2014年2月16日日曜日

REGAL W134CB

BOS (Built to Order System)のラストを使った一般モデル。
ラウンドトウのプレーントウ。日本全国で比較的買いやすいベーシックなモデル。

W134はリーガルでのウイズ表記がD、JIS基準でEらしい。ちょっと英国靴っぽい表記のしかたが紛らわしい。(そのくせレングスは24みたいに日本式だし)

購入した当時「靴はキツくて足が痛いくらいでもそのうちコルクが沈んで極上フィット」という話を真に受けて、相当キツ目を承知の上購入。実測ではEEの足周なので、購入当初はかなりキツかった。インソールを覗いてみると、小指が半分くらいソールからはみ出しているので、結果的にサイズがあっていなかったんだと思う。履き始めはあまりの甲の締め付け強さに歩けない程だった。まぁ、懲りずに履き続けたら少しコルクが沈んだのか、とりあえず薄手の靴下なら1日履けるようになった。痛さを乗り越えて極上のフィットというのは一部の靴をきちんと経験則に基いて将来のフィッティングから逆算した現在のフィッティングを出せるシューフィッターが見極めることで成り立つわけで、安易に言葉の上辺だけを捉えたフィッティングでは結局のところ妥協の産物になってしまう。

この反動で、その後3回ほど連続で緩めを買ってしまった。これもまた履きづらいので結局履かなくなる。その後至ったサイズ感は、普段履くものより薄手の靴下で靴を買いに行き、ほぼピッタリでありながらこの時点では締め付け過ぎではないように感じる靴(キツイではなく、ややタイトという感じ)を買うようにしている。これだと半年から1年くらい経って靴が足の形に合ってくると、ふつうから少し厚手の靴下を履くことが多いのでフィットする。

このW134は僕がサイズミスをしたとは思っているのだけれど、当時のリーガルシューズの店員さんもこのサイズで問題ないと言っていたので、ひょっとするとこのフィット感が本来の姿なのだろうかとも思うし、やっぱり違うとも思う。もう少し履けば結論が出るのかと思いつつ何年も経ってしまった。何かで聞いた話では、リーガルシューズでは最終的には顧客の意見を優先するみたいなことなので、最終判断は買い手に任せる雰囲気ががある。リーガルトーキョーでも基本的にはキツメを薦めてくるけど、最後はお客さん次第。日比谷のシェットランドフォックスもタイト目よりはジャスト目を薦めてくる(沈み込み等の経験則によるものであればある意味当たり前だけど)
ちなみに、伊勢丹メンズは緩めの靴を履いている店員さんが多い。ハーフサイズくらい緩い靴を履いている人にフィッティングをしてもらうとその意見が少し心配。革靴はじめの数足は仕方ないところもあるけれど、やっぱり自分がピッタリだと思う靴を履いていって、それを基準にサイズ表記を無視して感覚で買ったほうがいいと思う。

さてこのW131、アッパーは国産キップ。平均的なビジネスマンのビジネスシューズ素材としてみたらコストやお手入れ頻度などを考えるとベストバランスだと思う。

さすがにアノネイやウエインハイムレダーと比べるとシワの入り方も含めたきめ細かさや、光沢のでかたに差があるとは思うけれど、それなりにメンテナンスしていると柔らかな革になる。スムーズレザーを感じながら雨にも強く、少しお手入れが雑でもひび割れもしにくい丈夫で実用的な素材だと思う。
やや大味なシワが入るので、人によってはそこが受け入れられないかもしれない。でもやっぱりリーガル伝統の「丈夫で長持ち」を地で行くビジネスライン。

リーガルお得意のゴテゴテしたウエルトではなく、ビジネスシーンに合わせやすい上品さもある靴。エレガンスでは無いけれど、ていねいさと丈夫さを兼ね備えているところは工業製品として見れば見るほど日本人が作った靴という感じがする。
価格的には靴好きな人からみると廉価版クラスかも知れないが、4万円近いプライスは一般的には十分高級クラス。
フラッグシップに近いBOSモデルをベースにしているので、一つひとつの作りがしっかりしていると思う。実際このW131も晴れの日も雨の日も履いて5年くらい経過するけれど、糸が切れたり形が崩れたりすることが無い。ソールの減りも少ない。(購入当初から2年目くらいまでは週1、それ以降は月2、3回くらいのローテーション。そろそろつま先補修かな)

