2016年1月23日土曜日

Schoenheit SH111-4 Plain Toe Leather Sole

個人的にちょっとホットな東立製靴のオリジナルブランド、ショーンハイト(Schoenheit)。
Google+のコミュニティでも購入報告や気になるひとが続出(してると思うの)です。

ショーンハイトのレザーソールモデル、プレーントウ(SH111-4)。ショーンハイトのスペルは正しくは
O-Umlaut なのだけれど、ウムラウトの英文タイプ表記にならってタイトルは Schoenheit と書いてみました。

ショーンハイトはこのブログを記事で紹介いただいている Life Style Image さんで知りました。
ブリティッシュトラッドタイプのレザーソールでお値段21,600円(8%税込)。

値段から入るのはどうかと思いつつも、これだけのインパクトがあるとどうしてもここに触れたい。
革の調達価格が上がったということでどんどん革靴が値上げされる中、税抜2万円ジャストの革底グッドイヤーウェルテッドというだけで驚き。スムーズレザーを使った2万円台のレザーソールとなると東南アジア製が一部あるくらいで国産ではなかなか見当たらない。よく「革靴は3万円台後半から」みたいな話が言われる(僕もそう思っていた)けれど、そんな定義を覆してしまう。
キャップトウ2足とプレーントウ買って税込65,000円って、シェットランドフォックスの新作ブライトン1
足とほぼ同じ。ラバーソールだともっと低価格。10万円あったら5足くらい買えてしまう。デザイン違い、色違い揃えていきなり一週間のワードローブ完成もそう大きな話でもない。山陽のボックスキップを使った既製モデルで税抜29,000円。

日々多くの靴を生産する過程で蓄積された調達・製造のノウハウをいかんなく発揮してできた靴。工場直販で店舗維持費用がかからないとしても、在庫はある程度(各サイズ1足くらい)確保されているみたいだし、オンラインショップの管理や発送、問い合わせ対応などの人件費は劇的に変わるわけではない。大手ファクトリーとしての材料の調達や繁閑調整、人員の効率的な活用によるところは大きいと思う。

僕は靴をネットで購入することはほとんどない。同じメーカーでもラストが違うと同一サイズでも履き心地は全然違うことがあるし、お店できちんと紐を締めて多少歩いてみて足のどの部分にあたるとか、どの部分が余るなどを把握して買いたいということもある。
ショーンハイトのこのモデルはYahoo!のオンラインショッピングか柏市の本社に行かないと手に入らない。散歩がてらに柏まで足を運ぶということで行ってきました。

東京在住の僕は常磐線で南柏駅まで行き、そこからバス。
南柏駅の西口(栄えていない方?)から流山ぐりーんバスに乗って20分弱くらい。野々下4号公園下車で歩いて数分。このバスは土日30分おきなので行きも帰りもタイミングを合わせないと結構待たされる。後から気づいたけどいまは東京駅からJRで乗り換え無しで柏駅まで行ける。柏駅からバスのほうが東立製靴の近くのバス停(笹原)が使える。

今回は土曜日訪問なので本社はひっそりしていた。販売店舗というわけではないので、予め電話で予約して行くと良いかも。土日は人も少ないし、その中で仕事を進めているのだからこちらもある程度の時間を決めていくほうが良かったなと。僕は朝に何時までやっているかだけを確認して適当に訪問したのでその点反省。

目的はブリティッシュ・トラッドタイプのためし履き。

このラスト、オンラインショップの写真を見るとチャーチの173ラストに似ているなと思っていたけれど、実際にチャーチを意識してラウンドトウを作ってみたとのこと。キャップトウのトウ先あたりは微妙に丸長くボリュームがあるという感じで確かにチャーチっぽさがある。とはいえレースステイの位置や足首周りはより小さめに仕上げられているなど、単なるパクリラストではない。ウェルトの目付けによって受ける印象も結構違う。ちなみにこのラストは東立製靴さんのオリジナル。

