲気がしてきます。

      ビーズワックス強めな最近流行りのクリームと比べるとかなり落ち着いた仕上がりになるので、これをベースにトウとヒールをワックスで光らせるのが伝統的な格好良さなのかなという気もしています。おっしゃるとおりでビジネスシーンでは靴が必要以上に目立ってしまってもなんなので、こういう控えめな艶感でありながらしっかりとお手入れされているような靴こそが文字通りTPOに合った靴なのかなとも思います。

      と言いつつ私はもう少しミーハーなので普段使いは全体的に艶が出るブートブラックを好んでいますが、M.モゥブレイシュークリームジャーのニュートラルはサフィールノワールのレノベイタークリームと同様に保革しつつ控えめに艶出しといったケースには便利なクリームなので、一つあると便利ですね。

      クリームに関するネタは、お手入れの腕によって結果が大きく変わってしまうためイマイチ確証が得られない感じはしているものの、実験みたいで個人的には面白いこともあり、これから少しずつ増やしていこうと思っています。これからもどうぞよろしくお願いします。

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