僕の購入した時期からラスト形状がいまでも変わっていないとすればラストのできは01DRCDの方がいいと思う。正直DRCDシリーズが出たいまとなってはちょっと立ち位置が微妙なモデルになりつつあるのでは無いかと思う。アノネイあたりのほうが素材感で人気あるし。
履き心地は、もともと僕の足に対して小さいということもあり、先すぼみ感を感じる。かかとはわりと大きめなので、小さめのかかとの人だとフィット感が感じられないかもしれない。シェットランドフォックスが出る以前のリーガルは甲とかかとが大きいため、どうしてもそこのフィッティングを求めるとサイズを下げるかウイズを下げるかになり、結局先すぼみになってしまう(小指が大変なことになる)。このW134もそんな状態。Eウイズ(JISで言うEE)のW124だとどうなのだろう。今回はフィッティングについてはノーコメント。
真後ろから。
ペルフェットLGW3001のグラマラスなヒールカップと比べるとかなり直線的で、上部に向かっての絞り込みはほとんど無い。

それにしてもライニングのロゴはヒドイ。3万円を超える(値上げしたいまとなってはほぼ4万円の)靴でこのデザインはどうだろうか。ふつうにインペリアルグレードのロゴか、それをベースにしたほうが良かったのではないかと思う。このREGALなロゴを見るたびこのシリーズを買い増すという気が削がれた(いまはもう無くなった)。個人的にはBOSするなら間違いなくREGAL TOKYOで作ると思う。あっちのほうがインソールのデザイン無難だし。

ここまであまり高評価をしていないので悪い靴みたいな印象を受けるかもしれないけれど、この靴を単独でみるとレベルの高いいい靴だと思う。市販品でウイズ展開をしている点もリーガルの気合が感じられる。国産キップは他のメーカーでも4万円台モデルに使われているくらいで、素材のレベルが低いわけでは決して無いのだろうし。デザインも素材も普遍すぎて華がない、でも、だからこそ定番モデルとして長く履ける。まぁ無難といえば無難だし、下手に色気を出さないところがBOSラストモデルたる所以か。
ちょっと高いけど究極のベーシックモデルで、ラストが合えば万人にオススメできる。
プレーントウは(まっとうな)ビジネスシューズとしていの一番に挙げる人が多いけれど、意外と手に入りづらい。入手がし易い4万円で10年履けるプレーントウを探すとなるとほぼこのシリーズ(W124、W134、W144)一択になるのではないかと思えてくる。

ただこのBOSラストシリーズは、プレーントウは他にない優位さがあるけれど、それ以外のデザインはポジションが微妙なところが惜しいよなぁ。
4万円だとスコッチグレイン、大塚の百貨店モデル、ユニオンインペリアルあたりとかぶる。リーガル優位は全国のリーガルシューズでのリペアというところか。もしBOSがモデルチェンジしてケンジントンラストベースになったら面白そう。コベントリーも出したし、もういっその事リーガルはケンジントンを伝説のラストみたいに持ち上げて、スタンダードモデル統一しちゃえば良いのに。

あまり素材とかにこだわるとシェットランドフォックスとかぶってしまうので、あえて特別な個性を出さない無難モデルとして展開しているのかな。でもここまで無難だと店舗の現場では何をセールストークにしていいかわかりづらいですな。
いい靴だけど、この手の靴を欲しがる人はいろいろこだわりあるだろうから必然的にBOSになるのかな。この靴を購入した当時(たぶん5年くらい前)だとこういう無難な靴はリーガルではほとんど手に入らなかったので意味あるモデルだった。当時の上級ラインは数万円高いMade in ItalyシリーズとMade in Englandシリーズだったので、きちんと住み分けしていたとも言える。いまは同一価格帯でDRCDシリーズあるし、5千円から1万円プラスするとシェットランドフォックスがあるしで、積極的にこのモデルを選ぶ必然性が薄れていると思う。なんかBOSのサンプルシューズ的に在庫して、売れたら売るみたいな感じなのかな。まぁ、それはそれで戦略として意義があることにも思えるけど。