全体的なサイズ感としては伝統的なリーガルの靴に近い。シェットランドフォックスのインバネスや最近の01DRCDあたりと比べるとハーフサイズ大きい感覚。
左の01DRCDよりハーフサイズ下げているけれど、全長は同じくらい。
捨て寸がある程度確保されているためか01DRCDよりハーフサイズ下げてもゆとりを感じるけれど、これ以上下げると捨て寸に足が入る感じがした。足長が長い左足は意識するとかかと側が当たっている感じがするので全長はこれ以上下げるのは厳しいと思う。二の甲と三の甲はリーガルトーキョーの旧ジョンストンアンドマーフィー型ラストを少しシェイプした感じ。踵周りはややコンパクトにつくられている。
踵から土踏まずにかけて、やや土踏まずの絞りが踵寄りになっているようにも感じる。(気のせいかも)。踵ぴったりに履いているので前のめりしているわけでもなく、僕の足だともう数ミリ前にある方が気持ちいい。

サイズ表記は2E(EE)。ボールジョイントあたりの幅は少しだけゆとりを持たせて(リーガルの伝統的ラストよりは)高さを抑えているやや平べったい作り。キャップトウを試しに履いてみたところ、01DRCDよりハーフダウンしても気持ちゆるい感じがして、沈み込むと羽根が完全に閉じそうな気がした。外羽根プレーントウだと羽根が少し外側に付いているのか、かなりきつく締めても閉じることが無く、1cmくらい開いている。相当沈み込んでも閉じきることはなさそう。幅ふつうで薄めの足である僕には外羽根のほうがフィット感が良い感じ。履き口もやや小さめということも相まって踵と三の甲あたりで締めて、前半部分は縦横ともにゆったりとしている。最近キツ目の靴を履いているせいか、足入れした瞬間は緩い感じを受けたけれど、超時間履いていても緩さは感じられず、むしろあまり靴を意識しない自然な履き心地。緩くもなく、タイトでもなく当たる部分もあまりない靴。全体としては親指側にトウが振られていることも楽な履き心地につながっているのかもしれない。

今回はトライしていないけれど、ロングノーズモデルはややボールジョイント部分に幅をもたせているようなので、僕にとってはフィット感が弱くなるかもしれない。

2日間でトータル30時間くらい、うち1日は結構歩いた後の感覚としては、新品の靴なのに痛い部分が無いに等しい。結構歩くので甲を意識的にキツ目に結んでいても、いつも痛くなる骨が出ている部分のダメージがあまり無い。また、左の小指や薬指も当たる感じが無い。踵は食いつくような感じが無いと思うけれど、擦れもせず歩くたびにきちんと付いてくる。
細かいことを言えば、左足の外側ボールジョイントから踵に向けてのあたりが少し当たっている。ということはこの部分は必ずしも大きくないのかもしれない。
多くの靴が足をガシッと包むような履き心地なのに対して、ふわっとした感じさえしてくる。

素材は「国内タンナー産高級キップ」とされている。
ショーンハイトのオーダーで使われているキップは山陽のグレージング仕上げのキップとされているけれど、こちらはそれとは別っぽい。
初見では表面上にポツポツとした感じで全体的にはサラッとしたフラットな印象。黒々とした黒というよりは表面の凹凸によってやや銀色的な光り方をする。艶はそれほどでもなく、しわはキップらしいやや大味なものが入る。プレーントウ自体がのっぺりしていることもあり、つま先にはワックス入れて黒を強調し、立体的にしたほうが格好良いかも。

ソールはやや厚め。靴のデザインもあり、全体として少しぽってりとした靴に見える。ソールが厚いからなのか、コルクが詰まっているからなのか、底がしっかりしている感じがして路面の凹凸に対して足にやさしく、履き始めにしては想像以上に反りが良い。

