2018年7月30日月曜日

REGAL 01DRCD の魅力

ここ1カ月くらい、REGAL 01DRCD の記事へのアクセスが増えている。


先月までは 2504NA がいちばん多くて、「さすがは 2504!」と思っていたら、7月に入り 01DRCD のほうが増えている。そんなわけで、改めて 01DRCD について見直してみた。


僕の 01DRCD も気づけば5年を経過した。


販売も継続されていて、REGAL SHOES 専売モデルではない一般販売のモデルとしてはなかなかのロングセラー。
リーガルの中では流行にあまりとらわれない正統派モデルで、インポート素材を使っているにも関わらず4万円を切る値段設定という「ちょっと頑張ったら買えるかも」的なゾーンが支持を受けているのかもしれない。


たまたま僕の足にとってダメージが少ない靴ということもあり、おおむね週1回弱の登板をしていて、天候が悪い日も履いているにも関わらずオールソールまでもう少しいけそう。

アッパー側も大きな傷などはなく、全体としてはやや粗が目立ってきたもののクレム1925で十分いい感じに仕上がる。

ライニングも履いている頻度からすると擦れが少ないようで、かかとはピンポイントで擦れている。かかとはやや大きめのつくりではあるものの、靴の中で足があまり動かないこともあって擦れが少ないのかもしれない。



購入当初にやや華奢な印象を受けたのは、ソールを薄く見せるヤハズ仕上げやきめの細かいアッパー素材が理由かな。
実際にはほつれたり剥がれたりといったことがなく、当初から歪んでいたような土踏まずもいまのところ問題がない。



お手入れは購入時からずっとサフィールノワールを使っている。
水洗いをしたとき以外は数カ月に一度くらい水拭きしてからクレム1925を薄く塗っているくらいで、表面が明らかにボコって来た時にステインリムーバーを使う程度。ふだんは馬毛のブラシでほこり落としと、擦ってしまった跡を目立たなくするためのからぶきくらい。


ビジネスシーンで使う道具としてはとても完成度が高いモデル。
デザイン、価格、素材、アフターサポートとどれもが一定以上の満足をしている。
僕はヒロカワ製靴のスコッチグレインを履いたことがないので同価格帯競合の実力を知らないとはいえ、おおよそ3万円から5万円くらいのレンジにある靴としてはベストバイに近い位置づけなのではないかと思う。

まず、デザインがシンプル。 意外とロングノーズでありながらもトウの丸め方とキャップの大きさがゆえに、それほど長い感じがしない。コバの張り出しも控えめで、極めてスマートなスタイル。キャップが少し大きいところにリーガルなりの和風を感じる。

次にお手入れのし甲斐がある。
01DRCDのアッパーは、クレム1925などのようなビーズワックス成分が多いようなクリームで磨くと簡単にかなり光る。いわゆるじっとり系ではなく表面がつややかに光る系で、お手入れ技術がそれほどでもない僕のような人でも満足度の高い仕上がりになる。

そして、履き心地が良い。
やや革靴ビギナー向けにセッティングされているのか、かかと周りにクッション性のある素材を入れているため、RENDOやペルフェットと比較すると柔らかな包み込まれる印象。
シェットランドフォックスのグラスゴーも同様な履き心地なので(ラスト形状によるフィッティングではなく、ふわっとした感じが)、リーガルにおける最近のこのプライスゾーンは意識的にかかと周りを柔らかくしているのかもしれない。


いわゆるシンプルな定番系のキャップトウって、多くの靴を企画・販売しているリーガルでもほとんどなかった気がする。ときどき出てきても、すぐに終売となることがほとんどだった。
唯一の正統派定番モデルと思われる W121/W131/W141 も、BOSのサンプルを兼ねているが故かスクエアトウになっていて、それはそれで伝統的なデザインではあるものの、やっぱりラウンド形状の靴と比べるとどうしてもちょっと外れている印象だった。

リーガルブランドではあまりレザーソールを推しているように思えないので、01DRCDもひょっとすると企画商品だった可能性が高いけれど、結果、

・「ふつうな形」をリーガルで欲していた層への訴求
・レザーソールの靴にしてはリーズナブルな価格設定
・アノネイ社のカーフというアピールポイント

が受けたのか、想像以上にヒットしてしまっている気がしないでもない。

ひろく売れる靴ではないけれど、ちょうど靴好きが「一足買ってみようかな」と思うツボを押さえているような。
さらに、買ってみたら意外と履き心地が良くて、デザイン違いをもう一足という感じで輪をかけて売れると。
同一ラストのプレーントウモデルも出たことから見ても、意外とラストの評価も高いのかもしれない。