冠婚葬祭の靴

冠婚葬祭にはキャップトウ(ストレートチップ)が正解、と言われている。
ブローギングなどの華やかな装飾を一切まとわず、控えめであり折り目正しいキャップトウはフォーマルの模範解答。

日本語では「冠婚葬祭」とひとくくりにしているが、「冠」「婚」「葬」「祭」では靴に求められるものも少し違うのではないかと思う。前者ふたつは華やかさが求められ、後者ふたつは厳かにという感じで。

結婚式のような晴れやかな舞台に無骨なキャップトウ(まぁ、これはいいのかもしれない)だったり、お葬式にエレガントなロングノーズのキャップトウは少し違うのではないか、と思う。単純に「冠婚葬祭=キャップトウ」というのは「冠婚葬祭=黒い靴」というカテゴライズと考え方としてはあまり変わらない。

思うに、「冠婚」はある意味派手であっても構わない(むしろ派手な方が良いくらい)なので好きなモノを履けば良いと思うけれど、「葬祭」は100%他の人のための儀式なのでそこに用いられる靴も、礼節をわきまえて目立たないものが筋なのではないかと。

「冠婚」にはやっぱり華やかなデザインのキャップトウが似合う。
特に結婚式あたりでは定番のラウンドトウはもちろんのこと、ピカピカ鏡面仕上げのビスポークチックなロングノーズも似合いそう。クロケットアンドジョーンズのオードリー、ペルフェットのパラティーノあたり。
参加者として出るのであれば、シェットランドフォックスのアバディーンのようなロングノーズなVフロントもOKなのではないかな。

一方で「葬祭」では目立たない靴がいい。
デザインで言えばごくごくふつうのラウンドトウ、アッパーはムラ感のない均質なもので、ワックス仕上げはしないで、クリームだけであまり艶出ししすぎないように手入れをしたもの。
ある意味冠婚とは真逆のチョイス。


いちおう自分ではこんなルールで靴を選ぶし、もし人に聞かれたら(聞かれたこと無いけど)やっぱりこんな回答をするんだと思う。
ただ、こうした分け方にこだわるのは実はあまり意味がないのではないかと思うようになってきた。どんな靴を選ぶかという基準は別のところにあるのではないかと。

日本の葬儀では結構靴の脱ぎ履きが多い。
葬儀場でも火葬場でも、また食事の席においても一日に何度も靴を脱ぎ履きする。タイトフィットの靴だと周りに迷惑をかけることもある。みんなが並んで待っているところでポケットから出したシューホーンで靴を履き、紐を結んでいては他の参列者たちから「なにモタモタしているんだ」と余計なイライラを買いかねない。多くの人は葬儀関係では靴の脱ぎ履きが多いことを知っているのでローファー系の靴やエラスティックを履いている。どちらが正しいのやらと思うこともあるけれど...

正統なスタイルなのになぜこのような批判があるのかといえば「本来目立つものでない『靴が』目立ってしまっている」から。結果、「目立たず、礼節を持った」キャップトウの役割が、形を変えて果たせなくなってしまったからではないだろうか。

もともと座敷文化の日本では靴の脱ぎ履きが必要になる状況は欧米に比べて多い。
日本の文化的背景を無視して「スリッポンは不適切、キャップトウが正統」と画一的に考えるのは短絡的思考(欧米コピー思考)のような気がする。お寺での葬儀であれば紋付羽織袴に黒鼻緒の草履じゃないの?「革」靴?という人から見ればキャップトウだろうがローファーだろうが場違い感は一緒。
和洋は気にしないけれど、靴のデザインは重要、という考えと、靴のデザインまでは気にしないけれど、色は重要という選択の程度問題なのではないかと思う。そもそも日本の歴史的には、参列者が「喪服」を着るってどういうわけ?となるわけで、結局は、その場に参加する人たちが何を優先するかによるし、最大公約数でみて「お前おかしいよ」と思わなければ良いのではないかと。
もちろん、いまではほとんどの人が短靴を履くし、それならそのカテゴリーで本質的に正統なチョイス、ということを心がけるべきだろうけど、他の人を見下したり、逆に過度に目立ってしまうのは「過ぎたるは及ばざるが如し」といったところか。