靴そのもののつくりは至ってベーシック。靴を作るための基本を集めて作ったような靴。
ウェルト周りはきれいに仕上げられているし、レザーソール部分がステイン仕上げがされていたりちょっとしたこだわりが感じられる。この靴の立ち位置なら無くても十分なのではないかと思うけど、「ショーンハイト」であるが故かな。
仕上げはふつう。必要以上のコストを掛けずに手の届きやすい価格を実現するというのも経営手腕の見せ所。品質を担保するギリギリのところにしているようにも見えてこれは僕としてはありがたい。

手持ちのクリーム比較として、今回左足を M. Mowbray シュークリームジャー、右足をBoot Black(黒蓋)シュークリームで塗り分けてみた。ソールも左足はモゥブレイ、右足はブートブラックのものを使っている。
購入時点でお湯で固く絞ったタオルを使ってみたけれど、色がほとんど落ちない。仕上げはあまりされていないと思う。どうせ好きなクリーム塗るのだからこれで十分。
初回はクリームが良く入る。薄塗り3回繰り返して磨いてみた段階ではそれほどツヤツヤに光る感じでもなく、最初の状態と変わらない気がする。最初はそんなもんかな。このへんの細かい比較については改めて。

日本にはいい靴を作るファクトリーがたくさんあるし、実際にいい靴もたくさん売られている。
いわゆる本格靴という市場は国内全体ではまだそれほど大きくなくて、その市場では主に欧米製の人気が高い。
国産靴は垢抜けないイメージを持たれることがあったけれど、市場の成熟とともに創り手も切磋琢磨されるわけで、高級靴ブームがあったおかげで日本製の良さを活かした洗練された靴が増えてきたように思う。

欧米の靴に人気があるひとつの理由は、ジェームズ・ボンドがチャーチからクロケットアンドジョーンズになったことが話題になったり、オバマ大統領が初登庁にコールハーンを履いたことでアレン・エドモンズが「USA製ですら無いコールハーンで初登庁なんてがっかりだ」とコメント出したりとブランドにストーリーがあるということもある。トリッカーズなんて世界レベルの洒落者ともいえるチャールズ皇太子のワラントだからこれまたストーリーになる。

日本人はもともと日本製が好き。なにもジョン・ロブやベルルッティと真っ向勝負では無くても、天気を必要以上に気にしないで済むビジネスの心強い道具としての立ち位置ならこつこつと真面目に作られる日本製に分があると思う。形を真似てもブランドのストーリーは手に入らないのだから、もっと気軽に履ける正統な靴っていいなと。長く使えるしっかりとしたものづくりという点では国産って素晴らしいと思うのです。

ショーンハイトはベーシックな形、まっとうな素材ときちんとした作り、修理対応の安心感などふつうのサラリーマンにとってありがたい要素がたくさんある。
残念なのはためし履きをしての入手が困難なこと。国産靴の多くはいつもこれに直面してしまう。ペルフェットしかり、RENDOしかり、大塚のM-5しかり。通販主体の場合はサイズ選びと交換の手続きが面倒だなと二の足を踏んでしまうし、交換コスト(手間と金額)が気になってしまう。
靴って、一度フィッティングがわかれば次からは同ラストを通販で買うこともできる。でも、その一度目に到達するまでが大変。

ショーンハイトの最大のデメリットはここにある。ホームページを見ると三越で試着できそうな雰囲気だけれど、実際には置いていない。(僕は日本橋と銀座の三越に試着したくて行ったけれど、扱っていなかった。ホームページが紛らわしい。)
百貨店に卸したりするといろいろ制約があったり、この価格では提供できないなどの事情があるかもしれない。
スコッチグレインのオデッサやライトカーフあたりと比べてどうかという情報があったら結構通販でも売れそう。リーガルとの比較は流石に問題が出そうにしても、それ以外のブランドなら出してしまっても良さそうだけれど、そういうのは業界的にダメなのかな。