甲が高めという意見も結構聞くため、購入時には店頭でフィッティングをして決めることを強くお勧めしたい。
ぜひ店頭でサイズ違いを何度も試して、店員さんの意見も聞いて合う・合わないの判断をした後に購入してほしい。


REGAL SHOES に限らず、全国の靴屋さんや百貨店でも取り扱うことができるモデルのなかで、レザーソールかつスムーズレザーの定番的なデザインは貴重な存在。
リーガルはインポート靴を好む層にはイマイチブランドの訴求が弱いと思っているのだけれど、ソールにレザーを採用した靴はなかなか気合の入ったモデルが多い。

01DRCD のような息の長いモデルがある一方で、01NRDD のように1年も持たずに終売になってしまうモデルがあるのはただただ残念。リーガルなりのマーケティング戦略がその裏にあるのだろうけれど、希望小売価格で買うのをためらう人を増やすだけのようにも思えるし、セールで売り切ろうとするの目にしたら心を込めてその靴を作った職人さんはどう思うのだろう。

いつの日か、いまはまだ幼い息子が真新しい靴で社会人としてはばたく日、父親である僕は履きこまれ、磨きこまれた同じ靴を履いてその日を迎えられたら最高だ。その候補は 01DRCD かもしれないし、チャーチのコンサルかもしれないし、いまはまだ手に入れていない靴かもしれない。まだまだ先のその日までどれだけの靴が販売され続けているだろうか。01DRCD がその候補になる靴として残っていてくれたらとても嬉しい。


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いまやキャップトウの定番


お手入れは一貫してサフィールノワールシリーズを使っています。ほとんどはこのクレム1925のみで。

水洗いをしたときはデリケートクリームとレノベイターを使います。


ソールのお手入れはブートブラックを使っています。たまたま家にあるので。

2018年7月1日日曜日

Boot Black と M.Mowbray 比較その後

ショーンハイトで続けているブートブラックとM.モゥブレイ比較。


塗分けしているショーンハイト SH111-4 は天候をあまり気にしないで履いているということもあり、雨に降られたりもするとそのたびにリセットされるのか、革の変化に大きな違いはない感じ。


お手入れに時間をかけた後ははっきりとわかるその違いも、しばらく(1カ月ほど)履き続けるとどちらがどちらなのかわからなくなるくらいに落ち着いてくる。

ふだんのお手入れはブラッシングとからぶき、ときどき固く絞ったタオルでの水拭き程度なのでクリームが蓄積されて変化をもたらすほどの影響を与えていない感じ。

この辺りは僕の技量にも拠るところなので、靴磨きに一言ある人であれば継続的に違いを際立たせることができるかもしれない。


ブートブラックはそれ単体で仕上げることができる便利なクリーム。
成分についてはメーカーの言い分なのでどれほど靴に良いかは不明なものの、仕上がりはじっとりとしていて、いかにもお手入れしましたという雰囲気が出る。
コロンブスの高めのラインはビーズワックス多めな感じなのでつやつや仕上げがしやすい。

一方、M.モゥブレイはロウによる表面上の変化は多少感じるものの、やはりブートブラックと比べるとかなりサラッとしたテクスチャー感を活かした仕上がりになる。正直、これ単体では靴の輝きがイマイチなため単独で使うとインパクトが少ない。


僕はふだん使いのビジネスシューズにはほとんどワックスをほとんど使わない人なので、ブートブラックのような単体でそこそこ光るクリームのほうが好き。光らせることを重視するとクレム1925のほうが使い勝手が良いので、きめ細かなカーフの靴にはクレム1925を使う。

逆に、表面がある程度ポツポツしているようなキップ系の場合は、クレム1925のような油性クリームは厚塗りしがちなのでブートブラックのような柔らかめのクリームのほうが良さそうな気がしている。(あくまで気がするだけ)