僕は葬儀でも結婚式でもローファーやエラスティックの人がいてもそれだけでマナー違反であるとは思わない。
どのシーンでどんな靴を選ぶのかは欧米での歴史的なルーツも大切で尊重すべきだけれど、ほんの数世代前に日本に輸入したものを、日本の文化に適するように独自に発展させるのは日本人の得意とするところ。黒い靴ならばOKという社会的コンセンサスが日本の文化であるのであれば、黒のエラスティックやローファーも喪服の範疇なのだろう。


さてそんな中、僕の葬シーンはREGAL TOKYOのローラ。フラットな目立たないアッパーで、単純なラウンドトウのオーソドックスなデザイン。コバの張り出しも控えめで、まさに「目立たない」を地で行くようなデザイン。
結果的に大きめを買ってしまったこともあって普段履きにはチト緩い。これが功を奏して脱ぎ履きの多いシーンだと楽。パープルのライニングは黒い靴だらけの中で自分の靴を探しやすいし、そもそもこの紫という色は仏教では高尚な色とされているので問題になることもなさそう。ソールは黒のコンビ仕上げ。
元々のこの靴のコンセプトとは違うのだろうけど、葬儀の場で脱ぎ履きに手間を掛けたくない、だけどやっぱりローファーを履くのは違和感がある僕にとってこの靴はワードローブから絶対に外せない。

2014年2月5日水曜日

REGAL 2236NA

リーガルの超ロングセラーのひとつ2236NA。
僕の手持ちの靴の中では最高齢。


リーガルというともう40年以上売っているという2235NAが有名ドコロだけれど、こちらの2236NAはそのプレーントウバージョン。レザーソール、キップの型押し(スコッチグレイン)、ゴムヒール。シンプルであるがゆえに、カジュアルでの使い勝手がいい。

この靴は20年ほど前にリーガルシューズで購入。確か2万円台だったとおもう。
途中カビにやられたりしたこともあったけれど、未だ現役で履ける驚異的な靴。頑丈な靴っていうのはこういうのを言うのだろう。

もうこのレベルになるとフィッティングがどうだとか、素材がどうだとかそういう話ではなくて、別枠扱いなのであーだのこーだの講釈たれるのは粋じゃないという感じ。

ちょっとだけ書くとすれば、ラストは甲高幅広と言われる伝統的な形。比較的今風にモデファイされた01DRCDに比べればボールジョイントの周囲は大きく、かかともやや大きめ。土踏まずの絞りにポイントが多い最近の靴に比べると、全体的に寸胴。外羽根なので調整が効くため紐で甲を押さえつける履き方をすると指周りがゆとりがあるので履きやすい。

シルエットはつま先ポッコリでコバも張り出していてかなり無骨。型押しレザーと相まって、ジーンズスタイルなんかにも無難に合う(と思う)。もっともリーガルはもともとアメリカンブランドだし、そのブランドを日本で展開した時期からのモデルということを考えると、今風細めスタイルよりアメカジテイスト入りのスタイルにドンピシャなんだろう。

ソールも恐ろしく丈夫で、履く頻度が少ないとはいえ、いまでもオリジナルのまま。特にこの「ロングライフゴムヒール」って本当にロングライフで、よほど履き方に癖がない限りはかなり持つのではないだろうか。

アッパーはさすがに年季を感じるかな。
初めて買った革底の靴という事もあって、購入当初はわりとよくメンテナンスしていた事もあって、その後多少サボり気味な時期があったけれど、ひび割れなどもない。運の良いことにキズも少ない。
ただ、よくみる古い靴の写真と比べると光具合がそれほどでもない。これはアッパーの素材のせいなのか僕のメンテナンスが良くないのかは不明。
最初はリーガルのチューブ入りクリーム(茶色)、7、8年経過後くらいからコルドヌリ・アングレーズのニュートラルを、ここ数年はクレム1925のニュートラルを使っている。

いい歳になってきたことだしそろそろ2235NAも欲しいなぁ。このシリーズはリーガルシューズ専売でないので、結構ディスカウントされて売られている。

いまはもう月に1度履くか履かないかという状態で、おそらく今後もそれほどダメージを受けるとも思えないので、少なくてもあと10年くらい、ひょっとすると僕のほうが靴より先に終わりを迎えるのではないかと思えてくる。

さすが「インペリアルグレード」だね。