柏の本社で履いてみれば一発解決。大手町あたりからだと乗り換え入れて本社まで1時間30分弱。往復3時間を遠いとみるか近いとみるか。
僕は遠足のつもりで実際に行ってみた。あえて靴購入だけを目的としてしまうと往復交通費と時間が上乗せさせるので交換前提の通販のほうが気楽だけれど、都内の人だったらなんとか行ける距離かなと。
店舗とは違うので応対は朴訥な感じを受けたけれど、とても感じが良く時間があれば次回も訪問して買いたいと思う。

すべての革靴が高級靴を目指すのではなくて、必要十分なビジネスパーソンのためのオーソドックスな靴があってもいい。ショーンハイトのこの靴はそのど真ん中にあるように思える。
でも、東立製靴さんの目指すところの主力は素材、作りにもう少しこだわったパターンオーダーのドレスかな。

しばらく履いて特に大きな問題がなければオーダーもしてみたいな。普段履きからオーダーによるドレスまで懐深いショーンハイトは今後の注目株かと。


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クリームは右左で塗り分けています。左足はM.モゥブレイ。



右足はブートブラック。デリケートクリームを使うのは最初だけ。後は水拭きしてから乳化性クリームのみ。



ブラシもクリーム塗り分けのために新調しました。


2016年1月18日月曜日

靴クリームの比較 - Boot Black と Boot Black Silver Line 2回目 -

Boot Black(黒蓋)と Boot Black Silver Line の比較をはじめて1ヶ月。
この間登板は3回ほど。
改めてクリームを塗りなおしてみた。

磨いたあとに比べてみると、あまり違いがわからない。
シルバーラインの仕上がり。

ブートブラックの仕上がり。

1ヶ月くらいでは差がでないのか、そもそも差が無いのかはこの時点ではよくわからなかったが、今回敢えて差がでるかなと思ってほんの少しだけつま先にワックスかけてみたら意外な違いがあることに気がついた。(後述)

塗っている感じは結構違いがある。瓶に入っている状態だとクリームそのものはシルバーラインのほうが固めな印象を受けるが、塗っている感じでは意外と水っぽいクリーム。
ブートブラックは塗った直後から革に入り込むような感じがするのに対して、シルバーラインは一度表面に留まってから吸い込まれていくような違いがある。

正直、その後磨いている時もあまり違いを感じなかったので、細かく光を当てたりしないかぎりはその差に気づくことはなさそう。

ただ、意識して見てみると、シルバーラインのほうが角のある光り方をしている。
この光かたの傾向からすると、ブートブラックはスムーズレザー向けでワックス仕上げを前提にしている仕上がり。ハイシャインベース、ハイシャインコートを使うことを前提に、クリームの段階では控えめして、油性クリームの乗りを良くしているような感じ。
一方のシルバーラインはクリーム単体で完結することも想定して、クリームにややワックス成分を多めに入れている可能性がありそう。ガラス仕上げの靴からスムーズレザーまでお手入れの時間をかけずにそこそこきれいにしたいというニーズに合いそう。

また、今回は少しだけ缶入りワックスを入れてみた。
ワックスはプロ向きと言われているブートブラックのほうがあまり時間をかけずに光る。

ワックスを仕上げるために磨いた布を見ると、明確に方向性が違うことが解る。
左がシルバーラインで右がブートブラック。

シルバーラインは結構青みが強いグレー、ブートブラックやや青みを感じるものの黒いという感じ。
また、シルバーラインのほうが布に色が付着しやすい。
僕の技術的な部分があるので、絶対的な差だと断定するのは少し早いかなとも思いつつ、意外と違ったなというのがいまのところの感想。

数日間履いてみたところ、ブートブラックのほうが少し潤いのある感覚が持続する。
ただこれもそれまでの革の状態によるのかもしれない。

1ヶ月で結論を出すのは早いので、もう少し様子を見ていきたいと思う。


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ブートブラックはしっとりとした仕上がり。



あまり時間をかけないでクリームのみでお手入れをするのであればシルバーラインのほうがいいかも。今回はワックスも使ってみました。

2016年1月10日日曜日

SHETLANDFOX 3054SF ABERDEEN

シェットランドフォックスのラスト(木型)の中でも、わかりやすいロングノーズのアバディーン。

この手のロングノーズは好き嫌いが大きく分かれて、どちらかというと靴好きといわれる人にはあまり人気が無いようにも思える。ラウンドトウが正統派みたいな。
僕自身も、どちらかといえば古典的なラウンドトウのほうが好きだし、履いた姿はインバネスのようなちょっと長いラウンドトウがバランスが良いと思っている。