少し立体感を出したいときは同じブートブラックのアーティストパレットをつま先とかかとに塗っている。


もし僕がワックスを使った本格的な鏡面派だとすれば、モゥブレイのようなあまり光りすぎないクリームをベースにして、つま先やかかとをワックス使って立体的に仕上げる。鏡面のメンテナンスをするついでにそれ以外の部分にクリームを入れることになるだろうから、基本は薄塗して頻度を増やす。

いまの僕のスタイルはクリーム中心にお手入れして、そのサイクルは長めのためやや艶のあるクリームを少し多めに塗ることが多い。この場合はブートブラックのほうがやや有利。

そんなわけで、ブートブラックのクリームはこれ一本的な道具としての登板頻度が上がる。



ブートブラックもM.モゥブレイもどちらも個性のある良いクリーム。どちらを使ってもクラックは起きていないし、雨に何度も降られるハードユースでも革が固くなることもない。カビが生えるということもないし、色が落ちることもない。

雨の日も晴れの日もあまり天候を気にしないで履いていれば、どちらにしても塩が浮き出る。


どちらも足の親指側に塩が出やすい。塩は足の汗由来といわれているので、どちらでお手入れしても通気性というか、浸透性は大きな変化がないのではないかと考えられる。


ソールについてもブートブラックとM.モゥブレイどちらの商品を使っていても減り具合に顕著な差は見られないし、
体感的な浸水も違うということもない。ブートブラックのほうがソールステインの色を若干落とす傾向があるような気がするものの、履き心地に関する部分で言えば違いに気づかない。
このあたり、僕は鈍感であるとはいえ、それほど大きな差を見つけられないのだから実用上はどちらにしても満足できる。


靴のお手入れに関して言えば、たいして靴磨きに時間をかけない素人レベルであるなら、永い間支持を受けてきたものであればよほどの違いはない感じ。むしろ、頻度だとか一回に塗る量といったほうが影響が大きそう。


ところで、よく雑誌とかで靴磨き屋さんに仕上げてもらった写真などを見ると、じっとりと光るような靴をよく見かける気がする。
そこによく書かれているのが「革に栄養がいきわたっている感じ」
これってビーズワックスがちょっと強めに入っているクリームを薄塗何回か繰り返すと同じように見えるのだけれど、それって革に栄養が入ったからなのだろうか。
僕には表面にとどまるロウ分の艶感がそう思わせているように見える。

と思うようになったのも、この比較でほぼ同じようにクリームを塗ったとき、明らかにブートブラックのほうがそういった印象を受けるけれど、実際にはどちらも同じくらいクリームが入っているようだし、ある程度塗り続けた後のコンディションに大差がないようにも感じている。

もし栄養分(というか、保革成分)がそういう見た目の印象を与えるのであればこの比較では明らかにブートブラックのほうが良いコンディションに仕上がってくるはず。数年単位でお手入れを分けているので、印象的な違いがみられてもおかしくない。
こういう「栄養がいきわたっている感じ」とか感覚的な言葉は商品の売り手が使うにはいいのだけれど、比較に使おうとするのであれば何らかの数値化できたら面白いのに。
コロンブスなど本格的な研究をしているところにはデータあるのかな。

もちろん、僕が仕上げた状態とプロが仕上げた状態とでは、一見似たように見えて革の内部的には全く異なる状態になっているということも考えられる。だからこそ、プロがやったものと素人がやったものを比較する指標があればよいのになと思う。定量データなどの客観的指標で比較できれば、それはもうプロに依頼する大きな根拠になるのだから、だれかやってみるひと出てきてもよいのにな、と思う。



どんどん新しい商品が出てくるので、僕のようなお手入れ好きというかお手入れ用品好きは試してみたくなるものの、おそらく普段履きに一般的なお手入れをしている限りではその差を際立たせることはできないのかもしれない。メーカーの差別化要因を僕が再現できないというのは製品を活かしきれずにもったいない気もしないでもない。

とはいえクリームを塗るという行為は保革のためのメンテナンスというだけではなく、それ自体が楽しみでもある僕には、表面上の小さな違いでも「面白い」と思ってしまう。

それは光り方だったり、革に吸い込まれていく感覚だったり、時には香りだったり。クリームにはいろいろな性格があるので面白い。

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ブートブラックシリーズ。単品でそこそこしっとりとしたつやが出ます。


M.モゥブレイはつや感はブートブラックより少ないものの、革にきちんと浸透して柔らかくなっている感じです。