2015年1月31日土曜日

プレーントウについて思いを語ってみる

ブラックのプレーントウ。

30代後半以上で革靴好きの人であれば一度は足を入れたことがあると思われる靴。
僕のフレッシュマン時代の憧れの靴のひとつはオールデンのプレーントウだった。

プレーントウ (Plain Toe)は読んで字のごとく、飾りのないシンプルな(プレーンな)つま先を持つ靴。
"Plain"なのだから「プレイントウ」のほうが本来の発音に近いとは思うのだけれど、一般的にはプレーントウと書かれることが多い(「プレーントゥ」も多い)ので、今回はプレーントウと書くことにする。

日本でよく見るフレッシュマンのビジネススタイル指南によると、外羽根プレーントウは必ず最初の3足、その中でもいの一番にそろえるべき靴として挙げられている事が多い。
このあたりは少なくとも僕の知るところである二十数年前から一貫して変わっていない。


トウにメダリオンなどの装飾がないあまりにも単純なデザインであるため、靴(ラスト)の形が如実に印象に直結する。
ラウンド寄りになるほどやさしさと温かさを感じるし、シャープになるほどクール(デザインによっては攻撃的)な雰囲気を醸し出す。

お手入れし易い、外羽根によりサイズの調整がし易い、クールビズなどのややラフなスタイルにも合いやすいとオールマイティに思われがちな靴。しかし、僕は思う。

「プレーントウは難しい」


ビジネスシーンでブラックのプレーントウを格好良く履きこなすのは相当の洒落者でないと無理ではないか、と思えてならない。

デザインレスなスタイルは一見何にでも合いそうではあるけれど、足元はスーツスタイルの中で一番下に位置するためにその部分がシンプルすぎると心許ない感じなってしまう。
アクセントが無く、表情を出しにくいプレーントウ。ラウンドトウならなおさら。

僕はどちらかと言うと薄手の繊細な生地で作られたスーツが好きなので、プレーントウも必然的にドレス寄りのものになる。
ドレスを意識すればするほど全体的なコーディネートにおける足元、という意味ではキャップトウにはかなわない感じが増してくるし、少しカジュアル寄りに持って行こうとするとスーツスタイルにはブローグのほうがしっくり来る。

街でビジネスパーソンの靴を見てみると、スーツに運動靴みたいな人を除くとブラックはツーシームとUチップが圧倒的に多くて、ドレス系のプレーントウを履いている人は殆ど見かけない。たまに見かけるプレーントウはソールがゴツメのワークブーツ寄りな人が多い。
レザーソールのブラックなプレーントウに出会う確率はコードバンのセミブローグに出会う確率と同じくらい少ない。

ま、そもそもレザーソールかつカーフ素材の黒いプレーントウってなかなか売ってませんもん。
売っていなくは無いのだけれど、ブランドの中でもやや控えめなグループに用意されていたりで、フラッグシップ扱いになっていることが少ない。(だからオールデンの人気がでるのかも?)

こういったシンプルなものは一般的には「格好いい」と思われにくい。
デコラティブな方が一般的には「デザインがある=仕事している=格好いい」に思われやすく、プレーントウのような何の飾りもないものは安物っぽく思われがち。
最近の若い人の間ではそれほど支持のあるデザインでもないだろうし、逆に靴好きは最初のころにプレーントウを買って、買い増しはキャップトウやブローグに走るだろうからそれほど販売数量も期待できないと思われる。

おまけにプレーントウはきちんと手入れをしないと途端にみすぼらしくなる。汚れがデザインの代わりになって靴を目立たせてしまう。つま先がちょっと擦れてしまうともう目立つのなんの。

プレーントウは「フレッシュマンが初めにそろえるべき靴」とみんなが言うので、靴に興味がある人は比較的初期に手を出す。現在手に入るレザーソールのプレーントウが3万円台に多いのも、フレッシュマンががんばって買えるプライスゾーンというところか。
年齢が上がるにつれキャップトウやブローグ系の靴の使い勝手がよくなるので、経済的に余裕が出てきたあたりでは結局買い増ししない。だからイルチアのプレーントウなんて存在しなかったわけだ。