ロングノーズ度合いはシェットランドフォックス最高。

比較的長いと思われているグラスゴーより遙かに長い。最近出たこれまたロングのブライトンよりも気持ち長い。おまけにちょっとだけつま先が反っている。
長くて反っているのだけれど、僕のサイズが小さい(サイズ6)ためか見慣れたせいか、履いてみるとロングはロングなのだけれど巷にあるピエロ靴のような印象は受けない。
他の人が履いているのを見ても、目立つほどロングに見えない不思議な靴。

ま、周りにそれ以上のトンガリ靴が多いため感覚が麻痺しているのかもしれない。
このデザインでスワールトウにしたら巷のトンガリ靴のボカルー版ができそうだ。
実際履いていると無意識につま先を傷つけることがある。思ったより先まで靴があるので。

古典的なラウンドトウからみるとかなりアグレッシブな印象を受ける異端児だと思っていたら、エドワードグリーンも創業記念ラストとしてシャープなロングノーズモデルを出してきた。シェットランドフォックス(リーガル)が言うには「ブリティッシュスタイル」とのこと。格好よく履きこなすのは難しいけれど、これはこれで一つの答えなのかもしれない。

シェットランドフォックスの中ではタイトなラスト。
幅はそれほど絞っている感じは受けないものの、甲の低さは際立っている。特にボールジョイント周りの低さが特徴的で、購入当初はフロントタイト、リア(かかと)標準という感じだった。最近のシェットランドフォックスは甲低め、踵小さめがトレンドか。
甲が低いため、幅はともかく薄い足に合う。ボールジョイントの幅からすると細い足と言うよりは薄い足のほうがフィットする。細い場合でも捨て寸が多めの靴のため、サイズをハーフ下げることでフィットするかもしれない。

素材はもうこのクラスの定番の一つ、仏アノネイ社のボカルー。
購入当時(2013年)は公式通販サイトで「ボカルー」と明示されていたし、オフィシャルブログでも「フランスアノネイ社のカーフ」と書かれていたが、いまは公式通販サイトでの説明も単に「牛革」とものすごく大雑把な表記になっている。ひょっとすると調達先が変わっている可能性があるかもしれない。僕は最近では正直どこの革であってもメーカー(リーガル)が一定のクオリティを担保してくれていればいいかなという感覚なのだけれど、使用している革も品質の保証のひとつなのだから公開してくれてもいいのになと思う。
シェットランドフォックスで使われているボカルーは質のばらつきが多いような気がしているけれど、今回の個体はそこそこ良く光る。ただ、相変わらず硬めな感じ。

細かいミシンステッチ、ソールのステイン仕上げはクオリティが高い。ウェルトの糸も隠れているし極めて繊細な印象の靴。このVフロントもキャップトウも冠婚など華やかな式典に似合いそう。いわゆる最近の結婚式場でレンタルされる細身のブライダル用タキシード(ふつうのタキシードではない結婚式用のもの)に合わせるとかなり決まりそう。逆にモーニングなどやや格式を上げたスタイルならケンジントンIIのほうが合いそう。(※受ける印象には個人差があります)

余談になるけれど、この印象を確かめるために新郎の衣装で検索してみたところ、靴に関してはめちゃくちゃなものが多かった。ウィングチップがプレーントウよりフォーマルと書かれていたり、そもそもタキシードとブライダル用のタキシード、フロックコートの区別がついていなかったりと。「タキシードにはエナメル靴」はパーティ用の装いで、結婚式で新郎が着るブライダル用のタキシードはモーニングの略式と考えるべきなので、新郎の足元はやっぱりエナメルではないスムーズレザーのキャップトウが正解といえるのではないかな。


クリームは購入当初からサフィールノワールクレム1925を使っている。
この靴は登板頻度が少ないため、クリームを塗るのは数ヶ月に一度くらいで、ふだんはブラッシングくらいしかしていない。これまで大雨に降られたことがない(小雨程度は結構ある)ので、他の靴に比べるとあまりクリームを塗る必要がないということもある。
小雨とはいえ、雨に振られるとボカルー特有の情けない感じにふやけるが、乾かしてブラッシングすればほとんど元通り。その時に使うブラシはクリームを塗りこんだ後になじませるために使っているブラシなので、多少のクリーム効果はあるかもしれない。

しわも結構細かく入っている。

全体的に銀が浮きそうなしわの入り方が気になるところだけれど、これはクリームの艶感によるところかもしれない。
リーガルのボカルーはロットによるばらつきが大きい気がする。今回の3054SFはかなりみずみずしい艶が出るが、少し後に購入した3055SFは磨いてもあまり光らない。

ラストは少し足に合っていないのか、履き口の内側が少し変形してしまう。
同じラストの内羽根モデルである3055SFではこういうことが無いので、外羽根の作りこみによるものなのかな。フィット感は内羽根より少し劣る。

アバディーンは踵の造形が今ひとつな気もする。踵の底面から履き口にかけて直線的なため、踵を掴む感じが弱い。

踵のこだわりがあるRENDO 7702とくらべてみると一目瞭然。

底面をコンパクトにしても上面が開き気味な印象を受けるアバディーンに対して、RENDO 7702は上面に向けてグラマラスな曲線を描いており、いかにも踵を掴みそう。
RENDOのラストは一般的な既成靴よりワンサイズ踵が小さいとされているけれど、底面はむしろアバディーンより大きめに見える。その上で上面に向かって絞り込む作り。

ちなみに、ペルフェットのパラティーノもやっぱり曲線気味だった。

横から見てもRENDOのほうが曲線を活かしている。左側がアバディーン。

この写真をとってから、自分の足をよく眺めてみたら、やっぱりRENDOのような曲線のほうが(少なくとも僕の)足の形に近い気がする。

このあたり、せっかく踵を小さめに設計してもいまいちその効果が出ている感じがしない理由ではないだろうか。ただ全体的に小さくすればフィット感が上がるわけではない。シェットランドフォックスの公式ブログによると、2015SSモデルとして販売開始されたウイングチップモデルでは踵周りのフィット感が向上しているとか。とはいえリーガルは百貨店などでも販売することを想定して、敢えてあまり攻めた踵にしていない可能性もありそうだ。

内羽根モデル同様に、前半部分はとてもタイト感の感じる靴。
紐をキツ目にしても羽根が閉じることが無いので、この靴はコルクがだいぶ沈み込んでも閉じきることは無さそう。
ただ、内羽根よりも長時間履いた時の左足の感覚が違う。内羽根キャップトウでは一日の終りには左足薬指に違和感を感じることが多いのだけれど、このVフロントはそれが無い。

3055SFの時も同じ印象を受けたように、この靴は履き始めからタコやマメができることがなかった。
僕はたいてい履き始めは左足小指にできることが多い。最もダメージが大きかったRENDO 7702の時は綺麗になるまで半年以上かかった。また、踵の外側には大きめなものが残っていて、もう治る気配が無い。
このことから僕にとって靴の合う、合わないの観点は左足の小指がどうなるかと、両足の踵外側がフィットするかが重要になっている。アバディーンはその点が合っているのだと思う。もしかするとすぼめ過ぎない踵のデザインが足に優しかったりして。