僕個人のプレーントウとの付き合いで言えば、カジュアルのほうが長い。

最初に買ったグッドイヤーウェルテッドの靴は2235NAで、赤茶のプレーントウ。次はウォークオーバーのスエード靴、次はアルフレッドサージェント製のブラックのホールカットで、その後やっと外羽根5穴プレーントウ。
特にこの外羽プレーントウは僕自身が経済的に厳しかった時期に買ったこともあって、結構酷使してしまった。ソールに穴が開いて初めて修理に出すといった感じで。


その後歳を重ねるごとにキャップトウが僕の中でのスタンダードになり、プレーントウの登板機会は減っていった。一時期はキャップトウ9割、他ブローグ系1割みたいな感じで、プレーントウは出番なしという月も多くなった。


ところが最近、なぜかプレーントウが格好良く思えてきた。

究極に突き詰めていくとシンプルというものがいちばん難しく、故に格好良い。そう思って改めてブラックのプレーントウを履いてみるとまだまだ自分の至らなさを感じて不思議な気持ちになる靴でもある。だからこそ思う。

「プレーントウは奥が深い」


ていねいにお手入れされて履きこまれたプレーントウは水面のような輝きを見せる。黒い宝石のような輝きを出しながらそれ以上の主張をしない佇まいはこのデザインならでは。
やや細身の無地スーツに磨きこまれたドレス寄りのプレーントウを合わせるといったきわめてシンプルなスタイルこそが内面をきちんと映しだしてくれるのではないかと。

つま先を磨きこんで少し立体感を出しても面白いし、逆にプレーントウのプレーンさを強調するために全体を同じトーンで仕上げてもそれはそれで格好良い。

なんて思いながらプレーントウをもう少し見直してみようと思った土曜日でした。

6 件のコメント:

  1. 私はまだプレーントウの魅力が分かるレベルに達しておらず、ストレートチップとクォーターブローグを今後のメインラインアップとして揃え始めております。
    仰る通り、シンプルながらお洒落に履きこなすのは実は難しいカテゴリーだなぁと感じています。
    でもいつの日か外羽根プレーントウの上質な靴をお洒落に履きこなしたいものですね。
    革靴の奥の深さを実感しながら、TPOと自らのスタイルに合わせてこれからも揃えていきたいと思います。
    でもやっぱり茶系のクォーターブローグやセミブローグに憧れちゃうんですよねぇ笑

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    1. プレーントウって、よくよく考えてみるとワードローブでの優先順位ではそれほど高い靴でも無いような気がします。正直、ストレートチップとセミブローグがあればほぼ全てのシーンをカバーできますし。
      僕も茶系のセミブローグは欲しいなと思っています。個人的にはビジネスシーンは黒という固定観念が強いのですが、ダークブラウンなら内勤の時ならいいかもとも思ってきました。歳とともにセミブローグがやたら格好いい気がしてきたというのもあります。
      今年はいろいろとあってあまり靴が買えそうもないので、欲しいと思っているだけで日々過ぎてしまうのですが...

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  2. いつも楽しく拝読しています。
    今週も雨が多くて溜めていた靴の手入れをしていたらこんな時刻になってしまいました。
    一つ教えて頂ければと思うのですが、今回の記事でもShoe*さんが触れられている、世間で多くの方が履いているツーシームという靴をどんな立ち位置の靴と捉えておいでですか?
    ロングノーズでスクエア全開のあまり品を感じないものもあれば、とんがり気味だけどスラッと爽やかな印象を受けるものもあり、飯野さんの本ではスワールトウとして紹介はされていたものの、TPOや歴史については詳しくは書かれていなかったように記憶しています。