一方でこれまでの靴ではあまり受けたことがない親指に革が当たる(刺さる)というダメージを履き始めに受けた。よく親指に絆創膏という話の理由がわかった。甲が緩いとなるのだろうと漠然と思っていたけれど、むしろタイトなフィッティングだと購入当初のしわの入り方によってはあり得るなと。キャップトウだとキャップがあるので指にはあまり来ないけれど、プレーントウ系だと起こりやすいかも。
よく最初にボールペンなどを使ってしわの位置を調整する人がいる理由もなんとなく解る。(僕は自然にできるしわこそ靴の縫い糸に負担が無いと思って室内履きで自然にしわを入れるタイプ)

この手の長い靴は好き嫌いがはっきり分かれる。
どちらかと言うと強烈に好きという人はあまりいなくて、絶対に履かないという人はワリといそう。僕も従来はなんとなく避けていたタイプのデザインだし、いまでもラウンドのほうが好きで、セミオーダーするならラウンドタイプの内羽根キャップトウか外羽根プレーントウがいいなと思う。
そんな僕が結局外羽根Vフロント(3054SF)、内羽根キャップトウ(3055SF)とふたつ買ってしまっているのは、タイトに履ける靴でありながらタコにならない気持ちよさ、履いてみたら意外とふつうな気がするデザイン、購入当時はボカルーの質感がわりと好きだったということにある。
靴って一日中履いているものだからやっぱり履いていて意識をしないか、気持ちいい感じがするようなものがいい。


シェットランドフォックスは「ミリ単位で修正を加えながら完成させた木型」を短期で廃盤にすることが多い。木型(ラスト)って資産だと思うのだけれど、こうすぐに廃盤になることを振り返ると、この文言も軽く見えてしまう。開発にコストを掛けた大切な木型なら償却するまでは素材の調達先変えてもモデル継続するほうが財務上良さそうに思える。顧客の立場からしても、例えばペルフェットとか三陽山長ってレザーの調達先変えてもモデル継続なので革の好みと馴染みに差はあれど、リピートできる安心感がある(ペルフェットは最近ちょっと違ってきている感じがするけど)。

逆に継続販売が無いかもしれないという不安感を煽ることで数多く買わせようというマーケティングもありかもしれない。ただ、これを繰り返していたら結局流行に乗るだけの軽いブランドになってしまう。良く言えばお客様の声を拾って改良を続けているといえるけれど、一方でいつまでも半完成品のようなものをその場の思いつきで出してくるようにも見える。流行を追い続けて商品開発をすることが主流の会社が故なのか、シェットランドフォックスはこういう売り切り型の雰囲気がしつつある。少なくても男性向けドレス・ビジネスシューズで5万円以上の靴を売るブランドって、10年以上(というか、開発時点では永遠に)販売するつもりの気合の入った製品を作るところが評価されているのではないだろうか。2235NAなんてデザインが今風でなくても、ラストが最近の若い人に合わなくても、定番として販売され続けていることがリーガルの底力を担保している。その場限りの商品はそれはそれで必要だとしても、100年前からあるようなデザインの定番モデルについては流行がどうなろうが素材の調達先が変わろうが、とにかくいつまでもあり続けるような安心感が欲しい。
リーガルによれば、過去モデルの木型はすべて修理用に保管している(リウェルト前提の修理だから全サイズあると思われる)ということだから、廃盤するくらいならリピータ向けパターンオーダー専用にして販売継続すればよいのにな。履き心地が気に入っている人にとってはものすごくありがたい。
ケンジントンなんて捻れラストによる履き心地の良さがひとつの売りだったし、事実僕のようにケンジントンがものすごく気に入っている人もいる。「ケンジントン(国産キップモデル)」「ブリストル(国産キップモデル)」とか買えるのであれば10年後あたりに買いたい。

アバディーンは素材が比較的安定供給されそうなボカルーなので当面は継続するかな。僕はもうこのモデルは打ち止めするつもりだけれど、それこそ10年後、セミブローグが欲しくなるかもしれない。そんなとき手に入れることできるかな。

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クリームは定番のサフィールノワールクレム1925を使っています。




ときどきレノベイタークリームで保湿しています。