    これだけ着用している方が多いので、日本社会ではビジネスで着用しても問題ないと認知されていると考えたいですが、靴への造詣が深い方々はどのように考えておられるのか教えて頂けると嬉しいです。

    ここからは私事です。
    ゴム底ガラス革しか履いたことのなかった私が、昨年初めて革底スムースレザーの靴を購入しました。
    購入に至った経緯は書くと長くなるのですが、Shoe*さんのブログに出会わなければ、間違いなくゴム底ガラス革の靴を購入していたことでしょう。Shoe*さんのお蔭で私が知らなかった世界に足を踏み入れることができました。ありがとうございます。
    購入して約4ヶ月。少しづつ足に馴染んできました。奥行きのある光具合がとても気に入っています。ドレスシューズって良いですね。これから、じっくりと身の丈にあったドレスシューズを揃えて行こうと思います。




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    1. コメントありがとうございます。

      最近は仕事が超多忙になってしまい、なかなか靴を磨くことができずに悶々としています。

      さて、ご質問のツーシームですが、個人的には興味があまりない靴です。
      クラシックな靴ではありませんし、おっしゃる通りロングノーズかつスクエアでこれでもかと強調するデザインは少し品がない気もします。日本のビジネスシーンでは当たり前に履かれているので、特に不都合な靴であるとは思ってはいないのですが、個人的にはそれならUチップのほうがいいかなと。

      ツーシーム(スワールトウ)については時々コメントをいただく Life Style Image の鈴木さんも記事にされています。この記事で書かれていること、とても共感していますのでぜひ一度ご一読いただければと。(コメントにリンクがはれないのですが、検索で「Life Style Image」とすると上位に出てきます)

      靴のご購入おめでとうございます。
      革底の靴は通気性が良いのか、足が蒸れにくく、適度にローテーションさせるとニオイとは無縁になります。あと、あの歩く時のややコツコツいう音が好きです。
      私みたいなお手入れ好きには底までお手入れする範囲が増えるので、それもまたたまりません。

      ご購入されてから4か月とすると、そろそろなじんでくる頃ですよね。
      ていねいにお手入れしてもらえる人に購入された靴も幸せですね。
      こうしてコメントもいただいて感謝です。ご参考になるような文章になっていればよいのですが。

      これからもよろしくお願いします。

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  3. ご多忙の中、ご教示ありがとうございます。また、Life Style Imageさんのブログも興味深く拝見いたしました。スワールトウについての疑問が解けました。ありがとうございます。

    蛇足と思いますがニオイについてです。私の拙い経験からするとゴム底でもローテしていれば気になるほどではないように思います。(私が鈍感なだけかもしれません)
    私は手持ちが少ないのでどの靴も週に1~2回のペースで登板です。
    靴に注意を払うようになる前から履いていた、一番古いもう15年くらい(革靴自体を履かない時期も数年ありましたが)の靴も特に匂わないようです。2年程前のソール交換時に中底も新しくなったせいかもしれませんが。

    馴染んできた革底は早くもつま先修理に出そうかと考えています。ロングノーズではないし、つま先の減りはそのうち落ち着くはずだと思いながら、もう落ち着いても良い頃だしいつまでも落ち着かないようならつま先をゴムにしてしまおうかなどとあれこれ考えています。あれこれ考えるのもまた楽しいものですね。

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    1. なるほど。どちらかというと連投しないローテーションが防止のキモという感じでしょうか。

      つま先はどうしても減りが早いので、私は早めに修理に出すことにしています。なんかつま先の修理をして初めて自分の靴になった感じもしています。
      減りを考えるとつま先はゴムのほうが良いかなとも最近は思っています。おっしゃる通り、どんな靴を買うかとか、どんなお手入れをするかとか、またどんな修理をするかなどを考えるのは楽しいですね。
      そろそろ新しい靴を買おうと思いつつも、このところ全く休みが取れなくて店頭で足入れする暇もなく、ネットであれこれ考えながら見ています。

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